(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明のオレフィン重合用触媒、例えば、プロピレン重合用触媒は、少なくとも後述する[A−1]、[A−2]、[B]および[C]の成分を含むことを必須とする。
以下、オレフィン重合用触媒、例えば、プロピレン重合用触媒および該プロピレン重合用触媒を用いたプロピレン系重合体の製造方法などについて、項目毎に詳細に説明する。
【0030】
I.オレフィン重合用触媒の触媒成分
本発明のオレフィン重合用触媒、例えば、プロピレン重合用触媒は、少なくとも[A−1]、[A−2]、[B]および[C]の成分を含むことを必須とする。
【0031】
1.成分[A−1]
成分[A−1]は、オレフィンマクロマーを生成する重合用触媒を形成するメタロセン化合物である。但し、オレフィンマクロマーを生成する重合用触媒を形成するメタロセン化合物とは、70℃でプロピレン単独重合を行った場合に、末端ビニル率(Rv)が0.5以上を満たすプロピレン単独重合体を生成する重合用触媒を形成するメタロセン化合物である。
ここで、末端ビニル率(Rv)は、下式で定義する。
Rv=Mn/21000×[Vi]
(式中、Mnは、GPCにより求めた数平均分子量、[Vi]は、
13C−NMRより算出する1000C当りの末端ビニル基の数である。)
【0032】
オレフィンマクロマー生成について、以下に説明する。
プロピレンの重合においては、一般的にβ水素が脱離して、下記構造式(2−b)に示すビニリデン構造の末端が生成する。また、水素を用いた場合には、通常水素へ連鎖移動が優先的に起こり、構造式(2−c)に示すような飽和末端(イソブチル構造)が末端に生成する。
しかしながら、特殊な構造の錯体を用いた場合には、β−メチル脱離と一般に呼ばれる特殊な連鎖移動反応が起こり、構造式(2−a)に示すプロペニル構造(ビニル構造)を末端にもったポリマーが生成する(参照文献:Macromol.Rapid Commun.2000,21,1103−1107)。
また、本発明で例示する非常に特殊な構造の錯体(一般式(a1)で表される化合物)を用いた場合には、水素を用いた場合にも、驚くべきことに、活性は増大するものの、優先的にβメチル脱離反応がおこり、構造式(2−a)のプロペニル構造(ビニル構造)が主に生成することが分かっている。
【0034】
構造式(2−a)、構造式(2−b)、構造式(2−c)のうち、メタロセン錯体やチーグラー触媒で共重合可能なものは、構造式(2−a)に示すビニル構造のみである。したがって、全末端構造の内、共重合可能な末端ビニル率が高いほうが、マクロマーとして効率が高いことを意味する。
したがって、本発明に係るマクロマー生成可能なメタロセン化合物は、70℃でプロピレン単独重合を行った場合に生成するプロピレン単独重合体の末端ビニル率が0.50以上であり、好ましくは0.65以上、更に好ましくは0.75以上、理想的には1.0(すべての末端がビニル基)となるメタロセン化合物である。
【0035】
また、βメチル脱離反応とは反対に、β水素脱離反応の結果生成する構造式(2−b)に示す末端ビニリデン構造は、共重合できない。したがって、末端ビニリデン構造を多く含むような重合体をマクロマー共重合に使用した場合には、末端ビニリデンは、そのまま残存してしまい、マクロマーとしての効率を低下させる。また、そのような低分子量体は、機械物性を悪化させる。また、末端変性原料として用いた場合には、変性効率が悪く機能性を低下させる。さらに、ビニリデン末端が多く残存すると、色相や耐候性を悪化させる。
そこで、本発明に係るマクロマー生成可能なメタロセン化合物は、70℃でプロピレン単独重合を行った場合に生成するプロピレン単独重合体の末端ビニリデン率が0.1より小さく、好ましくは0.05未満であり、さらに好ましくは0.01未満であり、理想的には0(末端ビニリデンが実質的に存在しない)となるメタロセン化合物である。
【0036】
また、βメチル脱離反応、β水素脱離反応の後の開始末端は、それぞれ、イソブチル末端、n―プロピル末端であり、飽和炭化水素末端となる。すなわち、開始末端は、必ず飽和炭化水素末端であり、両末端に不飽和結合が現れることはない。
ここで、マクロマー錯体の末端ビニル率を判定するときの70℃でのプロピレン単独重合の条件について、詳細に記す。
3Lオートクレーブ槽内をプロピレンで置換した後、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(142mg/mL)2.86mLを投入し、液体プロピレン750gを導入して70℃まで昇温する。その後、マクロマー錯体を含む触媒を重合槽に圧送して、70℃で1時間重合を行う。最後に、未反応のプロピレンをすばやくパージし、重合を停止して、ビニル末端率評価用のプロピレン重合体を得る。
末端ビニル率(Rv)と末端ビニリデン率(Rvd)は、
13C−NMRから得られる1−プロペニル(ビニル)末端濃度[Vi]と、ビニリデン末端濃度[Vd]を、GPCより求めた数平均分子量(Mn)から得られる全ポリマー鎖数に対する割合として、下式を用いて算出する。
Rv=(Mn/42)×2×[Vi]/1000
Rvd=(Mn/42)×2×[Vd]/1000
(但し、Mnは、GPCにより求めた数平均分子量である。)
【0037】
また、マクロマーの分子量(Mn)に関しては、長鎖分岐となった場合に、溶融張力の向上効果を示すには、絡み合い分子量以上の分子量をもっていることが必要である。したがって、マクロマーの分子量(Mn)は、7,500以上が必要であり、好ましくは15,000以上、更に好ましくは23,000以上である。マクロマーの分子量(Mn)の上限値に関しては、分子量が高すぎるとマクロマーとしての濃度が減少してしまう、流動性が低下してしまうため、200,000以下が必要であり、好ましくは150,000以下、さらに好ましくは100,000以下である。マクロマー分子量(Mn)の制御は、最適な錯体構造を選択すること、水素を分子量調整剤として使用すること、または重合温度を調整することにより可能である。
【0038】
ここで、
13C−NMRによる1−プロペニル(ビニル)末端濃度[Vi]およびビニリデン末端濃度[Vd]の測定法の詳細は、以下の通りである。
試料390mgをNMRサンプル管(10φ)中で重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタン2.5mlに完全に溶解させた後、125℃で、プロトン完全デカップリング法で測定する。ケミカルシフトは、重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタンの3本のピークの中央のピークを74.2ppmに設定した。他の炭素ピークのケミカルシフトは、これを基準とする。
フリップ角:90度
パルス間隔:10秒
共鳴周波数:100MHz以上
積算回数:10,000回以上
観測域:−20ppm〜179ppm
【0039】
このプロピレン系重合体の末端ビニル率(Rv)と末端ビニリデン率(Rvd)は、βメチル脱離反応をβ水素脱離反応に対して選択的に起こすような特殊な構造の錯体を選ぶことによって、制御が可能である。
そのような錯体構造としては、2位に嵩高い複素環基を有し、4位に置換されてもよいアリール基等を有するビスインデン錯体を挙げることができる。
また、この選択率は、重合温度を変えることによっても、制御することができる。例えば、実施例に示す錯体では、重合温度が高くなる程、末端ビニル率を高くすることができる。
【0040】
また、1−プロペニル(ビニル)末端濃度[Vi]は、構造式(2−a)の炭素1と炭素2が115.5ppm、137.6ppmに検出されることを利用し、また、ビニリデン末端濃度[Vd]は、構造式(2−b)の炭素3と炭素4が111.2ppm、144.5ppmに検出されることを利用して、それぞれ全骨格形成炭素1000個に対する個数として、下式のように算出する。ここで、全骨格形成炭素とは、メチル炭素以外の全ての炭素原子を意味する。
[Vi]=[炭素1のピーク強度]/[全骨格形成炭素のピーク強度の総和]×1000
[Vd]=[炭素3のピーク強度]/[全骨格形成炭素のピーク強度の総和]×1000
【0041】
また、数平均分子量(Mn)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られるものであるが、その測定法、測定機器の詳細は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC、150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN、1A、IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン(ODCB)
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
【0042】
試料の調製は、試料を、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて、1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して、溶解させて行う。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、
図1のように行う。
また、GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー社製の以下の銘柄である。
銘柄:F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して、較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算に使用する粘度式:[η]=K×M
αは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10
−4、α=0.7
PP:K=1.03×10
−4、α=0.78
【0043】
成分[A−1]は、マクロマーを生成するメタロセン化合物であり、次の一般式(a1)で表されるメタロセン化合物である。
【0045】
[一般式(a1)中、R
11およびR
12は、各々独立して、窒素、酸素または硫黄を含有する炭素数4〜16の複素環基を示す。また、R
13およびR
14は、各々独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン若しくはこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜16のアリール基、または窒素、酸素若しくは硫黄を含有する炭素数6〜16の複素環基を表す。さらに、M
11は、ジルコニウムまたはハフニウムを表し、X
11及びY
11は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表し、Q
11は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基を表す。]
【0046】
上記のR
11およびR
12は、それぞれ独立して、窒素、酸素または硫黄を含有する炭素数4〜16の複素環基であり、好ましくは2−フリル基、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基または置換された2−フルフリル基であり、さらに好ましくは置換された2−フリル基である。
また、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、置換された2−フルフリル基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、トリアルキルシリル基、が挙げられる。これらのうち、メチル基、トリメチルシリル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
さらに、R
11およびR
12として、特に好ましくは2−(5−メチル)−フリル基である。また、R
11およびR
12は、互いに同一である場合が好ましい。
【0047】
上記のR
13およびR
14は、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい、炭素数6〜16のアリール基であり、また、アリール基としては、炭素数6〜16になる範囲で、アリール環状骨格上に、1つ以上の、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数1〜6のハロゲン含有炭化水素基を置換基として有していてもよい。
また、R
13およびR
14は、窒素、酸素または硫黄を含有する炭素数6〜16の複素環基であってもよい。このような複素環基としては、好ましくは2−フリル基、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、置換された2−フルフリル基であり、さらに好ましくは置換された2−フリル基である。これらの置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、トリアルキルシリル基が挙げられる。これらのうち、メチル基、トリメチルシリル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
R
13およびR
14としては、好ましくは少なくとも1つが、フェニル基、4−i−プロピル基、4−トリメチルシリル基、4−t−ブチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、3,5−ジt−ブチルフェニル基、4−フェニル−フェニル基、クロロフェニル基、ナフチル基、又はフェナンスリル基であり、更に好ましくはフェニル基、4−i−プロピル基、4−トリメチルシリル基、4−t−ブチルフェニル基、4−クロロフェニル基である。また、R
13およびR
14は、互いに同一である場合が好ましい。
【0048】
さらに、X
11およびY
11は、補助配位子であり、成分[B]と反応して、オレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限り、X
11とY
11は、配位子の種類が制限されるものではなく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表す。
ここで炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基とは、炭素数1〜20のトリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基である。
【0049】
Q
11は、二つの五員環を結合する、炭素数1または2の炭素を介して二つの共役五員環配位子を架橋する炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基の何れかを示す。上述のシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記のQ
11の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン、等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることができる。
これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基が特に好ましい。
また、上記一般式(a1)のインデン環上には、R
11、R
12、R
13、R
14以外にも置換基を有してもよい。その場合には、インデン環状の5位または6位に置換基を有することができる。そのような例として、5位メチル基が挙げられる。また、別の例として、5位と6位の置換基が互いに結合して、環状構造を形成することができる。そのような例としては、インダセン骨格となることが好ましい。
【0050】
上記一般式(a1)で表される化合物のうち、好ましい化合物として、以下に具体的に例示する。
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−ビフェニリル−インデニル}]ハフニウムである。
【0051】
また、特に好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウムである。
【0052】
また、成分[A−1]として、非限定的な好ましい実施形態の他の例として、下記の構造を挙げる。
成分[A−1]は、好ましくは次の一般式(a14)で表される化合物である。
【0054】
[一般式(a14)中、R
141〜R
144は、それぞれ独立して、炭素数1〜12の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基であり、R
141とR
142及び/又はR
143とR
144は、結合して2価の基を形成していてもよく、R
145は、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜10のケイ素含有炭化水素基または炭素数1〜10のハロゲン化炭化水素基であり、R
146は、炭素数6〜30の、ハロゲン、ケイ素、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよいアリール基である。Q
141は、二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基であり、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基または炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基を表し、M
141は、ジルコニウムまたはハフニウムを表し、X
141およびY
141は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基を表す。]
【0055】
上記式中、Q
141は、二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基であり、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基または炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基であり、好ましくは置換シリレン基あるいは置換ゲルミレン基である。ケイ素、ゲルマニウムに結合する置換基は、炭素数1〜12の炭化水素基が好ましく、二つの置換基が連結していてもよい。
具体的な例としては、メチレン、ジメチルメチレン、エチレン−1,2−ジイル、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、メチルフェニルシリレン、9−シラフルオレン−9,9−ジイル、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、メチルフェニルシリレン、9−シラフルオレン−9,9−ジイル、ジメチルゲルミレン、ジエチルゲルミレン、ジフェニルゲルミレン、メチルフェニルゲルミレン等が挙げられる。
【0056】
また、上記式中、M
141は、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはハフニウムである。
X
141およびY
141は、補助配位子であり、成分[B]の助触媒と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限りX
141およびY
141は、配位子の種類が制限されるものではなく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基を示す。
【0057】
また、上記のR
141〜R
144は、それぞれ独立して、炭素数1〜12、好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜6の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、またはケイ素含有炭化水素基である。
R
141〜R
144が示す炭化水素基の具体的例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のアルキル基、ビニル、プロペニル、シクロヘキセニル等のアルケニル基の他、フェニル基などが挙げられる。
また、R
141〜R
144が示すケイ素含有炭化水素基の具体例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル等のトリアルキルシリル基などが挙げられる。
また、R
141〜R
144が示すハロゲン化炭化水素基は、上記の炭化水素基の任意の位置にハロゲン原子が置換したものであり、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれであってもよい。その具体例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、2−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、3,5−ジフルオロフェニル、2,6−ジフルオロフェニル、2,4−ジクロロフェニル、3,5−ジクロロフェニル、2,6−ジクロロフェニル、2,5−ジクロロフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニルなどが挙げられる。
さらに、好ましい例としては、R
141〜R
144が全て同一の炭化水素基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0058】
また、R
141とR
142および/またはR
143とR
144が結合して2価の基を形成する場合、炭素数は、通常3以上、好ましくは4以上であって、通常9以下、好ましくは6以下である。2価の基の種類としては、炭化水素基が好ましい。2価の炭化水素基の具体例としては、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘプタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレンが挙げられ、トリメチレン、テトラメチレン、ヘプタメチレンが好ましく、テトラメチレンが特に好ましい。
さらに、R
141とR
142またはR
143とR
144のいずれか一方のみ、2価の基を形成するよりも、いずれも2価の基を形成する方が好ましい。
【0059】
上記のR
145は、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜10のケイ素含有炭化水素基、または炭素数1〜10のハロゲン化炭化水素基であり、好ましくは、炭素数3〜9の炭化水素基、炭素数3〜9のケイ素含有炭化水素基、または炭素数3〜9のハロゲン化炭化水素基であり、更に好ましくは、分岐状構造を有する炭素数3〜6の炭化水素基である。また、分岐状構造を有する場合、分岐の位置としては、α位が分岐となっていることが好ましい。また、分岐の構造としては、2級炭素であることが好ましい。
R
145の好ましい具体的な例としては、i−プロピル、sec−ブチル、iso−ブチル、t−ブチル、2−ペンチル、3−メチル−2−ブチル、2−ヘキシル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、シクロヘキシル、フェニル等が挙げられ、特に好ましくはi−プロピルである。
【0060】
上記のR
146は、炭素数6〜30の、好ましくは炭素数6〜24の、ハロゲン、ケイ素、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよいアリール基である。
R
146の好ましい例としては、フェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−i−プロピルフェニル、4−t−ブチルフェニル、4−トリメチルシリルフェニル、4−(2−フルオロビフェニリル)、4−(2−クロロビフェニリル)、1−ナフチル、2−ナフチル、3,5−ジメチル−4−t−ブチルフェニル、3,5−ジメチル−4−トリメチルシリルフェニル等が挙げられる。
【0061】
本発明に係る成分[A−1]として、ジクロロ[ジメチルシリレン(TMCp)(2−i−プロピル−4−フェニル−Azu)]ハフニウム、ジクロロ[ジメチルシリレン(TMCp)(2−i−プロピル−4−(4−クロロフェニル)−Azu)]ハフニウム、ジクロロ[ジメチルシリレン(TMCp)(2−i−プロピル−4−(3−クロロフェニル)−Azu)]ハフニウム、ジクロロ[ジメチルシリレン(TMCp)(2−i−プロピル−4−(3−フルオロフェニル)−Azu)]ハフニウム、ジクロロ[ジメチルシリレン(TMCp)(2−i−プロピル−4−(4−t−ブチルフェニル)−Azu)]ハフニウム、ジクロロ[ジメチルシリレン(TMCp)(2−i−プロピル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−Azu)]ハフニウム、ジクロロ[ジメチルシリレン(TMCp)(2−i−プロピル−4−(4−(2−フルオロビフェニリル))−Azu)]ハフニウム、ジクロロ[ジメチルシリレン(TMCp)(2−i−プロピル−4−(3,5−ジメチル−4−t−ブチルフェニル)−Azu)]ハフニウム、ジクロロ[ジメチルシリレン(TMCp)(2−i−プロピル−4−(3,5−ジメチル−4−トリメチルシリルフェニル)−Azu)]ハフニウムが好ましい(略号:TMCp:2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル。Azu:4H−1−アズレニル。)。
上記に例示した遷移金属化合物における式中の中心金属Mがハフニウムの代わりに、ジルコニウムに代わった化合物も、同様に、重合触媒成分として用いることができる。
【0062】
2.成分[A−2]
成分[A−2]は、次の一般式(a2)で表されるメタロセン化合物である。
【0064】
[一般式(a2)中、E
21およびE
22は、それぞれ独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基またはアズレニル基であり、それぞれ置換基を有していてもよい(但し、置換基が窒素、酸素または硫黄を含有する炭素数4〜16の複素環基であることはない。)。Q
21は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基を表し、M
21は、ジルコニウムまたはハフニウムを表し、X
21およびY
21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表す。]
【0065】
上記E
21およびE
22は、それぞれ独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基、アズレニル基であり、それぞれ置換基を有していてもよい。その置換基は、窒素、酸素または硫黄を含有する炭素数4〜16の複素環基であることはない。
なかでも、置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、置換アズレニル基が好ましい。
【0066】
成分[A−2]としては、オレフィンモノマーとオレフィンマクロマーとの共重合が可能な重合用触媒を形成する化合物が好ましい。そのような化合物は、同時にマクロマーの生成が可能な触媒を形成する化合物である場合もありうる。
成分[A−2]の非限定的な好ましい例として、E
21およびE
22が置換シクロペンタジエニル基の場合には、下記の構造を例示できる。
【0068】
[一般式(a3)中、R
31及びR
34は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基であり、R
32及びR
35は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、R
33及びR
36は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基である。X
31及びY
31は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表し、Q
31は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基を表し、M
31は、ジルコニウムまたはハフニウムを表す。]
【0069】
上記R
31、R
34は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。
具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、n−プロピルであり、特に好ましくはメチル基である。
上記R
32、R
35は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、好ましくはアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル、フェニル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、t−ブチル、フェニルである。
上記R
33、R
36は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基であり、好ましくはアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル、フェニル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、t−ブチル、フェニルである。
【0070】
一般式(a3)中、X
31およびY
31は、補助配位子であり、助触媒としての成分[B]と反応して、オレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。この目的が達成するものとして、X
31とY
31は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表す。
ここで炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基とは、炭素数1〜20のトリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基である。
【0071】
一般式(a3)中、Q
31は、二つの五員環を結合する、炭素数1または2の炭素を介して二つの共役五員環配位子を架橋する炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基の何れかを示す。上述のシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記のQ
31の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン、等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることができる。
これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基が特に好ましい。
【0072】
これらの一般式(a3)で表わされる化合物の中で好ましくは、
(1)ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(2)ジクロロ{ジフェニルシリレンビス(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(3)ジクロロ{ジメチルゲルミレンビス(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(4)ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2,5−ジメチル−3−フェニルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(5)ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2−エチル−3−フェニル−5−メチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(6)ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2,3,5−トリエチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(7)ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2,5−ジメチル−3−エチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(8)ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2,3−ジメチル−5−エチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(9)ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2,5−ジメチル−3−i−プロピルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(10)ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、であり、
さらに好ましくは、ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、ジクロロ{ジフェニルシリレンビス(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、ジクロロ{ジメチルゲルミレンビス(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2,5−ジメチル−3−フェニルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、である。
【0073】
また、成分[A−2]の非限定的な好ましい例として、E
21およびE
22が置換インデニル基の場合には、下記の構造を例示できる。
【0075】
[一般式(a4)中、R
41及びR
43は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基であり、R
42及びR
44は、それぞれ独立して、ハロゲン、ケイ素、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜30のアリール基である。X
41及びY
41は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表し、Q
41は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基を表し、M
41は、ジルコニウムまたはハフニウムを表す。]
【0076】
上記のR
41およびR
43は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。
具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルである。
また、上記のR
42およびR
44は、ハロゲン、ケイ素、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜30のアリール基であり、また、アリール基としては、炭素数6〜16になる範囲で、アリール環状骨格上に、1つ以上の、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数1〜6のハロゲン含有炭化水素基を置換基として有していてもよい。
R
42およびR
44としては、好ましくは少なくとも1つが、フェニル基、4−i−プロピル基、4−トリメチルシリル基、4−t−ブチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、3,5−ジt−ブチルフェニル基、4−フェニル−フェニル基、クロロフェニル基、ナフチル基、又はフェナンスリル基であり、更に好ましくはフェニル基、4−i−プロピル基、4−トリメチルシリル基、4−t−ブチルフェニル基、4−クロロフェニル基である。また、R
42およびR
44は、互いに同一である場合が好ましい。
【0077】
さらに、X
41およびY
41は、補助配位子であり、成分[B]と反応して、オレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。この目的が達成するものとしてX
1とY
1は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表す。
ここで炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基とは、炭素数1〜20のトリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基である。
また、Q
41は、二つの五員環を結合する、炭素数1または2の炭素を介して二つの共役五員環配位子を架橋する炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基の何れかを示す。上述のシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記のQ
41の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン、等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることができる。
これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基が特に好ましい。
【0078】
これらの一般式(a4)で表わされる化合物の中で好ましくは、
(1)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ハフニウム、
(2)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)インデニル}]ハフニウム、
(3)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)インデニル}]ハフニウム、
(4)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)インデニル}]ハフニウム、
(5)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)インデニル}]ハフニウム、
(6)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−t−ブチルフェニル)インデニル}]ハフニウム、
(7)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)インデニル}]ハフニウム、
(8)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)インデニル}]ハフニウム、
(9)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル}]ハフニウム、
(10)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−ナフチル)インデニル}]ハフニウム、
(11)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニル)インデニル}]ハフニウム、
(12)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−クロロ−4−ビフェニル)インデニル}]ハフニウム、
(13)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(9−フェナントリル)インデニル}]ハフニウム、
(14)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)インデニル}]ハフニウム、
(15)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)インデニル}]ハフニウム、
(16)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−n−プロピル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)インデニル}]ハフニウム、
(17)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)インデニル}]ハフニウム、
(18)ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−メチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニル)インデニル}]ハフニウム、
(19)ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)インデニル}]ハフニウム、
(20)ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)インデニル}]ハフニウム、である。
【0079】
また、成分[A−2]の非限定的な好ましい例として、E
21およびE
22が置換アズレニル基の場合には、下記の構造を例示できる。
【0081】
[一般式(a5)中、R
51およびR
52は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の炭化水素基である。R
53およびR
54は、それぞれ独立して、ハロゲン、ケイ素、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜30のアリール基である。Q
51は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基を表し、M
51は、ジルコニウムまたはハフニウムを表し、X
51およびY
51は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表す。]
【0082】
上記R
51およびR
52は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、好ましくはアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、n−プロピルである。
【0083】
また、上記R
53およびR
54は、それぞれ独立して、ハロゲン、ケイ素、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜30の、好ましくは炭素数6〜24のアリール基である。そのようなアリール基としては、置換基を有してもよいフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基である。好ましい例としては、フェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−i−プロピルフェニル、4−t−ブチルフェニル、4−トリメチルシリルフェニル、4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)、4−(2−クロロ−4−ビフェニリル)、1−ナフチル、2−ナフチル、4−クロロ−2−ナフチル、3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジメチル−4−t−ブチルフェニル、3,5−ジメチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル等が挙げられる。
【0084】
上記X
51及びY
51は、補助配位子であり、助触媒としての成分[B]と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限りX
51及びY
51は、配位子の種類が制限されるものではなく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基などを示す。
【0085】
Q
51は、二つの五員環を結合する、炭素数1または2の炭素を介して二つの共役五員環配位子を架橋する炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基の何れかを示す。上述のシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記のQ
51の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン、等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることができる。
これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基が特に好ましい。
さらに、上記M
51は、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはハフニウムである。
【0086】
上記一般式(a5)で表されるメタロセン化合物の非限定的な例として、下記のものを挙げることができる。
但し、煩雑な多数の例示を避けて代表的例示化合物のみ記載した。また、中心金属がハフニウムの化合物を記載したが、同様のジルコニウム化合物も使用可能であり、種々の配位子や架橋結合基あるいは補助配位子を任意に使用しうることは自明である。
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、である。
【0087】
また、好ましくは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、である。
【0088】
また、成分[A−2]の非限定的な好ましい例として、E
21およびE
22が、シクロペンタジエニル基とアズレニル基である場合には、下記の構造を例示できる。
【0090】
上記一般式(a6)中、R
61は、炭素数1〜6の炭化水素基であり、好ましくはアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、n−プロピルである。
また、上記R
62は、ハロゲン、ケイ素、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜30の、好ましくは炭素数6〜24のアリール基である。そのようなアリール基としては、置換基を有してもよいフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基である。
好ましい例としては、フェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−i−プロピルフェニル、4−t−ブチルフェニル、4−トリメチルシリルフェニル、4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)、4−(2−クロロ−4−ビフェニリル)、1−ナフチル、2−ナフチル、4−クロロ−2−ナフチル、3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジメチル−4−t−ブチルフェニル、3,5−ジメチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル等が挙げられる。
上記R
63、R
64、R
65およびR
66は、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1〜6の炭化水素基であり、具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル、フェニル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、t−ブチル、フェニルである。
但し、R
63、R
64、R
65及びR
66のいずれか2以上は、水素原子以外の置換基であり、かつ、R
63、R
64、R
65及びR
66のいずれか1以上は、水素原子である。
【0091】
上記X
61及びY
61は、補助配位子であり、助触媒としての成分[B]と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。この目的が達成するものとして、X
1とY
1は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基などを示す。
また、Q
61は、二つの五員環を結合する、炭素数1または2の炭素を介して二つの共役五員環配位子を架橋する炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基の何れかを示す。上述のシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記のQ
61の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン、等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることができる。
これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基が特に好ましい。
さらに、上記M
61は、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはハフニウムである。
【0092】
これらの一般式(a6)で表わされる化合物の中で好ましくは、
(1)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,3−ジメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(2)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(3)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,5−ジメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(4)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,3−ジt−ブチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(5)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−エチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(6)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2−エチル−4−メチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(7)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−t−ブチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(8)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(9)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,3,4−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(10)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(11)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニルシクロペンタジエニル)(4−フェニル−2−i−プロピル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(12)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−i−プロピル−4−t−フェニル−2−i−プロピル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(13)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−2−メチル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(14)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−2−メチル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(15)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−(3−メチルフェニル)−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(16)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−(3−メチルフェニル)−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(17)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−2−メチル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(18)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−2−メチル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(19)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−(2−ナフチル)−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(20)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−(2−ナフチル)−4H−アズレニル)}ハフニウム、
【0093】
(21)ジクロロ{1,1’−メチルフェニルシリレン(2−メチル−4−フェニルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(22)ジクロロ{1,1’−シラシクロブテニル(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(23)ジクロロ{1,1’−シラシクロプロペニル(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(24)ジクロロ{1,1’−シラフルオレニル(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(25)ジクロロ{1,1’−メチルフェニルゲルミレン(2−メチル−4−フェニルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(26)ジクロロ{1,1’−ゲルマシクロブテニル(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(27)ジクロロ{1,1’−ゲルマシクロプロペニル(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム、
(28)ジクロロ{1,1’−ゲルマフルオレニル(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム、などである。
【0094】
また、成分[A−2]の非限定的な好ましい例として、E
21およびE
22が、シクロペンタジエニル基とフルオレニル基の場合には、下記の構造を例示できる。
【0096】
一般式(a7)中、R
72は、炭素数1〜20の炭化水素基または炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基から選ばれ、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、トリメチルシリル基である。R
71、R
73、R
74、R
75、R
76、R
77及びR
78は、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R
75〜R
78までの隣接した置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。
また、上記X
71及びY
71は、補助配位子であり、助触媒としての成分[B]と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。この目的が達成するものとして、X
71及びY
71は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基などを示す。
【0097】
また、上記Q
71は、二つの五員環を結合する、炭素数1または2の炭素を介して二つの共役五員環配位子を架橋する炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基の何れかを示す。上述のシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記Q
71の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン、等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることができる。
これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基が特に好ましい。
さらに、上記M
71は、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはハフニウムである。
【0098】
これらの一般式(a7)で表わされる化合物の中で好ましくは、
(1)ジクロロジメチルメチレン(3−i−プロピルシクロペンタジエニル)フルオレニル)ジルコニウム、
(2)ジクロロジメチルメチレン(3−i−プロピル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニル)ジルコニウム、
(3)ジクロロジメチルメチレン(3−i−プロピル−5−メチルシクロペンタジエニル)(3,6−ジt−ブチルフルオレニル)ジルコニウム、
(4)ジクロロジメチルメチレン(3−i−プロピル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジt−ブチルフルオレニル)ジルコニウム、
(5)ジクロロジメチルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(ジベンゾ[b,h]フルオレニル)ジルコニウム、
(6)ジクロロジメチルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(1,1,4,4,7,7,10,10−オクタメチル−1,2,3,4,7,8,9,10−オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウム、
(7)ジクロロジメチルメチレン(3−トリメチルシリル−5−メチルシクロペンタジエニル)(1,1,4,4,7,7,10,10−オクタメチル−1,2,3,4,7,8,9,10−オクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレニル)ジルコニウム、などである。
【0099】
また、成分[A−2]の非限定的な好ましい例として、E
21およびE
22が、インデニル基とアズレニル基の場合には、下記の構造を例示できる。
【0101】
上記一般式(a8)中、R
81およびR
82は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、好ましくはアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、n−プロピルである。
また、上記R
83およびR
84は、それぞれ独立して、ハロゲン、ケイ素、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜30の、好ましくは炭素数6〜24のアリール基である。そのようなアリール基としては、置換基を有してもよいフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基である。好ましい例としては、フェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−i−プロピルフェニル、4−t−ブチルフェニル、4−トリメチルシリルフェニル、4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)、4−(2−クロロ−4−ビフェニリル)、1−ナフチル、2−ナフチル、4−クロロ−2−ナフチル、3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジメチル−4−t−ブチルフェニル、3,5−ジメチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル等が挙げられる。
【0102】
また、上記X
81及びY
81は、補助配位子であり、助触媒としての成分[B]と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限りX
51及びY
51は、配位子の種類が制限されるものではなく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基などを示す。
また、Q
81は、二つの五員環を結合する、炭素数1または2の炭素を介して二つの共役五員環配位子を架橋する炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基の何れかを示す。上述のシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記のQ
81の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン、等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることができる。
これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基が特に好ましい。
さらに、上記M
81は、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはハフニウムである。
【0103】
これらの一般式(a8)で表わされる化合物の中で好ましくは、
(1)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、
(2)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、
(3)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、
(4)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、
(5)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、
(6)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、
(7)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、
(8)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、
(9)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、
(10)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、
(11)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(1−ナフチル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、
(12)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(1−ナフチル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、
(13)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(2−ナフチル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、
(14)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(2−ナフチル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、
(15)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−エチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、
(16)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−エチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、
(17)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、
(18)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、
(19)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム、
(20)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−1−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム、などである。
【0104】
3.成分[B]
(1)イオン交換性層状珪酸塩の特性1
成分[B]としては、次の特性1を有するイオン交換性層状珪酸塩を使用する。
特性1:窒素吸着法による吸着等温線を用いてBJH解析法により算出した細孔分布曲線において、直径が2〜10nmの細孔の細孔容量の総和が全メソ細孔容量の60〜100%であること。
【0105】
ここで窒素吸着法による細孔径および細孔容量の測定方法について、以下に示す。
固体への気体の吸着量は、温度一定の場合、固体と気体が決まれば、吸着相互作用のポテンシャルは、ほぼ一定であると考えることができるので、吸着量は、圧力のみの関数となり、これを一般的に吸着等温線と呼ぶ。
本発明においては、細孔分布を評価する際に最も一般的に使用されている窒素を吸着ガスとして使用し、液体窒素温度下(温度77K)で、相対圧P/P0(P0は、大気圧を示す)が0.025〜0.995の範囲で吸着等温線を測定した。
本発明で規定する範囲の細孔容量の算出は、相対圧を増加させた場合に得られる吸着等温線を用いる。細孔分布の計算方法としては、BJH解析法がもっとも一般的であり、本発明では、この方法を採用している。BJH解析法で得られる細孔分布曲線を示すグラフを、後述する実施例および比較例に対応させて示した(
図1〜3)。
本発明においては、メソ孔細孔とは、IUPACの定義にしたがい、細孔の直径が2〜50nmの細孔をいう。細孔分布曲線を使って、直径が2〜10nmの細孔および直径が2〜50nmの細孔について、細孔容量の総和を求めた。
【0106】
本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩は、窒素吸着法による吸着等温線を用いてBJH解析法により算出した細孔分布曲線における直径が2〜10nmの範囲の細孔の細孔容量の総和(cc/g)が、直径が2〜50nmの範囲の細孔、すなわちメソ孔細孔の細孔容量の総和(全メソ細孔容量)(cc/g)に対して、60〜100%にあることを特徴とする。
この直径が2〜10nmという細孔の大きさは、イオン交換性層状珪酸塩の端面に当たる部分であると考えられ、この範囲の細孔容量が、全メソ孔細孔容量に対して60〜100%であるということは、公知のイオン交換性層状珪酸塩と比較して、化学処理を同様に行った場合に、端面部がより均一に処理されていることを示唆する。さらに、イオン交換性層状珪酸塩は、このような端面部にオレフィン重合の活性点(酸点)となりうる部分を有していると、考えられている。
そのため、このような構造を有するイオン交換性層状珪酸塩は、公知の微小細孔量の存在割合が低いイオン交換性層状珪酸塩よりも、高活性なオレフィン用重合触媒成分となりうる。
このような特殊な細孔構造をもつイオン交換性層状珪酸塩は、イオン交換性層状珪酸塩の金属原子の溶出をともなう化学処理時に、金属溶出が珪酸塩を構成する各層からより均一に進行する原料を用いることでも、または、用いることにより、達成できる。
【0107】
本発明では、窒素吸着法により測定したイオン交換性層状珪酸塩の直径が2〜10nmの細孔の細孔容量の総和がメソ孔細孔の細孔容量の総和の60〜100%であり、好ましくは61〜95%、より好ましくは62〜90%、さらに好ましくは63〜87%、最も好ましくは63〜85%である。
直径が2〜10nmの細孔の細孔容量の総和が全メソ細孔容量の60%未満になると、活性は、低下すると考えられる。一方、粒子中に微小細孔のみになってしまった場合は、大きな細孔がある程度存在している場合よりも、粘土粒子同士の接触点が多くなるために、高い粒子強度になる。イオン交換性層状珪酸塩粒子は、オレフィンの重合において、ポリマーの生成とともに崩壊することで、高活性に重合が進行し、ポリマー中に均一に分散することが望ましいが、高粒子強度では、崩壊が起こり難いために、活性は低下し、ポリマー中に不均一に存在することから、ポリマーの粉体性状の悪化や加工・成形工程での不具合を招くことになる。
そのため、直径が2〜10nmの細孔の細孔容量の総和が全メソ細孔容量の85%以下とすることが最も好ましい。
【0108】
(2)イオン交換性層状珪酸塩の特性2
本発明に係るオレフィン重合用触媒成分に用いるイオン交換性層状珪酸塩は、上記の特性1に加えて、さらに、次の特性2を有することが好ましい。
特性2:X線回折(XRD)において、2θ=19.6〜20.0度にピーク(m)を有し、かつその強度をピーク強度(M)としたとき、2θ=15〜25度に該ピーク(m)以外のピーク(i)が存在しないこと、又はピーク(i)が存在し、該ピーク(i)のピーク強度(I)が該ピーク強度(M)に対して、0<(I/M)≦1.6を満たす関係にあること。但し、該ピーク(i)は、複数個あってもよく、複数個(n個)存在する場合は、n個それぞれのピーク強度(I
n)とピーク強度(M)との強度比(I
n/M)の総和に対して、0<(I
n/M)の総和≦1.6を満たす関係にあること。
【0109】
上記特性2は、本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩に、どの程度不純物が含まれているかを示している。
XRDにおいて、2θ=19.6〜20.0度に現れるピーク(m)は、オレフィン重合用触媒として性能を示すために、必要なイオン交換性層状珪酸塩の成分の存在を表している。その成分を例示すると、雲母、バーミキュライト、スメクタイトがある。この中で好ましいのは、雲母とスメクタイトで、特に好ましいのはスメクタイトである。さらに、スメクタイトの中でも、モンモリロナイトおよびバイデライトが好ましく、モンモリロナイトであることが特に好ましい。
ピーク(m)は、これらの鉱物に分類される種類のイオン交換性層状珪酸塩の結晶面(020)または/および結晶面(110)を示す。
【0110】
一方、2θ=15〜25度において、ピーク(m)以外(ピーク(m)を除く)のピーク(i)は、オレフィン重合用触媒として性能を示すために必要なイオン交換性層状珪酸塩の成分以外のものを示し、いわゆる不純物として含まれている成分の存在を表すものと、考えている。そのため、このピーク(i)が存在しないか、又はピーク(i)が存在し、このピーク(i)の強度(I)とピーク(m)の強度(M)の比(I/M)が、0<(I/M)≦1.6の関係にあることで、高性能を維持することが可能となることを、本発明者らは見出した。
ここで、ピーク(i)が存在しない場合は、ピーク(m)との強度比(I/M)は、0で示される。ピーク(i)は、単独の場合も、また複数の場合もある。強度比(I/M)は、ピーク(i)が単独の場合は、そのピークに関して求めた(I/M)となる。複数の場合は、それぞれのピーク(i)nに関しての強度(I
n)とピーク(m)の強度(M)の比である(I
n/M)を求め、その総和となる。例えば、3個のピークが存在する場合、上述のピークの強度比(I/M)は、次のようになる。
それぞれのピーク強度が(I
1)、(I
2)、(I
3)であった場合、(I/M)として示される数値は、下記数式で求めることができる。
{(I
1/M)+(I
2/M)+(I
3/M)}
【0111】
好ましい強度比(I/M)の下限は、0であり、より好ましくは0.001であり、さらに好ましくは0.01であり、特に好ましくは0.05であり、さらに特に好ましくは0.1であり、最も好ましくは0.5である。一方、好ましい強度比(I/M)の上限は1.6であり、好ましくは1.4であり、より好ましくは1.2であり、さらに好ましくは1.0であり、特に好ましくは0.95であり、最も好ましくは0.9である。
【0112】
次に、これを求めるためのXRDの測定方法と、そこから得た結果からピーク強度を求める方法について、説明する。
XRD測定方法は、X線源にCu−Kα線(Kβ吸収板使用)を用い、管電圧40kV、管電流30mAとした。光学系は、集中法とした。発散スリット2/3度、散乱スリット2/3度、受光スリット0.300mm、スキャンモードは2θ/θスキャン、2θスキャン範囲は3.0000〜55.0000度、角度ステップ幅は0.0200度、スキャン速度は4.0000度/分、検出器はシンチレーションカウンタとし、サンプルホルダとして深さ0.2mmのガラス製ホルダを使用した。装置は、リガク社製X−ray Diffractometer Smartlabを用いた。
【0113】
ここから得られた測定結果から、ピーク強度を求める手順を説明する。
X線回折強度は、2θに対するシンチレーションカウンタのカウント数として得られる。回折強度のベースラインとして、2θ=15度及び25度で、それぞれ周囲±0.1°(角度ステップが0.02度なのでそれぞれ11点の平均となる)の範囲の強度平均値をとり、これを2θ=15度、25度での強度とする。この2点を結ぶように、直線を引き、ベースラインとする。
もし、2θ=15±0.1度、25±0.1度の範囲に、サンプルからの何らかの回折ピークが現れている場合は、そのピークを避けるようにそれぞれ周辺の数度の範囲でピークの無い2θ位置を探し、その位置でベースラインの2θ位置と強度を定めるものとする。なお、ピークの有無の判定については、測定回折強度を2θ=14〜26度の範囲に対してプロットし、ポイント数20の局所最大法のピーク検索を適用することで、行うものとする。
上記で求めたベースラインを差し引いた回折強度を2θ=15〜25度の範囲に対してプロットし、ポイント数20の局所最大法、しきい値20%フィルター(強度最大値の20%に満たないものは、ピークとみなさない。)にて、ピーク検索を行う。
この検索によって得られた2θ=19.6〜20.0度のピーク強度をピーク(m)の強度(M)、これを除く2θ=15〜25°の範囲の全てのピークをピーク(i)とし、その強度をピーク(i)の強度(I)とする。
【0114】
2θ=15〜25度に存在するピークとしては、次のものが例示される。
イライト(2θ=16〜17度)、クリソタイル(2θ=19.1〜19.5度)、タルク(2θ=19.3〜19.5度)、ディッカライト(2θ=18〜19度)、ナクロライト(2θ=18〜19度)、クロライト(2θ=18〜19度)、ハロイサイト(2θ=20.0〜20.5度)、石英(2θ=20.6〜21.0度)、クリストバライト(2θ=21.6〜22度)、カルサイト(2θ=22.8〜23.3度)、カオリナイト(2θ=24.7〜25度)などが挙げられる。
【0115】
(3)イオン交換性層状珪酸塩の特性3
本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩は、上記の特性1に加えて、又は上記特性1と特性2に加えて、比表面積が325m
2/g以上である特性3を有することがより好ましい。
比表面積は、活性点前駆体がイオン交換性層状珪酸塩に担持されて、活性点として重合反応が進行していくために、必要な空間的な広さを表しており、大きい方が好ましい。比表面積が大きくなると、活性点前駆体が十分担持され、また、重合反応が進行するための反応面が十分確保できるようになるために、さらに活性が向上する。一方、比表面積が大きすぎると、粒子が脆くなって、形状を保てなくなり、粉体性状が悪化してしまうおそれがあり、さらに、重合中に触媒が破砕や崩壊すると、微粉や塊の発生を引き起こし、プラントの運転安定性の低下につながるおそれがある。
【0116】
比表面積の下限は、好ましくは150m
2/g、より好ましくは200m
2/g、さらに好ましくは280m
2/g、よりさらに好ましくは325m
2/g、特に好ましくは330m
2/g、もっとも好ましくは350m
2/gである。一方、比表面積の上限は、特に定めは無いが、好ましくは600m
2/g、より好ましくは580m
2/g、さらに好ましくは550m
2/g、特に好ましくは500m
2/gである。
比表面積は、上限及び下限としては、前記の好ましい下限値と好ましい上限値とを任意に組み合わせた範囲を例示することができる。例えば、325〜550m
2/g、330〜500m
2/g、350〜500m
2/g、200〜600m
2/g、350〜580m
2/g、280〜550m
2/g、325〜550m
2/gである。
イオン交換性層状珪酸塩の天然物は、比表面積が0.1〜140m
2/g、好ましくは0.1〜90m
2/g程度であり、比較的小さいが、後述する化学処理により、増大させることが可能である。
比表面積は、上述のようにして得られた吸着等温線を用いて、BET多点法解析を実施することにより求めた。一般的に、相対圧P/P0(P0は大気圧)=0.05〜0.35付近で、良い直線が得られる範囲で解析され、BETプロットを確認しながら、解析範囲を決めた。
【0117】
(4)イオン交換性層状珪酸塩の特性4
本発明に係るオレフィン重合用触媒成分に用いるイオン交換性層状珪酸塩は、さらに、次の特性4を有することが好ましい。
本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩は、特性4として、次のことを満たすイオン交換性層状珪酸塩を使用することが好ましい。
蛍光X線分析から定量したSi、Al、Mg、Fe、Naと、ICP発光分光分析から定量したCa、Kを用いて、2八面体型スメクタイトの化学組成の一般式:(M
+,M
2+1/2)
x+y(Y
3+2−y,Y
2+y)(Si
4−x,Al
x)O
10(OH)
2・nH
2O における原子数の比(元素の右下に記されている数)を示すxおよびyを求め、一般式を完成させたとき、式中のSi成分の量(Si(s))と定量した全Si成分の量(Si(t))の比、Si(s)/Si(t)が0.50〜1であることが好ましい。
【0118】
2八面体型スメクタイトの化学組成の一般式は、粘土ハンドブック第3版(日本粘土学会、技報堂出版、2009年4月30日発行)P65に記載されている。ここで言うSi(s)は、原料のイオン交換性層状珪酸塩に含まれる2八面体型スメクタイト成分由来のSi成分のことを示している。一方、分析から求められるSi(t)は、イオン交換性層状珪酸塩に含まれるすべてのSi成分の量を示している。
求められたSi(s)の値が、Si(t)と一致しない場合、イオン交換性層状珪酸塩は、2八面体型スメクタイト由来以外のSi成分を含んでいることになる。オレフィン重合用触媒の性能には、この2八面体型スメクタイトが関係していると、考えており、その含有量が性能を決める要素の1つであると考えている。
そのため、本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩において、Si(s)とSi(t)の量比の関係は、重要であり、Si(s)の割合が多いことが好ましく、Si(s)とSi(t)の比率:Si(s)/Si(t)は、0.50〜1であることが好ましい。
好ましい範囲の下限は、0.50であり、より好ましくは0.55であり、さらに好ましくは0.60であり、特に好ましくは0.65であり、さらに特に好ましくは0.70であり、最も好ましくは0.75である。一方、好ましい範囲の上限は、不純物が混じっていない状態を表している1が最も好ましいが、0.98であってもよく、さらには0.95であってもよく、または0.90であってもよい。2八面体型スメクタイト由来のSi成分Si(s)が多いことが好ましい。
【0119】
化学組成の一般式と前述の原子の定量値から、どのようにSi(s)を求めるかについて、次に説明する。
一般式中の記されるM
+、M
2+、Y
3+、Y
2+は、それぞれ次の原子を示している。M
+は、K、Naを、M
2+は、Caを、Y
3+は、Al、Fe
3+、Mn
3+、Cr
3+を、Y
2+は、Mg、Fe
2+、Mn
2+、Ni、Zn、Liを、それぞれ示している(粘土ハンドブック第3版P65、技報堂出版、2009年4月30日発行)。
このうち、2八面体の化学組成として、一般的に用いられる前述の7つの原子をM
2+、Y
3+、Y
2+として使用した。Fe原子は、ここではすべてFe
3+として取り扱う。つまり、M
+は、K、Naを、M
2+は、Caを、Y
3+は、Al、Fe
3+を、Y
2+は、Mgを、それぞれ示すとして考えた。
まずは、前述の一般式における原子数の比(ここではxとyを含む)を求める。一般式において、それぞれの原子の存在量とその原子数の比は、次の式1の関係にある。但し、式中のSiは、スメクタイト由来のSi成分であることから、ここではSi(s)で示す。
【0121】
ここで、M
+には、K、Naを、M
2+には、Caを、Y
3+には、Al、Fe
3+を、Y
2+には、Mgを、当てはめると、次の式2となる。いずれの原子の存在量も、ここでは、イオン交換性層状珪酸塩1gあたりのモル数(mol/g)で取り扱う。
【0123】
式2を変形し、方程式を解くと、次の式3および式4が求められる。
【0125】
この式3および式4のAl
3+とAlは、その和が分析から定量できるAl成分の量を示しており、よって、それぞれ次のように書き直すことができる。
【0127】
この式5および式6に、分析から定量できるそれぞれの原子の量を入れることで、xとyは、求めることができる。
さらに、求めたいSi(s)成分の量は、式2から導かれる式7を変形し、得られた式8において、xとyに、それぞれ式5と式6から求められる数値を導入し、分析から定量できるMg原子の量を入れることで、求めることができる。
【0129】
このようにして求めたSi(s)を、分析から求められるSi(t)で割ることで、Si(s)/S(t)を求めることができる。
【0130】
蛍光X線分析は、例えば、次のように行う。
試料を700℃で1時間焼成後、0.5gを分け取り、融剤としてLi
2B
4O
7を4.5g、剥離剤としてKBrを0.03gと、混合し、ガラスビードを作製する。
このようにして調製したサンプルをXRF分析装置(例えば、理学電気工業(株)のZSX−100e)により、検量線法にて、定量分析を行う。
また、ICP発光分光分析は、700℃で1時間焼成した試料に、硫酸とフッ化水素酸を加えて加熱溶解した後、その溶液をICP−OES(例えば、堀場製作所製ULTIMA2型)にて、測定する。
【0131】
(5)イオン交換性層状珪酸塩の特性5
本発明に係るオレフィン重合用触媒成分に用いるイオン交換性層状珪酸塩は、さらに、次の特性5を有することが好ましい。
本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩は、同形置換量が高いことが好ましく、例えば、イオン交換性層状珪酸塩の八面体シートに含まれるMgの量とAlの量とのモル比(Mg/Al)は、0.28以上が好ましい。0.28〜3.5がより好ましく、0.285〜2.5がさらに好ましく、0.287〜1.5がよりさらに好ましく、0.29〜1が特に好ましく、0.292〜0.8が特に好ましく、0.292〜0.5が最も好ましい。
上記のように、3価のアルミニウムが2価のマグネシウムに置換されている場合、負の層電荷を有していることになる。さらに、この負の層電荷が、メタロセン触媒の性能(活性)に対して、メタロセン触媒の活性点前駆体であるメタロセン遷移金属化合物(錯体)のカチオン種を活性点として安定して存在させるためのカウンターアニオンとして作用し、高活性化の効果があると、本発明者らは、考えている。
【0132】
このMg/Alモル比は、化学構造式から求めることができる。化学構造式は、含まれている原子を蛍光X線分析法(XRF)やICP、吸光光度法などの一般的な化学分析法にて定量し、それを基に求める。
計算方法は、一般的に、粘土ハンドブック(日本粘土学会、技法堂出版、2009年発行、第3版)のP272〜P274に記載される方法にて行われる。このような方法にて、化学構造式を求めることで、それぞれのシートの陽イオンおよびその陽イオンを同形置換する陽イオンの種類が明らかとなる。
計算方法の1つとして、多く用いられる陰イオンの電荷数を基準とする計算方法を、次に説明する。
化学分析により求めた各原子の分子比にその原子の酸化物中に含まれている陽イオンの電荷数(例えば、Siであれば電荷は4)を掛けて陽イオン数を求め、陽イオン数の総和を求める。
次に、陽イオン電荷と陰イオン電荷を釣り合わせるための係数を求めるために、構造中の負電荷数(粘土鉱物に含まれているO)22をこの陽イオン数の総和で割る。
このようにして得られた係数に先に求めた各原子の陽イオン数を掛けることで、構造中に含まれる原子の割合を算出することができ、構造式を完成することができる。このようにして、八面体シートのアルミニウムとマグネシウムのモル比Mg/Alを求めることができる。
【0133】
(6)イオン交換性層状珪酸塩の特性6
本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩は、特性6として、窒素吸着法により測定したメソ孔細孔容量の総和(全メソ細孔容量)が0.30cc/g以上であることが好ましく、0.35cc/g以上であることがより好ましく、0.40cc/g以上であることがさらに好ましく、0.45cc/g以上であることが特に好ましい。また、最大量としては、1cc/g以下にあることが好ましく、0.8cc/g以下にあることがより好ましく、0.6cc/g以下であることがさらに好ましい。
また、直径が2〜10nmの範囲にある細孔の細孔容量の総和は、0.15cc/g以上であることが好ましく、0.20cc/g以上であることがより好ましく、0.25cc/g以上であることがさらに好ましい。これ以下の細孔容量となった場合、活性は、低下するおそれがあると、考えられる。一方、最大量としては、1cc/g以下であることが好ましく、0.8cc/g以下にあることがより好ましく、0.6cc/g以下にあることがさらに好ましく、0.5cc/g以下であることが特に好ましい。これ以上の細孔容量となった場合、微粉の発生やパウダー性状の悪化を引き起こす可能性が考えられる。
【0134】
(7)イオン交換性層状珪酸塩の特性7
本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩は、特性7として、酸点を持つことが好ましい。好ましい酸点の量の下限は、イオン交換性層状珪酸塩1gにつき、pKa<−8.2以下の強酸点が30μmol、より好ましくは50μmol、さらに好ましくは100μmol、特に好ましくは150μmolである。酸点の量は、特開2000−158707号公報の記載の方法に従い、測定する。
【0135】
(8)イオン交換性層状珪酸塩の調製
上記特性を有するイオン交換性層状珪酸塩は、以下の方法によって、製造することができる。
本発明に使用されるイオン交換性層状珪酸塩の原料は、天然のものに限らず、人工合成物であってもよい。当該、珪酸塩の具体例としては、例えば、「粘土鉱物学」(白水春雄著、朝倉書店、1995年)に記載されている次のようなものが挙げられる。
i)1:1層が主要な構成層であるデッカイト、ナクライト、カオリナイト、ナクライト等のカオリン族、クリソタイル、リザーダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、アメサイト、Alリザーダイト等の蛇紋石類縁鉱物等。
ii)2:1層が主要な構成層であるモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族珪酸塩、バーミキュライト等のバーミキュライト族珪酸塩、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族珪酸塩、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、緑泥石群等。
【0136】
これらは、混合層を形成していてもよい。また、多くのイオン交換性層状珪酸塩は、天然には、粘土鉱物の主成分として産出されるため、夾雑物(石英やクリストバライト等が挙げられる。)が含まれることが多いが、それらを含んでいてもよい。
本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩は、2:1型構造を有する層状珪酸塩が好ましい。より好ましくは、スメクタイト族珪酸塩であり、さらに好ましくは、モンモリロナイトである。
【0137】
本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩は、高い同形置換量により層電荷を多く有している層状珪酸塩であることが好ましい。イオン交換性層状珪酸塩の同形置換とは、粘土ハンドブック(日本粘土学会、技法堂出版、2009年発行、第3版)P124に記載されているように、次のことを言う。
イオン交換性層状珪酸塩も含んだ広義の層状珪酸塩鉱物は、金属イオン(陽イオン)に、O
2−またはOH
−が配位してできる八面体シート、および、ケイ素イオン(Si
4+)に、O
2−が配位してできる四面体シートから構成されている。八面体シートを構成する金属の種類としては、アルミニウム、マグネシウム、鉄、チタンなどであり、その含有量は、イオン交換性層状珪酸塩鉱物全量に対して、例えば5〜30重量%である。
イオン交換性層状珪酸塩の中で2:1型鉱物では、2枚の四面体シートが1枚の八面体シートの両側を挟んだ構造により、単位珪酸塩層を構成している。また、1:1鉱物では、四面体シートの片面と八面体シートの片面が結合した構造により単位珪酸塩層を構成している。2:1型鉱物において、四面体シートの陽イオンがSi
4+のみ、八面体シートの陽イオンがAl
3+またはMg
2+のみのときは、それぞれのシートは、電気的に中性であり電荷を持たない。しかし、配位するO
2−またはOH
−の個数は、不変のまま、四面体シートや八面体シートの陽イオンは、価数の異なる他の陽イオンに置換されていることが一般的であり、これを同形置換という。
【0138】
この同形置換によって、珪酸塩層は、正または、主に負の電荷を生じており、これを層電荷という。通常、この層電荷を中和するために、イオン交換性層状珪酸塩は、交換可能な層間イオン(イオン交換性層状珪酸塩の層間に含有されるイオン)を有しており、種類としては、特に限定されないが、リチウム、ナトリウム等の周期表第1族のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等の周期表第2族のアルカリ土類金属等がある。
【0139】
本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩として、八面体シートのAl
3+がMg
2+やFe
2+に同形置換したもの、Mg
2+がLi
+に同形置換したものなどを、例示することができる。
本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩は、八面体シートでAl
3+がMg
2+に置換されている割合、アルミニウムとマグネシウムのモル比であるMg/Alが0.285〜3.5の原料を使用することが好ましい。Mg/Alモル比は、0.29〜3であることがより好ましく、0.295〜2であることがさらに好ましく、0.3〜1.5であることが特に好ましく、0.31〜1であることが非常に好ましい。さらに、Mg/Alモル比は、0.315〜0.8、0.32〜0.65、0.325〜0.55がより好ましい。
【0140】
このようなイオン交換性層状珪酸塩を使用することで、上述の特性5を満足するイオン交換性層状珪酸塩を得ることができる。オレフィン重合用触媒成分の原料として、従来開示されていた層状珪酸塩のMg/Al比は、0.25〜0.27程度であり、高い同形置換量のものを原料として使用されたことはなかった。
【0141】
さらに、次のようなイオン交換性層状珪酸塩を用いて、次段落以降に示す処理を行うことで、本発明に係るオレフィン重合用触媒成分を製造することも、できる。
イオン交換性層状珪酸塩は、比表面積が0.1〜140m
2/g、好ましくは0.1〜90m
2/g程度である。イオン交換性層状珪酸塩の表面積は、比較的小さいが、後述する化学処理により、増大させることが可能である。
【0142】
本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩は、次の性質を有するイオン交換性層状珪酸塩を用いて、製造することが好ましい。前記特性4に係るSi(s)/Si(t)が0.50〜1であるイオン交換性層状珪酸塩である。
Si(s)/Si(t)の好ましい下限は、0.55であり、より好ましくは0.60であり、さらに好ましくは0.65であり、特に好ましくは0.70であり、さらに特に好ましくは0.75であり、最も好ましくは0.80であり、さらに最も好ましくは0.90である。一方、好ましい上限は、1.00に近い方がスメクタイト以外のSi分、つまり不純物が少ないことを意味しており、好ましい。上限としては、0.98であってもよく、0.95であってもよい。2八面体型スメクタイト由来のSi成分Si(s)が多いことが好ましい。
このようなイオン交換性層状珪酸塩を使用することで、特性4を満足するイオン交換性層状珪酸塩を得ることができる。
【0143】
また、本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩は、次の性質を有するイオン交換性層状珪酸塩を用いて製造することが好ましい。前記特性2に係るXRDのピーク(m)とピーク(i)の強度比(I/M)が0〜2であるイオン交換性層状珪酸塩である。
強度比(I/M)の好ましい範囲の下限としては、0.001であり、より好ましくは0.01であり、さらに好ましくは0.05であり、特に好ましくは0.1であり、さらに特に好ましくは0.5であり、最も好ましくは0.6である。一方、強度比(I/M)の好ましい範囲の上限としては、1.5であり、より好ましくは1.3であり、さらに好ましくは1.2であり、特に好ましくは1.0であり、さらに特に好ましくは0.95であり、最も好ましくは0.9である。
このようなイオン交換性層状珪酸塩を使用することで、特性2を満足するイオン交換性層状珪酸塩を得ることができる。
【0144】
本発明に係る特性を示すイオン交換性層状珪酸塩は、イオン交換性層状珪酸塩に化学処理を行うことによっても、製造できる。
化学処理には、イオン交換性層状珪酸塩を酸類で処理する酸処理、アルカリ類で処理するアルカリ処理、無機塩類で処理する塩類処理など様々な処理がある。
化学処理は、単独でも行ってよいし、組み合わせても、また、同時に行ってもよい。好ましくは、酸類による酸処理を行った後に、その他の化学処理を行うことがよい。本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩においては、酸類による化学処理をされていることが好ましく、酸類の中でも、無機酸類によって処理されていることがより好ましい。
【0145】
イオン交換性層状珪酸塩の化学処理において、酸類で処理する酸処理について、詳しく説明すると、次のようなことが起こる。
イオン交換性層状珪酸塩を酸で処理すると、表面の不純物が酸洗浄されることのほかに、層間イオンが溶出し、水素陽イオンと交換が起こり、次いで、八面体シートを構成する陽イオンが溶出していくようになる。この溶出の過程において、酸点、細孔構造、比表面積等の特性が変化する。
そのため、本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩は、酸類による処理を行うことにより、達成できる。溶出の程度は、酸の濃度、処理時間、酸の種類によって異なるが、マグネシウムを多く含むものが一般に大きく、次いで鉄の多いもの、アルミニウムの多いものの順になる。また、結晶度が高く粒子の大きいものほど、溶出性が低いが、これは、酸が結晶層間や結晶構造内に侵入することと関係している。
【0146】
また、溶出については、結晶格子の全ての八面体シートにミクロな空隙を有する均一な構造が生成すると考えられる均一溶出と、ある特定の部位の金属陽イオンが溶出して生成した珪酸と層状珪酸塩の複合体が生成する不均一溶出の機構が、考えられる。
本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩は、高いMg/Alモル比を有する原料を用いることで、層電荷のマイナス性が高いこと以外に、それぞれのシートにおいて、公知のイオン交換性層状珪酸塩よりも、シート同士で均一溶出が発生していると、考えている。
そのため、直径が2〜10nmの細孔の細孔容量の総和が全メソ細孔容量の60〜100%を達成することができると、考えている。
【0147】
酸処理の条件として、温度は、40〜102℃がよく、好ましくは50〜100℃である。さらに好ましくは、60〜95℃である。あまり温度を低下させると、極端に陽イオンの溶出速度が低下し、製造効率が低下する。一方、温度を上げ過ぎると、操作上の安全性が低下する。
また、酸処理時の酸濃度(反応系全体重量に対する酸の重量百分率)は、3〜30重量%がよく、好ましくは5〜25重量%、より好ましくは7〜20重量%である。濃度が低くなると、陽イオンの溶出速度が低下し、製造効率が低下する。
また、イオン交換性層状珪酸塩の濃度は、3〜50重量%の範囲で調製できる。好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。濃度が低くなると、工業的に生産する場合は大きな設備が必要となってしまう。一方、濃度が高い場合には、スラリーの粘度が上昇してしまい、均一な攪拌混合が困難になり、やはり製造効率が低下する。
【0148】
酸処理は、複数回に分けて行うことも、可能である。
使用する酸化合物は、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、安息香酸、ステアリン酸、プロピリオン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸などの無機酸および有機酸が例示される。その中でも、無機酸が好ましく、塩酸、硝酸、硫酸が好ましい。さらに好ましくは塩酸、硫酸であり、特に好ましくは硫酸である。
化学処理、特に酸処理によって、八面体シートを構成する金属陽イオンを、化学処理前の含有量に対して、10〜65%溶出させることが好ましく、より好ましくは15〜60%、さらに好ましくは17〜55%、特に好ましくは20〜50%溶出させる。溶出割合が小さいと、十分な細孔量が確保できず、表面積も小さくなり、本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩は、得られない。
ここで、溶出する金属陽イオンの割合(モル%)は、例えば、金属陽イオンがアルミニウムの場合では、以下の式で、表される。
[化学処理前のアルミニウム/珪素(モル比)−化学処理後のアルミニウム/珪素(モル比)]÷化学処理前のアルミニウム/珪素(モル比)×100
【0149】
上記化学処理を実施した後に、反応溶液中の反応物もしくは未反応物が残存することで、活性低下を招く可能性があるため、洗浄することが好ましい。この際、一般的には、水や有機溶媒などの液体を使用する。
洗浄率としては、1/5〜1/1000、1/10〜1/100が好ましい。洗浄および脱水後は、乾燥を行う。乾燥は、イオン交換性層状珪酸塩の構造破壊を起こさないように行うことが好ましく、一般的には、乾燥温度は100〜800℃、好ましくは150〜600℃で実施可能であり、特に好ましくは150〜300℃であり、乾燥温度が800℃以下で、イオン交換性層状珪酸塩の構造破壊が起こらないように、実施することが好ましい。
これらのイオン交換性層状珪酸塩は、構造破壊されなくとも乾燥温度により特性が変化するために、用途に応じて乾燥温度を変えることが好ましい。乾燥時間は、通常1分〜24時間、好ましくは5分〜4時間であり、雰囲気は、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、又は減圧下であることが好ましい。乾燥方法に関しては、特に限定されず、各種方法で実施可能である。
【0150】
さらに、一般に、イオン交換性層状珪酸塩には、吸着水および層間水が含まれる。本発明においては、これらの吸着水および層間水を除去して、使用するのが好ましい。
水の除去には、通常、加熱処理が用いられる。その方法は、特に制限されないが、付着水、層間水が残存しない、また、構造破壊を生じないような条件を選ぶことが好ましい。
加熱時間は、0.1時間以上、好ましくは0.2時間以上である。その際、除去した後の水分含有率が、温度200℃、圧力1mmHgの条件下で2時間脱水した場合の水分含有率を0重量%とした時、3重量%以下、好ましくは1重量%以下であることが好ましい。
【0151】
以上、本発明に係る特性を示すイオン交換性層状珪酸塩の製造方法を述べてきたが、本発明に係る特性が得られる製造方法は、上記に限らず、製造することが可能である。
本発明に係るオレフィン重合用触媒成分であるイオン交換性層状珪酸塩の好ましい製造方法の一態様を示すと、比表面積が0.1〜140m
2/gで、かつアルミニウムとマグネシウムのモル比(Mg/Al)が0.285〜3.5、(I/M)が0<(I/M)≦2、Si(s)/Si(t)が0.50〜1であるイオン交換性層状珪酸塩の八面体シートの主な金属陽イオンを10〜65モル%脱離させる処理工程を含む方法である。
【0152】
(9)イオン交換性層状珪酸塩の水分散時の平均粒子径
本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩は、水分散させたときの平均粒子径が小さい方が好ましい。これは、単位重量当たりの比表面積を増加させることに寄与する効果があると、考えている。水分散とは、たとえばイオン交換性層状珪酸塩の0.5wt%水スラリーを均一に調製するために、スターラーなどで強制撹拌しながら調製し、1晩置いた後に10分間超音波処理させるなど、充分に水と馴染んだ状態のことを言う。
また、平均粒径の測定方法は、レーザー回折散乱式の粒度測定装置(例えば、HORIBA製のLA−920など)を使用し、水を溶媒として用いて測定する。
平均粒径は、この測定により得られたメジアン径のことを示す。このメジアン径の上限は、5μm以下が好ましく、2.5μm以下がより好ましく、1.5μm以下がさらに好ましく、1μm以下が特に好ましい。平均粒子径は、小さければ小さい方が好ましく、下限に関しては、特に制限はないが、例えば0.01μm以上などが挙げられる。
【0153】
(10)イオン交換性層状珪酸塩の造粒
本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩は、上記のようなイオン交換性層状珪酸塩を造粒することが可能であり、造粒して造粒体にて用いることが好ましい。
造粒方法としては、特に制限されないが、好ましい造粒体の製造方法としては、撹拌造粒法、噴霧造粒法、転動造粒法、ブリケッティング、コンパクティング、押出造粒法、流動層造粒法、乳化造粒法、液中造粒法、圧縮成型造粒法等が挙げられる。より好ましくは、噴霧乾燥造粒や噴霧冷却造粒、流動層造粒、噴流層造粒、液中造粒、乳化造粒等が挙げられ、特に好ましくは噴霧乾燥造粒や噴霧冷却造粒が挙げられる。
噴霧造粒を行う場合、原料スラリーの分散媒として、水あるいはメタノール、エタノール、クロロホルム、塩化メチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の有機溶媒を用いる。好ましくは水を分散媒として用いる。
噴霧造粒の際、原料スラリー液中におけるイオン交換性層状珪酸塩の濃度を、0.1〜70重量%、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは7〜45重量%、さらに好ましくは10〜40重量%にすることで、球状の造粒体が得られる。上記濃度の上限を超えると、球状粒子が得られず、また、上記濃度の下限を下回ると、造粒体の平均粒径が小さくなりすぎる。球状粒子が得られる噴霧造粒の熱風の入口の温度は、分散媒により異なるが、水を例にとると、80〜260℃、好ましくは100〜220℃で行う。
【0154】
また、造粒の際に、有機物、無機塩等の各種バインダーを用いてもよい。用いられるバインダーとしては、例えば、砂糖、デキストローズ、コーンシロップ、ゼラチン、グルー、カルボキシメチルセルロース類、ポリビニルアルコール、水ガラス、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、アルコール類、グリコール、澱粉、カゼイン、ラテックス、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、タール、ピッチ、アルミナゾル、シリカゲル、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等が挙げられる。
【0155】
造粒前のイオン交換性層状珪酸塩の形状については、特に制限はなく、天然に産出する形状、人工的に合成した時点の形状でもよいし、また、粉砕、造粒、分級などの操作によって形状を加工したものを用いてもよい。
また、造粒したイオン交換性層状珪酸塩の粒径は、5μm以上、300μm以下であり、球状であることが好ましい。より好ましくは5μm以上、250μm以下であり、さらに好ましくは、5μm以上、200μm以下である。5μm未満の微粒子が多く存在すると、反応器への付着等が起こりやすく、ポリマー同士の凝集、重合プロセスによってはショートパスあるいは長期滞留の要因となってしまい、好ましくない。300μm以上の粗粒子については、閉塞が起こりやすい等の問題が生じるために好ましくない。これらを満たす平均粒径とするために、あるいは平均粒径に対して極度に小さい、または大きい粒径を示す粒子が存在する場合には、分級、分別等により粒径を制御してもよい。
【0156】
4.成分[C]
成分[C]としては、有機アルミニウム化合物が用いられる。本発明においては、次の一般式:
AlR
71qZ
3−q ・・・・一般式(13)
で示される有機アルミニウム化合物が好適である。
本発明では、この式で表される化合物を単独で、または複数種混合してあるいは併用して使用することができることは言うまでもない。この式中、R
71は、炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Zは、ハロゲン原子、水素原子、アルコキシ基、アミノ基を示す。qは0より大きくかつ3までの数である。R
71としては、アルキル基が好ましく、また、Zは、それがハロゲンの場合には塩素が、アルコキシ基の場合には炭素数1〜8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1〜8のアミノ基が、好ましい。
【0157】
好ましい有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、q=3のトリアルキルアルミニウムおよびジアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、R
71が炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
【0158】
5.オレフィン重合用触媒の調製(製造方法)
本発明に係るオレフィン重合用触媒の製造方法は、好ましくは下記工程[I]、[II]を順次行うこが望ましい。
工程[I]:成分[A−1]と成分[B]及び[C]とを接触させて、接触生成物(1)を製造する工程。
工程[II]:工程[I]で得られた接触生成物(1)に、成分[A−2]を接触させて、接触生成物(2)を製造する工程。
但し、成分[A−2]に対する[A−1]のモル比率[A−1]/[A−2]は、1.0〜99.0である。
【0159】
(1)工程[I]
工程[I]は、成分[A−1]と成分[B]及び[C]とを接触させて、接触生成物(1)を製造する工程である。
上記の成分[A−1]と成分[B]を、同時にもしくは連続的に、あるいは一度にもしくは複数回にわたって、接触させることによって、形成させることができる。
また、成分[A−1]と成分[B]を接触させる場合に、成分[C]を同時にもしくは連続的に、あるいは一度にもしくは複数回にわたって、接触させることができる。
これらの接触順序としては、合目的な任意の組み合わせが可能であるが、特に好ましいものを各成分について示せば、次の通りである。
(i)成分[A−1]と成分[B]を接触させる前に、成分[A−1]と、あるいは成分[B]と、または成分[A−1]及び成分[B]の両方に、成分[C]を接触させること、または、(ii)成分[A−1]と成分[B]を接触させるのと同時に、成分[C]を接触させること、または、(iii)成分[A−1]と成分[B]を接触させた後に、成分[C]を接触させることが可能であるが、好ましくは、(i)成分[A−1]と成分[B]を接触させる前に、成分[C]といずれかに接触させる方法である。
この時、成分[C]の使用量としては、成分[A−1]に対して、[C]/[A−1]=0.3〜100(モル比)の範囲で接触させることが好ましい。
【0160】
成分[C]は、成分[B]の存在下、成分[A−1]と反応して、活性種を形成する。具体的には、成分[C]としてアルキルアルミニウムを用いた場合、成分[A−1]の補助配位子がハロゲンなどのアルキル基以外の場合には、その補助配位子をアルキル基で置換することにより、活性種が生成する。
したがって、使用する成分[C]の量が少なすぎると、この置換反応が不十分となり、活性が低下するおそれがある。そこで成分[C]の使用量としては、成分[A−1]に対して、モル比で0.3以上が好ましく、より好ましくは0.6以上であり、さらに好ましくは1.0以上である。
また、成分[A−1]には、インデニル環の2位にヘテロ原子を含有する置換基を有している場合には、このヘテロ原子近傍に成分[C]を存在させることにより、後に成分[A−2]と接触させた場合に、このヘテロ原子が成分[A−2]に作用して、活性を低下してしまうことを防止できると、本発明者らは考えている。そこで成分[C]の使用量としては、成分[A−1]に対して、モル比で2.0以上が好ましく、より好ましくは3.0以上であり、さらに好ましくは4.0以上である。
一方、機構またはメカニズムは必ずしも明確ではないが、成分[C]は、成分[A−1]と反応して、成分[A−1]が分解もしくは被毒するという副反応を起こすと、本発明者らは考えている。そこで成分[C]の使用量としては、成分[A−1]に対して、モル比で100以下が好ましく、より好ましくは50以下であり、さらに好ましくは10以下である。
【0161】
各成分の接触は、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒中で、行うのが普通である。接触温度は、特に限定されないが、−20℃〜150℃の間で行うが、先程の副反応を抑えるという観点では、0℃〜60℃の間で行うのが好ましく、更に好ましくは10℃〜30℃の間が好ましい。
【0162】
(2)工程[II]
工程[II]は、工程[I]で得られた接触生成物(1)に、成分[A−2]を接触させて、接触生成物(2)を製造する工程である。
すなわち、工程[I]で得られた接触生成物(1)に、成分[A−2]を加えることにより、成分[B]に、成分[A−2]を活性化させて担持させる工程である。
この場合にも、成分[C]は、成分[B]の存在下、成分[A−2]と反応して、活性種を形成する。具体的には、成分[C]としてアルキルアルミニウムを用いた場合、成分[A−2]の補助配位子をアルキル基で置換することにより、活性種が生成する。
したがって、使用する成分[C]の量が少なすぎると、この活性化が不十分となり活性が低下してしまう。そこで、成分[C]の使用量としては、成分[A−2]に対して、モル比で0.3以上が好ましく、より好ましくは0.6以上であり、さらに好ましくは1.0以上である。
一方、成分[C]は、機構またはメカニズムは必ずしも明確ではないが、成分[A−2]と反応して、分解もしくは被毒するという副反応を起こすと、本発明者らは考えている。そこで、この成分[C]の使用量は、成分[A−2]に対して、モル比で10以下が好ましく、更に好ましくは5以下である。
ここで、工程[II]における成分[C]の量とは、工程[I]で加えた成分[C]の量と、工程[II]で新たに加えた成分[C]の量とを、合わせた量となる。
【0163】
また、工程[I]と工程[II]の間で、洗浄を行ってもよい。すなわち、工程[I]で各成分を接触させた後、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒にて、洗浄を行うことにより、工程[I]で成分[B]に担持されないで溶媒中に残った成分[A−1]を、系中から除く工程である。
成分[A−1]と成分[A−2]が同時に溶媒中に存在すると、現時点では、その作用機構は、必ずしも明快ではないが、互いに相互作用を及ぼし、被毒もしくは活性を低下させてしまうと、本発明者らは考えている。
したがって、洗浄によって、溶媒中に遊離した成分[A−1]の量を十分に低下させることが望ましく、そのためには、洗浄率として、1/10以下になるように洗浄を行うことが必要である。一方、過度の洗浄は、担持された成分[A−1]を引き抜いてしまうということが考えられるため、洗浄率としては、1/1000以上が必要である。
また、成分[A−1]が一般式(a1)に規定するようなインデニル環の2位にヘテロ原子を含有する置換基を有する場合には、この成分[A−1]が溶媒中に多量に残ったまま、次の成分[A−2]との接触工程を行うと、成分[A−1]上のヘテロ原子が成分[A−2]に作用して、成分[A−2]の一部を被毒もしくは活性を低下させてしまうと、本発明者らは考えている。
したがって、洗浄によって、溶媒中に遊離した成分[A−1]の量を十分に低下させることが望ましく、そのためには、洗浄率として、1/10〜1/1000の範囲で洗浄を行うことがよく、更に好ましくは1/50〜1/1000の範囲で、洗浄を行うことがよい。
【0164】
本発明で使用する成分[A−1]、成分[A−2]、成分[B]の使用量は、任意である。例えば、成分[B]に対する成分[A−1]の使用量は、成分[B]1gに対し、好ましくは1.0μmol〜50μmol、特に好ましくは2.0μmol〜30μmolの範囲である。
また、成分[A−2]の使用量は、成分[B]1gに対し、好ましくは0.5μmol〜25μmol、特に好ましくは1.0μmol〜15μmolの範囲である。
【0165】
本発明で使用する成分[A−1]と成分[A−2]は、成分[A−1]/成分[A−2]のモル比率が1.0以上、99.0以下である。この割合を変化させることで、溶融物性と触媒活性のバランスを調整することが可能である。
つまり、成分[A−1]からは、低分子量の末端ビニルマクロマーを生成し、成分[A−2]からは、一部マクロマーを共重合した高分子量体を生成する。
したがって、成分[A−2]に対する成分[A−1]の割合を変化させることで、マクロマー濃度を変化させるこができ、それにより重合体の分岐量を変えることができる。
より分岐量の多い重合体を製造するためには、成分[A−1]/成分[A−2]のモル比率は、1.0以上が必要であり、好ましくは1.5以上であり、更に好ましくは2.0以上である。また、上限に関しては99.0以下であり、好ましくは40.0以下であり、更に好ましくは10.0以下であり、さらに、高い触媒活性で効率的に本発明に係る重合体を得るためには、好ましくは5.0以下であり、更に好ましくは3.0以下の範囲である。ここで、成分[A−1]は、工程[I]における成分[A−1]の使用量を示し、一方、成分[A−2]は、工程[II]における成分[A−2]の使用量を示す。
また、上記範囲で成分[A−1]を使用することにより、水素量に対する、平均分子量と触媒活性のバランスを調整することが可能である。
【0166】
6.オレフィン重合用触媒
本発明のオレフィン重合用触媒は、前述の各オレフィン重合用触媒成分を用いて、好ましくは前述の各工程を経ることによって得られる、固体状の触媒である。この触媒は、少なくとも成分[A−1]、成分[A−2]、成分[B]、成分[C]を含んでいる。この触媒は、前記特許文献19、20等で提案される製造方法により得られる触媒よりも、予備重合倍率を高めることが可能で、その結果、嵩密度が高く、流動性が高く、取扱いが容易な(予備重合された)オレフィン重合用触媒である。
【0167】
また、本発明のオレフィン重合用触媒は、これにオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合を実施することが可能であり、好ましい。予備重合を行うことにより、粒子性状が向上し、取扱いが容易になる他、本重合を行った際に、溶融物性を向上することができる。
溶融物性が向上する理由としては、本重合を行った際に重合体粒子間で分岐成分を均一に分布させることができるためと、本発明者らは考えている。
そこで予備重合するポリマー量は、成分[B]に対し重量比で、好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.1以上であり、上限は、経済性や取り扱いのためには100以下、さらに好ましくは50以下である。ここで成分[B]に対するポリマーの重量比のことを予備重合倍率と表現することもある。
【0168】
また、予備重合に使用するオレフィンは、特に限定はないが、プロピレン、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレン等を例示することができ、好ましくはプロピレンである。
オレフィンのフィード方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持するフィード方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせる等、任意の方法が可能である。予備重合温度、時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合時に、成分[C]を、さらに添加することもできる。また、予備重合終了後に洗浄することも可能である。
なお、本発明のオレフィン重合用触媒には、成分[A−1]、成分[A−2]、成分[B]、成分[C]以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、チタニア等の滑剤を添加してもよい。
【0169】
II.プロピレン系重合体の製造方法
1.触媒の使用/プロピレン重合
重合様式は、前記成分[A−1]、成分[A−2]、成分[B]及び成分[C]を含むオレフィン重合用触媒とモノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用し得る。
具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずモノマー自身(例えば、プロピレン)を溶媒として用いる、所謂バルク法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相法などが採用できる。また、連続重合、回分式重合を行う方法も適用される。また、単段重合以外に、2段以上の多段重合することも可能である。
【0170】
スラリー重合の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。
また、重合温度は、0℃以上150℃以下である。特に、バルク重合を用いる場合には、40℃以上が好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また上限は、80℃以下が好ましく、更に好ましくは75℃以下である。
さらに、気相重合を用いる場合には、40℃以上が好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また上限は100℃以下が好ましく、更に好ましくは90℃以下である。
【0171】
重合圧力は、1.0MPa以上5.0MPa以下である。特に、バルク重合を用いる場合には、1.5MPa以上が好ましく、更に好ましくは2.0MPa以上である。また上限は、4.0MPa以下が好ましく、更に好ましくは3.5MPa以下である。
さらに、気相重合を用いる場合には、1.0MPa以上が好ましく、更に好ましくは1.5MPa以上である。また上限は3.0MPa以下が好ましく、更に好ましくは2.5MPa以下である。
【0172】
さらに、分子量調節剤として、また、活性向上効果のために、補助的に水素をモノマーに対して、モル比で1.0×10
−6以上、1.0×10
−2以下の範囲で用いることができる。
また、使用する水素の量を変化させることで、生成する重合体の平均分子量の他に、分子量分布、分子量分布の高分子量側への偏り、非常に高い分子量成分、分岐(量、長さ、分布)を制御することができ、そのことにより、歪硬化度、溶融張力、溶融延展性といった溶融物性を制御することができる。
本発明で用いることができるモノマーとしてのオレフィンは、炭素数2〜20のα−オレフィン等である。オレフィン重合体は、単一モノマーの単独重合体、二種以上のモノマー間の共重合体が挙げられる。本発明のオレフィン重合用触媒の製造方法から得られたオレフィン重合用触媒は、プロピレンの単独重合、プロピレンとプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンとの共重合に好適に用いることができる。
【0173】
また、プロピレンモノマー以外に、炭素数2〜20(モノマーとして使用するものを除く)程度のα−オレフィンをコモノマーとして使用する共重合を行ってもよい。プロピレン系重合体中の(総)コモノマー含量は、0モル%以上、20モル%以下の範囲であり、上記コモノマーを複数種使用することも可能である。具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンである。
この中では、本発明に係るプロピレン系重合体を溶融物性と触媒活性をバランスよく得るためには、エチレンを5モル%以下で用いるのが好ましい。特に、剛性の高い重合体を得るためには、重合体中に含まれるエチレンを1モル%以下になるように、エチレンを用いるのがよく、更に好ましくはプロピレン単独重合である。
【0174】
2.プロピレン系重合体の分析および物性
本発明では、特定の構造をもつ成分[A−1]からβ−メチル脱離反応により末端がビニル構造をもつマクロマーが生成し、更に、特定の構造をもつ成分[A−2]によりそのマクロマーが共重合されることにより、長鎖分岐構造をもつポリマーが生成するという特徴を有する。
したがって、本発明で製造できるプロピレン系重合体は、長鎖分岐が多く導入された重合体であることを特徴とする。また、長鎖分岐が多く導入されることにより、溶融物性が更に向上して、各種成形に有利となることが推察できる。
長鎖分岐量の定量化方法としては、
13C−NMRや下記に示す3D−GPCによる測定方法が挙げられる。
本発明においては、下記に示す3D−GPC測定から算出する分岐指数(g’)を用いて、長鎖分岐量の評価を行った。
【0175】
[3D−GPCによる分岐構造解析]
本明細書において、3D−GPCとは、3つの検出器が接続されたGPC装置をいう。かかる3つの検出器は、示差屈折計(RI)、粘度検出器(Viscometer)及び多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)である。
示差屈折計(RI)および粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社のAlliance GPCV2000を用いた。
また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いた。
検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続した。移動相溶媒は、1,2,4−trichlorobenzene(酸化防止剤のIrganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。流量は1mL/分である。カラムは、東ソー社GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いた。カラム、試料注入部および各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとした。注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。
MALLSから得られる絶対分子量(M)、慣性二乗半径(Rg)およびViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行った。
【0176】
参考文献:
1.Developments in polymer characterization, vol.4. Essex: Applied Science; 1984. Chapter1.
2.Polymer, 45, 6495−6505(2004)
3.Macromolecules, 33, 2424−2436(2000)
4.Macromolecules, 33, 6945−6952(2000)
【0177】
[分岐指数(g’)の算出]
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度(ηbranch)と、別途、線状ポリマーを測定して得られる極限粘度(ηlin)との比(ηbranch/ηlin)として、算出する。
ポリマー分子に長鎖分岐が導入されると、同じ分子量の線状のポリマー分子と比較して、慣性半径が小さくなる。慣性半径が小さくなると、極限粘度が小さくなることから、長鎖分岐が導入されるに従い、同じ分子量の線形ポリマーの極限粘度(ηlin)に対する分岐ポリマーの極限粘度(ηbranch)の比(ηbranch/ηlin)は小さくなっていく。
したがって、分岐指数(g’=ηbranch/ηlin)が1より小さい値になる場合には、分岐が導入されていることを意味し、その値が小さくなるに従い、導入されている長鎖分岐が増大していくことを意味する。
【0178】
本発明により製造できるオレフィン重合体は、長鎖分岐が多く導入されることに特徴があり、それにより溶融物性が向上する効果を有する。
したがって、本発明によるオレフィン重合体では、分岐指数(g’)は、分子量(M)が100万のところで、0.95以下であることを特徴とし、さらには0.90以下であることを特徴とする。
【実施例】
【0179】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
なお、物性測定に使用した分析機器および測定方法は、以下の通りである。
【0180】
(各種物性測定法)
(1)イオン交換性層状珪酸塩の組成分析:
イオン交換性層状珪酸塩におけるSi、Al、Mg、Na、Feの組成分析は、JIS法による化学分析により検量線を作成し、蛍光X線測定にて定量した。
装置は、理学電機工業(株)ZSX−100eを使用した。試料は、700℃で1時間焼成後、0.5gを取り分け、融剤(Li
2B
4O
7)4.5g、剥離剤(KBr)0.03gと混合し、ガラスビードを作成することで調製した。
また、CaおよびKについては、ICP発光分光法により求めた。700℃で1時間焼成した試料に、硫酸とフッ化水素酸を加えて、加熱溶解した後、その溶液をICP−OES(堀場製作所製ULTIMA2型)にて測定した。
【0181】
(2)比表面積測定および細孔容量測定:
窒素吸脱着法による細孔分布および比表面積を測定した。液体窒素温度下で吸着等温線を測定した。得られた吸着側等温線を用いて、BET多点法解析を実施し、比表面積を求めた。
また、メソ細孔分布は、BJH法により解析した。試料は、全てヒステリシスを示したので吸着側細孔分布より、細孔径が2〜10nmの細孔の細孔容量とメソ細孔容量を求めた。
装置:カンタークローム社製オートソーブ3B
測定手法:窒素ガス吸着法
前処理条件:試料を200℃、真空下(1.3MPa以下)で2時間減圧加熱
試料量:約0.2g
ガス液化温度:77K
【0182】
(3)粒径分布の測定
(3−1)原料:
イオン交換性層状珪酸塩の粒径分布測定は、堀場製作所社製レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置LA−920を用い、分散媒として水を用いて、屈折率1.3、形状係数1.0の条件で測定した。
イオン交換性層状珪酸塩0.05gを、水9.95gにスターラーで撹拌しながら、ゆっくり加え、均一な0.5wt%の水スラリーを調製し、12時間以上放置、これを10分間超音波処理して試料を調製した。得られた粒径分布からメジアン径を平均粒径とした。
【0183】
(3−2)造粒品、担体および触媒:
造粒品、担体および触媒の粒径分布は、堀場製作所社製レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置LA−920を用い、分散媒としてエタノールを用いて、屈折率1.3、形状係数1.0の条件で測定した。試料は、エタノールを撹拌させながら、粉体で添加し、10分間超音波処理して測定を行った。得られた粒径分布からメジアン径を平均粒径とした。
【0184】
(4)X線回折
(4−1)X線回折の測定:
X線回折は、以下の装置および条件で測定した。
装置:リガク社製X−ray Diffractometer Smartlab
X線源:Cu−Kα線(Kβ吸収板使用)、管電圧40kV、管電流30mA
光学系:集中法
発散スリット2/3度、散乱スリット2/3度、受光スリット0.300mm
スキャンモード:2θ/θスキャン
2θスキャン範囲:3.0000〜55.0000度
角度ステップ幅:0.0200度
スキャン速度:4.0000度/分
検出器:シンチレーションカウンタ
サンプルホルダ:深さ0.2mmのガラス製ホルダ
【0185】
(4−2)X線回折解析法:
X線回折強度は、2θに対するシンチレーションカウンタのカウンタ数として得ることができる。解析強度のベースラインとして、2θ=15度及び25度で、それぞれ周囲±0.1度(角度ステップが0.02度なのでそれぞれ11点の平均となる)の範囲の強度平均値をとり、これを2θ=15度、25度での強度とし、この2点を結ぶように直線を引き、ベースラインとした。もし、2θ=15±0.1度、25±0.1度の範囲にサンプルの何らかの回折ピークが現れている場合は、そのピークを避けるようにそれぞれ周辺数度の範囲でピークの無い2θ位置を探し、その位置でベースラインの2θ位置と強度を定めた。
なお、ピークの有無の判定については、測定回折強度を2θ=14〜26度の範囲に対してプロットし、ポイント数20の局所最大法のピーク検索を適用することで行った。上記で求めたベースラインを差し引いた回折強度を2θ=15〜25度の範囲に対してプロットし、ポイント数20の局所最大法、しきい値20%フィルター(強度最大値の20%に満たないものは、ピークとみなさない)にてピーク検索を行った。
【0186】
(5)メルトフローレート(MFR):
タカラ社製メルトインデクサーを用いて、JIS K7120の「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレート(MFR)及びメルトボリュームレート(MVR)の試験方法」の試験条件230℃、荷重2.16kgfに従って測定した。単位はg/10分である。
【0187】
(6)嵩密度(BD):
触媒の嵩密度(BD)は、ASTM D1895−69に準ずる装置を使用し、測定した。
【0188】
(触媒成分の合成)
[触媒成分[A−1]の合成例1(錯体1)]
(1)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成:(成分[A−1](錯体1)の合成):
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムは、特開2012―149160号公報に記載の方法と同様に、実施した。
【0189】
[触媒成分[A−2]の合成例2(錯体2)]:
(1)rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成:(成分[A−2](錯体2)の合成):
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成は、特開平11―240909号公報の実施例1に記載の方法と同様に、実施した。
【0190】
[触媒成分[B]の合成例(担体1)]
1.造粒モンモリロナイト
イオン交換性層状珪酸塩として、モンモリロナイトの造粒品である水澤化学工業社製「ベンクレイKK」を使用した。
この造粒モンモリロナイトは、平均粒径11.4μm、化学組成(重量%):Al=9.72、Si=31.72、Fe=1.65、Mg=3.11、Na=3.48であった。モル比では、Al/Si=0.319、Mg/Si=0.113、Fe/Si=0.026、Mg/Al=0.355であった。比表面積は65m
2/gであった。また、八面体層を構成する主な金属はアルミニウムであった。また、このイオン交換性層状珪酸塩のSi(s)/Si(t)は、0.93であった。0.5wt%水スラリーで測定した粒径は0.44μmであった。
【0191】
2.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
撹拌翼と還流装置を取り付けた0.5Lフラスコに、蒸留水397.7gを投入し、96%硫酸117.2gを滴下した。内温が90℃になるまでオイルバスで加熱し、目標温度に到達したところで、さらに、上記1の造粒モンモリロナイトを70g添加後撹拌した。
その後90℃を保ちながら210分反応させた。この反応溶液を0.3Lの純水に空けることで反応を停止し、さらに、このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、その後0.7Lの純水で3回洗浄した。
この化学処理において、モンモリロナイトの構造は、変化せずに2:1型層構造を維持していた。組成(重量%)は、Al=6.67、Si=37.9、Mg=1.83、Naは検出下限以下の数値であり、モル比では、Al/Si=0.183、Mg/Al=0.304であった。硫酸処理前のAlに対して、硫酸処理後のAlは、42.6%減少(溶出)した。
回収したケーキは、120℃で終夜乾燥後、55g秤取り、次工程に用いた。この粘土は、1Lプラスチックビーカーにて硫酸リチウム水和物25gを純水347mlに溶解した水溶液に加えて、61℃で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、0.5Lの純水で3回洗浄し、回収したケーキを120℃で終夜乾燥した。その結果、44.9gの化学処理モンモリロナイトを得た。
この化学処理モンモリロナイトは、Li含量が0.42重量%であり、層間にLiを含むものであったことから、酸類及び塩類処理を行ってもイオン交換性を維持していていることを確認できた。その他の組成及び比表面積は、この処理の前後で変化しなかった。
このようにして得られた化学処理モンモリロナイトは、目開き53μmの篩にて篩い分けし粗大粒子を取り除いたところ、篩通過分として平均粒径が13.9μmの粒子を42.7g得た。同形置換率は23%、Mg/Al=0.304(mol/mol)、比表面積は376m
2/gであった。全メソ細孔容量(PV
total)は0.39cm
3/gであり、細孔径2〜10nmの細孔の細孔容量(PV
2−10)は、0.28cm
3/gであり、全メソ細孔容量に対する細孔径2〜10nmの細孔の細孔容量の割合(PV
2−10/PV
total)は、71.8%であった。
この化学処理イオン交換性層状珪酸塩(担体1)のX線回折測定(XRD測定)したところ、2θ=15〜20度の範囲にピークは2つ検出され、2θ=19.6〜20.0度のピーク強度(M)に対する、2θ=15〜20度に存在するそれ以外のピーク強度(I)の割合は、0.60であった。この結果を表1に示した。
【0192】
[実施例1]
1.触媒調製及び予備重合:
3つ口フラスコ(容積1L)中に、上で得られた化学処理モンモリロナイト(担体1)10gを入れ、ヘプタン(66mL)を加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を34.0mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで残液率が1/100になるまで洗浄し、全容量を50mLとした。
また、別のフラスコ(容積200mL)中で、前記触媒成分[A−1]の合成例1で作製したrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウム(105μmol)をトルエン(21mL)に溶解し(溶液1)、更に、別のフラスコ(容積200mL)中で、前記触媒成分[A−2]の合成例2で作製したrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム(45μmol)をトルエン(9mL)に溶解した(溶液2)。
先ほどの化学処理モンモリロナイトが入った1Lフラスコにトリイソブチルアルミニウム(0.42mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を0.6mL)を加えた後、上記溶液1(21mL)を加えて20分間室温で撹拌した。
その後、更にトリイソブチルアルミニウム(0.18mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を0.25mL)を加えた後上記溶液2加えて、1時間室温で攪拌した(残存アルミニウム量が0.60mmol、成分[C]/成分[A−2]=13.3である。)。
その後、ヘプタンを170mL追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのちプロピレンを5g/時の速度でフィードし、4時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、残った部分に、トリイソブチルアルミニウム(6mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を8.5mL)を加えて5分攪拌した。
この固体を1時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒31.0gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.10であった(触媒A)。
【0193】
2.プロピレンの重合:
3Lオートクレーブに加熱下窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却した。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(144mg/mL)2.86mLを加え、水素を76Nml導入し、液体プロピレン750gを導入した後、70℃まで昇温した。
その後、上記実施例1で合成した触媒Aを、予備重合ポリマーを除いた重量で80mgを高圧アルゴンで重合槽に圧送し、重合を開始した。70℃で1時間保持した後、エタノールを加えて重合を停止した。
その結果、320gの重合体が得られた。MFRは0.3g/10minで、活性は4000gPP/g触媒・時間であった。重合結果を表2に示す。
【0194】
[実施例2]
1.プロピレンの重合:
実施例1で得られた予備重合触媒(触媒A)50mgを用いて、水素を95Nmlとする以外は、実施例1のプロピレンの重合方法と同じようにして、重合を行った。
その結果、260gの重合体が得られた。MFRは1.2g/10minで、活性は5200gPP/g触媒・時間であった。重合結果を表2に示す。
【0195】
[触媒成分[B]の合成例(担体2)]
水澤化学工業社製「ベンクレイSL」を40.1g使用して、蒸留水を226.4g、硫酸を66.7g、硫酸と60分反応させた以外は、触媒成分[B]の合成例(担体1)と同様の硫酸処理を行った。
ベンクレイSLは、平均粒径:17.5μm、組成(重量%):Al=8.87、Si=33.66、Fe=11.99、Mg=2.04、Na=2.55であり、モル比では、Al/Si=0.275、Mg/Si=0.070、Mg/Al=0.255であった。比表面積は93m
2/gであった。また、八面体層を構成する主な金属はアルミニウムであった。また、このイオン交換性層状珪酸塩のSi(s)/Si(t)は、0.70であった。0.5wt%水スラリーで測定した粒径は、0.53μmであった。
酸処理後、得られた化学処理モンモリロナイトの組成(重量%)は、Al=8.18、Si=36.78、Mg=1.30であり、モル比では、Al/Si=0.232、Mg/Al=0.176であり、硫酸処理前後でAlは15.3%溶出した。
次いで、触媒成分[B]の合成例(担体1)同様に、硫酸リチウム水和物で処理後、目開き53μmで篩分けして、粗大粒子を取り除き、篩通過分を使用した。同形置換率は15%、Mg/Al=0.176(mol/mol)、比表面積は214m
2/gであった。全メソ細孔容量(PV
total)は0.42cm
3/gであり、細孔径2〜10nmの細孔の細孔容量(PV
2−10)は、0.23cm
3/gであり、全メソ細孔容量に対する細孔径2〜10nmの細孔の細孔容量の割合(PV
2−10/PV
total)は、54.8%であった。
この化学処理イオン交換性層状珪酸塩(担体2)のX線回折測定(XRD測定)したところ、2θ=15〜20度の範囲にピークは2つ検出され、2θ=19.6〜20.0度のピーク強度(M)に対する、2θ=15〜20度に存在するそれ以外のピーク強度(I)の割合は、1.22であった。この結果を表1に示した。
【0196】
[比較例1]
1.触媒調製及び予備重合:
上記触媒成分[B]の合成例(担体2)で得られた化学処理モンモリトナイトを用いる以外は、実施例1の触媒調製及び予備重合と同様に調製を行った。その結果、乾燥予備重合触媒26.1gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.61であった(触媒B)。
【0197】
2.プロピレンの重合:
比較例1で得られた予備重合触媒(触媒B)80mgを用いて、実施例1のプロピレンの重合方法と同じようにして、重合を行った。
その結果、160gの重合体が得られた。MFRは0.8g/10minで、活性は2000gPP/g触媒・時間であった。重合結果を表2に示す。
【0198】
[比較例2]
1.プロピレンの重合:
比較例1で得られた予備重合触媒(触媒B)80mgを用いて、水素を95Nmlとする以外は、実施例1のプロピレンの重合方法と同じようにして、重合を行った。
その結果、208gの重合体が得られた。MFRは3.0g/10minで、活性は2600gPP/g触媒・時間であった。重合結果を表2に示す。
【0199】
[触媒成分[B]の合成例(担体3)]
水澤化学工業社製「ベンクレイSL」を40.1g用いて、蒸留水660g、硫酸マグネシウム7水和物を133gの混合溶液に添加し、90℃で120分反応させた以外は、触媒成分[B]の合成例(担体1)と同様にして、処理を行った(硫酸処理は実施せず)。
得られた化学処理モンモリロナイト(担体3)は、層間イオンの交換が起こったため、Mgは増加し、同形置換率は26%、組成(重量%)はMg=3.6、モル比でMg/Al=0.450となり、比表面積は変化せず93m
2/gであった。その後、硫酸リチウムでの処理は行わなかった。全メソ細孔容量(PV
total)は0.22cm
3/gであり、細孔径2〜10nmの細孔の細孔容量(PV
2−10)は、0.05cm
3/gであり、全メソ細孔容量に対する細孔径2〜10nmの細孔の細孔容量の割合(PV
2−10/PV
total)は、22.7%であった。
この化学処理イオン交換性層状珪酸塩(担体3)のX線回折測定(XRD測定)したところ、2θ=15〜20度の範囲にピークは2つ検出され、2θ=19.6〜20.0度のピーク強度(M)に対する、2θ=15〜20度に存在するそれ以外のピーク強度(I)の割合は、0.67であった。この結果を表1に示した。
【0200】
[比較例3]
1.触媒調製及び予備重合:
上記触媒成分[B]の合成例(担体3)で得られた化学処理モンモリロナイトを用いる以外は、実施例1の触媒調製及び予備重合と同様に、調製を行った。その結果、予備重合は、ほとんど進行せず、乾燥予備重合触媒(触媒C)12.0gを得た。
予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は0.20であった(触媒C)。予備重合触媒の粉体性状は、悪く、塊状物もあり、嵩密度測定はできなかった。
【0201】
2.プロピレンの重合:
得られた予備重合触媒(触媒C)80mgを用いて、実施例1のプロピレンの重合方法と同じようにして重合を行った。
その結果、ほんのわずかに反応器壁にポリマーが付着する程度の重合体しか得られなかった。MFRや物性測定できなかった。重合結果を表2に示す。
【0202】
[触媒成分[B]の合成例(担体4)]
水澤化学工業社製「ベンクレイSL」を40.0g使用して、蒸留水を89.5g、硫酸を66.7g、硫酸と300分反応させた以外は、触媒成分[B]の合成例(担体1)と同様の硫酸処理を行った。
酸処理後、得られた化学処理モンモリロナイトの組成(重量%)は、Al=5.21、Si=38.92、Mg=0.80であり、モル比では、Al/Si=0.139、Mg/Al=0.170であり、硫酸処理前後でAlは50.0%溶出した。
次いで、触媒成分[B]の合成例(担体1)同様に、硫酸リチウム水和物で処理後、目開き53μmで篩分けして粗大粒子を取り除き、篩通過分を使用した。同形置換率は14%、Mg/Al=0.170(mol/mol)、比表面積は222m
2/gであった。全メソ細孔容量(PV
total)は0.39cm
3/gであり、細孔径2〜10nmの細孔の細孔容量(PV
2−10)は、0.21cm
3/gであり、全メソ細孔容量に対する細孔径2〜10nmの細孔の細孔容量の割合(PV
2−10/PV
total)は、53.8%であった。
この化学処理イオン交換性層状珪酸塩(担体4)のX線回折測定(XRD測定)したところ、2θ=15〜20度の範囲にピークは2つ検出され、2θ=19.6〜20.0度のピーク強度(M)に対する、2θ=15〜20度に存在するそれ以外のピーク強度(I)の割合は、1.74であった。この結果を表1に示した。
【0203】
[比較例4]
1.触媒調製及び予備重合:
上記触媒成分[B]の合成例(担体4)で得られた化学処理モンモリトナイトを用いる以外は、実施例1の触媒調製及び予備重合と同様に、調製を行った。
その結果、乾燥予備重合触媒26.5gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.65であった(触媒D)。予備重合触媒の嵩密度測定は0.51g/cm
3であった。
【0204】
2.プロピレンの重合:
得られた予備重合触媒(触媒D)80mgを用いて、実施例1のプロピレンの重合方法と同じようにして重合を行った。
その結果、120gの重合体が得られた。MFRは1.2g/10minで、活性は1500gPP/g触媒・時間であった。重合結果を表2に示す。
【0205】
【表1】
【0206】
【表2】
【0207】
表2、及び
図1、2から、[A−1]、[A−2]が同じとき、本発明に係る成分[B]を用いた触媒(触媒A)は、従来の方法の触媒(触媒B、C)に比べて、触媒の粉体性状が良く(触媒BDが高く)、活性が高く、同一水素量における重合条件でも分子量が高く、長鎖分岐を含有するプロピレン系重合体を効率的に製造できることがわかる。
【0208】
[触媒成分[A−1]の合成例3(錯体3)]
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム(錯体3)の合成:
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウムの合成は、特開2009−57542号公報に記載の方法にしたがって、実施した。
【0209】
[触媒成分[A−2]の合成例4(錯体4)]
rac−ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム(錯体4)の合成:
rac−ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)}ハフニウムの合成は、特開平1−319589号公報に記載の方法にしたがって、実施した。
【0210】
[触媒成分[B]の合成例(担体5)]
触媒成分[B]の合成例(担体1)で使用した造粒モンモリロナイトを使用し、硫酸と150分反応させた以外は、触媒成分[B]の合成例(担体1)と同様の硫酸処理を行い、次いで、同様に硫酸リチウム水和物で処理を行った。
ここから得られた化学処理モンモリロナイト(担体5)の組成(重量%)は、Al=7.79、Si=36.51、Mg=2.20、Li=0.50であり、モル比では、Al/Si=0.222、Mg/Al=0.313であり、硫酸処理前後でAlは30.4%溶出した。同形置換率は24%であった。比表面積は348m
2/gであった。全メソ細孔容量(PV
total)は0.36cm
3/gであり、細孔径2〜10nmの細孔の細孔容量(PV
2−10)は、0.23cm
3/gであり、全メソ細孔容量に対する細孔径2〜10nmの細孔の細孔容量の割合(PV
2−10/PV
total)は、63.9%であった。
この化学処理イオン交換性層状珪酸塩(担体5)のX線回折測定(XRD測定)したところ、2θ=15〜20度の範囲にピークは2つ検出され、2θ=19.6〜20.0度のピーク強度(M)に対する、2θ=15〜20度に存在するそれ以外のピーク強度(I)の割合は、0.51であった。この結果を前記表1に示した。
【0211】
[実施例3]
1.触媒調製及び予備重合:
3つ口フラスコ(容積1L)中に、上記で化学処理したイオン交換性層状珪酸塩(担体5)10gを入れ、ヘプタンを66mL加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度144mg/mLのヘプタン溶液を34mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで洗浄(残液率1/100まで)し、全容量を50mLとした。
その後、トリイソブチルアルミニウム(0.42mmol:濃度140mg/mLのヘプタン溶液を0.60mL)を加え、次に、別のフラスコ(容積200mL)に調整していた、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム(0.105mmol)のトルエン溶液(21mL)を加えた。
その後、ヘプタンを250ml加えて撹拌後静沈し、上澄みを270ml抜き出した(洗浄率が1/10、残存アルミニウム量が0.042mmolである。)。引き続き、トルエン19ml、へプタン5.0ml加えた。
更に5分後にトリイソブチルアルミニウム(0.18mmol:濃度140mg/mLのヘプタン溶液を0.26mL)を加えた後、別のフラスコ(容積200mL)に調整していた、rac−ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム(0.045mmol)のトルエン(9.0mL)溶液を加えてスラリーとしたものを加え、60分室温で攪拌し反応させた。その後ヘプタンを170mL追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃に安定させた後にプロピレンを5g/時の速度でフィードし2時間、40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、40℃で1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、上記デカンテーションにより残った部分に、トリイソブチルアルミニウム(12mmol:濃度144mg/mLのヘプタン溶液を8.5mL)を加えて10分攪拌した。
この固体を2時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒30.5gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.05であった(触媒E)。
【0212】
2.プロピレンの重合:
得られた予備重合触媒(触媒E)80mgを用いて、水素を19Nmlとする以外は、実施例1のプロピレンの重合方法と同じようにして、重合を行った。
その結果、312gの重合体が得られた。MFRは3.2g/10minで、活性は3900gPP/g触媒・時間であった。重合結果を表3に示す。
【0213】
[比較例5]
1.触媒調製及び予備重合:
触媒成分[A−1]として錯体3、触媒成分[A−2]として錯体4、触媒成分[B]として担体2を用いる以外は、実施例3の触媒の調製及び予備重合と同様に行った。その結果、乾燥予備重合触媒17.2g得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は、0.72であった(触媒F)。
【0214】
2.プロピレンの重合:
得られた予備重合触媒(触媒F)を用いて実施例3と同様にプロピレンの重合を行った。その結果、137.6gの重合体が得られた。MFRは8.2g/10minで、活性は1720gPP/g触媒・時間であった。重合結果を表3に示す。
【0215】
[触媒成分[A−2]の合成例5(錯体5)]
rac−ジクロロ(1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル))ハフニウム(錯体5)の合成:
rac−ジクロロ(1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル))ハフニウムの合成は、特開2001−253913号公報の実施例1に準じて合成を実施した。
【0216】
[触媒成分[B]の合成例(担体6)]
触媒成分[B]の合成例(担体1)で使用した造粒モンモリロナイトを使用し、硫酸と480分反応させた以外は、触媒成分[B]の合成例(担体1)と同様の硫酸処理を行い、次いで硫酸リチウム水和物で処理した。
ここから得られた化学処理モンモリロナイト(担体6)の組成(重量%)は、Al=6.51、Si=37.40、Mg=1.83、Li=0.28であり、モル比では、Al/Si=0.181、Mg/Al=0.292であり、硫酸処理前後でAlは44.1%溶出した。同形置換率は23%であった。比表面積は406m
2/gであった。全メソ細孔容量(PV
total)は0.47cm
3/gであり、細孔径2〜10nmの細孔の細孔容量(PV
2−10)は、0.35cm
3/gであり、全メソ細孔容量に対する細孔径2〜10nmの細孔の細孔容量の割合(PV
2−10/PV
total)は、74.5%であった。
この化学処理イオン交換性層状珪酸塩(担体6)のX線回折測定(XRD測定)したところ、2θ=15〜20度の範囲にピークは2つ検出され、2θ=19.6〜20.0度のピーク強度(M)に対する、2θ=15〜20度に存在するそれ以外のピーク強度(I)の割合は、0.86であった。この結果を前記表1に示した。
【0217】
[実施例4]
1.触媒調製及び予備重合:
3つ口フラスコ(容積1L)中に、上記で化学処理したイオン交換性層状珪酸塩(担体6)10gを入れ、ヘプタンを66mL加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度144mg/mLのヘプタン溶液を34mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで洗浄(残液率1/100まで)し、全容量を50mLとした。
その後、トリイソブチルアルミニウム(0.42mmol:濃度140mg/mLのヘプタン溶液を0.60mL)を加え、次に、別のフラスコ(容積200mL)に調整していた、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム(0.105mmol)のトルエン溶液(21mL)を加えた。
更に5分後にトリイソブチルアルミニウム(0.18mmol:濃度140mg/mLのヘプタン溶液を0.26mL)を加えた後、別のフラスコ(容積200mL)に調整していた、rac−ジクロロ(1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル))ハフニウム(0.045mmol)のトルエン(9.0mL)溶液を加えてスラリーとしたものを加え、60分室温で攪拌し反応させた。その後ヘプタンを170mL追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃に安定させた後にプロピレンを5g/時の速度でフィードし2時間、40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、40℃で1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、上記デカンテーションにより残った部分に、トリイソブチルアルミニウム(12mmol:濃度144mg/mLのヘプタン溶液を8.5mL)を加えて10分攪拌した。
この固体を2時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒22.0gを得た。予備重倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.20であった(触媒G)。
【0218】
2.プロピレンの重合:
得られた予備重合触媒(触媒G)80mgを用いて、実施例3に記載のプロピレンの重合方法と同じようにして、重合を行った。
その結果、248gの重合体が得られた。MFRは0.8g/10minで、活性は3100gPP/g触媒・時間であった。重合結果を表3に示す。
【0219】
[比較例6]
1.触媒調製及び予備重合:
触媒成分[A−1]として錯体3、触媒成分[A−2]として錯体5、触媒成分[B]として担体2を用いる以外は、実施例4の触媒の調製及び予備重合と同様に行った。その結果、乾燥予備重合触媒13.2g得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は、0.32であった(触媒H)。
【0220】
2.プロピレンの重合:
得られた予備重合触媒(触媒H)を用いて、実施例3と同様にプロピレンの重合を行った。その結果、122.4gの重合体が得られた。MFRは2.5g/10minで、活性は1530gPP/g触媒・時間であった。重合結果を表3に示す。
【0221】
[触媒成分[A−1]の合成例6(錯体6)]
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム(錯体6)の合成:
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウムの合成は、特開2009−299046号公報に記載の方法にしたがって、実施した。
【0222】
[触媒成分[A−2]の合成例7(錯体7)]
rac−ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム(錯体7)の合成:
ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウムの合成は、特開2007−308486号公報に記載の方法にしたがって、実施した。
【0223】
[実施例5]
1.触媒調製及び予備重合:
3つ口フラスコ(容積1L)中に、触媒成分[B]の合成例(担体1)で調製したイオン交換性層状珪酸塩10gを入れ、ヘプタンを66mL加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度144mg/mLのヘプタン溶液を34mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで洗浄(残液率1/100まで)し、全容量を50mLとした。
その後、トリイソブチルアルミニウム(0.42mmol:濃度140mg/mLのヘプタン溶液を0.60mL)を加え、次に、別のフラスコ(容積200mL)に調製した、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム(0.105mmol)のトルエン溶液(21mL)を加えた。
その後、ヘプタンを250ml加えて撹拌後静沈し、上澄みを270ml抜き出した(洗浄率が1/10、残存アルミニウム量が0.042mmolである。)。引き続き、トルエン19ml、へプタン5.0ml加えた。
更に5分後にトリイソブチルアルミニウム(0.18mmol:濃度140mg/mLのヘプタン溶液を0.26mL)を加えた後、別のフラスコ(容積200mL)に調製した、ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム(0.045mmol)のトルエン(9.0mL)溶液を加えてスラリーとしたものを加え、60分室温で攪拌し反応させた。その後ヘプタンを220mL追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃に安定させた後にプロピレンを5g/時の速度でフィードし4時間、40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、40℃で1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、上記デカンテーションにより残った部分に、トリイソブチルアルミニウム(12mmol:濃度144mg/mLのヘプタン溶液を8.5mL)を加えて10分攪拌した。
この固体を2時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒を31.0g得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.10であった(触媒I)。
【0224】
2.プロピレンの重合:
得られた予備重合触媒(触媒I)80mgを用いて、水素を添加しなかった以外は、実施例1に記載のプロピレンの重合方法と同じようにして、重合を行った。
その結果、214gの重合体が得られた。MFRは2.0g/10minで、活性は2675gPP/g触媒・時間であった。
【0225】
[比較例7]
1.触媒調製及び予備重合:
触媒成分[A−1]として錯体6、触媒成分[A−2]として錯体7、触媒成分[B]として担体2を用いる以外は、実施例5の触媒の調製及び予備重合と同様に行った。その結果、乾燥予備重合触媒34.5g得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は、1.45であった(触媒J)。
【0226】
2.プロピレンの重合:
得られた予備重合触媒(触媒J)を用いて、実施例5と同様に、プロピレンの重合を行った。その結果、85.6gの重合体が得られた。MFRは3.9g/10minで、活性は1070gPP/g触媒・時間であった。重合結果を表3に示す。
【0227】
【表3】
【0228】
表3から明らかなように、本発明のオレフィン重合用触媒(触媒E、G、I)は、触媒Aと同様に、従来の触媒(触媒F、H、J)に比べて、粉体性状が良く(触媒BDが高く)、活性が高く、同一水素量で分子量が高く、長鎖分岐を含有するプロピレン系重合体を効率的に製造することができることが分かる。
【0229】
(マクロマー生成能力の評価)
[評価例1]
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウム(錯体1)のマクロマー生成能力の評価:
(1)触媒の調製:
3つ口フラスコ(容積1L)中に、触媒成分[B]の合成例(担体1)で調製したイオン交換性層状珪酸塩10gを入れ、ヘプタン(65mL)を加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度142mg/mLのヘプタン溶液を34mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで残液が1/100になるまで洗浄し、最終的に全容量を50mLとなるように調製した。
また、別のフラスコ(容積200mL)中で、トルエン(30mL)にrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−イソプロピル−フェニル)−インデニル}]ハフニウム(錯体1)(0.15mmol)を加えてスラリー溶液とした。
先ほどのイオン交換性層状珪酸塩が入った1Lフラスコにトリイソブチルアルミニウム(0.6mmol:濃度142mg/mLのヘプタン溶液を0.86mL)を加えた後上記スラリー溶液を加え、60分室温で攪拌し反応させた。その後ヘプタンを170mL追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にした後、プロピレンを10g/時の速度でフィードし2時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、40℃で1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した。上記デカンテーションにより残った部分に、トリイソブチルアルミニウム(6mmol:濃度142mg/mLのヘプタン溶液を8.5mL)を加えて10分攪拌した。この固体を1時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒28.3gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.83であった。
【0230】
(2)重合
3Lオートクレーブを加熱下、窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却した。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(142mg/mL)2.86mLを投入し、液体プロピレン750gを導入した後、70℃まで昇温した。
その後、上記予備重合触媒を、予備重合ポリマーを除いた重量で200mgを高圧アルゴンで重合槽に圧送し、重合を開始した。70℃で1時間保持して後、未反応のプロピレンをすばやくパージし重合を停止した。そうしたところ210gの重合体が得られた。
得られた重合体の評価結果を表4に示す。
【0231】
[評価例2]
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム(錯体3)のマクロマー生成能力の評価:
評価例1において、錯体1のかわりに、錯体3を使用する以外は、同様に触媒調製と重合を行った。そうしたところ220gの重合体が得られた。
得られた重合体の評価結果を表4に示す。
【0232】
[評価例3]
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム(錯体6)のマクロマー生成能力の評価:
評価例1において、錯体1のかわりに、錯体6を使用する以外は、同様に触媒調製と重合を行った。そうしたところ203gの重合体が得られた。
得られた重合体の評価結果を表4に示す。
【0233】
【表4】
【0234】
表4から明らかなように、評価例1〜3は、いずれも、末端ビニル率(Rv)が0.75以上であり、特に、評価例2は、マクロマー生成能力が高いことがわかる。