(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。
本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0017】
本発明に関し、適宜、内視鏡の操作者側に近い側を基端とし、当該操作者に遠い側を先端として規定して説明する。また、基端側から先端側へ向かう方向又は先端側から基端側へ向かう方向を、適宜、先基端方向という場合がある。
また本発明を説明するにあたり、適宜、内周面または外周面という言葉を用いる場合がある。特段の説明がない場合には、上記内周面は内視鏡用フード10の軸心に対向する面を意味し、上記外周面は、内視鏡用フード10の軸心に非対向の面を意味する。
【0018】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態の内視鏡用フード10およびフード付き内視鏡200を示す平面図である。
図2は、フード付き内視鏡200の正面図である。
図3は、
図1のIII−III線縦断面図であり、粘膜組織TSをフード本体部50の先端開口30に吸着している状態を示す図である。
はじめに内視鏡用フード10(以下、単にフード10ともいう)の概要について説明する。
尚、本実施形態を説明するにあたり、先端開口30から内部空間Vに流入した体液や、送水ノズル107から観察光学系105に向けて噴射された洗浄液を総称して「液体」と呼ぶ場合がある。
【0019】
本実施形態のフード10は、
図1に示すとおり、基端開口20と、先端開口30と、内視鏡100の先端部110が装着される装着部40と、装着部40の先端側に延出したフード本体部50と、を有している。
フード10には、フード10の内周面31(
図3参照)に形成された内側開口51(
図3参照)およびフード10の外周面32に形成された外側開口52を有して厚さ方向に貫通する排液口60が設けられている。内側開口51の少なくとも一部は、フード本体部50に設けられている。加えて、フード10は、排液口60に連通する排液溝70がフード10の外周面32またはフード本体部50の内周面31aに沿って設けられている。
【0020】
本実施形態によれば、フード本体部50の内部に溜まった液体を、排液口60と排液溝70とを連続して流通させつつ、フード10の外部へ排出させることを可能とする。上記液体の流れ方向は、所定方向に規制され易く、一度、流れが所定方向に規制された液体は、持続的かつ速やかにフード10の外側へと導出される。ここで所定方向とは、たとえば排液溝70の延在方向である。
このため、フード10の内部の液体が排液口60を通じてフード10の外部に迅速に排出される。
【0021】
本実施形態における排液溝70は、フード10に装着される内視鏡100の周面112に対向しておらず、少なくとも厚さ方向の外側に開放されている。そのため排液溝70を流通する液体が排液溝70において目詰まりを起こすという問題が生じ難い。
【0022】
次に、本実施形態のフード10について詳細に説明する。本実施形態にかかるフード10は、装着部40の長軸方向が内視鏡100の長軸方向と略一致している。すなわち、
図3に一点鎖線で示すように、装着部40の軸心AX1は、フード10の長軸方向を示す。
図3に示すフード10の縦断面とは、フード10を長軸方向に沿って切断した断面をいう。本実施形態における装着部40およびフード本体部50はそれぞれ略円筒状をなし、装着部40の軸心AX1とフード本体部50の軸心AX2とは交差している。軸心AX2とは、フード本体部50の内周面31aを軸心AX1に対して垂直に切断した略円形の重心を結んだ線を直線で近似したものである。ただし本発明はこれに限らず、装着部40とフード本体部50とが同軸上に配置されていてもよい。尚、上記円筒状とは、筒状体であって、断面が円状、楕円状、または長円状を含み、当該筒状体は、均一な断面形状である場合と、所定の箇所の断面形状と他の箇所の断面形状とが異なる場合と、を含む。
【0023】
装着部40とフード本体部50との中間部を境界部25と呼称する。境界部25は所定の広がりをもつ領域であり、境界部25と装着部40、または境界部25とフード本体部50とは必ずしも明確に区分けされている必要はない。本実施形態の境界部25は、フード10の内周面31の規制部24と、フード10の外周面32のスロープ部26とを含む領域である。
【0024】
図2はフード本体部50の軸心AX2の方向から見たフード付き内視鏡200の正面図である。
図1および
図2に示すとおり、本実施形態にかかるフード10は、内視鏡100とともに、フード付き内視鏡200を構成する。
【0025】
図2に示すとおり、内視鏡100の先端部110には、送水ノズル107および観察光学系105が設けられている。フード10の装着部40は、観察光学系105が装着部40の軸心AX1よりも内側開口51寄りに位置する装着角度で内視鏡100の先端部110に装着されている。観察光学系105と、内側開口51との位置関係は、内視鏡100を正面側から観察することにより確認可能である。
【0026】
先端部110を構成する面には、親水性処理が施されているとよい。同様に内視鏡100の先端側の周面112(
図1参照)にも親水性処理が施されているとよい。具体的な親水性処理は特に限定されないが、一例として、ポリビニルアルコール(PVA)またはポリビニルピロリドン(PVP)などの親水性材料からなるトップコート層を被膜形成することが挙げられる。
【0027】
フード付き内視鏡200によれば、フード本体部50の内部に存在する液体が排液口60から迅速に排出され得るので、排液口60寄りに配置された観察光学系105の視野が良好に確保される。
【0028】
内視鏡100の先端部110には、
図2に示されるように、光学系である観察光学系105以外にも、一対の照明光学系106、送水ノズル107、処置具出口部108、および噴射孔109などが適宜設けられる。フード本体部50の正面視において、観察光学系105、照明光学系106、処置具出口部108または噴射孔109の少なくともいずれかは、フード本体部50の先端開口30から露出する。特に
図2に示す本実施形態では、フード本体部50の正面視において、観察光学系105、照明光学系106、処置具出口部108および噴射孔109がいずれも先端開口30から完全に露出するが、本実施形態のフード付き内視鏡200は、これに限定されない。
【0029】
内視鏡100の先端部110には、送水ノズル107および観察光学系105が設けられている。内視鏡用フード10の装着部40が、送水ノズル107と観察光学系105との延長線上に内側開口51が位置する装着角度で内視鏡100の先端部110に装着されている(
図2参照)。
【0030】
かかる構成のフード付き内視鏡200によれば、観察光学系105に付着した汚れを送水ノズル107から噴出される水などの洗浄液によって洗浄したとき、当該洗浄液を内側開口51を介して外部にスムーズに排出することができる。
【0031】
観察光学系105はCCD(Charge Coupled Device)カメラを含み、切除患部などの被写体を観察するものである。
【0032】
照明光学系106は、内視鏡100の光源スイッチ(図示せず)と接続されたライトガイド(図示せず)を含む。照明光学系106は、内視鏡100の前方(先端側)に照明光を照射する。
【0033】
送水ノズル107は、内視鏡100の基端操作部(図示せず)と連通しており、基端操作部の操作により空気などの気体や水などの液体を噴射する。もっぱら気体を噴射して用いる場合も、本実施形態では送水ノズル107と呼称している。送水ノズル107から気体や液体を噴射することにより、内視鏡100の先端部110、観察光学系105およびフード本体部50の内周面31aに付着した汚れを取り除くことができる。
【0034】
処置具出口部108は、鉗子孔120(
図3参照)の先端開口である。鉗子孔120に挿入された処置具が処置具出口部108から突出し、さらにフード10の先端開口30よりも前方に突出して切除患部を剥離切離する。鉗子孔120の基端側は内視鏡本体の吸引機構(図示せず)と連接されており、処置具を挿入した状態で鉗子孔120の内部を負圧吸引することができる。これにより、送水ノズル107や噴射孔109から噴出された洗浄水や切除患部から滲出した体液を、処置具出口部108より吸引して排出することが可能である。
【0035】
噴射孔109は、切除患部に向けて内視鏡100から前方に向けて水などの液体を噴射する手段である。噴射孔109は内視鏡100の基端側の噴射物供給口(図示せず)まで連通しており、ポンプなどの液体供給手段と接続されている。
【0036】
図2および
図3に示すとおり、本実施形態における先端開口30は、傾斜開口30aおよび垂直開口30bを有している。傾斜開口30aおよび垂直開口30bは、フード本体部50の先端側の端面をそれぞれ構成するとともに、互いに交差している。
先端開口30の少なくとも一部は、装着部40の軸心AX1に対して径方向の外向きに傾斜する法線を有する傾斜開口30aを有している。傾斜開口30aの法線方向(開口方向)の反対側に排液口60が設けられている。
ここで開口方向とは、先端開口30を含む仮想面の法線方向であり、開口方向の反対側とは、上記法線方向と反対の方向である。
垂直開口30bは、先端開口30の端面であって軸心AX1に対し略垂直な端面である。
図2に示すように、フード本体部50の正面視において、処置具出口部108の中心が傾斜開口30aの内部に位置する装着角度でフード10を内視鏡100に装着することが好ましい。これにより、処置具出口部108から先端側に突出する処置具の動作が、フード本体部50に干渉されることが回避される。
【0037】
図2に示すとおり、処置具出口部108に傾斜開口30aが対応する装着角度でフード10を内視鏡100に取り付けた場合に、送水ノズル107と観察光学系105との延長線上に内側開口51が自然に配置されることとなる。内視鏡100においては、観察光学系105の視野を確保する観点から処置具出口部108と観察光学系105とは先端部110において反対側に配置されることが一般的なためである。これにより、送水ノズル107から観察光学系105に向けて噴射された洗浄水が排液口60から好適に排出される。
【0038】
フード本体部50は、装着部40の軸心AX1と平行な直線稜線部114と、直線稜線部114の対向位置にあって軸心AX1に対して傾斜した傾斜稜線部116と、を含んでいる。排液口60は、境界部25のうち傾斜稜線部116の側に形成されている。排液口60から排出された液体は、傾斜稜線部116を伝って傾斜方向に排出され易い。
直線稜線部114と傾斜稜線部116とが対向位置にあるとは、両者がフード本体部50の径方向の反対側に位置していることをいう。
【0039】
本実施形態にかかるフード10は、内視鏡の挿入深さを規制する規制部24(
図3参照)を有している。
本実施形態の規制部24は、装着部40から境界部25にかけて縮径する段差であり、内視鏡100の先端部110が当接する当接部24aを有している。基端開口20から挿入された内視鏡100は、先端部110が当接部24aに当接することによって、さらに先端方向に挿入されることが規制される。
このほか、規制部24は、内視鏡100と係合してフード10に対する内視鏡100の挿入深さを規制する手段を広く採ることができる。具体的には、たとえば、先基端方向の中間位置において、フード10の内径が、先端部110の外径よりも小さくなるよう、フード10の内径を基端方向から先端方向に向けて連続的に縮径してもよい。
【0040】
スロープ部26は、基端側の装着部40から先端側のフード本体部50にかけてフード10の外径が拡大するようにして形成されている。フード10の長軸方向の寸法と径方向の寸法との大小は任意である。
【0041】
装着部40の内径は内視鏡100の先端部110の外径と同じか僅かに小さく構成されている。装着部40の内径が内視鏡100の先端部110の外径より小さい場合、挿入された先端部110により装着部40の内径が押し広げられ、装着部40の内周が先端部110の外周に対し良好に密着し得る。またフード本体部50の内径は内視鏡100の先端部110の外径よりも小さい。このため、内視鏡100を装着部40に深く挿入していくと、
図3に示すように先端部110が規制部24に突き当たる。内視鏡100の内部には鉗子孔120が長軸方向に沿って通孔形成されている。内視鏡100の先端部110において、鉗子孔120は規制部24に干渉せず、鉗子孔120の全体がフード本体部50の内部空間Vに露出している。鉗子孔120には、高周波メスや注射針などの処置具(図示せず)が進退自在に挿入される。
【0042】
フード本体部50および装着部40は軟質樹脂材料で構成されている。本実施形態ではフード本体部50および装着部40は一材一体成形されている。軟質樹脂材料としては、スチレン系エラストマー、シリコーンゴム、ポリウレタンまたはポリ塩化ビニル等を例示することができるが、これに限定されない。軟質樹脂材料の硬度は特に限定されず、体組織にフード10が当接した際に、体組織を傷つけず、かつ、切除手技中に観察光学系の視野を確保可能な程度の硬さを示すものが適宜選択される。特に、排液溝70を有するフード10に関し、患部に当接されたフード10が、切除手技中に良好に形状を保持するという観点からは、たとえば、デュロメーター硬度A25度以上A65度以下であることが好ましく、A40度以上A50度以下であることがより好ましい。
【0043】
フード本体部50の少なくとも内周面31aには親水性処理が施されることが好ましい。これにより、フード本体部50の内部に進入した水や体液等が先端開口30および排液口60から容易に排出されて内視鏡100の視野を効果的に確保することができる。本実施形態のフード10では、排液口60を画定する周面にも親水性処理が施されているとよい。これにより、排液口60を通じて水や体液が容易に排出される。
【0044】
親水性処理は特に限定されないが、例えば、スパッタリングまたは蒸着等の気相法による製膜、ディッピングコーティング、スピンコーティング等の液相法による製膜、親水膜の基となる薬剤を布、脱脂綿等により塗布する製膜、表面の水酸基化を行うプラズマ処理等の方法等を用いることができる。
【0045】
以下、排液口60について詳細に説明する。上述のとおり、排液口60は、内側開口51と外側開口52とを有してフード10の厚さ方向に貫通している。本実施形態における排液口60を画定する周面は、軸心AX1に対し略垂直である。図示省略するが、排液口60を画定する周面は、縦断面(即ち
図3で観察される断面)において、周面が軸心AX1に対し傾斜していてもよい。
【0046】
図3に示すとおり、内側開口51は、装着部40とフード本体部50とに跨って形成されている。
フード10は、内視鏡100の挿入深さを規制する規制部24を有しており、規制部24に挿入深さを規制された内視鏡100の先端部110の周面112が内側開口51を部分的に塞ぐように排液口60が形成されている。
換言すると、内側開口51は、装着部40とフード本体部50との境界領域である境界部25を含んで形成されている。
【0047】
本実施形態における規制部24は、径方向の内側に突出するとともに挿入された内視鏡100と当接可能な当接部24aを有している。
図3に示すとおり、本実施形態では、先基端方向における内側開口51の形成領域に、当接部24aが位置している。
これにより、排液口60は、規制部24に挿入深さを規制された内視鏡100の先端部110の周面112により内側開口51が部分的に塞がれるよう構成されている。
【0048】
内視鏡100の先端部110の周面112が排液口60の内側開口51を部分的に塞ぐことにより、内側開口51の実質的な開口面積を狭め、毛管現象を発生させつつ、内視鏡100の周面112の濡れ性を用いてフード本体部50の内部空間Vに存在する液体を排液口60に導入することができる。このとき、周面112は、親水性処理がなされていることが好ましい。内側開口51には親水性の内視鏡100の周面112が露出して配置されている。
【0049】
排液口60は実質的にその全体がフード10の境界部25に形成されていてもよい。本実施形態の排液口60は、境界部25を含む領域に穿設された直管状の貫通孔である。
【0050】
図1に示すように、本実施形態の排液口60は、独立した1つの孔である。ただしこれに限定されず、排液口60は、互いに連通していない独立した複数個の孔であってもよい(図示省略)。
外側開口52および内側開口51の形状は特に限定されず、円形、長円形、楕円形、角丸スリット状などの略長円形としてもよいし、不定形あるいは、任意の形状であってもよい。また、排液口60として複数個の孔が設けられる場合には、互いの孔を構成する内側開口51および外側開口52は、孔ごとに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0051】
本実施形態における外側開口52は、
図1に示すとおり、周方向における開口幅53が先端開口30の側から基端開口20の側に向けて増大する幅拡大領域54を有している。
排液口60から排出された液体が、先端方向に流れると、再度、先端開口30からフード10の内部に流入する可能性がある。これに対し、かかる外側開口52の形状によれば、フード10の内部から排液口60を介して外部に排出された液体の流れを、先端方向を回避して基端方向に規制し易い。
本実施形態では、内側開口51も、上述する幅拡大領域54を有している。
【0052】
幅拡大領域54における外側開口52の開口幅53は、先基端方向において、外側開口52の先端から基端に向けて連続的に増大している。
たとえば
図1に示すように、幅拡大領域54の先端はV字状をなし、狭窄している。これにより、厚さ方向に流通する液体の毛管現象を誘引し、フード10の内部からフード10の外部に液体を排出させ易い。
【0053】
図1に示すように、本実施形態にかかるフード10は、幅拡大領域54が内側開口51の一部を塞ぐ内視鏡100の周面112に対し、径方向に対向するよう構成されている。
即ち、平面視上、幅拡大領域54の少なくとも一部と、内側開口51の一部を塞ぐ内視鏡100の周面112と、が視認方向において重なっている。
これにより、周面112により一部が塞がれた狭窄の内側開口51から排出された液体は、内側開口51を塞ぐ周面112に沿って開口幅53の拡大する方向に導かれ易い。
【0054】
本実施形態における外側開口52は、周方向における開口幅53が先基端方向の中間から基端まで縮小する幅縮小領域55を有している。
たとえば、
図1に示す幅縮小領域55は、外側開口52の基端が、基端方向に向けて緩やかに凸状に形成されている。平面視上、外側開口52を画定するラインの基端および基端近傍は、当該基端を頂点としてV字状をなしている。図示省略するが、上記V字状の先端をなす外側開口52の基端は、2点以上あってもよく、平面視上、外側開口52を画定するラインの基端および基端近傍は、W字状をなしてもよい。
本実施形態では、内側開口51も上述する幅縮小領域55を有している。
【0055】
幅縮小領域55における外側開口52の開口幅53は、先端から基端に向けて連続的に縮小している。
【0056】
このように、幅縮小領域55を有する外側開口52によれば、排出される液体を開口幅53が縮小する方向に集約することが可能である。集約された液体は、排液口60からさらに排出される液体に押され、縮小する方向に向け外側開口52からフード10の外部に排出されやすい。
特に、本実施形態では、平面視上、幅縮小領域55の少なくとも一部が、内側開口51の一部を塞ぐ内視鏡100の周面112と視認方向において重なっており、内側開口51から排出された液体が周面112に沿って開口幅53が縮小する方向に流れ易い。
【0057】
幅拡大領域54および幅縮小領域55は、先端から基端に向けて連続的に設けられている。このほか、幅拡大領域54と幅縮小領域55との間に実質的に開口幅53が変化しない領域等が設けられてもよい。
【0058】
次に排液溝70の詳細について説明する。
排液溝70は、フード10の外周面32またはフード本体部50の内周面31aに沿って設けられた有底または無底の連続する溝である。たとえば、排液溝70は、長尺であって連続的に形成された凹部である。
【0059】
排液溝70の少なくとも一部は、有底である有底領域を有するとよい。有底領域を有することは、軟質樹脂で形成されたフード10の形状保持の観点から望ましい。
【0060】
図1および
図3に示すとおり、本実施形態にかかるフード10は、排液溝70として、内視鏡用フード10の外周面32に設けられた第一排液溝70aを有している。
第一排液溝70aは、排液口60から排出された液体を、外側開口52の周囲に滞留させることなく所定方向に規制することが可能である。そのため、液体は、連続的かつ迅速に、排液口60を介して内視鏡用フード10の外側に導出され得る。
【0061】
本実施形態における排液溝70(第一排液溝70a)は、基端開口20に向かって延在している。
これにより、排液口60から排出された液体の流れを基端側に規制することが可能であり、排出された当該液体が、フード10の先端開口30から、再度、フード10の内部に侵入することが抑制される。
尚、フード10の基端開口20は、内視鏡100の先端部110によって実質的に塞がれているため、基端開口20から液体がフード10の内部に大量に流入することは回避される。
【0062】
図1に示すとおり、内視鏡用フード10の外周面32に設けられた排液溝70(第一排液溝70a)は、幅縮小領域55に連通している。
これにより、幅縮小領域55を経て、液体が外側開口52の外側に導出されやすい。たとえば、第一排液溝70aを、幅縮小領域55の基端を含む領域に連通させることにより、内側開口51から排出され当該基端に集約された液体をスムーズに外側開口52の外側に導出する効果が高い。
【0063】
また内視鏡用フード10は、排液溝70として、フード本体部50の内周面31aに沿って設けられた第二排液溝70bを有している(
図1および
図3参照)。第二排液溝70bは、フード本体部50の内周面31aに沿って排液口60と先端開口30とに連通している。第二排液溝70bは、フード本体部50の内部に存在する液体を排液口60まで良好に導く。
またたとえば、フード付き内視鏡200がその先端が重心方向の下方に向けられた姿勢で用いられたとき、液体を第二排液溝70bに伝わせてフード本体部50の内部から外部に液体を導出することができる。
図示省略するが、第二排液溝70bは、フード本体部50の内周面31aに沿って排液口60から先端方向に延在し、先端開口30に到達する前に終端してもよい。
【0064】
以上において、排液口60と、これに連通する排液溝70とを説明した。フード10は、排液溝70を少なくとも1つ有する。本実施形態は、第一排液溝70aおよび第二排液溝70bのいずれかを有する態様、2以上の第一排液溝70aまたは2以上の第二排液溝70bを有する態様、第一排液溝70aおよび第二排液溝70b以外の排液溝70を有する態様を、包含する。
上述において、排液溝70を設けることにより液体の流れを所定方向に規制可能であることを種々、説明した。当該説明は、排液口60を通過する液体の全ての流れを所定方向に規制することに限定されない。排液口60を介してフード10の外部に排出される液体の少なくとも一部の流れが所定方向に規制されればよい。
【0065】
(第二実施形態)
図4(a)は、第二実施形態のフード付き内視鏡200を示す縦断面図である。切断線は、
図1に示すIII-III線と同じである。
図4(b)は、第二実施形態のフード付き内視鏡200を示す平面図である。本実施形態は、以下に説明する点で、第一実施形態とは相違しており、本実施形態のその他の構成は、適宜、第一実施形態の構成を採用することができる。
【0066】
図4(a)および
図4(b)に示すとおり、本実施形態における排液溝70は、排液口60に連通し、排液溝70よりも深く形成された深溝部80を有する深溝領域82を有している。深溝領域82が設けられた排液溝70は、深溝領域82に連続して有底領域84が設けられている。
本実施形態において、有底領域84は、深溝領域82と基端開口20とに連通している。深溝領域82は、フード10の外周面32に設けられる排液溝70に設けられている。深溝部80は、有底である場合と、有底でない場合(即ち、厚さ方向に貫通する場合)のいずれも含む。
【0067】
深溝部80は、液体の毛管現象を誘引する。即ち、排液口60から排出された液体は、深溝部80により毛管現象が効果的に誘引され、深溝領域82を介してスムーズに排液溝70の有底領域84に導出される。深溝領域82における液体の好ましい流れは、フード本体部50に存在する他の液体の排液口60からの排出を誘引する。
深溝部80が有底である態様では、深溝領域82の強度が良好に担保されるため望ましい。また深溝部80が厚さ方向に貫通する場合には、深溝部80を設けたことによる毛管現象の誘引効果が特に良好である。
【0068】
本実施形態における深溝領域82は、
図4(a)および
図4(b)に示すとおり、有底の排液溝70の底部から、厚さ方向を貫通するよう切り込まれてなる深溝部80を有している。このほか図示省略するが、深溝領域82は、厚さ方向の全域において切断面が実質的に当接する切り込みである深溝部80から構成されてもよい。
【0069】
(第三実施形態)
図5は本発明の第三実施形態のフード付き内視鏡200を示す平面図である。本実施形態は、以下に説明する点で、第一実施形態とは相違しており、本実施形態のその他の構成は、適宜、第一実施形態の構成を採用することができる。
【0070】
図5に示すとおり、本実施形態は、排液溝70として、外側開口52からフード10の外周面32の周方向に延在する第三排液溝70cを備えている。
【0071】
第三排液溝70cを備えることにより、排液口60から排出された液体は、外周面32を伝って周方向に流れが規制される。たとえば、体内において排液口60が重量方向の上方側に向かって開口する位置で手技が行われる場合に、排液口60から排出された液体の流れを第三排液溝70cを介して、重量方向の下側に規制し易い。
【0072】
たとえば、第三排液溝70cは、その一端が排液口60の一領域と連通するとともに他端が排液口60の他領域に連通する周方向に連続した溝であってもよい。
あるいは、第三排液溝70cは、その一端が排液口60の一領域と連通するとともに外周面32の周方向に延在し、任意の箇所で終端してもよい。
本実施形態において第三排液溝70cは、先基端方向に連続して設けられた幅拡大領域54および幅縮小領域55(
図1参照)の境界を含んで排液口60と連通してもよい。当該境界は、排液口60の先基端方向の中間において周方向に突出している。
【0073】
以上に本発明の第一実施形態から第三実施形態について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。各実施形態において説明された事項は適宜、他の実施形態に適用することが可能である。
また、上述する各実施形態では、排液口60の深さ方向は、軸心AX1に対して直交している態様を示したが、本発明はこれに限定されず、排液口60の深さ方向は適宜変更することができる。
【0074】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)基端開口と、先端開口と、内視鏡の先端部が装着される装着部と、前記装着部の先端側に延出したフード本体部を有する筒状の内視鏡用フードであって、
前記内視鏡用フードの内周面に形成された内側開口および前記内視鏡用フードの外周面に形成された外側開口を有して厚さ方向に貫通する排液口を有し、
前記内側開口の少なくとも一部が、前記フード本体部に設けられているとともに、
前記排液口に連通する排液溝が、前記内視鏡用フードの前記外周面または前記フード本体部の内周面に沿って設けられていることを特徴とする内視鏡用フード。
(2)前記内視鏡の挿入深さを規制する規制部を有するとともに、前記内側開口が、前記装着部と前記フード本体部とに跨って形成されており、
前記規制部に挿入深さを規制された前記内視鏡の前記先端部の周面が前記内側開口を部分的に塞ぐように前記排液口が形成されている上記(1)に記載の内視鏡用フード。
(3)前記内視鏡用フードの前記内周面には、前記内視鏡の挿入深さを規制する規制部が設けられており、
前記規制部は、径方向の内側に突出するとともに挿入された前記内視鏡と当接可能な当接部を有し、
先基端方向における前記内側開口の形成領域に、前記当接部が位置する上記(1)に記載の内視鏡用フード。
(4)前記排液溝が前記内視鏡用フードの前記外周面に設けられている上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の内視鏡用フード。
(5)前記排液溝が前記基端開口に向かって延在している上記(4)に記載の内視鏡用フード。
(6)前記外側開口は、周方向における開口幅が前記先端開口の側から前記基端開口の側に向けて増大する幅拡大領域を有する上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の内視鏡用フード。
(7)前記幅拡大領域と、前記内側開口の一部を塞ぐ前記内視鏡の周面と、が径方向に対向する上記(2)または上記(3)に従属する、上記(6)に記載の内視鏡用フード。
(8)前記外側開口は、周方向における開口幅が先基端方向の中間から基端まで縮小する幅縮小領域を有する上記(1)から(7)のいずれか一項に記載の内視鏡用フード。
(9)前記内視鏡用フードの前記外周面に設けられた前記排液溝が、前記幅縮小領域に連通している上記(8)に記載の内視鏡用フード。
(10)前記排液溝の少なくとも一部は、有底である有底領域を有する上記(1)から(9)のいずれか一項に記載の内視鏡用フード。
(11)前記排液溝は、前記排液口に連通し、前記排液溝よりも深く形成された深溝部を有する深溝領域を有するとともに、前記深溝領域に連続して前記有底領域を有する上記(10)に記載の内視鏡用フード。
(12)前記排液溝が、前記外側開口から前記内視鏡用フードの前記外周面の周方向に延在する上記(1)から(9)のいずれか一項に記載の内視鏡用フード。
(13)前記先端開口の少なくとも一部は、前記装着部の軸心に対して径方向の外向きに傾斜する法線を有する傾斜開口を有し、前記傾斜開口の法線方向の反対側に前記排液口が設けられている上記(1)から(12)のいずれか一項に記載の内視鏡用フード。
(14)前記フード本部が、前記装着部の軸心と平行な直線稜線部と、前記直線稜線部の対向位置にあって前記軸心に対して傾斜した傾斜稜線部と、を含み、前記排液口が前記境界部のうち前記傾斜稜線部の側に形成されている上記(1)から(13)のいずれか一項に記載の内視鏡用フード。
(15)上記(1)から(14)のいずれか一項に記載の内視鏡用フードと、前記内視鏡と、を含むことを特徴とするフード付き内視鏡。
(16)前記内視鏡の前記先端部には、送水ノズルおよび観察光学系が設けられており、
前記内視鏡用フードの前記装着部は、前記観察光学系が前記装着部の軸心よりも前記内側開口寄りに位置する装着角度で前記内視鏡の先端部に装着されている上記(15)に記載のフード付き内視鏡。
(17)前記内視鏡の前記先端部には、送水ノズルおよび観察光学系が設けられており、
前記内視鏡用フードの前記装着部が、前記送水ノズルと前記観察光学系との延長線上に前記内側開口が位置する装着角度で前記内視鏡の前記先端部に装着されている上記(15)または(16)に記載のフード付き内視鏡。