(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388022
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】貫通部耐火部材及び耐火施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20180903BHJP
F16L 5/04 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
E04B1/94 F
F16L5/04
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-253946(P2016-253946)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-105039(P2018-105039A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2017年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】輕部 元喜
【審査官】
星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−112345(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/041338(WO,A1)
【文献】
実公昭48−010880(JP,Y1)
【文献】
特開2016−185199(JP,A)
【文献】
特開2016−217114(JP,A)
【文献】
特開2009−243105(JP,A)
【文献】
特開2002−119608(JP,A)
【文献】
特開2007−205472(JP,A)
【文献】
特開2006−176987(JP,A)
【文献】
特開2000−000326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
F16L 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の被貫通部材に設けられる貫通孔に挿入される貫通部耐火部材であって、
弾性を有する略筒状の本体部と、
前記本体部の内周面に環状に設けられる熱膨張部材と、
前記本体部及び前記熱膨張部材の内側に設けられ、少なくとも前記貫通孔に配線又は配管される長尺体を保持可能な柔軟性を有する発泡体と、
前記本体部の外周面に設けられる接着層と、
前記接着層の外周面に設けられる離型紙と、
前記本体部、前記熱膨張部材、前記発泡体、前記接着層、及び前記離型紙のそれぞれ周方向の一部に形成され、前記本体部の軸方向に沿って切断された割り部と、を備え、
前記離型紙は、前記割り部を挟んで一方側端から前記本体部の周回り方向に延びる切れ込みと、前記割れ部を挟んで他方側端から前記本体部の周回り方向に延びる切れ込みとが前記本体部の軸方向に交互に設けられることを特徴とする貫通部耐火部材。
【請求項2】
前記本体部の外周径は前記貫通孔の内周径と略等しいことを特徴とする請求項1に記載の貫通部耐火部材。
【請求項3】
少なくとも前記本体部に設けられる前記割り部は当該本体部の周回り方向に離間する隙間が設けられており、
前記本体部は弾性変形していない場合に当該本体部の外周径が前記貫通孔の内周径よりも長く、
前記本体部を弾性変形させて前記割り部の隙間を閉じた場合に当該本体部の外周径が前記貫通孔の内周径以下であることを特徴とする請求項1に記載の貫通部耐火部材。
【請求項4】
前記本体部は軸方向の両端にそれぞれフランジが形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の貫通部耐火部材。
【請求項5】
前記本体部の両側の前記フランジは前記被貫通部材のそれぞれの面に当接することを特徴とする請求項4に記載の貫通部耐火部材。
【請求項6】
前記被貫通部材は床スラブであることを特徴とする請求項1から請求項5に記載の貫通部耐火部材。
【請求項7】
前記本体部は難燃性樹脂又は難燃性ゴム製であり、前記発泡体は難燃性スポンジであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の貫通部耐火部材。
【請求項8】
前記被貫通部材に設けられる前記貫通孔に請求項1から請求項3のいずれかに記載の貫通部耐火部材を設置する耐火施工方法であって、
前記貫通部耐火部材は前記割り部を挟んで両側を径方向の内外にずらして、その一部を重ねることで縮径し、
前記貫通部耐火部材を縮径した状態で前記貫通孔に挿入し、
その後、弾性応力によって前記貫通部耐火部材の前記割り部の両側が整合するように拡径し、前記離型紙を端部から引き抜いて前記貫通孔の内面に前記接着層を当接させることを特徴とする耐火施工方法。
【請求項9】
板状の被貫通部材に設けられる貫通孔に貫通部耐火部材を設置する耐火施工方法であって、
前記貫通部耐火部材は、弾性を有する略筒状の本体部と、前記本体部の内周面に環状に設けられる熱膨張部材と、前記本体部及び前記熱膨張部材の内側に設けられ、少なくとも前記貫通孔に配線又は配管される長尺体を保持可能な柔軟性を有する発泡体と、前記本体部の外周面に設けられる接着層と、前記接着層の外周面に設けられ、らせん状の切れ込みを有する離型紙と、を備えており、
前記貫通部耐火部材を前記貫通孔に圧入し、
その後、前記離型紙を端部から引き抜き前記貫通孔の内面に前記接着層を当接させることを特徴とする耐火施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間を隔てる被貫通部材に配管やケーブルなどの長尺体を貫通するための貫通孔の耐火性能を確保するための貫通部耐火部材及び当該貫通部耐火部材を用いた耐火施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の空間を隔てる例えば天井、床、壁などの区画部には、各種の配管やケーブルなどの長尺体を各空間に導入するための貫通孔が設けられる。したがって、例えば一方の空間で火災が発生すると、貫通孔を通過して、火災が建造物全体に広がり、甚大な被害をもたらすおそれがある。
【0003】
そこで、例えば、このような区画部を貫通する耐火構造としては、まず、長尺体の回りに耐火遮音シートを装着して、長尺体の回りに耐火性を持たせる。そして、耐火遮音シートを装着した長尺体を貫通孔に挿入して、当該貫通孔と耐火遮音シートの間に熱膨張性のパテやモルタルやを充填することで、貫通孔の耐火性能を確保している。
【0004】
しかし、長尺体の周囲に直接熱膨張性のパテやモルタルを混練して充填するのは、熟練の作業員が必要であり作業性が悪い。また、パテやモルタルの充填不良や不足を確実に防止することは困難であり、充填不良や不足を検査する際にも耐火遮音シートを剥がす必要があり煩わしい。そして、耐火性を有する耐火遮音シートと通常の遮音シートとの2種類の遮音シートが在庫として必要になるので不経済である。
【0005】
そこで、パテやモルタルを必要とせずに区画部の貫通孔の耐火性能を確保するものとして、筒状の本体部の内面に熱膨張材と発泡体とを具備する耐火部材が提案されている(例えば特許文献1)。このような構成の場合、配管やケーブルなどの長尺体は発泡体に支持されて貫通孔に挿入した状態に保持され、火災などの際には熱膨張材が膨張して貫通孔を塞ぐので、貫通孔の耐火性を確保することができ、しかもパテやモルタルを用いないので、作業性に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−112345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の耐火部材は貫通孔に挿入されるだけで保持されているので、施工の際に長尺体の位置を調整するために、耐火部材に対して長尺体を挿入方向及び引き抜き方向に移動させると、当該耐火部材と長尺体との摩擦力によって、耐火部材が貫通孔から脱落するおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、パテ又はモルタル充填作業を必要とせずに貫通孔の耐火性能を確保することができる貫通部耐火部材であって、長尺体の位置を調整した場合であっても貫通孔から脱落することを防止することができる貫通部耐火部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の貫通部耐火部材は、板状の被貫通部材に設けられる貫通孔に挿入される貫通部耐火部材であって、弾性を有する略筒状の本体部と、前記本体部の内周面に環状に設けられる熱膨張部材と、前記本体部及び前記熱膨張部材の内側に設けられ、少なくとも前記貫通孔に配線又は配管される長尺体を保持可能な柔軟性を有する発泡体と、前記本体部の外周面に設けられる接着層と、
前記接着層の外周面に設けられる離型紙と、前記本体部、前記熱膨張部材、前記発泡体、
前記接着層、及び前記離型紙のそれぞれ周方向の一部に形成され、前記本体部の軸方向に沿って切断された割り部と、を備え
、前記離型紙は、前記割り部を挟んで一方側端から前記本体部の周回り方向に延びる切れ込みと、前記割れ部を挟んで他方側端から前記本体部の周回り方向に延びる切れ込みとが前記本体部の軸方向に交互に設けられることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の第二の貫通部耐火部材は、前記本体部の外周径は前記貫通孔の内周径と略等しいことを特徴としている。
【0011】
本発明の第三の貫通部耐火部材は、少なくとも前記本体部に設けられる前記割り部は当該本体部の周回り方向に離間する隙間が設けられており、前記本体部は弾性変形していない場合に当該本体部の外周径が前記貫通孔の内周径よりも長く、前記本体部を弾性変形させて前記割り部の隙間を閉じた場合に当該本体部の外周径が前記貫通孔の内周径以下であることを特徴としている。
【0014】
本発明の第
四の貫通部耐火部材は、前記本体部は軸方向の両端にそれぞれフランジが形成されることを特徴としている。
【0015】
本発明の第
五の貫通部耐火部材は、前記本体部の両側の前記フランジは前記被貫通部材のそれぞれの面に当接することを特徴としている。
【0016】
本発明の第
六の貫通部耐火部材は、前記被貫通部材は床スラブであることを特徴としている。
【0017】
本発明の第
七の貫通部耐火部材は、前記本体部は難燃性樹脂又は難燃性ゴム製であり、前記発泡体は難燃性スポンジであることを特徴としている。
【0018】
本発明の耐火施工方法は、前記被貫通部材に設けられる前記貫通孔に第一から第三のいずれかの貫通部耐火部材を設置する耐火施工方法であって、前記貫通部耐火部材は前記割り部を挟んで両側を径方向の内外にずらして、その一部を重ねることで縮径し、前記貫通部耐火部材を縮径した状態で前記貫通孔に挿入し、その後、弾性応力によって前記貫通部耐火部材の前記割り部の両側が整合するように拡径し、
前記離型紙を端部から引き抜いて前記貫通孔の内面に前記接着層を当接させることを特徴としている。
【0019】
本発明の耐火施工方法は、
板状の被貫通部材に設けられ
る貫通孔に
貫通部耐火部材を設置する耐火施工方法であって、
前記貫通部耐火部材は、弾性を有する略筒状の本体部と、前記本体部の内周面に環状に設けられる熱膨張部材と、前記本体部及び前記熱膨張部材の内側に設けられ、少なくとも前記貫通孔に配線又は配管される長尺体を保持可能な柔軟性を有する発泡体と、前記本体部の外周面に設けられる接着層と、前記接着層の外周面に設けられ、らせん状の切れ込みを有する離型紙と、を備えており、前記貫通部耐火部材を前記貫通孔に圧入し、その後、前記離型紙を端部から引き抜き前記貫通孔の内面に前記接着層を当接させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第一の貫通部耐火部材によると、本体部、熱膨張部材、発泡体が設けられており、パテやモルタルを充填しなくても配管やケーブルなどの長尺体が発泡体に支持された状態で貫通孔に保持され、火災などの際には熱膨張材が膨張して貫通孔を塞ぐので、貫通孔の耐火性を確保することができるので、作業性がよい。そして本体部の外周面に接着層が設けられているので、貫通孔の内面に接着層が接着することで、貫通部耐火部材を貫通孔から引き抜く方向への荷重に耐えることができ、長尺体の位置を調整する場合などに、貫通孔から貫通部耐火部材が脱落することを防止することができる。また、本体部、熱膨張部材、発泡体、及び接着層のそれぞれ周方向の一部に本体部の軸方向に沿って切断された割り部が形成されているので、貫通部耐火部材は割り部を挟んで両側を径方向の内外にずらして、その一部を重ねることで縮径することができ、貫通孔の内面に接着層が当らないように貫通部耐火部材を挿入して、その後、適切な位置で貫通孔の内面に接着層を接着させることができる。
また、接着層の外周面に離型紙が設けられており、当該離型紙は割り部を挟んで一方側端から本体部の周回り方向に延びる切れ込みと、割れ部を挟んで他方側端から本体部の周回り方向に延びる切れ込みとが本体部の軸方向に交互に設けられるので、離型紙をつけた状態のまま貫通部耐火部材は割り部を挟んで両側を径方向の内外にずらして、その一部を重ねることで縮径して、当該貫通部耐火部材を挿入して、その後、離型紙を貫通部耐火部材の端部から引き抜くことで貫通孔の内面に接着層を当接させることができる。
【0021】
本発明の第二の貫通部耐火部材によると、上述のように、貫通部耐火部材は割り部を挟んで両側を径方向の内外にずらして、その一部を重ねて縮径した状態で貫通孔に挿入し、その後、貫通孔の内面に接着層を接着するとき、本体部の外周径が貫通孔の内周径と略等しいので、接着層を貫通孔の内面に確実に密着させることができる。
【0022】
本発明の第三の貫通部耐火部材によると、少なくとも本体部に設けられる割り部は当該本体部の周回り方向に離間する隙間が設けられており、且つ、弾性変形していない場合に本体部の外周径が貫通孔の内周径よりも長く形成されており、本体部を弾性変形させて割り部の隙間を閉じた場合に本体部の外周径が貫通孔の内周径以下となるので、割り部の隙間を閉じた場合に貫通部耐火部材は貫通孔に挿入可能な大きさである。そして、貫通部耐火部材が貫通孔に挿入されているときには、本体部は割り部の隙間が小さくなる方向に弾性変形されているので、本体部の弾性応力によって当該本体部の外周面に設けられている接着層は貫通孔の内面に圧接されるので、接着層を貫通孔の内面に確実に密着させることができる。なお、隙間が設けられていることで、1種類の寸法の貫通部耐火部材を径の異なる貫通孔に挿入し固定することができるので、部品点数を削減することもできる。
【0025】
本発明の第
四の貫通部耐火部材によると、本体部は軸方向の両端にそれぞれフランジが形成されているので、貫通孔に貫通部耐火部材を挿入した際に当該貫通部耐火部材が脱落することをより確実に防止することができる。
【0026】
本発明の第
五の貫通部耐火部材によると、フランジは貫通孔が設けられる被貫通部材のそれぞれの面に当接するので、貫通部耐火部材を貫通孔に挿入した際に貫通部耐火部材がフランジによって被貫通部材にがたつくことなく確実に固定されるとともに、フランジが被貫通部材の両面に納まりよく配置される。
【0027】
本発明の第
六の貫通部耐火部材によると、被貫通部材は床スラブであるので、床スラブに設けられた貫通孔にパテやモルタルを充填しなくても配管やケーブルなどの長尺体を挿入する場合に、作業性よく貫通孔の耐火性を確保することができる。
【0028】
本発明の第
七の貫通部耐火部材によると、本体部及び発泡体が難燃性であれば、火災の延焼をより確実に防止できる。
【0029】
本発明の耐火施工方法によると、貫通部耐火部材は割り部を挟んで両側を径方向の内外にずらして、その一部を重ねることで縮径し、貫通部耐火部材を縮径した状態で貫通孔に挿入し、その後、弾性応力によって貫通部耐火部材の割り部の両側が整合するように拡径し、貫通孔の内面に接着層を当接させることがでできるので、貫通部耐火部材を挿入する際には接着層が貫通孔の内面に当接することがなく、挿入後には貫通部耐火部材を確実に貫通孔に接着して固定することができる。
【0030】
本発明の耐火施工方法によると、貫通部耐火部材の接着層には離型紙が設けられており、この離型紙を外さないままに、被貫通部材に設けられる貫通孔に貫通部耐火部材を圧入して、その後、離型紙を端部から引き抜き、貫通孔の内面に接着層を当接させるので、貫通部耐火部材を貫通孔に挿入する際には貫通部耐火部材の接着層には離型紙が設けられているので、接着層が貫通孔に付着することなく挿入することができ、挿入後には貫通孔に確実に接着層を接着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第一実施形態の貫通部耐火部材の全体構成を示す断面図。
【
図2】第一実施形態の貫通部耐火部材の全体構成を示す斜視図。
【
図3】第一実施形態の貫通部耐火部材を軸方向の一端から見た平面図。
【
図4】貫通孔に第一実施形態の貫通部耐火部材を挿入する状態を示す平面図。
【
図5】貫通孔に第一実施形態の貫通部耐火部材が挿入されて固定された状態を示す断面図。
【
図6】第一実施形態の貫通部耐火部材の変形例として、本体部の割り部に隙間が設けられていない例を示す斜視図及び平面図。
【
図7】第一実施形態の貫通部耐火部材の別の変形例であり、(A)は弾性変形していない状態で本体部の割り部の隙間よりも発泡体の割り部の隙間が小さい貫通部耐火部材を示し、(B)は貫通孔に挿入されて固定された状態で本体部の割り部の隙間に発泡体の一部が挟まれた状態を示す図。
【
図8】第二実施形態の貫通部耐火部材の全体構成を示す斜視図。
【
図9】第二実施形態の貫通部耐火部材を貫通孔に挿入する途中の状態を示す断面図。
【
図10】第二実施形態の貫通部耐火部材を貫通孔に挿入し終えた状態を示す断面図。
【
図11】第二実施形態の貫通部耐火部材を貫通孔に挿入した後、剥がししろを引っ張って離型紙を剥がしている途中の状態を示す被貫通部材の記載を省略した斜視図。
【
図12】第二実施形態の貫通部耐火部材の離型紙を剥がし終えた状態を示す断面図。
【
図13】第二実施形態の貫通部耐火部材の変形例であり、割り部を挟んで一方側端から本体部の周回り方向に延びる切れ込みと、割れ部を挟んで他方側端から本体部の周回り方向に延びる切れ込みとを交互に有する離型紙を備えた貫通部耐火部材を示す斜視図。
【
図14】
図13の貫通部耐火部材の離型紙を展開した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔第一実施形態〕
以下、本発明に係る貫通部耐火部材1及び耐火施工方法の第一実施形態について各図を参照しつつ説明する。貫通部耐火部材1は、
図5に示すように本実施形態においては、被貫通部材2としての床スラブに形成された貫通孔3に挿入されて当該貫通孔3の耐火性能を確保する部材である。なお、被貫通部材2は床スラブに限定されるものではなく、耐火構造の床、壁、天井、又は基礎などを構成し、空間を隔てる板状の部材であればよい。
【0033】
貫通部耐火部材1は、
図1から
図3に示すように、略筒状の本体部4と、本体部4の内周面に環状に設けられる熱膨張部材5と、本体部4及び熱膨張部材5の内側に設けられる発泡体6と、本体部4の外周面に設けられる接着層7と、を備えており、さらに、本体部4、熱膨張部材5、発泡体6、及び接着層7のそれぞれ周方向の一部には本体部4の軸方向に沿って切断された割り部8が形成されている。
【0034】
本体部4は、例えば難燃性樹脂又は難燃性ゴム製であり、容易に弾性変形することができる。本体部4は略円形の筒状であり本体部4の両端にはそれぞれフランジ9が形成されている。弾性変形していない状態において本体部4の外周径は、被貫通部材2に形成された貫通孔3の内周径よりも長く形成されている。
【0035】
また本体部4の周方向の一部には当該本体部4の軸方向に沿って切断された割り部8が形成されている。割り部8は、例えば
図2又は
図3に示すように本体部4が弾性変形していない状態において隙間を有している。割り部8が隙間を有していることで、本体部4は割り部8が接近する方向に弾性変形することで当該本体部4を縮径することができ、貫通孔3に挿入する際に挿入しやすくすることができる。
【0036】
また、本体部4を弾性変形させて割り部8の隙間を閉じた場合には、当該本体部4の外周径が貫通孔3の内周径以下となる。これによって、貫通孔3の内周径が弾性変形していない状態の本体部4の外周径よりも短い場合であっても、貫通孔3に貫通部耐火部材1を挿入して固定することができる。そして、貫通部耐火部材1を貫通孔3に挿入したあとで本体部4が貫通孔3内で拡径することで、貫通部耐火部材1を貫通孔3に固定できる。貫通孔3の内周径は弾性変形していない状態の本体部4の外周径よりも短い場合、貫通部耐火部材1は貫通孔3の内部で常に拡径する方向に弾性応力が働いているので、確実に固定することができ、貫通孔3に寸法誤差がある場合や多少寸法が異なる貫通孔3にも貫通部耐火部材1を挿入して固定できる。
【0037】
なお、本体部4の軸方向の長さは当該本体部4を貫通孔3に挿入したときに本体部4の両端に形成されるフランジ9が、被貫通部材2の両側の面にそれぞれ当接できる長さであることが好ましい。本体部4の軸方向の長さはこれに限定されるものではなく、被貫通部材2の厚さよりも長く形成して、厚さ寸法の異なる多種の被貫通部材2の貫通孔3に挿入可能なものとしてもよい。
【0038】
熱膨張部材5は、本体部4の内周面の全周にわたって環状に形成されている。熱膨張部材5は、火災時等の熱によって膨張するものである。そして、本体部4および熱膨張部材5の内側には、発泡体6が収容される。発泡体6は、例えばウレタン発泡体6であり、難燃性スポンジであることが望ましい。発泡体6は、内周側に凹凸形状を有しており、貫通部耐火部材1の内側に長尺体10を挿入した場合に、発泡体6が当該長尺体10の形状に応じて容易に変形し長尺体10を支持することができる形状である。また発泡体6は、貫通孔3の一方側から他方側を見えないようにする目隠しとしても機能する。発泡体6の形状はこれに限定されるものではなく、長尺体10を挿入したときに長尺体10をほとんど隙間無く保持することができる形状であれば如何なる形状であってもよい。
【0039】
接着層7は、耐火性を有する接着剤からなることが好ましいが、貫通孔3に貫通部耐火部材1を挿入し、配管又は配線などの長尺体10を挿入する作業の際に接着できるものであればどのような接着剤から構成されてもよい。接着層7は貫通部耐火部材1を貫通孔3に挿入する前に硬化することがないように、例えば図示しないが離型紙が設けられていても良い。
【0040】
熱膨張部材5、発泡体6、接着層7にもそれらの周方向の一部に本体部4の軸方向に沿って切断された割り部8が形成されており、
図2及び
図3に示すように、貫通部耐火部材1は本体部4の軸方向の端部から見た場合にC字状に形成されている。
【0041】
このように構成された貫通部耐火部材1を用いて被貫通部材2に形成された貫通孔3の耐火性能を確保する耐火施工方法は、まず
図4に示すように、貫通部耐火部材1の割り部8を挟んで両側を径方向の内外にずらして、その一部を重ねることで貫通部耐火部材1の全体を縮径する。このときフランジ9が貫通孔3に挿入可能となるまで縮径する。このようにすることでフランジ9が引っ掛かること無く貫通部耐火部材1を貫通孔3に挿入することができる。また、貫通部耐火部材1を貫通孔3に挿入している途中で、本体部4の外周面に設けられている接着層7が貫通孔3の内周面に当接することもない。
【0042】
そして、貫通部耐火部材1を縮径した状態のまま貫通孔3に挿入し、その後、
図5に示すように、貫通部耐火部材1を本体部4の弾性応力によって縮径した状態から拡径し、割り部8の両側を整合させて、貫通孔3の内面に接着層7を当接させる。その後、貫通孔3に挿入した状態で固定された貫通部耐火部材1に長尺体10を挿入して、配線又は配管し、耐火施工方法を完了する。
【0043】
なお、本実施形態の耐火施工方法においては、貫通部耐火部材1を貫通孔3に挿入した状態で固定した後に、長尺体10を挿入しているが、貫通部耐火部材1を貫通孔3に挿入する前に予め長尺体10を挿入しておいても良い。この場合、長尺体10は割り部8の間を通して貫通部耐火部材1の本体部4の内部に挿入することができ、長尺体10を簡単に挿入することができる。
【0044】
以上のように本実施形態の貫通部耐火部材1及び耐火施工方法によると、貫通部耐火部材1を縮径して容易に貫通孔3に挿入することができ、本体部4の外周面の接着層7が貫通孔3の内周面に接着するとともに、本体部4の両側のフランジ9が被貫通部材2のそれぞれの面に当接することで、長尺体10の位置を調整する場合などに、貫通部耐火部材1を貫通孔3から引き抜く方向への荷重に耐えることができ、貫通孔3から貫通部耐火部材1が脱落することを防止することができる。なお、貫通部耐火部材1及び耐火施工方法は、必ずしも貫通部耐火部材1の割り部8を挟んで両側を径方向の内外にずらして、その一部を重ねることで貫通部耐火部材1の全体を縮径して、貫通孔3に貫通部耐火部材1を挿入するものに限定されるものではなく、貫通部耐火部材1を貫通孔3にそのままの形状で圧入してもよい。
【0045】
なお、本実施形態では、貫通部耐火部材1の割り部8には本体部4が弾性変形していない状態で隙間が設けられているが、これに限定されるものではなく、
図6に示すように、弾性変形してない状態で本体部4の外周径が貫通孔3の内周径と略等しく、割り部8は隙間のない状態で本体部4を軸方向の切断されているものであってもよい。このように構成したとしても、貫通部耐火部材1は割り部8を挟んで両側を径方向の内外にずらして、その一部を重ねることで縮径することができるので、貫通孔3に挿入し、その後、拡径して、貫通孔3の内面に接着層7を当接させて、貫通孔3に貫通部耐火部材1を固定することができる。
【0046】
また、例えば、
図7に示すように、本体部4の割り部8aが大きな隙間を有しているとともに、発泡体6の割り部8bがそれよりも小さな隙間を形成するものであってもよい。このように構成すると貫通部耐火部材1を貫通孔3に挿入して固定した状態で本体部4の割り部8aに隙間がある場合であっても、発泡体6がその隙間に入り込んで当該隙間を埋めることができる。
【0047】
〔第二実施形態〕
次に本発明に係る貫通部耐火部材1及び耐火施工方法の第二実施形態について
図8から
図12を参照しつつ説明する。なお、第一の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態の貫通部耐火部材1は、
図8に示すように、略筒状の本体部4と、本体部4の内周面に環状に設けられる熱膨張部材5と、本体部4及び熱膨張部材5の内側に設けられる発泡体6と、本体部4の外周面に設けられる接着層7と、接着層7の外周面に設けられる離型紙11と、を備えている。
【0048】
本実施形態においては、本体部4、熱膨張部材5、発泡体6、及び接着層7は割り部8が形成されていない他は、第一実施形態と同様の構成であるので詳細な説明を省略する。離型紙11は本体部4の外周面に設けられた接着層7の外周面に設けられており、らせん状の切れ込みNを有している。離型紙11は、本体部4のフランジ9から軸方向に突出するように剥がししろ12が形成されており、この剥がししろ12を本体部4の軸方向外側に引っ張ることで、離型紙11を接着層7から剥がすことができる。
【0049】
本実施形態の貫通部耐火部材1を用いた耐火施工方法は、まず貫通部耐火部材1の内部に長尺体10を挿入する。そして、長尺体10が挿入された貫通部耐火部材1を被貫通部材2の貫通孔3に圧入する。
図9に示すように、本体部4は弾性を有する難燃性ゴムで形成されているので貫通孔3に挿入する際にはフランジ9が弾性変形して貫通孔3に圧入され、挿入側のフランジ9が貫通孔3を通過して、被貫通部材2の挿入方向と逆側の面で弾性応力で広がり、
図10に示すように、被貫通部材2の両側の面にそれぞれのフランジ9が当接する。
【0050】
そして、
図11に示すように、剥がししろ12を本体部4の軸方向外側に向けて引っ張る。なお、
図11においては、図示の都合上、被貫通部材2及び貫通孔3の記載を省略している。剥がししろ12を引っ張ると、離型紙11が接着層7から離れて貫通孔3と接着層7の間から引き抜かれ、
図12に示すように、貫通孔3の内周面と接着層7とが接着して、貫通部耐火部材1が貫通孔3内に固定される。
【0051】
このように、貫通部耐火部材1を貫通孔3に挿入する際には、貫通部耐火部材1の接着層7には離型紙11が設けられているので、接着層7が貫通孔3に付着することなく挿入することができ、挿入後には離型紙11をはがすことができるので貫通孔3に確実に接着層7を接着させることができる。
【0052】
なお、第二実施形態においては、接着層7の外周面に設けられた離型紙11は、らせん状の切れ込みNを有しており、割り部8が形成されていないが、これに限られるものではない。離型紙11は、
図13に示すように、割り部8を挟んで一方側端13から本体部4の周回り方向に延びる切れ込みNと、割れ部8を挟んで他方側端14から本体部4の周回り方向に延びる切れ込みNとが本体部4の軸方向に沿って交互に設けられるものであってもよい。すなわち、離型紙11は、
図14に展開図で示すように、割り部8に一方側端13から延びる切れ込みNと他方側端14から延びる切れ込みNとを交互に配置することで、剥がししろ12を引っ張って接着層7から離型紙11を剥がした場合に、一本の細長い帯状となる。
【0053】
このように構成すると、割り部8を備えているので、貫通部耐火部材1を貫通孔3に挿入する際に、第一実施形態と同様に、割り部8を挟んで両側を径方向の内外にずらして、その一部を重ねることで貫通部耐火部材1の全体を縮径することができ、簡単に貫通部耐火部材1を貫通孔3に挿入することができる。そして、貫通部耐火部材1を貫通孔3に挿入した後で、剥がししろ12を本体部4の軸方向外側に引っ張ることで、離型紙11を接着層7から簡単に剥がすことができる。
【0054】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る貫通部耐火部材1及び耐火施工方法は、例えば住宅の耐火構造の床に設けられる貫通孔3の耐火性能を確保する部材及び方法として、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 貫通部耐火部材
2 被貫通部材
3 貫通孔
4 本体部
5 熱膨張部材
6 発泡体
7 接着層
8 割り部
9 フランジ
10 長尺体
11 離型紙