(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の分散電源と負荷が配電線に接続された配電系統に対して設けられた電力推定装置による、前記配電系統の事故復旧方法であって、前記配電線は複数の区分開閉器によって複数の区間に区分されており、前記複数の分散電源は、低圧側に連系される低圧系分散電源と、高圧側に連系される高圧系分散電源とを含み、前記事故復旧方法は、
前記配電線上の前記区間ごとに計測された電力を入力するステップと、
前記入力された計測電力を、前記電力推定装置に設けた記憶装置に記憶すると共に、前記配電系統の最大許容容量を予め該記憶装置に記憶するステップと、
前記分散電源の出力がない時の、前記記憶装置に記憶された前記区間ごとの計測電力と気温との関係を座標軸にプロットして得た散布図を用いて、前記区間ごとの事故直前の、前記負荷の有効電力と前記分散電源の有効電力とを推定するステップであって、前記散布図における事故直前の気温に対応する計測電力を前記負荷の有効電力推定値とし、該負荷の有効電力推定値から、事故直前の前記計測電力を減じた値を、前記分散電源の有効電力推定値とするステップと、
前記推定するステップによって得られた前記負荷の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値のそれぞれの幅を計算するステップと、
事故後、前記配電系統の事故区間を特定するステップと、
前記配電系統の事故区間を特定した後、事故区間の前記負荷の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値とを用い、前記配電系統の最大許容容量を超えない範囲で、前記区分開閉器を操作して事故復旧するステップであって、前記事故区間の各区間の前記負荷の有効電力推定値から前記分散電源の有効電力推定値を減算し、その値に前記高圧系分散電源の有効電力の計測値を加算した値を用いて事故復旧するステップと、
を含み、
前記推定値の幅は前記事故復旧時に過負荷とならない余裕率に相当し、前記事故復旧するステップは、それぞれ前記推定値の幅を含んだ前記負荷の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値とを用いて事故復旧する、
ことを特徴とする配電系統の事故復旧方法。
【背景技術】
【0002】
近年、配電系統に、多くの分散電源(例えば、太陽光発電装置(PV:Photo Voltaic generation),風力発電装置,燃料電池など)が導入されている。配電系統の適切な運用、特に事故復旧時の運用のためには、区間ごとの分散電源(例.太陽光発電装置)の出力と負荷が消費する有効電力を正確に把握し、その状態を考慮して事故復旧する必要がある。本明細書では、分散電源としてその代表例である太陽光発電装置(PV)を用いる場合について専ら説明するが、太陽光発電装置(PV)のみに限定されるものではない。なお、“区間”は、配電系統に事故が起こった場合にその周辺から電力を融通して事故復旧を行いやすくするために配電系統の要所に設けられる区分開閉器で区切られている電力接続域を意味するものである。
【0003】
従来の配電系統では、太陽光発電装置(PV)が含まれていなかったため、
計測した電力=負荷の消費する電力
の関係がなりたっていた。
【0004】
そのため、従来の配電系統における事故復旧技術は、事故直前に計測した電力をまかなうだけの電力を融通するもの、つまり計測した電力をその周囲から融通して事故復旧させるものであった。
【0005】
しかし、分散電源(例.太陽光発電装置)が大量導入された配電系統では、このような技術が使えない。例えば、負荷の消費する電力が100kW、分散電源の出力量が100kWの場合、計測される電力は0Wになる。事故がおきると分散電源は系統から解列し出力が0kWになる。事故復旧に必要な電力は、100kWになるが、事故直前に計測した電力は0Wであるので、従来技術で融通しようとすると融通電力が不足することになる。
【0006】
分散電源を考慮して事故復旧を図る従来の技術を開示した文献の幾つかを以下に例示する。すなわち、
下記特許文献1には、区分開閉器と分散電源を監視制御する配電制御装置を設けておき、配電制御装置が区分開閉器を操作するだけでなく、分散電源のオン/オフを制御して、負荷の合計が配電線の許容容量を超えないように制御する事故復旧方法が開示されている。
【0007】
また下記特許文献2には、供給支障区間が発生しないように、区間内の分散電源の発電出力量を増加させて、各分散電源の総発電出力量と各需要設備の総負荷量とを一致させる事故復旧方法が開示されている。
【0008】
また下記特許文献3には、負荷と分散電源とが混在する電力系統の事故復旧操作を行う配電系統監視制御装置において、配電系統監視制御装置があらかじめ選択した負荷を切り離しておき、負荷を十分に軽くした状態で配電線遮断器を投入して事故復旧させる方法が開示されている。
【0009】
その一方、事故復旧に当たってはその前提として、事故直前における、実際に負荷が消費する電力と分散電源(例.太陽光発電装置)の出力量を正確に推定する技術が必要になる。そのため従来では、分散電源(例.太陽光発電装置)の出力量と負荷の消費する電力を推定する技術として、以下のような技術が知られている。すなわち、
下記特許文献4には、太陽光発電システムが導入される前など太陽光発電出力がないデータを用いて負荷が消費する電力と太陽光発電装置の出力量を推定する推定式を構築する技術が開示されている。
【0010】
また下記特許文献5には、計測した有効電力と無効電力から、太陽光発電装置の出力する有効電力と、負荷が消費する有効電力とを独立成分分析を用いて分離する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1ないし3は、いずれも、中央の制御装置(例.配電制御装置、配電系統監視制御装置)から分散電源(例.太陽光発電装置)、もしくは、負荷が消費する電力を直接制御するようにしている。しかし、実際の配電系統で分散電源(例.太陽光発電装置)や負荷が消費する電力を直接制御できることはまれであり、ほとんどの場合は分散電源の発電電力も負荷が消費する電力も共に制御できない。中央の制御装置が直接制御できるのは区分開閉器だけである。
【0013】
また上記特許文献4は、太陽光発電出力がないデータがないと推定に適用できないという問題がある。太陽光発電出力がないのは雨天時などがあるが、日本の場合は、雨天が他の天気の日と比較すると少ないので、精度の高い推定式が構築できないという課題がある。
【0014】
また上記特許文献5は、太陽光発電装置の出力する有効電力と、負荷が消費する有効電力を推定することはできるが、推定値の幅、つまり、どのぐらいその推定値がはずれそうなのかを提示することができないため、事故復旧の際に必要な電力を見誤るという課題がある。
【0015】
実際の負荷の推定値が誤差なく推定できれば問題ないが、現状の技術レベルでは誤差無し推定は不可能である。よって、推定した値にある程度の余裕分をみて事故復旧時の融通電力とする必要がある。例えば、復旧に必要な負荷の推定値を90kWと推定しても、余裕分をみて、100kWや110kWの電力を融通する必要がある。しかしながら、この方法では推定した負荷と実際の負荷との間にどの程度の誤差があるのかが事前に分からないため、事故復旧の際の余裕分をどのくらい見積もればよいか正確に分からないという問題がある。
【0016】
そこで本発明の課題の一つは、区間ごとの分散電源の出力と負荷が消費する有効電力を推定装置が正確に把握し、推定装置がその状態を考慮して区分開閉器だけを制御して事故復旧を行えるようにすることである。
【0017】
また本発明の課題のもう一つは、分散電源である太陽光発電出力がある日でもない日でも、区間ごとに計測したデータを、太陽光発電装置の出力と負荷が消費する有効電力を推定するための回帰式、もしくは独立成分分析と回帰式を用いて、配電系統の実負荷及びその幅を正確に推定して事故復旧時の電力融通に利用可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、複数の分散電源と負荷が配電線に接続された配電系統に対して設けられた電力推定装置による、前記配電系統の事故復旧方法であって、前記配電線は複数の区分開閉器によって複数の区間に区分されており、
前記複数の分散電源は、低圧側に連系される低圧系分散電源と、高圧側に連系される高圧系分散電源とを含み、前記事故復旧方法は、
前記配電線上の前記区間ごとに計測された電力を入力するステップと、
前記入力された計測電力を、前記電力推定装置に設けた記憶装置に記憶すると共に、前記配電系統の最大許容容量を予め該記憶装置に記憶するステップと、
前記分散電源の出力がない時の、前記記憶装置に記憶された
前記区間ごとの計測電力
と気温との関係を座標軸にプロットして得た散布図を用いて、前記区間ごとの事故直前の
、前記負荷の有効電力と
前記分散電源の有効電力
とを推定するステップ
であって、前記散布図における事故直前の気温に対応する計測電力を前記負荷の有効電力推定値とし、該負荷の有効電力推定値から、事故直前の前記計測電力を減じた値を、前記分散電源の有効電力推定値とするステップと、
前記推定するステップによって得られた
前記負荷の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値の
それぞれの幅を計算するステップと、
事故後、前記配電系統の事故区間を特定するステップと、
前記配電系統の事故区間を特定した後、事故区間の前記負荷の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値
とを用い、前記配電系統の最大許容容量を超えない範囲で、前記区分開閉器を操作して事故復旧するステップ
であって、前記事故区間の各区間の前記負荷の有効電力推定値から前記分散電源の有効電力推定値を減算し、その値に前記高圧系分散電源の有効電力の計測値を加算した値を用いて事故復旧するステップと、
を含み、
前記推定値の幅は前記事故復旧時に過負荷とならない余裕率に相当し、前記事故復旧するステップは、
それぞれ前記推定値の幅を含んだ前記負荷の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値
とを用いて事故復旧する、ことを特徴とする。
【0019】
前記請求項1記載の発明において
、前記推定値の幅を計算するステップは、前記散布図上の計測負荷の分布幅を用いて前記推定値の幅を設定する、ことを特徴とする(請求項2記載の発明)。
【0020】
上記課題を解決するために請求項3に記載の発明は、複数の分散電源と負荷が配電線に接続された配電系統に対して設けられた電力推定装置による、前記配電系統の事故復旧方法であって、前記配電線は複数の区分開閉器によって複数の区間に区分されており、前記複数の分散電源は、低圧側に連系される低圧系分散電源と、高圧側に連系される高圧系分散電源とを含み、前記事故復旧方法は、
前記配電線上の前記区間ごとに計測された電力を入力するステップと、
前記入力された計測電力を、前記電力推定装置に設けた記憶装置に記憶すると共に、前記配電系統の最大許容容量を予め該記憶装置に記憶するステップと、
前記分散電源の出力がない時の、前記記憶装置に記憶された前記区間ごとの計測電力に含まれる有効電力の計測値と無効電力の計測値との略直線的な関係を表す回帰式を用いて、前記区間ごとの事故直前の、前記負荷の有効電力と前記分散電源の有効電力とを推定するステップであって、前記回帰式と事故直前の無効電力の計測値とから前記負荷の有効電力推定値を求め、該負荷の有効電力推定値から、事故直前の有効電力の計測値を減じた値を、前記分散電源の有効電力推定値とするステップと、
前記推定するステップによって得られた前記負荷の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値のそれぞれの幅を計算するステップと、
事故後、前記配電系統の事故区間を特定するステップと、
前記配電系統の事故区間を特定した後、事故区間の前記負荷の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値とを用い、前記配電系統の最大許容容量を超えない範囲で、前記区分開閉器を操作して事故復旧するステップであって、前記事故区間の各区間の前記負荷の有効電力推定値から前記分散電源の有効電力推定値を減算し、その値に前記高圧系分散電源の有効電力の計測値を加算した値を用いて事故復旧するステップと、
を含み、
前記推定値の幅は前記事故復旧時に過負荷とならない余裕率に相当し、前記事故復旧するステップは、それぞれ前記推定値の幅を含んだ前記負荷の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値とを用いて事故復旧する、ことを特徴とする。
また前記請求項
3に記載の発明において
、前記推定値の幅を計算するステップは、前記回帰式で求めた前記負荷の有効電力推定値と有効電力計測値との差の分散を用いて前記推定値の幅を設定する、ことを特徴とする(請求項
4記載の発明)。
【0021】
上記課題を解決するために請求項5に記載の発明は、複数の分散電源と負荷が配電線に接続された配電系統に対して設けられた電力推定装置による、前記配電系統の事故復旧方法であって、前記配電線は複数の区分開閉器によって複数の区間に区分されており、前記複数の分散電源は、低圧側に連系される低圧系分散電源と、高圧側に連系される高圧系分散電源とを含み、前記事故復旧方法は、
前記配電線上の前記区間ごとに計測された電力を入力するステップと、
前記入力された計測電力を、前記電力推定装置に設けた記憶装置に記憶すると共に、前記配電系統の最大許容容量を予め該記憶装置に記憶するステップと、
前記記憶装置に記憶された前記区間ごとの計測電力に含まれる有効電力の計測値と無効電力の計測値とから、独立成分分析及び回帰式を用いて、前記区間ごとの事故直前の、前記負荷の有効電力と前記分散電源の有効電力とを推定するステップであって、前記有効電力の計測値と前記無効電力の計測値とから、前記独立成分分析を用いて前記負荷の有効電力と前記分散電源の有効電力とを分離し、該分離して得られた前記負荷の有効電力を前記負荷の第1の有効電力推定値とし、該負荷の第1の有効電力推定値と前記無効電力の計測値との略直線的な関係を表す前記回帰式と、事故直前の無効電力の計測値とから、前記負荷の第2の有効電力推定値を求め、該負荷の第2の有効電力推定値から、事故直前の有効電力の計測値を減じた値を、前記分散電源の有効電力推定値とするステップと、
前記推定するステップによって得られた前記負荷の第2の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値のそれぞれの幅を計算するステップと、
事故後、前記配電系統の事故区間を特定するステップと、
前記配電系統の事故区間を特定した後、事故区間の前記負荷の第2の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値とを用い、前記配電系統の最大許容容量を超えない範囲で、前記区分開閉器を操作して事故復旧するステップであって、前記事故区間の各区間の前記負荷の第2の有効電力推定値から前記分散電源の有効電力推定値を減算し、その値に前記高圧系分散電源の有効電力の計測値を加算した値を用いて事故復旧するステップと、
を含み、
前記推定値の幅は前記事故復旧時に過負荷とならない余裕率に相当し、前記事故復旧するステップは、それぞれ前記推定値の幅を含んだ前記負荷の第2の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値とを用いて事故復旧する、ことを特徴とする。
また請求項
5に記載の発明において
、前記推定値の幅を計算するステップは、前記回帰式で求めた前記負荷の
第2の有効電力推定値と前記独立成分分析で求めた前記負荷の
第1の有効電力推定値との差の分散を用いて前記推定値の幅を設定する、ことを特徴とする(請求項
6記載の発明)。
【0024】
上記課題を解決するために請求項7に記載の発明は、複数の分散電源と負荷が配電線に接続された配電系統に対して設けられた電力推定装置であって、前記配電線は複数の区分開閉器によって複数の区間に区分されており、
前記複数の分散電源は、低圧側に連系される低圧系分散電源と、高圧側に連系される高圧系分散電源とを含み、前記電力推定装置は、
前記配電線上の前記区間ごとに計測された電力を入力する入力手段と、
前記入力された計測電力を記憶すると共に、前記配電系統の最大許容容量を予め記憶する記憶手段と、
前記分散電源の出力がない時の、前記記憶手段に記憶された
前記区間ごとの計測電力
と気温との関係を座標軸にプロットして得た散布図を用いて、前記区間ごとの事故直前の
、前記負荷の有効電力と
前記分散電源の有効電力
とを推定する推定手段
であって、前記散布図における事故直前の気温に対応する計測電力を前記負荷の有効電力推定値とし、該負荷の有効電力推定値から、事故直前の前記計測電力を減じた値を、前記分散電源の有効電力推定値とする推定手段と、
前記推定手段によって得られた
前記負荷の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値の
それぞれの幅を計算する幅計算手段と、
事故後、前記配電系統の事故区間を特定する事故区間判定手段と、
前記事故区間判定手段によって特定された事故区間の前記負荷の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値
とを用い、前記配電系統の最大許容容量を超えない範囲で、前記区分開閉器を操作して事故復旧する事故復旧手段
であって、前記事故区間の各区間の前記負荷の有効電力推定値から前記分散電源の有効電力推定値を減算し、その値に前記高圧系分散電源の有効電力の計測値を加算した値を用いて事故復旧する事故復旧手段と、
を備え、
前記幅計算手段で得られる前記推定値の幅は前記事故復旧時に過負荷とならない余裕率に相当し、前記事故復旧手段は、
それぞれ前記推定値の幅を含んだ前記負荷の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値
とを用いて事故復旧する、ことを特徴とする。
上記課題を解決するために請求項8に記載の発明は、複数の分散電源と負荷が配電線に接続された配電系統に対して設けられた電力推定装置であって、前記配電線は複数の区分開閉器によって複数の区間に区分されており、前記複数の分散電源は、低圧側に連系される低圧系分散電源と、高圧側に連系される高圧系分散電源とを含み、前記電力推定装置は、
前記配電線上の前記区間ごとに計測された電力を入力する入力手段と、
前記入力された計測電力を記憶すると共に、前記配電系統の最大許容容量を予め記憶する記憶手段と、
前記分散電源の出力がない時の、前記記憶装置に記憶された前記区間ごとの計測電力に含まれる有効電力の計測値と無効電力の計測値との略直線的な関係を表す回帰式を用いて、前記区間ごとの事故直前の、前記負荷の有効電力と前記分散電源の有効電力とを推定する推定手段であって、前記回帰式と事故直前の無効電力の計測値とから前記負荷の有効電力推定値を求め、該負荷の有効電力推定値から、事故直前の有効電力の計測値を減じた値を、前記分散電源の有効電力推定値とする推定手段と、
前記推定手段によって得られた前記負荷の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値のそれぞれの幅を計算する幅計算手段と、
事故後、前記配電系統の事故区間を特定する事故区間判定手段と、
前記事故区間判定手段によって特定された事故区間の前記負荷の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値とを用い、前記配電系統の最大許容容量を超えない範囲で、前記区分開閉器を操作して事故復旧する事故復旧手段であって、前記事故区間の各区間の前記負荷の有効電力推定値から前記分散電源の有効電力推定値を減算し、その値に前記高圧系分散電源の有効電力の計測値を加算した値を用いて事故復旧する事故復旧手段と、
を備え、
前記幅計算手段で得られる前記推定値の幅は前記事故復旧時に過負荷とならない余裕率に相当し、前記事故復旧手段は、それぞれ前記推定値の幅を含んだ前記負荷の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値とを用いて事故復旧する、ことを特徴とする。
上記課題を解決するために請求項9に記載の発明は、複数の分散電源と負荷が配電線に接続された配電系統に対して設けられた電力推定装置であって、前記配電線は複数の区分開閉器によって複数の区間に区分されており、前記複数の分散電源は、低圧側に連系される低圧系分散電源と、高圧側に連系される高圧系分散電源とを含み、前記電力推定装置は、
前記配電線上の前記区間ごとに計測された電力を入力する入力手段と、
前記入力された計測電力を記憶すると共に、前記配電系統の最大許容容量を予め記憶する記憶手段と、
前記記憶装置に記憶された前記区間ごとの計測電力に含まれる有効電力の計測値と無効電力の計測値とから、独立成分分析及び回帰式を用いて、前記区間ごとの事故直前の、前記負荷の有効電力と前記分散電源の有効電力とを推定する推定手段であって、前記有効電力の計測値と前記無効電力の計測値とから、前記独立成分分析を用いて前記負荷の有効電力と前記分散電源の有効電力とを分離し、該分離して得られた前記負荷の有効電力を前記負荷の第1の有効電力推定値とし、該負荷の第1の有効電力推定値と前記無効電力の計測値との略直線的な関係を表す前記回帰式と、事故直前の無効電力の計測値とから、前記負荷の第2の有効電力推定値を求め、該負荷の第2の有効電力推定値から、事故直前の有効電力の計測値を減じた値を、前記分散電源の有効電力推定値とする推定手段と、
前記推定手段によって得られた前記負荷の第2の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値のそれぞれの幅を計算する幅計算手段と、
事故後、前記配電系統の事故区間を特定する事故区間判定手段と、
前記事故区間判定手段によって特定された事故区間の前記負荷の第2の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値とを用い、前記配電系統の最大許容容量を超えない範囲で、前記区分開閉器を操作して事故復旧する事故復旧手段であって、前記事故区間の各区間の前記負荷の第2の有効電力推定値から前記分散電源の有効電力推定値を減算し、その値に前記高圧系分散電源の有効電力の計測値を加算した値を用いて事故復旧する事故復旧手段と、
を備え、
前記幅計算手段で得られる前記推定値の幅は前記事故復旧時に過負荷とならない余裕率に相当し、前記事故復旧手段は、それぞれ前記推定値の幅を含んだ前記負荷の第2の有効電力推定値と前記分散電源の有効電力推定値とを用いて事故復旧する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、分散電源が連系された電力系統において、配電系統に接続された分散電源や負荷の全ての出力を正確に計測しなくても、事故時に融通すべき負荷が消費する電力を推定でき、過負荷を起こすことなく事故復旧することが可能となる。また、負荷や分散電源を個別に制御することなく区分開閉器を制御するだけで事故復旧を図ることが可能である。
【0032】
また本発明によれば、太陽光発電装置に代表される分散電源の出力量を個別に計測する計測装置を設置することなく、配電系統全体の太陽光出力の有効電力と、負荷が消費する有効電力とを分離して推定することができ、また、その推定値の幅を求めることができる。一方、上記特許文献4及び5に示された技術は、いずれも推定値の幅を求めることができないため、推定値に基づいて事故復旧する場合に、その推定誤差をどの程度みつもればよいか判断できないが、本発明によれば、推定値の推定誤差を定量的に求められるので適切な事故復旧を行うことが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る配電系統の構成例を示す図である。
図1を用いて、本発明の実施形態に係る配電系統について説明する。
【0035】
図1に示すように、変電所1から下流に位置するA系統及びB系統に分岐された配電線に、負荷や分散電源の代表例である太陽光発電装置(PV:Photo Voltaic generation )がつながる。そして配電線には、1もしくは複数の電力計(図示例では、電力計P1,・・・,P4)が設けられ、電力計で計測した有効電力と無効電力は定期的に電力推定装置10に伝送される。なお電力計P1,・・・,P4では、上記した有効電力、無効電力のほか、電流、力率、開閉器の開閉状態等についても計測され、電力推定装置10に伝送される。
【0036】
図1について更に詳しく説明すると、変電所1に接続される配電線のA系統(フィーダともいう)には、一例として2棟の一般家庭と1つ工場が接続され、配電線のB系統(フィーダともいう)には、一例として3棟の一般家庭が接続されている。そして一般家庭の屋根等には、太陽光発電パネルが設置され、該太陽光発電パネルにより発電された電力はインバータを介して交流に変換されるとともに、家庭内の負荷で電力を消費したり、太陽光発電電力が余れば系統に電力を供給することが出来るよう構成している。なお、変電所1には発電所(不図示)から送電線を介して送電が行われている。
【0037】
図1に示す配電系統の構成例は、単なる例示であり、実際は、これより多くの一般家庭、工場、メガソーラ等が配電線に接続されることになる。また図示例の工場は、太陽光発電装置(発電パネル)を有さずに、工場内のモータ、コンデンサ(リアクタンス)、及び、一般的な電力負荷、等から成るエネルギーを消費する負荷が接続され、配電線から供給される電力を消費するものとして記述されている。なお、無効電力補償装置200は、無効電力の調整を行うもので、それ自体の機能は当業者に知られているのでその説明を省略する。
【0038】
また図示例の配電線には、開閉器S1の変電所1側に電力計P1が設けられ、電力計P1より下流の配電線に接続される
全ての負荷
及び太陽光発電装置に係る電力値が、また開閉器S2の変電所1側に電力計P2が設けられ、電力計P2より下流の配電線に接続される
全ての負荷
及び太陽光発電装置に係る電力値が、また開閉器S3の変電所1側に電力計P3が設けられ、電力計P3より下流の配電線に接続される
全ての負荷
及び太陽光発電装置に係る電力値が、さらに開閉器S4の変電所1側に電力計P4が設けられ、電力計P4より下流の配電線に接続される
全ての負荷
及び太陽光発電装置に係る電力値が、それぞれ計測され、電力計P1,電力計P2、および、電力計P3,電力計P4でそれぞれ計測した有効電力と無効電力の値が定期的に電力推定装置(その1)10に伝送される。なお、
図1では、S1〜S4を単に“開閉器”と表記しているが、正式には“区分開閉器”である。しかし図示上で図が煩雑になるため敢えて“開閉器”と表記することにしたものである。また、S5,S6は、系統を跨いで電力を融通するときに使用されるものであるので、“開閉器”として表記するものである。
【0039】
このようにすることで各(区分)開閉器によって区切られた配電線の各区間ごとに有効電力と無効電力の値を計測することが可能となる。また配電線の各区間ごとに有効電力と無効電力の値を計測することによって、後述するように、散布図、回帰式、若しくは、回帰式と独立成分分析を用いて、区間ごとの実負荷の有効電力値や太陽光発電装置の有効電力値を推定することが可能となる。
【0040】
図2は、本発明の実施形態に係る電力推定装置(その1)の構成を示す図である。
図2に示す本発明の電力推定装置(その1)10は、コンピュータ等の情報を処理する汎用の装置で構成されており、当該装置には、特に図示しないが、CPU(中央処理ユニット)、記憶装置(ハードディスク)、メモリ、通信機能部、入出力インタフェース、入出力装置など当業者によく知られたハードウェア構成を備えている。そして上記記憶装置には予め所定のアプリケーションプログラムが記憶されており、上記CPUがこのアプリケーションプログラムを読出して実行することにより下記に記述する各種処理部11〜17の機能を実現する。
【0041】
上記電力推定装置(その1)10が備えるハードウェア構成の下に、
入力処理部11は、配電系統に備えられた電力計P1,電力計P2、および、電力計P3,電力計P4で計測された有効電力、無効電力、電流、力率、開閉器の開閉状態、などの各値(データ)を取り込む。図示していないが、外部(例えば、気象庁等)により提供される、気象情報・暦情報など計測器以外のデータも取り込めるようにしており、また、必要に応じて、担当者(図示せず)が入力処理部11から上記情報を直接入力することもできる。
【0042】
データ蓄積処理部12は、入力処理部11で取り込んだ情報を蓄積するとともに、後述する電力推定装置(その1)10内の各機能部13〜17で処理した情報を適宜蓄積する。
出力処理部13は、データ蓄積処理部12に蓄積された情報を画面に表示したり、紙等に印刷して出力する。また出力処理部13は、電力推定装置(その1)10内の各機能部11〜17で処理し蓄積した情報をネットワーク等を介して外部の装置(図示せず)に出力することができる。
【0043】
上記した入力処理部11及び出力処理部13は、上述した情報処理装置の入出力装置により実現される。またデータ蓄積処理部12は上述した情報処理装置の記憶装置(ハードディスク)、メモリ等により実現される。バス18は上記処理部及び後記する処理部を接続するものである。
【0044】
一方、電力推定装置(その1)10の事故区間判定部14は、事故が起きた区間を判定する処理を行う。本処理は、従来から我が国で実施されている通常の方法を用いる。すなわち我が国では、上流側(変電所1側)の開閉器を順次操作することで判定する方法が一般的である。つまり、事故発生時には事故が発生した区間を含むフィーダのすべての開閉器がいったん開く。その後、上流側の開閉器を閉じて過電流が流れなければ、さらに1つ下流の開閉器を閉じる。この操作を自動で継続して過電流が発生するまで行い、もし過電流が発生したならば当該開閉器より下流の区間を事故区間と判定するものである。
【0045】
推定処理部15は、分散電源(例.太陽光発電装置)の出力と、負荷が消費する電力を区間ごとに推定する処理を行う。推定方法としては、様々な方法があるが、本処理部では、以下の方法を用いる。もちろん本発明は、本例のみに限定されるものではない。すなわち、
図3に示されるように、
雨天時における、計測された
電力(計測負荷)
と気温との関係を示す散布図(その1)を作成する。
図3の散布図(その1)に用いられるデータとしては、例えば過去1か月の雨天時のデータが使用され、これを計測負荷及び温度から成る座標軸上にプロットすることで得られる。散布図は、例えば一日のうちの1時〜24時まで1時間ごと、且つ平日及び休日ごとに1部ずつ作成する。上記では1時間ごとの刻みで作成する例を示すが、30分ごとや15分ごとの刻みで作成してもよい。なお
図3ではプロットの数を割愛して示している。
【0046】
ここで
図3の散布図(その1)を参照し、該当時の気温と雨天時の当該散布図が示すプロットで交わるA点を負荷の消費電力として推定する。
図3のB点に示す値は、事故発生当日の事故直前に上記した電力計で計測された計測値である。したがって、事故発生直前の分散電源(例.太陽光発電装置)の出力推定値は、A-Bとなる。この場合、気温が一致するA点がなければ、当該気温に一番近い雨天時の散布図上のデータを代用すればよい。そして上記計測値が、
図1の電力計P1で計測されていれば、電力計P1以下の負荷が消費する電力と分散電源(例.太陽光発電装置)の出力による推定値となる。電力計P2で計測されていれば同様に、電力計P2以下の負荷が消費する電力と分散電源(例.太陽光発電装置)の出力による推定値となる。電力計の設置数が少ない場合には、区分ごとの負荷が消費する電力は正確には分からない。例えば、電力計P2がなければ電力計P1と電力計P2の間の区間の負荷が消費する電力は分からない。その場合は、各区間の契約容量から按分して推定することになる。
【0047】
次に、
図4を用いて推定幅処理部16の処理について説明する。
図4は、
図3とは異なる散布図(その2)を示すものである。
図3に示すような雨天時の散布図を多くのデータから作成すると、
図4に示すように同じ気温であっても計測負荷に幅(両矢印線参照)が生じる。そこで、事故直前の気温において、
図4に示すA点の幅をもとめ、その半分の値と、事前にデータベース(図示はしていないが、
図2のデータ蓄積処理部12内に作成される)上に設定される経験則で得られた任意の余裕率との加算により、以下に示される推定幅(余裕率)が算出される。すなわち、
推定値の幅(余裕率)= 散布図上のA点が示す幅 / 2 + 任意の余裕率・・・式1
次いで、
図2に示した事故復旧処理部17の処理について、
図5A〜
図8を用いて説明する。なお、
図5A〜
図8に示す例では、任意の数の区間(上記した開閉器(図示例では矩形表示)によって区切られた区間)を設け、さらに、説明を簡略化するためにどの区間も、負荷が500kW、分散電源として太陽光発電装置(PV)が200kW出力しているものとする。つまり、各区間の見かけ上の負荷は300kWとなるものとする。そして
図5A〜
図8において、白抜き矩形は開閉器が“開”の状態を示し、また黒矩形は開閉器が“閉”の状態を示すものとしている。
【0048】
図5Aの例では、各フィーダ(
図1に示すA系統,B系統)に6区間が設けられる例を示しているので、変電所1から各フィーダにそれぞれ1800kWずつ送り出している。なお、変電所1から各フィーダに供給できる最大許容容量は4000kWとする。そして
図5Bに示すような事故発生直後には、PV出力が無くなるため、もしも
図6に示すように、正常なフィーダ(図示例ではB系統)から事故区間(吹き出し線表示)以外すべてを復旧させようとすると、合計の負荷が4300kWとなり、フィーダの最大許容容量4000kWを超えてしまうことになる。
【0049】
そこで本発明の実施形態に係る事故復旧法に基づく事故復旧では、4000kWを超えない範囲で復旧させるので、
図7に示すとおり、A系統の事故区間及びその1つ下流の区間を除いた、合計3800kW分について復旧させるようにしている。なお、各区間の負荷については、上記した式1に示した「任意の余裕率」を含んだ、「負荷の消費電力推定値+推定値の幅(余裕率)」に基づいて推定した値を使用している。
【0050】
また本発明の実施形態では、上記に示す事故復旧法に加えて、
図1に示す配電系統が
図8に示されるような高圧連系の分散電源と、低圧連系の太陽光発電装置(PV)とで構成されている場合には、以下に示す事故復旧法に基づいて事故復旧を行う。すなわち、
分散電源が低圧に連系している太陽光発電装置(PV)の場合は、復旧後短時間で再連系されることが知られている。つまり短期的な過負荷状態では配電線は何らの問題も生じないので、低圧系の太陽光発電装置(PV)分については解列しないとみなしてよい。もし、分散電源がすべて低圧系の太陽光発電装置(PV)であるならば、停電区間の各区間の200kW分を負荷から除外できるので、各区間が300kWとみなして事故復旧処理を行ってもよい。
【0051】
一方、高圧系に連系される分散電源が有る場合には、高圧系に連系される分散電源は、自動的に再連系することはなく、事故復旧後必ず手動で連系させるようになっている。よって高圧系に連系している分散電源は、事故時に解列されたとみなして事故復旧の処理を行うようにする。なお、高圧系に連系している分散電源は、通常、負荷が消費する電力および分散電源の出力が不図示の電力計で計測されているので、その分散電源の出力分については容易に把握できる。ここで高圧系と低圧系とは、通常、変電所1より給電される電圧が柱上変圧器を介さずに受電できるようにされている場合が高圧系とされ、一方、柱上変圧器を介して受電できるようにされている場合が低圧系とされている。
【0052】
さらに具体例について
図8を用いて説明する。図示例では、事故区間を含むA系統に高圧連系の分散電源が3区間あり、低圧連系の太陽光発電装置(PV)が2区間あるとする。高圧連系の分散電源は自動で再連系しないため、該当区間それぞれの融通すべき負荷は500kWである。低圧連系のPVは比較的短期間に自動的に連系するため、融通すべき負荷はPVの出力分減って300kWとなる。よって、融通すべき負荷電力は、事故区間を除く全負荷の1800kW+600kW+1500kW=3900kWとなり、この分を正常なフィーダ(図示例ではB系統)を通じて復旧させることができる。つまり、この場合には、
図6や
図7に示す事故復旧処理では不可能であった、事故区間(吹き出し線表示)以外のすべての区間を復旧させることができる。
【0053】
図9は、
図8に示した高圧連系の分散電源と、低圧連系の太陽光発電装置(PV)とで配電線が構成される場合の具体的な配電系統の構成例を示す図である。
図9では、各フィーダ、すなわちA系統,B系統のそれぞれにおいて、低圧連系の太陽光発電装置(PV)と、高圧連系の分散電源(例.メガソーラ)とが配電線に接続されるように構成されている。
【0054】
以上における事故復旧動作を
図10の処理フローを用いて説明する。
図10は、本発明の実施形態に係る電力推定装置(その1)の動作を説明する処理フロー図である。
図10においてはステップを“S”と略記する。また
図1、
図2及び
図9を適宜参照するものとする。
【0055】
図10において、まず、入力されたデータの入力処理を
図2に示す入力処理部11を用いて行うとともに入力処理したデータをデータ蓄積処理部12に蓄積する(ステップS1)。次いで、ステップS2では、事故区間判定部14により事故区間の判定を行う。
【0056】
ステップS3では、推定処理部15を用いて、事故直前における分散電源(例.太陽光発電装置)の出力と、負荷が消費する電力を推定する。本ステップでは、上述した散布図を用いた推定のほか、後述する回帰式あるいは、回帰式と独立成分分析とを用いた推定を行う。
【0057】
次にステップS4では、推定幅処理部16を用いて上記で推定した分散電源(例.太陽光発電装置)の出力と負荷が消費する電力についての推定値の幅を算出する。
そのうえでステップS5において、事故復旧処理を行う。事故復旧処理にあたっては、
図7および
図8で説明した事故復旧処理法が用いられる。
【0058】
最後にステップS6において、
図2に示す出力処理部13を用いてデータの出力処理を行う。このようにして本発明の実施形態における一連の事故復旧処理が実行される。
以上説明したように、各区間に融通すべき負荷は、推定した負荷の消費電力から、推定した分散型電源の出力(高圧系および低圧系を含む)を減算し、その値に高圧系分散型電源の出力(計測値)を加算したものとして計算することができる。分散型電源の出力は高圧系分散型電源を含んだ値として推定されるが、高圧系分散型電源はすぐには復旧しないため、その出力値(測定値)をないものとして、自動で事故復旧する区間を見積もることが必要である。
【0059】
図11は、本発明の実施形態に係る電力推定装置(その2)の構成を示す図である。本電力推定装置(その2)20は、
図2に示した本発明の実施形態に係る電力推定装置(その1)10の構成と同様、コンピュータ等の情報を処理する汎用の装置で構成されており、当該装置には、特に図示しないが、CPU(中央処理ユニット)、記憶装置(ハードディスク)、メモリ、通信機能部、入出力インタフェース、入出力装置など当業者によく知られたハードウェア構成を備えている。そして上記記憶装置には予め所定のアプリケーションプログラムが記憶されており、上記CPUがこのアプリケーションプログラムを読出して実行することにより下記に記述する各種処理部21〜27の機能を実現する。なお、本発明の実施形態に係る配電系統の構成は
図1に示した電力推定装置(その1)10が電力推定装置(その2)20に置き換わるのを除き、同様であるので、機能ブロック名が重複するものはその説明を省略するものとする。また上記各種処理部21〜27を接続するバスが設けられている。
【0060】
本電力推定装置(その2)20では、説明を簡単にするため1か所の電力計、例えば電力計P1、によって計測された値に基づく推定について説明する。この手法では計測地点から下流の負荷が消費する有効電力を推定するので、開閉器ごとに計測すれば、区間ごとの負荷が消費する有効電力を推定することができる。
【0061】
電力推定装置(その2)20のデータ抽出処理部24は、後述する回帰式構築処理部25にて必要となる回帰式構築用のデータを抽出する処理を行う。例えば、以下のような複数の抽出条件の組合せで抽出処理を行う。
抽出条件1:推定対象日から過去x日以内の日(例.x=30)
抽出条件2:t1時〜t2時(例.t1=10,t2=16)
抽出条件3:日射量時間0(つまり、PV発電量がない日)
ここで、日射量時間は、通常は気象庁にて計測している1時間当たりの日照時間であり、0〜10の値である。0のときには規定値以上の日射量がなく、規定値以上の日射量が6分ごとに1加算され、該当する1時間枠の中で60分あれば10となる。つまり、0は夜か雨天・曇天を示し、10は晴天を示すことになる。
【0062】
なお、抽出したデータは、具体的には、以下のn個のデータになる。
有効電力計測値i ,無効電力計測値i
ただしi : 1〜n
次に、回帰式構築処理部25は、上記で抽出されたデータの無効電力計測値と、有効電力計測値を用いて以下の回帰式を構築する。回帰式の構築に当たっては、
図12に示すように、有効電力をY座標に、無効電力をX座標に設定し、当該座標上に上記データ抽出処理部24によって抽出された有効電力と無効電力の値をプロットすることでその傾きから次のような回帰式を得る。つまり、式2のa0とa1を求める。この場合、データ抽出処理部24が抽出条件3を選択することにすれば、日照時間が0のデータ、例えば雨天時のデータを得ることができ、これにより、計測データは負荷が消費する有効電力と無効電力を表すことになるから、負荷が消費する電力における有効電力と無効電力は、ほぼ直線的な関係としてグラフ表示されることが分かる。
【0063】
有効電力計測値=a0+a1無効電力計測値・・・式2
本例では、計測された有効電力と無効電力の値を用いているので、誤差が少ない(誤差があるとすれば計測誤差だけで、後述する独立成分分析による推定誤差の影響がなく)信頼性が高いデータである。その一方で、抽出条件が多く、少ない日のデータしか得られない。
【0064】
上記において精度の高い回帰式を構築する(上記の係数a0,a1を求める)ためには、誤差が少なく多くのデータが必要であるが、実際にはそのようなデータは得ることができない。そこで、データの重きをいずれに置くかによって後述する独立成分分析による推定誤差を含む、つまり、データの多さに重きを置いて回帰式を構築するか、上記のように、少ないデータでも誤差の少なさに重きを置いて回帰式を構築するかの二者択一になる。
【0065】
推定処理部26は、回帰式を示す上記式2を用いて、抽出したデータの推定値を求める。すなわち、
実負荷の有効電力推定値(回帰)i=a0+a1無効電力計測値i
太陽光発電の有効電力推定値i=実負荷の有効電力推定値(回帰)i
-有効電力計測値i
推定幅計算処理部27は、上記した推定値の幅を求める。幅を求める式は以下の通りである。
【0066】
実負荷の有効電力推定値(回帰)の幅i=実負荷の有効電力推定値(回帰)i±幅i
太陽光発電の有効電力推定値の幅i=実負荷の有効電力推定値(回帰)の幅i
-有効電力計測値i
幅i=t(n−2,信頼区間) × √(Ve)×√(1+1/n+(無効電力計測値i-avg(無効電力計測値i))
2/Sxx)
Ve=Σ(実負荷の有効電力推定値(回帰)i-有効電力計測値i)
2/(n-2)
Sxx=Σ(無効電力計測値i-avg(無効電力計測値i))
2
ここで、t(n−2,信頼区間)は、t分布表から求められる値であり、nが無限大の場合には正規分布になり、nが小さい場合には正規分布よりも幅が広くなる分布である。例えば、nが12で信頼区間が95%の場合には、2.228になり、nが無限大で信頼区間が95%の場合には1.960になる。なお、Veは、残差による分散であり、上式のとおり、実負荷の有効電力推定値(回帰)と有効電力計測値の差を意味する。Sxxは、偏差平方和と呼ばれる統計指標である。
【0067】
図13は、本発明の実施形態に係る電力推定装置(その2)における実負荷の有効電力推定値(回帰)が採る推定値の幅を示す概念図である。
図13において、○印は、有効電力計測値iを示し、△印は、実負荷の有効電力推定値(回帰)iを示し、実負荷の有効電力推定値(回帰)iは△印を結んだ直線上の値となる。また
図13において、左上及び右下の曲線は上記幅iを求める計算式によって既定される推定値の確からしさを担保する境界を示し、当該二つの曲線の乖離が両矢印線によって推定値の幅iとして示されている。
【0068】
図14は、本発明の実施形態に係る電力推定装置(その3)の構成を示す図である。本電力推定装置(その3)30は、
図2に示した本発明の実施形態に係る電力推定装置(その1)10の構成と同様、コンピュータ等の情報を処理する汎用の装置で構成されており、当該装置には、特に図示しないが、CPU(中央処理ユニット)、記憶装置(ハードディスク)、メモリ、通信機能部、入出力インタフェース、入出力装置など当業者によく知られたハードウェア構成を備えている。そして上記記憶装置には予め所定のアプリケーションプログラムが記憶されており、上記CPUがこのアプリケーションプログラムを読出して実行することにより下記に記述する各種処理部31〜39の機能を実現する。なお、本発明の実施形態に係る配電系統の構成は
図1に示した電力推定装置(その1)10が電力推定装置(その3)30に置き換わるのを除き、同様であるので、機能ブロック名が重複するものはその説明を省略するものとする。また上記各種処理部31〜39を接続するバスが設けられている。
【0069】
本電力推定装置(その3)30では、説明を簡単にするため1か所の電力計、例えば電力計P1、によって計測された値に基づく推定について説明する。この手法では計測地点から下流の負荷が消費する有効電力を推定するので、開閉器ごとに計測すれば、区間ごとの負荷が消費する有効電力を推定することができる。
【0070】
電力推定装置(その3)30のデータ抽出処理部34は、後述する復元行列構築処理部35にて必要となる復元行列構築用のデータを抽出する処理を行う。例えば、以下のような複数の抽出条件の組合せでデータの抽出処理を行う。この抽出条件は
図11に示した電力推定装置(その2)20のデータ抽出処理部24で用いる抽出条件よりも少ないものになっている。
抽出条件1:推定対象日から過去x日以内の日(例.x=30)
抽出条件2:t1時〜t2時(例.t1=10,t2=16)
因みに通常の独立成分分析(ICA:Independent Component Analysis)では、推定したい時間を含む数十分もしくは数時間の時間的に連続したデータ(有効電力と無効電力)を推定に活用している。しかし本例では、データが時間的に連続していなくてもよく、例えば、前日の13時〜14時、前々日の13時〜14時のように時間的に連続していないデータを抽出してもよい。なお抽出したデータは、具体的には、以下のn個のデータである。
【0071】
有効電力計測値i ,無効電力計測値i
ただしi : 1〜n
復元行列構築処理部35は、上記のようにして抽出したデータ(有効電力計測値iと無効電力計測値i)を用いて復元行列を構築する処理を行う。本復元行列構築処理は、通常のICAの一般的な処理であるため、詳細な説明を割愛する。
【0072】
推定処理部1(36)は、復元行列構築処理部35で構築した復元行列を用いて実負荷が消費する電力(有効電力)と太陽光発電出力を分離する処理を行う。本推定処理部1(36)の処理は、通常の独立成分分析を用いた分離処理であるので、詳細な説明を割愛する(必要であれば上記した特許文献5参照)。なお、本推定処理部1(36)の処理によって出力されるデータは、以下のものになる。すなわち、
実負荷の有効電力推定値(独立成分分析)i (ただしi : 1〜n)
回帰式構築処理部37は、上記データ抽出処理部34で抽出した無効電力計測値と、上記推定処理部1(36)の処理によって出力された実負荷の有効電力推定値(独立成分分析)を用いて回帰式を構築する。回帰式の構築に当たっては、
図15に示すように、有効電力をY座標に、無効電力をX座標に設定し、当該座標上に上記推定処理部1(36)の処理によって出力された実負荷の有効電力推定値(独立成分分析)をプロットすることでその傾きから次のような回帰式を得る。つまり、次式のa0とa1を求める。
【0073】
実負荷の有効電力推定値(独立成分分析)=a0+a1無効電力計測値・・・式3
そして推定処理部2(38)は、上記の回帰式(式3)を用いて、抽出したデータ(データ抽出処理部34で抽出した無効電力計測値,有効電力計測値)に基づく推定値を求める。つまり、
実負荷の有効電力推定値(回帰)i=a0+a1無効電力計測値i
太陽光発電の有効電力推定値i=実負荷の有効電力推定値(回帰)i-有効電力計測値i
推定幅計算処理部39は、上記推定処理部2(38)が上記回帰式(式3)を用いて得た上記推定値の幅を求める。幅を求める式は、以下に示すとおりである。
【0074】
実負荷の有効電力推定値(回帰)の幅i=実負荷の有効電力推定値(回帰)i±幅i
太陽光発電の有効電力推定値の幅i=実負荷の有効電力推定値(回帰)の幅i -有効電力計測値i
幅i=t(n−2,信頼区間) × √(Ve)×√(1+1/n+(無効電力計測値i-avg(無効電力計測値i))
2/Sxx)
Ve=Σ(実負荷の有効電力推定値(回帰)i-実負荷の有効電力推定値(独立成分分析)i)
2/(n-2)
Sxx=Σ(無効電力計測値i-avg(無効電力計測値i))
2
ここで、t(n−2,信頼区間)は、t分布表から求められる値であり、nが無限大の場合には正規分布になり、nが小さい場合には正規分布よりも幅が広くなる分布である。例えば、nが12で信頼区間が95%の場合には、2.228になり、nが無限大で信頼区間が95%の場合には1.960になる。なお、Veは、残差による分散であり、上式のとおり、実負荷の有効電力推定値(回帰)と独立成分分析で求めた有効電力推定値の差を意味する。また、Sxxは、偏差平方和と呼ばれる統計指標である。
【0075】
図16は、本発明の実施形態に係る電力推定装置(その3)における実負荷の有効電力推定値が採る推定値の幅を示す概念図である。
図16において、○印は、実負荷の有効電力推定値(独立成分分析)iを示し、△印は、実負荷の有効電力推定値(回帰)iを示し、実負荷の有効電力推定値(回帰)iは△印を結んだ直線上の値となる。また
図16において、左上及び右下の曲線は上記幅iを求める計算式によって既定される推定値の確からしさを担保する境界を示し、当該二つの曲線の乖離が両矢印線によって推定値の幅iとして示されている。