特許第6387725号(P6387725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387725
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】積層フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20180903BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180903BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20180903BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   B32B27/36
   B32B27/00 L
   C09D201/02
   C09D175/04
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-155811(P2014-155811)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-199329(P2015-199329A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年5月31日
(31)【優先権主張番号】特願2014-71760(P2014-71760)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】太田 一善
(72)【発明者】
【氏名】阿部 悠
(72)【発明者】
【氏名】高田 育
【審査官】 高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/145875(WO,A1)
【文献】 特開2004−082370(JP,A)
【文献】 特開2014−131871(JP,A)
【文献】 特開2014−208465(JP,A)
【文献】 特開平04−166385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
C09D1/00−10/00;101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも一面に、樹脂(α)を用いてなる樹脂層(X)が設けられた積層フィルムであって、以下の(1)〜(5)の条件を満たし、
前記樹脂層(X)を形成する樹脂が式(1)〜(3)で示される化学構造を有する積層フィルム。
(1)樹脂層(X)の厚みが80nm以上であること
(2)樹脂(α)はガラス転移点温度が50℃以上である樹脂であること
(3)樹脂層(X)の表面自由エネルギーが40mN/m未満であること
(4)樹脂(α)が、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基を有するメラミン化合物(B)を含む樹脂組成物から得られる樹脂であること
(5)前記樹脂組成物中に離型剤(C)を含有し、前記離型剤(C)が長鎖アルキルアクリレート化合物(d−1)を含むこと
【化1】
【化2】
【化3】
【請求項2】
前記離型剤(C)の含有量が、樹脂(A)の質量を100質量部としたとき、3質量部以上、30質量部以下である請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記長鎖アルキルアクリレート化合物(d−1)の長鎖アルキル基の炭素数が12以上25以下である請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
積層フィルムのヘイズが3.0%よりも大きい請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記樹脂層(X)の表面粗さRaが20nm以上である請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
離型フィルムとして用いられる請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項7】
ポリエステルフィルムの少なくとも一面に樹脂層(X)が設けられた、以下の(1)〜(4)の条件を満たす積層フィルムの製造方法であって、
ポリエステルフィルムの少なくとも一面に、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基を有するメラミン化合物(B)を用いてなる樹脂組成物を塗布し、塗布した樹脂組成物を150℃以上に加熱して得られる樹脂(α)からなる樹脂層(X)を形成せしめる工程を含み、
前記樹脂層(X)を形成する樹脂が式(1)〜(3)で示される化学構造を有する積層フィルムの製造方法。
(1)樹脂層(X)の厚みが80nm以上であること
(2)樹脂(α)はガラス転移点温度が50℃以上である樹脂であること
(3)樹脂層(X)の表面自由エネルギーが40mN/m未満であること
(4)前記樹脂組成物中に離型剤(C)を含有し、前記離型剤(C)が長鎖アルキルアクリレート化合物(d−1)を含むこと
【化4】
【化5】
【化6】
【請求項8】
前記樹脂組成物中における、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)とメチロール基を有するメラミン化合物(B)の含有量の合計が、樹脂組成物中の固形分に対して、70質量%以上である、請求項7に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記樹脂組成物中における、樹脂(A)とメラミン化合物(B)の含有量の質量比(樹脂(A)の含有量[質量部]/メラミン化合物(B)の含有量[質量部])が、100/30〜100/100である、請求項7または8に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記離型剤(C)の含有量が、樹脂(A)の質量を100質量部としたとき、3質量部以上、30質量部以下である請求項7〜9のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法
【請求項11】
前記長鎖アルキルアクリレート化合物(d−1)の長鎖アルキル基の炭素数が12以上25以下である請求項7〜10のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法
【請求項12】
前記積層フィルムのヘイズが3.0%よりも大きい請求項7〜11のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法
【請求項13】
樹脂(A)が、少なくとも以下の(a)〜(c)の化合物を用いて重合されてなる樹脂であって、用いられる各化合物の質量比が以下のとおりである、請求項7〜12のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
・アクリル酸エステル化合物及び/又はメタクリル酸エステル化合物(a):55〜98質量部
・水酸基を有するエチレン系不飽和化合物(b):1〜30質量部
・式(3)で示される化学構造(ウレタン構造)と多官能アクリロイル基を有する化合物(c):1〜15質量部
ただし、(a)〜(c)の質量の合計を100質量部とする。
【請求項14】
前記(c)の化合物が、さらにメチロール基を有する請求項13に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項15】
ポリエステルフィルムの少なくとも一面に、前記樹脂組成物を塗布し、次いで少なくとも一軸方向に延伸し、その後、150℃以上に加熱し、樹脂層(X)を形成せしめる請求項7〜14のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルム、特にポリエステルフィルムに樹脂層が積層された積層フィルムに関する。さらに詳しくは加熱処理を伴う加工工程でポリエステルフィルムから析出するオリゴマーを抑制し、かつ粘着剤に対して離型性に優れる樹脂層を有する積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂フィルム、中でも二軸延伸ポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有することから磁気記録材料、包装材料などの多くの用途において基材フィルムとして広く使用されている。特に近年、フラットパネルディスプレイ向けの反射防止材料や偏光板材料、またはそれらの工程で使用される保護フィルム、離型フィルムをはじめとした各種光学用フィルムとしての需要が高まっている。これらの用途では様々な機能を付与するコーティング加工や、加熱処理加工することが多い。
【0003】
しかしながら、例えばポリエステルフィルム製造中の搬送工程で搬送ロールとの擦過によりフィルム表面に擦り傷が発生したり、加工工程における熱処理によりポリエステルフィルムからのオリゴマーの析出が起こり、フィルム自体が白化したり、オリゴマーが積層された粘着層へ移行し、異物欠点が発生するため、離型フィルムとして実用に適用できないことがあった。さらには、近年加工工程での熱処理温度の上昇によってポリエスエルフィルムと粘着剤が融着してしまい、セパレートフィルムとして粘着剤を剥離することが困難になることがあった。
【0004】
そのため、従来からプラスチックフィルムにアルキッド樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂とシリコーンからなる離型層を積層した離型フィルム(特許文献1)、メラミン系樹脂からなる離型層を積層した離型フィルム(特許文献2)が検討されている。また熱可塑性樹脂フィルムの製造の工程内で塗布を行うインラインコート法により熱硬化型アクリル樹脂と架橋剤を用いて塗膜を設ける方法(特許文献3)、さらに熱開始剤を添加して塗膜硬度の向上を図った方法(特許文献4)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−82370号公報
【特許文献2】特開2006−7568号公報
【特許文献3】特開2005−89622号公報
【特許文献4】特表2008−524402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のようにプラスチックフィルム表面にアルキッド樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂とシリコーンからなる樹脂層を設ける方法は、次の欠点がある。樹脂層の硬度を高くして、ポリエステルフィルムから析出するオリゴマーの析出抑制性(オリゴマー析出抑制性)がある積層フィルムを作成するには、樹脂層の厚みが数μm必要である。またシリコーンを使用するため、製膜工程や製品にシリコーンが移行し、汚染してしまう可能性がある。さらに、樹脂層の表面自由エネルギーが低くなり過ぎるため、例えば水系溶媒の塗布層を積層した際に、はじきが発生してしまう欠点がある。また特許文献2、3のように熱硬化性を有するメラミン樹脂、アクリル樹脂及び架橋剤を用いて樹脂層を設ける方法では、樹脂層の硬度やオリゴマー析出抑制性が十分ではない。離型フィルム、特にセパレートフィルムとして使用する場合、セパレートフィルムの上に粘着剤を積層し、加熱工程を経てセパレートフィルムから粘着性が剥離される際に、オリゴマー由来の異物が粘着剤に内包されたり、表面に付着したりして、欠点になる課題がある。さらに、加熱加工によって、セパレートフィルムと粘着剤が融着してしまい、剥離できないという課題がある。特許文献4に記載の樹脂層は、特許文献1と同様に樹脂層の厚みが数μm必要であり、さらに塗布層を形成せしめるには熱開始剤が必要であり、有機溶剤、又は無溶剤タイプの塗布層に使用が限定されてしまう。
【0007】
そこで、本発明では上記の欠点を解消し、オリゴマー析出抑制性、離型性に優れた樹脂層(X)を有する積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は次の構成からなる。すなわち、
ポリエステルフィルムの少なくとも一面に、樹脂(α)を用いてなる樹脂層(X)が設けられた積層フィルムであって、以下の(1)〜(4)の条件を満たす積層フィルムである。
(1)樹脂層(X)の厚みが80nm以上であること
(2)樹脂(α)はガラス転移点温度が50℃以上である樹脂であること
(3)樹脂層(X)の表面自由エネルギーが40mN/m未満であること
(4)樹脂(α)が、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基を有するメラミン化合物(B)を含む樹脂組成物から得られる樹脂であること。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層フィルムは、優れた離型性を有するだけでなく、加熱処理時に問題となる基材フィルムであるポリエステルフィルムからのオリゴマーの析出を抑制する効果を奏する。また、粘着剤に対しても優れた離型性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の積層フィルムについて詳細に説明する。
【0011】
本発明は、基材フィルムとしてポリエステルフィルムの少なくとも一面に樹脂層(X)が積層された積層フィルムである。
【0012】
(1)樹脂層(X)
本発明の積層フィルムの樹脂層(X)は、樹脂層(X)の厚みが80nm以上であることが必要である。樹脂層(X)の厚みを80nm以上とすることで、樹脂層(X)にオリゴマー析出抑制性や離型性を付与することが可能となる。また樹脂層(X)の厚みの上限は特に限られるものではないが、積層フィルムのハンドリング性の観点からは500nm以下が好ましい。また、本発明の積層フィルムの樹脂層(X)を形成する樹脂(α)はガラス転移点温度が50℃以上である樹脂であることが必要である。樹脂(α)をガラス転移点温度が50℃以上である樹脂とすることで、樹脂層(X)の硬度が高くなるため、樹脂層(X)にオリゴマー析出抑制性が付与されるだけでなく、樹脂層(X)は有機溶剤や樹脂などの浸透や浸食が抑制されるため、良好な離型性を発現させることができる。
【0013】
本発明の積層フィルムの樹脂層(X)を形成する樹脂(α)が、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基を有するメラミン化合物(B)を含む樹脂組成物から得られる樹脂であると、樹脂(α)をガラス転移点温度が50℃以上である樹脂とすることができる。また、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)のガラス転移点温度は50℃以上であることが好ましい。樹脂(A)のガラス転移点温度が50℃以上であると、樹脂(α)のガラス転移点温度をより高い温度とすることができる。
【0014】
さらに、本発明の積層フィルムの樹脂層(X)は、表面自由エネルギーが40mN/m未満であることが必要である。樹脂層(X)の表面自由エネルギーを40mN/m未満にすることで、離型フィルムとして使用した際に、樹脂層(X)に良好な離型性を付与することができる。一方、樹脂層(X)の表面自由エネルギーを25mN/m以上とすることが好ましい。樹脂層(X)の表面自由エネルギーを25mN/m以上とすることで、セパレートフィルムとして使用する際に、セパレートフィルム上で粘着剤が自然剥離することなく、塗布、または貼り合わせることができる。
【0015】
尚、本発明の樹脂層(X)の表面自由エネルギーを40mN/m以下にする方法として、特に限定されることはないが、代表的な方法として以下の(I)〜(III)の方法がある。
(I)樹脂層(X)を形成する樹脂(α)が、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)とメチロール基を有するメラミン化合物(B)を含む樹脂から得られる樹脂であって、樹脂(A)が(a)〜(c)の化合物を用いて重合されてなる樹脂であって、(a)〜(c)の割合を特定の比率とする方法
(II)樹脂層(X)を形成する樹脂(α)が、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)とメチロール基を有するメラミン化合物(B)以外に、離型剤(C)を含有させる方法。
【0016】
(III)上記(I)、(II)の方法を組合せる方法。
【0017】
また、本発明の積層フィルムはヘイズが3.0%よりも大きいことが好ましい。積層フィルムのヘイズを3.0%より大きくすることによって、擦り傷抑制性や離型性に優れた積層フィルムとなる。基材フィルムであるポリエステルフィルムや樹脂層(X)に、例えば顔料、染料、有機又は無機の粒子を含有させ、ヘイズを3.0%よりも大きくすることによって、積層フィルムの表面に微小な突起が形成され、積層フィルムに擦り傷抑制性や離型性を付与することが可能となる。一方、積層フィルムのヘイズが3.0%以下であると、擦り傷抑制性や離型性に劣るフィルムとなる。積層フィルムのヘイズは好ましくは5.0%以上であり、さらに好ましくは8.0%以上である。
【0018】
さらに本発明の樹脂層(X)の積層フィルムの表面粗さRaが20nm以上であることが好ましい。樹脂層(X)の表面粗さRaを20nm以上とすることで、さらに擦り傷抑制性や離型性に優れた積層フィルムとすることができる。樹脂層(X)の表面粗さRaを20nmよりも大きくすることによって、表面の微小な突起により、擦り傷抑制性や離型性を付与することが可能となる。樹脂層(X)の表面粗さRaを20nm以上とする方法としては、基材フィルムであるポリエステルフィルムや樹脂層(X)に、例えば顔料、染料、有機又は無機の粒子を含有させる方法などが挙げられる。樹脂層(X)の表面粗さは、上限としては100nm以下であることが、剥がされた粘着剤側の表面平滑性の点から好ましい。
【0019】
本発明の積層フィルムの樹脂層(X)を形成する樹脂(α)は、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基を有するメラミン化合物(B)を含む樹脂組成物から得られる樹脂である必要がある。樹脂(α)が、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基を有するメラミン化合物(B)を含む樹脂組成物から得られる樹脂であると、樹脂層(X)に良好なオリゴマー析出抑制性を付与することができる。
【0020】
さらに、樹脂(A)は、少なくとも以下の(a)〜(c)の化合物を用いて重合されてなるアクリル樹脂であることが好ましい。(a)〜(c)の化合物を用いることで、メラミン化合物(B)と得られる樹脂層(X)のオリゴマー析出抑制性を付与することができる。
・アクリル酸エステル化合物及び/又はメタクリル酸エステル化合物(a)
・水酸基を有するエチレン系不飽和化合物(b)
・式(3)で示される化学構造(ウレタン構造)と多官能アクリロイル基を有する化合物(c)
本発明の積層フィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも一面に、樹脂(α)を用いてなる樹脂層(X)が設けられた積層フィルムである。なお、樹脂(α)の詳細については後述する。
【0021】
また、本発明の積層フィルムの樹脂層(X)は、樹脂(α)と、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)、及び、メチロール基を有するメラミン化合物(B)の合計質量が樹脂層(X)全体の70質量%以上であることが好ましい。樹脂層(X)中の樹脂(α)と樹脂(A)、及びメラミン化合物(B)の合計含有量を70質量%以上とすることで、オリゴマーの析出を抑制することができる。
【0022】
樹脂(α)は、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基を有するメラミン化合物(B)を用いてなる樹脂組成物から得られる樹脂である。樹脂(A)およびメラミン化合物(B)を用いてなる樹脂組成物を加熱すると、樹脂(A)のアクリロイル基同士が架橋して、架橋構造が形成されたり、樹脂(A)の水酸基とメラミン化合物(B)のメチロール基が架橋して、架橋構造(後述する式(1)で示される構造)が形成されたり、メラミン化合物(B)のメチロール基同士架橋して、架橋構造(後述する式(2)で示される構造)が形成されたりする。樹脂(A)のアクリロイル基同士、樹脂(A)の水酸基とメラミン化合物(B)のメチロール基、メラミン化合物(B)のメチロール基同士の架橋反応は、反応性が高いため、樹脂(α)は、多くの架橋構造を有する樹脂となる。樹脂(A)の水酸基、アクリロイル基の数、メラミン化合物(B)のメチロール基の数を増やすと、より緻密な架橋構造を形成した樹脂(α)を得ることが可能となる。
【0023】
つまり、本発明において、樹脂層(X)を形成する樹脂は、アクリロイル基同士の架橋構造を有することが好ましい。また、樹脂層(X)を形成する樹脂は、式(1)で示される水酸基とメチロール基との架橋構造(化学構造)を有することが好ましい。また、樹脂層(X)を形成する樹脂は式(2)で示されるメチロール基同士の架橋構造を有することが好ましい。また、より緻密な架橋構造を形成した樹脂(α)を得るためには、樹脂(α)は、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基を有するメラミン化合物(B)を150℃以上に加熱して得られる樹脂組成物であることが好ましい。
【0024】
【化1】
【0025】
【化2】
【0026】
このように、樹脂層(X)や樹脂(α)は緻密な架橋構造を有するため、樹脂層(X)の硬度を飛躍的に高めることができ、加熱後のオリゴマーの析出が少ない積層フィルムとすることができる。特に、本発明の積層フィルムは150℃で1時間加熱処理せしめても、オリゴマー析出量の指標となるヘイズの変化率は0.3%以下にとどまる。そのため、本発明の積層フィルムは、離型フィルムとして好適に供せられる。樹脂層(X)や樹脂(α)は緻密な架橋構造を有するため有機溶剤や樹脂などの浸透や侵食が抑制され、良好な離型性を発現できるだけでなく、オリゴマー析出抑制性に優れるため、離型フィルムから剥離された製品の品質、特に欠点の数を大幅に減らし表面の平滑性を極めて良好な状態にできる。
【0027】
本発明の積層フィルムの樹脂層(X)は樹脂(α)を用いてなるものであり、前述した条件を満たす積層フィルムであれば特に製造方法は問わないが、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)とメチロール基を有するメラミン化合物(B)を用いてなる樹脂組成物をポリエステルフィルム(基材フィルム)に塗布し、特に150℃以上に加熱することによって製造することができる。
【0028】
(2)樹脂(α)および架橋構造
本発明に用いる樹脂(α)は前述したように、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)とメチロール基を有するメラミン化合物(B)を用いてなる樹脂組成物から得られる樹脂である。特に、樹脂(α)が、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基を有するメラミン化合物(B)を150℃以上に加熱されることによって得られると緻密な架橋構造を形成するため好ましい。樹脂(α)などについて以下に詳しく説明する。
【0029】
樹脂層(X)の硬度やオリゴマーの析出抑制性、離型性などを向上させるために、樹脂層(X)や樹脂(α)は以下の構造を有することが好ましい。
【0030】
まず、樹脂(α)は、アクリロイル基同士の架橋により得られる構造を有することが好ましい。つまり、樹脂層(X)を形成する樹脂は、アクリロイル基同士の架橋により得られる構造を有することが好ましい。かかる架橋構造は、アクリロイル基を有する樹脂(A)を加熱することによって、形成させることができる。
【0031】
次に、樹脂(α)は式(1)に示す構造を有することが好ましい。
【0032】
【化3】
【0033】
式(1)に示す構造は、水酸基とメチロール基の架橋により得られる構造である。つまり、樹脂層(X)を形成する樹脂は、水酸基とメチロール基の架橋により得られる式(1)の化学構造を有することが好ましい。かかる架橋構造は、水酸基を有する樹脂(A)とメチロール基を有するメラミン化合物(B)を加熱することによって、形成させることができる。樹脂層(X)を形成する樹脂や樹脂(α)が式(1)に示す構造を有することで、樹脂層(X)にオリゴマー析出抑制性、離型性を持たせることができる。
【0034】
さらに、樹脂(α)は式(2)に示す構造を有することが好ましい。
【0035】
【化4】
【0036】
式(2)に示す構造は、メチロール基同士の架橋により得られる構造である。つまり、樹脂層(X)を形成する樹脂は、メチロール基同士の架橋により得られる式(2)の化学構造を有することが好ましい。かかる架橋構造は、メチロール基を有するメラミン化合物(B)を加熱することによって、形成させることができる。樹脂層(X)を形成する樹脂や樹脂(α)は式(2)に示す構造を有することで、樹脂層(X)にオリゴマー析出抑制性、離型性を持たせることができる。
【0037】
加えて、樹脂(α)は式(3)に示す構造を有することが好ましい。
【0038】
【化5】
【0039】
式(3)に示す構造は、ウレタン構造である。つまり、樹脂層(X)を形成する樹脂は、式(3)の化学構造を有することが好ましい。かかる構造は、例えば、水酸基とアクリロイル基に加えてウレタン構造を持つ樹脂(A)を用いることなどによって、樹脂(α)に導入することができる。樹脂層(X)を形成する樹脂や樹脂(α)は式(3)に示す構造を有することで、樹脂層(X)に伸縮性や弾性を持たせることができる。すなわち、樹脂(α)が形成される際に(アクリロイル基同士の架橋構造や式(1)および(2)で示される架橋構造が形成される際に)、樹脂層(X)にクラックが発生したり、カールが発生したりすることがあるが、樹脂層(X)を形成する樹脂や樹脂(α)が式(3)の構造を有することにより、クラックやカールの発生を抑制することができる。
【0040】
本発明において、樹脂(A)とメラミン化合物(B)を用いて樹脂(α)を得る場合、樹脂層(X)を形成するための樹脂組成物(樹脂(A)とメラミン化合物(B)の混合物)において、樹脂(A)とメラミン化合物(B)の質量比は、樹脂(A)の質量を100質量部としたとき、メラミン化合物(B)の質量は30質量部以上、100質量部以下であることが好ましい。より好ましくは、メラミン化合物(B)の質量が30質量部以上、60質量部以下である。メラミン化合物(B)の質量を30質量部以上とすることで、樹脂(α)に式(2)の構造を十分に持たせることができる。その結果、樹脂層(X)の硬度を高め、オリゴマーの析出を大幅に抑制させることが可能となる。また、樹脂層(X)の離型性が高まり、さらには、可撓性、強靭性、耐溶剤性も高まる。一方、メラミン化合物(B)の質量を100質量部以下とすることで、式(2)の構造が形成される際に発生する硬化収縮を抑制することができる。その結果、樹脂層(X)でのクラックの発生が抑制され、オリゴマー析出抑制性や離型性を発現させることができる。
(3)水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)
本発明において用いられる、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)とは、少なくとも1つ以上の水酸基と、1つ以上のアクリロイル基を有する樹脂である。本発明において、アクリロイル基はメタクリロイル基を含むものである。また、樹脂層(X)が緻密な架橋構造を形成する点からアクリロイル基は多官能であることが好ましく、アクリロイル基の数が2以上、15以下であることが好ましい。
【0041】
本発明において、樹脂(A)が水酸基とアクリロイル基を有するとは、樹脂(A)がメラミン化合物(B)と共に加熱することによって樹脂(α)を形成せしめることができれば、どのような形態で有していても良い。例えば、水酸基を有する重合体とアクリロイル基を有する重合体を有する樹脂でも良く、水酸基とアクリロイル基を繰り返し単位とする重合体を有する樹脂でも良い。中でもアクリル酸エステル化合物及び/又はメタクリル酸エステル化合物(a)と、水酸基を有するエチレン系不飽和化合物(b)と、式(3)で示される化学構造(ウレタン構造)と多官能アクリロイル基を有する化合物(c)を用い、これらを重合することによって得られる重合体を有する樹脂であることが好ましい。緻密な架橋構造を形成させる点で、(a)から形成された炭化水素鎖に(b)及び(c)がランダムにグラフト重合されている重合体を有することがより好ましい。これらのモノマー((a)、(b)及び(c))を用いて重合された樹脂(A)は、メラミン化合物(B)と共に加熱することによって、前述した樹脂(α)を形成せしめることができる。特に150℃以上に加熱すると、緻密な架橋構造を有する樹脂(α)が得られるため好ましい。以下、化合物(a)、(b)及び(c)について説明する。
【0042】
アクリル酸エステル化合物及び/又はメタクリル酸エステル化合物(a):
化合物(a)は、樹脂(A)の主骨格を形成するモノマーである。化合物(a)の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸i−オクチル、アクリル酸t−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸i−オクチル、メタクリル酸t−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸及び/またはメタクリル酸の炭素数1〜18のアルキルエステルやその他、アクリル酸シクロヘキシル等のシクロ炭素数5〜12のシクロアルキルエステル、アクリル酸ベンジル炭素数7〜12のアラルキルエステルなどを挙げることができる。
【0043】
化合物(a)、(b)及び(c)を用いて、樹脂(A)を重合する場合、化合物(a)の質量は、(a)〜(c)の化合物の質量の合計を100質量部としたときに、55質量部以上、98質量部以下であることが好ましい。化合物(a)の質量(仕込み量)を上記の数値範囲内とすることで、樹脂(A)を効率よく重合することができる。
【0044】
水酸基を有するエチレン系不飽和化合物(b):
化合物(b)は、水酸基を有することが必要である。かかる化合物(b)をモノマーとして用いることにより、樹脂(A)に水酸基を持たせることができる。
【0045】
化合物(b)の具体例としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル、アクリル酸3−ヒドロキシブチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−ヒドロキシプロピルアリルエーテル、2−ヒドロキシブチルアリルエーテル、アリルアルコール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、2−ヒドロキシエチルメタアリルエーテル、2−ヒドロキシプロピルメタアリルエーテル、2−ヒドロキシブチルメタアリルエーテルなど分子内に1つ以上の水酸基を含む不飽和化合物が好ましい。
【0046】
また化合物(b)は、カルボキシル基を有していても良い。
【0047】
化合物(a)、(b)及び(c)を用いて、樹脂(A)を重合する場合、化合物(b)の質量は、(a)〜(c)の化合物の質量の合計を100質量部としたときに、1質量部以上、30質量部以下であることが好ましい。化合物(b)の質量(仕込み量)を、1質量部以上にすることで、樹脂(A)に十分な量の水酸基を持たせることができる。また、化合物(b)の質量を30質量部以下とすることで、樹脂(A)を効率よく重合することができる。化合物(b)の質量が30重量部を超えると、後述する方法によって樹脂組成物を含む塗液を調製する際に、水系溶媒(E)に水分散化または水溶化した樹脂(A)がゲル化したり、凝集したりしてしまい、好適に使用することが困難になる。
【0048】
また樹脂層(X)の表面自由エネルギーを40mN/m未満にするためには、水酸基、およびカルボキシル基を有している化合物(b)の質量は少ない方が好ましい。好ましくは、(a)〜(c)の化合物の質量の合計を100質量部としたときに、水酸基、およびカルボキシル基を有している化合物(b)の質量は、後述する離型剤(C)を用いる場合には、1質量部以上、32質量部以下であることが好ましい。後述する離型剤(C)を用いない場合については、水酸基、およびカルボキシル基を有している化合物(b)の質量は、1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
【0049】
式(3)で示される化学構造(ウレタン構造)と多官能アクリロイル基を有する化合物(c):
本発明において用いられる、化合物(c)は、多官能アクリロイル基を有することが必要である。本発明において、アクリロイル基はメタクリロイル基を含むものである。かかる化合物(c)をモノマーとして用いることにより、樹脂(A)にアクリロイル基を持たせることができる。また、化合物(c)は多官能アクリロイル基以外に分子内にウレタン構造を有することが好ましい。かかる化合物(c)をモノマーとして用いることにより、樹脂(A)にアクリロイル基とウレタン構造を持たせることができる。
【0050】
化合物(c)は、具体的には、多価アルコールと、イソシアネートモノマー及び/又は有機ポリイソシアネートとを反応させて得られる化合物と、水酸基を有するアクリレートモノマー及び/又は水酸基を有するメタクリレートモノマーとを、無溶剤下もしくは有機溶剤下で反応させ合成することで得られるウレタンアクリレート化合物が好ましい。
【0051】
多価アルコールとしてはアクリルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。イソシアネートモノマーとしてはトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられ、有機ポリイソシアネートはイソシアネートモノマーから合成されるアダクトタイプ、イソシアヌレートタイプ、ビュレットタイプのポリイソシアネートなどが挙げられる。水酸基を有するアクリレートモノマーとしては、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどが挙げられる。水酸基を有するメタクリレートモノマーとしては、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルなどが上げられる。また、化合物(c)には、メチロール基が含有されていてもよい。
【0052】
化合物(a)、(b)及び(c)を用いて、樹脂(A)を重合する場合、化合物(c)の質量は、(a)〜(c)の化合物の質量の合計を100質量部としたときに、1質量部以上、15質量部以下であることが好ましい。化合物(c)の質量を1質量部以上にすることで、樹脂(A)に十分な量のアクリロイル基やウレタン構造を持たせることができる。
【0053】
一方、化合物(c)の質量が15質量部を超えると、以下の現象が起こることがあり、好ましくない。すなわち、樹脂(A)が過剰な量のアクリロイル基を有するので、樹脂(α)を得るためにこれを熱すると、アクリロイル基同士の架橋構造が非常に多く形成される。その結果、著しい硬化収縮が引き起こされ、樹脂層(X)にクラックが発生することがある。また、樹脂(α)を得るために樹脂(A)を熱しても、樹脂(α)の硬度を十分に高めることができず、樹脂層(X)の硬度に劣ることがある。
【0054】
(4)水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)の製造方法
本発明において用いられる樹脂(A)の製造方法としては、特に限定されることなく公知の技術を適用することができるが、モノマーとして、化合物(a)、(b)及び(c)を用いることが好ましい。さらに、樹脂(A)の製造方法としては、化合物(a)、(b)及び(c)を用いて水系溶媒(E)中で乳化重合により製造することが好ましい。水系溶媒(E)を用いることで、水系溶媒(E)を用いた樹脂組成物を含む塗液の調整が容易となる。また乳化重合により樹脂(A)を製造することで、樹脂(A)の機械的分散安定性が優れるので好ましい。
【0055】
本発明で用いられる乳化剤は、アニオン系乳化剤、及びノニオン系乳化剤のいずれの乳化剤でも特に限定されず、単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
アニオン系乳化剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩類やドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩類などが挙げられる。またノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類やポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル類などが挙げられる。
【0057】
乳化重合に際しては、通常、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩類、t-ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、p-メンタンヒドロパーオキシドなどの有機過酸化物類、過酸化水素などの重合開始剤が使用される。これら重合開始剤も1種又は複数種併用のいずれの態様でも利用できる。
【0058】
また乳化重合に際して、所望により重合開始剤とともに還元剤を併用することができる。このような還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート金属塩等の還元性有機化合物;チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸アンモニウム等の還元性無機化合物などが使用できる。
【0059】
更に、乳化重合に際しては連鎖移動剤を使用することができる。このような連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、2−メルカプトエタノール、トリクロロブロモメタン等を挙げることができる。本発明の樹脂(A)の乳化重合において好適に採用される重合温度は約30〜100℃である。
【0060】
(5)メチロール基を有するメラミン化合物(B)
本発明で用いることのできるメラミン化合物(B)は、1分子中にトリアジン環、及びメチロール基をそれぞれ1つ以上有している必要がある。かかるメラミン化合物(B)を用いることで、樹脂(α)に式(2)に示したメチロール基同士の架橋構造を持たせることができる。
【0061】
このメラミン化合物(B)は、具体的には、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に、低級アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等を脱水縮合反応させてエーテル化した化合物などが好ましい。
【0062】
メチロール化メラミン誘導体としては、例えばモノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンを挙げることができる。
【0063】
(6)離型剤(C)
本発明では、樹脂層(X)を形成する樹脂組成物中に、樹脂(A)、メラミン化合物(B)以外に、離型剤(C)を含有することが好ましい。離型剤(C)は、樹脂(A)の質量を100質量部としたとき、離型剤の質量は3質量部以上、30質量部以下であることが好ましい。離型剤の質量を3質部以上にすることで、樹脂層(X)の離型性を向上させることができ、30質量部以下であることで、樹脂層(X)の硬度を高くし、オリゴマー析出抑制性の優れた性質を維持することができる。
【0064】
本発明でいう離型剤(C)とは、樹脂に添加することにより、樹脂の表面に離型性(すなわち樹脂の表面エネルギーを低下させたり、樹脂の静止摩擦係数を低下させる)特性を有する化合物を示す。
【0065】
本発明において用いることのできる離型剤(C)としては、シリコーン含有化合物や、フッ素化合物、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナバワックスなどのワックス、長鎖アルキル基含有化合物、樹脂などが挙げられる。中でも、長鎖アルキル鎖含有アクリル樹脂は、離型性とオリゴマー抑制性を両立する点で好ましい。
【0066】
前記長鎖アルキル基含有アクリル樹脂は、長鎖アルキルアクリレート化合物であることが好ましく、中でも、長鎖アルキル基の炭素数が12以上の長鎖アルキルアクリレート化合物(d−1)であることが好ましい。具体的には炭素数12以上のアルキル基を側鎖に持つアクリルモノマーから合成されるアクリル樹脂や、炭素数12以上のアルキル基を側鎖に持つアクリルモノマーと、該アクリルモノマーと共重合可能なアクリルモノマーとのアクリレート化合物が挙げられる。炭素数を12以上にすることで、離型剤(C)として十分な離型効果を発現させることができる。長鎖アルキル基の炭素数の上限は特に限定されるものではないが25以下であると製造が容易であるため好ましい。
【0067】
(8)ポリエステルフィルム
本発明の積層フィルムにおいて、基材フィルムとなるポリエステルフィルムについて詳しく説明する。ポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレン−2,6−ナフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4‘−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とするものを好ましく用いることができる。本発明では、ポリエステルフィルムとしてポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。また熱可塑性樹脂フィルムに熱や収縮応力などが作用する場合には、耐熱性や剛性に優れたポリエチレン−2,6−ナフタレートが特に好ましい。
【0068】
上記ポリエステルフィルムは、二軸配向されたものであるのが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムとは、一般に、未延伸状態のポリエステルシート又はフィルムを長手方向および長手方向に直行する幅方向に各々2.5〜5倍程度延伸され、その後、熱処理を施されて、結晶配向が完了されたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。ポリエステルフィルムが二軸配向していない場合には、積層フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度が不十分であったり、平面性の悪いものとなるので好ましくない。
【0069】
また、ポリエステルフィルム中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機又は無機の粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。特に、顔料、染料、有機又は無機の粒子を添加すると、積層フィルムのヘイズを3.0%よりも大きくして積層フィルムの表面を粗くすることができ、積層フィルムに擦り傷抑制性や離型性を付与することができるため好適に用いることができる。ポリエステルフィルム中に含有する顔料、染料、有機又は無機の粒子の含有量は、ポリエステルフィルムを構成する樹脂に対して、1.0〜10.0重量%であると、フィルムの擦り傷抑制性や離型性に加えて、成形性も良好であるため好ましい。より好ましくは、1.5〜7.5重量%である。顔料、染料、有機又は無機の粒子は、単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではなく、用途や種類に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性などの点から、通常は好ましくは10〜500μm、より好ましくは38〜250μm、最も好ましくは75〜150μmである。また、ポリエステルフィルムは、共押出しによる複合フィルムであってもよいし、得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせたフィルムであっても良い。
【0071】
(9)樹脂層(X)の形成方法
本発明では、樹脂(A)とメラミン化合物(B)とを含有する樹脂組成物をポリエステルフィルム上に設け、その後に加熱し、ポリエステルフィルム上に樹脂(α)を含む樹脂層(X)を形成させることが好ましい。特に加熱温度を150℃以上にすることで、式(1)〜(3)の構造を有する樹脂層(X)を効率よく形成させることができるため好ましい。これによって、オリゴマー析出抑制性、離型性に優れる積層フィルムを得ることができる。
【0072】
樹脂(A)とメラミン化合物(B)とを含有する樹脂組成物をポリエステルフィルム上に設ける際に、溶媒を用いても良い。すなわち、樹脂(A)とメラミン化合物(B)を溶媒に溶解または分散せしめて、塗液とし、これをポリエステルフィルムに塗布しても良い。塗布後に、溶媒を乾燥させ、且つ加熱を施すことで樹脂(α)が積層されたフィルムを得ることができる。特に加熱温度を150℃以上にすることが好ましい。また本発明では、溶媒として水系溶媒(E)を用いることが好ましい。水系溶媒を用いることで、加熱工程での溶媒の急激な蒸発を抑制でき、均一な樹脂層(X)を形成できるだけでなく、環境負荷の点で優れているためである。
【0073】
ここで、水系溶媒(E)とは水、または水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類など水に可溶である有機溶媒が任意の比率で混合させているものを指す。
【0074】
樹脂組成物のポリエステルフィルムへの塗布方法はインラインコート法、オフコート法のどちらでも用いることができるが、好ましくはインラインコート法である。インラインコート法とは、ポリエステルフィルムの製造の工程内で塗布を行う方法である。具体的には、ポリエステル樹脂を溶融押し出ししてから二軸延伸後熱処理して巻き上げるまでの任意の段階で塗布を行う方法を指し、通常は、溶融押出し後・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸(未配向)ポリエステルフィルム(Aフィルム)、その後に長手方向に延伸された一軸延伸(一軸配向)ポリエステルフィルム(Bフィルム)、またはさらに幅方向に延伸された熱処理前の二軸延伸(二軸配向)ポリエステルフィルム(Cフィルム)の何れかのフィルムに塗布する。
【0075】
本発明では、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムのAフィルム、Bフィルム、の何れかのフィルムに、樹脂組成物を塗布し、溶媒を蒸発させ、その後、ポリエステルフィルムを一軸方向又は二軸方向に延伸し、加熱し、ポリエステルフィルムの結晶配向を完了させるとともに、樹脂層(X)を設ける方法を採用することが好ましい。この方法によれば、ポリエステルフィルムの製膜と、樹脂組成物の塗布と溶媒の乾燥、および加熱(すなわち、樹脂層(X)の形成)を同時に行うことができるために製造コスト上のメリットがある。また、塗布後に延伸を行うために樹脂層(X)の厚みをより薄くすることが容易である。
【0076】
中でも、長手方向に一軸延伸されたフィルム(Bフィルム)に、樹脂組成物を塗布し、溶媒を乾燥させ、その後、幅方向に延伸し、150℃以上に加熱する方法が好ましい。未延伸フィルムに塗布した後、二軸延伸する方法に比べ、延伸工程が1回少ないため、延伸による樹脂層(X)の欠陥や亀裂が発生を抑制することができる。
【0077】
一方、オフラインコート法とは、上記Aフィルムを一軸又は二軸に延伸し、加熱処理を施しポリエステルフィルムの結晶配向を完了させた後のフィルム、またはAフィルムに、フィルムの製膜工程とは別工程で樹脂組成物を塗布する方法である。本発明では、上述した種々の利点から、インラインコート法により設けられることが好ましい。
【0078】
よって、本発明において最良の樹脂層(X)の形成方法は、水系溶媒(E)を用いた樹脂組成物を、ポリエステルフィルム上にインラインコート法を用いて塗布し、水系溶媒(E)を乾燥させ、加熱することによって形成する方法である。
【0079】
(10)樹脂組成物を含む塗液の調整方法
樹脂組成物を含む塗液を作成する場合、溶媒は水系溶媒(E)を用いることが好ましい。樹脂組成物を含む塗液は、必要に応じて水分散化または水溶化した樹脂(A)、メラミン化合物(B)および水系溶媒(E)を任意の順番で所望の重量比で混合、撹拌することで作製することができる。次いで必要に応じて易滑剤や無機粒子、有機粒子、界面活性剤、酸化防止剤、熱開始剤などの各種添加剤を、樹脂組成物により設けた樹脂層(X)の特性を悪化させない範囲で任意の順番で混合、撹拌することができる。混合、撹拌する方法は、容器を手で振って行ったり、マグネチックスターラーや撹拌羽根を用いたり、超音波照射、振動分散などを行うことができる。
【0080】
(11)塗布方式
熱可塑性樹脂フィルムへの樹脂組成物の塗布方式は、公知の塗布方式、例えばバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法等の任意の方式を用いることができる。
【0081】
(12)積層フィルム製造方法
本発明の積層フィルムの製造方法について説明する。ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す。)フィルムはまず、必要に応じて顔料、染料、有機又は無機の粒子を添加したPETのペレットを十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出し、冷却固化せしめて未延伸(未配向)PETフィルム(Aフィルム)を作製する。このフィルムを80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して一軸配向PETフィルム(Bフィルム)を得る。このBフィルムの片面に所定の濃度に調製した、樹脂(A)とメラミン化合物(B)を含む樹脂組成物を有する塗液を塗布する。この時、塗布前にPETフィルムの塗布面にコロナ放電処理等の表面処理を行ってもよい。コロナ放電処理等の表面処理を行うことで、樹脂組成物のPETフィルムへの濡れ性を向上させ、樹脂組成物のはじきを防止し、均一な塗布厚みを達成することができる。
【0082】
塗布後、PETフィルムの端部をクリップで把持して80〜130℃の予熱ゾーンへ導き、塗液の溶媒を乾燥させる。乾燥後幅方向に1.1〜5.0倍延伸する。引き続き150〜250℃の熱処理ゾーンへ導き1〜30秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させるとともに、樹脂(α)を含む樹脂層(X)の形成を完了させる。この加熱工程(熱処理工程)で、必要に応じて幅方向、あるいは長手方向に3〜15%の弛緩処理を施してもよい。かくして得られた積層フィルムは、擦り傷を防止し、加熱処理を伴う加工工程でポリエステルフィルムから析出するオリゴマーに対して、オリゴマー抑制に優れた離型フィルムとなる。
【0083】
(特性の測定方法および効果の評価方法)
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は次のとおりである。
【0084】
(1)全光線透過率・ヘイズの測定
一辺が5cmの正方形状の積層フィルムサンプルを3点(3個)準備する。次にサンプルを常態(23℃、相対湿度50%)において、40時間放置する。それぞれのサンプルを日本電色工業(株)製濁度計「NDH5000」を用いて、全光線透過率の測定はJIS「プラスチック透明材料の全光線透過率の試験方法」(K7361−1、1997年版)、ヘイズの測定はJIS「透明材料のヘーズの求め方」(K7136 2000年版)に準ずる方式で実施する。それぞれの3点(3個)の全光線透過率およびヘイズの値を平均して、積層フィルムの全光線透過率およびヘイズの値とする。
【0085】
(2)樹脂層(X)厚みの測定
積層フィルムをRuOを用いて染色する。次に、積層フィルムを凍結せしめ、フィルム厚み方向に切断し、樹脂層(X)断面観察用の超薄切片サンプルを10点(10個)得る。それぞれのサンプル断面をTEM(透過型電子顕微鏡:(株)日立製作所製H7100FA型)にて1万〜100万倍で観察し、断面写真を得る。その10点(10個)のサンプルの樹脂層(X)厚みの測定値を平均して、積層フィルムの樹脂層(X)厚みとする。
【0086】
(3)樹脂(α)のガラス転移点温度(Tg)測定
積層フィルムを5mg量り取る。次に量り取った積層フィルムを温度変調示差走査熱量計(TMDSC)Q1000(TA Instrumnets社製)にて測定を実施した。温度変調示差走査熱量計では、全体のDSCシグナル(全熱流)をガラス転移など、発熱と吸熱が起こる可逆的な熱成分と、エンタルピー緩和、硬化反応、脱溶媒などの不可逆な熱成分とに分離できる。測定で得られた全体の示差走査熱量シグナルより、可逆成分である、樹脂(α)のガラス転移点由来のシグナルを分離、抽出し樹脂(α)のガラス転移点とする。ここで、積層フィルムの基材フィルムであるポリエステルフィルムのガラス転移点を事前に測定しておくことで、樹脂(α)のガラス転移点と区別することができる。
【0087】
(4)樹脂層(X)の表面自由エネルギー算出
積層フィルムを室温23℃相対湿度65%の雰囲気中に24時間放置後した。その後、同雰囲気下で、積層フィルムの樹脂層(X)側表面に対して、純水、エチレングリコール、ホルムアミド、ジヨードメタンの4種の溶液のそれぞれの接触角を、接触角計CA−D型(協和界面科学(株)社製)により、それぞれ5点測定する。5点の測定値の最大値と最小値を除いた3点の測定値の平均値をそれぞれの溶液の接触角とする。
【0088】
次に、得られた4種類の溶液の接触角を用いて、畑らによって提案された「固体の表面自由エネルギー(γ)を分散力成分(γ)、極性力成分(γ)、および水素結合力成分(γ)の3成分に分離し、Fowkes式を拡張した式(拡張Fowkes式)」に基づく幾何平均法により、本発明の分散力、極性力、及び分散力と極性力の和である表面エネルギーを算出する。
【0089】
具体的な算出方法を示す。各記号の意味について下記する。γは固体と液体の界面での張力である場合、数式(1)が成立する。
【0090】
γ: 樹脂層(X)と表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギー
γ: 樹脂層(X)の表面自由エネルギー
γ: 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギー
γ
(X(X)の表面自由エネルギーの分散力成分
γ: 樹脂層(X)の表面自由エネルギーの極性力成分
γ: 樹脂層(X)の表面自由エネルギーの水素結合力成分
γL: 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの分散力成分
γL: 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの極性力成分
γL: 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの水素結合力成分
γ=γ+γ−2(γ・γ)1/2−2(γ・γp)1/2−2(γ・γ)1/2 ・・・ 数式(1)。
【0091】
また、平滑な固体面と液滴が接触角(θ)で接しているときの状態は次式で表現される(Youngの式)。
【0092】
γ=γ+γcosθ ・・・ 数式(2)。
【0093】
これら数式(1)、数式(2)を組み合わせると、次式が得られる。
・γ)1/2+(γ・γ)1/2+(γ・γ)1/2=γ(1+cosθ)/2 ・・・ 数式(3)。
【0094】
実際には、水、エチレングリコール、ホルムアミド、及びジヨードメタンの4種類の溶液に接触角(θ)と、表1に記載の既知の溶液の表面張力の各成分(γL、γL、γL)を数式(3)に代入し、4つの連立方程式を解く。その結果、固体の表面自由エネルギー(γ)、すなわち樹脂層(X)表面の表面自由エネルギーが算出される。
【0095】
(5)オリゴマー析出抑制性評価(加熱処理評価)
一辺が10cmの積層フィルムサンプルを金属枠に4辺で固定する。次に、金属枠に固定した積層フィルムサンプルを150℃(風量ゲージ「7」)に設定したエスペック(株)製熱風オーブン「HIGH−TEMP−OVEN PHH−200」に、オーブン内の床に対して立てて入れ1時間加熱し、その後空冷で1時間放置した。樹脂層(X)と反対にあるポリエステルフィルムの面を、アセトンを含ませた不織布(小津産業(株)製、ハイゼガーゼNT−4)にて拭き取り、さらにアセトンで流し、常態で40時間放置乾燥させ、樹脂層(X)とは反対面のポリエステルフィルム面から析出したオリゴマーを除去した。その後(1)と同様にヘイズを測定し、加熱処理評価前のヘイズとの差をΔヘイズとして評価した。Δヘイズが0.3%未満を良好とした。尚、目安としてΔヘイズが0.3%未満であると加熱処理前後において目視ではヘイズ値の変化は分からない。0.3%以上、0.5%未満では個人差はあるが加熱処理前後で目視でのヘイズ値の変化が分かる可能性がある。0.5%以上では加熱処理前後で目視でのヘイズの変化が明らかに分かる。
【0096】
(6)粘着剤に対する離型性評価
粘着剤に対する離型性評価は、積層フィルムの樹脂層(X)側表面に、下記粘着剤を塗布、硬化させて形成せしめた粘着剤の硬化膜を、クロスカット法にて評価した。
粘着剤:アクリル酸エステル樹脂系溶剤型感圧粘着剤「ニッセツKP−2369」100部/架橋剤「CK−131」2部 (日本カーバイド工業(株)製)
粘着剤については、バーコーターを用いて硬化後の膜厚が10μmとなるように、積層フィルムの樹脂層(X)の表面に塗布し、エスペック(株)製熱風オーブン「HIGH−TEMP−OVEN PHH−200」にて100℃、2分間乾燥させ、さらに温度25℃湿度50%で5日間静置させることで粘着剤を硬化させた。
【0097】
<クロスカット法評価条件>
粘着剤の硬化膜に1mmのクロスカットを25マス(縦5マス×横5マス)個入れ、ラボランスプーン(アズワン社製ラボランスプーン 品番:9−890−02)の腹を押し付けた状態で、100g/cmの荷重をかけクロスカット部分を10往復擦過する。該硬化膜が剥離した状態により評価した。サンプル数N=3で実施し、その平均値を用いて評価した。硬化膜が樹脂層(X)上から剥離、脱落(粉状固体となった粘着層が脱落)した個数が25個(全て)を離型性「◎」とし、20個以上、25個未満を離型性が良好「○」とし、20個未満、10個以上を離型性がやや不良「△」、10個未満を離型性不良「×」とした。
【0098】
(7)積層フィルムの表面粗さ(Ra)の測定
積層フィルムの表面粗さ(Ra)測定は、JIS−B−0601(2010年版)に準じて測定する。樹脂層(X)が積層された積層フィルム面を表面粗さ計((株)小坂研究所製の高精度薄膜段差計ET−10)を用いて、測定する。測定は、触針先端半径0.5μm、針圧5mg、測定長1mm、カットオフ0.08mmとし、5mm間隔で長手方向、幅方向に各10点測定を行う。各測定結果から各測定箇所における粗さ曲線を得る。当該粗さ曲線を、その中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られる面積を長さで割った値から表面粗さを算出する。測定箇所20点の平均値を、樹脂層(X)の表面粗さ(Ra)とした。
【0099】
なお、フィルムの長手方向や幅方向が分からない場合は、フィルムにおいて最大の屈折率を有する方向を長手方向、それに長手方向に直行する方向を幅方向とみなす。また、フィルムにおける最大の屈折率の方向は、フィルムの全ての方向の屈折率をアッベ屈折率計で測定して求めてもよく、例えば、位相差測定装置(複屈折測定装置)などにより遅相軸方向を決定することで求めてもよい。
【実施例】
【0100】
以下、実施例1、2、11、12は、参考例1、2、11、12と読み替えるものとする。
(実施例1)
・水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A):
ステンレス反応容器に、メタクリル酸メチル(a)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(b)、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業(株)製、アートレジン(登録商標)UN−3320HA、アクリロイル基の数が6)(c)を表中の質量比で仕込み、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを(a)〜(c)の合計100質量部に対して2質量部を加えて撹拌し、混合液1を調製した。次に、攪拌機、環流冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた反応装置を準備した。上記混合液1を60重量部と、イソプロピルアルコール200重量部、重合開始剤として過硫酸カリウム5重量部を反応装置に仕込み、60℃に加熱し、混合液2を調製した。混合液2は60℃の加熱状態のまま20分間保持させた。次に、混合液1の40重量部とイソプロピルアルコール50重量部、過硫酸カリウム5重量部からなる混合液3を調製した。続いて、滴下ロートを用いて混合液3を2時間かけて混合液2へ滴下し、混合液4を調製した。その後、混合液4は60℃に加熱した状態のまま2時間保持した。得られた混合液4を50℃以下に冷却した後、攪拌機、減圧設備を備えた容器に移した。そこに、25%アンモニア水60重量部、及び純水900重量部を加え、60℃に加熱しながら減圧下にてイソプロピルアルコール及び未反応モノマーを回収し、純水に分散された樹脂(A)を得た。
【0101】
・メチロール基を有するメラミン化合物(B):
メチロール化メラミン((株)三和ケミカル製、ニカラック(登録商標)MW−035)を用いた。
【0102】
・樹脂組成物、及び樹脂組成物を含む塗液:
樹脂(A)、メラミン化合物(B)を質量比で、(A)/(B)=100/50となるように混合した。さらに、樹脂組成物のポリエステルフィルム上への塗布性を向上させるために、フッ素系界面活性剤(互応化学(株)製 プラスコート(登録商標)RY−2)を、樹脂組成物を含む塗液に対する含有量が0.06質量部になるよう添加した。
【0103】
・ポリエステルフィルム:
2種類の粒子(1次粒径0.3μmのシリカ粒子を4重量%、1次粒径0.8μmの炭酸カルシウム粒子を2重量%)を含有したPETペレット(極限粘度0.64dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを90℃に加熱して長手方向に3.1倍延伸し、一軸延伸フィルム(Bフィルム)とした。
【0104】
・積層フィルム:
樹脂組成物を一軸延伸フィルムにバーコートを用いて塗布厚み約6μmで塗布した。続いて、樹脂組成物を塗布した一軸延伸フィルムの幅方向の両端部をクリップで把持して予熱ゾーンに導いた。予熱ゾーンの雰囲気温度は90℃〜100℃にし、樹脂組成物を含む塗液の溶媒を乾燥させた。引き続き、連続的に100℃の延伸ゾーンで幅方向に3.7倍延伸し、続いて235℃の熱処理ゾーンで20秒間熱処理を施し、樹脂(α)を形成せしめ、ポリエステルフィルムの結晶配向の完了した積層フィルムを得た。得られた積層フィルムにおいてPETフィルムの厚みは100μm、樹脂層(X)の厚みは約250nmであった。
【0105】
積層フィルムの樹脂層(X)については、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)により式(1)〜(3)の構造に由来する重量ピークの存在を確認した。次に、フーリエ変換型赤外分光(FT−IR)にて、式(1)〜(3)の構造が有する各原子間の結合に由来するピークの存在を確認した。最後に、プロトン核磁気共鳴分光(H−NMR)にて、式(1)〜(3)の構造が有する水素原子の位置に由来する化学シフトの位置とプロトン吸収線面積から水素原子の数を確認した。これらの結果を合わせて、樹脂層(X)中に式(1)〜(3)の構造を有していることを確認した。
【0106】
得られた積層フィルムの特性等を表に示す。離型性が「○」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
【0107】
(実施例2)
樹脂(A)の質量比を表に記載の質量比に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。実施例1と比較してアクリレート構造を有する樹脂(A)の組成を変更した実施例2においても、離型性が「○」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
【0108】
(実施例3〜6)
樹脂(A)の質量比を表に記載の質量比に変更し、離型剤(C)として、下記の長鎖アルキルアクリレート化合物(d−1)を表に記載の質量比で添加した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。離型剤(C)を添加したため、実施例1、および2よりも表面エネルギーの値が小さくなり、離型性が「○」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
【0109】
離型剤(C):長鎖アルキルアクリレート化合物(d−1)
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えた温度調整可能な反応器中に、トルエン500重量部、ステアリルメタクリレート(アルキル鎖の炭素数18)80重量部、メタクリル酸15重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5重量部、アゾビスイソブチロニトリル1部を滴下器に入れ、反応温度85℃にて4時間で滴下して重合反応を行った。その後、同温度で2時間熟成して反応を完了させ離型剤(C)である化合物を得た。得られた化合物を、イソプロピルアルコール5重量%とn−ブチルセロソルブ5重量%を含む水に溶解させ、長鎖アルキルアクリレート化合物(d−1)を含む溶液を調整し、樹脂層(X)を形成する樹脂組成物を含む塗液に加えた。
【0110】
(実施例7、8)
樹脂層(X)の厚みを表に記載の厚みに変更した以外は、実施例5と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。実施例5と比較して樹脂層の厚みが薄くなっていたが、離型性が「○」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
【0111】
(実施例9、10)
積層フィルムの製造工程において、延伸後の熱処理ゾーンでの加熱温度を表に記載の温度に変更した以外は実施例5と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。実施例5と比較して、加熱処理温度を低温に変更したが、離型性が「○」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
【0112】
(実施例11)
樹脂組成物に離型剤(C)として下記のフッ素化合物を樹脂(A)の質量部100部に対して、表に記載した質量部を添加した以外は、実施例5と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。
【0113】
・フッ素化合物:FS−701(日本ペイント(株)製)
実施例5と比較して、離型剤(C)の効果として樹脂層(X)の表面自由エネルギーは高いものの、離型性が「○」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
【0114】
(実施例12)
樹脂組成物に離型剤(C)として下記のカルナバワックスを樹脂(A)の質量部100部に対して、表に記載した質量部を添加した以外は、実施例5と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。
【0115】
・カルナバワックス:セロゾール524(中京油脂(株)製)
実施例5と比較して、離型剤(C)の効果として樹脂層(X)の表面自由エネルギーがさらに低下したため、離型性が「○」であり、150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化はやや高くなったものの0.3%以内と良好な結果であった。
【0116】
(実施例13、14)
樹脂組成物に離型剤(C)として下記の長鎖アルキルアクリレート化合物を樹脂(A)の質量部100部に対して、表に記載した質量部を添加した以外は、実施例5と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。
【0117】
・長鎖アルキルアクリレート化合物:TR−7(新中村化学工業(株)製)
実施例5と比較して、離型剤(C)の効果として樹脂層(X)の表面自由エネルギーは、実施例13は低く、実施例14は同等であったが、ともに離型性が「○」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
【0118】
(実施例15)
樹脂組成物にシリカ粒子(1次粒径0.3μm)を樹脂(A)の質量部100部に対して、5質量部添加した以外は、実施例13と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。実施例13と比較して、表面粗さが増加し、離型性が「◎」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
【0119】
(実施例16)
樹脂組成物にシリカ粒子(1次粒径0.3μm)を樹脂(A)の質量部100部に対して、10質量部添加した以外は、実施例13と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。実施例13と比較して、表面粗さが増加し、離型性が「◎」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
【0120】
(比較例1)
樹脂(A)の質量比を表に記載の質量比に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。実施例1と比較してアクリレート構造を有する樹脂(A)の組成を変更した比較例1においては、樹脂(A)中の親水性である(b)成分の質量比が増えたため、表面自由エネルギーが40mN/m以上となり、離型性が「×」と不良であった。
【0121】
(比較例2)
樹脂(A)の質量比を表に記載の質量比に変更し、離型剤(C)として、下記の長鎖アルキルアクリレート化合物(d−2)を表に記載の質量比で添加した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。離型剤(C)を添加したが、表面自由エネルギーが40mN/m以上となり、離型性が「×」と不良であった。
【0122】
離型剤(C):長鎖アルキルアクリレート化合物(d−2)
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えた温度調整可能な反応器中に、トルエン500重量部、ステアリルメタクリレート(アルキル鎖の炭素数18)65重量部、メタクリル酸25重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10重量部、アゾビスイソブチロニトリル1部を滴下器に入れ、反応温度85℃にて4時間で滴下して重合反応を行った。その後、同温度で2時間熟成して反応を完了させ離型剤(C)である化合物を得た。得られた化合物を、イソプロピルアルコール5重量%とn−ブチルセロソルブ5重量%を含む水に溶解させ、長鎖アルキルアクリレート化合物(d−2)を含む溶液を調整し、樹脂層(X)を形成する樹脂組成物を含む塗液に加えた。
【0123】
(比較例3)
樹脂層(X)厚みを表に記載した厚みに変更した以外は、実施例5と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。実施例5と比較して樹脂層(X)の厚みを減少させたところ、離型性は良好だったが、150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化ともに不良であった。
【0124】
(比較例4)
樹脂(A)を使用しない以外は、実施例5と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。実施例5と比較して、樹脂(A)がないため、離型性は良好だったが、150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化ともに不良であった。
【0125】
(比較例5)
メラミン化合物(B)を使用しない以外は、実施例5と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。実施例5と比較して、メラミン化合物(B)がないため、離型性は良好だったが、150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化ともに不良であった。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、加熱処理を伴う加工工程でポリエステルフィルムから析出するオリゴマーを抑制し、かつ離型性に優れる樹脂層を有する積層フィルムに関するものであり、偏光板離型フィルム用途などの離型フィルムへ利用可能である。