特許第6388029号(P6388029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388029
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】縦結合共振子型弾性表面波フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/145 20060101AFI20180903BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   H03H9/145 Z
   H03H9/25 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-529336(P2016-529336)
(86)(22)【出願日】2015年6月15日
(86)【国際出願番号】JP2015067196
(87)【国際公開番号】WO2015198904
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2016年10月24日
(31)【優先権主張番号】特願2014-130987(P2014-130987)
(32)【優先日】2014年6月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高峰 裕一
【審査官】 橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/141168(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/086639(WO,A1)
【文献】 特開2002−111432(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/047114(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/145
H03H 9/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電膜を有する縦結合共振子型弾性表面波フィルタであって、
前記圧電膜を伝搬する弾性波の音速よりも伝搬するバルク波音速が高速である高音速部材と、
前記高音速部材上に積層されており、前記圧電膜を伝搬するバルク波の音速よりも、伝搬するバルク波音速が低速である低音速膜と、
前記低音速膜上に積層された前記圧電膜と、
前記圧電膜の一方面に形成されており、前記縦結合共振子型弾性表面波フィルタを構成するための複数のIDT電極とを備え、SH波を利用しており、
前記複数のIDT電極のうち少なくとも1つのIDT電極において、レイリー波スプリアスを抑圧するようにデューティが当該IDT電極の弾性波伝搬方向全長にわたり調整されており、
前記少なくとも1つのIDT電極において、デューティが最大の部分と、デューティが最小の部分とのデューティの比率が、1.04以上、2.5以下の範囲にある、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ。
【請求項2】
前記少なくとも1つのIDT電極において、デューティが前記弾性波伝搬方向全長にわたり一様ではない、請求項1に記載の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのIDT電極が、前記複数のIDT電極の全てである、請求項1または2に記載の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ。
【請求項4】
前記高音速部材の前記低音速膜とは反対側の面に積層された支持基板をさらに備える、請求項1〜のいずれか1項に記載の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ。
【請求項5】
前記高音速部材が、伝搬するバルク波音速が前記圧電膜を伝搬する弾性波の音速よりも速い、高音速支持基板からなる、請求項1〜のいずれか1項に記載の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SH波を利用した縦結合共振子型弾性表面波フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共振子や帯域フィルタなどに弾性表面波装置が広く用いられている。下記の特許文献1には、SH波を利用した弾性波装置が開示されている。この弾性波装置では、支持基板上に、高音速層、低音速膜、圧電膜及びIDT電極がこの順序で積層されている。SH波のエネルギーを閉じ込めることができるので、Q値を高めることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2012/086639
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の弾性波装置では、SH波が閉じ込められるだけでなく、レイリー波(P+SV波)も閉じ込められることになる。そのため、特許文献1に記載の積層構造を利用して、縦結合共振子型弾性表面波フィルタを作製すると、レイリー波に起因するスプリアスが大きく現れるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、レイリー波スプリアスのレベルを小さくし得る、縦結合共振子型弾性表面波フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタは、圧電膜を有する縦結合共振子型弾性表面波フィルタであって、前記圧電膜を伝搬する弾性波の音速よりも伝搬するバルク波音速が高速である高音速部材と、前記高音速部材上に積層されており、前記圧電膜を伝搬するバルク波の音速よりも、伝搬するバルク波音速が低速である低音速膜と、前記低音速膜上に積層された前記圧電膜と、前記圧電膜の一方面に形成されており、前記縦結合共振子型弾性表面波フィルタを構成するための複数のIDT電極とを備え、SH波を利用しており、前記複数のIDT電極のうち少なくとも1つのIDT電極において、レイリー波スプリアスを抑圧するようにデューティが当該IDT電極の弾性波伝搬方向全長にわたり調整されている。
【0007】
本発明に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタのある特定の局面では、前記少なくとも1つのIDT電極において、デューティが前記弾性波伝搬方向全長にわたり一様ではない。
【0008】
本発明に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタの他の特定の局面では、前記少なくとも1つのIDT電極において、デューティが最大の部分と、デューティが最小の部分とのデューティの比率が、1.04以上、2.5以下の範囲にある。
【0009】
本発明に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタの別の特定の局面では、前記少なくとも1つのIDT電極が、前記複数のIDT電極の全てである。
【0010】
本発明に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタの他の特定の局面では、前記高音速部材の前記低音速膜とは反対側の面に積層された支持基板がさらに備えられている。
【0011】
本発明に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタのさらに他の特定の局面では、前記高音速部材が、伝搬するバルク波音速が前記圧電膜を伝搬する弾性波の音速よりも速い、高音速支持基板からなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタによれば、SH波を利用してフィルタ特性を得るにあたり、レイリー波スプリアスのレベルを効果的に小さくすることが可能となる。従って、良好なフィルタ特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a)及び図1(b)は、本発明の第1の実施形態に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタの積層構造を示す略図的正面断面図及び第1の実施形態で用いられている1つのIDT電極の拡大平面図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態で用いられている縦結合共振子型弾性表面波フィルタの略図的平面図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態の縦結合共振子型弾性表面波フィルタを有するデュプレクサの回路図である。
図4図4は、第1の実施形態における各IDT電極における弾性表面波伝搬方向に沿ったデューティの変化を示す図である。
図5図5は、比較例の縦結合共振子型弾性表面波フィルタの減衰量−周波数特性を示す図である。
図6図6は、本発明の第1の実施形態に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタの減衰量−周波数特性を示す図である。
図7図7は、最大デューティと最小デューティとの比率と、レイリー波スプリアスレベルとの関係を示す図である。
図8図8は、本発明の第2の実施形態に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタの積層構造を示す略図的正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0015】
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタの積層構造を示す略図的正面断面図であり、図1(b)は、第1の実施形態で用いられている1つのIDT電極の拡大平面図である。
【0016】
図1(a)に示すように、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1は、支持基板2を有する。支持基板2上に、高音速部材としての高音速膜3、低音速膜4及び圧電膜5がこの順序で積層されている。圧電膜5の上面には、縦結合共振子型弾性表面波フィルタを形成するための電極構造が形成されている。上記電極構造は圧電膜5の下面に形成されていてもよい。
【0017】
上記電極構造を、図2に略図的平面図で示す。すなわち、第1〜第5のIDT電極6〜10が弾性表面波伝搬方向に順に並べられている。第1〜第5のIDT電極6〜10の弾性表面波伝搬方向両側に、反射器11,12が設けられている。従って、5IDT型の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1が構成されている。
【0018】
なお、図2では、各IDT電極6〜10及び反射器11,12を、矩形のブロックの対角線同士を結んだ形状で略図的に示している。
【0019】
上記支持基板2は、適宜の絶縁体または誘電体を用いて形成することができる。このような材料としては、サファイア、リチウムタンタレート、リチウムニオベイトもしくは水晶等の圧電体、アルミナ、マグネシア、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイトもしくはフォルステライト等の各種セラミック、ガラス等の誘電体、シリコン、もしくは窒化ガリウム等の半導体、または樹脂等を用いることができる。
【0020】
なお、本明細書において、高音速膜とは、圧電膜5を伝搬する表面波や境界波の弾性波よりも、該高音速膜中のバルク波の音速が高速となる膜を言うものとする。また、低音速膜とは、圧電膜5を伝搬するバルク波よりも、該低音速膜中のバルク波の音速が低速となる膜を言うものとする。また、ある構造上のIDT電極からは様々な音速の異なるモードの弾性波が励振されることになるが、圧電膜5を伝搬する弾性波とは、フィルタや共振子の特性を得るために利用する特定のモードの弾性波を示す。本実施形態では、弾性波としてSH波を利用している。
【0021】
上記高音速膜3は、弾性表面波を圧電膜5及び低音速膜4が積層されている部分に閉じ込め、高音速膜3より下の構造に漏れないように機能する。本実施形態では、高音速膜3は、窒化ケイ素からなる。もっとも、上記弾性表面波を閉じ込め得る限り、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、酸窒化ケイ素、DLC膜またはダイヤモンド、前記材料を主成分とする媒質、前記材料の混合物を主成分とする媒質等のさまざまな高音速材料を用いることができる。弾性表面波を圧電膜5及び低音速膜4が積層されている部分に閉じ込めるには、高音速膜3の膜厚は厚いほど望ましい。より具体的には、高音速膜3の膜厚は、弾性表面波の波長λの0.5倍以上、さらには1.5倍以上であることが望ましい。
【0022】
上記低音速膜4を構成する材料としては圧電膜5を伝搬するバルク波よりも低音速のバルク波音速を有する適宜の材料を用いることができる。このような材料としては、酸化ケイ素、ガラス、酸窒化ケイ素、酸化タンタル、また、酸化ケイ素にフッ素や炭素やホウ素を加えた化合物など、前記材料を主成分とした媒質を用いることができる。
【0023】
本実施形態では、圧電膜5の下方に、低音速膜4及び高音速膜3が積層されているので、圧電膜5において後述のように励振された弾性表面波を閉じ込めることができる。すなわち弾性表面波のエネルギーが、高音速膜3より下の部分に漏洩し難い。
【0024】
他方、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1では、IDT電極6〜10において、デューティが、弾性表面波伝搬方向全長にわたり、レイリー波の応答を抑圧し得るように調整されている。これを、IDT電極6を代表して図1(b)を参照して説明する。
【0025】
第1のIDT電極6は、第1のバスバー21と、第1のバスバー21と平行に延ばされた第2のバスバー22とを有する。第1のバスバー21には、複数本の第1の電極指23a〜23gの一端が接続されている。また、第2のバスバー22には、複数本の第2の電極指24a〜24fの一端が接続されている。複数本の第1の電極指23a〜23g及び複数本の第2の電極指24a〜24fは間挿し合っている。弾性表面波伝搬方向は、第1の電極指23a〜23g及び第2の電極指24a〜24fの延びる方向と直交する方向である。
【0026】
上記IDT電極6では、弾性表面波伝搬方向において、デューティが全長にわたり一様ではない。すなわち、第1の電極指23a〜23gは、その幅方向寸法が一様ではなく、異ならされている。第2の電極指24a〜24gについても一様ではない。言い換えれば、IDT電極6の弾性表面波伝搬方向全長にわたり、デューティが変化している。
【0027】
なお、IDT電極の電極指の構成としては、第1のIDT電極6について説明したが、第2〜第5のIDT電極7〜10においても、各IDT電極の弾性表面波伝搬方向全長にわたり、デューティが一様ではないように構成されている。
【0028】
図4は、上記実施形態におけるIDT電極6〜10のデューティの弾性表面波伝搬方向の変化を示す。
【0029】
上記効果を確かめるために、図3に示すデュプレクサ31を作製した。デュプレクサ31は、アンテナ端子32に接続された共通接続端子33を有する。アンテナ端子32とグラウンド電位との間にインダクタンスLが接続されている。共通接続端子33と送信端子34との間に、ラダー型フィルタ35が接続されている。ラダー型フィルタ35は、直列腕共振子S1〜S5を有する。また、直列腕とグラウンド電位とを結ぶように第1〜第4の並列腕が形成されている。第1の並列腕には、第1の並列腕共振子P1が設けられている。第2〜第4の並列腕には、それぞれ、第2〜第4の並列腕共振子P2〜P4が設けられている。
【0030】
上記直列腕共振子S1〜S5及び並列腕共振子P1〜P4は、いずれも弾性表面波共振子からなる。
【0031】
他方、共通接続端子33と受信端子36との間には、受信フィルタが構成されている。この受信フィルタは、上記実施形態の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1を有する。縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1と共通接続端子33との間に弾性表面波共振子からなる直列腕共振子S11,S12が接続されている。直列腕共振子S11,S12との間の接続点37とグラウンド電位との間に、並列腕共振子P11が接続されている。また、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1の出力端とグラウンド電位との間に並列腕共振子P12が接続されている。
【0032】
上記実施形態の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1を以下の仕様で作製した。
【0033】
支持基板2としては、Si基板を用い、その厚みは200μmとした。高音速膜3としては、SiN膜を用い、厚みは1345nmとした。低音速膜4としては、SiO膜を用い、その厚みは670nmとした。圧電膜5としては、カット角50°のLiTaO基板を用い、その厚みは600nmとした。IDT電極6〜10及び反射器11,12の材料としては、下から順に、12nmの厚みのTi層、162nmの厚みのCuを1重量%含有するAl合金層を積層したものを用いた。また、電極上に、保護膜として、25nmの厚みのSiO膜を積層した。
【0034】
第1〜第5のIDT電極6〜10における電極指交叉幅=40μm
【0035】
第1〜第5のIDT電極6〜10においては、IDT電極同士が隣り合う部分に狭ピッチ電極指部を有する。そして、デューティは、最小デューティが0.45、最大デューティが0.55となるように、弾性表面波伝搬方向において変化させた。より具体的には、図4に示すようにIDT電極6〜10のデューティを弾性表面波伝搬方向において変化するように、デューティを変化させた。実施形態においては、第1〜第5のIDT電極6〜10における電極指ピッチで定まる波長は下記の表1に示す通りとした。
【0036】
【表1】
【0037】
第1〜第5のIDT電極6〜10における電極指の対数は下記の表2に示す通りとした。
【0038】
【表2】
【0039】
反射器11,12の電極指の本数は各75本とした。また、反射器におけるデューティは0.5、波長は1.985μmとした。
【0040】
比較のために、第1〜第5のIDT電極において、デューティが0.5と一定であることを除いては、本実施形態の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1と同様とした、比較例の縦結合共振子型弾性表面波フィルタを作製した。
【0041】
上記実施形態及び比較例の縦結合共振子型弾性表面波フィルタを用いて、Band25用のデュプレクサを作製した。Band25における送信帯域は1850〜1915MHzであり、受信帯域は1930〜1990MHzである。
【0042】
上記比較例及び実施形態の縦結合共振子型弾性表面波フィルタを用いたデュプレクサにおける受信フィルタの減衰量周波数特性を図5及び図6に示す。図5に示す比較例の受信波形では、通過帯域の0.76倍の周波数位置に、矢印Rで示すレイリー波によるスプリアスが大きく現れていることがわかる。これに対して、図6に示す実施形態の受信波形では、レイリー波スプリアスが十分に抑圧されていることがわかる。より具体的には、実施形態によれば、レイリー波スプリアスのレベルが比較例に比べ4dB程度改善されている。この理由は以下の通りであると考えられる。狭ピッチ電極指の波長がメインの部分の電極指の波長の約0.76倍であるために、通過帯域の0.76倍付近にスプリアスが生じていると考えられる。これに対して、上記実施形態では第1〜第5のIDT電極6〜10においてデューティを変化させているため、IDT電極の波長を一定としたため、上記スプリアスが抑圧されていると考えられる。
【0043】
上記のように、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1を用いることにより、レイリー波スプリアスのレベルを効果的に小さくし得ることがわかる。
【0044】
また、本願発明者は、上記第1〜第5のIDT電極6〜10における最大デューティと最小デューティとの比を種々変化させ、同様にしてレイリー波スプリアスのレベルを測定した。その結果を図7に示す。
【0045】
なお、図7の縦軸のレイリー波スプリアスレベル(dB)とは、レイリー波スプリアスが生じている部分の減衰量(dB)を示し、値が大きいほどレイリー波スプリアスが小さいことを意味する。
【0046】
図7から明らかなように、最大デューティと最小デューティとの比が大きくなるほどレイリー波スプリアスを効果的に抑圧することができる。上記実施形態では、最大デューティと最小デューティとの比は、0.55/0.45=1.22である。
【0047】
また、上記レイリー波スプリアスレベルを1dB以上改善するには、最大デューティと最小デューティとの比を1.04以上とすればよいことがわかる。従って、十分にレイリー波スプリアスのレベルを抑圧するには、上記最大デューティと最小デューティとの比は1.04以上であることが望ましい。他方、レイリー波スプリアスのレベルをより効果的に抑圧するには、最大デューティと最小デューティとの比は大きい方が好ましい。しかしながら、デューティを変化させてIDT電極を作製するうえでは、最大デューティと最小デューティとの比が2.5を超えると製造が困難となる。従って、最大デューティと最小デューティとの比は1.04以上、2.5以下であることが好ましい。
【0048】
図8は、第2の実施形態の縦結合共振子型弾性表面波フィルタの積層構造を示す略図的正面断面図である。第2の実施形態の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ41は、高音速支持基板42を有する。高音速支持基板42は、伝搬するバルク波音速が、圧電膜5を伝搬する弾性波の音速よりも高音速である。よって、高音速支持基板42は、高音速膜3と同様の材料で形成することができる。このように、第1の実施形態の支持基板2を省略し、高音速膜3に代えて高音速支持基板42を用いてもよい。
【0049】
なお、上記実施形態では、5IDT型の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1,41を説明したが、本発明は、3IDT型や、5IDT型よりも多くのIDT電極を有する縦結合共振子型弾性表面波フィルタにも適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…縦結合共振子型弾性表面波フィルタ
2…支持基板
3…高音速膜
4…低音速膜
5…圧電膜
6〜10…第1〜第5のIDT電極
11,12…反射器
21,22…第1,第2のバスバー
23a〜23g…第1の電極指
24a〜24f…第2の電極指
31…デュプレクサ
32…アンテナ端子
33…共通接続端子
34…送信端子
35…ラダー型フィルタ
36…受信端子
37…接続点
41…縦結合共振子型弾性表面波フィルタ
42…高音速支持基板
P1〜P4,P11,P12…並列腕共振子
S1〜S5,S11,S12…直列腕共振子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8