(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387771
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】バルブ機構
(51)【国際特許分類】
F02D 9/06 20060101AFI20180903BHJP
F16K 1/22 20060101ALI20180903BHJP
F16K 1/32 20060101ALI20180903BHJP
F02D 9/10 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
F02D9/06 L
F16K1/22 Z
F16K1/32 B
F02D9/10 D
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-200562(P2014-200562)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-70180(P2016-70180A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】今井 博之
(72)【発明者】
【氏名】魚里 進
【審査官】
田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭49−63315(JP,U)
【文献】
実開昭57−172134(JP,U)
【文献】
実開平4−8735(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/00 − 11/10
F16K 1/00 − 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの流体通路管内にシャフトを介して回動自在に設けられて流体通路を開閉可能な弁体と、
前記シャフトを前記流体通路管に回転自在に取り付けるシャフト取付部材と、
を備え、
前記シャフト取付部材は、
カーボン材料で筒状に形成されると共に、その内周面で前記シャフトの外周面を摺動支持する第1ブッシュ部と、筒状に形成されると共に、その内周面の少なくとも一部を前記シャフトの外周面に臨ませた第2ブッシュ部と、
を含み、
前記第1ブッシュ部の内径を前記第2ブッシュ部の内径よりも小さく形成した
バルブ機構。
【請求項2】
前記第2ブッシュ部が金属材料で形成された
請求項1に記載のバルブ機構。
【請求項3】
前記流体通路管が前記エンジンの排気管であって、前記弁体が閉弁すると前記排気管内の排気流れを遮断して排気ブレーキを作用させる
請求項1又は2に記載のバルブ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ機構に関し、特に、排気ブレーキ装置のバルブ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の排気ブレーキ装置として、排気管にブッシュを介して回転自在に軸支されたシャフトに、排気流路を開閉可能なバタフライバルブを設けたバルブ機構を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、この種の排気ブレーキ装置のバルブ機構として、シャフトをカーボンブッシュによって軸支するものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−6133号公報
【特許文献2】特開平2−256837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような排気ブレーキ装置においては、シャフトを軸支するブッシュに摩擦係数の高い金属材料のみを用いると、バタフライバルブを閉状態から開状態に作動させるに要する時間が長くなり、排気ブレーキ作動時のドライバビリティーを悪化させる課題がある。また、金属ブッシュに潤滑加工を施す必要があり、コストの上昇を招く課題もある。
【0006】
一方、シャフトの軸支にカーボンブッシュのみを用いる構造では、長期に亘る使用によってカーボンブッシュが著しく減った場合に、カーボンブッシュとシャフトとの間の潤滑機能が低下して、バタフライバルブの円滑な開閉動作が妨げられる可能性もある。
【0007】
開示のバルブ機構は、シャフトとブッシュとの摩擦抵抗を低減してバタフライバルブの円滑な開閉動作を効果的に確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示のバルブ機構は、エンジンの流体通路管内にシャフトを介して回動自在に設けられて流体通路を開閉可能な弁体と、前記シャフトを前記流体通路管に回転自在に取り付けるシャフト取付部材と、を備え、前記シャフト取付部材は、カーボン材料で筒状に形成されると共に、その内周面で前記シャフトの外周面を摺動支持する第1ブッシュ部と、筒状に形成されると共に、その内周面の少なくとも一部を前記シャフトの外周面に臨ませた第2ブッシュ部と、を含
み、前記第1ブッシュ部の内径を前記第2ブッシュ部の内径よりも小さく形成した。
【発明の効果】
【0009】
開示のバルブ機構によれば、シャフトとブッシュとの摩擦抵抗を低減してバタフライバルブの円滑な開閉動作を効果的に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る排気ブレーキ装置を示す模式的な概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る排気ブレーキ装置のバルブ機構を示す模式的な部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係るバルブ機構を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0012】
図1は、本実施形態に係るバルブ機構10を備えた排気ブレーキ装置1の概略構成図である。
【0013】
排気ブレーキ装置1は、エンジン100の排気管110の流路を開閉可能なバタフライバルブ11にリンク等で連結されたエアシリンダ2と、エアシリンダ2に供給管3を介して作動エアを供給するエアタンク4と、エアタンク4からエアシリンダ2への作動エアの供給をコントロールする電磁バルブ5と、何れも図示しないアクセルセンサや排気ブレーキスイッチからの入力信号に応じて電磁バルブ5のON・OFFを切り替える電子制御ユニット6とを備えている。
【0014】
電磁バルブ5のONにより、エアタンク4からエアシリンダ2に作動エアが供給されると、バタフライバルブ11が閉弁作動して排気管110内の排気流れを遮断することで、排気ブレーキを作用させるようになっている。一方、排気ブレーキを解除する際は、電磁バルブ5のOFFにより、排気ポートから作動エアを逃がすと共に、エアシリンダ2内の図示しないスプリングの付勢力によってバタフライバルブ11を開弁作動させるようになっている。
【0015】
次に、
図2に基づいて、本実施形態に係るバルブ機構10の詳細について説明する。
【0016】
バルブ機構10は、排気管110内の排気の流れを遮断可能なバタフライバルブ11と、バタフライバルブ11がボルト等で固定されたシャフト12と、シャフト12を排気管110に回転自在に取り付ける一対の取付部材20とを備えている。一対の取付部材20は、排気管110のボス部110Aに形成された貫通孔にそれぞれ嵌合固定されている。なお、図中符号13は、シャフト12の一方の延出端に設けられてエアシリンダ2(
図1にのみ示す)に連結されたレバーを示している。
【0017】
一対の取付部材20は、静摩擦係数の低いカーボン材料で円筒状に形成された第1ブッシュ部21と、金属材料で形成された第2ブッシュ部22とをそれぞれ備えている。なお、一対の第2ブッシュ部22のうち、一方の第2ブッシュ部22(図中上方)は、シャフト12の端部を収容するように有底円筒状に形成され、他方の第2ブッシュ部22(図中下方)は、シャフト12の端部を延出させるように円筒状に形成されている。シャフト12を延出させた第2ブッシュ部22には、シャフト12の外周面と第2ブッシュ部22の内筒面との隙間を閉鎖するシール部材24が設けられている。
【0018】
第1ブッシュ部21は、その内径をシャフト12の外径と略同一径に形成されており、その内周面でシャフト12の外周面を摺動支持している。
【0019】
第2ブッシュ部22は、第1ブッシュ部21を収容する第1円筒部22Aと、第1円筒部22Aよりも小径の第2円筒部22Bとを含む。
【0020】
第1円筒部22Aは、その内径を第1ブッシュ部21の外径と略同一径に形成さており、その筒内には第1ブッシュ部21が嵌合固定されている。
【0021】
第2円筒部22Bは、その内周面をシャフト12の外周面に臨ませている。本実施形態において、第2円筒部22Bの内径は、シャフト12の外径よりも僅かに大きく形成されている。すなわち、第2円筒部22Bとシャフト12との間には所定のクリアランスが設けられており、これら第2円筒部22Bの内周面とシャフト12の外周面とにより円環状の間隙Sが区画形成されている。第1ブッシュ部21の摩耗に伴い間隙S内にカーボンが入り込むことで、シャフト12と第2ブッシュ部22との間の潤滑効果が発揮されるようになっている。
【0022】
次に、本実施形態に係るバルブ機構10の作用効果を説明する。
【0023】
本実施形態のバルブ機構10では、シャフト12を回転自在に軸支する第1ブッシュ部21に静摩擦係数の低いカーボン材料が用いられている。したがって、シャフト12を金属ブッシュのみで軸支する従来構造に比べ、バタフライバルブ11の円滑な開閉動作を確保することが可能となり、排気ブレーキ作動時のドライバビリティー悪化を効果的に防止することができる。
【0024】
また、本実施形態では、取付部材20に、シャフト12を摺動支持するカーボン製の第1ブッシュ部21と、シャフト12の外径よりも内径が僅かに大きい金属製の第2ブッシュ部22とを併用している。すなわち、内径の小さいカーボン製の第1ブッシュ部21から摩耗を始め、第2ブッシュ部22がシャフト12と接触するよりも前に、シャフト12と第2ブッシュ部22と間にカーボンが入り込み、潤滑効果を発揮するようになっている。したがって、金属製の第2ブッシュ部22への潤滑加工等を削減することが可能となり、コストの上昇を効果的に防止することができる。
【0025】
また、長期に亘る使用によって第1ブッシュ部21の摩耗が進展した場合においても、潤滑剤として機能するカーボンが第2ブッシュ部22とシャフト12との間のクリアランス(間隙S)内に確実に保持されるようになっている。したがって、シャフト12をカーボンブッシュのみで軸支する従来構造に比べ、シャフト12とブッシュ部21,22との間の潤滑機能を効果的に維持することが可能になる。
【0026】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0027】
例えば、バルブ機構10の用途は排気ブレーキ装置1に限定されず、吸気スロットルやEGR装置等、エンジン100の吸排気系に用いられる他のバルブ機構にも広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 排気ブレーキ装置
10 バルブ機構
11 バタフライバルブ(弁体)
12 シャフト
20 取付部材(シャフト取付部材)
21 第1ブッシュ部
22 第2ブッシュ部
22A 第1円筒部
22B 第2円筒部
100 エンジン
110 排気管