特許第6387628号(P6387628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧 ▶ 太陽油脂株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387628
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】起泡性水中油型乳化油脂組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20180903BHJP
   A23L 9/20 20160101ALI20180903BHJP
【FI】
   A23D7/00 508
   A23L9/20
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-42480(P2014-42480)
(22)【出願日】2014年3月5日
(65)【公開番号】特開2015-167483(P2015-167483A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(73)【特許権者】
【識別番号】591040144
【氏名又は名称】太陽油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】田中 立志
(72)【発明者】
【氏名】磯部 敏秀
(72)【発明者】
【氏名】宮下 雄士
(72)【発明者】
【氏名】安武 貴一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孝
【審査官】 田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/038670(WO,A1)
【文献】 特開2014−233241(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/192167(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/008300(WO,A1)
【文献】 特開2011−205959(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/111527(WO,A1)
【文献】 特開2011−103809(JP,A)
【文献】 特開2009−142185(JP,A)
【文献】 特開2008−263790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A23L
CAplus/WPIDS/FSTA(STN)
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、油脂含量は25〜45重量%であり、該油脂全体中、トランス脂肪酸含量が1重量%未満、C12飽和脂肪酸が2重量%未満で、溶融塩を含有せず、前記油脂全体中、パーム油中融点部である油脂(A)50〜90重量%及び下記油脂(B)10〜50重量%を含有し、油脂(A)と油脂(B)の合計量が80〜100重量%である起泡性水中油型乳化油脂組成物。
油脂(B):パーム系油脂のエステル交換油の分別液状部であり、且つヨウ素価が38〜62の油脂。
【請求項2】
油脂全体中の総飽和脂肪酸含量が70重量%以下である請求項1に記載の起泡性水中油型乳化油脂組成物。
【請求項3】
油脂(A)が、SUS型トリグリセリドを油脂(A)全体中50〜80重量%含有するように分別された油脂である請求項1または2に記載の起泡性水中油型乳化油脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載の起泡性水中油型乳化油脂組成物をホイップしてなるホイップドクリーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイップドクリームなどを作製するための食用起泡性水中油型乳化油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホイップクリームなどの起泡性水中油型乳化油脂組成物に用いられる油脂としては、生産量が安定し、且つ安価であることからパーム油中融点部が使用されているが、濃縮されて過度に対称型SUSトリグリセリドが多くなっているため、多量に配合するとホイップ前の原液の乳化安定性が悪くなり、輸送耐性が劣るといった問題がある。
そこで、ラウリン系油脂のパーム核硬部油とパーム中部油を併用した起泡性水中油型乳化油脂組成物(特許文献1)が開示されているが、ラウリン系油脂を多用するとホイップ後にシマリが発生するため作業性が悪くなる。
また、C16以上の飽和脂肪酸とC16以上の不飽和脂肪酸を特定量含有する油脂をエステル交換して得られるエステル交換油とパーム油の中融点分別油を併用する水中油型乳化物用油脂組成物(特許文献2)が開示されているが、ホイップ前の原液の乳化安定性は満足のいくレベルではなく、全ての実施例においてヘキサメタリン酸ナトリウムなどの溶融塩を添加しているため、苦味が感じられ、健康上も望ましくない。
更に、部分硬化油脂を使用した起泡性水中油型乳化油脂組成物(特許文献3)が開示されているが、トランス脂肪酸や飽和脂肪酸が増えるため、健康の観点から好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-223176号公報
【特許文献2】特開2008-263790号公報
【特許文献3】特開2002-017256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、トランス脂肪酸や溶融塩が実質的に含まれておらず、C12の飽和脂肪酸が少ないにも関わらず、安価で、乳化安定性が良好な起泡性水中油型乳化油脂組成物、さらには該組成物をホイップして得られ、口溶けが良く、冷感と油のコクがあり、シマリ(硬さ変化)の少ないホイップドクリームを提供することである。さらに、本発明は、C12飽和脂肪酸を含む総飽和脂肪酸量が少なくても上記のような起泡性水中油型乳化油脂組成物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、トランス脂肪酸及びC12飽和脂肪酸の含有量が極めて少なく、且つ溶融塩を含有しなくても、パーム中融点部である油脂(A)と、パーム系油脂をエステル交換し特定の範囲にヨウ素価を調整した分別液状部である油脂(B)を特定量含有させることで、安価で、乳化安定性が良好な起泡性水中油型乳化油脂組成物が得られ、さらには該組成物をホイップすると、口溶けが良く、冷感と油のコクがあり、シマリ(硬さ変化)の少ないホイップドクリームが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明の第一は、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、油脂含量は25〜45重量%であり、該油脂全体中、トランス脂肪酸含量が1重量%未満、C12飽和脂肪酸が2重量%未満で、溶融塩を含有せず、前記油脂全体中、パーム油中融点部である油脂(A)50〜90重量%及び下記油脂(B)10〜50重量%を含有し、油脂(A)と油脂(B)の合計量が80〜100重量%である起泡性水中油型乳化油脂組成物に関する。
油脂(B):パーム系油脂のエステル交換油の分別液状部であり、且つヨウ素価が38〜62の油脂。
【0007】
好ましい実施態様は、油脂(B)が、パーム系油脂のエステル交換油を温調しながら攪拌して結晶を析出させた後、その油脂を加圧圧搾装置に導入して圧搾して得られた液状部の油脂組成物である、上記記載の起泡性水中油型乳化油脂組成物に関する。より好ましくは、5〜48時間、30〜43℃で温調しながら攪拌して結晶を析出させ、その後の圧搾時の圧力が0.5〜5MPaである上記記載の起泡性水中油型乳化油脂組成物、更に好ましくは、油脂全体中の総飽和脂肪酸含量が70重量%以下である上記記載の起泡性水中油型乳化油脂組成物、特に好ましくは、油脂(A)が、SUS型トリグリセリドを油脂(A)全体中50〜80重量%含有するように分別された油脂である上記記載の起泡性水中油型乳化油脂組成物に関する。本発明の第二は、上記記載の起泡性水中油型乳化油脂組成物をホイップしてなるホイップドクリームに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従えば、トランス脂肪酸や溶融塩が実質的に含まれておらず、C12の飽和脂肪酸が少なくても、安価で、乳化安定性が良好な起泡性水中油型乳化油脂組成物、さらには該組成物をホイップして得られ、口溶けが良く、冷感と油のコクがあり、シマリ(硬さ変化)の少ないホイップドクリームを提供することができる。さらに、C12飽和脂肪酸を含む総飽和脂肪酸量が少なくても上記のような起泡性水中油型乳化油脂組成物を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物は、特定量の油脂を含有し、油脂全体中、トランス脂肪酸及びC12飽和脂肪酸含量が特定量未満で、且つ溶融塩を含有せずに、パーム中融点部である油脂(A)と、パーム系油脂をエステル交換し特定の範囲にヨウ素価を調整した分別液状部である油脂(B)を特定量含有することを特徴とする。
【0010】
本発明において、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中の油脂含量は25〜45重量%であることが好ましく、30〜40重量%がより好ましい。25重量%より少ないと、ホイップドクリームにおいて油のコクが感じ難くなる場合がある。また45重量%より多いと、起泡性水中油型乳化油脂組成物の乳化安定性が悪くなる場合がある。
また、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中の水分含量は30〜70重量%であることが好ましく、45〜65重量%がより好ましい。30重量%より少ないと、起泡性水中油型乳化油脂組成物の乳化安定性が悪くなる場合がある。また70重量%より多いと、ホイップドクリームの冷感が得られなくなる場合がある。
【0011】
本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物において、健康の観点から、油脂全体中のトランス脂肪酸含量は、少なければ少ないほど良く、1重量%未満であることが好ましい。トランス脂肪酸含量を少なくするには、部分硬化油の使用を少なくすれば良い。
【0012】
また、本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物において、風味に悪影響を及ぼす場合があることや、健康上好ましくないことから、溶融塩含量は、少なければ少ないほど良く、全く含有しないことが好ましい。前記溶融塩としては、リン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム等が挙げられる。更に、コハク酸、乳酸、炭酸、酢酸等の有機酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0013】
更に、本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物において、油脂全体中のC12飽和脂肪酸含量は2重量%未満であることが好ましく、パーム系油脂も若干C12飽和脂肪酸を含むため、0.05重量%以上2重量%未満がより好ましい。2重量%より多いと、ホイップドクリームのシマリが強くなり作業性が悪くなる場合がある。C12飽和脂肪酸含量を2重量%未満とするには、パーム核油、ヤシ油などラウリン系油脂、およびこれらの分別油、硬化油、もしくはエステル交換油の使用を少なくすれば良い。
また、他C12以外の飽和脂肪酸含量も少ないことが健康の観点から好ましく、油脂全体中の総飽和脂肪酸含量は70重量%以下であることが好ましく、60重量%以下であることがより好ましい。油脂中の総飽和脂肪酸含量を前記の範囲とするには、硬化油や前記ラウリン系油脂などの飽和脂肪酸含量が多い油脂の使用を少なくすれば良い。
【0014】
本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物には、パーム中融点部である油脂(A)と、パーム系油脂のエステル交換油の分別液状部である油脂(B)を含み、油脂全体中、前記油脂(A)を50〜90重量%及び前記油脂(B)を10〜50重量%含有し、かつ、油脂全体中、油脂(A)と油脂(B)の合計量が80〜100重量%であることが好ましい。80重量%より少ないと、該組成物を用いて作製したホイップドクリームにおいて、良好な口溶けや冷感が得られなくなる場合がある。
【0015】
前記油脂(A)は、パーム油を多段階分別又は溶剤分別を用いて分別した中融点部であり、SUS型トリグリセリドを油脂(A)全体中50〜80重量%含有するように分別された油脂が好ましい。より好ましくは、SUS型トリグリセリドを60〜75重量%含有する。50重量%より少ないと、ホイップドクリームにおいて良好な口溶けや冷感が得られなくなる場合がある。また80重量%より多いと、起泡性水中油型乳化油脂組成物の乳化安定性が悪くなる場合がある。
前記SUS型トリグリセリドとは、対称型の1,3ジ飽和脂肪酸−2不飽和脂肪酸トリグリセリドのことであり、1,3位の飽和脂肪酸残基はパルミチン酸又はステアリン酸が好ましく、2位の不飽和脂肪酸残基はオレイン酸又はリノール酸が好ましい。
【0016】
本発明の油脂(B)は、パーム系油脂をランダムエステル交換した後に、固体部を除去して得られる液状部のことである。得られた液状部のヨウ素価は38〜62であることが好ましく、40〜58であることがより好ましい。ヨウ素価が38より低いと、ホイップした起泡性水中油型乳化油脂組成物の口溶けが悪くなる場合がある。またヨウ素価が62より高いと、ホイップドクリームの冷感が得られなくなる場合がある。前記エステル交換に供するパーム系油脂のヨウ素価は30〜58が好ましい。その範囲であれば、最終的に得られる油脂(B)のヨウ素価を38〜62に調整し易い。
【0017】
前記油脂(B)に用いるヨウ素価30〜58のパーム系油脂としては、例えば、そのまま使用する場合、パーム油、パームステアリン、パーム中融点部、パームオレインが挙げられ、そのまま使用しない場合でもパームダブルオレイン、パームスーパーオレイン、パームトップオレイン、パームハードステアリンなどの分別油、もしくはこれらの硬化油及びエステル交換油を混合しヨウ素価30〜58に調整しても良い。
【0018】
パーム系油脂のランダムエステル交換方法としては、「ナトリウムメチラートなどのアルカリ触媒などを用いた化学法」や「リパーゼを用いた酵素法」など、一般的に食用油脂に適用することができる方法が挙げられる。なお、本発明におけるランダムエステル交換方法としては、「化学法」もしくは「トリグリセリドの2位にもある程度の反応性があるリパーゼ、例えば、Thermomyces属由来のリパーゼなどを用いる酵素法」を利用することが好ましい。
【0019】
前記エステル交換後の分別方法としては、食用油脂に一般的に適用される方法が挙げられ、例えば、パーム系油脂のエステル交換油を温調しながら攪拌して結晶を析出させた後、その油脂を加圧圧搾装置に導入して圧搾して液状部を得る。具体的には、パーム系油脂のランダムエステル交換油を5〜48時間、30〜43℃で温調しながら攪拌して結晶を析出させ、その油脂を加圧圧搾装置に導入し、30〜43℃を維持しながら0.5〜5MPaで圧搾すると、容易にヨウ素価が38〜62の液状部が得られて好ましい。
【0020】
前記油脂(A)及び油脂(B)以外の油脂としては、例えば、菜種油,大豆油,サフラワー油,コーン油,米油,綿実油,パーム系油脂などの植物性油脂、乳脂ラードなどの動物油脂、および、これらの油脂の分別油、極度硬化油もしくはエステル交換油などが挙げられる。
【0021】
本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物中の油相には、必要に応じて乳化剤、増粘剤、呈味剤、糖類、乳製品、着色料、香料、塩分、ビタミン類、ミネラル類、油溶性酸化防止剤、その他食品成分等の添加剤を混合してもよい。
【0022】
前記乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン酸脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどの合成乳化剤、大豆レシチン、卵黄レシチン、及びこれらの分画レシチン、更には酵素分解したリゾレシチンといった改質レシチンなどのレシチン類や乳由来のリン脂質を含む天然由来の乳化剤などが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種以上を用いることができる。
【0023】
前記増粘剤としては、例えば、ジェランガム、グアガム、キサンタンガム、寒天、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ローカストビーンガム、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、結晶セルロース、微結晶セルロース、澱粉、デキストリン等を挙げることができる。
【0024】
前記糖類としては、例えば、ブドウ糖、砂糖、果糖、異性化糖、液糖、澱粉糖化物、デキストリン、澱粉又は糖アルコール等を挙げることができる。
【0025】
前記乳製品としては、カゼイン、ホエイパウダー、蛋白質濃縮ホエイパウダー、全脂粉乳、脱脂粉乳、バターミルクパウダー、乳糖、トータルミルクプロテイン、生乳、牛乳、全脂濃縮乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、バターミルク、ホエー、生クリーム、加糖練乳、無糖練乳、バター、チーズ等を用いてもよく、さらに、UF膜やイオン交換樹脂処理等により蛋白質を分離、分画したものや、カゼインナトリウムやカゼインカリウムのような乳蛋白質の塩類が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種以上を使用することができる。
【0026】
前記呈味剤、着色料、香料、塩分、ビタミン類、ミネラル類、油溶性酸化防止剤は、食品用であれば特に限定はなく、必要に応じて適宜使用することができる。
【0027】
本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物の製造方法は、特に限定はないが、以下に例示する。まず、50〜70℃に加温溶解した油脂に、必要に応じて油溶性乳化剤、香料等の油溶性原料を混合し、該混合物を50〜70℃に維持しながら攪拌し、油相を調製する。また、50〜70℃の温水に、必要に応じて水溶性乳化剤、蛋白質、塩類、香料、増粘剤、呈味剤、糖類、乳製品、着色料、塩分、ビタミン類、ミネラル類などの水系原料を混合し、50〜70℃に維持しながら攪拌し、水相を調製する。そして、水相を攪拌しながらそこへ油相を添加して、予備乳化する。その後、微細化、均質化、予備加熱、殺菌、1次冷却、均質化、2次冷却、3次冷却、エージングなどの通常行われる各処理を行うことにより、本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物を得ることができる。
【0028】
そして、得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物を、オープン式ホイッパーや密閉式連続ホイップマシンを用いて、トッピングするのに適度な硬さに到達するまでホイップすることで、本発明のホイップドクリームが得られる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0030】
<油脂の上昇融点の測定>
実施例及び比較例で用いた油脂について、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法2.3.4.2-90融点(上昇融点)」に記載の方法に基づき測定した。
【0031】
<ヨウ素価の測定>
実施例及び比較例で用いた油脂について、基準油脂分析試験法「3.3.3−1996 ヨウ素価(ウィイスーシクロヘキサン法)」に記載の方法に基づき測定した。
【0032】
<油脂中の脂肪酸組成の測定>
油脂中の脂肪酸組成の測定は、FID恒温ガスクロマトグラフ法により行った。FID恒温ガスクロマトグラフ法とは、社団法人日本油化学協会編「基準油脂分析試験法」(発行年:1996年)の「2.4.2.1 脂肪酸組成」に記載された方法である。
【0033】
<油脂中の各トリグリセライド含量の測定>
油脂中の各トリグリセライド含量は、HPLCを用いて、AOCS Official Method Ce 5c−93に準拠して測定し、各ピークのリテンションタイムおよびエリア比から算出した。以下に、分析の条件を記す。
溶離液 :アセトニトリル:アセトン=70:30(体積比)
流速 :0.9ml/分
カラム :ODS
カラム温度:36℃
検出器 :示差屈折計
【0034】
<ホイップ直前の粘度(原液粘度)の評価>
実施例及び比較例で得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物(原液)をB型粘度計(TOKIMEC INC.製)を用いて測定し、その測定値(単位:mPa・s)をホイップ直前の粘度の評価値とした。
【0035】
<原液乳化安定性の評価>
実施例及び比較例で得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物(原液):60gを100ccビーカーに入れ、それを直径4cmの撹拌ペラで120rpmの条件で攪拌し、流動性が無くなるまでに要する時間を乳化安定性の評価値とした。
【0036】
<ホイップドクリームの硬さの評価>
カントーミキサー(CS型20:関東混合機工業株式会社製)に、実施例及び比較例で得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物の品温を、5℃に調整し4kg、グラニュー糖400gを入れ、高速撹拌条件(380rpm)でホイップし、トッピングするのに適度な硬さに到達するまでホイップし、ホイップ直後及び20℃で30分静置後のサンプルを容器に入れた後、クリープメーター(「RE2−33005S」、株式会社山電製)を用いて直径16mmの円柱状のプランジャーにて、速度5mm/sの速さで1cm貫入時の最大荷重を測定し、該測定値をホイップドクリームの硬さの評価値とした。なお、ここでトッピングするのに適度な硬さとは、最大荷重が0.25〜0.35Nになる硬さのことである。
【0037】
<ホイップドクリームの口溶けの評価>
実施例及び比較例で得られたホイップドクリームを専門パネラー8名に食べてもらって官能評価を行い、それを平均してホイップドクリームの口溶けの評価結果とした。その際の評価基準以下は以下の通りである。
◎:口溶けがかなり軽い。
○:口溶けが軽い。
△:口溶けがやや重い。
×:口溶けが重い。
【0038】
<ホイップドクリームの冷感の評価>
実施例及び比較例で得られたホイップドクリームを専門パネラー8名に食べてもらって官能評価を行い、それを平均してホイップドクリームの冷感の評価結果とした。その際の評価基準以下は以下の通りである。
◎:冷たく感じられる。
○:やや冷たく感じられる。
△:あまり冷たく感じられない。
×:冷たく感じられない。
【0039】
<ホイップドクリームの油のコク味の評価>
実施例及び比較例で得られたホイップドクリームを専門パネラー8名に食べてもらって官能評価を行い、それを平均してホイップドクリームの油のコク味の評価結果とした。その際の評価基準以下は以下の通りである。
◎:濃厚な油のコクが感じられる。
○:やや油のコク感じられる。
△:あまり油のコクが感じられない。
×:油のコクが感じられない。
【0040】
(製造例1) 油脂(B)の作製
脱酸処理済みのパーム油(ヨウ素価52)50重量部と脱酸処理済みのパームステアリン(ヨウ素価35)50重量部を90℃まで加熱して融解させた後、液状となった混合油に0.2重量部のナトリウムメチラートを加え、次いで、その液状の混合油を減圧下で30分間攪拌した。次に、その混合油を自然冷却して水洗した後、その混合油に白土を2重量部加えてから、その混合油を90℃で減圧下30分間攪拌して脱色し、さらに250℃で1時間脱臭してエステル交換油脂1を得た。このエステル交換油脂1を70℃に加熱して融解させた後、その油脂を35℃に温調しながら12時間攪拌して結晶を析出させた。その後、その油脂を加圧圧搾装置に導入して3MPaの圧力で圧搾し、液状部を得た。そして、この液状部を250℃で1時間脱臭して油脂B1(上昇融点27℃、ヨウ素価53.5)を得た。
【0041】
(製造例2)油脂(B)の作製
「脱酸処理済みのパーム油(ヨウ素価52)50重量部と脱酸処理済みのパームステアリン(ヨウ素価35)50重量部」を脱酸処理済みのパーム油(ヨウ素価52)100重量部に代えた以外は、製造例1と同様にしてエステル交換および脱色を行ってエステル交換油脂2を得た。このエステル交換油脂2を37℃に温調しながら攪拌して結晶を析出させた。12時間晶析処理を行った後、その油脂を加圧圧搾装置に導入して3MPaの圧力で圧搾し、液状部を得た。この液状部を250℃で1時間脱臭して油脂B2(上昇融点30℃、ヨウ素価55.7)を得た。
【0042】
(製造例3)油脂(B)の作製
「脱酸処理済みのパーム油(ヨウ素価52)50重量部と脱酸処理済みのパームステアリン(ヨウ素価35)50重量部」を脱酸処理済みのパームステアリン(ヨウ素価35)100重量部に代えた以外は、製造例1と同様にしてエステル交換および脱色を行ってエステル交換油脂3を得た。このエステル交換油脂3を46℃に温調しながら攪拌して結晶を析出させた。12時間晶析処理を行った後、その油脂を加圧圧搾装置に導入して3MPaの圧力で圧搾し、液状部を得た。この液状部を250℃で1時間脱臭して油脂B3(上昇融点℃38、ヨウ素価40)を得た。
【0043】
(製造例4)油脂(B)の作製
「脱酸処理済みのパーム油(ヨウ素価52)50重量部と脱酸処理済みのパームステアリン(ヨウ素価35)50重量部」を脱酸処理済みのパームオレイン(ヨウ素価57)100重量部に代えた以外は、製造例1と同様にしてエステル交換および脱色を行ってエステル交換油脂4を得た。このエステル交換油脂4を33℃に温調しながら攪拌して結晶を析出させた。12時間晶析処理を行った後、その油脂を加圧圧搾装置に導入して3MPaの圧力で圧搾し、液状部を得た。この液状部を250℃で1時間脱臭して油脂B4(上昇融点26℃、ヨウ素価60)を得た。
【0044】
(製造例5)パームオレインのランダムエステル交換油(ヨウ素価57)の作製
「脱酸処理済みのパーム油(ヨウ素価52)50重量部と脱酸処理済みのパームステアリン(ヨウ素価35)50重量部」をパームオレイン(ヨウ素価57)100重量部に代えた以外は、製造例1と同様にしてエステル交換および脱色、脱臭を行ってパームオレインのランダムエステル交換油(ヨウ素価57)を得た。
【0045】
(製造例6)パームスーパーオレインのランダムエステル交換油(ヨウ素価64)の作製
「脱酸処理済みのパーム油(ヨウ素価52)50重量部と脱酸処理済みのパームステアリン(ヨウ素価35)50重量部」をパームスーパーオレイン(ヨウ素価64)100重量部に代えた以外は、製造例1と同様にしてエステル交換および脱色、脱臭を行ってパームスーパーオレインのランダムエステル交換油(ヨウ素価64)を得た。
【0046】
(製造例7)パームステアリンのランダムエステル交換油(ヨウ素価35)の作製
「脱酸処理済みのパーム油(ヨウ素価52)50重量部と脱酸処理済みのパームステアリン(ヨウ素価35)50重量部」をパームステアリン(ヨウ素価35)100重量部に代えた以外は、製造例1と同様にしてエステル交換および脱色、脱臭を行ってパームステアリンのランダムエステル交換油(ヨウ素価35)を得た。
【0047】
(実施例1) 起泡性水中油型乳化油脂組成物の作製
表1の配合に従って、起泡性水中油型乳化油脂組成物を作製した。即ち、パーム中融点部(SUS型トリグリセリド66重量%)33.3重量部、製造例1で得られた油脂B1(上昇融点27℃、ヨウ素価53.5)3.7重量部に、大豆レシチン0.16重量部、ヘキサグリセリンヘキサステアレート(HLB4.0)0.10重量部、テトラグリセリンモノステアレート(HLB8.4)0.08重量部を添加し、65℃で溶解して油相部を作製した。
一方、バターミルクパウダー3.0重量部、ホエイパウダー2.0重量部、ショ糖ステアリン酸エステル(HLB16)0.05重量部、ヘキサグリセリンモノステアレート(HLB11.6)0.05重量部を、表1の配合と最終的に同じになるように後のスチームインジェクションによるUHT殺菌工程での水分増加量を考慮した量の60℃の温水に溶解して水相部を作製した。
前記油相部を、前記水相部に添加して20分間予備乳化した後、高周速回転式乳化機(エム・テクニック(株)製「クレアミックス」)を用いて周速31.4m/sの回転速度で微細化した後、高圧ホモジナイザーを用いて1段目2.0MPa/2段目1.0MPaの圧力で処理した。その後、プレート式加熱機を用いて90℃まで予備加熱してから、UHT殺菌機(スチームインジェクション)を用いて142℃で4秒間殺菌処理し、蒸発冷却せずにその後プレート式冷却機を用いて60℃まで冷却し、再び高圧ホモジナイザーを用いて1段目6.5MPa/2段目2.0MPaの圧力で処理した。その後、プレート式冷却機で5℃まで冷却したものを容器に充填し、起泡性水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物の、油脂含量、脂肪酸組成、粘度、乳化安定性について表1にまとめた。
【0048】
(実施例2〜5) 起泡性水中油型乳化油脂組成物の作製
表1の配合に従って、油脂(A)と油脂(B)との配合比率を変更した以外は、実施例1と同様にして油脂含量37重量%の実施例2〜5の起泡性水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物の、油脂含量、脂肪酸組成、粘度、乳化安定性について表1にまとめた。
【0049】
(実施例6〜8) 起泡性水中油型乳化油脂組成物の作製
表1の配合に従って、油脂(A)と油脂(B)との配合比率及び組成物中の油脂含量を変更し、その分、水の含量を調整した以外は、実施例1と同様にして油脂含量45重量%の実施例6〜8の起泡性水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物の、油脂含量、脂肪酸組成、粘度、乳化安定性について表1にまとめた。
【0050】
(実施例9〜11) 起泡性水中油型乳化油脂組成物の作製
表1の配合に従って、油脂(A)と油脂(B)との配合比率及び組成物中の油脂含量を変更し、水相にデキストリン(DE:4)を3.0重量部配合し、その分、水の含量を調整し、またヘキサグリセリンモノステアレート(HLB:11.6)0.05重量部をヘキサグリセリンモノステアレート(HLB:11.6)0.03重量部およびヘキサグリセリンモノオレエート(HLB:11.6)0.02重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして油脂含量25重量%の実施例9〜11の起泡性水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物の、油脂含量、脂肪酸組成、粘度、乳化安定性について表1にまとめた。
【0051】
(実施例12〜14) 起泡性水中油型乳化油脂組成物の作製
表2の配合に従って、油脂(B)を製造例1の油脂B1(上昇融点27℃、ヨウ素価53.5)から製造例3の油脂B3(上昇融点℃38、ヨウ素価40)、製造例4の油脂B4(上昇融点26℃、ヨウ素価60)または製造例2の油脂B2(上昇融点30℃、ヨウ素価55.7)に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例12〜14の起泡性水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物の、油脂含量、脂肪酸組成、粘度、乳化安定性について、実施例1の結果とともに表2にまとめた。
【0052】
(比較例1) 起泡性水中油型乳化油脂組成物の作製
表3の配合に従って、油脂(A)と油脂(B)との配合比率を変更した以外は、実施例1と同様にして油脂含量37重量%の比較例1の起泡性水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物の、油脂含量、脂肪酸組成、粘度、乳化安定性について、実施例1の結果とともに表3に示した。
【0053】
(比較例2) 起泡性水中油型乳化油脂組成物の作製
表3の配合に従って、油脂(A)を、パーム中融点部(SUS型トリグリセリド66重量%)33.3重量部からパーム中融点部(SUS型トリグリセリド66重量%)10.1重量部およびパーム中融点部(SUS型トリグリセリド78重量%)23.6重量部の合計33.7重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして油脂含量37重量%の比較例2の起泡性水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物の、油脂含量、脂肪酸組成、粘度、乳化安定性について、表3に示した。
【0054】
(比較例3〜6)
表3の配合に従って、油脂B1に代えて、製造例5のパームオレインのランダムエステル交換油(ヨウ素価57)(比較例3)、製造例6のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油(ヨウ素価64)(比較例4)、製造例7のパームステアリンのランダムエステル交換油(ヨウ素価35)(比較例5)またはパーム核油硬化油(融点36℃、C12飽和脂肪酸46重量%)(比較例6)を配合した以外は実施例3と同様にして油脂含量37重量%の比較例3〜6の起泡性水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物の、油脂含量、脂肪酸組成、粘度、乳化安定性について、実施例3の結果とともに表3にまとめた。
【0055】
(比較例7)
実施例1において、油脂B1に代えてパーム核油硬化油(融点36℃、C12飽和脂肪酸46重量%)を同量配合した以外は実施例1と同様にして油脂含量37重量%の比較例7の起泡性水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物の、油脂含量、脂肪酸組成、粘度、乳化安定性について、表3に示した。
【0056】
(実施例15〜25) ホイップドクリームの作製
実施例1〜11で得られ、5℃に維持されていた起泡性水中油型乳化油脂組成物4kgと、グラニュー糖400gとを混合し、カントーミキサー(CS型20:関東混合機工業株式会社製)を用いて高速撹拌条件(380rpm)でトッピングするのに適度な硬さに到達するまでホイップしホイップドクリームを得た。得られたホイップドクリームの硬さ、口溶け、冷感、油のコク味を評価し、その結果を表1にまとめた。
【0057】
【表1】
【0058】
(実施例26〜28) ホイップドクリームの作製
実施例12〜14で得られ、5℃に維持されていた起泡性水中油型乳化油脂組成物を用いて実施例15〜25と同様にしてホイップドクリームを得た。得られたホイップドクリームの硬さ、口溶け、冷感、油のコク味を評価し、その結果を実施例15の結果とともに表2にまとめた。
【0059】
【表2】
【0060】
(比較例8〜14) ホイップドクリームの作製
比較例1〜7で得られ、5℃に維持されていた起泡性水中油型乳化油脂組成物を用いて実施例15〜25と同様にしてホイップドクリームを得た。得られたホイップドクリームの硬さ、口溶け、冷感、油のコク味を評価し、その結果を実施例15、17の結果とともに表3にまとめた。
【0061】
【表3】
【0062】
表1〜3に示した結果から明らかなように、油脂全体中、トランス脂肪酸及びC12飽和脂肪酸含量が特定量未満で、且つ溶融塩を含有せずに、パーム中融点部である油脂(A)と、パーム系油脂をエステル交換し特定の範囲にヨウ素価を調整した分別液状部である油脂(B)を特定量含有する本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物によれば、トランス脂肪酸や溶融塩が実質的に含まれておらず、C12の飽和脂肪酸や他の飽和脂肪酸量が少なくても、安価で、乳化安定性が良好な起泡性水中油型乳化油脂組成物、さらには該組成物をホイップして得られ、口溶けが良く、冷感と油のコクがあり、シマリの少ないホイップドクリームを提供することができた。