特許第6387687号(P6387687)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387687
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
   H01M2/10 S
   H01M2/10 E
   H01M2/10 K
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-115120(P2014-115120)
(22)【出願日】2014年6月3日
(65)【公開番号】特開2015-230765(P2015-230765A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大石 英史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇行
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−008524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された複数の電池セルを有する電池体と、
前記電池体を前記電池セルの並設方向の両側から挟持する第1エンドプレート及び第2エンドプレートと、
前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートに対して前記複数の電池セルを拘束する拘束荷重を加えている拘束部材と、を備えた電池モジュールであって、
前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートは、被固定部材に固定される固定端と、前記固定端とは反対側に設けられるとともに、前記被固定部材に固定されない非固定端とを有し、
前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートには、前記非固定端を含んで前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートに前記電池体を跨いで架設されて、前記電池セルの並設方向の膨張に伴う前記第1エンドプレートの前記非固定端と前記第2エンドプレートの前記非固定端との離間を抑制する変形抑制部材を有し、
前記変形抑制部材は、前記電池セルの並設方向と直交する方向であって、且つ、前記固定端から前記非固定端に向かう方向に前記電池体から離間しており、
前記拘束部材は、複数の前記電池セルにおける、前記電池セルの並設方向と直交する方向であって、且つ、前記固定端から前記非固定端に向かう方向と直交する方向側に配置された状態で前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートに取付けられている電池モジュール。
【請求項2】
前記変形抑制部材は、前記電池セルの並設方向と直交する方向であって、且つ、前記固定端から前記非固定端に向かう方向と直交する方向に並設された第1の変形抑制部材及び第2の変形抑制部材を有する請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記変形抑制部材は、前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートを挿通したボルト及び当該ボルトに嵌められるナットによって前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートに固定されている請求項1又は2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
並設された複数の電池セルを有する電池体と、
前記電池体を前記電池セルの並設方向の両側から挟持する第1エンドプレート及び第2エンドプレートと、
前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートに対して前記複数の電池セルを拘束する拘束荷重を加えている拘束部材と、を備えた電池モジュールであって、
前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートは、被固定部材に固定される固定端と、前記固定端とは反対側に設けられるとともに、前記被固定部材に固定されない非固定端とを有し、
前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートには、前記非固定端を含んで前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートに前記電池体を跨いで架設されて、前記電池セルの並設方向の膨張に伴う前記第1エンドプレートの前記非固定端と前記第2エンドプレートの前記非固定端との離間を抑制する変形抑制部材を有し、
前記変形抑制部材は、前記電池セルの並設方向と直交する方向に前記電池体から離間しており、
前記変形抑制部材は、前記電池セルの並設方向に並んで設けられた第1部材と、第2部材とを有し、
前記第1部材は、前記電池セルの並設方向に延びる第1延設部を有し、
前記第2部材は、前記電池セルの並設方向に延びる第2延設部を有し、
前記第1延設部と前記第2延設部とは、互いに重なって前記変形抑制部材の並設方向の長さを調整可能な重合部位を有し、
前記第1部材と前記第2部材とは、固定具によって前記重合部位で固定されている電池モジュール。
【請求項5】
並設された複数の電池セルを有する電池体と、
前記電池体を前記電池セルの並設方向の両側から挟持する第1エンドプレート及び第2エンドプレートと、
前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートに対して前記複数の電池セルを拘束する拘束荷重を加えている拘束部材と、を備えた電池モジュールであって、
前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートは、被固定部材に固定される固定端と、前記固定端とは反対側に設けられるとともに、前記被固定部材に固定されない非固定端とを有し、
前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートには、前記非固定端を含んで前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートに前記電池体を跨いで架設されて、前記電池セルの並設方向の膨張に伴う前記第1エンドプレートの前記非固定端と前記第2エンドプレートの前記非固定端との離間を抑制する変形抑制部材を有し、
前記変形抑制部材は、前記電池セルの並設方向と直交する方向に前記電池体から離間しており、
前記拘束部材は、前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートを挿通したボルトと、前記ボルトに螺合されたナットであり、
前記変形抑制部材は、前記ボルト及び前記ナットによって前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートに固定されている電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並設された複数の電池セルを有する電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の電極は、充放電に伴い膨張と収縮を繰り返す。電極の膨張と収縮が繰り返されると、電極同士の間隔が大きくなったり、電極が歪むことで二次電池の抵抗値が大きくなったりする。
【0003】
特許文献1では、複数の電池セル(電池素子)が並んで設けられている。複数の電池セルは正極と、負極と、正極と負極との間に設けられたセパレータとを有している。複数の電池セルは、エンドプレート(樹脂)によって挟み込まれており、エンドプレートは、電池セルの膨張を抑制するように正極若しくは負極からセパレータへ加圧力を付与している。これにより、正極と負極との間隔が大きくなったり、正極や負極が歪んだりすることが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−26090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンドプレートからの拘束荷重が電池セルの一部分に集中するなど、電池セルに加わる拘束荷重に偏りが生じていると、リチウムイオン電池の場合、リチウムの析出などの電池セルの劣化を招くため、電池セルに加わる拘束荷重の偏りを小さくすることが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、電池セルに加わる拘束荷重の偏りを小さくすることができる電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する電池モジュールは、並設された複数の電池セルを有する電池体と、前記電池体を前記電池セルの並設方向の両側から挟持する第1エンドプレート及び第2エンドプレートと、前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートに対して前記複数の電池セルを拘束する拘束荷重を加えている拘束部材と、を備えた電池モジュールであって、前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートは、被固定部材に固定される固定端と、前記固定端とは反対側に設けられるとともに、前記被固定部材に固定されない非固定端とを有し、前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートには、前記非固定端を含んで前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートに前記電池体を跨いで架設されて、前記電池セルの並設方向の膨張に伴う前記第1エンドプレートの前記非固定端と前記第2エンドプレートの前記非固定端との離間を抑制する変形抑制部材を有し、前記変形抑制部材は、前記電池セルの並設方向と直交する方向であって、且つ、前記固定端から前記非固定端に向かう方向に前記電池体から離間しており、前記拘束部材は、複数の前記電池セルにおける、前記電池セルの並設方向と直交する方向側であって、且つ、前記固定端から前記非固定端に向かう方向と直交する方向側に配置された状態で前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートに取付けられている。
【0008】
これによれば、電池セルが膨張すると、各エンドプレートには荷重が加わる。このとき、各エンドプレートの固定端は、被固定部材に固定されている一方で、非固定端は被固定部材に固定されていないため、各エンドプレートの非固定端は、互いに離間するように変形しようとする。各エンドプレートが変形すると、電池セルへの拘束荷重のばらつきが大きくなるが、変形抑制部材によって非固定端同士が離間するように変形することが抑制されるため、電池セルが膨張しても、電池セルへの拘束荷重が偏りにくい。
上記電池モジュールについて、前記変形抑制部材は、前記電池セルの並設方向と直交する方向であって、且つ、前記固定端から前記非固定端に向かう方向と直交する方向に並設された第1の変形抑制部材及び第2の変形抑制部材を有することが好ましい。
上記電池モジュールについて、前記変形抑制部材は、前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートを挿通したボルト及び当該ボルトに嵌められるナットによって前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートに固定されていることが好ましい。
【0009】
上記課題を解決する電池モジュール並設された複数の電池セルを有する電池体と、前記電池体を前記電池セルの並設方向の両側から挟持する第1エンドプレート及び第2エンドプレートと、前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートに対して前記複数の電池セルを拘束する拘束荷重を加えている拘束部材と、を備えた電池モジュールであって、前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートは、被固定部材に固定される固定端と、前記固定端とは反対側に設けられるとともに、前記被固定部材に固定されない非固定端とを有し、前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートには、前記非固定端を含んで前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートに前記電池体を跨いで架設されて、前記電池セルの並設方向の膨張に伴う前記第1エンドプレートの前記非固定端と前記第2エンドプレートの前記非固定端との離間を抑制する変形抑制部材を有し、前記変形抑制部材は、前記電池セルの並設方向と直交する方向であって、且つ、前記固定端から前記非固定端に向かう方向に前記電池体から離間しており、前記変形抑制部材は、前記電池セルの並設方向に並んで設けられた第1部材と、第2部材とを有し、前記第1部材は、前記電池セルの並設方向に延びる第1延設部を有し、前記第2部材は、前記電池セルの並設方向に延びる第2延設部を有し、前記第1延設部と前記第2延設部とは、互いに重なって前記変形抑制部材の並設方向の長さを調整可能な重合部位を有し、前記第1部材と前記第2部材とは、固定具によって前記重合部位で固定されている。
【0010】
これによれば、各エンドプレート間の長さに合わせて変形抑制部材の寸法を調整することができる。このため、各部材の製造誤差によって各エンドプレート間の寸法が異なっていても、変形抑制部材を各エンドプレートに固定することができる。
【0011】
上記課題を解決する電池モジュール並設された複数の電池セルを有する電池体と、前記電池体を前記電池セルの並設方向の両側から挟持する第1エンドプレート及び第2エンドプレートと、前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートに対して前記複数の電池セルを拘束する拘束荷重を加えている拘束部材と、を備えた電池モジュールであって、前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートは、被固定部材に固定される固定端と、前記固定端とは反対側に設けられるとともに、前記被固定部材に固定されない非固定端とを有し、前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートには、前記非固定端を含んで前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートに前記電池体を跨いで架設されて、前記電池セルの並設方向の膨張に伴う前記第1エンドプレートの前記非固定端と前記第2エンドプレートの前記非固定端との離間を抑制する変形抑制部材を有し、前記変形抑制部材は、前記電池セルの並設方向と直交する方向であって、且つ、前記固定端から前記非固定端に向かう方向に前記電池体から離間しており、前記拘束部材は、前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートを挿通したボルトと、前記ボルトに螺合されたナットであり、前記変形抑制部材は、前記ボルト及び前記ナットによって前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートに固定されている。
【0012】
これによれば、ボルト及びナットを拘束部材及び変形抑制部材を各エンドプレートに固定するための部材として兼用することができる。したがって、変形抑制部材を各エンドプレートに固定するための部材を別に設ける必要がなく、部品点数の増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電池セルに加わる拘束荷重の偏りを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の電池モジュールが筐体に収容された状態を示す斜視図。
図2】実施形態の電池モジュールが筐体に収容された状態を示す断面図。
図3】実施形態の変形抑制部材を示す斜視図。
図4】実施形態の変形抑制部材を示す斜視図。
図5】実施形態の電池モジュールをケース本体に収容するときの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、電池モジュールの一実施形態について説明する。
図1及び図2に示すように、電池モジュール10は、被固定部材としての筐体71に収容されている。筐体71は、有底筒状のケース本体72と、ケース本体72の開口部72aを閉塞する蓋73とを有している。電池モジュール10は、電池体11を有している。本実施形態の電池体11は、並設された複数の電池セル12と、各電池セル12をそれぞれ個別に保持する電池ホルダ13とを有している。電池セル12は、例えば、リチウムイオン電池などの二次電池である。電池セル12は、ケース14の内部に電極組立体15を有している。電極組立体15は、正負の電極の間にセパレータを介在させたものである。
【0016】
電池体11は、電池セル12の並設方向の両側に設けられたエンドプレート21,22によって挟持されている。本実施形態のエンドプレート21,22は、板材を折り曲げ加工したものであり、電池セル12を挟持する板状の挟持部23と、筐体71に電池モジュール10を固定するための板状のモジュール固定部24とを有している。本実施形態では、挟持部23は矩形状であり、モジュール固定部24は挟持部23の長手方向第1端部25から挟持部23の厚み方向に延びている。
【0017】
挟持部23の短手方向第1端部27には、短手方向に向けて突出する第1挿通部29が設けられている。本実施形態において、第1挿通部29は、挟持部23の長手方向に間隔を空けて2つ設けられている。第1挿通部29は、挟持部23の長手方向の中央に寄って設けられている。挟持部23の短手方向第2端部28には、短手方向に向けて突出する第2挿通部30が設けられている。本実施形態において、第2挿通部30は、挟持部23の長手方向に間隔を空けて2つ設けられている。第2挿通部30は、挟持部23の長手方向両端に寄って設けられている。以下の説明において、説明の便宜上、エンドプレート21を第1エンドプレート21とし、エンドプレート22を第2エンドプレート22として説明を行う。
【0018】
電池モジュール10は、第1エンドプレート21及び第2エンドプレート22に固定された変形抑制部材41,42を複数(本実施形態では2個)備えている。2個の変形抑制部材41,42のうち、変形抑制部材41を第1変形抑制部材41、変形抑制部材42を第2変形抑制部材42として説明を行う。
【0019】
図3及び図4に示すように、第1変形抑制部材41は、全体としてU字状である。第1変形抑制部材41は、ともにL字状をなす第1部材51及び第2部材61を有している。第1部材51は、板状の第1固定部52と、第1固定部52から第1固定部52の厚み方向に向けて延設された板状の第1延設部53とを有している。第1固定部52には、厚み方向に貫通する第1挿通孔54が設けられている。第1固定部52及び第1延設部53は、ともに矩形状であり、第1延設部53は、第1固定部52の長手方向の端部から延設されている。
【0020】
第1延設部53の短手方向の両端には、第1延設部53の厚み方向に向けて突出する突出部55が設けられている。各突出部55は、第1延設部53の長手方向全体に亘って延びている。これにより、第1延設部53と、各突出部55とに囲まれる領域には、溝部56が区画されている。第1延設部53には、厚み方向に貫通する長孔57が設けられている。長孔57は、長手方向が第1延設部53の延設方向に延びており、第1延設部53の短手方向に並んで複数箇所(本実施形態では2箇所)に設けられている。また、各突出部55の先端である第1延設部53からの突出端には、第1凹部58が設けられている。
【0021】
第2部材61は、板状の第2固定部62と、第2固定部62から第2固定部62の厚み方向に向けて延設された板状の第2延設部63とを有している。第2固定部62には、厚み方向に貫通する第2挿通孔64が設けられている。本実施形態では、第2固定部62及び第2延設部63は、ともに矩形状であり、第2延設部63は、第2固定部62の長手方向の端部から延設されている。
【0022】
第2延設部63は、溝部56に挿入することができる寸法に設定されている。本実施形態では、第2延設部63の短手方向の寸法は、第1部材51の各突出部55間の寸法、すなわち突出部55の対向する内面間の寸法に比べて若干小さい。第2延設部63には、短手方向に並んで複数箇所(本実施形態では2箇所)にネジ孔65が設けられている。第2延設部63の厚み方向の面のうち、第2固定部62側の面には、短手方向の全体に亘って延びる第2凹部66が設けられている。
【0023】
第1延設部53の延設方向の寸法と、第2延設部63の延設方向の寸法とを合わせると、第1エンドプレート21と、第2エンドプレート22との互いに対向する内面とは反対側の外面間の寸法よりも長い。
【0024】
第1変形抑制部材41は、第1部材51の溝部56に第2部材61の第2延設部63が挿入されることでU字状に構成されている。第1部材51の溝部56に挿入された分だけ、第2部材61は第1部材51と重なり合う。したがって、第1部材51において、溝部56に挿入された第2部材61に重なり合う部分が第1部材51の第1重合部位59となる。また、第2部材61において、第1部材51の溝部56に挿入されている部分が第2部材61の第2重合部位69となる。第1部材51と第2部材61とは、各長孔57に挿入された固定具としてのネジ67がネジ孔65に螺合されることで、ネジ67の頭部の押しつけ力によって重合部位59,69で固定されている。
【0025】
第2変形抑制部材42は、第1固定部52及び第2固定部62の寸法が異なる点を除いて、第1変形抑制部材41と同一の構成であるため、第2変形抑制部材42の各部位に、第1変形抑制部材41と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。第2変形抑制部材42の第1固定部52及び第2固定部62は、第1変形抑制部材41の第1固定部52及び第2固定部62に比べて、長手方向の寸法が短い。
【0026】
図1に示すように、各変形抑制部材41,42の第1固定部52は、第1エンドプレート21に固定されている。第2固定部62は、第2エンドプレート22に固定されている。
【0027】
第1変形抑制部材41の第1固定部52は、第1エンドプレート21の第1挿通部29のうち、長手方向第2端部26側の第1挿通部29と重ね合わせて設けられるとともに、挟持部23の長手方向第2端部26側に延びて長手方向第2端部26から一部が突出している。第1変形抑制部材41の第2固定部62は、第2エンドプレート22の第1挿通部29のうち、長手方向第2端部26側の第1挿通部29と重ね合わせて設けられるとともに、長手方向第2端部26側に延びて長手方向第2端部26から一部が突出している。そして、第1変形抑制部材41において、第1固定部52の第1挿通孔54には、第2固定部62の第2挿通孔64に向けてボルトB1が挿通されている。第1変形抑制部材41において、第1挿通孔54に挿通されたボルトB1は、第1固定部52、第1エンドプレート21の第1挿通部29、各電池ホルダ13、第2エンドプレート22の第1挿通部29及び第2固定部62を挿通してナットN1に螺合されている。これにより、第1変形抑制部材41は、各挟持部23の長手方向第2端部26を含んで第1エンドプレート21及び第2エンドプレート22に電池体11を跨いで架設されている。すなわち、第1変形抑制部材41によって各エンドプレート21,22における挟持部23の長手方向第2端部26が挟持されている。
【0028】
第2変形抑制部材42の第1固定部52は、第1エンドプレート21の第2挿通部30のうち、長手方向第2端部26側の第2挿通部30と重ね合わせて設けられるとともに、挟持部23の長手方向第2端部26側に延びて長手方向第2端部26から一部が突出している。第2変形抑制部材42の第2固定部62は、第2エンドプレート22の第2挿通部30のうち、長手方向第2端部26側の第2挿通部30と重ね合わせて設けられるとともに、挟持部23の長手方向第2端部26に向けて延びて長手方向第2端部26から一部が突出している。そして、第2変形抑制部材42において、第1固定部52の第1挿通孔54には、第2固定部62の第2挿通孔64に向けてボルトB1が挿通されている。第2変形抑制部材42において、第1挿通孔54に挿通されたボルトB1は、第1固定部52、第1エンドプレート21の第2挿通部30、各電池ホルダ13、第2エンドプレート22の第2挿通部30及び第2固定部62を挿通してナットN1に螺合されている。これにより、第2変形抑制部材42は、各挟持部23の長手方向第2端部26を含んで第1エンドプレート21及び第2エンドプレート22に電池体11を跨いで架設されている。すなわち、第2変形抑制部材42によって各エンドプレート21,22における挟持部23の長手方向第2端部26が挟持されている。
【0029】
各変形抑制部材41,42は、第1延設部53の端部に設けられた第1固定部52が第1エンドプレート21に固定され、第2延設部63の端部に設けられた第2固定部62が第2エンドプレート22に固定されている。したがって、各変形抑制部材41,42の両端部が第1エンドプレート21及び第2エンドプレート22に固定されている。
【0030】
各変形抑制部材41,42の第1延設部53及び第2延設部63は、電池セル12の並設方向に延びている。そして、第1延設部53と第2延設部63とは、電池セル12の並設方向と直交する方向に電池体11から離間している。
【0031】
第1エンドプレート21の第1挿通部29のうち、長手方向第1端部25側の第1挿通部29には、第2エンドプレート22の第1挿通部29のうち、長手方向第1端部25側の第1挿通部29に向けてボルトB1が挿通されている。ボルトB1は、第1エンドプレート21の第1挿通部29、各電池ホルダ13及び第2エンドプレート22の第1挿通部29を挿通してナットN1に螺合されている。
【0032】
第1エンドプレート21の第2挿通部30のうち、長手方向第1端部25側の第2挿通部30には、第2エンドプレート22の第2挿通部30のうち、長手方向第1端部25側の第2挿通部30に向けてボルトB1が挿通されている。ボルトB1は、第1エンドプレート21の第2挿通部30、各電池ホルダ13及び第2エンドプレート22の第2挿通部30を挿通してナットN1に螺合されている。各ボルトB1及び各ナットN1は、第1エンドプレート21及び第2エンドプレート22に対して複数の電池セル12を拘束する拘束荷重を付与している。このため、ボルトB1及びナットN1が拘束部材となる。
【0033】
上記した電池モジュール10のエンドプレート21,22のモジュール固定部24は、固定ボルトB2によって筐体71の壁面に固定されている。したがって、エンドプレート21,22における被固定部材に固定される固定端は、モジュール固定部24が設けられた挟持部23の長手方向第1端部25である。また、挟持部23の長手方向第2端部26は、筐体71に固定されておらず非固定端となっている。
【0034】
次に、本実施形態の電池モジュール10の作用について説明する。
電池セル12の電極には、使用に伴って被膜が形成されていき、使用期間が長くなるにつれて電池セル12が膨張していく。電池セル12が膨張すると、隣り合う電池セル12同士は互いに押し合う。すると、各電池セル12には並設方向の両側に向けた力が作用する。第1エンドプレート21及び第2エンドプレート22には、電池セル12からの荷重が加わる。各変形抑制部材41,42が設けられていない場合、各エンドプレート21,22の挟持部23は、長手方向第1端部25が筐体71に固定されており、長手方向第2端部26が筐体71に固定されていないため、長手方向第2端部26同士が離れるように変形しようとする。具体的にいえば、各エンドプレート21,22の挟持部23とモジュール固定部24との交わる角を基点として、各エンドプレート21,22の長手方向第2端部26同士が離れる方向に変形しようとする。
【0035】
本実施形態のように各変形抑制部材41,42を、長手方向第2端部26を含んで各エンドプレート21,22に架設していると、第1エンドプレート21と第2エンドプレート22とが変形するためには、第1延設部53及び第2延設部63を電池セル12の並設方向に伸びるように変形させる必要がある。このため、第1エンドプレート21と、第2エンドプレート22とが変形する荷重は、各変形抑制部材41,42を設けない場合に比べて大きくなり、第1エンドプレート21と第2エンドプレート22とが変形し難くなる。したがって、各変形抑制部材41,42は、電池セル12の膨張に伴う第1エンドプレート21の長手方向第2端部26と第2エンドプレート22の長手方向第2端部26との離間を抑制している。
【0036】
また、各変形抑制部材41,42の第2部材61は、ネジ67を緩めることで、溝部56内を第1延設部53の延設方向に向けて移動することができる。このため、電池モジュール10の各部材の製造誤差によって、第1エンドプレート21と第2エンドプレート22との間の寸法が異なっていても、第1部材51の第1延設部53と第2部材61の第2延設部63の位置を調整、すなわち、第1重合部位59と第2重合部位69の重なり量を調整することで、電池モジュール10に合わせて各変形抑制部材41,42の長さを調整することができる。
【0037】
また、図5に示すように、電池モジュール10を筐体71に固定するときには、まずケース本体72の開口部72aを鉛直方向上方に向けて、開口部72aからケース本体72の内部に電池モジュール10を収容する。電池モジュール10は、吊り具81によって吊られた状態でケース本体72に収容される。この際、吊り具81を電池モジュール10に掛止する必要があるが、各変形抑制部材41,42の第1延設部53及び第2延設部63が電池体11から電池セル12の並設方向と直交する方向に離間して設けられているため、吊り具81を各変形抑制部材41,42に掛止することができる。また、吊り具81を第1延設部53の第1凹部58及び第2延設部63の第2凹部66に掛止することで、吊り具81の位置ずれを抑止することができる。そして、電池モジュール10をケース本体72に収容した後は、各エンドプレート21,22のモジュール固定部24に固定ボルトB2を挿通するとともに固定ボルトB2をケース本体72に螺合することで、電池モジュール10が固定される。電池モジュール10をケース本体72に固定した後、蓋73によってケース本体72の開口部72aを閉塞する。
【0038】
したがって、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)各変形抑制部材41,42は、各エンドプレート21,22の長手方向第2端部26を含んで架設されている。このため、電池セル12が膨張して、各エンドプレート21,22が変形しようとしても、各変形抑制部材41,42によって変形が抑制される。このため、各エンドプレート21,22から電池セル12への拘束荷重が偏りにくい。
【0039】
(2)各変形抑制部材41,42の第1延設部53及び第2延設部63は、電池体11から電池セル12の並設方向と直交する方向に離間して設けられている。このため、電池セル12から各変形抑制部材41,42までの絶縁距離を長くすることができる。また、第1延設部53及び第2延設部63と電池体11との間には隙間ができるため、この隙間を利用して第1延設部53及び第2延設部63に吊り具81を掛止することができる。
【0040】
(3)第1延設部53に第1凹部58を設け、第2延設部63に第2凹部66を設けることで、吊り具81の位置ずれを抑制することができる。
(4)各変形抑制部材41,42は、第1部材51と第2部材61とを有している。第1部材51の第1延設部53と第2部材61との第2延設部63の位置を調整することで、電池モジュール10に合わせて各変形抑制部材41,42の長さ、すなわち、第1固定部52と第2固定部62の対向する面の距離を調整することができる。したがって、各変形抑制部材41,42の第1固定部52と第1エンドプレート21との間や、第2固定部62と第2エンドプレート22との間に隙間ができることが抑制され、各エンドプレート21,22の変形を適切に抑制することができる。
【0041】
(5)各エンドプレート21,22に互いに近付く方向に拘束荷重を加えているボルトB1及びナットN1を、各変形抑制部材41,42を固定するためのボルトB1及びナットN1として兼用している。このため、変形抑制部材41,42を固定するための部材を別に設ける場合に比べて、部品点数の削減が測られる。
【0042】
なお、実施形態は、以下のように変更してもよい。
○変形抑制部材は、3個以上設けられていてもよいし、単数であってもよい。
○各変形抑制部材41,42は、単一の部材から構成されていてもよい。
【0043】
○各変形抑制部材41,42は、各エンドプレート21,22に互いに近付く方向に荷重を加えているボルトB1及びナットN1とは異なる部材で各エンドプレート21,22に固定されていてもよい。例えば、接着剤などで固定されていてもよいし、拘束部材として機能していないボルトを第1固定部52及び第2固定部62に挿通させて、各エンドプレート21,22に螺合してもよい。
【0044】
○電池モジュール10をケース本体72に収容するときに吊り具81を用いない場合や、吊り具81の位置ずれを他の部材などで規制できる場合には、第1凹部58及び第2凹部66を設けなくてもよい。
【0045】
○電池体11は、電池セル12のみで構成されていてもよい。すなわち、電池セル12を保持する電池ホルダ13を有していなくてもよい。
○被固定部材は、産業車両に搭載されるカウンタウェイトなどであってもよい。
【0046】
○各エンドプレート21,22は、モジュール固定部24を有さず、別体の固定部材によって筐体71に固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
B1…ボルト、N1…ナット、10…電池モジュール、11…電池体、12…電池セル、21…第1エンドプレート、22…第2エンドプレート、25…長手方向第1端部、26…長手方向第2端部、41…第1変形抑制部材、42…第2変形抑制部材、51…第1部材、52…第1固定部、56…溝部、61…第2部材、62…第2固定部、67…ネジ、71…筐体。
図1
図2
図3
図4
図5