(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第7工程では、前記半導体基板の前記遷移金属膜が形成された側の面の、前記遷移金属膜が形成された部分以外の部分に前記金属膜を残すことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
前記第8工程では、前記酸化膜を還元するとともに前記遷移金属膜を発熱させ、前記酸化膜の還元が終了する前または終了と同時に前記第8工程を終了させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
前記遷移金属膜は、ニッケルまたはタングステンからなる金属層、もしくはニッケル、チタン、タングステン、モリブデン、タンタルまたは銀を主成分として1つ以上含む合金層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
前記第8工程では、前記遷移金属膜と炭化珪素からなる前記半導体基板とを反応させて前記遷移金属膜をシリサイド化することにより前記オーミックコンタクトを形成することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、炭化珪素(SiC)半導体を用いた半導体デバイス(炭化珪素半導体装置)では、炭化珪素半導体部と金属膜(電極)とのオーミックコンタクト(電気的接触部)を熱処理(アニール)によって形成することが公知である。従来の半導体装置の製造方法について説明する。
図9は、従来の半導体装置の製造途中の状態を模式的に示す断面図である。
図9には、炉アニール時の半導体基板(半導体ウェハ)の状態を示す。
【0003】
図9に示すように、まず、炭化珪素からなる半導体基板(以下、炭化珪素基板とする)101のおもて面側に素子構造102を形成した後、炭化珪素基板の裏面にニッケル(Ni)膜103を形成する。次に、1000℃以上程度の高温度で数分間の高速熱処理(RTA:Rapid Thermal Annealing)炉104によりニッケル膜103をシリサイド化して炭化珪素基板とのオーミックコンタクトを形成する。
【0004】
このように炭化珪素基板とのオーミックコンタクトを形成する方法として、炭化珪素基板上に遷移金属膜を形成した後、1000℃の温度で2分間の急速加熱処理により炭化珪素基板全体を加熱することによって、炭素高含有シリサイドコンタクト電極を形成する方法が提案されている(例えば、下記特許文献1(第0017段落)参照。)。
【0005】
また、別の方法として、シリコン基板上にニッケル膜を形成した後、水素(H
2)ガス雰囲気の熱処理を行う方法が提案されている(例えば、下記特許文献2(第0040〜0042段落)参照。)。下記特許文献2では、水素ガス雰囲気の熱処理により、シリコン基板中のシリコン原子とニッケル膜中のニッケル原子との反応が促進される。
【0006】
また、別の方法として、炭化珪素基板上にチタン(Ti)膜、アルミニウム(Al)膜およびシリコン膜を順に形成してコンタクト電極を形成した後、レーザーアニールによりコンタクト電極に含まれるチタン、アルミニウムおよびシリコンと、炭化珪素基板に含まれるシリコンおよび炭素とを合金化する方法が提案されている(例えば、下記特許文献3(第0042〜0044段落)参照。)。
【0007】
また、別の方法として、シリコン基板上に、酸化膜(SiO
2膜)、シリコンからなる量子ドット、およびニッケル薄膜を順に形成した後、リモート水素プラズマ処理により量子ドットおよびニッケル薄膜からなる積層膜をニッケルシリサイドドットにする方法が提案されている(例えば、下記特許文献4(第0056〜0061段落)参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の製造方法では、高速熱処理炉104により、炭化珪素基板101とニッケル膜103との界面では、炭化珪素基板101中のシリコン原子とニッケル膜103中のニッケル原子とのシリサイド化反応が進行する。このとき、炭化珪素基板101とニッケル膜103との間に、炭化珪素基板101中の余剰の炭素(C)原子が析出しクラスター化して残存する虞がある。炭化珪素基板101とニッケルシリサイド膜との間に残存する余剰の炭素原子はコンタクト抵抗の上昇を招く。
【0010】
また、従来の製造方法では、オーミックコンタクトを形成する部分(すなわちニッケル膜103や、炭化珪素基板101とニッケル膜103との界面)のみを選択的に加熱することができず、炭化珪素基板101全体(素子全体)が一様に加熱される。このため、素子構造102として形成されたMOSゲート(金属−酸化膜−半導体からなる絶縁ゲート)の、炭化珪素基板101との界面付近に余分な熱が加わる。この加熱による熱履歴によって素子特性が劣化するなどの問題がある。
【0011】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、良好なオーミックコンタクトを形成することができるとともに、素子特性が劣化することを防止することができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、次の特徴を有する。まず、半導体基板の表面に素子構造を形成する第1工程を行う。次に、前記半導体基板の表面に、前記素子構造を覆うように層間絶縁膜を形成する第2工程を行う。次に、前記層間絶縁膜を深さ方向に貫通するコンタクトホールを形成する第3工程を行う。次に、前記半導体基板の、前記コンタクトホールに露出された部分に遷移金属膜を形成する第4工程を行う。次に、前記半導体基板の前記遷移金属膜が形成された側の面上の全面に、下方の前記素子構造への水素ラジカルおよび水素原子の侵入を防止するための金属膜を形成する第5工程を行う。次に、前記金属膜の表面に、前記金属膜との結合が強固で、かつ前記金属膜よりも化学的に安定した酸化膜を形成する第6工程を行う。次に、前記酸化膜が形成された状態の前記金属膜を選択的に除去し、前記遷移金属膜を露出させる第7工程を行う。次に、前記遷移金属膜および前記酸化膜が露出された状態の前記半導体基板を水素プラズマ雰囲気にさらすことによって前記遷移金属膜を発熱させ、前記遷移金属膜からの熱伝導によって前記遷移金属膜と前記半導体基板とが反応してなるオーミックコンタクトを形成する第8工程を行う。
【0013】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第7工程では、前記半導体基板の前記遷移金属膜が形成された側の面の、前記遷移金属膜が形成された部分以外の部分に前記金属膜を残すことを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第4工程は、まず、前記半導体基板の前記層間絶縁膜が形成された側の面上の全面に前記遷移金属膜を形成する工程を行う。次に、前記遷移金属膜の、前記コンタクトホールの内部に形成された部分を覆うレジストマスクを形成する工程を行う。次に、前記レジストマスクをマスクとしてエッチングを行い、前記遷移金属膜を選択的に除去して前記層間絶縁膜を露出させる工程を行う。そして、前記第5工程では、前記層間絶縁膜および前記レジストマスクの表面に前記金属膜を形成する。前記第7工程では、前記レジストマスクを除去することで前記金属膜を選択的に除去することを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第8工程では、前記酸化膜を還元するとともに前記遷移金属膜を発熱させ、前記酸化膜の還元が終了する前または終了と同時に前記第8工程を終了させることを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記金属膜は、チタン膜であることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記遷移金属膜は、ニッケルまたはタングステンからなる金属層、もしくはニッケル、チタン、タングステン、モリブデン、タンタルまたは銀を主成分として1つ以上含む合金層であることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第8工程では、前記遷移金属膜と炭化珪素からなる前記半導体基板とを反応させて前記遷移金属膜をシリサイド化することにより前記オーミックコンタクトを形成することを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記素子構造は、金属−酸化膜−半導体からなる絶縁ゲート構造であることを特徴とする。
【0020】
上述した発明によれば、コンタクトホールを形成した後、下方への水素ラジカルおよび水素原子の侵入を防止するための金属膜(バリアメタル)やバリアメタル表面の酸化膜を形成する工程を挟まずに遷移金属膜を形成することで、遷移金属膜を形成する前に、コンタクトホールに露出された炭化珪素半導体部の表面の酸化膜を除去することができる。これにより、炭化珪素半導体部と遷移金属膜とを直接接触させることができるため、その後の水素プラズマ処理により遷移金属膜をシリサイド化することができ、炭化珪素半導体部とのオーミックコンタクトを形成することができる。また、遷移金属膜を形成した後にバリアメタルやバリアメタル表面の酸化膜を形成することで、遷移金属膜を形成する前にフッ化水素を用いた洗浄処理により炭化珪素半導体部の表面の酸化膜を除去したとしても、バリアメタル表面の酸化膜は除去されない。これにより、遷移金属からなるバリアメタルを形成したとしても、バリアメタルを酸化膜で覆った状態で水素プラズマ処理を行うことができるため、バリアメタル表面の酸化膜が還元されている間はバリアメタルが発熱しない。これにより、バリアメタルで覆った部分、すなわちバリアメタルの下側(半導体基板側)に位置するMOSゲートに余分な熱履歴が加わらない。また、遷移金属膜を形成した後にバリアメタルおよびバリアメタル表面の酸化膜を形成することで、遷移金属膜の表面に酸化膜が形成されない。これにより、遷移金属膜のみの温度を短時間でかつ高温度に上昇させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる半導体装置の製造方法によれば、コンタクト抵抗の低い良好なオーミックコンタクトを形成することができるとともに、素子特性が劣化することを防止することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0024】
(実施の形態)
実施の形態にかかる半導体装置の製造方法よって製造された半導体装置の一例について、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を例に説明する。
図1は、実施の形態にかかる半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置の一例の構造を示す断面図である。
図1に示すように、実施の形態にかかる半導体装置は、炭化珪素からなる半導体基板(炭化珪素基板(半導体チップ))のおもて面側にMOSゲート構造およびおもて面電極(ソース電極)を備え、裏面側に裏面電極(ドレイン電極12)を備えたプレーナゲート構造の縦型MOSFETである。
【0025】
具体的には、n
-型ドリフト層1となる炭化珪素基板のおもて面の表面層には、p型ベース領域2が選択的に設けられている。p型ベース領域2は、例えば不純物濃度の異なるp型領域2a,2bを深さ方向に対向するように配置してなる。p型ベース領域2(基板おもて面に露出するp型領域2a)の内部には、n
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4が選択的に設けられている。p型ベース領域2の内部においてn
+型ソース領域3は、p
+型コンタクト領域4よりも外側に設けられている。p型ベース領域2の、n
-型ドリフト層1とn
+型ソース領域3とに挟まれた部分の表面上には、n
-型ドリフト層1の表面上にわたって、ゲート絶縁膜5を介してゲート電極6が設けられている。
【0026】
これらp型ベース領域2、n
+型ソース領域3、p
+型コンタクト領域4、ゲート絶縁膜5およびゲート電極6によってMOSゲート構造が構成されている。
図1には、2つの単位セル(素子の機能単位)を構成する1つのMOSゲート構造を示すが、この単位セルに隣接するように並列に複数の単位セル(不図示)が配置されていてもよい。炭化珪素基板のおもて面の全面には、ゲート電極6を覆うように層間絶縁膜7が設けられている。層間絶縁膜7を深さ方向に貫通するコンタクトホール7aには、n
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4が露出されている。層間絶縁膜7の表面には、例えば窒化チタン(TiN)膜8が設けられている。窒化チタン膜8は、コンタクトホール7aの側壁を含む層間絶縁膜7の表面全体を覆うように配置されることが好ましい。
【0027】
窒化チタン膜8は、層間絶縁膜7の表面から、例えばコンタクトホール7aの側壁とn
+型ソース領域3の表面との境界を覆う部分までを最低限覆うように設けられている。製造工程時のアライメント(位置合わせ)精度を考慮して、層間絶縁膜7の表面上からn
+型ソース領域3の表面の一部にまで延在されるように窒化チタン膜8が設けられていてもよいが、好ましくはn
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4の全面が窒化チタン膜8に覆われずにコンタクトホール7aに露出されていることがよい。その理由は、次の通りである。コンタクトホール7aにおけるn
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4の露出面積が大きいほど、後述するニッケル膜9との接触面積が大きくなり、コンタクト抵抗を低下させることができるからである。このため、窒化チタン膜8の、n
+型ソース領域3の表面にまで延在している部分は可能な限り少ないことが好ましい。水素プラズマ処理時にニッケル膜9から層間絶縁膜7側に拡散するニッケル原子がゲート絶縁膜5まで到達しない程度に水素プラズマ処理の処理時間が短い場合には、窒化チタン膜8は設けなくてもよい。
【0028】
コンタクトホール7aの内部には、n
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4に接するように、ニッケル膜9が設けられている。ニッケル膜9の、n
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4に接する部分(点線楕円で囲む部分)9aは、シリサイド化されており、炭化珪素半導体部(n
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4)とのオーミックコンタクトが形成されている。ニッケル膜9は、コンタクトホール7aに露出されたn
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4の表面全体を覆う。特に、n
+型ソース領域3とニッケル膜9との接触面積を大きくして、n
+型ソース領域3とのコンタクト抵抗を低下させることが好ましい。このため、ニッケル膜9は、製造工程時のアライメント精度を考慮して、炭化珪素半導体部の表面から、窒化チタン膜8の、コンタクトホール7aの側壁上や層間絶縁膜7の平坦部7b上の部分にまで延在していてもよい。
【0029】
層間絶縁膜7の平坦部7bとは、層間絶縁膜7の、コンタクトホール7aの側壁以外の表面であり、基板おもて面にほぼ平行に平坦化されている面である。窒化チタン膜8の、層間絶縁膜7の平坦部7b上の部分には、チタン(Ti)膜10が設けられている。チタン膜10は、窒化チタン膜8の、ニッケル膜9が設けられていない部分の表面全体に設けられている。すなわち、ニッケル膜9およびチタン膜10によって、窒化チタン膜8の表面(層間絶縁膜7の表面)全体が完全に覆われている。また、チタン膜10の表面には、水素プラズマ処理を行う前に酸化チタン(TiO
2)膜が形成される。この酸化チタン膜は、水素プラズマ処理時にチタン膜10の発熱を遅らせ、MOSゲート(ゲート絶縁膜5およびゲート電極6)に余分な熱が加わることを防止する機能を有する。このため、チタン膜10は、層間絶縁膜7および窒化チタン膜8を挟んでゲート電極6全体を覆うことが好ましい。
【0030】
具体的には、例えば、チタン膜10のチャネル長方向(図面横方向)の幅W1を、ゲート電極6のチャネル長方向の幅W2よりも広くすればよい。さらに、チタン膜10のチャネル幅方向(図面奥行方向)の幅をゲート電極6のチャネル幅方向の幅よりも広くしてもよい。この場合、チタン膜10の、ゲート電極6に対向する面の表面積が、ゲート電極6の、チタン膜10に対向する面の表面積よりも大きくなる。これにより、チタン膜10は層間絶縁膜7および窒化チタン膜8を挟んでゲート電極6全体を完全に覆うことができるため、チタン膜10を設けたことによる効果がさらに得られる。チャネル長方向とは、オン状態のときにp型ベース領域2(p型領域2a)の、ゲート絶縁膜5に沿った部分に形成されるn型の反転層(チャネル)に流れる主電流の流れに平行な方向である。チャネル幅方向とは、基板おもて面に平行でかつチャネル長方向と直交する方向である。
【0031】
チタン膜10の幅W1は設計条件によってゲート電極6の幅W2よりも若干狭くなる場合があるが、層間絶縁膜7および窒化チタン膜8を挟んでチタン膜10がゲート電極6全体をほぼ覆っていれば、チタン膜10を設けたことによる効果が得られる。チタン膜10の幅W1がゲート電極6の幅W2よりも若干狭くなる一例としては、半導体装置の小型化を図る場合が挙げられる。小型化を図ることで単位セルの幅が狭くなるため、層間絶縁膜7の平坦部7bのチャネル長方向の幅がゲート電極6のチャネル長方向の幅W2よりも狭くなり、ニッケル膜9が深さ方向にゲート電極6に対向する位置まで延在される。このため、チタン膜10の幅W1はゲート電極6の幅W2よりも狭くなり、チタン膜10を設けたことによる効果が小さくなるが、小型化を図ることができる。
【0032】
また、チタン膜10はニッケル膜9上に延在していない。例えば、チタン膜10がニッケル膜9上に延在している(すなわちニッケル膜9とチタン膜10とが重なっている)場合、ニッケル膜9が加熱されることでチタン膜10と接している部分でニッケルとチタンとが合金化する。この合金化により表面が荒れて凹凸が生じると、この後のメタル電極(おもて面電極パッド)形成時後に表面の凹凸がさらに大きくなりメタル電極の表面荒れが起こる。ニッケル膜9およびチタン膜10の表面には、コンタクトホール7aを埋め込むようにおもて面電極パッド(不図示)が設けられている。基板おもて面側には、パッシベーション保護膜(不図示)が設けられている。炭化珪素基板の裏面の表面層には、n
+型ドレイン層11が設けられている。ドレイン電極12は、n
+型ドレイン層11に接する。
【0033】
次に、実施の形態にかかる半導体装置の製造方法について説明する。
図2〜8は、実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、
図2に示すように、n
-型ドリフト層1となる炭化珪素基板(炭化珪素ウェハ)のおもて面側に、一般的な方法によりp型ベース領域2、n
+型ソース領域3、p
+型コンタクト領域4、ゲート絶縁膜5およびゲート電極6からなるMOSゲート構造を形成する。次に、炭化珪素基板のおもて面の全面に、ゲート電極6を覆うように層間絶縁膜7を形成する。次に、フォトリソグラフィにより、コンタクトホール7aの形成領域に対応する部分を開口したレジストマスク(不図示)を形成する。
【0034】
次に、レジストマスクをマスクとしてエッチングを行い、層間絶縁膜7を深さ方向に貫通するコンタクトホール7aを形成してn
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4を露出させる。次に、アッシング(灰化)処理により、コンタクトホール7aの形成に用いたレジストマスクを除去する。このアッシング処理により、コンタクトホール7aに露出されたn
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4の表面に酸化膜(不図示)が形成される。このため、フッ化水素(HF)を用いて炭化珪素基板の洗浄処理を行い、n
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4の表面に生じた酸化膜を除去することで、n
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4を再度露出させる。
【0035】
次に、
図3に示すように、例えばスパッタリングにより、n
+型ソース領域3、p
+型コンタクト領域4および層間絶縁膜7の表面に窒化チタン膜8を形成する。次に、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、コンタクトホール7aに対応する部分を開口したレジストマスク(不図示)を形成する。次に、このレジストマスクをマスクとしてエッチングを行い、窒化チタン膜8の、n
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4上の部分を除去する。上述したように、窒化チタン膜8は、層間絶縁膜7の表面全体(コンタクトホール7aの側壁および層間絶縁膜7の平坦部7b)を覆うことが好ましい。このため、アライメント精度を考慮して、層間絶縁膜7の表面(特に、コンタクトホール7aの側壁とn
+型ソース領域3の表面との境界7c付近)が露出されないように、窒化チタン膜8をエッチングするためのレジストマスクを形成することが好ましい。
【0036】
次に、アッシング処理により、窒化チタン膜8の形成に用いたレジストマスクを除去する。このアッシング処理により、コンタクトホール7aに露出されたn
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4の表面炭化珪素上に酸化膜(不図示)が形成される。このため、ニッケル膜9の形成前に行う前処理として、フッ化水素を用いて炭化珪素基板の洗浄処理を行い、n
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4の表面に生じた酸化膜を除去することで、n
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4を再度露出させる。前述したコンタクトホール7aの形成の後のフッ化水素を用いた洗浄処理を省略した場合は、この窒化チタン膜8のエッチング後に行うフッ化水素処理とかねてもよい。なお、上述した窒化チタン膜8を形成しない場合には、コンタクトホール7aの形成後に、ニッケル膜9の形成前に行う前処理として、フッ化水素を用いた洗浄処理を行えばよい。
【0037】
次に、例えばスパッタリングにより、n
+型ソース領域3、p
+型コンタクト領域4および窒化チタン膜8の表面に、ニッケル膜9を形成する。ニッケル膜9の厚さは、例えば10nm以上200nm以下程度とする。ニッケル膜9の厚さは少なくともニッケル膜9と炭化珪素基板との界面を十分に加熱することができる程度に発熱量を確保することができる厚さであり、かつ熱伝導ロスやオーミックコンタクトの形成に必要なエネルギー不足が生じず、熱拡散による周辺への熱伝導を防止することができる程度にニッケル膜9が炭化珪素基板との界面に近い(薄い)ことが望ましい。
【0038】
次に、
図4に示すように、フォトリソグラフィにより、ニッケル膜9の表面に、チタン膜10の形成領域に対応する部分を開口したレジストマスク21を形成する。すなわち、コンタクトホール7aに埋め込まれた状態のレジストマスク21が形成される。このとき、アライメント精度を考慮して、n
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4の表面(特に、コンタクトホール7aの側壁とn
+型ソース領域3の表面との境界7c付近)が露出されないようにレジストマスク21を形成することが好ましい。その理由は、この後に行うレジストマスク21をマスクとしたエッチング後に、n
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4の表面全体に確実にニッケル膜9を残すことができ、低コンタクト抵抗とすることができるからである。例えば、少なくとも、コンタクトホール7aの側壁と層間絶縁膜7の平坦部7bとの境界7dを覆うように、レジストマスク21を層間絶縁膜7の上方に延在させればよい。
【0039】
次に、レジストマスク21をマスクとしてエッチングを行い、ニッケル膜9を選択的に除去する。これにより、レジストマスク21の開口部21aに窒化チタン膜8が露出され、かつn
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4の表面全体を覆うようにニッケル膜9が残る。次に、
図5に示すように、レジストマスク21を残したまま、例えばスパッタリングを行い、レジストマスク21および窒化チタン膜8の表面にチタン膜10を形成する。チタン膜10の厚さは、ニッケル膜9と同程度の膜厚でよく、例えば40nm以上150nm以下程度とする。
【0040】
次に、
図6に示すように、例えば酸素(O
2)プラズマ雰囲気に炭化珪素基板全体(炭化珪素基板上に形成されているものを含む素子全体)をさらす(以下、酸素プラズマ処理とする)。この酸素プラズマ処理によってチタン膜10の表面層を酸化し、チタン膜10に強固に結合され、かつ化学的に安定した(化学反応しにくい)酸化チタン膜10aを形成する。この酸素プラズマ処理は、所定の厚さでチタン膜10が残るような条件で行う。酸化チタン膜10aの厚さは、例えば20nm以上100nm以下程度とする。酸化チタン膜10aの形成時、ニッケル膜9上にはレジストマスク21およびチタン膜10が積層されているため、ニッケル膜9は露出されていない。このため、ニッケル膜9は酸化されない。酸素プラズマ処理に代えて、例えば自然酸化など一般的な酸化処理を用いて酸化チタン膜10aを形成してもよい。
【0041】
次に、
図7に示すように、ニッケル膜9を選択的に除去するために用いたレジストマスク21を、レジスト剥離液を用いて除去する。レジストマスク21とともに、チタン膜10および酸化チタン膜10aの、レジストマスク21上の部分が除去される(リフトオフ)。これにより、コンタクトホール7aの内部に残るニッケル膜9が露出されるとともに、窒化チタン膜8の表面のニッケル膜9が形成されていない部分全体にチタン膜10および酸化チタン膜10aが残る。すなわち、炭化珪素基板のおもて面側にニッケル膜9および酸化チタン膜10aが露出される。チタン膜10は、酸化チタン膜10aに覆われ、露出されていない。
【0042】
次に、水素プラズマ雰囲気に炭化珪素基板全体(炭化珪素基板上に形成されているものを含む素子全体)をさらす(水素プラズマ処理)。これにより、ニッケル膜9および酸化チタン膜10aが水素プラズマ雰囲気にさらされる。この水素プラズマ処理において、水素プラズマ雰囲気中の水素ラジカル(水素原子または水素ラジカル)が吸着して水素分子となったときに放出される結合エネルギーを受け取り、ニッケル膜9の表面付近が発熱し加熱される。一方、酸化チタン膜10aは水素プラズマ雰囲気にさらされることによって徐々に還元され、その厚さが薄くなる。チタン膜10は、酸化チタン膜10aに覆われているため、酸化チタン膜10aの還元が終了するまでは水素プラズマ雰囲気にさらされない。
【0043】
水素プラズマ処理によるニッケル膜9の発熱による熱履歴は、炭化珪素基板側へと伝導される。これによって、
図8に示すように、炭化珪素半導体部(n
+型ソース領域3およびp
+型コンタクト領域4)が加熱されて、ニッケル膜9の、炭化珪素半導体部に接する部分9aがシリサイド化されることで、炭化珪素半導体部とのオーミックコンタクトが形成される。一方、ニッケル膜9の、炭化珪素半導体部に接する部分9a以外の部分は、シリサイド化されず、水素プラズマ処理前の状態で維持される。また、炭化珪素基板全体(素子表面全体)に水素ラジカルがあたる(照射される)が、水素ラジカルからエネルギーを受けて発熱が生じるのは、水素ラジカル雰囲気にさらされた遷移金属、すなわちニッケル膜9のみである。チタン膜10も遷移金属であるが、酸化チタン膜10aに覆われていることで水素ラジカル雰囲気にさらされない。このため、酸化チタン膜10aの還元が終了して露出されるまではチタン膜10は発熱しない。このため、酸化チタン膜10aの還元が終了するまではニッケル膜9のみが発熱し加熱される。すなわち、ニッケル膜9の発熱が始まった時点から、酸化チタン膜10aの還元が終了する(チタン膜10が露出される)までの時間差を利用してニッケル膜9のみを加熱し、ニッケル膜9の、炭化珪素半導体部に接する部分9aをシリサイド化する。したがって、酸化チタン膜10aの還元が終了する前または終了と同時にプラズマ処理が終了するように各部の寸法および水素プラズマ処理条件を設定することで、MOSゲートに余分な熱を加えることなく、炭化珪素半導体部とのオーミックコンタクトを形成することができる。
【0044】
水素ラジカルが吸着して水素分子となったときに放出される結合エネルギーにより生じたニッケル膜9の発熱による上昇温度は、炭化珪素半導体部とのオーミックコンタクトを形成可能な温度である例えば900℃以上程度、望ましくは1000℃以上程度である。チタン膜10の発熱開始前までに、ニッケル膜9の発熱による上昇温度は、例えば、ニッケル膜9の厚さ、酸化チタン膜10aの厚さ、水素プラズマのプラズマ密度および電力を適宜設定することで調整すればよい。上述したようにニッケル膜9の温度が短時間で高温度に上昇するほど、低コンタクト抵抗化させることができる。このため、ニッケル膜9の発熱による上昇温度が可能な限り短時間(例えば数十秒間)で高温度になるように、ニッケル膜9の厚さ、水素プラズマのプラズマ密度および電力を設定する。そして、ニッケル膜9の発熱による上昇温度が所定温度になるまでにチタン膜10が露出されないように、酸化チタン膜10aの厚さを設定することが好ましい。
【0045】
水素プラズマ処理に用いる水素プラズマは、例えば、チャンバー内に導入したほぼ100%の純度の水素(H
2)ガスを所定圧力に減圧し、マイクロ波による電界によって加速させた電子とガス分子との衝突電離を利用して生成されたマイクロ波プラズマである。マイクロ波として、例えば、産業上使用可能な周波数帯であり、かつ密度の高い水素プラズマを生成可能な周波数1GHz以上のマイクロ波、より好ましくは周波数2.45GHzのマイクロ波を用いるのが好ましい。また、密度の高い水素プラズマを生成するために、例えば10Pa以上100Pa以下程度に水素ガスを減圧するのがよい。ここでは、マイクロ波によって形成された水素プラズマ雰囲気を、単に水素プラズマ雰囲気と示す。
【0046】
上記プラズマ条件は、例えば、水素プラズマ雰囲気を生成する際のマイクロ波電力を700W以上程度、好ましくは1000W以上程度とし、炭化珪素基板全体を水素プラズマ雰囲気にさらす時間(水素プラズマ処理時間)が短いほど好ましい。その理由は、水素プラズマ処理時間が長い場合、水素プラズマ処理中にニッケル膜9の発熱が炭化珪素基板全体に熱伝導され、炭化珪素基板全体が加熱されてしまうからである。ニッケル膜9の発熱に伴う温度上昇は、水素プラズマのプラズマ密度の高さおよび電力の大きさに依存して高くなる。このため、水素プラズマ雰囲気にさらされる短い時間内にニッケル膜9が水素ラジカルのエネルギーを受けて所定温度に発熱するように、水素プラズマのプラズマ密度および電力を設定すればよい。
【0047】
また、水素プラズマ処理時、窒化チタン膜8の表面(層間絶縁膜7の表面)全体がニッケル膜9およびチタン膜10によって完全に覆われていることで、次の効果が得られる。ニッケル膜9は、上述したように、水素ラジカルからエネルギーを受け取って発熱する。このため、ニッケル膜9が自身の発熱によって温度上昇している間は、ニッケル膜9にあたった(照射された)水素ラジカルはニッケル膜9を通過しない。すなわち、ニッケル膜9は、水素プラズマ処理時に水素ラジカルを遮断するバリアメタルとして機能する。チタン膜10は、水素プラズマ処理時に水素ラジカルを吸蔵し、水素ラジカルを遮断するバリアメタルとして機能を有する。したがって、水素ラジカルがMOSゲートに侵入することを防止することができる。
【0048】
また、上述したニッケル膜9に代えて、ニッケル以外の遷移金属からなる金属膜をおもて面電極として形成した場合においても、ニッケル膜9と同様の効果を奏する。遷移金属とは、元素周期表の第3族元素から第11族元素までの間に存在する元素(金属)である。好適には、おもて面電極を構成する遷移金属は、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)または銀(Ag)からなる金属、もしくはこれらの金属を主成分として1つ以上含む合金であるのがよい。より好適には、おもて面電極を構成する遷移金属は、ニッケル、チタン、タンタルまたはタングステンからなる金属、もしくはこれらの金属を主成分として1つ以上含む合金であるのがよい。その理由は、ニッケル、チタン、タンタルおよびタングステンが他の遷移金属に比べて、材料コストが安く、かつ半導体部とのオーミックコンタクトを形成しやすいため、実用性が高いからである。
【0049】
次に、例えばスパッタリングにより、基板おもて面側に、コンタクトホール7aに埋め込むように、おもて面電極パッドとして例えばアルミニウム(Al)−シリコン(Si)からなる金属膜を形成する。次に、一般的な方法により、パッシベーション保護膜や、おもて面側の残りの構成部を形成する。次に、一般的な方法により、炭化珪素基板の裏面に、n
+型ドレイン層11を形成する。次に、例えばおもて面電極の形成と同様の方法により、裏面電極として、n
+型ドレイン層11とのオーミックコンタクトをなすドレイン電極12を形成する。次に、ドレイン電極12に接する裏面電極パッドを形成する。その後、チップ状に切断(ダイシング)することにより、
図1に示すMOSFETが完成する。
【0050】
以上、説明したように、実施の形態によれば、コンタクトホールを形成した後、チタン膜や酸化チタン膜を形成する工程を挟まずにニッケル膜を形成することで、ニッケル膜を形成する前に、炭化珪素半導体部の表面に例えば自然酸化や窒化チタン膜の形成などにより生じた酸化膜を除去することができる。これにより、炭化珪素半導体部とニッケル膜とを直接接触させることができるため、その後のオーミックコンタクトを形成するための水素プラズマ処理においてニッケル膜をシリサイド化することができる。また、ニッケル膜を形成した後にチタン膜および酸化チタン膜を形成することで、ニッケル膜を形成する前にフッ化水素を用いた洗浄処理により炭化珪素半導体部の表面の酸化膜を除去したとしても、チタン膜の表面の酸化チタン膜は除去されない。これにより、チタン膜を酸化チタン膜で覆った状態で、オーミックコンタクトを形成するための水素プラズマ処理を行うことができるため、酸化チタン膜が還元されている間はチタン膜が発熱しない。また、ニッケル膜を形成した後にチタン膜および酸化チタン膜を形成することで、ニッケル膜の表面に酸化ニッケル膜が形成されない。
【0051】
例えば比較例1として、仮に、チタン膜、酸化チタン膜およびニッケル膜の順に形成する場合、チタン膜および酸化チタン膜の形成後、例えば制御性の高いドライエッチングによってチタン膜を選択的に除去することでコンタクトホールに炭化珪素半導体部を露出させる。その後、ドライエッチングに用いたレジストマスクを除去する際に、コンタクトホールに露出された炭化珪素半導体部の表面が酸化されてしまう。このため、ニッケル膜の形成前にフッ化水素を用いた洗浄工程を行い、炭化珪素半導体部の表面に生じた酸化膜を除去するが、この洗浄工程により酸化チタン膜の厚さが薄くなったり、最も悪い状態では酸化チタン膜が除去されチタン膜が露出される虞がある。酸化チタン膜の厚さが薄くなった場合、ニッケル膜の発熱が始まった時点から、酸化チタン膜の還元が終了するまでの時間が短くなり、炭化珪素半導体部とのオーミックコンタクトを形成可能な温度までニッケル膜の温度を十分に上昇させることができない虞がある。チタン膜が露出された状態で水素プラズマ処理を行った場合、ニッケル膜よりも先にチタン膜が加熱され、チタン膜で覆った部分に余分な熱履歴が加わってしまうため、素子特性が劣化してしまう。
【0052】
また、例えば比較例2として、仮に、チタン膜、ニッケル膜および酸化チタン膜の順に形成する場合、チタン膜の表面を酸化して酸化チタン膜を形成する際に、ニッケル膜の表面も酸化され酸化ニッケル膜が形成される。このニッケル膜の表面の酸化ニッケル膜は水素プラズマ処理時に酸化チタン膜と同様に還元されるため除去可能であるが、酸化ニッケル膜が還元されるまでニッケル膜を発熱させることができない。このため、ニッケル膜の発熱が始まった時点から、酸化チタン膜の還元が終了するまでの時間が短くなり、炭化珪素半導体部とのオーミックコンタクトを形成可能な温度までニッケル膜の温度を十分に上昇させることができない虞がある。また、チタン膜を形成した後にニッケル膜を形成するため、上記比較例1と同様に、チタン膜を選択的に除去する際に、コンタクトホールに露出された炭化珪素半導体部の表面が酸化されてしまう。フッ化水素を用いた洗浄工程を行わずにニッケル膜を形成した場合には、炭化珪素半導体部とニッケル膜との間に酸化膜が残ることで、ニッケル膜をシリサイド化することができないため、炭化珪素半導体部とのオーミックコンタクトを形成することができない。
【0053】
それらに対して、実施の形態においては、上述したように、炭化珪素半導体部とニッケル膜とを直接接触させることができるため、ニッケル膜をシリサイド化することができる。そして、ニッケル膜の表面にニッケル酸化膜が形成されず、かつチタン膜の表面に酸化チタン膜を形成した状態で水素プラズマ処理を行うことができる。このため、上記比較例1,2に生じる問題は起きない。すなわち、実施の形態によれば、ニッケル膜をシリサイド化することができるため、炭化珪素半導体部とのオーミックコンタクトを形成することができる。また、チタン膜を酸化チタン膜で覆った状態で水素プラズマ処理を行うことができるため、酸化チタン膜が還元されている間はチタン膜が発熱しない。これにより、チタン膜で覆った部分、すなわちチタン膜の下側(炭化珪素基板側)に位置するMOSゲートに余分な熱履歴が加わらないため、素子特性が劣化することを防止することができる。また、ニッケル膜を露出させた状態で水素プラズマ処理を行うことができるため、水素プラズマ処理の開始と同時にニッケル膜を発熱させることができる。これにより、ニッケル膜の温度を短時間でかつ高温度に上昇させることができるため、コンタクト抵抗の低い良好なオーミックコンタクトを形成することができる。
【0054】
また、実施の形態によれば、ニッケル膜を形成した後にチタン膜を形成するため、ニッケル膜を選択的に除去するためのレジストマスクを残したままチタン膜を形成し、その後にレジストマスクを除去するだけで、ニッケル膜を形成した部分以外の部分(層間絶縁膜の平坦部)全体にチタン膜を容易に残すことができる。これにより、ニッケル膜およびチタン膜によって層間絶縁膜の表面全体を完全に覆うことができ、その後、チタン膜の表面に酸化チタン膜を形成することで、ニッケル膜および酸化チタン膜を露出させた状態で水素プラズマ処理を行うことができる。水素プラズマがゲート絶縁膜に侵入した場合、ゲート絶縁膜が劣化することが発明者によって確認されているが、本発明においては、層間絶縁膜の表面全体を覆うニッケル膜およびチタン膜が水素ラジカルを遮断するバリアメタルとして機能する。このため、水素ラジカルが層間絶縁膜を通ってMOSゲート側に侵入することを防止することができ、水素ラジカルによってゲート絶縁膜が劣化することを防止することができる。これにより、素子特性が劣化することを防止することができる。
【0055】
また、実施の形態によれば、ニッケル膜の温度を短時間でかつ高温度に上昇させることで、ニッケル膜の表面に炭素(C)が析出する前、または炭素の析出量が増大する前に、ニッケル膜をシリサイド化することができる。さらに、ニッケル膜の、シリサイド化された部分の内部または表面に析出する炭素は水素ラジカルと反応し、例えばメタン(CH
4)ガスのような炭化水素となって外部に排出される。このため、ニッケル膜の表面への炭素の析出量を低減させることができる。
【0056】
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。また、上述した実施の形態では、炭化珪素基板を用いた場合を例に説明しているが、シリコンを用いた半導体基板(シリコン基板)においても同様の効果を奏する。なお、シリコン基板を用いる場合、水素ラジカルが吸着し水素分子となるときに放出する結合エネルギーによる遷移金属膜の発熱温度は、シリコン基板の状態や遷移金属膜の融点などに基づいて設定される。また、上述した実施の形態では、MOSFETを例に説明しているが、例えば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などの他のMOS型半導体装置や、絶縁膜や半導体部などが加熱されることによって素子特性が変化する虞のある素子構造の半導体装置に適用可能である。