特許第6387688号(P6387688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気硝子株式会社の特許一覧

特許6387688ガラスフィラー、及びガラスフィラーの製造方法、並びに樹脂フィルム
<>
  • 特許6387688-ガラスフィラー、及びガラスフィラーの製造方法、並びに樹脂フィルム 図000002
  • 特許6387688-ガラスフィラー、及びガラスフィラーの製造方法、並びに樹脂フィルム 図000003
  • 特許6387688-ガラスフィラー、及びガラスフィラーの製造方法、並びに樹脂フィルム 図000004
  • 特許6387688-ガラスフィラー、及びガラスフィラーの製造方法、並びに樹脂フィルム 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387688
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】ガラスフィラー、及びガラスフィラーの製造方法、並びに樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/005 20060101AFI20180903BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20180903BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20180903BHJP
   C08K 9/00 20060101ALI20180903BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   C03B37/005
   C08L101/00
   C08K7/14
   C08K9/00
   C08J5/18CES
   C08J5/18CEZ
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-116688(P2014-116688)
(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-229615(P2015-229615A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】木下 一雄
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 哲也
(72)【発明者】
【氏名】木下 潤
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−159546(JP,A)
【文献】 特開平05−051500(JP,A)
【文献】 特開平04−338133(JP,A)
【文献】 特開2000−086419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00
C08K 3/00 − 13/00
C08L 1/00 −101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面の直径よりも全長が長い円柱状に形成されたガラスフィラーにおいて、
表面が火造り面で構成されていることを特徴とするガラスフィラー。
【請求項2】
前記断面の直径が6μm未満で、且つ前記全長が20μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のガラスフィラー。
【請求項3】
前記全長を前記断面の直径で除した値が1.5以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスフィラー。
【請求項4】
ガラス繊維からガラスフィラーを製造する方法であって、
断面の直径よりも全長が長い円柱状に形成された前記ガラス繊維に対し、軟化点−100℃〜軟化点+50℃の温度範囲で熱処理を施すことにより、前記ガラスフィラーを得ることを特徴とするガラスフィラーの製造方法。
【請求項5】
前記ガラス繊維について、前記断面の直径が6μm未満で、且つ前記全長が20μm以下であることを特徴とする請求項4に記載のガラスフィラーの製造方法。
【請求項6】
前記ガラス繊維について、前記全長を前記断面の直径で除した値が1.5以上であることを特徴とする請求項4又は5に記載のガラスフィラーの製造方法。
【請求項7】
前記熱処理を施す前に、前記ガラス繊維にフュームドシリカ及び/又はフュームド酸化アルミニウムを添加することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のガラスフィラーの製造方法。
【請求項8】
断面の直径よりも全長が長い円柱状に形成されたガラスフィラーを含んだ樹脂フィルムにおいて、
前記ガラスフィラーの表面が火造り面で構成され、
前記ガラスフィラーの総重量が、当該樹脂フィルムの全重量のうちの20%以上を占めることを特徴とする樹脂フィルム。
【請求項9】
前記ガラスフィラーについて、前記断面の直径が6μm未満で、且つ前記全長が20μm以下であることを特徴とする請求項8に記載の樹脂フィルム。
【請求項10】
前記ガラスフィラーについて、前記全長を前記断面の直径で除した値が1.5以上であることを特徴とする請求項8又は9に記載の樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスフィラー、及びガラスフィラーの製造方法、並びにガラスフィラーを含んだ樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等のデバイスに搭載されるプリント配線基板の代表的な構造としては、ガラスクロスに樹脂を含浸させてなるコア層と、当該コア層の上下面の各々に複数枚の樹脂フィルムを積層してなるビルドアップ層とを備えるものがある。なお、ビルドアップ層を構成する樹脂フィルムには、熱膨張を抑制すること等を目的として、樹脂よりも熱膨張係数の小さいシリカ(球状に形成されたガラスフィラー)が含まれている。
【0003】
ところで、携帯電話等のデバイスは年々薄型化が推進されており、これに伴ってデバイスに搭載されるプリント配線基板についても薄型化を図ることが要求されている。そのため、(1)プリント配線基板からコア層を省略したり、(2)ガラスクロスに樹脂を含浸させてなるコア層に代えて、樹脂フィルムでコア層を構成したりすることが検討されるに至っている。
【0004】
しかしながら、上記の(1)の構成を採用した場合には、ビルドアップ層(積層された複数枚の樹脂フィルム)のみでプリント配線基板が構成されることとなり、その剛性が不足することが懸念される。また、上記の(2)の構成を採用した場合においても、コア層を構成する樹脂フィルムの剛性の不足が同様に問題となる。
【0005】
そこで、上記の(1)、(2)の構成を採用する場合に、円柱状に形成されたガラスフィラーを樹脂フィルムに混入させる(上記の(1)の構成を採用する場合には、シリカに代えて混入させる)ことで、当該樹脂フィルムの剛性を補強することが検討されている。そして、特許文献1には、樹脂フィルムの剛性を補強し得る円柱状に形成されたガラスフィラーが開示されている。なお、同文献に開示されたガラスフィラーは、ガラスストランドをボールミル等で粉砕することにより製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−22236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ガラスフィラーを含んだ樹脂フィルムを製造する場合、樹脂の溶液中に多量のガラスフィラーを混入させた後、当該溶液を薄いフィルム状に成形することで製造される。ここで、このような態様により、特許文献1に開示されたガラスフィラーを含んだ樹脂フィルムを製造する場合には、以下のような解決すべき問題が生じている。
【0008】
すなわち、同文献に開示されたガラスフィラーは、上述のようにボールミル等でガラスストランドを粉砕することで製造されており、特にその破断面には突起が形成されやすい。このため、突起の存在に起因してガラスフィラーの表面積が大きくなり、樹脂フィルムを成形する際に、当該フィラーを混入させた溶液の粘度が高くなったり、突起が引っ掛かったりする等して、樹脂フィルムの成形性に悪影響を及ぼす事態を招いていた。
【0009】
このような事情に鑑みなされた本発明は、円柱状に形成されたガラスフィラーを含んだ樹脂フィルムを製造する場合に、当該樹脂フィルムの成形性を損なうことのないガラスフィラーを提供すること、及び、このガラスフィラーを含み、十分な剛性を有した樹脂フィルムを提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、断面の直径よりも全長が長い円柱状に形成されたガラスフィラーにおいて、表面が火造り面で構成されていることに特徴付けられる。
【0011】
このような構成によれば、ガラスフィラーの表面が火造り面で構成されているため、このガラスフィラーの表面は、表面張力により、その表面積が可及的に小さくなった状態に形成されていると共に、突起が存在しない状態となっている。従って、このガラスフィラーを混入させた樹脂の溶液を成形して樹脂フィルムを製造する場合に、当該フィラーを混入させた溶液の粘度が高くなったり、突起が引っ掛かったりするような事態の発生を回避することができる。その結果、成形性を損なうことなく、樹脂フィルムを好適に製造することが可能となる。また、ガラスフィラーを、断面の直径よりも全長が長い円柱状形状とすることで、このガラスフィラーを含んだ樹脂フィルムを製造した場合に、ガラスフィラーの長さ方向において、当該フィラーと樹脂とが接触する部位の長さを大きくとることができる。これにより、樹脂フィルムの剛性を補強する効果を得ることが可能となる。
【0012】
上記の構成において、断面の直径が6μm未満で、且つ全長が20μm以下であることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、断面の直径が6μm未満と極めて小さくなっていることから、このガラスフィラーを含んだ樹脂フィルムを製造する場合に、当該樹脂フィルムの厚みを薄く成形しやすくなる。また、全長が20μm以下となっていることで、以下のような好ましい効果が得られる。すなわち、全長が長すぎると、このガラスフィラーを含んだ樹脂フィルムを製造した場合に、当該フィラーと樹脂との密着性が低下し、両者の間に隙間が形成されるおそれがある。そのため、例えば、プリント配線基板用の樹脂フィルムにメッキを施すような場合に、隙間にメッキが入り込んでしまうおそれが生じる。しかしながら、全長を20μm以下とすれば、ガラスフィラーと樹脂との密着性を十分に確保できるため、このようなおそれを可及的に排除することが可能となる。
【0014】
上記の構成において、全長を断面の直径で除した値が1.5以上であることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、このガラスフィラーを含んだ樹脂フィルムを製造した場合に、ガラスフィラーの長さ方向において、当該フィラーと樹脂とが接触する部位の長さを大きくとることができる。これにより、樹脂フィルムの剛性を補強する効果を、より好適に得ることが可能となる。
【0016】
また、上記の課題を解決するために創案された本発明は、ガラス繊維からガラスフィラーを製造する方法であって、断面の直径よりも全長が長い円柱状に形成されたガラス繊維に対し、軟化点−100℃〜軟化点+50℃の温度範囲で熱処理を施すことにより、ガラスフィラーを得ることに特徴付けられる。
【0017】
このような方法によれば、ガラス繊維に対し、軟化点−100℃〜軟化点+50℃の温度範囲で熱処理を施すことから、熱処理後に得られるガラスフィラーの表面を火造り面で構成することができる。また、温度範囲の上限を軟化点+50℃とすることで、熱処理時に過度に表面張力が作用し、ガラスフィラーが球状に形成されてしまう等、円柱状の形状が崩れることを防止することが可能となる。そして、この方法で得られたガラスフィラーによれば、上記のガラスフィラーに係る説明で、これに対応する構成について既に述べた事項と同様の作用・効果を得ることができる。
【0018】
上記の方法において、ガラス繊維について、断面の直径が6μm未満で、且つ全長が20μm以下であることが好ましい。
【0019】
この方法で得られたガラスフィラーによれば、上記のガラスフィラーに係る説明で、これに対応する構成について既に述べた事項と同様の作用・効果を得ることができる。
【0020】
上記の方法において、ガラス繊維について、全長を断面の直径で除した値が1.5以上であることが好ましい。
【0021】
この方法で得られたガラスフィラーによれば、上記のガラスフィラーに係る説明で、これに対応する構成について既に述べた事項と同様の作用・効果を得ることができる。
【0022】
上記の方法において、熱処理を施す前に、ガラス繊維にフュームドシリカ及び/又はフュームド酸化アルミニウムを添加することが好ましい。
【0023】
このようにすれば、熱処理時にガラス繊維同士が相互に引っ付いたりするような事態の発生を好適に防止することが可能となる。
【0024】
また、上記の課題を解決するために創案された本発明は、断面の直径よりも全長が長い円柱状に形成されたガラスフィラーを含んだ樹脂フィルムにおいて、ガラスフィラーの表面が火造り面で構成され、ガラスフィラーの総重量が、当該樹脂フィルムの全重量のうちの20%以上を占めることに特徴付けられる。
【0025】
このような構成によれば、樹脂フィルムが、断面の直径よりも全長が長い円柱状に形成されたガラスフィラーを含むと共に、このガラスフィラーの総重量が、樹脂フィルムの全重量のうちの20%以上を占めることから、十分な剛性を有した樹脂フィルムとすることができる。
【0026】
上記の構成において、ガラスフィラーについて、断面の直径が6μm未満で、且つ全長が20μm以下であることが好ましい。
【0027】
このようにすれば、上記のガラスフィラーに係る説明で、これに対応する構成について既に述べた事項と同様の作用・効果を得ることが可能となる。
【0028】
上記の構成において、ガラスフィラーについて、全長を断面の直径で除した値が1.5以上であることが好ましい。
【0029】
このようにすれば、上記のガラスフィラーに係る説明で、これに対応する構成について既に述べた事項と同様の作用・効果を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明に係るガラスフィラーによれば、円柱状に形成されたガラスフィラーを含んだ樹脂フィルムを製造する場合に、当該樹脂フィルムの成形性が損なわれることを防止することができる。また、本発明に係る樹脂フィルムによれば、十分な剛性を確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係るガラスフィラーの製造方法に用いたガラス繊維を示す画像である。
図2】本発明の実施形態に係るガラスフィラーの製造方法によって得られたガラスフィラーを示す画像である。
図3】本発明の実施形態に係るガラスフィラーの製造方法によって得られたガラスフィラーを示す画像である。
図4】本発明の実施形態に係るガラスフィラーの製造方法によって得られたガラスフィラーを示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態に係るガラスフィラー、及びガラスフィラーの製造方法、並びに樹脂フィルムについて説明する。
【0033】
まず、本発明の実施形態に係るガラスフィラーの構成について説明する。
【0034】
本発明の実施形態に係るガラスフィラーは、円柱状の形状を有し、その全長が断面の直径よりも長くなるように形成されている。また、円形を有する断面の直径は6μm未満に形成され、全長は20μm以下に形成されている。さらに、全長を断面の直径で除した値(以下、アスペクト比と表記する)は1.5以上とされている。加えて、このガラスフィラーの表面は火造り面で構成されており、表面の全領域が平滑な面となっている。
【0035】
ここで、このガラスフィラーについて、断面の直径としては、より好ましくは5μm以下とし、最も好ましくは4μm以下とする。また、全長としては、より好ましくは6μm〜20μmとし、最も好ましくは6μm〜10μmとする。さらに、アスペクト比としては、より好ましくは1.7以上とし、最も好ましくは2.0以上とする。
【0036】
このガラスフィラーは、種々の熱膨張係数を有する組成で構成することができる。なお、正の熱膨張係数を有する組成のみでなく、熱膨張係数が零の組成、或いは、負の熱膨張係数を有する組成で構成することも可能である。例えば、正の熱膨張係数を有する組成としては、Eガラス、無アルカリガラス、ソーダガラス等で構成することができる。また、熱膨張係数が零の組成、或いは、負の熱膨張係数を有する組成としては、主結晶としてβ−石英固溶体又はβ−ユークプリタイト固溶体を析出してなるLiO−Al−SiO系結晶化ガラス等で構成することができる。
【0037】
以下、上記のガラスフィラーによる作用・効果について説明する。
【0038】
このガラスフィラーは、表面が火造り面で構成されているため、当該フィラーの表面は、表面張力により、その表面積が可及的に小さくなった状態に形成されていると共に、突起が存在しない状態となっている。従って、このガラスフィラーを混入させた樹脂の溶液を成形して樹脂フィルムを製造する場合に、当該フィラーを混入させた溶液の粘度が高くなったり、突起が引っ掛かったりするような事態の発生を回避することができる。その結果、成形性を損なうことなく、樹脂フィルムを好適に製造することが可能となる。
【0039】
また、このガラスフィラーは、断面の直径が6μm未満と極めて小さくなっていることから、当該フィラーを含んだ樹脂フィルムを製造する場合に、樹脂フィルムの厚みを薄く成形しやすくなる。また、全長が20μm以下となっていることで、このガラスフィラーを含んだ樹脂フィルムを製造した場合に、ガラスフィラーと樹脂との密着性を十分に確保することができる。そのため、例えば、プリント配線基板用の樹脂フィルムにメッキを施すような場合に、ガラスフィラーと樹脂との間にメッキが入り込んでしまうような事態の発生を的確に回避することが可能となる。
【0040】
さらに、このガラスフィラーでは、アスペクト比が1.5以上とされていることから、当該フィラーを含んだ樹脂フィルムを製造した場合に、ガラスフィラーの長さ方向において、ガラスフィラーと樹脂とが接触する部位の長さを大きくとることができる。これにより、樹脂フィルムの剛性を補強する効果を好適に得ることが可能となる。
【0041】
加えて、このガラスフィラーは、種々の熱膨張係数を有する組成で構成することが可能である。そして、組成の選択は、例えば、このガラスフィラーを含んだ樹脂フィルムに要求される熱的特性に基づいて行えばよい。一例を挙げると、このガラスフィラーを含んだ樹脂フィルムに許容される寸法の変化が極めて小さい等、厳しい熱的特性が要求されるような場合には、熱膨張係数が零である組成や、負の熱膨張係数を有する組成を選択すればよい。このようにすれば、ガラスフィラーを含んだ樹脂フィルム全体の熱膨張係数を、樹脂単体の熱膨張係数と比較して低下させることができる。これにより、温度の上昇に起因した樹脂フィルムの寸法の変化を可及的に抑制することが可能となる。
【0042】
以下、本発明の実施形態に係るガラスフィラーの製造方法により、上記のガラスフィラーを製造する態様について説明する。
【0043】
はじめに、断面の直径が6μm未満で、且つ全長が20μm以下で、且つアスペクト比が1.5以上の円柱状に形成されたガラス繊維を準備する。なお、ガラス繊維の組成としては、ガラスフィラーの構成に係る説明で既に述べた種々の組成から選択することができる。このガラス繊維は、例えば、以下の(1)〜(3)の工程を経て得られる。(1)ガラス繊維の直径が6μm未満となるように、当該ガラス繊維(ガラスストランド)を引っ張った後、所定の長さ毎に切断する(例えば、1cm毎)。(2)切断されたガラス繊維をボールミル等で粉砕する。(3)分級器を用いて目的のガラス繊維を選り分ける。
【0044】
次に、準備したガラス繊維にフュームドシリカ(直径が数nm程度の球状のシリカ)及び/またはフュームド酸化アルミニウム(直径が数nm程度の球状の酸化アルミニウム)を添加する。なお、本実施形態においては、ガラス繊維の表面にフュームドシリカを塗している。ここで、ガラス繊維へのフュームドシリカの添加量は、ガラス繊維の総重量(複数本のガラス繊維の重量の和)に対して、0.1%〜3%の重量とすることが好ましい。
【0045】
次に、フュームドシリカを添加したガラス繊維に対し、軟化点−100℃〜軟化点+50℃の温度範囲で熱処理を施す。この熱処理は、例えば、焼成炉内でガラス繊維を加熱することによって行う。なお、焼成炉の他、ロータリーキルン等を用いることで熱処理を行ってもよい。熱処理が完了するとガラスフィラーが得られる。
【0046】
以下、上記のガラスフィラーの製造方法による作用・効果について説明する。
【0047】
このガラスフィラーの製造方法によれば、ガラス繊維に対し、軟化点−100℃〜軟化点+50℃の温度範囲で熱処理を施すことから、熱処理後に得られるガラスフィラーの表面を火造り面で構成することができる。また、温度範囲の上限を軟化点+50℃としていることで、熱処理時に過度に表面張力が作用し、ガラスフィラーが球状に形成されてしまう等、円柱状の形状が崩れることを防止することが可能となる。さらに、ガラス繊維にフュームドシリカを添加していることにより、熱処理時にガラス繊維同士が相互に引っ付いたりするような事態の発生を好適に防止することが可能となる。
【0048】
以下、上記のガラスフィラーの製造方法により、ガラスフィラーを製造する場合の具体例を挙げる。
【0049】
約1g分のガラス繊維に対して重量%で1wt%のフュームドシリカを添加した後、焼成炉内でガラス繊維に熱処理を施すことにより、ガラスフィラーを製造した。ガラス繊維への熱処理は以下の3つの条件の下で行なった。第一の条件では、ガラス繊維を830℃で9分間加熱した。第二の条件では、ガラス繊維を840℃で6分間加熱した。第三の条件では、ガラス繊維を850℃で3分間加熱した。なお、ガラス繊維の組成はEガラスであり、その軟化点は850℃である。
【0050】
図1は熱処理前のガラス繊維1を示す画像である。また、図2図4はそれぞれ第一〜第三の条件の下で熱処理を行って得られたガラスフィラー2を示す画像である。これらの図に示すように、熱処理前のガラス繊維1の角張った部位(破断面等)が、熱処理時に作用する表面張力によって収縮し、熱処理後に得られるガラスフィラー2では滑らかなR状に形成されている。また、ガラスフィラー2においても、ガラス繊維1の円柱状の形状が崩れることなく維持されている。
【0051】
以下、本発明の実施形態に係る樹脂フィルムの構成について説明する。
【0052】
本発明の実施形態に係る樹脂フィルムは、上記のガラスフィラーを含んでいる。そして、ガラスフィラーの総重量が、当該樹脂フィルムの全重量のうちの20%以上を占めている。なお、ガラスフィラーの総重量が、樹脂フィルムの全重量に占める割合は、より好ましくは30%以上とし、最も好ましくは50%以上とする。また、樹脂の種類としては、例えば、ポリカーボネート、エポキシ、ポリエステル、ポリアクリル等を用いることができる。
【0053】
以下、上記の樹脂フィルムによる作用・効果について説明する。なお、上記のガラスフィラーによる作用・効果の説明で既に述べたものと重複する作用・効果については省略する。
【0054】
この樹脂フィルムは、上記のガラスフィラーを含むと共に、このガラスフィラーの総重量が、樹脂フィルムの全重量のうちの20%以上を占めている。これにより、十分な剛性を保持させることが可能である。
【0055】
以下、上記の樹脂フィルムを製造する態様について説明する。
【0056】
上記の樹脂フィルムは、樹脂の溶液に上記のガラスフィラーを重量%で20wt%以上混入させた後、種々の成形方法により、溶液を薄く引き伸ばしてフィルム状に成形することにより製造される。
【0057】
ここで、本発明に係るガラスフィラー、及びガラスフィラーの製造方法、並びに樹脂フィルムは、上記の実施形態で説明した構成や態様に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変更が加えることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 ガラス繊維
2 ガラスフィラー
図1
図2
図3
図4