(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スタジアムにおいては、サッカーや陸上競技等のスポーツだけでなく、コンサート等のイベントが行なわれることもある。この場合、天然芝を用いたスタジアムでは、天然芝を傷めないように、天然芝の上に養生部材を敷き詰め、その上にステージや観客席を着脱可能に設置(仮設)することがある。しかし、この場合、天然芝に光や風が届かず、天然芝を傷めることがある。また、養生部材を敷き詰めるために、大きな労力が必要となる。特許文献1に記載の育成装置においても、仕切床を配置するための支柱を強固に取り付けるため、育成装置の配置に手間が掛かる。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、天然芝の傷みの低減、育成を図りながら、床の設置や取り外しを容易に行なうことができる仮設用構造体及びこれを用いた仮設床を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する仮設用構造体は、天然芝が植えられたピッチ上に設置される仮設用構造体であって、前記ピッチとの間で通気を確保した高さで配置される床パネルを、下方から支持するトラス構造を備えた支持部材と、前記ピッチに対して人工光を照射する照明部を前記支持部材に取り付ける照明取付部と、前記支持部材を前記ピッチ上に移動させるために、前記支持部材の下方に取り付けられる移動部材とを備え、前記支持部材の上部には、前記床パネルを固定する固定部を設けている。これにより、移動部材を用いて仮設用構造体を容易に天然芝の上に配置することができる。更に、設置後には、通気を確保した上で天然芝に対して人工光を照射することにより芝育成を行ないながら、床パネル上でイベント等を行なうことができる。
【0008】
上記仮設用構造体において、前記照明取付部は、前記支持部材の延在方向に対して直交する方向に伸縮可能な構造を有し、前記照明取付部は、前記床パネルの一辺の長さに対応した長さに伸長することが好ましい。これにより、照明取付部を伸長させて、隣接する仮設用構造体との間隔を確保することができる。
【0009】
上記仮設用構造体において、前記照明取付部としてスライドレールを用い、前記スライドレールに前記照明部を設けることが好ましい。これにより、照明部を効率よく広範囲に広げて配置することができるため、簡単な構成で、人工光を天然芝に効率よく照射することができる。
【0010】
上記仮設用構造体において、前記支持部材の下方に送風を行なう送風部材を設けることが好ましい。これにより、人工光によって芝育成する際に、送風部材によって天然芝の周囲に空気の流れを作るため、光合成を促進して、良好な芝育成を行なうことができる。
【0011】
上記課題を解決する仮設床は、仮設用構造体を、前記支持部材の延在方向に対して直交する方向に並列させて、隣接させた仮設用構造体の支持部材の上部に床パネルを架け渡す。これにより、移動部材を用いて仮設用構造体を容易に天然芝の上に配置することができ、設置後には、天然芝に対して人工光を照射して芝育成を行なうことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、天然芝の傷みの低減、育成を図りながら、床の設置や取り外しを容易に行なうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1〜
図5を用いて、天然芝の上に設置される仮設床及びこれを構成するために用いる仮設用構造体を具体化した実施形態について説明する。この仮設床は、サッカー等を行なうスタジアムの天然芝の上方に、イベント等の開催前に設置(仮設)される。
【0015】
図1は、仮設用構造体20の斜視図である。
図1に示すように、仮設用構造体20は、上方に頂部を設けた三角柱形状で長手方向に延在させたトラス構造の支持部材25を備えている。この支持部材25は、2本の下弦材25Lと上弦材25Uと複数の斜材とから構成されている。2本の下弦材25Lは、平行に延在している。そして、上弦材25Uは、2本の下弦材25Lの中央位置の上方に配置される。更に、複数の斜材は、上弦材25Uと各下弦材25Lとの間に設けられている。本実施形態では、下弦材25Lから上弦材25Uまでの高さは、例えば500mm程度に構成されている。
【0016】
上弦材25Uには、後述するように、床パネルを固定するための固定部が形成されている。この固定部としては、例えば、上部に突出した突起部を用いることができる。また、2本の下弦材25Lは、連結軸26によって連結されている。連結軸26は、仮設用構造体20の長手方向と直交する方向(短手方向)に延びている。下弦材25Lの端部における連結軸26には、図示しない係合部(例えば係合凸部及び係合凹部)が、支持部材25の外側に形成されている。この連結軸26の係合部は、他の仮設用構造体20の係合部に係合することにより、仮設用構造体20の延在方向(長手方向)に隣接配置された他の仮設用構造体20と一体固定される。
【0017】
更に、下弦材25Lの端部における連結軸26には、両端部の下方に、鉛直方向に延びる取付軸22を介して、移動部材21がそれぞれ固定されている。また、支持部材25の中央の下方において移動部材21が固定されている。移動部材21は、球状タイヤと、この球状タイヤの上部を覆う略半円殻形状のカバー部とを有している。本実施形態では、この移動部材21によって支持部材25が、ピッチP1から所定高さをおいて移動可能に支持されている。本実施形態では、ピッチP1から支持部材25の下弦材25Lまでの高さが、例えば500mm程度となるように、仮設用構造体20が構成されている。
また、取付軸22の移動部材21側端部同士は、連結軸27で結合されている。連結軸27は、連結軸26の下方で連結軸26と平行に配置されている。
【0018】
図2は、複数の仮設用構造体20をピッチP1上に配置した斜視図であり、
図3は、
図2の仮設用構造体20の上に、複数の矩形の床パネル15を配置して構成した仮設床10の斜視図である。
【0019】
本実施形態では、複数の仮設用構造体20を直列に配置し、これら直列配置された仮設用構造体20を並列させることにより、ピッチP1の全面を覆うように配置させる。
図2においては、仮設用構造体20の長手方向の片端部周辺のみが示されている。この仮設用構造体20は、長手方向の両端部及び中央に、2つずつの移動部材21を備えている。ここでは、ピッチP1の端部に配置された仮設用構造体20は、一端部の移動部材21がピッチP1の外に位置するように配置されている。
【0020】
図2に示すように、各下弦材25Lと斜材とが接続する各位置の下には、両下弦材25Lに跨るように、照明取付部としてのスライドレール30が取り付けられている。これらのスライドレール30は、短手方向に伸長可能に取り付けられている。本実施形態では、短手方向のいずれか一方に伸長可能とする。このスライドレール30の伸長時の長さは、床パネル15の一辺の長さに対応している。更に、スライドレール30の先端部(仮設用構造体20の短手方向)には、図示しない連結部(例えば留め金等)が設けられている。この連結部は、短手方向に隣接された他の仮設用構造体20と連結する。
【0021】
図2に示すように、このスライドレール30には、複数のLED(Light Emitting Diode)部31から構成される照明部が取り付けられている。
図4及び
図5は、仮設床10の側面断面図及び正面断面図である。
図4及び
図5に示すように、本実施形態においては、各LED部31は、直管形状をしており、2つのスライドレール30の間に配置され、それぞれのスライドレール30に各端部が保持されている。また、スライドレール30が伸長された場合に、LED部31を保持するスライドレール30の保持部が等間隔で設けられている。本実施形態のLED部31は、例えば天然芝から300mm以上、通気を確保した間隔(高さ)をおいて設置されており、人工光を下方に(天然芝に)向かって照射するように配置されている。
【0022】
図3には、上述した仮設用構造体20を用いた仮設床10を示している。この仮設床10においては、仮設用構造体20の上に、複数の床パネル15が配置されている。各床パネル15は、長方形状の薄板で構成されており、短手方向における仮設用構造体20の配置幅に対応する長さを有している。更に、床パネル15には、仮設用構造体20の上弦材25Uの固定部の位置に対応するように被固定部が形成されている。被固定部としては、例えば、固定部と連結して固定するための係合孔を用いることができる。従って、床パネル15は、仮設用構造体20がピッチP1上に配置された場合に、2つの仮設用構造体20の上弦材25Uの上に載置され、上弦材25U上に固定される。
【0023】
次に、以上のように構成された仮設用構造体20を用いて、仮設床10を設置する手順について説明する。
図4及び
図5に示すように、ピッチP1の下方の地中には、基礎F1が部分的に設けられている。基礎F1は、ピッチP1上に配置される仮設用構造体20の移動部材21が対応する位置に設けられている。なお、ピッチP1上に加わる荷重が小さい場合には、ピッチP1の地中に基礎F1がなくてもよい。
【0024】
そこで、長手方向に仮設用構造体20を、ピッチP1上に隣接させて配置する。この場合、移動部材21が、ピッチP1の端部の外側や基礎F1上になるように配置する。また、長手方向に隣接された仮設用構造体20の連結部同士を連結して、一列に配置された仮設用構造体20を一体化する。
【0025】
次に、仮設用構造体20の短手方向に、スライドレール30の伸長長さの間隔を空けて、仮設用構造体20を隣接配置する。
そして、短手方向に隣接された仮設用構造体20間に、一方の各仮設用構造体20のスライドレール30を伸長させる。この場合、スライドレール30の伸長により、LED部31が、仮設用構造体20の間に、ほぼ等間隔に配置される。そして、伸長したスライドレール30の先端部を隣接する仮設用構造体20に連結する。
この隣接配置を繰り返すことにより、必要な面積で、仮設用構造体20をピッチP1上に配置する。
【0026】
図2に示すように、仮設用構造体20の配置が終了した場合、各仮設用構造体20の移動部材21を、タイヤ止め等により固定する。そして、各仮設用構造体20の上弦材25Uに架け渡すように、床パネル15を配置して固定する。以上により、仮設床10が完成する。
また、仮設床10をピッチP1上から撤去する場合には、設置の場合と逆の作業を行なう。
【0027】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の仮設床10は、複数の仮設用構造体20と、この上に固定された複数の床パネル15とから構成されている。仮設用構造体20は、床パネル15を支持するためのトラス構造の支持部材25と、これを支持しタイヤを備えた移動部材21と、通気を確保した高さで人工光を下方に照射するLED部31とを備えている。このため、仮設用構造体20を用いて、ピッチP1の上方に仮設床10を設置した状態においても、ピッチP1の天然芝に人工光を照射して天然芝を育成することができる。更に、仮設床10を設置する場合には、タイヤを備えた仮設用構造体20を移動させて床パネル15を固定すればよいので、仮設床10を効率よく設置及び撤去することができる。
【0028】
(2)本実施形態の仮設用構造体20は、LED部31が取り付けられた短手方向に伸縮可能なスライドレール30を有する。このため、仮設床10を設置する場合には、スライドレール30を伸長してLED部31の間隔を広げて、ピッチP1に植えられた芝にLED部31からの光を効率よく照射することができる。また、仮設用構造体20は、使用しない場合には、スライドレール30を縮小して収納することができるので、保管時のスペースを少なくすることができる。
【0029】
(3)本実施形態において、スライドレール30の伸長時の長さは、床パネル15の一辺の長さに対応している。床パネル15は、長方形状の薄板で構成されており、短手方向における仮設用構造体20の配置幅に対応する長さを有している。このため、スライドレール30を伸長させて、隣接する仮設用構造体との間隔を確保することができる。
【0030】
(4)本実施形態の仮設用構造体20は、球状タイヤを有した移動部材21を有している。このため、芝との設置面積を少なくするとともに、より自由に移動させることができるので、仮設用構造体20の配置の調整を効率よく行なうことができる。
【0031】
(5)本実施形態においては、仮設用構造体20の連結軸26の係合部を係合することにより、長手方向に配置された仮設用構造体20同士を一体固定する。これにより、タイヤ止めによる球状タイヤの固定だけでなく、長手方向における仮設用構造体20の位置を強固に固定することができる。
【0032】
(6)本実施形態において、仮設用構造体20のスライドレール30の先端部には、連結部が設けられている。この連結部は他の仮設用構造体20のスライドレール30の連結部と連結する。これにより、仮設用構造体20の短手方向への移動を規制することができるので、仮設用構造体20の位置を強固に固定することができる。
【0033】
(7)本実施形態の仮設用構造体20は、床パネル15を固定する固定部を備えた上弦材25Uを有する支持部材25を備えている。このため、支持部材25に載置される床パネル15を固定することができる。更に、この床パネル15は、2つの仮設用構造体20に跨るように配置される。これにより、ピッチP1上において、短手方向における仮設用構造体20の位置を強固に固定することができる。
【0034】
また、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の仮設用構造体20は、通気を確保するために、LED部31から、天然芝が植わったピッチP1までは300mm以上の間隔をおいて設置される。天然芝からLED部31までの高さはこれに限定されず、天然芝の周囲の空気が流れる(風が通る)隙間があればよい。また、天然芝の周囲の空気を流すための送風部材としての空調機を設けて、通気を確保してもよい。この空調機は、例えば、ピッチP1の外側に配置した送風機であってもよいし、芝に対して風を流す流路を備えた空調装置であってもよい。この場合、LED部31から芝への光の照射を妨げないために、LED部31の上部に風を水平方向に流す管路を設け、この管路を用いてLED部31の下方の空間に送風することが好ましい。
【0035】
・上記実施形態の仮設用構造体20は、2本の下弦材25Lと1本の上弦材25Uと複数の斜材から構成されるトラス構造の支持部材25を有している。支持部材25のトラス構造は限定されるものではなく、斜材と鉛直材とを備えたトラス構造や、小梁を備えたトラス構造を用いることも可能である。更に、上弦材25Uが下弦材25Lと同じく2本のトラス構造を用いてもよい。この場合には、2本の上弦材25Uによって構成される最上面に、床パネル15の端部を配置する。
【0036】
・上記実施形態の仮設用構造体20は、長手方向の両端部及び中央部に、2つずつ配置された移動部材21を有している。移動部材21は、球状タイヤを有する構成に限定されない。例えば、全方向に回転可能なターフタイヤ等を用いることも可能である。また、移動部材21の数や配置も限定されるものではない。例えば、支持部材25の端部に取り付けられる移動部材には1つの球状タイヤを有し、支持部材25の中央に配置される移動部材21には複数の球状タイヤを備えた構成を用いることも可能である。
【0037】
・上記実施形態では、矩形の床パネル15を配置して仮設床10を構成した。床パネル15は矩形に限定されるものではない。例えば、複数の仮設用構造体20を用いて、三角形や六角形に配置するようにしてもよい。この場合には、配置形状に合わせた床パネル15を用いる。そして、仮設用構造体20は、長手方向に配置された仮設用構造体20とのみ連結する係合部だけでなく、例えば三角形や六角形の頂点の角度において他の仮設用構造体20と係合可能となる係合部を設ける。
【0038】
・上記実施形態の仮設用構造体20は、照明部を構成する複数のLED部31を取り付けたスライドレール30を備えている。仮設用構造体20に取り付けられる照明部は、この構成に限定されない。例えば、仮設用構造体20の設置後に、スライドレール30に照明部を取り付ける構成としてもよい。この場合、LEDがチューブ内に格納された照明部を用いることも可能である。更に、上記実施形態の仮設用構造体20のスライドレール30は、一方向に伸長させる構造とした。これに代えて、スライドレール30を仮設用構造体20の両側に伸長させるようにしてもよい。この場合、利用時には、スライドレール30を、隣接する仮設用構造体20のスライドレール30に接続させる。