(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
はんだ印刷装置によってプリント基板にはんだを印刷するはんだ印刷工程と、マウンタによってプリント基板上に電子部品を配置するマウント工程と、リフロー炉によって電子部品をはんだ接合するリフロー工程とを行う表面実装ラインにおける品質管理システムであって、
前記マウント工程後に、前記プリント基板上に配置された前記電子部品が有する端子の、電子部品本体に対する相対的な位置に関する情報である端子情報を生成する端子検出装置と、
前記リフロー工程後に、前記端子情報に基づいて、前記電子部品が有する端子の、前記プリント基板上における位置を特定し、当該端子とプリント基板とのはんだ接合状態を検査する実装検査装置と、からなる
ことを特徴とする、品質管理システム。
前記端子検出装置は、プリント基板上に電子部品を配置するマウンタと、プリント基板上に配置された電子部品の配置状態を検査する部品検査装置のうちの少なくともいずれかである
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の品質管理システム。
前記実装検査装置は、プリント基板上の電極と、電子部品が有する端子とのはんだ接合状態を可視光像によって検査する外観検査装置と、プリント基板上の電極と、電子部品が有する端子とのはんだ接合状態を可視光像以外によって検査する内部検査装置のうちの少なくともいずれかである
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の品質管理システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
部品が有する端子と、基板上の電極(ランド)との接合状態を検査する場合、基板上の部品の位置はもちろん、部品が有する端子の先端がどこにあるかを正確に把握する必要がある。端子の先端位置が正しく把握できていないと、はんだフィレットの形成状態や、端子に対するはんだのぬれ上がり状態を正しく判定することができないためである。端子の先端位置は、例えば端子とランドとの接合部分を撮像し、得られた画像を解析することで検出することができる。
【0007】
一方、端子がはんだに完全に埋没してしまっているような場合や、端子の上面とはんだが滑らかに繋がっているような場合といったように、端子とはんだとの境界が特定できないケースがある。このようなケースは、特に2ピンミニモールド部品やトランジスタ、一部のSOP(Small Outline Package)部品などで発生しうる。
従来の表面実装ラインでは、このように、端子の先端位置を特定することができない場合、はんだの接合状態を正確に判定することができず、良品を不良品と判定してしまうという問題が発生していた。
【0008】
特許文献1に記載された部品実装システムでは、実測値に基づいて、プリント基板上の部品の積載位置を特定することができるが、端子の先端位置を検出することはできない。
また、特許文献2に記載された方法では、部品を検出して適切な検査ライブラリを選択することはできるが、同様に、端子の先端位置を検出することはできない。
一方、検出した部品の位置を利用して、端子の先端位置を推定するという方法も考えられる。しかし、端子の位置や長さには製造時のばらつきがあるため、必ずしも推定した位置に端子の先端があるとは限らない。
【0009】
本発明は上記の課題を考慮してなされたものであり、表面実装ラインにおいて、はんだ接合状態の検査判定精度を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る品質管理システムは、はんだ印刷装置によってプリント基板にはんだを印刷するはんだ印刷工程と、マウンタによってプリント基板上に電子部品を配置するマウント工程と、リフロー炉によって電子部品をはんだ接合するリフロー工程とを行う表面実装ラインにおける品質管理システムである。
【0011】
具体的には、本発明に係る品質管理システムは、前記マウント工程後に、前記プリント基板上に配置された前記電子部品の端子の位置に関する情報である端子情報を生成する端子検出装置と、前記リフロー工程後に、前記端子情報に基づいて、前記電子部品が有する端子の位置を特定し、当該端子とプリント基板とのはんだ接合状態を検査する実装検査装置と、からなることを特徴とする。
【0012】
端子検出装置は、プリント基板に対する電子部品の配置(マウント)が終了した後で、当該配置された電子部品が有する端子の位置に関する情報である端子情報を生成する手段である。端子情報は、実装検査装置が基板上における端子の位置を特定することができれば、どのような情報であってもよい。例えば、部品に対する端子の相対位置であってもよい。また、端子の幅や長さ、配置角度などに関する情報を含んでいてもよい。
また、実装検査装置は、リフロー工程が終了した後に、電子部品が有する端子と、プリント基板上の電極(ランド)との接合状態を検査する装置である。また、実装検査装置は、端子検出装置が生成した端子情報に基づいて、検査対象の端子がプリント基板上のどこにあるかを特定する。
かかる構成によると、実装検査装置が、検査対象の端子が基板上のどこにあるかを正確に認識することができるため、端子の先端がはんだに埋没しているような場合であっても、端子とランドとの接合状態を正確に判定することができる。
【0013】
また、前記端子検出装置は、プリント基板上に配置された電子部品を撮像し、得られた画像に含まれる画素の輝度値に基づいて端子が存在する領域を検出することを特徴としてもよい。
【0014】
部品に対して光を照射した場合、端子によって反射した光と、はんだによって反射した光とでは反射光の特性が異なる。具体的には、端子は光を正反射させ、印刷されたはんだは光を乱反射させる。このため、端子検出装置は、当該特性の違いを光学的に検出することで、端子とはんだとの境界を検出し、端子の位置を特定することができる。
【0015】
また、前記端子情報は、検査対象の電子部品上に設定された基準位置に対する、端子の相対的な位置関係を表す情報であることを特徴としてもよい。
【0016】
基準位置とは、端子の位置を特定するための基準となる位置であり、端子検出装置と実装検査装置によって共有されていれば、どのような位置であってもよい。例えば、部品上に設定された点であってもよい。また、部品の辺縁部などであってもよい。実装検査装置は、基準位置と、基準位置に対する端子の相対的な位置情報を用いて、端子の位置を特定
することができる。
【0017】
また、前記端子情報は、前記基準位置に対する、端子の相対位置、端子の幅、端子の長さを表す情報を含むことを特徴としてもよい。
【0018】
基準位置に対する端子の相対的な位置のほか、端子の幅および長さを定義することで、実装検査装置は、検査対象の端子が存在する領域を特定することができる。
【0019】
また、前記端子検出装置は、プリント基板上に電子部品を配置するマウンタと、プリント基板上に配置された電子部品の配置状態を検査する部品検査装置のうちの少なくともいずれかであることを特徴としてもよい。
【0020】
端子情報の生成は、部品を配置した後であれば、部品を配置する装置自体が行ってもよいし、部品の配置状態を検査する装置が行ってもよい。
【0021】
また、前記実装検査装置は、プリント基板上の電極と、電子部品が有する端子とのはんだ接合状態を可視光像によって検査する外観検査装置と、プリント基板上の電極と、電子部品が有する端子とのはんだ接合状態を可視光像以外によって検査する内部検査装置のうちの少なくともいずれかであることを特徴としてもよい。
【0022】
このように、実装検査装置は、可視光像によって検査を行う装置であってもよいし、X線などの可視光像以外によって検査を行う装置であってもよい。
【0023】
なお、本発明は、上記手段の少なくとも一部を含む品質管理システムとして特定することができる。また、前記品質管理システムの制御方法や、前記品質管理システムを動作させるためのプログラム、当該プログラムが記録された記録媒体として特定することもできる。
上記処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、表面実装ラインにおいて、はんだ接合状態の検査判定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(システム構成)
図1は、プリント基板の表面実装ラインにおける生産設備及び品質管理システムの構成例を模式的に示した図である。表面実装(Surface Mount Technology:SMT)とは、プリント基板の表面に電子部品をはんだ付けする技術であり、表面実装ラインは、主として、はんだ印刷〜部品のマウント〜リフロー(はんだの溶着)の三つの工程から構成される。
【0027】
図1に示すように、表面実装ラインでは、生産設備として、上流側から順に、はんだ印刷装置110、マウンタ120、リフロー炉130が設けられる。はんだ印刷装置110は、スクリーン印刷によってプリント基板上の電極部(ランドと呼ばれる)にペースト状のはんだを印刷する装置である。マウンタ120は、基板に実装すべき電子部品をピックアップし、該当箇所のはんだペーストの上に部品を載置するための装置であり、チップマウンタとも呼ばれる。リフロー炉130は、はんだペーストを加熱溶融した後、冷却を行い、電子部品を基板上にはんだ接合するための加熱装置である。これらの生産設備110〜130は、ネットワーク(LAN)を介して生産設備管理装置140に接続されている。生産設備管理装置140は、生産設備110〜130の管理や統括制御を担うシステムであり、各生産設備の動作を定義する実装プログラム(動作手順、製造条件、設定パラメータなどを含む)、各生産設備のログデータなどを記憶、管理、出力する機能などを有している。また、生産設備管理装置140は、作業者又は他の装置から実装プログラムの変更指示を受け付けると、該当する生産設備に設定されている実装プログラムの更新処理を行う機能も有する。
【0028】
また、表面実装ラインには、はんだ印刷〜部品のマウント〜リフローの各工程の出口で基板の状態を検査し、不良あるいは不良のおそれを自動で検出する、品質管理システムが設置されている。品質管理システムは、良品と不良品の自動仕分けの他、検査結果やその分析結果に基づき各生産設備の動作にフィードバックする機能(例えば、実装プログラムの変更など)も有している。
図1に示すように、本実施形態に係る品質管理システムは、はんだ印刷検査装置210、部品検査装置220、外観検査装置230、X線検査装置240の4種類の検査装置と、検査管理装置250、分析装置260、作業端末270などから構成される。
【0029】
はんだ印刷検査装置210は、はんだ印刷装置110から搬出された基板に対し、はんだペーストの印刷状態を検査するための装置である。はんだ印刷検査装置210では、基板上に印刷されたはんだペーストを二次元ないし三次元的に計測し、その計測結果から各種の検査項目について正常値(許容範囲)か否かの判定を行う。検査項目としては、例えば、はんだの体積・面積・高さ・位置ずれ・形状などがある。はんだペーストの二次元計測には、イメージセンサ(カメラ)などを用いることができ、三次元計測には、レーザ変位計や、位相シフト法、空間コード化法、光切断法などを利用することができる。
【0030】
部品検査装置220は、マウンタ120から搬出された基板に対し、電子部品の配置状態を検査するための装置である。部品検査装置220では、はんだペーストの上に載置された部品(部品本体、電極(リード)など部品の一部でもよい)を二次元ないし三次元的に計測し、その計測結果から各種の検査項目について正常値(許容範囲)か否かの判定を行う。検査項目としては、例えば、部品の位置ずれ、角度(回転)ずれ、欠品(部品が配置されていないこと)、部品違い(異なる部品が配置されていること)、極性違い(部品側と基板側の電極の極性が異なること)、表裏反転(部品が裏向きに配置されていること)、部品高さなどがある。はんだ印刷検査と同様、電子部品の二次元計測には、イメージセンサ(カメラ)などを用いることができ、三次元計測には、レーザ変位計や、位相シフト法、空間コード化法、光切断法などを利用することができる。
【0031】
外観検査装置230は、リフロー炉130から搬出された基板に対し、はんだ付けの状
態を検査するための装置である。外観検査装置230では、リフロー後のはんだ部分を二次元ないし三次元的に計測し、その計測結果から各種の検査項目について正常値(許容範囲)か否かの判定を行う。検査項目としては、部品検査と同じ項目に加え、はんだフィレット形状の良否なども含まれる。はんだの形状計測には、上述したレーザ変位計や、位相シフト法、空間コード化法、光切断法などの他、いわゆるカラーハイライト方式(R、G、Bの照明を異なる入射角ではんだ面に当て、各色の反射光を天頂カメラで撮影することで、はんだの三次元形状を二次元の色相情報として検出する方法)を用いることができる。
【0032】
X線検査装置240は、X線像を用いて基板のはんだ付けの状態を検査するための装置(内部検査装置)である。例えば、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)などのパッケージ部品や多層基板の場合には、はんだ接合部が部品や基板の下に隠れているため、外観検査装置230では(つまり外観画像では)はんだの状態を検査することができない。X線検査装置240は、このような外観検査の弱点を補完するための装置である。X線検査装置240の検査項目としては、例えば、部品の位置ずれ、はんだ高さ、はんだ体積、はんだボール径、バックフィレットの長さ、はんだ接合の良否などがある。なお、X線像としては、X線透過画像を用いてもよいし、CT(Computed Tomography)画像を用いることも好ましい。
【0033】
これらの検査装置210〜240は、ネットワーク(LAN)を介して検査管理装置250に接続されている。検査管理装置250は、検査装置210〜240の管理や統括制御を担うシステムであり、各検査装置210〜240の動作を定義する検査プログラム(検査手順、検査条件、設定パラメータなど)や、各検査装置210〜240で得られた検査結果やログデータなどを記憶、管理、出力する機能などを有している。
分析装置260は、検査管理装置250に集約された各検査装置210〜240の検査結果(各工程の検査結果)を分析することで、不良の予測、不良の要因推定などを行う機能や、必要に応じて各生産設備110〜130へのフィードバック(実装プログラムの変更など)を行う機能などを有するシステムである。
作業端末270は、生産設備110〜130の状態、各検査装置210〜240の検査結果、分析装置260の分析結果などの情報を表示する機能、生産設備管理装置140や検査管理装置250に対し実装プログラムや検査プログラムの変更(編集)を行う機能、表面実装ライン全体の動作状況を確認する機能などを有するシステムである。
【0034】
生産設備管理装置140、検査管理装置250、分析装置260はいずれも、CPU(中央演算処理装置)、主記憶装置(メモリ)、補助記憶装置(ハードディスクなど)、入力装置(キーボード、マウス、コントローラ、タッチパネルなど)、表示装置などを具備する汎用的なコンピュータシステムにより構成可能である。これらの装置140、250、260は別々の装置であってもよいが、一つのコンピュータシステムにこれらの装置140、250、260の全ての機能を実装することも可能であるし、生産設備110〜130や検査装置210〜240のいずれかの装置が具備するコンピュータに、これらの装置140、250、260の機能の全部又は一部を実装することも可能である。また、
図1では、生産設備と品質管理システムのネットワークを分けているが、相互にデータ通信が可能であればどのような構成のネットワークを用いてもよい。
【0035】
(品質管理システムの実施形態)
次に、前述した表面実装ラインにおける、品質管理システムの実施形態について説明する。本実施形態に係る品質管理システムは、部品検査装置220、外観検査装置230、X線検査装置240、および検査管理装置250を含んで構成される。
本実施形態に係る品質管理システムが行う検査の詳細について、データの流れを示した図である
図2を参照しながら説明する。
【0036】
前述したように、部品検査装置220は、基板上に電子部品が正常にマウントされているかを検査する装置である。
また、外観検査装置230およびX線検査装置240は、基板上に配置された電子部品の端子が、基板上のランドに正常にはんだ付けされているか否かを可視光線またはX線によって検査する装置である。すなわち、製品が完成した状態で検査を行う手段である。ここで不良と判定された基板は、不良品として仕分けられ、必要に応じて目視検査などの追加検査に回される。実施形態の説明では、外観検査装置230およびX線検査装置240が行う検査をリフロー後検査と称する。
各検査装置は、検査ライン上に設けられており、搬送される基板に対して検査が実行可能な構成となっている。また、各検査装置は、検査が完了すると、検査結果を検査管理装置250に送信する。
【0037】
ここで問題となるのが、部品とはんだとの配置状態によって、リフロー後検査で誤判定が起こるという問題である。この問題について、ランドと端子がはんだによって接合された部分の断面図である
図3を参照しながら説明する。なお、
図3中、黒塗りで示した領域が端子であり、ハッチングで示した領域がランドである。
図3に示すように、良品のはんだフィレットは、端子からランドにかけて山の裾野のような広い傾斜面が形成される。これに対し、はんだ不足が起こると、傾斜面の面積が小さくなり、逆にはんだ過多の場合にはフィレットがランド上に盛り上がった形状となる。外観検査装置230およびX線検査装置240は、このような、はんだの形状に基づいて接合状態の判定を行う。
【0038】
接合状態の判定は、例えば、ランド端から端子端までの長さ、フロントフィレットの長さ、ランドや端子に対するはんだの接触角、はんだのぬれ上がり高さなどに基づいて行うことができる。これらを判定する場合、外観検査装置230およびX線検査装置240は、端子の先端(端子端)が基板上のどこにあるかを認識し、適切な箇所を検査しなければならない。
【0039】
しかし、端子がはんだに埋没してしまっているケースや、端子とはんだが滑らかに繋がっているケースなど、外観からでは端子の先端位置を判別できない場合がある。
図4は、このようなケースを説明する図である。例えば、
図4(a)のケースでは、ガルウイングリードがはんだに埋もれてしまい、外部から先端を確認することができない。また、
図4(b)のケースでは、端子の上面とはんだが滑らかに繋がっているため、境界がどこにあるかを検出することが難しい。また、
図4(c)のケースでは、フラットリードが
図4(a)のケースと同様にはんだに埋もれてしまっている。
【0040】
このようなケースが発生すると、各検査装置において以下のような問題が発生する。
(1)外観検査装置
外観検査装置230は、部品の外観に基づいて検査を行うため、端子の先端が見えない場合、端子の先端位置を推定しなければならない。端子の先端位置は、例えば、検査装置が有している部品の情報に基づいて推定することができる。
しかし、部品には個体差があるため、推定した場所に必ずしも端子端があるとは限らない。また、端子端ではない部分を検査してしまうと、例えずれ幅がミクロン単位であっても、はんだのぬれ角や高さが大きく変化してしまい、結果として、良品と不良品との判定が正しく行えなくなるおそれがある。
【0041】
(2)X線検査装置
一方、X線検査装置240は、X線を照射して検査を行うため、端子端が埋没しているようなケースであっても、端子とはんだとの透過率の差を検出することで、端子とはんだ
との境界を識別することができる。しかし、当該手法を用いた場合、X線を照射する工程に加えて、端子とはんだとを識別する工程が追加で必要となるため、検査時間が余計にかかってしまう。また、端子とはんだとを識別する精度を上げたい場合、境界を鮮明に撮像する必要があるため、撮像時間が増加し、検査時間がより増加してしまう。当該工程を省略することも可能ではあるが、良品と不良品との判定が正しく行えなくなるという、外観検査装置と同様の問題が発生してしまう。
【0042】
そこで、本実施形態に係る品質管理システムは、マウント工程が終了した後、リフロー工程に進む前に、部品本体に対する端子の位置を確認し、当該端子の位置を一時的に記憶しておき、リフロー後検査において利用する。
具体的には、部品検査装置200が、部品検査を行う際に、端子が存在する領域を抽出し、当該領域の位置を表す情報(以下、端子情報)を生成して、検査結果とともに検査管理装置250に記憶させる。また、リフロー後検査を行う際に、観検査装置230およびX線検査装置240が、検査管理装置250から端子情報を取得し、端子が存在する領域を特定したうえで検査を行う。以下、それぞれの処理について詳しく説明する。
【0043】
最初に、各検査装置が行う検査の概要について説明する。本実施形態に係る品質管理システムでは、検査管理装置250が、前述したように、検査プログラムを各検査装置に配信し、各検査装置が当該検査プログラムを用いて検査を行う。検査プログラムには、検査手順のほか、検査を行う対象についての情報(以下、検査対象情報)が含まれている。
【0044】
図5は、検査対象情報のデータ構造を表した例である。検査対象情報には、基板に実装される部品についての情報(部品情報)と、検査領域についての情報(検査領域情報)が含まれている。検査領域とは、検査を行う単位を表したものあり、部品本体であってもよいし、部品が有する端子であってもよい。また、当該端子が接続されるランドであってもよい。検査領域情報には、検査対象の位置や大きさ、角度についての情報と、検査項目や検査基準などが記録されており、各検査装置は、当該情報を参照しながら検査を行う。
【0045】
図5の例では、部品ごとに、基板を基準とする座標および角度が定義されている。また、検査領域ごとに、部品を基準とする座標および角度が定義されている。なお、検査領域が部品自体である場合、部品を基準とする座標および角度はいずれも0となる。
【0046】
まず、部品検査装置が行う処理について説明する。
部品検査装置220にプリント基板が搬入されると、部品検査装置220は、搬入されたプリント基板の基板IDを取得する。基板IDは、生産設備管理装置140などから取得してもよいし、プリント基板を撮像することで読み取りが可能な場合は、基板から直接読み取ってもよい。そして、搬入されたプリント基板に対応する検査対象情報を検査管理装置250から取得し、部品検査を実行する。
【0047】
部品検査では、検査領域として定義された部品および端子に対して検査を行う。ここで、
図5に示した検査対象情報と、検査装置が実際に検査を行う領域との対応関係を、
図6および
図7を参照しながら説明する。
まず、
図6を参照しながら、部品を特定する方法について説明する。
図6中、符号601は搬入されたプリント基板を表し、符号602は、当該プリント基板上の、部品が存在する領域を表す。また、図中に示したX軸およびY軸は、部品の位置を表すための軸である。部品の位置は、基板の中心を原点(0,0)としたX−Y座標系で表される。例えば、符号602で表された部品の位置は、部品の中心点の座標(Xp,Yp)と、基板に対する角度(例えばX軸正方向を0度として反時計回りに定義する。本例では0度)で表すことができる。各パラメータは、
図5に示した部品情報のうち、それぞれ「X座標(対基板)」「Y座標(対基板)」「角度(対基板)」に対応する。これらの部品情報によって、
プリント基板上に配置された部品の位置および姿勢が定義される。
【0048】
次に、
図7を参照しながら、検査領域を特定する方法について説明する。検査領域の位置は、部品を基準とした位置で表される。
図7中、符号701は部品本体を表し、符号702は当該部品が有する端子を表す。また、符号703は当該端子が接続されるランドを表す。また、図中に示したX軸およびY軸は、端子の位置を表すための軸である。端子の位置は、部品の中心を原点(0,0)としたX−Y座標系で表される。例えば、符号702で表された端子は、端子の左下に対応する点704の座標(Xt,Yt)と、端子の横方向の長さWtと、縦方向の長さHt、および部品に対する角度(0度)で表すことができる。各パラメータは、
図5に示した検査領域情報のうち、それぞれ「X座標(対部品)」「Y座標(対部品)」「横長さ」「縦長さ」「角度(対部品)」に対応する。
【0049】
以上に説明したように、部品情報および検査領域情報によって、検査を行う対象の領域がプリント基板上のどこにあるかが表わされる。
なお、基板に設定された原点は、検査装置間で共有される。すなわち、原点を基準として位置を表わすことで、プリント基板上の領域を一意に特定することができる。
部品検査装置は、このようにして定義された領域に、検査対象の部品や端子が実際に存在するか(すなわち、部品が正しくマウントされているか)を検査し、検査結果を生成して、検査管理装置250に送信する。
【0050】
前述したように、部品や端子の大きさには個体差があるため、同じ部品が実装されていても、プリント基板ごとに、検査対象領域の位置にずれが生じる。もっとも、多少のずれがあっても、部品検査に影響はなく、検査自体を行うことはできる。しかし、リフロー後検査では、当該誤差が検査品質に影響してしまうため、これを防止するため、部品検査装置220は、部品検査の完了後に、端子の正確な位置を表す端子情報を生成する。
【0051】
具体的には、対象の部品をカメラで撮像したうえで、端子部分とはんだ部分とを識別し、端子が存在する領域を抽出する。端子部分とはんだ部分との識別は、例えば、撮像した画像から、特定の色空間に含まれる画素を抽出することで行う。
はんだ接合を行う前の端子は表面が平滑であるため、入射した光が正反射する。これに対して、はんだの表面は平滑ではないため、入射した光が乱反射する。これを利用し、端子が存在する領域と、それ以外の領域を、画素値(輝度値)に基づいて識別することができる。
【0052】
具体的な例を
図8に示す。
図8のように、部品に対して光を照射する照明装置と、撮像を行うためのカメラを同一の角度で設けると、端子以外の部分で反射した光の強度は、端子によって反射した光の強度よりも弱くなる。したがって、画像に含まれる画素の輝度値が閾値以上であるか、閾値未満であるかを判定することで、端子が存在する領域を推定することができる。また、画像上の位置に基づいて、空間内における端子の位置、長さ、角度などを求めることができる。
【0053】
例えば、画像に含まれる画素の輝度値が、各色で0〜255の範囲をとる(すなわち1677万色のフルカラー画像)ものとし、閾値を225以上とすると、RGBそれぞれについて、輝度値が全て225〜255の範囲にある画素を選択することで、端子が存在する領域を抽出することができる。また、抽出結果に基づいて端子の正確な位置を算出することができる。なお、本例は照射する光が白色である場合の例であるが、照射光は他の色であってもよいし、その場合、色ごとに閾値を設けてもよい。
なお、端子がある領域を推定するためのパラメータ(例えばRGBごとの輝度の閾値)は、検査領域情報に含ませてもよいし、独立して部品検査装置に記憶させてもよい。また、当該パラメータは、色空間内の所定の範囲を表すことができれば、RGB以外の値によ
って定義してもよい。
なお、パラメータを検査領域情報に含ませる場合、端子ごとに定義が可能であるが、本実施形態では、複数の端子に対して同一のパラメータが与えられているものとする。もちろん、端子ごとに異なるパラメータを設定してもよい。
【0054】
図9は、部品検査装置220が生成する端子情報の例である。端子情報には、端子を一意に識別するためのキー(基板ID,部品ID,端子番号)と、端子に対応する領域についての情報が含まれる。端子がある領域は、検査領域情報と同様に、部品の中心を原点とし、部品の特定方向をX軸としたX−Y座標系にて表される。
図9の端子情報に示した「X座標(対部品)」「Y座標(対部品)」「横長さ」「縦長さ」「角度(対部品)」は、それぞれ、
図5に示した検査領域情報の同項目に対応するが、各項目はスペックに基づいた値ではなく、実測値であるという点において相違する。
【0055】
検査管理装置250に送信された端子情報は一時的に記憶され、リフロー後検査にて用いられる検査プログラムとともに、外観検査装置230およびX線検査装置240へ配信される。
そして、外観検査装置230およびX線検査装置240が、ランドに対する端子の接合状態を検査する際に、取得した端子情報を参照して、対応する端子が存在する領域を特定する。なお、リフロー工程を経ると、はんだが溶解するため、部品が縦方向(
図8のZ軸方向)に沈み込み、XY平面上での座標および角度も変化する。しかし、部品本体に対する端子の相対位置は変化しないため、リフロー前に取得した情報に基づいて、リフロー後の検査を行うことができる。
【0056】
(処理フローチャート)
図10は、部品検査装置220が行う検査処理のフローチャートである。
図10に示した処理は、検査対象のプリント基板が搬入されたタイミングで実行される。なお、検査プログラムは予め検査管理装置250から配信されているものとする。
【0057】
まず、ステップS11で、カメラを用いて検査対象の基板を撮像する。ここで撮像される画像は、端子の位置を計測するための画像であるが、部品検査を行うための画像が更に必要な場合、別途撮像を行ってもよい。また、複数回撮像を行う場合、それぞれ異なるカメラを用いてもよい。
次に、ステップS12で、検査プログラムに含まれる検査対象情報を参照し、検査対象を抽出する。ここで抽出される検査対象は、「部品」または「端子」のいずれかである。
ステップS13では、検査対象に対する部品検査を実施し、検査結果を生成する。検査は、二次元計測によって行ってもよいし、三次元計測によって行ってもよい。
【0058】
ステップS14では、検査対象に含まれる端子に対応する画像パラメータを検査対象情報から取得したのちに、ステップS11で取得した画像から、当該画像パラメータに一致する領域を抽出する。例えば、輝度値の範囲が0〜255であって、画像パラメータが「輝度値>225」であった場合、輝度値が225以上255以下である領域を抽出する。
そして、ステップS15で、抽出した領域に基づいて、基板上の端子にそれぞれ対応する複数の端子情報を生成し、ステップS13で生成した検査結果とともに、検査管理装置250に送信する。
【0059】
図11は、外観検査装置230およびX線検査装置240が行う検査処理のフローチャートである。
図11に示した処理は、各検査装置にプリント基板が搬入され、検査が開始されるタイミングでそれぞれ実行される。なお、検査プログラムは予め検査管理装置250から配信されているものとする。
【0060】
まず、ステップS21で、検査プログラムに含まれる検査対象情報を参照し、検査対象を抽出する。ここで抽出される検査対象は、「ランド」である。
次に、ステップS22で、検査対象情報を参照して、検査対象のランドに対応する端子を特定し、当該端子に対応する端子情報を、検査管理装置250から取得する。本ステップにより、検査対象のランドに接合された端子の位置が特定される。なお、検査対象のランドに対応する端子情報を取得できなかった場合、検査対象情報に含まれる端子の位置情報を用いて端子の位置を推定する。
ステップS23では、検査対象のランドに対する検査(外観検査またはX線検査)を実施する。検査が完了すると、検査結果を生成したのちに、検査管理装置250に送信する。
【0061】
以上に説明したように、本実施形態に係る品質管理システムでは、リフロー工程に入る前に、あらかじめ端子の位置を検出して保存しておき、リフロー後検査において、当該情報を用いて端子の位置を特定する。このようにすることで、リフローによって端子とはんだが一体化し、区別がつきにくくなるようなケースであっても、正確に端子の位置を特定することができるようになる。また、これにより、リフロー後検査の精度を向上させることができる。すなわち、誤判定によって、良品を不良品と判定してしまうケースを抑制できるため、検査コストを削減し、生産性を向上させることができる。
【0062】
(変形例)
なお、実施形態の説明は本発明を説明する上での例示であり、本発明は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更または組み合わせて実施することができる。
【0063】
例えば、実施形態の説明では、部品の中心点を原点とする座標系を用いて、端子に対応する領域を表したが、端子に対応する領域は、検査装置が特定可能な方法であれば、どのような方法によって表されてもよい。
図12は、端子に対応する領域を定義する他の方法を示した図である。
図12の例では、部品の端辺のうち、基準となる端辺(太線で表示)を設け、当該端辺から端子の中心までの距離Aと、端子の幅Bと、端子の長さCによって、端子の位置を定義する。
図9の例では5つの値を使用して端子の位置を表わしたが、端子が部品と平行であり、部品の端辺のうち、基準となる端辺が特定できる場合、本例のように、3つの値で定義することができる。
【0064】
また、実施形態の説明では、検査管理装置250が全ての端子情報を一旦集約して、外観検査装置230およびX線検査装置240に配信したが、端子情報は、検査装置間で直接送受信するようにしてもよい。
また、実施形態の説明では、部品検査装置220が端子情報を生成するようにしたが、配置された部品が有する端子の場所を取得することができれば、端子情報は、例えばマウンタ120によって生成されてもよい。