(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の鉄筋籠の建込方法では、鉄筋籠を、ガイドフレームの中を通して吊り下し、左右のレールの間を通して横移動させるため、ガイドフレームと左右のレールが、鉄筋籠の幅の外側に食み出すことになる。これにより、地中連続壁の壁厚よりも広い幅で掘削する必要性が生じる。特に、大深度の地中連続壁を構築する場合には鉄筋籠の重量が大きくなることにより、ガイドフレームやレールの部材が太くなり、より一層広い幅で掘削する必要性が生じる。
【0005】
特許文献1に記載の装置を使用せずにクレーンで建て込む場合には、鉄筋籠を孔内に吊り下してから横移動させるために、吊り点を鉄筋籠の重心から地中埋設物の反対側へずらすことが考えられる。この場合には、鉄筋籠が傾かないように、鉄筋籠にウエイトを取り付けてバランスを取る必要性が生じる。しかしながら、地中埋設物の大きさによっては鉄筋籠の傾きを抑えるために大重量のウエイトが必要になり、クレーンを大型化する必要性が生じる場合がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、地中埋設物の下の掘削孔に地中連続壁の芯材を建て込むにあたり、過剰な掘削及びクレーンの大型化を不要にすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る吊治具は、前記地中連続壁の芯材が前記地中埋設物の下に建て込まれる際に用いられる吊治具であって、芯材建込機から吊り下げられ横方向に延びる上側の横材と、前記上側の横材から下方に延びる縦材と、前記縦材に接合され前記上側の横材の下方で横方向に延び前記芯材が吊り下げられる下側の横材とを備え、前記芯材が前記地中埋設物の下に建て込まれる際に前記上側の横材と前記下側の横材とで前記地中埋設物を上下に挟む
構造体と、
前記上側の横材に設置され、掘削孔を挟んで構築される一対のガイドウォール上に移動可能に支持される支持部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る地中連続壁の芯材の建込方法は、地中埋設物の下を通る地中連続壁の施工において、前記地中連続壁の芯材を前記地中埋設物の下に建て込む地中連続壁の芯材の建込方法であって、芯材建込機から吊り下げられ横方向に延びる上側の横材と、前記上側の横材から下方に延びる縦材と、前記縦材に接合され前記上側の横材の下方で横方向に延び前記芯材が吊り下げられる下側の横材とを備える
構造体、及び、前記上側の横材に設置され、掘削孔を挟んで構築される一対のガイドウォール上に移動可能に支持される支持部材、を備える吊治具を用い、該吊治具を前記上側の横材と前記下側の横材とで前記地中埋設物を上下に挟むように前記地中埋設物側へ移動させることにより前記芯材を前記地中埋設物の下に建て込むことを特徴とする。
【0009】
前記地中連続壁の芯材の建込方法において、前記吊治具は、前記上側の横材に結合されガイドウォールの開口縁部に掛けられて前記吊治具及び前記芯材の荷重を前記ガイドウォールに支持させる支持部材を備えてもよく、前記芯材及び前記吊治具を、前記芯材建込機により前記地中埋設物の近傍において前記支持部材が前記ガイドウォールの開口縁部に掛かるまで降下させる工程と、前記支持部材を介して前記ガイドウォールに荷重を支持された前記吊治具及び前記芯材を、牽引機構により前記ガイドウォールに沿って前記地中埋設物側へ移動させる工程とを備えてもよい。
【0010】
また、本発明に係る地中連続壁の芯材の建込システムは、地中埋設物の下を通る地中連続壁の施工において、前記地中連続壁の芯材を前記地中埋設物の下に建て込む地中連続壁の芯材の建込システムであって、地上に設置された芯材建込機と、前記芯材建込機から吊り下げられ横方向に延びる上側の横材と、前記上側の横材から下方に延びる縦材と、前記縦材に接合され前記上側の横材の下方で横方向に延び前記芯材が吊り下げられる下側の横材とを備え、前記芯材が前記地中埋設物の下に建て込まれる際に前記上側の横材と前記下側の横材とで前記地中埋設物を上下に挟むように用いられる
構造体、及び、前記上側の横材に設置され、掘削孔を挟んで構築される一対のガイドウォール上に移動可能に支持される支持部材、を備える吊治具とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、地中埋設物の下の掘削孔に地中連続壁の芯材を建て込むにあたり、過剰な掘削及びクレーンの大型化を不要にできる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態に係る鉄筋籠1の建込システム10を示す立断面図であり、
図2は、
図1の2−2断面図であり、
図3は、
図2の3−3断面図である。これらの図に示すように、本実施形態に係る建込システム10は、水、電気、ガスの配管やトンネル等の地中埋設物2の下を通る地中連続壁の施工において、地中埋設物2の下にすかし堀により形成した掘削孔3やその近傍に形成した掘削孔4に鉄筋籠1を建て込むのに用いられる。
【0015】
ガイドウォール6が地中埋設物2の上を通るように構築されており、ガイドウォール6の間の溝5が、地中埋設物2の下の掘削孔3及びその近傍の掘削孔4と重なるように延びている。ガイドウォール6の上端には段差部6Aが形成され、この段差部6Aにはステンレス板等の低摩擦性、低摩耗性の板7が接合されている。また、ガイドウォール6の上面には、溝5に沿って一対のレール8が設置されている。
【0016】
建込システム10は、鉄筋籠1を掘削孔4内に下降させる際に用いる鉄筋籠建込機20と、鉄筋籠1を掘削孔3内に建て込む際に用いる吊治具100と、掘削孔4内に下降させた鉄筋籠1を地中埋設物2の下の掘削孔3まで横移動させる際に用いる牽引機構30とを備えている。ここで、本実施形態の施工は、掘削孔3、4の上方に構造物が存在する低空頭(例えば、作業床から上空の構造物までの高さが5〜10m)の現場で実施する。そこで、鉄筋籠建込機20としては、低空頭対応型の機械を用いる。
【0017】
鉄筋籠建込機20は、4本の脚部22と、この4本の脚部22の上端を連結するフレーム26と、フレーム26に設置されたウインチ28とを備えている。4本の脚部22は、各レール8に2本ずつ乗るように配されている。脚部22の底部には車輪24が設けられており、この車輪24がレール8に沿って転動する。また、ウインチ28は、4本のワイヤ29を巻出したり巻取ったりすることにより該4本のワイヤ29の先端に取付けられた物を昇降させる。
【0018】
牽引機構30は、複数(本実施形態では3個)のセンターホールジャッキ32と、複数のセンターホールジャッキ32をガイドウォール6の段差部6Aに固定するためのアンカー部材34(
図2参照)と、各センターホールジャッキ32に挿通されたPC鋼材36と、PC鋼材36の一端を吊治具100に固定するための複数(本実施形態では3個)の固定具38とを備えている。アンカー部材34は、溝5の幅方向を長手方向とする鋼板であり、アンカー部材34の長手方向両端が段差部6Aに固定されている。
【0019】
複数のセンターホールジャッキ32は、アンカー部材34の長手方向(溝5の幅方向)に並べてアンカー部材34の上面に固定されている。また、複数の固定具38は、溝5の幅方向に並べて吊治具100に固定されている。ここで、複数のセンターホールジャッキ32と複数の固定具38とは、PC鋼材36が互いに平行に溝5に沿って延びるように配されている。これにより、複数のセンターホールジャッキ32の動作により、吊治具100が溝5に沿って横移動する。
【0020】
図4は、吊治具100を示す立面図であり、
図5は、
図4の5−5断面図である。また、
図6は、吊治具100を示す平面図である。これらの図に示すように、吊治具100は、互いに平行に配された一対のコ字状の構造体110と、一対の構造体110の上部を結合する複数(本実施形態では3本)の支持部材102と、構造体110の上部に取付けられた複数(本実施形態では4個)の吊ピース104と、構造体110の下部に取付けられた複数(本実施形態では8本)の吊筋106と、上記複数の固定具38とを備えている。
【0021】
構造体110は、上側の横材111及び下側の横材112と、これらの軸方向一端同士を結合する縦材113とを備えている。上下の横材111、112は、H型鋼であり、互いに平行に配されている。また、上下の横材111、112は、フランジ111F、112Fが水平になるように配されている。
【0022】
縦材113は、複数(本実施形態では4本)のH型鋼113Aが接続された構成であり、一対のフランジ113Fが、横材111、112の軸方向に対向するように配されている。最下位のH型鋼113Aの下端には鋼板113Lが溶接されており、この鋼板113Lが下側の横材112の上側のフランジ112Fにボルトで固定されている。また、最上位のH型鋼113Aの上端には鋼板113Uが溶接されており、この鋼板113Uが上側の横材111の下側のフランジ111Fにボルトで固定されている。
【0023】
上下のH型鋼113Aを接続する継手114は、上下のH型鋼113Aのウェブ113Wを挟む一対の鋼板114Aと、上下のH型鋼113Aのフランジ113Fを挟む鋼板114B及び一対の鋼板114Cとを備えている。ウェブ113Wの長手方向一端と鋼板114Bにはそれぞれ、複数のボルト孔が形成されており、一対の鋼板114Aが上下のウェブ113Wに跨るように配され、一対の鋼板114Aとその間のウェブ113Wとがボルト114Dにより締結されている。
【0024】
鋼板114Bは、フランジ113Fの外側の面と同幅の板であり、鋼板114Cは、鋼板114Bの1/2程度の幅の板である。フランジ113Fの長手方向一端と鋼板114B、114Cにはボルト孔が形成されており、鋼板114Bと鋼板114Cとが上
下のフランジ113Fに跨るように配され、鋼板114B、114Cとこれらの間のフランジ113Fとがボルト114Eで締結されている。
【0025】
複数の支持部材102は、H型鋼であり、互いに平行に等間隔で配されている。また、複数の支持部材102は、横材111に対して直交する方向に延び、フランジ111Fが水平になるように配されている。各支持部材102の下側のフランジ102Fが、横材111の上側のフランジ111Fにボルトで締結されている。また、横材111の先端部の上には、固定具38が配されており、該固定具38は、横材111の上側のフランジ111Fにボルトで結合されている。
【0026】
支持部材102の軸方向の長さは、支持部材102の軸方向両端をガイドウォール6の段差部6Aに乗せることができるように設定されている。これにより、支持部材102の軸方向両端を段差部6Aに乗せた状態で、吊治具100の荷重をガイドウォール6で支持することができる。なお、ガイドウォール6に段差部6Aを設けて該段差部6Aに支持部材102の軸方向両端を乗せることは必須ではなく、ガイドウォール6の上面に支持部材102の軸方向両端を乗せてもよい。
【0027】
支持部材102の下側のフランジ102Fの長手方向両端には、テフロン板等の低摩擦性の板材103が接合されており、段差部6Aに接合された低摩擦性、低摩耗性の板7に当接している。これにより、支持部材102の軸方向両端と段差部6Aとの間の摩擦力が低減されており、牽引機構30を作動させて吊治具100をガイドウォール6上で摺動させることができるようになっている。なお、支持部材102の下側のフランジ102Fの長手方向両端にテフロン板等の低摩擦性の板材103を接合することは必須ではなく、代わりに、重量物移動用のローラを設けてもよい。
【0028】
ここで、上側の横材111が地中埋設物2より上側に位置し、下側の横材112が地中埋設物2より下側に位置するように、上下の横材111、112の間隔(即ち縦材113の長さ)や段差部6Aの深さ等が設定されている。これにより、牽引機構30を作動させて吊治具100を掘削孔4から地中埋設物2側へ移動させると、吊治具100は、上下の横材111、112で地中埋設物2を上下に挟む状態になる。
【0029】
吊ピース104は、互いに隣り合う支持部材102の間に配されており、上側の横材111の上側のフランジ111Fに固定されている。ここで、複数の吊ピース104には、鉄筋籠建込機20の複数本のワイヤ29が取り付けられるところ、複数の吊ピース104は、鉄筋籠1の重心を中心とする円に沿って等間隔で配されている。即ち、吊治具100の複数の吊り点は、鉄筋籠1が鉄筋籠建込機20からバランスよく吊り下げられるように配されている。
【0030】
下側の横材112の軸方向の一端及び他端にはそれぞれ、一対の吊筋106を取り付けるための一対のナット107が設けられている。横材112の下側のフランジ112Fの長手方向両端には、一対の孔がウェブ112Wを挟んで形成されており、ナット107は、孔と同軸にフランジ112Fの上面に溶接されている。吊筋106の上端が、孔に挿通されてナット107に螺合され、吊筋106の下端が、固定金具(図示省略)により鉄筋籠1の鉄筋の上端に固定される。
【0031】
下側の横材112の軸方向の中間の2点にはそれぞれ、後述の一対の吊筋108(
図8参照)を取り付けるための一対のカプラー109が設けられている。横材112の上側のフランジ112Fの長手方向の中間の2点には、一対の孔がウェブ112Wを挟んで形成されており、カプラー109は、孔と同軸にフランジ112Fの下面に溶接されている。吊筋108の下端が、孔に挿通されてカプラー109に螺合される。
【0032】
また、縦材113の上端と上側の横材111との隅部には補強ブラケット115が設けられ、縦材113の下端と下側の横材112との隅部には補強ブラケット116が設けられている。
【0033】
図7〜
図13は、地中連続壁を構築する手順を示す立面図である。まず、図示は省略するが、地中埋設物2の近傍に掘削孔4を形成し、掘削孔4内にすかし掘り用の掘削機を設置して該掘削機により地中埋設物2の下に掘削孔3を形成する。なお、掘削に先立ってガイドウォール6を作業床から所定深度(例えば1〜2m)まで構築する。また、一対のレール8をガイドウォール6の上面に設置する。
【0034】
次に、
図7に示すように、鉄筋籠建込機20を掘削孔4の上方に設置する。そして、鉄筋籠建込機20を用いて鉄筋籠1を掘削孔4内に降ろす。ここで、本実施形態の施工は、作業床から上空の構造物までの高さが鉄筋籠1の全長に比して低い低空頭の現場で実施される。そこで、本実施形態では、鉄筋籠1を高さ方向に分割したエレメント1Bを接続しながら鉄筋籠1を下方へ伸長させていく。
【0035】
本工程では、一対のかんざし鋼材118を溝5と直交するように、鉄筋籠1の鋼板1Aとガイドウォール6の上面との間に挿入することにより、鉄筋籠1を一対のかんざし鋼材118で支持する。この状態で、鉄筋籠1の上にエレメント1Bを接続する。
【0036】
そして、鉄筋籠1が全長まで伸長すると、下側の横材112と最下位のH型鋼113Aとからなる組立中の構造体110´を鉄筋籠建込機20から吊り下げる。また、この組立中の構造体110´のナット107に吊筋108を螺合させ、吊筋108の下端を鉄筋籠1の鉄筋の上端に固定金具により固定する。
【0037】
吊筋108の上端にはワイヤ29を取り付けるためのブラケット108Aが設けられており、吊筋108の下端をカプラー109に螺合させ、ワイヤ29をブラケット108Aに取付けることにより、組立中の構造体110´を鉄筋籠建込機20から吊り下げる。
【0038】
次に、新たに接続するH型鋼113Aを、フォークリフト9で組立中の構造体110´のH型鋼113Aの上まで搬送して、上下のH型鋼113Aを継手114で接続する。ここで、新たに接続するH型鋼113Aの下端に継手114の鋼板114A、114B、114Cをボルト114D、114Eで固定しておき、新たに接続するH型鋼113Aを構造体110´のH型鋼113Aの上に降ろした後に、鋼板114A、114B、114Cを構造体110´のH型鋼113Aの上端にボルト114D、114Eで固定する)。
【0039】
次に、鉄筋籠1及び組立中の構造体110´を、鉄筋籠建込機20によりH型鋼113Aの長さの分だけ下降させる。そして、上述した手順で、縦材113のH型鋼113Aを接続し、鉄筋籠1及び組立中の構造体110´を下降させる。このように、H型鋼113Aを接続して鉄筋籠1及び組立中の構造体110´を下降させることを繰り返す。
【0040】
そして、
図8に示すように、最上位のH型鋼113Aを残して縦材113の組立が完了すると、一対の荷重受120を溝5に架け渡すようにガイドウォール6上に設置する。各荷重受120は、一対のH型鋼121で構成する。一方、吊筋108にはナット122を取り付けておく。
【0041】
該工程では、一対のH型鋼121を、フランジを水平にして吊筋108を挟むように平行に配置する。そして、一対のH型鋼121を固定金具により結合させ、ナット122を上側のフランジに当接させて締め付けることにより吊筋108を荷重受120に固定する。そして、鉄筋籠建込機20のワイヤ29を吊筋108のブラケット108Aから取り外す。これにより、鉄筋籠1の荷重が、鉄筋籠建込機20から一対の荷重受120に受け替えられる。
【0042】
次に、上側の横材111と最上位のH型鋼113Aとを一体化した部材を、組立中の構造体110´に組み付けることにより、構造体110の組立を完了させる。そして、一対の上側の横材111の上に複数の支持部材102を設置する。なお、吊ピース104及び固定具38は、予め横材111に取付けておく。
【0043】
次に、
図9に示すように、鉄筋籠建込機20のワイヤ29を吊治具100の吊ピース104に取り付けて、鉄筋籠1及び吊治具100を鉄筋籠建込機20により支持部材102が段差部6Aに掛かるまで下降させる。そして、ワイヤ29を吊ピース104から外して鉄筋籠建込機20を掘削孔4の上方から退避させる。これにより、鉄筋籠1が、吊治具100を介してガイドウォール6に支持された状態になる。
【0044】
そして、センターホールジャッキ32及びアンカー部材34(
図2参照)をガイドウォール6の段差部6Aに設置し、PC鋼材36の一端を固定具38に固定し、該PC鋼材36をセンターホールジャッキ32に通す。
【0045】
次に、
図10に示すように、センターホールジャッキ32を作動させて吊治具100及び鉄筋籠1を掘削孔4から地中埋設物2側へ移動させる。この際、吊治具100を、上下の横材111、112で地中埋設物2を上下に挟むように移動させることにより、鉄筋籠1を地中埋設物2の下の掘削孔3まで移動させる。
【0046】
次に、
図11に示すように、鉄筋籠建込機20を掘削孔4の上方に設置する。そして、そして、鉄筋籠建込機20を用いて鉄筋籠1を掘削孔4内に降ろす。ここで、本工程においても、エレメント1Bを接続して鉄筋籠1を下方へ伸長させながら、鉄筋籠1を掘削孔4内に建て込む。
【0047】
鉄筋籠1が全長にまで伸長すると、一対のかんざし鋼材118で鉄筋籠1を支持した状態で、鉄筋籠1の上端に吊筋108を固定金具で取り付け(
図7参照)、鉄筋籠建込機20のワイヤ29を吊筋108のブラケット108Aに取り付ける。そして、かんざし鋼材118を撤去して、鉄筋籠1を鉄筋籠建込機20により下降させる。
【0048】
そして、
図12に示すように、一対の荷重受120を溝5に架け渡すようにガイドウォール6上に設置する。本工程では、一対のH型鋼121を、フランジを水平にして吊筋108を挟むように平行に配置する。そして、一対のH型鋼121を固定金具により結合させ、ナット122を上側のフランジに当接させて締め付けることにより吊筋108を荷重受120に固定する。そして、鉄筋籠建込機20のワイヤ29を吊筋108のブラケット108Aから取り外す。これにより、鉄筋籠1の荷重が、鉄筋籠建込機20から一対の荷重受120に受け替えられる。
【0049】
その後、
図13に示すように、トレミー管124を掘削孔4内に挿入して掘削孔4及び掘削孔3内にコンクリートを打設する。これにより、地中連続壁の1エレメントが構築される。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る吊治具100は、鉄筋籠建込機20から吊り下げられ横方向に延びる上側の横材111と、上側の横材111から下方に延びる縦材113と、縦材113に接合され上側の横材111の下方で横方向に延び鉄筋籠1が吊り下げられる下側の横材112とを備える。ここで、吊治具100は、鉄筋籠1が地中埋設物2の下に建て込まれる際に上側の横材11と下側の横材112とで地中埋設物2を上下に挟む。
【0051】
これによって、複数の吊り点を鉄筋籠1の重心を中心として配置して、鉄筋籠1を大きく傾かせることなくバランスよく鉄筋籠建込機20から吊り下げ、かかる状態で、鉄筋籠1を地中埋設物2の近傍の掘削孔4から地中埋設物2の下の掘削孔3へ移動させることができる。従って、鉄筋籠1にウエイトを取り付けて鉄筋籠1のバランスを取ることが不要になり、ウエイトの重量の影響によるクレーンの大型化を防止できる。なお、吊治具100の重量は、鉄筋籠1の重量に比して極めて小さいところ、鉄筋籠1の傾きを補正するためのウエイトの重量は、吊治具100の重量に比して格段に大きくなる。
【0052】
また、吊治具100の掘削孔3、4内に挿入される部分は、鉄筋籠1の幅の外側に食み出さない。従って、地中連続壁の壁厚よりも広い幅で掘削するような過剰な掘削を不要にできる。
【0053】
また、本実施形態に係る吊治具100では、縦材113は、その全長よりも短い複数のH型鋼113Aが長さ方向に接続された構成であり、下側の横材112は、鉄筋籠建込機20から吊り下げられた吊筋108が取り付けられるカプラー109を備える。これによって、鉄筋籠1を、下側の横材112及びこれに取り付けた吊筋108を介して鉄筋籠建込機20から吊り下げることができる。
【0054】
ここで、本実施形態では、空頭制限があることから低空頭用の鉄筋籠建込機20を使用するのに加えて、吊治具100の高さ方向の寸法が、作業床からウインチ28までの高さよりも大きくなっている。そこで、H型鋼113Aを接続して縦材113を伸長させると、鉄筋籠1及び組立中の構造体110´を下降させることを繰り返すことによって、鉄筋籠1を吊り下げた状態で鉄筋籠1とウインチ28との間で構造体110を組み立てる。これによって、空頭制限にかかわらず高さ方向の寸法の大きい吊治具100を用いて鉄筋籠1を掘削孔3内に建て込むことができる。
【0055】
また、本実施形態に係る鉄筋籠1の建込システム10は、地上に設置された鉄筋籠建込機20と、上述の吊治具100とを備える。これによって、該吊治具100を上側の横材111と下側の横材112とで地中埋設物2を上下に挟むように地中埋設物2側へ移動させることにより鉄筋籠1を地中埋設物2の下に建て込むことができる。
【0056】
また、吊治具100は、上側の横材111に結合されガイドウォール6の開口縁部(段差部6A)に掛けられて吊治具100及び鉄筋籠1の荷重をガイドウォール6に支持させる支持部材102を備え、建込システム10は、支持部材102を介してガイドウォール6に荷重を支持された吊治具100及び鉄筋籠1を、ガイドウォール6に沿って地中埋設物2側へ移動させる牽引機構30を備える。これによって、鉄筋籠1及び吊治具100を、鉄筋籠建込機20により地中埋設物2の近傍において支持部材102がガイドウォール6の段差部6Aに掛かるまで降下させて、鉄筋籠1及び吊治具100の荷重を鉄筋籠建込機20からガイドウォール6に受け替え、その後、ガイドウォール6に荷重を支持された吊治具100及び鉄筋籠1を、牽引機構30によりガイドウォール6に沿って地中埋設物2側へ移動させることができる。従って、吊治具100及び鉄筋籠1をクレーンを用いずに横方向に移動させることができるので、空頭制限のある現場において、鉄筋籠1を、地中埋設物2の近傍の掘削孔4に下降させて該掘削孔4から地中埋設物2の下の掘削孔3へ移動させることができる。
【0057】
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上述の実施形態では、構造体110を、上下の横材111、112が縦材113の上下両端から一方向へのみ延びる形状(コ字状)に構成したが、上下の横材111、112が縦材113の上下両端から両方向へ延びる形状(I字状)に構成してもよい。
【0058】
また、上述の実施形態では、一対の構造体110を設けたが、構造体110は1体でもよく、あるいは3体以上でもよい。また、上述の実施形態では、地中連続壁の芯材として鉄筋籠1を例に挙げたが、該芯材としては、H型鋼や鋼管等も挙げられる。さらに、上述の実施形態では、鉄筋籠1を建て込んだ掘削孔内に充填する充填材としてコンクリートを挙げたが、該充填材としては、以下の(1)〜(6)のものが挙げられる。
【0059】
(1)コンクリート(高炉、普通、中庸熱、低熱ポルトランドセメント)
(2)高流動、中流動コンクリート
(3)ベントナイトモルタル(モルタルにベントナイト溶液を添加攪拌したもの)
(4)SG(自硬性安定液、セメント系固化材、ベントナイト液、ポリマー液を攪拌したもの)
(5)流動化処理土(泥土、泥水にセメント系固化材を添加攪拌したもの)
(6)セメント系固化液(セメント系固化液と掘削溝の安定液(ベントナイト液、ポリマー液)を攪拌したもの)
【0060】
なお、上記(1)、(2)、(3)については、トレミー管を掘削孔内に挿入して打設(置換)することになり、上記(4)、(5)については、トレミー管、鋼管、ホールを挿入して打設(置換)することになる。また、上記(6)については、原位置の掘削位置でエアブローによる気泡攪拌を実施することになる。