特許第6388025号(P6388025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6388025-両面粘着シートおよび光学部材 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388025
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】両面粘着シートおよび光学部材
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20180903BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20180903BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180903BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20180903BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20180903BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J133/00
   C09J11/06
   C09J11/04
   C09J11/08
   G06F3/041 490
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-510248(P2016-510248)
(86)(22)【出願日】2015年3月16日
(86)【国際出願番号】JP2015057654
(87)【国際公開番号】WO2015146664
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2017年9月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-67787(P2014-67787)
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】畑 章浩
(72)【発明者】
【氏名】赤松 享尚
(72)【発明者】
【氏名】山本 真之
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/145634(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/145635(WO,A3)
【文献】 特開2013−54516(JP,A)
【文献】 特開2012−79257(JP,A)
【文献】 特開2013−116992(JP,A)
【文献】 特開2008−310267(JP,A)
【文献】 特開2007−332341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系重合体(A)と架橋剤(B)を含有する粘着剤組成物から形成される両面粘着シートであって、
前記粘着剤組成物が、さらに非相溶樹脂(D)を含有し、
前記両面粘着シートは、透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材の貼合用であ、ヘイズが10%超かつ20%未満であることを特徴とする両面粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤組成物が、さらに光拡散微粒子(C)を含有することを特徴とする、請求項に記載の両面粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤組成物が、アクリル系重合体(A)100質量部に対し、光拡散微粒子(C)を1〜15質量部含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の両面粘着シート。
【請求項4】
前記光拡散微粒子(C)の平均粒径が0.1〜20μmであることを特徴とする、請求項2又は3に記載の両面粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤組成物が、前記アクリル系重合体(A)100質量部に対し、前記非相溶樹脂(D)を1〜50質量部含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の両面粘着シート。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の両面粘着シートの少なくとも一方の粘着面に剥離シートが積層された、剥離シート付き両面粘着シート。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の両面粘着シートの両面に互いに剥離性が異なる剥離シートがそれぞれ積層された、剥離シート付き両面粘着シート。
【請求項8】
透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材の貼合用であって、請求項1〜のいずれか1項に記載の両面粘着シートの一方の粘着面と透明基材層が接する積層構造を含む透明基材付き粘着シート。
【請求項9】
透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材の貼合用であって、請求項1〜のいずれか1項に記載の両面粘着シートの一方の粘着面と透明基材層とハードコート層をこの順に有する積層構造を含んでいて、前記両面シートの一方の粘着面と前記透明基材層とが接している透明基材付き粘着シート。
【請求項10】
透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材の貼合用であって、透明基材層、請求項1〜のいずれか1項に記載の両面粘着シート、剥離シートをこの順に有する積層構造を含んでいて、前記両面シートの一方の粘着面と前記透明基材層とが接している透明基材付き粘着シート。
【請求項11】
透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材に、請求項1〜のいずれか1項に記載の両面粘着シートの一方の粘着面を前記導電部の少なくとも一部が接するように貼合した光学部材。
【請求項12】
透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材、請求項1〜のいずれか1項に記載の両面粘着シート、透明基材層を順に積層した光学部材であって、前記導電部の少なくとも一部が両面粘着シートに接している光学部材。
【請求項13】
透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材、請求項1〜のいずれか1項に記載の両面粘着シート、透明基材層、ハードコート層を順に積層した光学部材であって、前記導電部の少なくとも一部が両面粘着シートに接している光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明支持体上に導電部が設けられた導電部材と、カバーガラスや表示装置等との貼合に用いられる両面粘着シートに関する。また、その両面粘着シートを導電部材に貼合した光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォンやタブレット型コンピュータ等の電気製品において、例えば、透明支持体上にITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極膜を設けた導電部材とカバーガラス、タッチパネルと表示装置等、2つの部材を貼合するために両面粘着シートが広く用いられている。
例えば特許文献1には、金属面を腐食させず、リワーク時に金属面から容易に剥離させることができ、さらに透明性が良好な金属面貼付用感圧性粘着シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−077388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導電部材は、透明支持体上にITO等をパターニングした構造を一般に有している。特許文献1に記載された粘着シートをこのような導電部材に貼合すると、導電部は腐食しないものの導電部のパターンが可視化されてしまうという問題があった。
この問題を解決するために、粘着シートの屈折率を調整することにより導電部のパターン可視化を防ぐことが考えられる。しかし、粘着力を維持しながら所望の屈折率に調整することは容易ではない。また、粘着シートには、導電部のパターン可視化を防ぐだけでなく、導電部材と表示装置の貼合に使用したときに画面の視認性も良好に維持する必要性があるが、その両立も容易ではない。
【0005】
本発明は、透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材に適用したときに、十分な粘着力を維持しながら導電部のパターンを不可視化し、かつ導電部材と表示装置の貼合に使用したときに画面の視認性も良好な両面粘着シート、その両面粘着シートを備えた光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、両面粘着シートのヘイズを10%超かつ20%未満に規定することにより、導電部材に適用したときに、十分な粘着力を維持しながら導電部のパターンを不可視化し、かつ導電部材と表示装置の貼合に使用したときに画面の視認性も良好な両面粘着シートが実現することを見出した。具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材の貼合用であって、ヘイズが10%超かつ20%未満であることを特徴とする両面粘着シート。
[2] アクリル系重合体(A)と架橋剤(B)を含有する粘着剤組成物から形成されることを特徴とする、[1]に記載の両面粘着シート。
[3] 粘着剤組成物が、さらに光拡散微粒子(C)を含有することを特徴とする、[2]に記載の両面粘着シート。
[4] 粘着剤組成物が、アクリル系重合体(A)100質量部に対し、光拡散微粒子(C)を1〜15質量部含むことを特徴とする、[2]又は[3]に記載の両面粘着シート。
[5] 光拡散微粒子(C)の平均粒径が0.1〜20μmであることを特徴とする、[3]または[4]に記載の両面粘着シート。
[6] 粘着剤組成物が、さらに非相溶樹脂(D)を含有することを特徴とする、[2]〜[5]のいずれかに記載の両面粘着シート。
[7] 粘着剤組成物が、アクリル系重合体(A)100質量部に対し、非相溶樹脂(D)を1〜50質量部含むことを特徴とする、[2]〜[6]のいずれかに記載の両面粘着シート。
[8] [1]〜[7]のいずれかに記載の両面粘着シートの少なくとも一方の粘着面に剥離シートが積層された、剥離シート付き両面粘着シート。
[9] [1]〜[7]のいずれかに記載の両面粘着シートの両面に互いに剥離性が異なる剥離シートがそれぞれ積層された、剥離シート付き両面粘着シート。
[10] 透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材の貼合用であって、[1]〜[7]のいずれかに記載の両面粘着シートの一方の粘着面と透明基材層が接する積層構造を含む透明基材付き粘着シート。
[11] 透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材の貼合用であって、[1]〜[7]のいずれかに記載の両面粘着シートと透明基材層とハードコート層をこの順に有する積層構造を含んでいて、両面シートの一方の粘着面と透明基材層とが接している透明基材付き粘着シート。
[12] 透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材の貼合用であって、透明基材層、[1]〜[7]のいずれかに記載の両面粘着シート、剥離シートをこの順に有する積層構造を含んでいて、両面シートの一方の粘着面と透明基材層とが接している透明基材付き粘着シート。
[13] 透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材に、[1]〜[7]のいずれかに記載の両面粘着シートの一方の粘着面を導電部の少なくとも一部が接するように貼合した光学部材。
[14] 透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材、[1]〜[7]のいずれかに記載の両面粘着シート、透明基材層を順に積層した光学部材であって、導電部の少なくとも一部が両面粘着シートに接している光学部材。
[15] 透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材、[1]〜[7]のいずれかに記載の両面粘着シート、透明基材層、ハードコート層を順に積層した光学部材であって、導電部の少なくとも一部が両面粘着シートに接している光学部材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材に適用したときに、十分な粘着力を維持しながら導電部のパターンを不可視化し、かつ導電部材と表示装置の貼合に使用したときに画面の視認性も良好な両面粘着シートを実現することができる。
また、本発明の両面粘着シートを用いれば、導電部が不可視化されており、表示装置と貼合したときに画面の視認性が良好な光学部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の透明基材付き粘着シートの一例を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0010】
(1)両面粘着シート
本発明の両面粘着シートは、透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材の貼合用であって、ヘイズが10%超かつ20%未満である点に特徴がある。なお、本発明において「ヘイズ」とは、JIS K7136に準拠した方法で測定される値のことをいい、このヘイズ値は両面粘着シートの形状の場合は、両面粘着シートのみ(剥離シートのない状態)のヘイズ値を測定することは困難なため、松浪ガラス社製のスライドガラス(品番:S9112)に貼合し、このガラスと本発明の両面粘着シートのみの積層体にしたときのヘイズ値であり、透明基材層を有している透明フィルム粘着シートの形状の場合は、上記ガラスと該透明フィルム粘着シートとを貼合した透明基材層と両面粘着シートとガラスの積層体でのヘイズ値である。
ヘイズが上記範囲にある両面粘着シートを、導電部と接するように導電部材に貼合すると、ヘイズが10%超であることにより、両面粘着シート内に入射した光が適度に拡散され、電極部のパターンが外側から視認しにくくなる。また、両面粘着シートは、ヘイズが20%未満であることにより高い透明度を有する。このため、この両面粘着シートで導電部材と表示装置とを貼合した場合、表示装置の表示画面を導電部材の透明支持体側で鮮明に視認することができる。さらに、両面粘着シートのヘイズは、例えば光拡散微粒子(C)を適量混合する方法により、粘着力を確保しつつ容易に調整することができる。したがって、ヘイズを上記範囲に規定することにより、導電部材に適用したときに、十分な粘着力を維持しながら導電部のパターンを不可視化し、かつ導電部材と表示装置の貼合に使用したときに画面の視認性も良好な両面粘着シートを実現することができる。ここで、両面粘着シートのヘイズの好ましい範囲は12〜18%であり、より好ましい範囲は14〜16%である。
【0011】
[粘着剤組成物]
本発明の両面粘着シートを形成する粘着剤組成物は、視認性を低下させない程度の透明性を有するものが好ましく、粘着剤組成物のベースポリマーとしてはアクリル系重合体(A)が好ましい。これにより、粘着性に優れた両面粘着シートを得ることができる。
【0012】
(アクリル系重合体(A))
アクリル系重合体(A)としては、非架橋性の(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)を主成分とし、これに架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)を含有する共重合体を用いることが好ましい。本明細書において、「単位」は重合体を構成する繰り返し単位(単量体単位)である。
架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)は架橋剤(B)を用いる場合の反応点となり、架橋により粘着力や凝集力、耐熱性の制御を可能とする。アクリル系重合体(A)における架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)の使用量は、共重合体を構成する全単量体質量中に占める割合として0.01〜20質量%とすることが好ましい。より好ましくは0.1〜15質量%であり、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。架橋性アクリル単量体単位(a2)の含有量が上記範囲の下限値以上であれば架橋性を充分に有しており、上記範囲の上限値以下であれば、必要な粘着物性を維持できる。
【0013】
アクリル系重合体(A)を構成する非架橋性の(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が挙げられるが、これらは必要に応じ2種類以上を併用しても良い。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を含むことを意味し、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を含むことを意味する。
【0014】
また、架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)としては(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水フマル酸等のカルボキシル基含有単量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体、(メタ)アクリルアミド、モルホリルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−tert−ブチルアミノエチルアクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基などが挙げられ、これらは必要に応じ2種類以上を併用しても良い。また、本発明の両面粘着シートを貼合する導電部材の導電部がITOの場合はカルボキシル基含有単量体以外の官能基を有した単量体を用いることが好ましく、架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)に含まれるカルボキシル基含有単量体単位の割合は、アクリル単量体単位(a2)の全質量に対して、1%以下であることが好ましく、0.1%以下であることがより好ましく、0%であることが特に好ましい。アクリル単量体単位(a2)に含まれるカルボキシル基含有単量体単位の割合を上記範囲内とすることにより、導電部の金属配線に対する腐食性を抑えることができる。
【0015】
アクリル系重合体(A)は、必要に応じて、非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)および架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)以外の他の単量体単位を有してもよい。該他の単量体としては、非架橋性(メタ)アクリル酸エステルおよび架橋性官能基を有するアクリル単量体と共重合可能なものであればよく、例えば(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン等が挙げられる。
アクリル系重合体(A)における他の単量体単位の含有量は0〜20質量%であることが好ましく、0〜15質量%であることがより好ましい。
アクリル系重合体(A)の重量平均分子量は、10万〜200万が好ましく、30万〜150万がより好ましい。重量平均分子量が上記下限値以上であると十分な耐久性を確保でき、上記上限値を超えなければ十分な凹凸追従性が確保できる。なお、アクリル系重合体(A)の重量平均分子量は架橋剤(B)で架橋される前の値である。該重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定し、ポリスチレン基準で求めた値である。
【0016】
粘着剤を重合する際には、例えば、溶液重合法を適用することができる。溶液重合法としては、イオン重合法やラジカル重合法など挙げられる。その際に使用される溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、クロロホルム、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
【0017】
(架橋剤(B))
本発明で用いられる粘着剤組成物は、粘着剤が官能基を有する単量体を用いた共重合体の場合は、架橋剤(B)を配合することにより架橋処理を施すことができる。
架橋剤(B)としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などが挙げられ、これらは必要に応じ2種類以上を併用しても良く、アクリル系重合体(A)で用いる官能基との反応性を考慮して選択することが好ましい。
これら架橋剤(B)の中でも、アクリル系重合体(A)を容易に架橋できることから、イソシアネート化合物、エポキシ化合物が好ましい。イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0018】
粘着剤組成物中、架橋剤(B)の含有量は、所望とする粘着物性等に応じて適宜選択され、特に限定されないが、アクリル系重合体(A)100質量部に対し、0.01〜5質量部が好ましく、0.03〜3質量部がより好ましい。架橋剤(B)の含有量が上記下限値以上であれば耐久性に優れ、上記上限値以下であれば被着体への密着に優れる。
また、架橋剤(B)の含有量は、粘着剤組成物の総質量に対し、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.02〜2.0質量%であることがより好ましい。
上記によって架橋された架橋後の粘着剤組成物のゲル分率は、20〜98%、好ましくは30〜90%、より好ましくは40〜80%である。ゲル分率が20%以上なら十分な凝集力が得られ、98%以下なら十分な粘着力や被着体への濡れ性が得られる。なお、ここで記載しているゲル分率とは、所定量の粘着剤組成物を粘着剤組成物の質量の2倍量以上の酢酸エチルやトルエンなどの溶媒に浸漬し、この浸漬物を40℃で24時間処理した後、150メッシュのワイヤメッシュにてろ過し、可溶分を取り除いた残分の乾燥重量を浸漬前の粘着剤組成物の質量で割った値のパーセント表示である。
【0019】
(添加剤)
粘着剤組成物には、アクリル系重合体(A)および架橋剤(B)の他、両面粘着シートのヘイズの調整を行う場合には光拡散微粒子(C)及び非相溶樹脂(D)から選択される少なくとも1種が混合される。光拡散微粒子(C)及び非相溶樹脂(D)については、後述の[ヘイズの調整]の欄で説明する。また、粘着剤組成物には、この他に以下のような添加剤が添加されていてもよい。
【0020】
(i)紫外線吸収剤
紫外線吸収剤は、紫外領域に極大吸収波長を有するものの中から選択することができ、波長350nm以上に極大吸収波長を有する紫外線吸収剤を用いることが好ましい。波長350nm以上に極大吸収波長を有する紫外線吸収剤として、例えば下記一般式(1)または(2)で示される化合物を挙げることができる。
【0021】
【化1】
【0022】
上式において、R1は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基、ニトロ基またはシアノ基を表し、R2は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表し、R3は、アルキル基系構造体を表す。
【0023】
【化2】
【0024】
上式において、R4、R5およびR6は、水素原子、水酸基、アルキル基系構造体またはハロゲン原子であって、R4、R5およびR6のすべてが水素原子であることはない。
【0025】
アルキル基系構造体とは、置換もしくは無置換のアルキル基や、置換もしくは無置換のアルコキシ基などのアルキル基を主とする置換基を含む概念である。
【0026】
中でも、基本骨格の芳香環に分子量の大きなアルキル基を導入することにより相溶性を向上させ、23℃で液状または油状を示す紫外線吸収剤を、特に好ましく用いることができる。ここで、23℃で液状または油状を示すとは、希釈溶剤がなくても紫外線吸収剤のみで流動性がある状態を意味する。
【0027】
粘着剤組成物における紫外線吸収剤の含有量は、粘着剤組成物の固形分(特にアクリル重合体)100質量部に対して0.5〜8質量部であることが好ましく、3〜8質量部であることがより好ましく、4〜6質量部であることがさらに好ましい。粘着剤組成物における紫外線吸収剤の含有量は、380nmでの紫外線透過率が5%未満となる量に調整することが好ましい。含有量が3質量部以上であれば、両面粘着シート厚みが25μmの時、380nmの波長の光での透過率が2%以下になるため、この両面粘着シートを適用した積層体が屋外や高温高湿といった苛酷な条件下で長期間使用された場合でも、積層体(特にハードコート層)の複屈折干渉による変色や虹ムラを抑制することができる。また、8質量部以下であれば、粘着特性を損ねることがないため好ましく、さらに4〜6質量部であれば、さらに安定して2%以下の透過率が得られるため好ましい。本発明では、2種以上の紫外線吸収剤を併用しても良い。
【0028】
(ii)その他の添加剤
粘着剤組成物に添加される添加剤として、ヒンダードアミン系化合物に代表される光安定剤を好ましく例示することができる。また、ヒンダードフェノール系化合物に代表される酸化防止剤を併用することも好ましい。酸化防止剤は、一般にラジカル連鎖停止剤とよばれる一次酸化防止剤と、過酸化物分解剤として作用する二次酸化防止剤とに分類される。一次酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤が挙げられる。また、二次酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が挙げられる。
これら酸化防止剤は1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。特にITOの腐食防止効果を期待する場合は、1次酸化防止剤と2次酸化防止剤を併用すると効果が得られやすいため好ましい。
【0029】
これらの添加剤の含有量は、アクリル重合体(A)100質量部に対して0.03〜1.5質量部であることが好ましく、0.05〜1.0質量部であることがより好ましい。含有量が上記下限値以上であれば、高温、低温及び湿熱環境下にて長期間にわたって使用した際の紫外線の吸収性を確実に維持でき、上記上限値以下であれば、380nmでの透過率上昇や粘着特性の低下をより防止できる。
【0030】
粘着剤組成物には、必要に応じて、シランカップリング剤、金属腐食防止剤などの上記以外の添加剤が含まれても良い。シランカップリング剤としては、例えば、メルカプトアルコキシシラン化合物(例えば、メルカプト基置換アルコキシオリゴマー等)などが挙げられる。金属腐食防止剤としては金属と錯体を形成し金属表面に皮膜を作ることにより腐食を防止するタイプが好ましく、特にベンゾトリアゾール系金属腐食防止剤が好ましい。
【0031】
[ヘイズの調整]
両面粘着シートのヘイズの調整は、(i)粘着剤組成物に光拡散微粒子(C)を所望のヘイズになる量で混合する方法、または(ii)粘着剤組成物に非相溶樹脂(D)を所望のヘイズになる量で混合する方法により行うことが好ましい。なお、(i)及び(ii)の方法を組み合わせて用いることにより、両面粘着シートのヘイズの調整を行ってもよい。以下において、各方法を説明する。
【0032】
両面粘着シートのヘイズは、粘着剤組成物に混合する添加剤として光拡散微粒子(C)を用い、その粘着剤組成物における光拡散微粒子(C)の含有量を変化させることにより上記の範囲に調整することができる。
光拡散微粒子(C)は、両面粘着シートに入射した光を拡散させる機能を有する微粒子であればよく、有機微粒子であっても無機微粒子であってもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、酸化アルミニウム、酸化チタン等からなる微粒子を挙げることができる。
有機微粒子としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂やポリアクリレート系樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、これらの樹脂に架橋構造を形成した架橋高分子、エチレン、プロピレン、スチレン、メタクリル酸メチル、ベンゾグアナミン、ホルムアルデヒド、メラミン、ブタジエン等から選ばれる2種又はそれ以上の単量体が共重合された共重合樹脂等からなる樹脂粒子を用いることができる。
また、無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子(例えばモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のトスパールシリーズ)等も光拡散微粒子(C)として用いることができる。
これらの光拡散微粒子(C)は1種類を単独して用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、有機微粒子、無機微粒子、無機と有機の中間的な構造を有する微粒子を組み合わせて使用することも可能である。
このうち、本発明で用いる光拡散微粒子(C)としては、両面粘着シートの全光線透過率を過度に低下させないものであるのが好ましく、透明性が高いアクリルビーズやシリカビーズが好適である。
【0033】
光拡散微粒子(C)の形状は、特に限定されないが、光を均一に拡散できることから球状であることが好ましい。
また、光拡散微粒子(C)の平均粒径は、0.1〜20μmであることが好ましく、0.3〜17μmであることがより好ましく、0.5〜12μmであることがさらに好ましい。ここで、本明細書中において「平均粒径」とは、透過型電子顕微鏡もしくは走査型電子顕微鏡を用いて、光拡散粒子の粒子画像の最大長(Dmax:粒子画像の輪郭上の2点における最大長さ)と、最大長垂直長(DV−max:最大長に平行な2本の直線で粒子画像を挟んだときの、この2本の直線間の最短長さ)を測長し、その相乗平均値(Dmax×DV−max)1/2を粒子径として、この方法で任意の100個の光拡散粒子について粒子径を測定し、その算術平均値のことをいう。光拡散微粒子(C)の平均粒径が20μm以下であれば、両面粘着シートを肉眼で視認したときに粒状感や異物感が感じにくい傾向があり、平均粒径が0.1μm以上であれば、両面粘着シートのヘイズを所望の値に調整しやすい傾向がある。
【0034】
粘着剤組成物における光拡散性微粒子(C)の含有量は、アクリル系重合体(A)100質量部に対し1〜15質量部であることが好ましい。粘着剤組成物における光拡散微粒子(C)の含有量が15質量部以下であれば全光線透過率の低下を抑えやすい傾向があり、1質量部以上であれば所望のヘイズに調整しやすい傾向がある。
【0035】
両面粘着シートのヘイズは、粘着剤組成物に混合する添加剤として非相溶樹脂(D)を用い、その粘着剤組成物における非相溶樹脂(D)の種類や含有量を変化させることにより上記の範囲に調整することができる。ここで、非相溶樹脂とは、ベースポリマーのアクリル系重合体(A)との相溶性が低い樹脂をいう。具体的には、アクリル系重合体(A)と非相溶樹脂を混合した際に、ヘイズが混合量に応じて上昇していくものを非相溶樹脂という。具体的には、アクリル系共重合体と樹脂を1:1で混合した際に、ヘイズが20%以上となる樹脂を非相溶樹脂という。このような非相溶樹脂を用いれば本発明のヘイズの範囲である10〜20%の範囲にヘイズをコントロールすることが可能となる。
【0036】
非相溶樹脂としては、例えば、粘着付与剤やスチレン系共重合樹脂を挙げることができる。粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂などを挙げることができる。中でも、粘着付与剤は、テルペン系樹脂であることが好ましく、芳香族変性テルペン樹脂であることがより好ましく、芳香族変性水添テルペン樹脂であることがさらに好ましい。芳香族変性水添テルペン樹脂としては、タッキファイヤー(ヤスハラケミカル、K100)等を用いることができる。
【0037】
粘着剤組成物における非相溶樹脂(D)の含有量は、アクリル系重合体(A)100質量部に対し1〜50質量部であることが好ましく、2〜30質量部であることが好ましく、3〜25質量部であることがより好ましく、5〜20質量部であることがさらに好ましく、8〜15質量部であることが最も好ましい。なお、上記の含有量は、添加する非相溶樹脂の種類によって変動するが、例えば、非相溶樹脂(D)として芳香族変性水添テルペン樹脂や、スチレン−アクリル共重合体を用いた際には、上記範囲とすることが好ましい。非相溶樹脂(D)の含有量を上記範囲内とすることにより、全光線透過率の低下を抑えることができ、かつ、所望のヘイズに調整しやすくなる。
【0038】
また、主とする粘着剤組成物とは組成や分子量、ガラス転移温度(Tg)が異なる別の粘着剤等を用いることによっても両面粘着シートのヘイズを調整することができる。このような樹脂としては、例えば主組成の異なるアクリル系粘着組成物、ウレタン系粘着組成物やポリエステル系粘着組成物、ゴム系粘着組成物、シリコーン系粘着組成物などが挙げられる。
【0039】
(剥離シート付き両面粘着シート)
本発明の両面粘着シートは、例えば、剥離シート上に粘着剤組成物を塗工して塗膜を形成し、該塗膜を加熱して硬化物とすることにより得られる。
剥離シートは、少なくとも片面に離型性を有するシートである。剥離シートとしては、剥離シート用基材と該剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シート、あるいは、低極性基材としてポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。
剥離性積層シートにおける剥離シート用基材としては、紙類、高分子フィルムが使用される。剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。
シリコーン系剥離剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24−4527、SD−7220等や、信越化学工業(株)製のKS−3600、KS−774、X62−2600などが挙げられる。また、シリコーン系剥離剤中にSiO2単位と(CH33SiO1/2単位あるいはCH2=CH(CH3)SiO1/2単位を有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有することが好ましい。シリコーンレジンの具体例としては、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24−843、SD−7292、SHR−1404等や、信越化学工業(株)製のKS−3800、X92−183等が挙げられる。
剥離シートは、剥離しやすくするために、一方の剥離シートと他方の剥離シートとでそれぞれ剥離性が異なることが好ましい。つまり、一方からの剥離性と他方からの剥離性とが異なると、剥離性が高い方の剥離シートだけを先に剥離することが容易となる。その場合、貼合方法や貼合順序に応じて一方の剥離シートと他方の剥離シートの剥離性を調整すればよい。
【0040】
両面粘着シートを形成する粘着剤組成物の塗工は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
塗工液には溶媒が含まれる。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、n−ヘキサン、n−ブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドンなどが使用される。これらは1種以上を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
塗膜の加熱は、加熱炉、赤外線ランプ等の公知の加熱装置を用いて実施できる。
【0041】
[両面粘着シートの厚み]
両面粘着シートの厚みは10〜200μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましい。両面粘着シートの厚みが10μm以上であれば、充分な粘着力を確保でき、長時間使用しても浮きや剥がれが生じにくくなる。また、両面粘着シートの厚みが200μm以下であれば、例えば表示装置の大きさに両面粘着シートをカットする際にカット刃などに粘着剤が付着して不良率が上がるなどのトラブルが生じにくいという利点がある。
【0042】
(2)透明基材付き粘着シート
本発明の透明基材付き粘着シートは、透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材の貼合用であって、本発明の両面粘着シートと、両面粘着シートの一方の粘着面に接する透明基材層からなる。透明基材層はハードコート層を有していてもよい。透明基材層とハードコート層を積層する場合には、透明基材層とハードコート層との間に易接着層を設けることが好ましい。図1に示す態様は、本発明の透明基材付き粘着シートの一例であり、両面粘着シート13、易接着層11b、透明基材層12、易接着層11a、およびハードコート層10が、この順に積層されて構成されている。
以下において、透明基材層、ハードコート層、易接着層について説明する。
【0043】
[透明基材層]
透明基材層は、粘着シートを補強する基材として機能、又はガラス基材を用いた導電部材の飛散防止フィルム、或いは加飾フィルムとして利用される。また、透明基材層は、光学特性を有する層(位相差層など)であってもよい。すなわち、拡散粘着層を補強する基材としての機能の他に光学的機能を果たすものであってもよい。
透明基材層は、可視光線を透過する透明な材料から構成され、例えば透明な樹脂のフィルムを好適に用いることができる。透明な樹脂のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム等が挙げられる。これらの中では、耐熱性に優れること等から、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましく用いられる。
【0044】
本発明の透明基材付き粘着シートを構成する透明基材層は、単層であっても、複数の層から構成されるものであっても良い。複数の層から構成される場合、透明基材層は、異なるポリエステル系樹脂から構成されることとしても良い。
【0045】
本発明の透明基材付き粘着シートを構成する透明基材層の厚みは特に制限されないが、例えば、10μm以上にすることができ、20μm以上、50μm以上の範囲内で選択することも可能である。上限は用途によって異なるが、例えば1cm以下、1mm以下、300μm以下の範囲内で選択することも可能である。
本発明の透明基材付き粘着シートを構成する透明基材層のヘイズは5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、1以下であることがさらに好ましい。
【0046】
[ハードコート層]
ハードコート層は、透明基材層よりも硬度が高い層であり、透明基材付き粘着シートの表面に傷が発生するのを防止する機能を有する。
ハードコート層は、硬度が高く、かつ可視光線を透過するものであることが好ましい。一般的なハードコート層の場合は、JIS B 0601で定義される中心線平均粗さが1〜20nmであることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。中心線平均粗さは、例えば、(株)キーエンス製の超深度形状測定顕微鏡などを用いて測定することができる。
ハードコート層は、必要に応じてアンチリフレクションやアンチグレア、アンチウォーターマーク(タッチパネルモジュールと表示装置の積層体において、その間に空隙がある構成の場合、タッチパネル操作時にタッチパネルモジュールと表示装置が接触して、接触した部分が水に濡れたように見えるエラーが生じる場合があり、このエラーをウォーターマークと呼ぶ)機能を有するものであっても良い。このようなアンチグレア機能やアンチウォーターマーク機能を持ったハードコート層の場合は、JIS B 0601で定義される中心線平均粗さが20〜500nmであることが好ましく、50〜300nmがより好ましい。中心線平均粗さは、先述と同様に例えば、(株)キーエンス製の超深度形状測定顕微鏡などを用いて測定することができる。
【0047】
ハードコート層は硬度を付与するための硬質成分を含有することが好ましい。硬質成分としては、例えば架橋重合体を挙げることができる。架橋重合体としては、単官能モノマー重合体および多官能モノマー重合体を挙げることができる。多官能モノマー重合体は、好ましくは3官能以上の多官能モノマーを含む重合性モノマーの重合体であり、より好ましくは4官能以上の多官能モノマーを含む重合性モノマーの重合体である。例えば、3官能以上の多官能モノマーと2官能モノマーの混合モノマーの共重合体なども好ましく例示することができる。なお、ここでいうモノマーには、オリゴマーも含まれる。
【0048】
架橋重合体を得るために使用しうるモノマーの種類は特に制限されないが、例えば、アクリルモノマーなどを好ましく例示することができる。例えば、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(質量平均分子量600)ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(質量平均分子量400)ジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
重合性不飽和基を有する有機化合物のモノマーまたはオリゴマーは、熱硬化性であっても良いし、活性エネルギー線硬化性であっても良い。
なお、本発明における「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の総称である。
【0049】
ハードコート層は、柔軟性成分を含有しても良い。ハードコート層に柔軟性成分が含まれていると、クラックの発生等を防止することができる。柔軟性成分としては、例えば、トリシクロデカンメチロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸のエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパンのプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパンのエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
また、架橋重合体は、無機粒子および/または有機粒子を含有していても良い。無機粒子および/または有機粒子を含有すると、塗膜の硬化収縮が抑制される点で好ましい。無機粒子としては、例えば、二酸化ケイ素粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子、二酸化スズ粒子、五酸化アンチモン粒子、三酸化アンチモン粒子などの無機酸化物粒子を挙げることができる。また、有機粒子としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリシロキサン、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリアミドなどの樹脂粒子を挙げることができる。
【0051】
無機粒子を用いる場合は、カップリング剤により処理した反応性無機酸化物粒子を用いても良い。有機粒子を用いる場合は、カップリング剤により処理した反応性有機酸化物粒子を用いても良い。カップリング剤により処理することにより、アクリル系重合体との間の結合力を高めることができる。その結果、表面硬度や耐擦傷性を向上させることができ、さらに無機酸化物粒子および有機粒子の分散性を向上させることができる。
【0052】
カップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシアルミニウム等が挙げられる。これらは1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。カップリング剤の処理量は、無機酸化物粒子または有機粒子100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。
【0053】
ハードコート層の厚みは特に制限されないが、例えば、0.5μm以上にすることができ、1.0μm以上、2.0μm以上の範囲内で選択することも可能である。上限は用途によって異なるが、例えば100μm以下、50μm以下、20μm以下の範囲内で選択することも可能である。
【0054】
[易接着層]
易接着層は、透明基材層とハードコート層の間に設けられ、層同士を接着する機能を有する。また、易接着層は、両面粘着シートと透明基材層またはハードコート層との間に設けられていてもよい。
易接着層はアクリル系樹脂又はポリエステル系樹脂を含むことが好ましい。また、必要に応じてウレタン系樹脂等を含有しても良い。
易接着層に使用されるアクリル系樹脂としては、以下に示すようなアクリルモノマーから重合されるものが例示される。例えば、直鎖状、分岐状、環状のアルキル基を有したアルキルアクリレートやアルキルメタクリレート、ヒドロキシ含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミド基を含有するモノマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのモノマー成分は、2種以上を用いて共重合しても良い。
また、ポリエステル系樹脂としては、多塩基酸成分とポリオール成分とから重縮合されるものが例示される。用いられる多塩基酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルカルボン酸等が挙げられる。また、ポリオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのモノマー成分は、2種類以上を用いて共重合しても良い。
また、ウレタン系樹脂としては、ポリオール化合物とイソシアネート化合物の反応生成物として得られるものが例示される。用いられるポリオール化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルジオール、ポリアセタールジオール等が挙げられる。また、イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの成分は、2種類以上を用いて反応させることもできる。更に、必要であればこの他に鎖長延長剤、架橋剤などを使用しても良い。
【0055】
易接着層には易滑性を付与や屈折率調整を目的として粒子を添加させることができる。粒子としては、無機顔料や有機フィラー等が挙げられるが、易接着層の樹脂と屈折率が比較的近く、高い透明性を得られるためシリカを使用することが好ましい。また、易接着層の屈折率を調整する目的で使用される粒子としてはアルミナ―シリカ複合体や酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの粒子は、2種類以上を使用しても良い。
【0056】
易接着層には必要に応じて帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の種々の添加剤を添加しても良い。また、塗工適性や反応性向上を目的として界面活性剤やpH調整剤を添加しても良い。
【0057】
易接着層の厚みは特に制限されないが、例えば、0.1nm以上にすることができ、1nm以上、5nm以上の範囲内で選択することも可能である。上限は用途によって異なるが、例えば1μm以下、100nm以下、50nm以下の範囲内で選択することも可能である。
【0058】
易接着層の形成方法は特に制限されないが、透明基材層にポリエステル系樹脂を用いる場合、ポリエステル系樹脂を溶融し押し出した後、ポリエステル系樹脂シートの上に易接着層を形成することが好ましい。ポリエステル系樹脂シートは、溶融し、押し出された後、縦方向に3〜10倍延伸して縦延伸ポリエステル系樹脂フィルムを形成し、必要に応じてコロナ放電処理をする。その少なくとも一面に易接着層を塗布し、乾燥して易接着層を形成する。その後、易接着層を有するフィルムを横方向に3〜10倍延伸することにより2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムの形成時に同時に横方向に延伸された易接着層を形成する
また、別法として、ポリエステル系樹脂と易接着層用樹脂を同時に押し出し、積層フィルムとし、積層したフィルムを9〜100倍に公知の方法にて2軸延伸して易接着層を形成しても良い。
また粘着剤層又はハードコート層を積層する際に、必要に応じてコロナ放電処理、火炎処理等の公知の方法により表面処理を施しても良い。
【0059】
[剥離層]
本発明の透明基材付き粘着シートは、両面粘着シートの、透明基材層またはハードコート層が形成された側と反対側に剥離層が形成されていてもよい。透明基材付き粘着シートは粘着剤を含有しているため、露出していると意図しない物品と粘着してしまったり、両面粘着シート自体が劣化してしまったりするおそれがある。このため、両面粘着シートを物理的および化学的に保護するために、両面粘着シートの表面に剥離層を設けておき、使用する際に剥離層を剥離して両面粘着シートを露出させたうえで、他の部材へ貼り合わせることができる。
【0060】
剥離層としては、例えば、各種プラスチックフィルムにシリコーン等の剥離剤を塗布して剥離剤層を形成したもの、ポリプロピレンフィルム単体などが挙げられ、通常の両面粘着シート用の剥離シートとして用いられているものを利用することができる。
【0061】
以上のように構成された透明基材付き粘着シートでは、両面粘着シートのヘイズが10%超かつ20%未満であることにより、導電部材に適用したとき、両面粘着シートが導電部材の導電部側に十分な粘着力で粘着し、かつ導電部のパターンを不可視化することができる。また、この透明基材付き粘着シートの、導電部材を貼合した側と反対側に、さらに表示装置を設けたときには、表示装置の表示画面を導電部材の透明支持体側で良好に視認することができる。
【0062】
(3)光学部材
本発明の光学部材は、透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材に、本発明の両面粘着シートが貼合されて構成されている。この導電部材では、導電部が形成されていない透明支持体の表面は非導電部として機能する。本発明の両面粘着シートは、導電部材の少なくとも導電部の一部に直接接触するように貼合されており、好ましくは、導電部の少なくとも一部と非導電部の少なくとも一部に直接接触するように貼合されている。両面粘着シートの構成については、上記の(1)両面粘着シートの欄を参照することができる。
また、本発明の光学部材は、透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材に、本発明の透明基材付き粘着シートが貼合されて構成されたものであってもよい。言い換えれば、本発明の光学部材は、透明支持体上の一部に導電部が設けられた導電部材に、本発明の両面粘着シートが貼合され、さらに両面粘着シートの導電部材と反対側に、透明基材層およびハードコート層の少なくとも一方が設けられていてもよく、さらに両面粘着シートと透明基材層またはハードコート層との間、透明基材層とハードコート層との間に易接着層が設けられていてもよい。透明基材層、ハードコート層、易接着層の構成については、透明基材付き粘着シートを構成する透明基材層、ハードコート層、易接着層の構成についての説明を参照することができる。
以下では、光学部材の導電部材を構成する、透明支持体および導電部について説明する。
【0063】
[透明支持体]
導電部材の透明支持体としては、ガラス等、光学部材で通常用いられている、透明材料からなる支持体がいずれも使用可能である。本発明を適用すれば、例えばガラスからなる透明支持体が破損した場合であっても、両面粘着シートによってガラスの飛散が抑えられ、製品の安全性を高めることができる。
【0064】
[導電部]
導電部は、導電材料からなる層であり、透明支持体上に、導電部材の用途に応じたパターンで形成されている。
導電部は、例えば、この光学部材が表面型静電容量式タッチパネル等に適用される場合には、面内方向で実質的に均一な導電性能を有する均一層と、引き出し電極等に対応するパターンで電極層の周囲に形成された電極層を有して形成される。また、この光学部材が投影型静電容量方式のタッチパネルに適用される場合には、導電部は導電性能が規則的にパターン化された導電層として形成される。この投影型静電容量方式のタッチパネルでは、導電部が形成されていない透明支持体表面は位置検知のための非導電部として機能する。なお、導電部の上に、さらに導電膜の酸化を防ぐための保護膜が形成されていても良い。
【0065】
導電層の導電性能は、例えばJIS-K7194に記載の方法にて測定される表面抵抗で示すことが出来、タッチパネル用の電極板とするためには、表面抵抗は1×105Ω/sq以下が好ましく、1×103Ω/sq以下がより好ましい。また表面抵抗は0.1Ω/sq以上が好ましい。導電層の表面抵抗の範囲は、0.1〜1×105Ω/sqが好ましく、0.1〜1×103Ω/sqがより好ましい。
一方、非導電部は、タッチパネルがより正確な位置検知を行うために、例えばJIS-K6911に記載の方法にて測定される表面抵抗を1×109Ω/sq以上、より好ましくは1×1011Ω/sq以上として、1×1013Ω/sq以下、より好ましくは1×1012Ω/sq以下として、明確に絶縁化すると良い。非導電部の表面抵抗の範囲は、1×109〜1×1013Ω/sqが好ましく、1×1011〜1×1012Ω/sqがより好ましい。
【0066】
導電部の材質としては、公知の導電性物質を適用できる。導電性物質としては、無機系材料を用いてもよく、無機系材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、もしくはコバルトなどの金属、又はインジウム−スズ酸化物(Indium Tin Oxide(ITO))、インジウム−亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide(IZO))、酸化亜鉛(Zinc Oxide(ZnO))、もしくは亜鉛−スズ酸化物(Zinc Tin Oxide(ZTO))、もしくはアンチモン−スズ酸化物(ATO)などの金属酸化物が例示できる。導電性物質としては有機導電体を用いてもよく、有機導電体としては、導電性カーボンナノチューブやグラフェンなどの導電性炭素材料、又はポリチオフェン、もしくはポリアニリンなどの導電性高分子などが例示できるが、これらに限定するものではない。
中でも無機系材料としては信頼性の高さと、透明性と導電性に優れるという点で、ITOが最も好適に利用される。また、屈曲性に優れるという特徴と、透明性と導電性にも優れるという特徴を有する点で有機導電性高分子のポリチオフェンの一種であるPEDOT/PSSも好適に利用される。PEDOT/PSSとは、PEDOT(3,4−エチレンジオキシチオフェンのポリマー)とPSS(スチレンスルホン酸のポリマー)を共存させたポリマーコンプレックスを示す。
ITOやPEDOT/PSSのように比較的透明性に優れる導電体に比べ、金属や導電性炭素材料は透明性に劣るため、導電層2の材質として金属や導電性炭素材料を用いる場合は、使用する金属や導電性炭素材料をナノワイヤー化して塗工したり、メッシュ状に加工したりすることで透明性を確保すると良い。中でも、銀は、最も導電性に優れる導電体であることから、好適に利用される。
【0067】
導電部の厚みは、適用する導電体の導電性や透明性等を考慮して設定する必要があるため、厚みは特に制限されないが、例えば、金属系の場合で30〜600Å、金属酸化物系や有機系の場合で80〜5000Åの厚さが好ましい。
【0068】
導電部は公知の方法により形成できる。
具体的には、各種印刷方式などにより、透明基板上に部分的に導電層を設ける方法で導電部を形成しても良いし、均一な導電層を形成した後、その一部をエッチングなどにより除去して導電部を形成しても良い。均一な導電層を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法、電気メッキ法、塗布法、あるいはこれらの組合せ法などの薄膜形成法が挙げられる。膜の形成速度や大面積膜の形成性、又は生産性などの点より、真空蒸着法やスパッタリング法が好ましい。
導電部の形成に先立ち、積層体の表面に、密着性を高めるために、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、スパッタエッチング処理、又はアンダーコート処理等の適宜な前処理を施しても良い。
【0069】
以上のように構成された光学部材は、両面粘着シートのヘイズが10%超かつ20%未満であることにより、両面粘着シートが導電部材に十分な粘着力で粘着しており、かつ導電部のパターンが不可視化されている。また、表示装置と貼合したときには、表示装置の表示画面を導電部材の透明支持体側で良好に視認することができる。
【実施例】
【0070】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0071】
[1]両面粘着シートの作成
(実施例1〜4)
攪拌機、温度計、還流冷却機、滴下装置、窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを封入した後、溶媒である酢酸エチルを注入した。次に、反応装置内に、ブチルアクリレート(BA)を60質量%、メチルアクリレート(MA)を36質量%、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2EHA)を4質量%投入し、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを0.1質量%投入して重合反応を行った後、反応液に溶媒を注入してアクリル重合体溶液を得た。このアクリル重合体溶液に、固形分100質量部に対して、架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)製:コロネートL55E)を0.8質量部、光拡散粒子(綜研化学(株)製:MX−1000(平均粒径:10μm))を表1に示す割合で添加し、実施例1〜4の粘着剤組成物を得た。
この粘着剤組成物を、第1の剥離シート(三菱樹脂(株)製:MRV#50)の剥離剤層表面にアプリケータにより塗工し、100℃で2分間乾燥させて粘着層(両面粘着シート)を得た。次に、第2の剥離シート(三菱樹脂(株)製:MRE#38)の剥離剤層側を粘着層に重ねて、ラミネーターにより貼りあわせた。これによって、第1の剥離シートと第2の剥離シートを有する両面粘着シートを得た。粘着層の乾燥後の塗工量は25μmであった。
【0072】
(実施例5〜7)
光拡散粒子を綜研化学(株)製:KMR−3TA(平均粒径:3μm))に変え、添加部数を表1に示す割合に変えた以外は実施例1と同様にした。
【0073】
[2]透明基材層付き粘着シートの作成
(実施例8〜11)
剥離シート(三菱樹脂(株)製:MRE#38)の剥離剤層表面に実施例1〜4の粘着剤組成物をアプリケータにより塗工し、100℃で2分間乾燥させて粘着層を得た。次に、透明基材層(東洋紡(株)製:A4100#100、片面易接着層付きPETフィルム)の易接着層側に粘着層に重ねて、ラミネーターにより貼りあわせ、実施例8〜11の透明基材付き粘着シートを得た。粘着層の乾燥後の塗工量は25μmであった。
【0074】
(比較例1〜3)
粘着剤組成物に添加する光拡散粒子の添加量を表1に示すように変えたこと以外は、実施例5と同様にして透明基材層付き粘着シートを作製した。
【0075】
[評価]
1.ヘイズ
実施例1〜7の両面粘着シートの第2の剥離シートを剥離し、両面粘着シートの片方の面を松浪ガラス社製のスライドガラス(品番:S9112)に貼合し、第1の剥離シートを剥離した。また、実施例8〜11および比較例1〜3の透明基材層付き粘着シートの粘着面を松浪ガラス社製のスライドガラス(品番:S9112)に貼合した。これらの貼合物のヘイズを日本電色工業(株)製のNDH4000を用いて測定した。
【0076】
2.導電部の不可視化
透明支持体上にITOパターンが形成された電極部材を用意し、この電極部材に、各実施例および各比較例で作製した積層体の両面粘着シートをITOパターンと接するように貼合した。実施例1〜7の積層体を用いた場合は、貼合後に剥離シートを剥離した。そして、電極部材の透明支持体側からITOパターンが見えるか否かを目視にて観察し、以下の基準に従い評価した。
◎:ITOパターンが全く視認されない
○:ITOパターンがほぼ見えない
△:ITOパターンが視認される
×:ITOパターンがはっきりと視認される
【0077】
3.画面の視認性
導電部の不可視化の評価で用いた貼合品の電極部材とは反対側に、さらに表示装置を設けた。そして、電極部材の透明支持体側から画面を目視にて観察し、画面の視認性を以下の基準に従い評価した。
○:画面が見やすい
△:画面がやや見えにくい
×:画面が見えにくい
以上の評価結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示すように、ヘイズが10%超かつ20%未満である実施例1〜7の両面粘着シート及び実施例8〜11の透明基材付き粘着シートは、いずれもITOパターンが不可視化されており、画面の視認性も良好であった。これに対して、ヘイズが10%以下である比較例1、2の透明基材層付き粘着シートは、ITOパターンが不可視化されておらず、へイズが20%以上である比較例3の透明基材層付き粘着シートは表示装置を設けたときの画面の視認性が不良であった。
【0080】
(実施例12〜13)
粘着組成物に添加する光拡散粒子を非相溶樹脂へ変更し、添加量を表2に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして実施例12及び実施例13を得た。
【0081】
【表2】
【0082】
表2に示すように、非相溶樹脂を添加してヘイズを10%超かつ20%未満に調整した両面粘着シートにおいても、ITOパターンが不可視化されており、画面の視認性も良好であった。
【符号の説明】
【0083】
10 ハードコート層
11a、11b 易接着層
12 透明基材層
13 両面粘着シート
図1