(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記受光部は、前記偏光分離部で分離された光の各々を撮像面の異なる領域で個別に受光する1つの撮像素子を備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の偏光検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した有機薄膜等の薄膜は、ロール・ツー・ロールと呼ばれる連続製造方式によって製造されることが多い。ここで、上記のロール・ツー・ロールと呼ばれる連続製造方式は、ロール状に巻かれたフィルムを引き出しながら連続的に有機材料の塗布等を行って有機薄膜を形成し、有機薄膜が形成されたフィルムを再びロールに巻き取る製造方式である。このような方式を用いて製造された有機薄膜の検査は、検査対象物としての有機薄膜が移動している状態で行われるのが一般的である。
【0007】
上述した特許文献1,2に開示された偏光検査装置を用いれば、検査対象物が移動している状態であっても検査対象物の検査を行うことが可能であると考えられる。しかしながら、上述した特許文献1に開示された偏光検査装置は、鋼板等の表面反射率が高い検査対象物の表面疵の検査に適したものであり、例えば有機薄膜の膜質(分子材料の配向の善し悪し)の検査には適したものではない。これは、上述した特許文献2についても同様である。
【0008】
また、光の偏光状態を検出する一般的な方法として、回転検光子法が挙げられる。この回転検光子法は、受光側に検光子(偏光板)を設け、検光子を回転させつつ受光される光量の変化を検出することで光の偏光状態を検出する方法である。この回転検光子法を用いる偏光検査装置であれば、検査対象物が有機薄膜であっても、その膜質を良好に検査することができると考えられる。
【0009】
しかしながら、回転検光子法を用いる偏光検査装置は、検光子を回転させつつ光量の変化を検出する必要があることから、検査に時間を要してしまうという問題がある。また、検光子を透過した光のみを受光しているため光の利用効率が悪く、光量が少ない場合には測定時間を長くする必要があるという問題がある。このため、回転検光子法を用いる偏光検査装置は、検査対象物が移動している状態では、検査対象物の検査を行うことが困難であるという問題がある。また、回転検光子法を用いる偏光検査装置は、検光子を回転させる機構が必要になるため、装置構成が大きくなってしまうという問題もある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、小型、低コストであり、検査対象物の検査を短時間で行うことが可能な偏光検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の偏光検査装置は、検査対象物(F)を介した光(L20、L30)の偏光状態に基づいて前記検査対象物の検査を行う偏光検査装置(1〜4)において、偏光状態が既知である光を前記検査対象物に照射する照射部(10)と、前記検査対象物から得られる光を偏光方向が異なる複数の光に空間的に分離する偏光分離部(20、50)と、前記偏光分離部で分離された光を個別に受光する受光部(30、60、70)と、前記受光部から出力される受光信号を用いて楕円方位角、偏光度、及び偏光成分強度の少なくとも1つを求めて前記検査対象物の良否判定を行う処理部(40)とを備えることを特徴としている。
ここで、本発明の第1の態様による偏光検査装置は、前記偏光分離部が、前記検査対象物から得られる光を互いに平行な第1分岐光(LB1)と第2分岐光(LB2)とに分岐する光分岐素子(21)と、前記第1分岐光及び前記第2分岐光の何れか一方の偏光方向を45度回転させる波長板(22)と、前記波長板を介した前記第1分岐光及び前記第2分岐光の何れか一方、及び前記波長板を介さない前記第1分岐光及び前記第2分岐光の何れか他方が入射し、入射する光を偏光方向が互いに直交する2つの光に分離する偏光分離素子(23)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の第1の態様による偏光検査装置は、前記光分岐素子が、斜面が互いに張り合わされた第1台形プリズム(P11)、第1菱形プリズム(P12)、及び第1三角プリズム(P13)を有する第1光学部材(B1)と、斜面が互いに張り合わされた第2台形プリズム(P21)、第2菱形プリズム(P22)、及び第2三角プリズム(P23)を有し、前記第1菱形プリズムの斜面と前記第2菱形プリズムの斜面とが直交するように前記第1光学部材に張り合わされた第2光学部材(B2)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の第1の態様による偏光検査装置は、前記第1台形プリズムと前記第1菱形プリズムとの貼り合わせ面が半透過面(M1)とされ、前記第1菱形プリズムと前記第1三角プリズムとの貼り合わせ面、前記第2台形プリズムと前記第2菱形プリズムとの貼り合わせ面、及び前記第2菱形プリズムと前記第2三角プリズムとの貼り合わせ面が全反射面(M2〜M4)とされていることを特徴としている。
また、本発明の第1の態様による偏光検査装置は、前記受光部が、前記偏光分離部で分離された光の各々を撮像面(31a)の異なる領域(R11〜R14)で個別に受光する1つの撮像素子(31)を備えることを特徴としている。
ここで、本発明の第2の態様による偏光検査装置は、前記偏光分離部が、前記検査対象物から得られる光を互いに異なる方向に進む第1分岐光(LB1)と第2分岐光(LB2)とに分岐する光分岐素子(51)と、前記第1分岐光を、偏光方向が互いに直交する2つの光に分離する第1分離部(53)と、前記第2分岐光を、偏光方向が互いに直交し、且つ偏光方向が前記第1分離部で分離される光の偏光方向に対して45度の角度をなす2つの光に分離する第2分離部(54)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の第2の態様による偏光検査装置は、前記第1分離部及び前記第2分離部の何れか一方が、入射する光を偏光方向が互いに直交する2つの光に分離する偏光分離素子(53)を備えており、前記第1分離部及び前記第2分離部の何れか他方は、入射する光の偏光方向を45度回転させる波長板(52)と、該波長板を介した光を偏光方向が互いに直交する2つの光に分離する偏光分離素子(54)とを備えることを特徴としている。
或いは、本発明の第2の態様による偏光検査装置は、前記第1分離部及び前記第2分離部が、入射する光を偏光方向が互いに直交する2つの光に分離する偏光分離素子(53、54)をそれぞれ備えており、前記第1分離部及び前記第2分離部に設けられる前記偏光分離素子が、光軸方向に見た場合に、何れか一方の前記偏光分離素子に対し何れか他方の前記偏光分離素子が45度の角度をなすように配置されていることを特徴としている。
また、本発明の第2の態様による偏光検査装置は、前記受光部が、前記第1分離部で分離された光の各々を撮像面(61a)の異なる領域(R21、R22)で個別に受光する第1撮像素子(61)と、前記第2分離部で分離された光の各々を撮像面(62a)の異なる領域(R31、R32)で個別に受光する第2撮像素子(62)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の偏光検査装置は、前記受光部が、前記偏光分離部で分離された光の各々に対応して設けられた複数の撮像素子(71〜74)を備えることを特徴としている。
また、本発明の偏光検査装置は、前記照射部が、予め規定された波長の光、或いは予め規定された波長帯域の光のみを通過させる波長フィルタ(14)を備えることを特徴としている。
また、本発明の偏光検査装置は、前記偏光分離部が、前記検査対象物に照射された光の反射光(L20)、或いは透過光(L30)を偏光方向が異なる複数の光に空間的に分離することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、偏光状態が既知である光を検査対象物に照射し、検査対象物から得られる光を偏光方向が異なる複数の光に空間的に分離し、分離された光を個別に受光して得られる受光信号を用いて楕円方位角、偏光度、及び偏光成分強度の少なくとも1つを求めて検査対象物の良否判定を行うようにしている。このため、小型、低コストであり、検査対象物の検査を短時間で行うことが可能であるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による偏光検査装置について詳細に説明する。
【0015】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による偏光検査装置の要部構成を示すブロック図である。
図1に示す通り、本実施形態の偏光検査装置1は、照射部10、偏光分離部20、受光部30、及び処理部40を備えており、搬送方向Xに搬送される検査対象物Fの膜質を検査する。具体的に、偏光検査装置1は、偏光状態が既知である照明光L10を検査対象物Fに照射し、検査対象物Fから得られる反射光L20を偏光方向が異なる複数の光L21〜L24に空間的に分離し、分離した光L21〜L24を個別に受光して検査対象物Fの膜質を検査する反射方式の偏光検査装置である。
【0016】
ここで、検査対象物Fは、例えば有機薄膜であり、有機薄膜太陽電池、有機ELディスプレイ、液晶表示ディスプレイ等に用いられる偏光フィルム、及び有機半導体を用いたRFIDタグ等のデバイスにされる前の状態のもの、或いはデバイスにされた後の状態のものである。尚、以下では、検査対象物Fの搬送方向Xに直交し、検査対象物Fの面内に含まれる方向を「幅方向Y」という。
【0017】
照射部10は、光源11、偏光子12、及び1/4波長板13を備えており、検査対象物Fの表面側に配置されて、偏光状態が既知である照明光L10を検査対象物F上に設定された検査領域R1に照射する。ここで、検査対象物F上に設定された検査領域R1は、例えば搬送方向Xの長さ及び幅方向Yの長さが、数cm〜数十cm程度に設定された矩形形状の領域である。この検査領域R1の大きさは、検査対象物Fの大きさに応じて適宜設定される。
【0018】
光源11は、例えばLED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)等を備えており、波長及び偏光状態が既知である光を射出する。光源11から射出される光の波長は、検査対象物Fの光学特性や構造に応じて適宜設定され、可視光領域の波長であっても、可視光領域以外の波長(例えば、赤外光領域の波長)であっても良い。また、光源11から射出される光の偏光状態は、直線偏光、円偏光、楕円偏光、ランダムの何れであっても良い。
【0019】
偏光子12は、光源11から射出される光の偏光状態を、予め規定された偏光状態にする。例えば、偏光子12は、光源11から射出される光の偏光状態を、電場の振動方向が紙面に直交する方向である直線偏光にする。1/4波長板13は、偏光子12を透過した光の偏光状態を変化させる。例えば、1/4波長板13は、偏光子12によって直線偏光にされた光の偏光状態を円偏光に変化させる。この1/4波長板13を透過した光が、照明光L10として検査対象物F上に設定された検査領域R1に照射される。つまり、本実施形態では、円偏光の照明光L10が検査対象物Fの検査領域R1に照射される。
【0020】
尚、偏光検査装置1では、偏光状態が既知である照明光L10が検査対象物Fに照射されれば良いため、照射部10の偏光子12及び1/4波長板13は、検査対象物Fに照射すべき照明光L10の偏光状態によっては省略可能である。また、照射部10から検査対象物Fの検査領域R1に照射される照明光L10は、平行光であっても良く、集光光であっても良い。検査領域R1に照射される照明光L10が集光光である場合には、照明光L10を検査対象物F上に設定された検査領域R1に結像させるためのレンズが照射部10に設けられる。
【0021】
偏光分離部20は、検査対象物Fの表面側に配置されて、検査対象物Fから得られる反射光L20を偏光方向が異なる複数の光L21〜L24に空間的に分離する。具体的に、偏光分離部20は、検査対象物Fから得られる反射光L20を、電場の振動方向が0°である直線偏光の光L21、電場の振動方向が45°である直線偏光の光L22、電場の振動方向が90°である直線偏光の光L23、電場の振動方向が135°である直線偏光の光L24に分離する。尚、光L21〜L24の電場の振動方向は、光L21〜L24の進行方向に直交する面内における角度で表しており、検査対象物Fに対する照明光L10の入射面に直交する方向(
図1の紙面に直交する方向)を0°としている。
【0022】
図2は、本発明の第1実施形態による偏光検査装置に設けられる偏光分離部の構成を示すブロック図である。
図2に示す通り、偏光分離部20は、光分岐素子21、1/2波長板22(波長板)、及び偏光分離素子23を備える。光分岐素子21は、検査対象物Fから得られる反射光L20を、互いに平行な分岐光LB1(第1分岐光)と分岐光LB2(第2分岐光)とに分岐する。尚、この光分岐素子21の詳細については後述する。1/2波長板22は、分岐光LB2の光路上に配置されており、分岐光LB2の偏光方向を45°回転させる。尚、1/2波長板22は、分岐光LB2の光路上に代えて、分岐光LB1の光路上に配置されていても良い。
【0023】
偏光分離素子23は、例えばウォラストンプリズムを備えており、分岐光LB1及び1/2波長板22を透過した分岐光LB2の光路上に配置され、これら分岐光LB1,LB2を偏光方向が互いに直交する2つの光に分離する。具体的に、偏光分離素子23は、分岐光LB1を、電場の振動方向が0°である直線偏光の光L21と、電場の振動方向が90°である直線偏光の光L23とに分離する。また、偏光分離素子23は、分岐光LB2を、電場の振動方向が45°である直線偏光の光L22と、電場の振動方向が135°である直線偏光の光L24とに分離する。
【0024】
尚、分岐光LB1,LB2の光路長を等しくするために、1/2波長板22と同じ厚みを有する光学素子(例えば、ガラス)を、分岐光LB1の光路上に配置しても良い。また、偏光分離部20は、上述した光分岐素子21、1/2波長板22、及び偏光分離素子23(更には、上記の光学素子)が張り合わされて一体化されたものであっても良い。このように一体化されていることで、偏光分離部20をより小型化することができる。
【0025】
図3は、本発明の第1実施形態において偏光分離部に設けられる光分岐素子の構成を示す図である。
図3に示す通り、光分岐素子21は、光学部材B1(第1光学部材)と光学部材B2(第2光学部材)とを備える。光学部材B1は、斜面が互いに張り合わされた台形プリズムP11(第1台形プリズム)、菱形プリズムP12(第1菱形プリズム)、及び三角プリズムP13(第1三角プリズム)を有する。光学部材B2は、斜面が互いに張り合わされた台形プリズムP21(第2台形プリズム)、菱形プリズムP22(第2菱形プリズム)、及び三角プリズムP23(第2三角プリズム)を有する。光学部材B1,B2は、菱形プリズムP12,P22の斜面が直交するように貼り合わされている。
【0026】
台形プリズムP11は、上面f11、底面f12、斜面f13、垂直面f14、及び紙面に平行な2つの面(図示省略)を有するプリズムである。紙面内における上面f11の長さをWとすると、紙面内における垂直面f14の長さはWであり、紙面内における底面f12の長さは2Wである。また、斜面f13の角度(上面f11及び底面f12に対してなす角)は45°である。
【0027】
菱形プリズムP12は、互いに平行な上面f21及び底面f22、互いに平行な斜面f23,f24、並びに紙面に平行な2つの面(図示省略)を有するプリズムである。紙面内における上面f21及び底面f22の長さはWであり、上面f21と底面f22との間隔(高さ)はWである。また、斜面f23,f24の角度(上面f21及び底面f22に対してなす角)は45°である。三角プリズムP13は、底面f31、垂直面f32、斜面f33、及び紙面に平行な2つの面(図示省略)を有するプリズムである。紙面内における底面f31及び垂直面f32の長さはWである。また、斜面f33の角度(底面f31及び垂直面f32に対してなす角)は45°である。
【0028】
台形プリズムP11の斜面f13と菱形プリズムP12の斜面f23とが張り合わされ、菱形プリズムP12の斜面f24と三角プリズムP13の斜面f33とが張り合わされることにより、外径形状が四角柱状である光学部材B1が形成されている。また、台形プリズムP11と菱形プリズムP12との貼り合わせ面が半透過面M1とされ、菱形プリズムP12と三角プリズムP13との貼り合わせ面が全反射面M2とされている。
【0029】
台形プリズムP21は、台形プリズムP11と同じ材質で形成された同じ形状のプリズムである。菱形プリズムP22は、菱形プリズムP12と同じ材質で形成された同じ形状のプリズムである。三角プリズムP23は、三角プリズムP13と同じ材質で形成された同じ形状のプリズムである。これら台形プリズムP21、菱形プリズムP22、及び三角プリズムP23が、台形プリズムP11、菱形プリズムP12、及び三角プリズムP13と同様に張り合わされることにより、外径形状が四角柱状である光学部材B2が形成されている。また、台形プリズムP21と菱形プリズムP22との貼り合わせ面が全反射面M3とされ、菱形プリズムP22と三角プリズムP23との貼り合わせ面が全反射面M4とされている。
【0030】
このような光学部材B1,B2は、菱形プリズムP12の斜面f23,f24と、菱形プリズムP22の斜面とが直交するように貼り合わされており、光分岐素子21内における分岐光LB1の光路長と分岐光LB2の光路長とが同じにされている。つまり、半透過面M1に対する反射光L20の入射位置Q1から射出位置Q11(分岐光LB1が光分岐素子21から射出される位置)までの光路長と、入射位置Q1から射出位置Q12(分岐光LB2が光分岐素子21から射出される位置)までの光路長とが同じになるようにされている。このように光路長を同じにするのは、偏光分離部20で分離された複数の光L21〜L24を、受光部30に設けられた撮像素子31の撮像面31a(
図4参照:詳細は後述する)に結像させるためである。
【0031】
受光部30は、偏光分離部20と同様に検査対象物Fの表面側に配置されて、偏光分離部20で分離された複数の光L21〜L24を個別に受光する。具体的に、受光部30は、
図4に示す通り、例えばCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)等の撮像素子31を備えており、偏光分離部20で分離された複数の光L21〜L24の各々を撮像素子31の撮像面31aの異なる領域で個別に撮像する。
図4は、本発明の第1実施形態において受光部に設けられる撮像素子を示す図である。
【0032】
図4に示す例では、偏光分離部20で分離された光L21は、撮像面31aの領域R11で撮像され、偏光分離部20で分離された光L23は、撮像面31aの領域R12で撮像され、偏光分離部20で分離された光L22は、撮像面31aの領域R13で撮像され、偏光分離部20で分離された光L24は、撮像面31aの領域R14で撮像されている。尚、撮像素子31の撮像面31aに照射される光L21〜L24の形状は、検査対象物F上に設定された検査領域R1の形状と概ね相似である。そして、受光部30は、撮像素子31によって撮像された画像信号Gを出力する。
【0033】
処理部40は、受光部30から出力される画像信号Gを用いて楕円方位角、偏光度、及び偏光成分強度を求めて検査対象物Fの良否判定を行う。具体的に、処理部40は、画像信号Gに信号処理を施して画素(撮像素子31の画素)毎の輝度を示す輝度データI1〜I4をそれぞれ求める処理、輝度データI1〜I4からストークスパラメータS(S0〜S2)を画素毎に求める処理、及びストークスパラメータS(S0〜S2)を用いて楕円方位角Ψ、偏光度DoP、及び偏光成分強度IPを画素毎に求める処理を行う。つまり、処理部40は、検査対象物F上に設定された検査領域R1における楕円方位角Ψ、偏光度DoP、及び偏光成分強度IPの二次元分布を求める処理を行う。
【0034】
ここで、上記の輝度データI1は、電場の振動方向が0°である直線偏光の光L21の画素毎の輝度を示すデータであり、上記の輝度データI2は、電場の振動方向が45°である直線偏光の光L22の画素毎の輝度を示すデータである。また、上記の輝度データI3は、電場の振動方向が90°である直線偏光の光L23の画素毎の輝度を示すデータであり、上記の輝度データI4は、電場の振動方向が135°である直線偏光の光L24の画素毎の輝度を示すデータである。
【0035】
処理部40は、以下に示す(1)式を用いて画素毎のストークスパラメータS(S0〜S2)を求め、以下に示す(2)式を用いて画素毎の偏光度DoPを求め、以下に示す(3)式を用いて画素毎の楕円方位角Ψを求め、以下に示す(4)式を用いて画素毎の偏光成分強度IPを求める。
【0036】
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【0037】
ここで、処理部40は、楕円方位角閾値TH1、偏光度閾値TH2、及び偏光成分強度閾値TH3を備える。楕円方位角閾値TH1は、検査対象物Fの良否判定を行うために上記(3)式を用いて求められる楕円方位角Ψに対して設定された閾値である。偏光度閾値TH2は、検査対象物Fの良否判定を行うために上記(2)式を用いて求められる偏光度DoPに対して設定された閾値である。偏光成分強度閾値TH3は、検査対象物Fの良否判定を行うために、上記(4)式を用いて求められる偏光成分強度IPに対して設定された閾値である。
【0038】
処理部40は、上記(3)式を用いて求められた楕円方位角Ψが、楕円方位角閾値TH1を超えており、上記(2)式を用いて求められる偏光度DoPが、偏光度閾値TH2を超えており、且つ上記(4)式を用いて求められる偏光成分強度IPが、偏光成分強度閾値TH3を超えている場合に、検査対象物Fを不良と判定する。尚、上記(3),(2),(4)式を用いて求められた楕円方位角Ψ、偏光度DoP、及び偏光成分強度IPの何れか1つ(又は、何れか2つ)が閾値を超えた場合に、検査対象物Fを不良と判定するようにしても良い。
【0039】
次に、上記構成における偏光検査装置1の動作について説明する。検査が開始されると、不図示の制御部によって照射部10が制御され、波長及び偏光状態が既知である光が光源11から射出される。光源11から射出された光は、偏光子12に入射して電場の振動方向が紙面に直交する方向である直線偏光にされた後に、1/4波長板13に入射して円偏光にされる。そして、円偏光にされた光(照明光L10)が、照射部10から射出されて検査対象物F上に設定された検査領域R1に照射される。
【0040】
検査対象物F上に設定された検査領域R1に照明光L10が照射されると、偏光状態が変化した反射光L20が得られる。尚、反射光L20の偏光状態がどのように変化するかは、検査対象物Fの光学特性、構造、膜質等に応じて変化する。検査対象物F上に設定された検査領域R1からの反射光L20は、偏光分離部20に入射して偏光方向が異なる複数の光L21〜L24に空間的に分離される。
【0041】
具体的に、反射光L20が偏光分離部20に入射すると、まず偏光分離部20に設けられた光分岐素子21によって互いに平行な分岐光LB1と分岐光LB2に分岐される(
図2参照)。詳細には、
図3に示す通り、反射光L20が、光分岐素子21をなす菱形プリズムP12に入射すると、半透過面M1の入射位置Q1において透過光(分岐光LB1)と反射光(分岐光LB2)とに分岐される。
【0042】
半透過面M1を透過した分岐光LB1は、台形プリズムP11及び菱形プリズムP22内を順に進んだ後に全反射面M3で反射され、菱形プリズムP22内を進んだ後に全反射面M4で反射され、菱形プリズムP22内を進んだ後に射出位置Q11から光分岐素子21の外部に射出される。これに対し、半透過面M1で反射された分岐光LB2は、菱形プリズムP12内を進んだ後に全反射面M2で反射され、菱形プリズムP12及び台形プリズムP21を順に進んだ後に射出位置Q12から光分岐素子21の外部に射出される。このようにして、反射光L20が互いに平行な分岐光LB1と分岐光LB2に分岐される。
【0043】
光分岐素子21で分岐された分岐光LB1は、
図2に示す通り、そのまま偏光分離素子23に入射して、電場の振動方向が0°である直線偏光の光L21と、電場の振動方向が90°である直線偏光の光L23とに分離される。これに対し、光分岐素子21で分岐された分岐光LB2は、
図2に示す通り、1/2波長板22に入射して偏光方向が45°回転された後に偏光分離素子23に入射して、電場の振動方向が45°である直線偏光の光L22と、電場の振動方向が135°である直線偏光の光L24とに分離される。
【0044】
偏光分離部20で空間的に分離された複数の光L21〜L24は、受光部30で個別に受光される。具体的には、
図4に示す通り、受光部30に設けられた撮像素子31の撮像面31aの異なる領域で個別に撮像される。そして、偏光分離部20で空間的に分離された複数の光L21〜L24が撮像されると、受光部30から処理部40に対して画像信号Gが出力される。
【0045】
画像信号Gが入力されると、処理部40において、まず画像信号Gに信号処理を施して画素(撮像素子31の画素)毎の輝度を示す輝度データI1〜I4をそれぞれ求める処理が行われる。次に、輝度データI1〜I4からストークスパラメータS(S0〜S2)を画素毎に求める処理、及びストークスパラメータS(S0〜S2)を用いて楕円方位角Ψ、偏光度DoP、及び偏光成分強度IPを画素毎に求める処理が処理部40において順に行われる。以上の処理が終了すると、求めた楕円方位角Ψ、偏光度DoP、及び偏光成分強度IPと楕円方位角閾値TH1、偏光度閾値TH2、及び偏光成分強度閾値TH3とをそれぞれ比較して検査対象物Fの良否を判定する処理が処理部40で行われる。
【0046】
例えば、求められた楕円方位角Ψが、楕円方位角閾値TH1を超えており、求められた偏光度DoPが、偏光度閾値TH2を超えており、且つ求められた偏光成分強度IPが、偏光成分強度閾値TH3を超えている場合には、検査対象物Fが不良と判定される。これに対し、求められた楕円方位角Ψ、偏光度DoP、及び偏光成分強度IPの何れか1つが閾値を超えていない場合には、検査対象物Fが良品と判定される。
【0047】
このような処理部40の判定結果は、例えば処理部40に設けられた表示部(図示省略)に表示され、音等により報知され、或いは上位装置(図示省略)に送信される。検査対象物Fが搬送方向Xに搬送されている状態で以上説明した動作が繰り返され、これにより搬送方向Xにおける検査対象物Fの膜質が、幅方向Yにおける検査領域R1の幅をもって連続的に検査される。
【0048】
以上の通り、本実施形態では、偏光状態が既知である照明光L10を検査対象物Fの検査領域R1に照射し、検査対象物Fから得られる反射光L20を偏光方向が異なる複数の光L21〜L24に空間的に分離している。そして、分離した光L21〜L24を個別に受光し、これにより得られた画像信号Gを用いて楕円方位角Ψ、偏光度DoP、及び偏光成分強度IPを求めて検査対象物Fの良否判定を行うようにしている。
【0049】
このため、偏光方向が異なる複数の光L21〜L24を一括して測定することができ、また、反射光L20の利用効率も良いため、検査対象物Fの検査を短時間で行うことが可能である。これにより、検査対象物Fが移動している状態であっても、検査対象物Fの膜質を精度良く検査することが可能である。また、回転検光子法を用いて検査を行う場合のように、検光子を回転させる必要がないことから、小型、低コストで実現することができる。尚、本実施形態では、検査対象物F上に設定された矩形形状の検査領域R1の画像を撮像素子31で撮像していることから、検査対象物Fが移動していなくとも、検査対象物Fの膜質を検査することが可能である。
【0050】
〔第2実施形態〕
図5は、本発明の第2実施形態による偏光検査装置の要部構成を示すブロック図である。尚、
図5においては、
図1に示す構成に相当する構成については同一の符号を付してある。
図5に示す偏光検査装置2は、
図1に示す偏光検査装置1の偏光分離部20及び受光部30を、偏光分離部50及び受光部60にそれぞれ変えた構成である。
【0051】
偏光分離部50は、
図1に示す偏光分離部20と同様に、検査対象物Fの表面側に配置されて、検査対象物Fから得られる反射光L20を偏光方向が異なる複数の光L21〜L24に空間的に分離するものであるが、具体的な構成が偏光分離部20とは異なる。また、受光部60は、
図1に示す受光部30と同様に、検査対象物Fの表面側に配置されて、偏光分離部50で分離された複数の光L21〜L24を個別に受光するものであるが、具体的な構成が受光部30とは異なる。
【0052】
図6は、本発明の第2実施形態による偏光検査装置に設けられる偏光分離部及び受光部の構成を示すブロック図である。
図6に示す通り、偏光分離部50は、光分岐素子51、1/2波長板52(第2分離部、波長板)、偏光分離素子53(第1分離部)、及び偏光分離素子54(第2分離部)を備える。
【0053】
光分岐素子51は、検査対象物Fから得られる反射光L20を、互いに異なる方向に進む分岐光LB1(第1分岐光)と分岐光LB2(第2分岐光)とに分岐する。この光分岐素子51は、例えばハーフミラー又はビームスプリッタであり、検査対象物Fから得られる反射光L20を、反射光(分岐光LB1)と透過光(分岐光LB2)とに分岐する。1/2波長板22は、分岐光LB2の光路上に配置されており、分岐光LB2の偏光方向を45°回転させる。尚、1/2波長板22は、分岐光LB2の光路上に代えて、分岐光LB1の光路上に配置されていても良い。
【0054】
偏光分離素子53は、例えばウォラストンプリズムを備えており、分岐光LB1の光路上に配置され、分岐光LB1を偏光方向が互いに直交する2つの光に分離する。具体的に、偏光分離素子53は、分岐光LB1を、電場の振動方向が0°である直線偏光の光L21と、電場の振動方向が90°である直線偏光の光L23とに分離する。偏光分離素子54は、偏光分離素子53と同様に、例えばウォラストンプリズムを備えており、1/2波長板52を透過した分岐光LB2の光路上に配置され、1/2波長板52を透過した分岐光LB2を偏光方向が互いに直交する2つの光に分離する。具体的に、偏光分離素子54は、1/2波長板52を透過した分岐光LB2を、電場の振動方向が45°である直線偏光の光L22と、電場の振動方向が135°である直線偏光の光L24とに分離する。
【0055】
受光部60は、
図6に示す通り、撮像素子61(第1撮像素子)と撮像素子62(第2撮像素子)とを備える。これら撮像素子61,62は、
図4に示す撮像素子31と同様に、例えばCCDやCMOS等である。撮像素子61は、偏光分離部50で分離された光L21,L23の各々を撮像面61aの異なる領域で個別に撮像し、撮像素子62は、偏光分離部50で分離された光L22,L24の各々を撮像面62aの異なる領域で個別に撮像する。
【0056】
図7は、本発明の第2実施形態において受光部に設けられる撮像素子を示す図である。尚、
図7では、撮像面61a,62aが正面を向くように、撮像素子61,62を図示している。
図7に示す例では、偏光分離部50で分離された光L21は、撮像素子61の撮像面61aの領域R21で撮像され、偏光分離部50で分離された光L22は、撮像素子61の撮像面61aの領域R22で撮像されている。また、偏光分離部50で分離された光L22は、撮像素子62の撮像面62aの領域R31で撮像され、偏光分離部50で分離された光L24は、撮像素子62の撮像面62aの領域R32で撮像されている。
【0057】
尚、撮像素子61の撮像面61aに照射される光L21,L23の形状、及び撮像素子62の撮像面62aに照射される光L22,L24の形状は、第1実施形態と同様に、検査対象物F上に設定された検査領域R1の形状と概ね相似である。受光部60は、
図5に示す通り、撮像素子61によって撮像された画像信号G1と、撮像素子62によって撮像された画像信号G2とを出力する。
【0058】
次に、上記構成における偏光検査装置2の動作について説明する。尚、偏光検査装置2の動作は、基本的には
図1に示す偏光検査装置1と同様であるため、以下では簡略化して説明する。検査が開始されると、不図示の制御部によって照射部10が制御され、波長及び偏光状態が既知である光が光源11から射出される。光源11から射出された光は、偏光子12及び1/4波長板13を順に透過することで、直線偏光にされた後に円偏光にされる。そして、円偏光にされた光(照明光L10)が、照射部10から射出されて検査対象物F上に設定された検査領域R1に照射される。
【0059】
検査対象物F上に設定された検査領域R1に照明光L10が照射されると、偏光状態が変化した反射光L20が得られる。検査対象物F上に設定された検査領域R1からの反射光L20は、偏光分離部50に入射して偏光方向が異なる複数の光L21〜L24に空間的に分離される。具体的に、反射光L20が偏光分離部50に入射すると、まず偏光分離部50に設けられた光分岐素子51によって反射光(分岐光LB1)と透過光(分岐光LB2)とに分岐される。
【0060】
光分岐素子51で分岐された分岐光LB1は、
図6に示す通り、そのまま偏光分離素子53に入射して、電場の振動方向が0°である直線偏光の光L21と、電場の振動方向が90°である直線偏光の光L23とに分離される。これに対し、光分岐素子51で分岐された分岐光LB2は、
図6に示す通り、1/2波長板52に入射して偏光方向が45°回転された後に偏光分離素子53に入射して、電場の振動方向が45°である直線偏光の光L22と、電場の振動方向が135°である直線偏光の光L24とに分離される。
【0061】
偏光分離部50で空間的に分離された複数の光L21〜L24は、受光部60で個別に受光される。具体的には、
図7に示す通り、分離された複数の光L21〜L24のうち、光L21,L23は、受光部60に設けられた撮像素子61の撮像面61aの異なる領域で個別に撮像され、残りの光L22,L24は、受光部60に設けられた撮像素子62の撮像面62aの異なる領域で個別に撮像される。そして、偏光分離部50で空間的に分離された複数の光L21〜L24が撮像されると、受光部60から処理部40に対して画像信号G1,G2が出力される。
【0062】
受光部60からの画像信号G1,G2が入力されると、処理部40では、第1実施形態と同様に、輝度データI1〜I4からストークスパラメータS(S0〜S2)を画素毎に求める処理、及びストークスパラメータS(S0〜S2)を用いて楕円方位角Ψ、偏光度DoP、及び偏光成分強度IPを画素毎に求める処理が順に行われる。そして、求めた楕円方位角Ψ、偏光度DoP、及び偏光成分強度IPと楕円方位角閾値TH1、偏光度閾値TH2、及び偏光成分強度閾値TH3とをそれぞれ比較して検査対象物Fの良否を判定する処理が処理部40で行われる。検査対象物Fが搬送方向Xに搬送されている状態で以上説明した動作が繰り返され、これにより搬送方向Xにおける検査対象物Fの膜質が、幅方向Yにおける検査領域R2の幅をもって連続的に検査される。
【0063】
図8は、本発明の第2実施形態による偏光検査装置に設けられる偏光分離部の変形例を示すブロック図である。尚、
図8においては、
図6に示す構成に相当する構成については同一の符号を付してある。
図8に示す通り、本変形例に係る偏光分離部50は、
図6に示す1/2波長板52を省略し、偏光分離素子54の配置を変えた構成である。具体的に、偏光分離素子54は、分岐光LB2の進行方向の回りで45°だけ回転した状態に配置されている。つまり、偏光分離素子53,54は、光軸方向に見た場合に、何れか一方に対する何れか他方が45度の角度をなすように(結晶光学軸が45度の角度をなすように)配置される。
【0064】
本変形例に係る偏光分離部50は、
図6に示す偏光分離部50と同様に、検査対象物Fから得られる反射光L20を偏光方向が異なる複数の光L21〜L24に空間的に分離することが可能である。尚、本変形例に係る偏光分離部50は、
図6に示す偏光分離部50に比べて1/2波長板52を省略することができるため、部品点数の削減によるコストの低減を図ることができるとともに、部品調整に要するコストの低減を図ることができる。
【0065】
以上の通り、本実施形態及びその変形例では、第1実施形態と同様に、偏光状態が既知である照明光L10を検査対象物Fの検査領域R1に照射し、検査対象物Fから得られる反射光L20を偏光方向が異なる複数の光L21〜L24に空間的に分離している。そして、分離した光L21〜L24を個別に受光し、これにより得られた画像信号G1,G2を用いて楕円方位角Ψ、偏光度DoP、及び偏光成分強度IPを求めて検査対象物Fの良否判定を行うようにしている。このため、検査対象物Fが移動している状態であるか否かに拘わらず、小型、低コストで検査対象物Fの膜質を精度良く検査することが可能である。
【0066】
〔第3実施形態〕
図9は、本発明の第3実施形態による偏光検査装置の要部構成を示すブロック図である。尚、
図9においては、
図1に示す構成に相当する構成については同一の符号を付してある。
図9に示す偏光検査装置3は、
図1に示す偏光検査装置1の受光部30を受光部70に変えた構成である。
【0067】
受光部70は、偏光分離部20で分離された複数の光L21〜L24の各々に対応して設けられた複数の撮像素子を備える。具体的に、受光部70は、光L21に対応して設けられた撮像素子71、光L23に対応して設けられた撮像素子72、光L22に対応して設けられた撮像素子73、及び光L24に対応して設けられた撮像素子74を備える。これら撮像素子71〜74、例えば一次元の撮像素子(ラインセンサ)である。
【0068】
撮像素子71,72,73,74は、光L21,L23,L22,L24の光路上に、長手方向が光L21,L23,L22,L24の長手方向に沿うようにそれぞれ配置される。偏光分離部20で空間的に分離された複数の光L21,L23,L22,L24が撮像素子71,72,73,74でそれぞれ撮像されると、受光部70から処理部40に対して画像信号G11,G12,G13,G14(一次元の画像信号)がそれぞれ出力される。この画像信号G11,G12,G13,G14に対し、第1,第2実施形態と同様の処理を行うことで、搬送方向Xにおける検査対象物Fの膜質が、幅方向Yにおける検査領域R1の幅をもって連続的に検査される。尚、尚、偏光検査装置3の動作は、基本的には、偏光検査装置1,2と同様であるため説明を省略する。
【0069】
以上の通り、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、偏光状態が既知である照明光L10を検査対象物Fの検査領域R1に照射し、検査対象物Fから得られる反射光L20を偏光方向が異なる複数の光L21〜L24に空間的に分離している。そして、分離した光L21〜L24を個別に受光し、これにより得られた画像信号G11〜G14を用いて楕円方位角Ψ、偏光度DoP、及び偏光成分強度IPを求めて検査対象物Fの良否判定を行うようにしている。このため、第1実施形態に比べれば撮像素子の数が増加するものの、検査対象物Fが移動している状態であるか否かに拘わらず、小型、低コストで検査対象物Fの膜質を精度良く検査することが可能である。
【0070】
尚、本実施形態の受光部70を、第2実施形態にも適用することが可能である。つまり、上述した偏光検査装置3は、
図1に示す偏光検査装置1の受光部30を受光部70に変えた構成であったが、
図5に示す偏光検査装置2の受光部60に代えて受光部70を設けることも可能である。
【0071】
以上、本発明の実施形態による偏光検査装置について説明したが、本発明は上記実施形態に制限される訳ではなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記第1〜第3実施形態で説明した照射部10は、光源11、偏光子12、及び1/4波長板13を備える構成であったが、これらに加えて波長フィルタを備えるものであっても良い。
図10は、照射部に波長フィルタが設けられた偏光検査装置の構成を示す図である。尚、
図10では、第1実施形態の偏光検査装置1を例示しているが、第2,3実施形態の偏光検査装置2,3の照射部10にも同様に波長フィルタを設けることができる。
【0072】
照射部10に設けられた波長フィルタ14は、予め規定された波長の光、或いは予め規定された波長帯域の光のみを通過させる特性を有する。例えば、波長フィルタ14は、照明光L10に含まれる波長成分のうち、検査対象物Fの検査精度の悪化させる波長成分を除外する(通過させない)特性を有するものである。このような波長フィルタ14を用いることで、検査対象物Fの検査精度の悪化を防止することができる。
【0073】
また、上記実施形態では、処理部40が、楕円方位角Ψ、偏光度DoP、及び偏光成分強度IPを求めて検査対象物Fの良否判定を行う場合を例に挙げて説明したが、必ずしも楕円方位角Ψ、偏光度DoP、及び偏光成分強度IPを求める必要はなく、楕円方位角Ψ、偏光度DoP、及び偏光成分強度IPの何れか1つ(又は、何れか2つ)を求めて検査対象物Fの良否判定を行っても良い。
【0074】
また、上記実施形態では、処理部40が、検査対象物F上に設定された検査領域R1における楕円方位角Ψ、偏光度DoP、及び偏光成分強度IPの二次元分布を求める場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしも楕円方位角Ψ、偏光度DoP、及び偏光成分強度IPの二次元分布を求める必要はなく、例えば検査領域R1における楕円方位角Ψ、偏光度DoP、及び偏光成分強度IPの代表値のみを求めるようにしても良い。
【0075】
また、上述した第1〜第3実施形態で説明した偏光検査装置1〜3は、検査対象物Fから得られる反射光L20を受光して検査対象物Fの膜質を検査する反射方式の偏光検査装置であった。しかしながら、本発明は、検査対象物Fを透過した透過光を受光して検査対象物Fの膜質を検査する透過方式の偏光検査装置にも適用することが可能である。
図11は、透過方式の偏光検査装置の概略構成を示すブロック図である。
図11に示す偏光検査装置4は、照射部10が検査対象物Fの表面側に配置されており、偏光分離部20及び受光部30が検査対象物Fの裏面側に配置されている。尚、処理部40は、検査対象物Fの表面側及び裏面側の何れに配置されていても良い。
【0076】
このような偏光検査装置4は、偏光状態が既知である照明光L10を検査対象物Fに設定された検査領域R1に照射し、検査対象物Fから得られる透過光L30を偏光分離部20で偏光方向が異なる複数の光L31〜L34に空間的に分離し、分離した光L31〜L34を受光部30で個別に受光する。そして、得られた画像信号Gを用いて楕円方位角Ψ、偏光度DoP、及び偏光成分強度IPを求めて検査対象物Fの良否判定を行う。
【0077】
また、本発明は、上述した反射方式の偏光検査装置と透過方式の偏光検査装置が組み合わされたものにも適用することが可能である。このような偏光検査装置は、例えば照射部10が検査対象物Fの表面側に配置されており、偏光分離部20及び受光部30が検査対象物Fの表面側及び裏面側の双方に配置されている構成である。