(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Mg、Ca、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、S、Co、Ni及びAlからなる群から選ばれる一種以上の元素を含むカーボンナノチューブと、シリコーンゴムと、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、及びシリカからなる群から選ばれる一種以上の添加剤を含有する電波吸収材。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0014】
[第一実施態様]
本発明の第一の態様の電波吸収材は、Mg、Ca、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、S、Co、Ni及びAlからなる群から選ばれる一種以上の元素を含むカーボンナノチューブと、シリコーンゴムとを含有することを特徴とする。
【0015】
本発明に用いられるシリコーンゴムは、電波吸収材の母材として使用され、シリコーン樹脂のうち常温でゴム状のものであれば、従来から知られたもののなかから、特に限定されること無く適宜選択して用いることができる。
【0016】
このシリコーンゴムの主骨格はオルガノポリシロキサンであり、そのケイ素原子に結合する基として様々な基を有するのが一般的である。ここで、ケイ素原子に結合する基は特に限定されるものではなく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基のほか、これらの基の水素原子が部分的に他の原子又は結合基で置換されたものを挙げることができる。これらの官能基を選択することにより、例えば、加熱硬化型あるいは常温硬化型のもの、硬化機構が縮合型あるいは付加型のものとして用いることができる。本発明に用いられるシリコーンゴムは、架橋(加硫)したものも、未架橋(未加硫)のものもいずれを使用することもできる。
【0017】
従来、例えば、シート状の成形品を製造する場合、母材としては天然ゴム、エチレン−プロピレンゴムやポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂系材料を使用するのが普通であった。しかしながら、これら従来の樹脂系材料のみでは、カーボンナノチューブを分散させて厚みの薄いフィルム状に成形することは非常に困難であった。本発明では、カーボンナノチューブの分散性が高いシリコーンゴムを採用することにより、均一性の高い電波吸収材とすることができるため、特に薄いシート状に成形するのにも好適である。
【0018】
本発明に用いられるシリコーンゴムの配合は、カーボンナノチューブ等を十分に分散して母材として機能する範囲であれば、特に限定されることなく設定することが可能である。シリコーンゴムの含有量として、40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。40質量%以上であれば、カーボンナノチューブ等を十分に分散し得て希望する厚みの電波吸収材を成形することができる。上限については、電波吸収材の電波吸収性能を考慮すれば、90質量%以下、好ましくは70質量%以下の範囲である。
【0019】
本発明に用いられるカーボンナノチューブは、Mg、Ca、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、S、Co、Ni及びAlからなる群から選ばれる一種以上の元素を含むものであれば、特に限定されることなく使用できる。カーボンナノチューブが上記元素を含む態様は、カーボンナノチューブと当該元素が混在した態様でも、カーボンナノチューブ中に当該元素が内在した態様でも構わない。高周波数の電磁波用電波吸収材のために、上記元素の有無に拘らずカーボンナノチューブの適用が効果的であるが、上記元素を含むカーボンナノチューブを適用すると、電磁波用電波吸収材の電波吸収性が高められるため、より好ましい。
【0020】
カーボンナノチューブは、一般的に、アーク放電法、レーザー蒸発法、熱分解法等の気相生長法により製造され、連続したグラファイト面が円筒状に丸まった中空の管状体から構成されている。本発明に用いられるカーボンナノチューブは、これら公知のものが特に限定されること無く使用可能であるが、炭素繊維の性状の制御や大量生産が可能な遠藤法(触媒気相成長法)や化学気相成長(CVD)法により得られるカーボンナノチューブがより好ましい。また、本発明に用いられるカーボンナノチューブは、単層、二層、多層の何れでも良いが、二層以上の多層のものを使用することがコスト及び電波吸収性の点から好ましい。
【0021】
上記元素の電波吸収性を高める理由は不明であるが、例えば、上記元素のうち遷移元素は、その有する磁性等の特性が起因するものと推測される。なかでも、Fe、Co、S、及びNiが電波吸収性を高める点で好ましい。
【0022】
上記元素の存在を確認するためには、カーボンナノチューブあるいは電波吸収剤の断面を蛍光X線で測定して行う。
【0023】
本発明の電波吸収材中におけるカーボンナノチューブの含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。5質量%以上であれば、希望する電波吸収性能を得ることができる。上限については、カーボンナノチューブの形状によっても異なるが、電波吸収材の成形性及びコストを考慮すると、40質量%以下、好ましくは30質量%以下の範囲である。
【0024】
上記カーボンナノチューブの含有量は、JIS K6227:1998(ゴム−カーボンブラックの定量−熱分解法及び化学分解法)に準拠して評価する。
【0025】
更に、本発明の電波吸収材は、上記シリコーンゴム及びカーボンナノチューブに加え、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、及びシリカからなる群から選ばれる一種以上の添加剤を含有する。
【0026】
これらの添加剤は、シリコーンゴム中に単独で含有される場合は電波吸収性を有さないが、カーボンナノチューブと共に含有された場合には、カーボンナノチューブの電波吸収性能をより向上させる働きを有する。そのため、電波吸収材中のカーボンナノチューブの添加量が同じであれば、上記添加剤を含有したもののほうがより優れた電波吸収性を示す。また、上記添加剤を含有させることで、同じ電波吸収性を示す電波吸収材とするために必要なカーボンナノチューブの添加量をより少なく抑えることが可能となる。
【0027】
上記の添加剤のうち、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムから選ばれるいずれか又は両方を採用することが、電波吸収材に難燃性を付与できるために好ましい。電波吸収材に難燃性を付与することにより、電子機器のような、特に難燃性の基材を使用することが求められる分野への適用が有利となる。
【0028】
電波吸収材中における上記添加剤の含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。5質量%以上であれば、カーボンナノチューブの電波吸収性能を向上することが可能となる。また、その上限値は併用するカーボンナノチューブの形状によっても異なるが、電波吸収材の成形性を考慮すると、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。
【0029】
本発明の電波吸収材は、未加硫のまま使用することもできるが、公知の架橋剤等を含有させて処理を行い架橋(加硫)して使用することもできる。本発明におけるシリコーンゴムの架橋(加硫)方法は、未加硫のシリコーンゴムの有する官能基に応じて適宜選択されるものである。官能基の示す反応機構としては、(1)有機過酸化物加硫剤による架橋方法、(2)付加反応による方法等が知られており、それぞれ、好適な硬化用触媒若しくは架橋剤が公知である。
【0030】
例えば、有機過酸化物加硫剤としては、公知のパーオキサイドが使用でき、例えばベンゾイルパーオキサイド、2,4ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、2,5ジメチル2,5ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ターシャリーブチルクミルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーベンゾエート等を用いることができ、ビニル基等の不飽和の官能基を有す未加硫シリコーンゴムに対し適量配合することができる。
【0031】
ビニル基等の不飽和の官能基を有す未加硫シリコーンゴムに対しては、付加反応型の架橋剤であるハイドロジェン基含有ポリオルガノシロキサンを採用することも可能である。その際、白金化合物等の周知の硬化用触媒を併用することが好ましい。これらは、未加硫シリコーンゴムに対し適量配合すればよい。
【0032】
本発明の電波吸収材には、柔軟性等の性能の向上を目的として、シリコーンゴム以外の合成ゴム若しくは天然ゴムを、シリコーンゴムに更に添加することもできる。このような合成ゴム若しくは天然ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、各種天然ゴム等が挙げられる。ただし、これらのゴムは必須ではなく、含まれなくても構わない。
【0033】
更に、本発明の電波吸収材には、上記した添加剤に加えて、従来添加することが知られている添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。例えば、クレー、珪藻土等の補強性充填剤、酸化鉄、酸化セリウム等の耐熱剤、顔料、耐熱性向上剤、酸化防止剤、離型剤、加工助剤、接着性付与剤、有機溶媒等を挙げることができる。
【0034】
本発明の電波吸収材用組成物の調製方法としては、バンバリー・ニーダー・ロール等の通常のゴム混練り機に、上記各成分を配合し、未加硫シリコーンゴムの融点以上の温度で分散させた後に冷却するか、トルエン等の有機溶媒に上記各成分を分散ないし溶解させる方法が適宜採用できる。
【0035】
また、本発明の電波吸収材の成形方法としては、組成物をカレンダーあるいは押出し機で所定の厚さに分出してから硬化させる方法、液状の組成物あるいは液状化した組成物をフィルム上にコーティングしてから硬化させる方法、有機溶媒を含む液状の組成物をフィルム上にコーティングしてから有機溶媒を取り除く方法等を採用することが可能である。このようにして成形した場合、基本的にシート状の電波吸収材が得られる。その平均厚さは、0.1〜10mmの範囲とすることが好ましい。平均厚さ0.1mm以上であれば電波吸収性能が十分であり、10mm以下の平均厚さであれば被圧着体の形状に追従できる。シート状の電波吸収材の場合、複数のシートを重ねて使用することで、電波吸収性能をより向上することも可能である。
【0036】
なお、本発明においてシートの平均厚さは、成形して得られたシートの任意に選んだ異なる10点の位置における厚さを、JIS K6250に準拠して定圧をかけられるダイヤルゲージ・マイクロメーターで測定し、得られた値を平均して求めた。
【0037】
また、本発明においてシートの厚さのバラツキは、極力小さい方が好ましい。具体的には、平均値を求める際と同様にしてシートの異なる部分の厚さを求めた場合に、得られた値のバラツキが平均値から±10%の範囲内に入るとよい。
【0038】
シート状以外の形状の電波吸収材を得るためには、例えば、所望の形状を得るための金型中に未硬化の組成物を仕込み、金型を締めてから熱プレス機により圧力と熱をかけ、該組成物を硬化させるモールド成形、射出成形機上の加熱した金型の中に、ノズルから未硬化のオルガノポリシロキサン組成物を射出して金型のキャビティ内に充填し、硬化後金型を開け、成形品を取り出す射出成形等の公知の方法を採用することができる。
【0039】
本発明の電波吸収材は優れた電波吸収性を有するため、その用途は特に限定されず、電波の遮蔽が必要とされる様々な用途に使用することができる。例えば、携帯電話やデジタルカメラ等の電子機器内に配置することで、回路基板等のEMC対策を有効に行うことができる。あるいは、ビル、橋、鉄塔、トンネル、高速道路等の建造物の壁面やETC通過ゲート付近に設置される電波吸収材として使用することも可能である。
【0040】
[第二実施態様]
本発明の第二の態様は、第一の態様の電波吸収材を含む近傍界用電波吸収材である。
【0041】
本発明の電波吸収材が遮蔽ないし吸収の対象とする電磁波とは、空間の電界と磁界の変化によって形成された波のことである。特に電子機器内部のような電磁波発生源近傍の空間においては、準静電界や誘導磁界成分が支配的となり、電磁界の挙動が複雑になる。このような領域は近傍界と呼ばれ、電磁波発生源から十分離れ、空間における電磁波が平面波として伝播していく遠方界とは、電磁波の振る舞いが異なりその評価や解析方法等においても差異がある。
【0042】
本発明において、近傍界とは、電磁波発生源近傍の空間であって、電磁波の準静電界や誘導磁界成分が支配的な領域を指す。これに対し、波源から十分離れた空間では、電磁波は電界と磁界がお互いの電磁誘導によって交互に電界・磁界と直行する方向に空間を進む。この領域を遠方界という。波源からの距離をD、波長をλとすると、D=λ/2π(λ=c/f、c:光速、f:周波数)の関係があり、近傍界とは、この値より内側を指す。例えば、1GHzの電磁波の波長は約30cmなので、波源からおよそ5cmが近傍界と遠方界の境界となる。
【0043】
従って、本発明の近傍界用電波吸収材とは、例えば、携帯電話やデジタルカメラ等の、本発明の第四の態様である電子機器内に配置することを主な目的とする電波吸収材を指す。
【0044】
本発明の近傍界用電波吸収材には、使用されるカーボンナノチューブの平均長さは10μm以下であることが好ましく、9μm以下であることが特に好ましい。また、2μm以上が好ましく、4μm以上であることが更に好ましい。平均長さが10μm以下であれば、取り扱い性やシリコーンゴム中への分散性を担保することができる。また、2μm以上であることで、カーボンナノチューブのアスペクト比を適切な範囲とすることができるため、近傍界における優れた電波吸収性能を確保することができる。
【0045】
また、カーボンナノチューブの平均直径は、200nm以下とすることが好ましく、150nm以下とすることが更に好ましい。また、その平均直径は3nm以上とすることが好ましく、40nm以上とすることが更に好ましい。平均直径が200nm以下であれば、近傍界における優れた電波吸収性能を確保することができる。また、平均直径は3nm以上であることでカーボンナノチューブのアスペクト比を必要以上に高めず、取り扱い性やシリコーンゴム中への分散性を担保することができる。
【0046】
カーボンナノチューブの平均長さ及び平均直径は、バラツキが平均値から±10%の範囲内にあるカーボンナノチューブから選ばれ、サンプルがカーボンナノチューブ粉体であればそのまま、シートであれば定法に従い薄くスライスしたものを、透過電視顕微鏡(TEM)を用いて観察し、視野中のカーボンナノチューブから任意に10個を選択してその径及び長さを測定し、その平均を求めて算出した。
【0047】
更に、カーボンナノチューブの比表面積を10〜200m
2/gとすることが好ましい。比表面積が200m
2/g以下であれば、電波吸収材の成形性や熱伝導の点で好ましい。より好ましくは、200m
2/g以下である。また、比表面積が10m
2/g以上であれば吸収特性が確保できて好ましい。より好ましくは、15m
2/g以上である。
【0048】
併せてそのアスペクト比を40〜100とすることがよりいっそう望ましい。本発明者は、カーボンナノチューブのアスペクト比を上記範囲内とすると、意外にも電波吸収材の熱伝導性が飛躍的に向上できることを見出した。電子機器の誤動作を防いだり、製品寿命を延ばしたりするためには、電磁波を遮断する以外にも、能動素子等の発熱性部品から発生される熱を効率よく外界に放熱することも重要である。このような放熱材料として、熱伝導性に優れると共に電気絶縁性にも優れたものが望まれており、基材となるシリコーンゴムに熱伝導性充填材を配合したシリコーンゴム組成物も多数提案されている。本発明の電波吸収材を、電子機器等に適用することで、電波の遮断に加えて、能動素子等の発熱を効率よく外界に放散する等の措置をとることが可能となり、その誤動作をより確実に防ぐことができる。
【0049】
本発明においてカーボンナノチューブの比表面積の値は、定法に従い十分乾燥したカーボンナノチューブの窒素の吸着量を、比表面積測定装置を用いて測定するBET法(窒素吸着法)にて算出する。
【0050】
[第三実施態様]
本発明の第三の態様は、第一の態様の電波吸収材を含む遠方界用電波吸収材である。本発明において、遠方界とは、電磁波発生源から十分離れた空間であって、電磁波が電界と磁界がお互いの電磁誘導によって交互に電界・磁界と直行する方向に空間を進む領域である。遠方界は、既述の、D=λ/2π(λ=c/f、c:光速、f:周波数)で表される値より外側の領域となる。
【0051】
本発明の遠方界用電波吸収材に使用されるカーボンナノチューブの平均長さは、0.1〜2.0μmであることが好ましく、0.5〜1.5μmであることが更に好ましい。平均長さが2.0μm以下であれば、遠方界における電波吸収性に優れると共に、取り扱い性やシリコーンゴム中への分散性を担保することもできる。また、0.1μm以上であることで、カーボンナノチューブのアスペクト比を適切な範囲とすることができるため、遠方界における優れた電波吸収性能を確保することができる。
【0052】
更に、電波吸収性の点から、その平均直径は、15nm以下のものを使用することが好ましい。また、平均直径は1nm以上であることでカーボンナノチューブのアスペクト比を必要以上に高めず、取り扱い性やシリコーンゴム中への分散性を担保することができる。
【0053】
なお、カーボンナノチューブの平均長さ及び平均直径は、第二実施態様の欄に記載した方法と同様にして求める。
【0054】
本発明の電波吸収材は優れた遠方界における電波吸収性を有するため、その用途は特に限定されず、遠方界における電波の吸収が必要とされる様々な用途に使用することができる。例えば、ビル、橋、鉄塔、トンネル、高速道路等の建造物の壁面に設置される。また、電波吸収材をゲート付近に設置した本発明の第五の態様の自動料金収受システムとすることが可能である。更に、本発明の第六の態様の車載レーダー装置に備えて、電波漏洩防止を図ることも可能である。
【0055】
また、本発明の遠方界用電波吸収材の適用方法としては、例えば、シートとしてその裏面に市販の両面テープ等の接着層を設け、直接あるいは他のシート、シールド板、パネル等を介して、床、天井、壁、柱等の構造物に貼り付ける等の方法を採用することができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0057】
<実施例1〜6>
シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング社製、SH851U)100重量部に対し、パーオキサイド(東レ・ダウコーニング社製、RC−4(50P)FD)0.6重量部を加え二本ロールで均一に混練して主剤とした。
【0058】
この主剤に対し、表1に示す平均長さ、平均直径、及び比表面積の、Fe、Co、S及びNiを含有させたA〜Hの多層カーボンナノチューブを、それぞれ配合し、更に均一に混練して、実施例1〜6の電波吸収材用組成物とした。各実施例において、多層カーボンナノチューブを電波吸収材用組成物に対し、5、10、20、30質量%となるように配合した。
【0059】
上記電波吸収材用組成物を定法に従い、平均厚さ0.2mmのシート状に成形して、160℃、15分間加硫を行った後、昇温して200℃、2時間のアフターキュアを行った。得られたシートの近傍界における電波吸収性を評価するため、マイクロストリップライン法により伝送減衰率(Rtp)を測定した。その結果を表1に示す。また、併せてシートの熱伝導率の評価を行った。その結果を表2に示す。また、上記の多層カーボンナノチューブを含有するシートの断面を蛍光X線で元素分析し、いずれも、Fe、Co、S及びNiが検出されることを確認した。
【0060】
<比較例1>
多層カーボンナノチューブの代わりに通常の粒子状カーボンを使用した以外は、実施例1と同様にして比較例1とした。得られたシートの評価結果を表1、2に示す。
【0061】
<比較例2>
多層カーボンナノチューブを使用しない以外は、実施例1と同様にして比較例2とした。得られたシートの評価結果を表1、2に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
[評価方法]
<伝送減衰率Rtpの測定>
近傍界における電波吸収性を評価するため、IEC62333に準拠して、マイクロストリップライン法により1GHzの伝送減衰率Rtpを測定した。ここで伝送減衰率Rtpとは下式(1)で表され、値が大きいほどノイズ抑制能が高いことを表している。式中、S11は反射係数、S21は透過係数である。
【数1】
【0065】
伝送減衰率Rtpの単位はdBであって、実質的な電波吸収性能(電波抑制性能)との関係は、以下の通りである。
3dB:50%吸収、 6dB:75%吸収、10dB:90%吸収、
20dB:99%吸収、30dB:99.9%吸収
【0066】
<熱伝導率の測定>
厚さ0.1〜0.3mm、40〜50mm角のサンプルを、ネッチ社製フラッシュアナライザーLFA447を用い、フラッシュ法による厚さ方向の熱伝導率の測定を行った。
【0067】
表1から明らかなように、本発明の実施態様である実施例1〜6の電波吸収材は、通常のカーボンを添加した比較例1や添加前のシリコーンゴムに相当する比較例2の電波吸収材と比べて高い電波吸収性を有する。特に、実施例1が好ましい。
【0068】
現在市販されている近傍界用電波吸収材のほとんどは、伝送減衰率1dB以下であるので、伝送減衰率3dB以下(電波吸収50%以上)でも十分に優れた電波吸収材と言える。そのため、本発明の実施態様である実施例1〜6は、いずれも、近傍界における1GHz電磁波の伝送減衰率が3dB以上であり、近傍界用電波吸収材として優れた性能を有するということができる。
【0069】
また、表2から明らかなように、本発明の実施態様である実施例1〜6の電波吸収材は、全て0.40W/m・Kを超えており、熱伝導性が高い。そのため、電子機器等に採用した場合、電波の遮断に加えて、能動素子等の発熱を効率よく外界に放散する等の措置をとることが可能となり、その誤動作をより確実に防ぐことができる。特に実施例1の200m
2/g以下の比表面積を有するカーボンナノチューブAを用いた場合、特に熱伝導性が高く有利である。
【0070】
熱伝導率の測定は、今般厚さ方向のみの熱伝導率の測定を行なったが、試しに一部の実施例の面方向の熱伝導率の測定を行なったところ、厚さ方向の約10〜20倍の熱伝導率の結果が出た。
【0071】
熱放射性能は、厚さ方向のみならず面方向への拡散も重要な要素となるので、よって本発明は全方向に高い熱伝導性も併せ持つため、電子機器等に使用した場合に、能動素子等の発熱による誤動作を極めて有効に防ぐことができるものである。
【0072】
<実施例7〜14>
実施例1に使用したものと同じ主剤に対し、表3に示す平均長さ、平均直径の多層カーボンナノチューブを、2.5、5、10、20質量%の配合割合で配合し、更に均一に混練して、ようにそれぞれ配合し、二本ロールにて均一に混練して厚さ0.3mmのシート状に押出加工し、実施例7〜14の電波吸収材とした。各実施例を、蛍光X線で元素分析した結果、鉄・コバルトを検出した。
【0073】
上記電波吸収材の電波吸収性を、後述の空間法を用いて評価した使用した多層カーボンナノチューブの形状等及び得られたシートの評価結果を表3に示す。
【0074】
【表3】
(反射減衰率の単位は、dBである。)
【0075】
[評価方法]
<反射減衰率の測定>
遠方界用の電波吸収性の評価は、空間法によって行った。シート状電波吸収材を30cm角に加工し、試料から1.5mの位置で周波数75GHz〜110GHzの電波を入射し、試料より反射される電波をアンテナで受けてネットワークアナライザにより定法に従ってその反射減衰率(単位:dB)を測定した。シート状電波吸収材裏面は金属板で覆われている。金属板のみの反射減衰率を0dB基準とする。電波吸収シートの評価には、表3に示す76GHzにおける値を用いる。
【0076】
反射減衰率の単位はdBであって、実質的な電波吸収性能との関係は、以下の通りである。
3dB:50%吸収、 6dB:75%吸収、10dB:90%吸収、
20dB:99%吸収、30dB:99.9%吸収
【0077】
現在市販されている遠方界用電波吸収材のほとんどは、反射減衰率20dB未満(電波吸収99%未満)であるので、反射減衰率20dB以上(電波吸収99%以上)であれば、優れた電波吸収材と言える。
【0078】
本発明は表3から明らかなように、本発明の実施態様のなかでも、平均長さ0.1μm以上2.0μm未満、平均直径1nm以上15nm以下の実施例7〜10の電波吸収材の反射減衰率はいずれも20dB以上(電波吸収99%以上)であり、実施例11〜14の電波吸収材と比べて高く、遠方界用の電波吸収材として特に優れる。また、分散性に優れ、20質量%においても、成形加工が可能である。
【0079】
<実施例15〜20>
実施例1に使用したものと同じ主剤に対し、電波吸収材用組成物中の含有量として、多層カーボンナノチューブ10質量%、及び、添加剤として、水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、硫酸バリウム(BaSO
4)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、タルク及びシリカを、それぞれ10質量%となるように配合し、更に均一に混練して実施例15〜20の電波吸収材用組成物とした。上記の各実施例を、蛍光X線で元素分析した結果、鉄・コバルトを検出した。
【0080】
上記電波吸収材用組成物を定法に従い、平均厚さ0.2mmのシート状に成形して、160℃、15分間加硫を行った後、昇温して200℃、2時間のアフターキュアを行った。得られたシートの伝送減衰率(Rtp)を上述のマイクロストリップライン法により測定した。また、併せて難燃性の評価を行った。その結果を表4に示す。
【0081】
<参考例1>
多層カーボンナノチューブ20質量%添加し、その他の添加剤を使用しない以外は、実施例15と同様にして参考例1とした。得られたシートの評価結果を表4に示す。
【0082】
<参考例2、3>
添加剤として、ホウ酸マグネシウム又はクレーを使用した以外は、実施例15と同様にして参考例2、3とした。得られたシートの評価結果を表4に示す。
【0083】
【表4】
*多層カーボンナノチューブ
【0084】
<実施例21〜26>
多層カーボンナノチューブを5質量%、添加剤を15質量%となるように配合した以外は、実施例15〜20と同様にして、それぞれ実施例21〜26とした。得られたシートの評価結果を表5に示す。
【0085】
<参考例4、5>
添加剤として、ホウ酸マグネシウム、クレーを使用した以外は、実施例15と同様にして参考例4、5とした。得られたシートの評価結果を表5に示す。
【0086】
【表5】
【0087】
<実施例27〜32>
電波吸収材用組成物中の含有量として、水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、硫酸バリウム(BaSO
4)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、タルク及びシリカを25質量%となるように配合した以外は、実施例15〜20と同様にして、それぞれ実施例27〜32とした。得られたシートの評価結果を表6に示す。
【0088】
<参考例6、7>
添加剤として、ホウ酸マグネシウム、クレーを使用した以外は、実施例15と同様にして参考例6、7とした。得られたシートの評価結果を表6に示す。
【0089】
【表6】
【0090】
<実施例33〜36、参考例8〜9>
電波吸収材用組成物中の含有量として、多層カーボンナノチューブ、水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)及び水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)を表7のようになるように配合した以外は、実施例15と同様にして、それぞれ実施例33〜36、参考例8、9とした。得られたシートの評価結果を表7に示す。
【0091】
【表7】
【0092】
参考例8、9のようにカーボンナノチューブを35質量%添加すると、組成物の成形性が劣るため、平均厚さ0.2mm厚みに設定した場合には均一なフィルムを製造することができなかった。これらは、より厚い適切な厚みを選択することにより成形が可能となり、フィルム化可能である。
【0093】
<比較例3〜10>
カーボンナノチューブを用いず、各添加剤を、電波吸収材用組成物中の含有量として50質量%となるように配合した以外は、実施例15と同様にして比較例3〜10とした。得られたシートの評価結果を表8に示す。
【0094】
【表8】
【0095】
[評価方法]
<伝送減衰率Rtpの測定>
実施例1〜6の評価方法と同様にして、マイクロストリップライン法により1GHzの伝送減衰率Rtpを測定した。
【0096】
<難燃性>
ゴムシートを幅5mm長さ約5cmの大きさに短冊状に切って試験試料を作製した。続いて、固定用クランプで垂直に保持した試料の下端にアルコールランプの炎を接炎させる。炎の燃え広がる様子を観察し、下記の基準で難燃性を評価した。
×: 固定用クランプの位置まで炎が届き全て燃焼する。
○: 接炎後延焼するが。炎はクランプまで達することはない。
◎: 接炎後延焼せずに、すぐに消火する。
【0097】
<成形性>
定法に従い平均厚さ0.2mmのシート状に成形した状態を評価した。
×: シートの厚みが±10%以上にバラツいてしまい、不良製品としてのシートしか得られなかった。
△: シートの厚みのバラツキが±10%に収まった状態。
○: シートの厚みのバラツキが±5%に収まった状態。
【0098】
上記実施例から明らかなように、本発明は広い範囲の電磁波において伝送減衰率が6dB以上(電波吸収75%以上)であるだけでなく、比較的吸収しにくい低周波数の516MHzの電磁波であっても伝送減衰率が10dB以上であって、特に1GHz及び5GHzにおいては伝送減衰率が20dB以上であるので、電波吸収材として極めて優れた性能を有しているものである。
【0099】
また、表4の参考例1と実施例15〜20とを比較すると明らかなように、カーボンナノチューブ含有量を半減した場合であっても、本発明の添加剤をカーボンナノチューブの低減量と同量含む場合は、電波吸収性能を維持することが可能である。これに対し、本発明の範囲外の添加剤を使用した参考例2は成形性に問題があり、参考例3は電波吸収性能を維持することができない。
【0100】
これら検討添加剤は、表8から明らかなように、いずれもカーボンナノチューブを用いない単独添加では電波吸収性を示さない添加剤であり、本発明において示す電波吸収性の向上はカーボンナノチューブとの相乗効果によるものと考えられる。実施例15、16、21、22、27、28から明らかなように、水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムの添加の効果が高く、特に好ましい。
【0101】
表5、6に示すように、本発明の添加剤の添加量を増加させても、必ずしも電波吸収性能を高めることにつながらないが、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムを用いた場合において電波吸収材の難燃性を向上するため、特に電子機器等への応用時に特に有利である。
【0102】
更に、表7に示されるように、カーボンナノチューブの含有量が30質量%以下であれば、カーボンナノチューブの分散性に問題がないため成形性がよく、フィルムを薄膜化することが可能となり、また、難燃性に優れた電波吸収材とすることができる。