特許第6387772号(P6387772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387772
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】蓄電装置の拘束治具
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-200707(P2014-200707)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-72101(P2016-72101A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】南形 厚志
【審査官】 山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/014071(WO,A1)
【文献】 特開平05−331364(JP,A)
【文献】 特開平07−010952(JP,A)
【文献】 特開平11−035725(JP,A)
【文献】 特開平08−339791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/058
H01M 2/10
H01G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる極性の電極が絶縁された状態で層状に重なる電極組立体と、
前記電極組立体を収容するケースと、を有し、前記ケースが、前記電極組立体の積層方向両端の偏平面に対向する壁部を有する蓄電装置において、前記ケースを前記壁部の外側から拘束する蓄電装置の拘束治具であって、
各壁部の外側に配置される拘束板と、一対の拘束板を連結する連結具と、前記壁部の外面と、該外面に対向した前記拘束板の対向面との間に介在する発泡ウレタン製の弾性体とを有し、
前記弾性体は、前記壁部の外面に接触する接触面を有し、
前記一対の拘束板及び連結具によって、前記ケースと前記弾性体を拘束する方向を拘束方向とすると、
前記弾性体は、前記拘束方向への潰し開始から潰し率が上昇していくのに合わせて前記ケースに加える荷重が増加していき、特定の潰し率である第1変曲点に到達すると、該第1変曲点以上に前記潰し率を増加させても前記荷重の増加幅が小さくなる物性を有するとともに、前記第1変曲点での潰し率より大きい潰し率である第2変曲点では、該第2変曲点より潰し率を増加させると前記荷重が急激に増加する物性を有し、
前記弾性体を、前記第1変曲点と第2変曲点の範囲内の潰し率で潰して使用することを特徴とする蓄電装置の拘束治具。
【請求項2】
前記拘束方向に沿った前記ケースの寸法を厚みとし、前記ケースにおける前記厚みの公差をt、前記拘束方向に沿った前記弾性体の潰す前の寸法を厚みαとすると、
α×0.5≧2t…式
上記式が成立するように前記弾性体の厚みαを設定した請求項1に記載の蓄電装置の拘束治具。
【請求項3】
前記弾性体は、一対の拘束板のうちの一方の前記拘束板と、該一方の拘束板に対向した一方の前記壁部との間に介在する請求項1又は請求項2に記載の蓄電装置の拘束治具。
【請求項4】
前記蓄電装置は二次電池である請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の蓄電装置の拘束治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースを壁部の外側から拘束する蓄電装置の拘束治具に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池やキャパシタのような蓄電装置は再充電が可能であり、繰り返し使用することができるため電源として広く利用されている。一般に、容量の大きな二次電池(蓄電装置)はケースを備え、そのケース内に電極組立体及び電解液が収容されている。電極組立体は、正極電極と負極電極とを、両者の間をセパレータで絶縁した状態で層状に積層したものである。
【0003】
このような二次電池の製造の一例としては、ケース内に電極組立体を収納した後、まず、ケースに設けられた注液孔から電解液をケース内に注入する。そして、注液孔を仮封止した後、初充電を行い、さらに、二次電池を所定の温度下で保持してエージングを行う。続いて、注液孔を開封して初充電及びエージングによって発生したガスをケース外へ放出し、最後に、注液孔を本封止して製品とする。
【0004】
二次電池の初充電及びエージング時には、ガス発生に伴うケースの内圧上昇や各電極の膨張に伴うケースの膨張を抑制する必要がある。例えば、特許文献1に開示の二次電池の製造方法では、電解液を二次電池のケース内に注入した後、そのケースを拘束治具によって拘束している。
【0005】
拘束治具は、ケースを両側から挟み込む2枚の拘束板を有し、それら拘束板同士は4本のボルトによって連結されている。ボルトの締め付け具合によって、拘束板同士の間隔が調整され、ケースを拘束する力が調整される。そして、拘束治具によるケースの拘束状態で、初充電、エージングが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−21104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、二次電池においては、ケースに製造公差等が存在する。このため、拘束板から荷重が加わるケース外面において、その外面に沿う場所毎にケースの厚み(拘束方向に沿った寸法)が異なる場合がある。この場合、拘束治具でケースを拘束した際、ケースに加わる荷重が、ケース外面での場所によって異なり、ケースを介して電極組立体に加わる荷重も、電極組立体の拘束方向における両端の面での場所によって異なってしまう。その結果として、正極電極と負極電極との間での積層方向への距離も、面に沿った位置で異なり、距離の大きく離れた位置ではイオン析出が起こりやすくなり好ましくない。
【0008】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、ケースに加わる荷重のばらつきを抑えることができる蓄電装置の拘束治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するための蓄電装置の拘束治具は、異なる極性の電極が絶縁された状態で層状に重なる電極組立体と、前記電極組立体を収容するケースと、を有し、前記ケースが、前記電極組立体の積層方向両端の偏平面に対向する壁部を有する蓄電装置において、前記ケースを前記壁部の外側から拘束する蓄電装置の拘束治具であって、各壁部の外側に配置される拘束板と、一対の拘束板を連結する連結具と、前記壁部の外面と、該外面に対向した前記拘束板の対向面との間に介在する発泡ウレタン製の弾性体とを有し、前記弾性体は、前記壁部の外面に接触する接触面を有し、前記一対の拘束板及び連結具によって、前記ケースと前記弾性体を拘束する方向を拘束方向とすると、前記弾性体は、前記拘束方向への潰し開始から潰し率が上昇していくのに合わせて前記ケースに加える荷重が増加していき、特定の潰し率である第1変曲点に到達すると、該第1変曲点以上に前記潰し率を増加させても前記荷重の増加幅が小さくなる物性を有するとともに、前記第1変曲点での潰し率より大きい潰し率である第2変曲点では、該第2変曲点より潰し率を増加させると前記荷重が急激に増加する物性を有し、前記弾性体を、前記第1変曲点と第2変曲点の範囲内の潰し率で潰して使用することを要旨とする。
【0010】
これによれば、拘束治具でケースを拘束すると、ケースには弾性体を介して荷重が加わる。このとき、拘束方向に沿ったケースの寸法が、ケースの外面に沿う場所で異なっていると、ケース外面での場所毎に弾性体の潰し率は異なる。しかし、弾性体の潰し率が、第1変曲点から第2変極点の範囲にあれば、弾性体からケースに加わる荷重はほぼ一定となる。その結果として、拘束治具で拘束した蓄電装置においては、異なる極性の電極間での積層方向への距離も、偏平面に沿った位置でほぼ同じになり、イオン析出が抑制できる。
【0011】
また、蓄電装置の拘束治具について、前記拘束方向に沿った前記ケースの寸法を厚みとし、前記ケースにおける前記厚みの公差をt、前記拘束方向に沿った前記弾性体の潰す前の寸法を厚みαとすると、α×0.5≧2tに示す式が成立するように前記弾性体の厚みαを設定した。
【0012】
これによれば、式が成立するように弾性体の厚みαを設定した場合、ケースの厚みの公差が最大値を取り、弾性体が最大限に潰されても、一定の荷重をケースに加えることができる。そして、弾性体の厚みαは、その半分の厚みが、公差の最大値以上あればよいことから、公差を小さくすれば、弾性体の厚みαも薄くできる。
【0013】
また、蓄電装置の拘束治具について、前記弾性体は、一対の拘束板のうちの一方の前記拘束板と、該一方の拘束板に対向した一方の前記壁部との間に介在するのが好ましい。
これによれば、例えば、各拘束板と壁部との間に弾性体を介在させる場合と比べると、弾性体の使用枚数を一枚減らし、拘束治具で拘束された状態にある蓄電装置を小型化できる。
【0014】
また、蓄電装置の拘束治具について、前記蓄電装置は二次電池である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ケースに加わる荷重のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態の二次電池を示す分解斜視図。
図2】拘束治具を示す分解斜視図。
図3】二次電池を拘束治具で拘束した状態を示す斜視図。
図4】(a)は二次電池を拘束治具で拘束した状態を示す側面図、(b)は弾性体を示す部分断面図。
図5】荷重と、弾性体の潰し率との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、蓄電装置の拘束治具を具体化した一実施形態について図1図5を参照して説明する。
図1に示すように、蓄電装置としての二次電池10は、ケース11を有し、ケース11には電極組立体14及び電解液が収容されている。ケース11は、有底四角筒状のケース本体12と、ケース本体12に電極組立体14を挿入するための開口部12aを閉塞する平板状の蓋体13とからなる。
【0018】
ケース本体12は、矩形板状の底壁12bと、底壁12bの対向する一対の長側縁から立設された壁部としての長側壁12dと、底壁12bの対向する一対の短側縁から立設された短側壁12cとを有する。短側壁12cの正面視形状は、底壁12bに繋がる辺が短辺となる矩形状であり、長側壁12dの正面視形状は、底壁12bに繋がる辺が長辺となる矩形状である。また、ケース本体12の内面は絶縁層15aによって覆われている。
【0019】
ケース本体12と蓋体13は、何れも金属製(例えば、ステンレス製やアルミニウム製)である。この実施形態の二次電池10は角型電池であり、リチウムイオン電池である。蓋体13は、ケース11(ケース本体13)内に電解液を注入するための注液孔13aを有する。注液孔13aは封止栓19によって閉塞されている。
【0020】
電極組立体14は、負極電極21、正極電極24、及びセパレータ27を備える。正極電極24は、正極金属箔(例えばアルミニウム箔)の両面に正極活物質を塗布して構成される。負極電極21は、負極金属箔(例えば銅箔)の両面に負極活物質を塗布して構成される。セパレータ27は、電気伝導に係るイオンが透過可能な多孔質膜である。電極組立体14は、負極電極21と正極電極24の間にセパレータ27を介在させて、複数の正極電極24と複数の負極電極21とを交互に積層した構造とされている。
【0021】
なお、正極電極24は、正極金属箔の端部から突出した形状の正極集電タブ28を備えている。また、負極電極21は、負極金属箔の端部から突出した形状の負極集電タブ29を備える。電極組立体14において、負極電極21、正極電極24、及びセパレータ27が積層された方向を電極組立体14の積層方向とする。
【0022】
電極組立体14は積層方向の両端に正面視矩形状の偏平面14aを有し、両偏平面14aは、絶縁層15aを介して長側壁12dに対向している。したがって、本実施形態では、長側壁12dは偏平面14aに対向する壁部となる。
【0023】
電極組立体14では、正極集電タブ28が積層方向に沿って列状に配置され、且つ正極集電タブ28と重ならない位置にて負極集電タブ29が積層方向に沿って列状に配置されるように、正極電極24及び負極電極21が積層される。正極集電タブ28及び負極集電タブ29は、電極組立体14における積層方向の一端から他端までの範囲内でそれぞれ集められた状態で折り曲げられている。
【0024】
正極集電タブ28には正極端子16が電気的に接続されており、負極集電タブ29には負極端子15が電気的に接続されている。これら正極端子16及び負極端子15は、各一部分が蓋体13の孔部13cからケース11外に露出している。また、正極端子16及び負極端子15には、ケース11から絶縁するためのリング状の絶縁リング17aがそれぞれ取り付けられている。
【0025】
次に、二次電池10の製造時に使用される拘束治具30について説明する。
図2及び図3に示すように、拘束治具30は、一対の拘束板31と、それら拘束板31を連結する連結具としてのボルト32及びナット33と、拘束板31と長側壁12dとの間に介在する弾性体34と、を有する。なお、本実施形態では、弾性体34は一枚だけ使用され、一方の拘束板31と、この拘束板31に対向した一方の長側壁12dとの間に介在する。なお、本実施形態では、弾性体34は、拘束板31及び長側壁12dには接合されていない。
【0026】
拘束治具30は、ケース11の2つの長側壁12dを、電極組立体14の積層方向に沿って外面側から押圧し、ケース11を積層方向に拘束するものである。拘束板31は、矩形板状である。拘束板31は、最も面積の大きい一つの面に非接触面31aを有し、この非接触面31aは、ケース11の拘束時に、該ケース11の長側壁12dに対し非接触となる面である。非接触面31aの平面形状は矩形状である。
【0027】
非接触面31aにおける長辺の長さは、長側壁12dにおける長辺の長さより長い。また、非接触面31aにおける短辺の長さは、長側壁12dにおける短辺の長さより長い。拘束板31は、非接触面31aと平行な面に対向面31bを有し、この対向面31bは、ケース11の拘束時に長側壁12dの外面に対峙する面である。対向面31bの正面視形状は矩形状である。
【0028】
図2に示すように、拘束板31は、両方の短辺側に挿通孔31hを2つずつ有し、各挿通孔31hにはボルト32が挿通可能である。拘束板31の長辺に沿う方向に対向する2つの挿通孔31h同士間の距離は、長側壁12dにおける長辺の長さより長い。このため、拘束板31の対向面31bを長側壁12dに対向させた状態では、長辺に沿う方向に対向する2つの挿通孔31hの内側に二次電池10が配置できる。なお、挿通孔31hを貫通したボルト32にはナット33が螺合される。
【0029】
図4(a)に示すように、弾性体34は、一方の拘束板31の対向面31bと、一方の長側壁12dの外面との間に介在する。弾性体34において、拘束板31及びケース11に接触する面を接触面34cとする。弾性体34の接触面34cは、長側壁12dの外面よりも平面サイズの大きい矩形状である。また、弾性体34は、発泡ウレタン製である。図4(b)に示すように、弾性体34は、材料が発泡した空隙34aと、その空隙34aを囲む本体部34bとで構成されている。
【0030】
ここで、一対の拘束板31と、ボルト32及びナット33とによって、ケース11と弾性体34を拘束する方向を拘束方向とする。この拘束方向は、電極組立体14の積層方向と同じ方向である。拘束板31の間にケース11と弾性体34を挟んだ状態で、拘束方向に沿ったケース11の寸法をケース11の厚みとし、拘束方向に沿った弾性体34の寸法を弾性体34の厚みとする。弾性体34を拘束方向に潰し、弾性体34の厚みを変位させていくと、弾性体34からケース11に加わる荷重が変化していく。
【0031】
ここで、弾性体34の物性について説明する。
図5のグラフに示すように、弾性体34の潰し率がゼロのとき、弾性体34に加わる荷重はゼロである。なお、弾性体34の潰し率とは、弾性体34を拘束方向に潰す前の厚みに対する、潰した厚み量の比率のことである。そして、弾性体34を徐々に潰して潰し率を上昇させていくと、弾性体34に加わる荷重は、ゼロから増えていく。この荷重は、弾性体34に接する部材に加わる反力でもある。そして、潰し率が第1変曲点P1(10%)に到達すると、それ以降は、弾性体34の潰し率が増加しても弾性体34に加わる荷重の増加幅が小さくなる。よって、弾性体34が第1変曲点P1の潰し率まで潰されると、その後は、弾性体34を潰しても、弾性体34に加わる荷重は変動せず、ほぼ一定となる。
【0032】
さらに、弾性体34を潰し、潰し率が、第1変曲点P1より大きい潰し率である第2変曲点P2(60%)に到達すると、それ以降は、弾性体34の潰し率が増加するに連れて、弾性体34に加わる荷重が急激に増加する。よって、弾性体34が第2変曲点P2以上潰されると、その後は、弾性体34を潰す量に応じて、弾性体34に加わる荷重が急激に増加する。
【0033】
本実施形態では、弾性体34を介在させて拘束板31でケース11を拘束する際、弾性体34の潰し率が、第1変曲点P1と第2変曲点P2の範囲に収まるように、ボルト32とナット33による締め付け具合を調整する。具体的には、弾性体34の潰し率が10%〜60%の範囲に収まるように、拘束板31によってケース11及び弾性体34を拘束し、弾性体34を拘束方向に潰す。すると、弾性体34において、接触面34cに沿う部分毎に潰し率が異なっていても、弾性体34を介してケース11に加わる荷重はほぼ一定となる。
【0034】
弾性体34の潰し率は、10%〜60%であることから、50%の変化量を持つことになり、これをΔ50%(係数0.5)とする。また、図4(a)に示すように、弾性体34の拘束方向への寸法を厚みαとする。さらに、ケース11の拘束方向への寸法を厚みTとし、拘束方向に沿った厚みTにおける公差をtとする。公差は、ケース11の厚みTが増加する方向への公差と、厚みTが減少する方向への公差を取り得るため、公差の最大値は2tとなる。このように設定した場合、弾性体34の厚みαは、以下の式を満たすように設定される。
【0035】
α×0.5≧2t…式
弾性体34が潰し率の範囲(10%〜60%)で潰されたとき、弾性体34の厚みαは、潰される前より薄くなる。このため、上記潰し率の範囲で潰された弾性体34の厚みαは、上記潰し率の範囲を反映させて、上記式における左辺のα×0.5となる。この潰れたときの厚みα×0.5が、ケース11の公差の最大値2t(上記式(1)の右辺)以上あれば、弾性体34によってケース11の公差を吸収した上で、ケース11に荷重を加えることができる。よって、上記式のように弾性体34の厚みαを設定すると、ケース11の公差が最大値を取ったとしても、上記潰し率の範囲内で弾性体34を潰せば、一定の荷重をケース11に加えることができる。
【0036】
次に、二次電池10の製造方法について作用とともに説明する。
まず、ケース本体12に電極組立体14を収容する。電極組立体14を収容した後に、蓋体13をケース本体12の開口部12aを閉塞するように設ける。このとき、負極端子15及び正極端子16が、絶縁リング17aに挿通される。そして、蓋体13をケース本体12に溶接することで、ケース11が構成される。
【0037】
次に、図3及び図4に示すように、拘束板31の対向面31bと、長側壁12dの外面との間に弾性体34を介在させる。そして、弾性体34の一方の接触面34cを、拘束板31の対向面31bに接触させ、他方の接触面34cを長側壁12dの外面に接触させる。
【0038】
次に、各挿通孔31hにボルト32を挿通するとともに、拘束板31から突出したボルト32にナット33を螺合し、一対の拘束板31でケース11及び弾性体34を拘束する。ボルト32とナット33の締め付け具合を調整し、弾性体34の潰し率を10〜60%の範囲で調整する。
【0039】
例えば、潰し率35%とする。この場合、図5のグラフに示すように、長側壁12dの外面に沿うある部分において、ケース11の厚みTが公差の無い場合は、潰し率35%での荷重がケース11に加わる。一方、長側壁12dの外面に沿う別の部分において、ケース11の厚みTが公差tだけ短く、薄い場合、ケース11の寸法はT−tとなる。この場合、ケース11の厚みTが薄い分、弾性体34は潰し率が低くなり、潰し率10%での荷重がケース11に加わる。
【0040】
さらに、長側壁12dの外面に沿う別の部分において、ケース11の厚みTが公差tだけ長く、厚い場合、ケース11の寸法はT+tとなる。この場合、ケース11の厚みTが厚い分、弾性体34は潰し率が高くなり、潰し率60%での荷重がケース11に加わる。
【0041】
このように、長側壁12dの外面に沿う場所毎に、潰し率が異なっていても、図5のグラフに示すように、弾性体34を介して長側壁12dに加わる荷重は、ほぼ一定となる。
ケース11を拘束治具30で拘束した状態で、注液孔13aから、ケース11の内部に電解液を注入する。そして、電解液を注入した後には、注液孔13aを封止栓によって仮封止する。仮封止後、電極組立体14の初充電を行う。すると、電解液と、電極組立体14における各活物質との反応によりガスが発生する。このとき、ケース11の内圧が上昇するが、拘束治具30によるケース11の拘束により、ケース11の拘束方向への変形が抑制される。
【0042】
そして、所定の温度環境下で二次電池10を放置し、エージングを行う。このときも、拘束治具30によるケース11の拘束により、ケース11の拘束方向への変形が抑制される。エージングが終わった後には、仮封止に用いた封止栓を注液孔13aから取り外してケース11内のガスをケース11外に放出する。ガス放出の完了後、封止栓19によって注液孔13aを本封止する。その後、ナット33をボルト32から螺退させ、一対の拘束板31による二次電池10の拘束を解除する。
【0043】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)拘束治具30は、発泡ウレタン製の弾性体34を備える。そして、拘束治具30でケース11を拘束する際、弾性体34の潰し率が第1変曲点P1と第2変曲点P2の範囲に収まるようにした。弾性体34は、第1変曲点P1と第2変曲点P2の範囲の潰し率では、ケース11に加わえる荷重がほとんど一定となる。このため、ケース11の厚みTのばらつきや、ボルト32とナット33による締め付け具合のばらつきが生じていても、長側壁12dの外面のいずれの場所でもほぼ一定の荷重を加えることができる。したがって、ケース11に加わる荷重が長側壁12dの面に沿う部分毎にばらつくことが抑えられ、長側壁12dを介して電極組立体14に加わる荷重のばらつきも抑えることができる。その結果、負極電極21と正極電極24との積層方向への距離もばらつかず、イオン析出を抑制できる。
【0044】
(2)弾性体34は発泡ウレタン製である。発泡ウレタンは、空隙34aと本体部34bを有する。このため、弾性体34を潰すと、空隙34aが潰れていく過程では、本体部34bを介してケース11に荷重を加えることとなり、これにより、ほぼ一定の荷重をケース11に加えることが可能になる。したがって、発泡ウレタン製の弾性体34を採用することで、ケース11にほぼ一定の荷重を加えることができる。
【0045】
(3)弾性体34の厚みαは、式1が成立するように設定すれば、ケース11の厚みTの公差が最大値を取り、弾性体34が最大限に潰されても、一定の荷重をケース11に加えることができる。そして、弾性体34の厚みαは、その半分の厚みが、公差の最大値2t以上あればよいことから、公差を小さくすれば、弾性体34の厚みαも薄くできる。したがって、厚みの薄い弾性体34を用いれば、拘束治具30で拘束した状態にある二次電池10の設置スペースも小さくすることができる。
【0046】
(4)一方の拘束板31と、一方の長側壁12dとの間だけに弾性体34を介在させた。このため、例えば、両方の拘束板31と長側壁12dとの間に弾性体34を介在させる場合と比べると、拘束治具30で拘束した状態にある二次電池10の厚みを薄くし、その設置スペースも小さくすることができる。
【0047】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、第1変曲点P1での潰し率10%、第2変曲点P2での潰し率60%であったが、弾性体34を潰す範囲は、第1変曲点P1と第2変曲点P2の範囲内であれば、適宜変更してもよい。例えば、ケース11の厚みTのばらつきが小さければ、弾性体34を潰し率20%〜50%の範囲内で潰して使用してもよい。
【0048】
○ 一方の拘束板31と、一方の長側壁12dとの間、及び他方の拘束板31と、他方の長側壁12dとの間、それぞれに弾性体34を介在させてもよい。
○ 拘束板31と弾性体34を接着等により接合して、拘束板31と弾性体34を一体化してもよい。
【0049】
○ 拘束板31の連結は、ボルト32とナット33の螺合だけに限らず、他の方法で連結してもよい。例えば、一対の拘束板31を無端環状のゴムバンドで保持して連結してもよい。
【0050】
○ ケース11は、底壁12bが矩形板状をなす四角筒状であったが、底壁12bが平面視正方形状をなす有底四角筒状でもよい。
○ ケース11は、底壁12bが矩形板状をなす有底四角筒状であったが、これに限らない。底壁12bが、六角板状の有底六角筒状であったり、底壁12bが八角板状の有底八角筒状であってもよい。この場合、電極組立体14の偏平面14aに対向する壁部が壁部となる。
【0051】
○ 電極組立体14は積層型としたが、帯状の負極電極と正極電極の間に、帯状のセパレータを挟んでこれらを層状に捲回した捲回型としてもよい。
○ 電極組立体14を構成する負極電極及び正極電極の枚数は適宜変更してもよい。
【0052】
○ 実施形態では、負極電極は、負極金属箔の両面に負極活物質を有するとしたが、負極金属箔の片面のみに負極活物質を有していてもよい。同様に、正極電極は、正極金属箔の両面に正極活物質を有するとしたが、正極金属箔の片面のみに正極活物質を有していてもよい。
【0053】
○ 蓄電装置としてのニッケル水素二次電池や、電気二重層キャパシタとして具体化してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0054】
(イ)異なる極性の電極が絶縁された状態で層状に重なる電極組立体と、前記電極組立体を収容するケースと、を有し、前記ケースが、前記電極組立体の積層方向両端の偏平面に対向する壁部を有する蓄電装置において、前記ケースを前記壁部の外側から拘束する蓄電装置の拘束方法であって、蓄電装置を拘束するための拘束治具は、各壁部の外側に配置される拘束板と、一対の拘束板を連結する連結具と、前記壁部の外面と、該外面に対向した前記拘束板の内面との間に介在する発泡ウレタン製の弾性体とを有し、前記一対の拘束板及び連結具によって、前記ケースと前記弾性体を拘束する方向を拘束方向とすると、前記弾性体は、前記拘束方向への潰し開始から潰し率が上昇していくのに合わせて前記ケースに加える荷重が増加していき、特定の潰し率である第1変曲点に到達すると、該第1変曲点以上に前記潰し率を増加させても前記荷重の増加幅が小さくなる物性を有するとともに、前記第1変曲点での潰し率より大きい潰し率である第2変曲点では、該第2変曲点より潰し率を増加させると前記荷重が急激に増加する物性を有し、前記弾性体を、前記第1変曲点と第2変曲点の範囲内の潰し率で潰して前記拘束治具によって前記ケースを拘束することを特徴とする蓄電装置の拘束方法。
【符号の説明】
【0055】
t…公差、α…厚み、P1…第1変曲点、P2…第2変曲点、10…蓄電装置としての二次電池、11…ケース、12d…壁部としての長側壁、14…電極組立体、14a…偏平面、21…電極としての負極電極、24…電極としての正極電極、30…拘束治具、31…拘束板、31b…対向面、32…連結具としてのボルト、33…連結具としてのナット、34…弾性体。
図1
図2
図3
図4
図5