(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電動モータ及び前記電動モータの回転により吸入された冷媒を圧縮する圧縮機構を備えた吸入ハウジングと、前記圧縮機構内に形成された圧縮室で圧縮された冷媒が吐出される吐出室を備えた吐出ハウジングと、を有し、前記吸入ハウジングには、吸入された冷媒の吸入圧よりも高く、吐出された冷媒の吐出圧よりも低い中間圧の冷媒を、外部冷媒回路から圧縮途中の前記圧縮室に導入する複数のインジェクションポートが設けられた電動圧縮機であって、
前記外部冷媒回路から前記中間圧の冷媒を導入する導入ポートと、
前記導入ポートに連通する収容凹部と、
前記収容凹部と前記複数のインジェクションポートとをそれぞれ連通する複数の供給通路と、を有する中間圧ハウジングを備え、
前記中間圧ハウジングは、前記吸入ハウジングと前記吐出ハウジングとの間に配置されており、
前記収容凹部には、弁機構が収容されており、
前記弁機構は、
前記導入ポートと前記複数の供給通路とを連通させる単一の弁孔を有するバルブプレートと、
前記バルブプレートに対して前記複数の供給通路側に設けられ、前記弁孔を開閉するリード弁を有するリード弁形成プレートと、を備え、
前記リード弁は、基端部と当該基端部から延びた先端部とを有し、当該リード弁の前記先端部は、前記外部冷媒回路から前記中間圧の冷媒が導入されることにより開弁するとともに、前記複数の供給通路から前記導入ポートへ冷媒が流れることを防止するために閉弁し、
前記複数のインジェクションポートは、第1インジェクションポート及び第2インジェクションポートを含み、
前記複数の供給通路は、前記第1インジェクションポートに連通する第1供給通路、及び、前記第2インジェクションポートに連通する第2供給通路を含み、
前記リード弁の前記基端部から前記先端部に延びる方向に対して直交し、かつ前記弁孔の開口方向に対して直交する方向において、前記弁孔は前記第1供給通路と前記第2供給通路との間に配置されていることを特徴とする電動圧縮機。
【背景技術】
【0002】
一般に、インジェクションポートには外部冷媒回路の一部を構成するインジェクション配管が接続されるとともに、インジェクション配管には気液分離器が接続されている。また、インジェクション配管には逆止弁が設けられている。逆止弁は、冷凍サイクルの暖房運転等の高負荷運転時にはインジェクション配管を開放するとともに、冷房運転等の低負荷運転時にはインジェクション配管を閉鎖する。そして、冷凍サイクルの高負荷運転時には、逆止弁がインジェクション配管を開放するとともに、気液分離器によって分離された中間圧のガス冷媒が、インジェクション配管及びインジェクションポートを介して圧縮室に導入される。これにより、圧縮室に導入されるガス冷媒の流量が増え、冷凍サイクルの高負荷運転時における電動圧縮機の性能が向上する。
【0003】
ところで、冷凍サイクルの高負荷運転時において、電動圧縮機の性能をさらに向上させるためには、インジェクションポートから圧縮室に導入されるガス冷媒の流量を増やせばよいことから、インジェクションポートを大きくすることが考えられる。しかし、例えば、スクロール型の電動圧縮機の場合、インジェクションポートを大きくすると、可動スクロールの公転運動に基づいて可動スクロールの渦巻壁が移動して、インジェクションポートと可動スクロールの渦巻壁とが重なったときに、インジェクションポートが隣接する圧縮室に跨って、隣接する圧縮室同士がインジェクションポートを介して連通してしまう場合がある。すると、高圧側の圧縮室から低圧側の圧縮室に冷媒が漏れてしまい、電動圧縮機の性能が低下してしまう。
【0004】
そこで、可動スクロールの渦巻壁が移動しても、隣接する圧縮室同士がインジェクションポートを介して連通してしまうことが無いように、インジェクションポートを複数配設することが一般的に行われている。そうすることで、インジェクションポートが一つしか設けられていない場合に比べると、圧縮室に導入されるガス冷媒の流量が増え、冷凍サイクルの高負荷運転時において、電動圧縮機の性能がさらに向上する。
【0005】
また、インジェクションポートにおけるインジェクション配管側には、圧縮室からインジェクションポートを流れた冷媒がインジェクション配管側へ逆流することを防止するための弁機構が設けられている。弁機構としては、例えば、スプール弁と、該スプール弁をインジェクションポートとインジェクション配管側とを非連通とする閉弁位置に付勢させるコイルスプリングとを備えた弁機構が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
スプール弁は、インジェクション配管側からの中間圧のガス冷媒の圧力が作用すると、コイルスプリングの付勢力に抗して、インジェクションポートとインジェクション配管側とを連通させる開弁位置に移動する。これにより、インジェクション配管及びインジェクションポートを介した圧縮室へのガス冷媒の導入が行われる。また、インジェクション配管側からの中間圧のガス冷媒の圧力が、スプール弁に作用しなくなると、スプール弁がコイルスプリングの付勢力によって閉弁位置に復帰する。これにより、圧縮室からインジェクションポートを流れた冷媒がインジェクション配管側へ逆流してしまうことが防止される。
【0007】
しかし、スプール弁は、コイルスプリングの付勢力とインジェクション配管側からの中間圧のガス冷媒の圧力との関係から開弁位置と閉弁位置とを往復運動する構成であるため、応答性が悪い。すなわち、インジェクション配管及びインジェクションポートを介した圧縮室へのガス冷媒の導入が行われ難かったり、圧縮室からインジェクションポートを流れた冷媒におけるインジェクション配管側への逆流が行われ易かったりする等の不具合が生じ易い。よって、冷凍サイクルの高負荷運転時において、電動圧縮機の性能が向上し難い。
【0008】
そこで、特許文献2には、リード弁と、リード弁の開度を規制するリテーナを有するリテーナ形成プレートとを備えた弁機構が開示されている。リード弁は、インジェクション配管側からの中間圧のガス冷媒の圧力が作用すると開弁する。このとき、リード弁は、リテーナに当接して開度が規制される。これにより、インジェクション配管及びインジェクションポートを介した圧縮室へのガス冷媒の導入が行われる。また、リード弁は、インジェクション配管側からの中間圧のガス冷媒の圧力が作用しなくなると閉弁する。これにより、圧縮室からインジェクションポートを流れた冷媒がインジェクション配管側へ逆流してしまうことが防止される。
【0009】
よって、リード弁は、コイルスプリングの付勢力とインジェクション配管側からの中間圧のガス冷媒の圧力との関係から開弁位置と閉弁位置とを往復運動する構成であるスプール弁に比べると応答性が良く、冷凍サイクルの高負荷運転時において、電動圧縮機の性能が良好なものとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、複数のインジェクションポートに対して、リード弁と、リード弁の開度を規制するリテーナを有するリテーナ形成プレートとを備えた弁機構をそれぞれ設けると、部品点数が増加するとともに、電動圧縮機の体格が大型化してしまう。また、複数のインジェクションポートに弁機構をそれぞれ設けると、インジェクションポート毎に設けられた弁機構が開閉するタイミングがそれぞれずれることで、インジェクションポートを介した圧縮室への中間圧のガス冷媒の導入が効率良く行われなくなってしまう。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、部品点数を削減し、小型化を図ることができるとともに、複数のインジェクションポートへ効率良く冷媒を導入することができる電動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する電動圧縮機は、電動モータ及び前記電動モータの回転により吸入された冷媒を圧縮する圧縮機構を備えた吸入ハウジングと、前記圧縮機構内に形成された圧縮室で圧縮された冷媒が吐出される吐出室を備えた吐出ハウジングと、を有し、前記吸入ハウジングには、吸入された冷媒の吸入圧よりも高く、吐出された冷媒の吐出圧よりも低い中間圧の冷媒を、外部冷媒回路から圧縮途中の前記圧縮室に導入する複数のインジェクションポートが設けられた電動圧縮機であって、前記外部冷媒回路から前記中間圧の冷媒を導入する導入ポートと、前記導入ポートに連通する収容凹部と、前記収容凹部と前記複数のインジェクションポートとをそれぞれ連通する複数の供給通路と、を有する中間圧ハウジングを備え、前記中間圧ハウジングは、前記吸入ハウジングと前記吐出ハウジングとの間に配置されており、前記収容凹部には、弁機構が収容されており、前記弁機構は、前記導入ポートと前記複数の供給通路とを連通させる単一の弁孔を有するバルブプレートと、前記バルブプレートに対して前記複数の供給通路側に設けられ、前記弁孔を開閉するリード弁を有するリード弁形成プレートと、を備え、前記リード弁は、前記外部冷媒回路から前記中間圧の冷媒が導入されることにより開弁するとともに、前記複数の供給通路から前記導入ポートへ冷媒が流れることを防止するために閉弁する。
【0014】
これによれば、リード弁が開弁すると、外部冷媒回路から導入ポート、収容凹部、各供給通路及び各インジェクションポートを介して圧縮室へ中間圧の冷媒が導入される。また、リード弁が閉弁すると、圧縮室から各インジェクションポートへ流れた冷媒が、導入ポートへ流れることが阻止され、外部冷媒回路へ冷媒が逆流してしまうことが防止される。したがって、収容凹部に弁機構を収容するだけで、圧縮室から各インジェクションポートを経由した冷媒における外部冷媒回路への逆流を防止することができる。よって、各インジェクションポートに弁機構をそれぞれ設ける場合に比べると、部品点数を削減し、電動圧縮機の小型化を図ることができる。
【0015】
また、外部冷媒回路から導入された中間圧の冷媒は、リード弁が開弁すると、バルブプレートの単一の弁孔を介して複数の供給通路及び複数のインジェクションポートへ導入される。よって、複数のインジェクションポートに弁機構をそれぞれ設ける場合に比べると、インジェクションポート毎に設けられた弁機構が開閉するタイミングがそれぞれずれるといった問題が無く、複数のインジェクションポートへ効率良く冷媒を導入することができる。
【0016】
上記電動圧縮機において、前記複数の供給通路は、前記弁孔から互いに等しい距離に配置されていることが好ましい。
これによれば、例えば、複数の供給通路が弁孔から互いに異なる距離に配置されている場合に比べると、弁孔を通過した中間圧の冷媒を、各供給通路に対して均等に流すことができる。
【0017】
上記電動圧縮機において、前記吸入ハウジングには、前記インジェクションポートが二つ形成されており、前記中間圧ハウジングには、前記二つのインジェクションポートにそれぞれ連通する二つの前記供給通路が形成されており、前記弁孔は、前記二つの供給通路の間に配置されていることが好ましい。
【0018】
これによれば、例えば、弁孔が、二つの供給通路のどちらか一方に接近した位置に配置されている場合に比べると、弁孔を通過した中間圧の冷媒が、各供給通路に均等に流れ易くすることができる。
【0019】
上記電動圧縮機において、前記リード弁の先端部は前記弁孔を開閉し、前記リード弁の基端部は複数のスリットを有していることが好ましい。
これによれば、基端部に複数のスリットが無く、リード弁の全面がバルブプレートに接触している場合に比べると、リード弁をスムーズに開弁させることができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、部品点数を削減し、小型化を図ることができるとともに、複数のインジェクションポートへ効率良く冷媒を導入することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、電動圧縮機をスクロール型圧縮機に具体化した一実施形態を
図1〜
図6にしたがって説明する。本実施形態のスクロール型圧縮機は、車両に搭載されるとともに車両空調装置に用いられる。
【0023】
図1に示すように、スクロール型圧縮機10のハウジング11は、金属材料製(本実施形態ではアルミニウム製)である。ハウジング11は、一端(
図1の左端)に開口が形成された有底筒状の吸入ハウジング構成体12と、吸入ハウジング構成体12の一端に連結されたブロック状の中間圧ハウジング13と、中間圧ハウジング13の一端(
図1の左端)に連結されたブロック状の吐出ハウジング14とを有する。よって、中間圧ハウジング13は、吸入ハウジング構成体12と吐出ハウジング14との間に配置されている。吸入ハウジング構成体12には吸入ポート12hが形成されている。吐出ハウジング14には吐出ポート14hが形成されている。吸入ハウジング構成体12内には、冷媒を圧縮するための圧縮機構15と、圧縮機構15の駆動源である電動モータ16とが収容されている。
【0024】
吸入ハウジング構成体12の開口寄りには、軸支部材17が固定されている。軸支部材17の中央部には挿通孔17hが形成されている。そして、軸支部材17と吸入ハウジング構成体12とにより電動モータ16が収容されるモータ室12aが区画されている。吸入ハウジング構成体12内には、回転軸18が収容されている。回転軸18の一端側(吸入ハウジング構成体12の開口側)は、軸支部材17の挿通孔17hに挿通されるとともに、ベアリングB1を介して軸支部材17に回転可能に支持されている。回転軸18の他端側(吸入ハウジング構成体12の底壁側)は、ベアリングB2を介して吸入ハウジング構成体12に回転可能に支持されている。
【0025】
電動モータ16は、回転軸18と一体的に回転するロータ16a(回転子)と、ロータ16aを取り囲むように吸入ハウジング構成体12の内周面に固定されたステータ16b(固定子)とから構成されている。
【0026】
圧縮機構15は、固定スクロール20及び可動スクロール21により構成されている。固定スクロール20は、円板状である固定基板20aと、固定基板20aから立設される固定渦巻壁20bとから構成されている。可動スクロール21は、円板状である可動基板21aと、可動基板21aから固定基板20aに向かって立設される可動渦巻壁21bとから構成されている。本実施形態では、吸入ハウジング構成体12と固定基板20aとにより吸入ハウジングが構成されている。
【0027】
回転軸18の一端面における回転軸18の回転軸線Lに対して偏心した位置には、偏心軸18aが突設されている。偏心軸18aにはブッシュ18bが外嵌固定されている。ブッシュ18bには、可動基板21aがベアリングB3を介してブッシュ18bに対して相対回転可能に支持されている。
【0028】
固定渦巻壁20bと可動渦巻壁21bとは互いに噛み合わされている。固定渦巻壁20bの先端面は可動基板21aに接触しているとともに、可動渦巻壁21bの先端面は固定基板20aに接触している。そして、固定基板20a及び固定渦巻壁20bと、可動基板21a及び可動渦巻壁21bとによって圧縮室22が区画されている。軸支部材17には、モータ室12aと圧縮室22とを連通する吸入通路17aが形成されている。
【0029】
可動基板21aと軸支部材17との間には、自転阻止機構23が配設されている。自転阻止機構23は、軸支部材17における可動基板21a側の端面に複数(
図1では一つのみ図示)設けられた円環孔23aと、可動基板21aにおける軸支部材17側の端面の外周部に突設されるとともに各円環孔23aに遊嵌されたピン23bとから構成されている。
【0030】
電動モータ16によって回転軸18が回転駆動されると、可動スクロール21が偏心軸18aを介して固定スクロール20の軸心(回転軸18の回転軸線L)の周りで公転される。このとき、可動スクロール21は、自転阻止機構23によって自転が阻止されて、公転運動のみが許容される。この可動スクロール21の公転運動により、圧縮室22の容積が減少する。
【0031】
固定基板20aの中央には吐出口20eが形成されている。固定基板20aには、吐出弁20vが吐出口20eを覆うように取り付けられている。中間圧ハウジング13には、吐出口20eに連通する連通通路24が形成されている。吐出ハウジング14には、連通通路24に連通する吐出室25が形成されている。また、吐出ハウジング14には、吐出ポート14hに連通する油分離室26が形成されている。さらに、吐出ハウジング14には、吐出室25と油分離室26とを連通する通路27が形成されている。油分離室26には油分離筒28が設けられている。油分離筒28は、油分離室26に嵌合される大径部28aと、大径部28aより下側にあって大径部28aよりも小径の小径部28bとを備えている。
【0032】
図2に示すように、固定基板20aには、インジェクションポート30が二つ形成されている。各インジェクションポート30は円孔状であるとともに、可動スクロール21が公転運動したとしても、隣接する圧縮室22同士がインジェクションポート30を介して連通してしまうことが無いように、固定基板20aに形成される位置や大きさが設定されている。
【0033】
図3に示すように、中間圧ハウジング13における吐出ハウジング14側の端面には、平面視略矩形状の収容凹部31が形成されている。また、中間圧ハウジング13には、収容凹部31に中間圧の冷媒を導入するインジェクション配管32(外部冷媒回路50)が接続される導入ポート33が形成されている。収容凹部31の底壁は、リテーナ収容凹部311を有する。リテーナ収容凹部311は、収容凹部31の中央部から、収容凹部31における導入ポート33とは反対側の内壁に向けて延びている。
【0034】
また、収容凹部31の底壁は、リテーナ収容凹部311における導入ポート33とは反対側の両角部に連続するとともに、収容凹部31における導入ポート33とは反対側の両角部に向けて延びる一対の凹部312を有する。さらに、収容凹部31の底壁は、一対の凹部312同士を繋ぐとともにリテーナ収容凹部311よりも導入ポート33とは反対側に形成された連繋凹部313を有する。そして、各凹部312の底壁には、各インジェクションポート30に連通する供給通路34の開口がそれぞれ形成されている。よって、収容凹部31は各供給通路34に連通している。各供給通路34は円孔状であるとともに、各インジェクションポート30と同じ大きさに形成されている。収容凹部31の底壁の外周部には、一対の雌ねじ孔31hが形成されている。
【0035】
図1に示すように、収容凹部31には、弁機構40が収容されている。弁機構40は、バルブプレート41と、リード弁形成プレート42と、リテーナ形成プレート43とから構成されている。
【0036】
図4に示すように、バルブプレート41は平板状であるとともに金属材料製(本実施形態では鉄製)であり、その外形が収容凹部31の内壁に沿った形状になっている。バルブプレート41の中央部には、単一の弁孔41aが形成されている。弁孔41aは、平面視長四角形状である。さらに、バルブプレート41の外周部には、ボルト挿通孔41hが二つ形成されている。
【0037】
リード弁形成プレート42は薄平板状であるとともに金属材料製(本実施形態では鉄製)であり、その外形が収容凹部31の内壁に沿った形状になっている。リード弁形成プレート42は、外枠部42aと、外枠部42aから中央部に突設されたリード弁42vとから形成されている。リード弁42vは、外枠部42aから中央部に延びるとともに、平面視台形状になっている。リード弁42vの先端部は、弁孔41aを覆うことが可能な大きさに形成されるとともに弁孔41aを開閉する。リード弁42vの基端部には、複数のスリット42sが形成されている。また、外枠部42aには、ボルト挿通孔42hが二つ形成されている。
【0038】
リテーナ形成プレート43は、薄平板状であるとともにゴム材料製であり、その外形が収容凹部31の内壁に沿った形状になっている。リテーナ形成プレート43は、外枠部43aと、外枠部43aから中央部に向けて突設されてリード弁42vの開度を規制するリテーナ43bとから形成されている。リテーナ43bは、リテーナ収容凹部311に収容される。また、外枠部43aには、ボルト挿通孔43hが二つ形成されている。
【0039】
収容凹部31の底壁上には、リテーナ形成プレート43、リード弁形成プレート42、バルブプレート41が、この順序で配置されている。リテーナ形成プレート43、リード弁形成プレート42及びバルブプレート41が収容凹部31に収容された状態において、各ボルト挿通孔41h,42h,43hは重なり合っている。そして、リテーナ形成プレート43、リード弁形成プレート42及びバルブプレート41は、各ボルト挿通孔41h,42h,43hに挿通される各ボルト45が各雌ねじ孔31hにそれぞれ螺合されることによって、収容凹部31の底壁に締結されている。
【0040】
図1に示すように、導入ポート33は、収容凹部31の内壁において、回転軸18の回転軸線Lに対して直交する位置であって、バルブプレート41よりも吐出ハウジング14側に開口している。リード弁42vは、バルブプレート41に対して各供給通路34側に設けられている。
【0041】
収容凹部31の開口は、平板状の蓋部材44により閉鎖されている。蓋部材44は、ボルト46によって中間圧ハウジング13に締結されるとともに、吐出室25の内部に配置されている。蓋部材44と中間圧ハウジング13との間には、中間圧ハウジング13と吐出ハウジング14との間をシールするガスケット47の一部が介在されている。よって、収容凹部31の内部と吐出室25との間は、ガスケット47によってシールされている。
【0042】
収容凹部31の内部は、バルブプレート41によって、導入ポート33側の第1室31aと、各供給通路34側の第2室31bとに仕切られている。第1室31aは、バルブプレート41、収容凹部31の内壁、及び蓋部材44によって区画されている。第2室31bは、バルブプレート41、一対の凹部312、及び連繋凹部313によって区画されている。第1室31aと第2室31bとの間は、リテーナ形成プレート43の外枠部43a(外周部)によってシールされている。リテーナ形成プレート43の外枠部43aにおける第1室31aと第2室31bとの間のシールは、各ボルト45の締結によって確保されている。
【0043】
図5に示すように、各供給通路34は、弁孔41a(
図5において二点鎖線で示す)から互いに等しい距離に配置されている。よって、弁孔41aは、各供給通路34の間に配置されている。
【0044】
図6に示すように、外部冷媒回路50は、スクロール型圧縮機10、配管切換弁51、第1熱交換器52、第2熱交換器53、第1膨張弁54、第2膨張弁55及び気液分離器56から構成されている。
【0045】
配管切換弁51は、第1〜第4口51a,51b,51c,51dを有している。そして、配管切換弁51は、第1口51aと第2口51bとを連通させると同時に、第3口51cと第4口51dとを連通させる第1状態(
図3において実線で示す状態)と、第1口51aと第3口51cとを連通させると同時に、第2口51bと第4口51dとを連通させる第2状態(
図3において破線で示す状態)とに切換可能になっている。
【0046】
吐出ポート14hには吐出配管57の一端が接続されるとともに、吐出配管57の他端は配管切換弁51の第1口51aに接続されている。配管切換弁51の第2口51bには第1配管58の一端が接続されるとともに、第1配管58の他端は第1熱交換器52に接続されている。第1熱交換器52には第2配管59の一端が接続されるとともに、第2配管59の他端は第1膨張弁54に接続されている。
【0047】
第1膨張弁54には第3配管60の一端が接続されるとともに、第3配管60の他端は気液分離器56に接続されている。気液分離器56には第4配管61の一端が接続されるとともに、第4配管61の他端は第2膨張弁55に接続されている。第2膨張弁55には第5配管62の一端が接続されるとともに、第5配管62の他端は第2熱交換器53に接続されている。第2熱交換器53には第6配管63の一端が接続されるとともに、第6配管63の他端は配管切換弁51の第3口51cに接続されている。配管切換弁51の第4口51dには吸入配管64の一端が接続されるとともに、吸入配管64の他端は吸入ポート12hに接続されている。
【0048】
気液分離器56には、インジェクション配管32の一端が接続されるとともに、インジェクション配管32の他端側は、導入ポート33に接続されている。インジェクション配管32には逆止弁66が配設されている。
【0049】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ロータ16aが回転すると、回転軸18を介して可動スクロール21が公転運動する。すると、圧縮機構15において圧縮動作及び吐出動作が行われて、冷媒が外部冷媒回路50を循環する。そして、低圧の冷媒が吸入ポート12hを介してモータ室12aに吸入される。モータ室12aに吸入された冷媒は、可動スクロール21の旋回(吸入動作)によって、吸入通路17aを介して圧縮室22へ吸入される。圧縮室22内の冷媒は、可動スクロール21の旋回(吐出動作)によって、圧縮されながら吐出口20eから吐出弁20vを押し退けて、高圧の冷媒として連通通路24へ吐出され、連通通路24を介して吐出室25内に流出する。
【0050】
吐出室25内の冷媒は、通路27を介して油分離室26へ流出する。油分離室26へ流出した冷媒は、小径部28bの周囲を旋回した後、小径部28bの下部開口から油分離筒28内に流入する。油分離筒28内に流入した冷媒は、吐出ポート14hを介して吐出配管57に吐出される。
【0051】
小径部28bの周囲を旋回した冷媒からは潤滑油が分離される。冷媒から分離された潤滑油は、油分離室26の下部に落下する。油分離室26内の冷媒の一部及び油分離室26内で分離された潤滑油は、吐出ハウジング14及び中間圧ハウジング13に形成された図示しない供給通路を介して吸入ハウジング構成体12内に供給され、圧縮機構15や回転軸18等の摺動部分の潤滑に寄与する。
【0052】
冷房運転時には、配管切換弁51は、第1口51aと第2口51bとを連通させると同時に、第3口51cと第4口51dとを連通させる第1状態に切り換えられている。これにより、吐出配管57に吐出された冷媒は、第1口51a、第2口51b及び第1配管58を経由して第1熱交換器52に流れ込む。第1熱交換器52に流れ込んだ冷媒は、第1熱交換器52において外気と熱交換されて凝縮する。第1熱交換器52において凝縮された冷媒は、第2配管59を経由して第1膨張弁54に流れ込む。第1膨張弁54に流れ込んだ冷媒は、第1膨張弁54により減圧されて、吐出圧(高圧)と吸入圧(低圧)との間の中間の圧力(中間圧)となるとともに、第3配管60を経由して気液分離器56に流れ込む。気液分離器56に流れ込んだ冷媒は、気液分離器56によりガス冷媒と液冷媒とに分離される。
【0053】
気液分離器56により分離された液冷媒は、第4配管61を経由して第2膨張弁55に流れ込むとともに第2膨張弁55により減圧される。第2膨張弁55により減圧された液冷媒は、第5配管62を経由して第2熱交換器53に流れ込むとともに、第2熱交換器53により室内の空気と熱交換されて蒸発することで、室内の空気が冷却される。第2熱交換器53により蒸発された冷媒は、第6配管63、第3口51c、第4口51d及び吸入配管64を経由して吸入ポート12hを介してモータ室12aに還流される。
【0054】
気液分離器56により分離されたガス冷媒は、インジェクション配管32に流れ込む。ここで、室内の空気が冷却されるとき(冷房運転時)は、モータ室12aに吸入される冷媒の温度及び圧力が高い。このため、スクロール型圧縮機10側と気液分離器56側との圧力差によって逆止弁66がインジェクション配管32を閉鎖する。これにより、インジェクション配管32から導入ポート33へのガス冷媒の導入が規制されている。
【0055】
暖房運転時には、配管切換弁51は、第1口51aと第3口51cとを連通させると同時に、第2口51bと第4口51dとを連通させる第2状態に切り換えられている。これにより、吐出配管57に吐出された冷媒は、第1口51a、第3口51c及び第6配管63を介して第2熱交換器53に流れ込む。第2熱交換器53に流れ込んだ冷媒は、第2熱交換器53において室内の空気と熱交換されて凝縮することで、室内の空気が加熱される。第2熱交換器53において凝縮された冷媒は、第5配管62を経由して第2膨張弁55に流れ込む。第2膨張弁55に流れ込んだ冷媒は、第2膨張弁55により減圧されて、吸入圧よりも高く、吐出圧よりも低い中間圧となるとともに、第4配管61を経由して気液分離器56に流れ込む。気液分離器56に流れ込んだ冷媒は、気液分離器56によりガス冷媒と液冷媒とに分離される。
【0056】
気液分離器56により分離された液冷媒は、第3配管60を経由して第1膨張弁54に流れ込むとともに第1膨張弁54により減圧される。第1膨張弁54により減圧された液冷媒は、第2配管59を経由して第1熱交換器52に流れ込むとともに、第1熱交換器52において外気と熱交換されて蒸発する。第1熱交換器52により蒸発された冷媒は、第1配管58、第2口51b、第4口51d及び吸入配管64を経由して吸入ポート12hを介してモータ室12aに還流される。
【0057】
気液分離器56により分離されたガス冷媒は、インジェクション配管32に流れ込む。ここで、室内の空気が加熱されるとき(暖房運転時)は、モータ室12aに吸入される冷媒の温度及び圧力が低い。このため、スクロール型圧縮機10側と気液分離器56側との圧力差によって逆止弁66がインジェクション配管32を開放する。これにより、インジェクション配管32から導入ポート33へのガス冷媒の導入が許容されている。
【0058】
インジェクション配管32から導入ポート33へガス冷媒が導入されると、ガス冷媒が第1室31a及び弁孔41aに流れ込み、リード弁42vに中間圧のガス冷媒の圧力が作用することでリード弁42vが開弁する。このとき、リード弁42vは、リテーナ43bに当接して開度が規制される。これにより、インジェクション配管32から導入ポート33、第1室31a、弁孔41a、第2室31b、各供給通路34及び各インジェクションポート30を介して圧縮途中の圧縮室22へ中間圧のガス冷媒が導入される。よって、各インジェクションポート30に弁機構40をそれぞれ設ける場合に比べると、インジェクションポート30毎に設けられた弁機構40が開閉するタイミングがそれぞれずれるといった問題が無く、各インジェクションポート30へ効率良くガス冷媒が導入される。
【0059】
図5に示すように、各供給通路34は、弁孔41aから互いに等しい距離に配置されているため、例えば、各供給通路34が弁孔41aから互いに異なる距離に配置されている場合に比べると、弁孔41aを通過した中間圧のガス冷媒が、各供給通路34に対して均等に流れる。また、弁孔41aが、各供給通路34の間に配置されているため、例えば、弁孔41aが、各供給通路34のどちらか一方に接近した位置に配置されている場合に比べると、弁孔41aを通過した中間圧のガス冷媒が、各供給通路34に均等に流れ易くなる。
【0060】
そして、各インジェクションポート30を介して圧縮途中の圧縮室22に中間圧のガス冷媒が導入されることで、圧縮室22に導入されるガス冷媒の流量が増え、暖房運転時のような高負荷運転時におけるスクロール型圧縮機10の性能が向上する。
【0061】
また、各リード弁42vは、インジェクション配管32側からの中間圧のガス冷媒の圧力が作用しなくなると閉弁する。すると、圧縮室22から各インジェクションポート30、各供給通路34及び第2室31bへ流れたガス冷媒が、各弁孔41aを介して第1室31aへ流れることが阻止され、インジェクション配管32側へガス冷媒が逆流してしまうことが防止される。
【0062】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)収容凹部31には、弁機構40が収容されており、弁機構40は、導入ポート33と各供給通路34とを連通させる単一の弁孔41aを有するバルブプレート41と、バルブプレート41に対して各供給通路34側に設けられ、弁孔41aを開閉するリード弁42vを有するリード弁形成プレート42とを備える。そして、リード弁42vが開弁すると、インジェクション配管32から導入ポート33、第1室31a、弁孔41a、第2室31b、各供給通路34及び各インジェクションポート30を介して圧縮室22へ中間圧のガス冷媒が導入される。また、リード弁42vが閉弁すると、圧縮室22から各インジェクションポート30、各供給通路34及び第2室31bへ流れた冷媒が、弁孔41aを介して第1室31aへ流れることが阻止され、インジェクション配管32側へ冷媒が逆流してしまうことが防止される。したがって、収容凹部31に弁機構40を収容するだけで、圧縮室22から各インジェクションポート30を経由した冷媒における外部冷媒回路50への逆流を防止することができる。よって、各インジェクションポート30に弁機構40をそれぞれ設ける場合に比べると、部品点数を削減し、スクロール型圧縮機10の小型化を図ることができる。また、外部冷媒回路50から導入された中間圧のガス冷媒は、リード弁42vが開弁すると、バルブプレート41の単一の弁孔41aを介して各供給通路34及び各インジェクションポート30へ導入される。よって、各インジェクションポート30に弁機構40をそれぞれ設ける場合に比べると、インジェクションポート30毎に設けられた弁機構40が開閉するタイミングがそれぞれずれるといった問題が無く、各インジェクションポート30へ効率良くガス冷媒を導入することができる。
【0063】
(2)各供給通路34は、弁孔41aから互いに等しい距離に配置されている。これによれば、例えば、各供給通路34が弁孔41aから互いに異なる距離に配置されている場合に比べると、弁孔41aを通過した中間圧のガス冷媒を、各供給通路34に対して均等に流すことができる。
【0064】
(3)弁孔41aは、各供給通路34の間に配置されている。これによれば、例えば、弁孔41aが、各供給通路34のどちらか一方に接近した位置に配置されている場合に比べると、弁孔41aを通過した中間圧のガス冷媒が、各供給通路34に均等に流れ易くすることができる。
【0065】
(4)リード弁42vの先端部は弁孔41aを開閉し、リード弁42vの基端部は複数のスリット42sを有している。これによれば、基端部に複数のスリット42sが無く、リード弁42vの全面がバルブプレート41に接触している場合に比べると、リード弁42vをスムーズに開弁させることができる。
【0066】
(5)リード弁42vは、例えば、コイルスプリングの付勢力とインジェクション配管側からの中間圧のガス冷媒の圧力との関係から開弁位置と閉弁位置とを往復運動する構成であるスプール弁に比べると応答性が良い。よって、暖房運転時のような高負荷運転時におけるスクロール型圧縮機10の性能が良好なものとなる。
【0067】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、弁孔41aが、各供給通路34のどちらか一方に接近した位置に配置されていてもよい。
【0068】
○ 実施形態において、各供給通路34が弁孔41aから互いに異なる距離に配置されていてもよい。
○ 実施形態において、リード弁42vの基端部に複数のスリット42sが形成されてなくてもよい。
【0069】
○ 実施形態において、リード弁42vの形状は、特に限定されるものではない。要は、リード弁42vの先端部が、弁孔41aを開閉可能な形状に形成されていればよい。
○ 実施形態において、弁孔41aの形状は特に限定されるものではない。この場合、リード弁42vの先端部を、弁孔41aを開閉可能な形状に変更することが必要である。
【0070】
○ 実施形態において、固定基板20aに、インジェクションポート30が三つ以上形成されていてもよい。この場合、供給通路34も、収容凹部31の底壁に三つ以上形成される。
【0071】
○ 実施形態において、各インジェクションポート30及び各供給通路34の形状は、例えば、固定渦巻壁20bの渦巻き状に沿った楕円形状であってもよく、各インジェクションポート30及び各供給通路34の形状は特に限定されるものではない。
【0072】
○ 実施形態において、リード弁形成プレート42及びリテーナ形成プレート43が、各ボルト45によって、収容凹部31の底壁に締結されていなくてもよい。例えば、リード弁形成プレート42及びリテーナ形成プレート43が、バルブプレート41に対して締結部材(例えばボルト)によって締結されていてもよい。この場合、第1室31aと第2室31bとの間をシールするためのガスケットを別途設ける必要がある。
【0073】
○ 実施形態において、スクロール型圧縮機10は、車両空調装置に用いられなくてもよく、その他の空調装置に用いられてもよい。
○ 実施形態において、電動圧縮機はスクロール型に限らず、例えば、ベーン型やルーツ式の電動圧縮機であってもよい。
【0074】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記弁機構は、前記リード弁の開度を規制するリテーナを有するリテーナ形成プレートを備える。