(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
供給される電流に応じて発光する有機EL素子と、輝度信号の大きさに応じた駆動電流を前記有機EL素子に供給する駆動トランジスタとを含む表示画素が複数配列されて構成される表示部と、
前記表示部の外に設けられ、有機EL素子で構成された測定用素子と、測定用信号の大きさに応じた電流を前記測定用素子に供給する測定用トランジスタを含む測定用画素と、
所定の劣化状態における前記測定用画素に流れる電流量を測定する電流量測定部と、
前記劣化状態における前記測定用画素について、前記輝度信号の第一補正量であって、前記輝度信号が示すデータを含む少なくとも一つの第一補正量算出用パラメータと前記第一補正量との関係式又はテーブルに基づいて求められる前記第一補正量と、前記輝度信号を前記測定用信号とした場合に前記測定用トランジスタに流れる前記電流量の前記電流量測定部により測定された実測値から求められる前記輝度信号の第二補正量との間のずれ量を算出するずれ量算出部と、
前記ずれ量算出部における前記ずれ量の算出結果を用いて、前記表示画素の前記輝度信号の第三補正量であって、前記輝度信号が示すデータを含む少なくとも一つの第三補正量算出用パラメータと前記第三補正量との関係式又はテーブルに基づいて求められる前記第三補正量を補正する輝度信号補正部とを備える、
表示装置。
前記ずれ量算出部は、前記第一ずれ量算出処理において、前記測定用画素の前記測定用トランジスタが飽和領域で動作するように前記測定用トランジスタのソース−ドレイン間の電圧を調整して、前記測定用画素に流れる電流量の実測値を求める、
請求項2に記載の表示装置。
前記ずれ量算出部は、前記第二ずれ量算出処理において、前記測定用画素の前記測定用トランジスタが線形領域で動作するように前記測定用トランジスタのソース−ドレイン間の電圧を調整して、前記測定用画素に流れる電流量の実測値を求める、
請求項2に記載の表示装置。
前記測定用画素は、前記表示画素の前記駆動トランジスタのゲート端子に駆動信号を供給するための走査線を駆動する走査線駆動回路と、前記表示画素との間に配置される、
請求項1〜4の何れか1項に記載の表示装置。
供給される電流に応じて発光する有機EL素子と、輝度信号の大きさに応じた駆動電流を前記有機EL素子に供給する駆動トランジスタとを含む表示画素が複数配列されて構成される表示部と、
前記表示部の外に設けられ、有機EL素子で構成された測定用素子と、測定用信号の大きさに応じた電流を前記測定用素子に供給する測定用トランジスタを含む測定用画素とを備える表示装置の駆動方法であって、
所定の劣化状態における前記測定用画素に流れる電流量を測定するステップと、
前記劣化状態における前記測定用画素について、前記輝度信号の第一補正量であって、前記輝度信号が示すデータを含む少なくとも一つの第一補正量算出用パラメータと前記第一補正量との関係式又はテーブルに基づいて求められる前記第一補正量と、前記輝度信号を前記測定用信号とした場合に前記測定用トランジスタに流れる前記電流量の前記電流量を測定するステップにおいて測定された実測値から求められる前記輝度信号の第二補正量との間のずれ量を算出するステップと、
前記ずれ量を算出するステップにおける前記ずれ量の算出結果を用いて、前記表示画素の前記輝度信号の第三補正量であって、前記輝度信号が示すデータを含む少なくとも一つの第三補正量算出用パラメータと前記第三補正量との関係式又はテーブルに基づいて求められる前記第三補正量を補正する輝度信号補正部とを備える、
表示装置の駆動方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(課題の詳細)
上述した課題、つまり、駆動トランジスタおよび有機EL素子の経時劣化について、
図1〜
図4を用いてより詳細に説明する。
【0012】
[表示画素の構成]
図1は、有機ELディスプレイを構成する表示画素の構成を示す回路図である。なお、表示画素PIXは、R(赤)G(緑)B(青)の3原色のいずれか1つに対応している。RGBの3つの表示画素PIXのセットで、1つの画素が構成されている。
【0013】
図1に示すように、表示画素PIXは、スイッチング素子T1〜T4、容量素子C1、駆動トランジスタT5および有機EL素子(発光素子)OEL1を備えている。
【0014】
スイッチング素子T1は、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)であり、表示画素PIXの選択非選択を切り替える。スイッチング素子T1は、ゲート端子が走査線SCNに、ソース端子がデータ線Dataに、ドレイン端子がノードN1にそれぞれ接続されている。
【0015】
スイッチング素子T2は、薄膜トランジスタであり、制御線REFの電圧に応じて参照電圧VREFの供給を切り替える。スイッチング素子T2は、ゲート端子が制御線REFに、ソース端子およびドレイン端子の一端がノードN1に接続され、ソース端子およびドレイン端子の他端に参照電圧VREFが入力されている。
【0016】
スイッチング素子T3は、薄膜トランジスタであり、制御線ENBの電圧に応じて電圧VTFTの供給を切り替える。スイッチング素子T3は、ゲート端子が制御線ENBに、ソース端子がノードN3にそれぞれ接続され、ドレイン端子に電圧VTFTが入力されている。
【0017】
スイッチング素子T4は、薄膜トランジスタであり、制御線INIの電圧に応じて容量素子C1の電荷を放電する。スイッチング素子T4は、ゲート端子が制御線INIに、一端がノードN2にそれぞれ接続され、他端に電圧VINIが入力されている。
【0018】
駆動トランジスタT5は、薄膜トランジスタであり、輝度信号の大きさに応じた駆動電流を有機EL素子OEL1に供給する。駆動トランジスタT5は、ゲート端子がノードN1に、ソース端子が有機EL素子OEL1のアノード電極に、ドレイン端子がノードN3にそれぞれ接続されている。
【0019】
有機EL素子は、駆動トランジスタT5から供給される駆動電流に応じて発光する素子である。有機EL素子OEL1は、アノード電極がノードN2に接続されている。
【0020】
容量素子C1は、一端がノードN1に、他端がノードN2に接続されている。
【0021】
[駆動トランジスタT5の劣化]
駆動トランジスタの劣化について、
図2を基に説明する。
【0022】
図2は、駆動トランジスタT5の劣化前後の特性を示すグラフである。
図2において、破線は、駆動トランジスタT5の劣化前のIV特性を示している。実線は、駆動トランジスタT5の劣化後のIV特性を示している。
【0023】
図2に示すように、駆動トランジスタT5は、電流が流れることにより次第に劣化し、ゲート端子に同じ電圧を印加した場合でも、ソースドレイン間に流すことができる電流量が次第に低下する。より具体的には、駆動トランジスタT5が劣化していない状態(図中の「初期カーブ」)に対し、劣化後は、同じ電圧Vdataに対し電流量Ipixが小さくなっている。
【0024】
[有機EL素子OEL1の劣化]
有機EL素子の劣化について、
図3を基に説明する。
【0025】
図3は、有機EL素子OEL1の劣化前後の特性を示すグラフである。
図3において、破線は、有機EL素子OEL1の劣化前の特性を示している。実線は、有機EL素子OEL1の劣化後の特性を示している。
【0026】
図3に示すように、有機EL素子は、電流が流れることにより次第に劣化し、同じ電流量の電流を流しても発光量が次第に小さくなる。より具体的には、有機EL素子OEL1が劣化していない状態に対し、劣化後は、同じ駆動電流に対し発光量Lが小さくなっている。
【0027】
[駆動トランジスタT5および有機EL素子OEL1の劣化による映像品質の劣化]
駆動トランジスタT5および有機EL素子OEL1の劣化による映像品質の劣化について、
図4を基に説明する。
【0028】
図4は、一部の画素が劣化した場合の有機ELディスプレイの状態を説明する図である。
図4の(a)に示すように、例えば、一部の画素(図中の白い領域)のみを利用して映像を表示し続けた後、
図4の(b)に示すように、全画素同じデータ電圧で白表示させた場合に、上記一部の画素の見た目の輝度(発光量)が他の画素よりも低下してしまうという問題がある。
【0029】
このような有機EL素子の劣化に対応するための方法としては、例えば、有機EL素子の劣化状態に応じて電流量の補正量を求め、駆動トランジスタの劣化状態に応じて、補正後の電流量を流すために必要なゲート電圧の補正量を理論的に求める方法がある。
【0030】
[理論値と実際の劣化状態とのずれ]
しかしながら、所定の劣化状態における表示画素において、理論的に算出された発光量(以下、適宜「発光量の理論値」と称する)と、実際の発光量(以下、適宜「発光量の実測値」と称する)との間でずれが生じる場合がある。ずれの要因としては、例えば、電源OFF時における劣化の回復、温度あるいは湿度等の周辺環境等がある。
【0031】
図5は、発光量の理論値と発光量の実測値とのずれを示す図である。
図5では、初期状態の画素を100%として、同じ電圧値の輝度信号を印加した場合の発光量を示している。
図5において、点線は発光量の理論値を、実線は発光量の実測値を示している。
図5に示すように、電源OFF時における劣化の回復等により、発光量の理論値と発光量の実測値との間には、ずれが生じている。
【0032】
このように、発光量の理論値と発光量の実測値との間にずれがあることから、発光量の理論値による輝度信号の補正では、精度が十分ではないという問題がある。
【0033】
有機EL素子の劣化に対応するための他の技術としては、例えば、表示画素PIXと同じ構成の測定用画素を設け、測定用画素の有機EL素子に流れる電流量と、測定用画素の有機EL素子の発光量とを測定して、電圧値等を補正する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0034】
特許文献1に記載の方法では、電流量の実測値と発光量の実測値とに基づいて補正を行うので、より高精度に補正することが可能になる。
【0035】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の方法では、測定用画素の有機EL素子の電流量、および、当該有機EL素子の発光量の両方を測定する必要があるという問題がある。
【0036】
このような問題を解決するために、本開示の一態様に係る表示装置は、供給される電流に応じて発光する有機EL素子と、輝度信号の大きさに応じた駆動電流を前記有機EL素子に供給する駆動トランジスタとを含む表示画素が複数配列されて構成される表示部と、前記表示部の外に設けられ、有機EL素子で構成された測定用素子と、測定用信号の大きさに応じた電流を前記測定用素子に供給する測定用トランジスタを含む測定用画素と、所定の劣化状態における前記測定用画素に流れる電流量を測定する電流量測定部と、前記劣化状態における前記測定用画素について、理論的に求められる前記輝度信号の第一補正量と、前記電流量測定部により測定された電流量の実測値から求められる前記輝度信号の第二補正量との間のずれ量を算出するずれ量算出部と、前記ずれ量算出部における前記ずれ量の算出結果を用いて、理論的に求められる前記表示画素の前記輝度信号の第三補正量を補正する輝度信号補正部とを備える。
【0037】
上記構成の表示装置によれば、測定用画素における理論的な輝度信号の第一補正量と、測定用画素における電流量の実測値から求められる輝度信号の第二補正量とのずれを求めて、表示画素の理論的な輝度信号の第三補正量を補正する。
【0038】
上記構成の表示装置によれば、測定用素子の電流量の実測値を用いるので、従来のように、表示用画素の輝度値を理論のみで補正する場合に比べ、高精度に補正を行うことが可能になる。また、特許文献1に記載の表示装置では、測定用素子の電流量の実測値と発光量とを測定する必要があったが、上記構成の表示装置では、ダミー画素(測定用画素)の電流値を測定するだけで、駆動トランジスタまたは有機EL素子の劣化に対応することが可能になる。言い換えると、測定用画素における発光量の実測値を求める必要がなくなる。
【0039】
なお、補正量は、輝度信号に対する補正値または補正率等であっても良いし、補正後の輝度信号(補正信号)であってもよい。
【0040】
また、測定用画素に流れる電流量は、特に、測定用素子に流れる電流量を指す。測定用トランジスタと測定用素子とは直列に接続されているため、測定用トランジスタのソースドレイン間に流れる電流量は、測定用素子に流れる電流量とほぼ同じである。
【0041】
例えば、前記ずれ量算出部は、前記劣化状態における前記測定用トランジスタについて、所望の電流量を得るために必要なゲート電圧であって、理論的に求められる第一ゲート電圧と、前記電流量を得るために必要なゲート電圧であって、前記実測値から求められる第二ゲート電圧との間の第一ずれ量を算出する第一ずれ量算出処理と、前記劣化状態における前記測定用素子について、所望の発光量を得るために必要な電流量であって、理論的に求められる第一電流量と、前記発光量を得るために必要な電流量であって、前記実測値から求められる第二電流量との間の第二ずれ量を算出する第二ずれ量算出処理とを実行し、前記第一ずれ量と前記第二ずれ量とを合わせて前記ずれ量を算出しても良い。
【0042】
上記構成の表示装置によれば、特性の異なる駆動トランジスタおよび有機EL素子のそれぞれについて、より的確に劣化の状態を求めることができる。
【0043】
例えば、前記ずれ量算出部は、前記第一ずれ量算出処理において、前記測定用画素の前記測定用トランジスタが飽和領域で動作するように前記測定用トランジスタのソース−ドレイン間の電圧を調整して、前記測定用画素に流れる電流量の実測値を求めても良い。
【0044】
上記構成の表示装置によれば、測定用トランジスタである駆動トランジスタについて、より的確に劣化の状態を求めることができる。駆動トランジスタの補正量のずれは、理論的なゲート電圧と実測値から求められるゲート電圧との比により求められる。このため、測定用トランジスタに起因する輝度信号の補正量の算出では、測定用トランジスタを飽和領域で動作させることで、より的確に劣化の状態を求めることができる。
【0045】
例えば、前記ずれ量算出部は、前記第二ずれ量算出処理において、前記測定用画素の前記測定用トランジスタが線形領域で動作するように前記測定用トランジスタのソース−ドレイン間の電圧を調整して、前記測定用画素に流れる電流量の実測値を求めても良い。
【0046】
上記構成の表示装置によれば、有機EL素子について、より的確に劣化の状態を求めることができる。測定用トランジスタを線形領域で動作させれば、測定用画素を構成する有機EL素子の電圧値の変化が、測定用トランジスタを流れる電流量の変化として現れる。したがって、測定用トランジスタを線形領域で動作させて、電流量を測定することで、有機EL素子の電圧値の変化を求めることが可能になる。
【0047】
例えば、前記測定用画素は、前記表示画素の前記駆動トランジスタのゲート端子に駆動信号を供給するための走査線を駆動する走査線駆動回路と、前記表示画素との間に配置されても良い。
【0048】
上記構成の表示装置は、測定用画素が走査線駆動回路と表示部との間に配置されるので、測定用素子のための走査線を新たに設ける必要がなくなる。言い換えると、測定用素子は、測定用トランジスタのゲート端子が、前記駆動トランジスタのゲート端子に接続された走査線に接続できる位置に配置される。より具体的には、例えば、上記構成の表示装置の測定用画素は、表示部の左右に配置される。
【0049】
例えば、前記表示部は、複数の前記表示画素で構成される複数のブロックで構成され、前記複数のブロックのそれぞれについて、対応するブロックの近傍に前記測定用画素が設けられ、前記ずれ量算出部は、前記複数のブロックのそれぞれについて、対応する前記測定用画素の前記電流量を用いて前記ずれ量を算出しても良い。
【0050】
上記構成の表示装置は、ブロック単位でずれ量を求めるので、個々の画素の劣化により精細に対応することが可能になる。
【0051】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されても良い。
【0052】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0053】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0054】
(実施の形態)
実施の形態の表示装置について、
図6A〜
図10を基に説明する。
【0055】
本実施の形態の表示装置は、所定の劣化状態にある測定用画素について、理論的に求められる輝度信号の第一補正量と、電流量の実測値から求められる輝度信号の第二補正量との間のずれ量を求める。本実施の形態の表示装置は、理論的に求められる表示画素の輝度信号の第三補正量の理論値を、ずれ量を用いて補正する。これにより、実質的に、電流量の実測値から求められる表示画素の輝度信号の第四補正量を求めることができる。本実施の形態では、表示装置は、有機ELディスプレイである。
【0056】
なお、本実施の形態では、補正量は、補正後の輝度信号(補正信号)である場合を例に説明するが、輝度信号に対する補正値(輝度信号からの差分)または補正率であっても良い。
【0057】
[1−1.表示装置の構成]
有機ELディスプレイの構成例について、
図6A〜
図6Cを基に説明する。
【0058】
図6Aは、本実施の形態の有機ELディスプレイ100の構成例を示すブロック図である。
図6Bは、有機ELディスプレイ100を構成する表示用画素および測定用画素と、各種配線の接続関係を示す図である。
図6Cは、有機ELディスプレイ100を背面側から見たときの構成を示す図である。
【0059】
有機ELディスプレイ100は、
図6Aに示すように、画素部10と、複数の配線と、複数のCOF(Chip on Film、Chip on Flexible)20と、PCB(Printed Circuit Board、プリント基板)30と、制御部40とを備えている。
【0060】
画素部10は、表示部110と、測定部120とを備えている。
【0061】
表示部110は、映像を表示するための領域であり、ユーザーが視認できる位置に配置された複数の表示画素で構成されている。表示部110の複数の表示画素は、マトリクス状に配置されている。表示画素の構成は、
図1に示す表示画素PIXの構成と同じであり、供給される電流に応じて発光する有機EL素子OEL1と、輝度信号(データ線Dataの電圧)の大きさに応じた駆動電流を有機EL素子OEL1に供給する駆動トランジスタT5とを含んで構成されている。本実施の形態の表示画素PIXは、それぞれ、3原色の1つに対応している。RGBの3つの表示画素PIXのセットで1つの画素が構成されている。1つの画素を構成する複数の表示画素PIXは、それぞれ隣接して配置されている。
【0062】
測定部120は、劣化の測定値を得るための領域であり、ユーザーが視認できない位置、例えば、フロントキャビネットの内側に配置された複数の測定用画素で構成されている。より詳細には、測定用画素は、表示部110の外側に配置されている。測定用画素の構成は、表示画素PIXと同じである。なお、以下の説明では、測定用画素の有機EL素子(発光素子)を測定用素子、測定用画素の駆動トランジスタT5を測定用トランジスタと適宜称する。測定用画素を構成する測定用素子および測定用トランジスタの特性は、表示画素PIXを構成する有機EL素子OEL1および駆動トランジスタT5の特性と略同じである。このように測定用画素を形成することで、より高精度な補正が可能になる。
【0063】
さらに、本実施の形態において、測定用画素は、専用に作成した画素ではなく、有機ELディスプレイの製造上、表示部110の周囲に余分に形成される画素を利用している。これらの測定用画素は、通常の映像の表示では利用されない。このような画素を利用することにより、測定用画素を作成するための特別な工程を必要としないため、製造コストが増大するのを抑えることが可能になる。
【0064】
本実施の形態の測定部120は、後述する走査線駆動回路を備えるCOF22と、表示部110との間に配置されている。このように配置することにより、測定部120は、表示部110と走査線SCNを共用することができる。
【0065】
複数の配線は、画素部10に電源および各種電圧を供給する配線である。複数の配線には、
図6A〜
図6Cに示すように、例えば、走査線SCN、データ線Data、配線LTFT1、および、モニター用配線LTFT2等が含まれる。上述したように、走査線SCNは、表示部110および測定部120で共通に用いられる。データ線Dataは、
図6Bに示すように、色別(RGB別)毎に設けられている。
【0066】
このように配線されることにより、測定用画素の輝度信号(Data線の信号)は、表示画素とは独立して設定することが可能になる。これに対し、測定用画素の駆動信号(走査線SCNの信号)は、表示画素と同じ信号に設定される。測定用画素に供給される電圧VTFT(モニター用配線LTFT2の電圧)は、表示画素と同じ電圧である。
【0067】
配線LTFT1は、電圧VTFTを表示部110に供給する配線である。モニター用配線LTFT2は、電圧VTFTを測定部120に供給する配線である。電圧VTFTを供給する配線を、表示部110と測定部120とで異なる配線としたのは、以下の理由による。本実施の形態では、表示画素PIXの電流量を直接測定することが困難であるため、測定用画素の電流量を測定する構成となっている。測定用画素に流れる電流量は、電圧VTFTを供給する配線に流れる電流量を測定することで求められる。このため、測定用画素に対し、専用のモニター用配線LTFT2を設けている。
【0068】
COF20は、画素部10に各種信号を供給する駆動回路を備えたフレキシブルケーブルで構成され、画素部10の周囲に配置されている。COF20には、
図6Aに示すように、データ線Dataに接続されるCOF21と、走査線SCNに接続されるCOF22とが含まれる。
【0069】
COF21(
図6Aでは画素部10の上下に記載)は、データ線Dataに輝度信号に応じた電圧を供給するデータ線駆動回路を備えている。なお、本実施の形態では、COF21が、表示部110および測定部120に対しデータ線Dataを介して輝度信号に応じた電圧を供給するが、これに限るものではない。測定部120に対し、輝度信号に応じた電圧を供給する専用の回路を設けても良い。
【0070】
COF22(
図6Aでは画素部10の左右に記載)は、選択された表示画素に接続された走査線SCNに駆動信号を供給するための走査線駆動回路を備えている。
【0071】
PCB30は、COF20と制御部40とを接続するプリント基板である。なお、
図6Aでは、紙面上、全てのCOF20と接続されていないが、実際には、全てのCOF20と制御部40とを接続している。
【0072】
制御部40は、表示部110における映像の表示を制御する回路であり、タイミングコントローラ(TCOM)を用いて構成される。
図6Cに示すように、制御部40は、電流量測定部41およびMCU(Micro Control Unit)50を備えている。MCU50は、映像表示回路および劣化対応回路として機能する。
【0073】
映像表示回路は、画素部10に通常の映像を表示させる回路である。制御部40の映像表示回路は、電源回路60から供給される電源電圧を用いて、COF20に対し輝度信号および駆動信号等を供給し、表示部110に所望の映像を表示させる。
【0074】
劣化対応回路は、表示画素の劣化に対応して輝度信号を補正する回路である。
図7は、劣化対応回路の構成例を示す図である。制御部40は、劣化対応機能として、電流量測定部41と、大規模メモリ42と、ずれ量算出部43と、輝度信号補正部44とを備える。
【0075】
電流量測定部41は、測定用画素に電圧VTFTを供給するモニター用配線LTFT2に流れる電流量を測定する。
【0076】
大規模メモリ42は、例えば、フラッシュメモリ等のメモリで構成されている。なお、大規模メモリ42は、劣化対応回路の専用のメモリである必要は無く、映像表示回路と共用されても良い。大規模メモリ42には、測定用画素の理論的な輝度信号の第一補正量および表示画素の理論的な輝度信号の第三補正量を算出するためのパラメータが記憶される。なお、第一補正量および第三補正量を算出するためのパラメータには、例えば、輝度信号が示すデータあるいは温度条件等が含まれていても良い。また、当該パラメータに代えて、第一補正量および第三補正量の算出結果を保存しても良いし、当該パラメータと算出結果の両方を記憶するように構成しても良い。
【0077】
ずれ量算出部43は、所定の劣化状態にある測定用画素について、理論的に求められた輝度信号の第一補正量と、電流量測定部41で測定された電流量の実測値から求められる輝度信号の第二補正量との間のずれ量を算出する。ずれ量算出部43は、当該ずれ量を用いて、理論的な表示画素の輝度信号の第三補正量を補正するための補正係数を求める。
【0078】
輝度信号補正部44は、ずれ量算出部43において算出された補正係数を用いて、表示画素PIXの輝度信号の第三補正量を補正する。
【0079】
電源回路60は、電圧VTFTを含む各種電源を生成する回路であり、画素部10に対し、電圧VTFTを供給するDCDCコンバータ61を備えている。さらに、図示しないが、COF20の基準電圧(ドライバIC基準電圧)をCOF20に供給するYIC1、測定用画素の輝度信号VDataをCOF20に供給するYIC2に所定の電源を供給している。
【0080】
[1−2.表示装置の動作]
有機ELディスプレイ100の動作(輝度信号の補正)について、
図8〜
図10を基に説明する。
【0081】
本実施の形態では、上述したように、所定の劣化状態にある測定用画素について、理論的に求められる輝度信号の第一補正量と、電流量の実測値から求められる輝度信号の第二補正量との間のずれ量を求め、理論的に求められる表示画素の輝度信号の第三補正量を、ずれ量を用いて補正する。
【0082】
なお、以下の説明において、補正係数の算出時の測定用画素の劣化状態を第一劣化状態とし、表示画素の劣化状態を第二劣化状態とする。
【0083】
[1−2−1.測定用画素の劣化処理]
先ず、測定用画素の劣化処理について説明する。
【0084】
制御部40は、表示部110に対して映像信号に応じた映像を表示させるときに、表示画素の劣化状態に応じて測定用画素を劣化させるための動作を行う。
【0085】
より詳細には、表示部110に対して映像信号に応じた映像を表示させると同時に、測定用画素に対して映像信号に応じた測定用の輝度信号を与えて、測定用画素を実際に発光させる。これにより、測定用画素に電流が流れ、測定用画素が劣化する。
【0086】
図8は、測定用画素に接続するデータ線Data(
図8では「ダミーソースライン」と記載)に印加する輝度信号の信号波形を示している。
図8の時間t0〜t1のストレス印加時間が、測定用画素を劣化させるための動作に相当する。
図8では、測定用画素R1、G1、B1については、測定用画素に高負荷をかける場合の輝度信号の信号波形を、測定用画素R2、G2、B2については、測定用画素に低負荷をかける場合の輝度信号の信号波形をそれぞれ示している。つまり、測定用画素を2つに分け、2種類の負荷に対応して、2通りの劣化量で劣化させている。
【0087】
[1−2−2.理論値を算出するためのデータの蓄積処理]
制御部40は、表示部110に映像を表示したときに、表示画素毎に、第二劣化状態にある表示画素について、理論的に求められる輝度信号の第三補正量を算出するためのパラメータ(以下、「表示画素の理論値算出用パラメータ」と称する)を大規模メモリ42に蓄積する。
【0088】
パラメータには、輝度信号が示すデータ、温度条件などが含まれる。大規模メモリ42には、上記パラメータが累積的に蓄積される。
【0089】
同様に、制御部40は、測定用画素毎に、第一劣化状態にある測定用画素について、理論的に求められる輝度信号の第一補正量を算出するためのパラメータ(以下、「測定用画素の理論値算出用パラメータ」と称する)を大規模メモリ42に蓄積する。
【0090】
[1−2−3.輝度信号の補正係数の算出]
本実施の形態における理論的な表示画素PIXの輝度信号の第三補正量を補正するための補正係数の算出方法について、
図9および
図10を基に説明する。
図9は、本実施の形態における補正係数の算出方法を示すフローチャートである。
【0091】
補正係数の算出は、本実施の形態では、フレーム単位ではなく、有機ELディスプレイ100の起動時等のイベント発生毎、および、1時間等の一定時間毎に実行される。これは、補正係数は、フレーム単位では変化せず、劣化がある程度進む毎に変化すると考えられるからである。
【0092】
制御部40のずれ量算出部43は、大規模メモリ42に記憶された測定用画素の理論値算出用パラメータを用いて、第一劣化状態にある測定用画素について、理論的な輝度信号の第一補正量を算出する(S11)。
【0093】
より詳細には、ずれ量算出部43は、第一劣化状態における測定用トランジスタについて、所望の電流量を得るために必要なゲート電圧であって、理論的に求められる第一ゲート電圧を算出する(第一ずれ量算出処理の一部)。大規模メモリ42には、測定用画素の理論値算出用パラメータと第一ゲート電圧との関係を示す関係式またはテーブルが記憶されている。ずれ量算出部43は、当該関係式またはテーブルに、大規模メモリ42に記憶された測定用画素の理論値算出用パラメータを適用することにより、第一ゲート電圧を算出する。
【0094】
さらに、ずれ量算出部43は、所望の発光量を得るために必要な電流量であって、理論的に求められる第一電流量を算出する(第二ずれ量算出処理の一部)。大規模メモリ42には、測定用画素の理論値算出用パラメータと第一電流量との関係を示す関係式またはテーブルが記憶されている。ずれ量算出部43は、当該関係式またはテーブルに、大規模メモリ42に記憶された測定用画素の理論値算出用パラメータを適用することにより、第一電流量を算出する。
【0095】
次に、電流量測定部41は、第一劣化状態にある測定用画素に流れる電流量を測定する(S12)。なお、本実施の形態では、
図8に示すように、測定用画素の劣化を2種類に設定していることから、劣化量に応じて異なる電流量が測定されると考えられる。但し、表示画素全体で1つの補正係数を算出することから、測定結果を用いて平均的な劣化量に対応した電流量を求める。
【0096】
また、本実施の形態では、測定用トランジスタと測定用素子とでは、素子の特性が異なることから、電流量の測定方法が異なる。このため、測定用トランジスタに起因する輝度信号の補正量のずれを求めるための電流量の測定と、測定用素子に起因する輝度信号の補正量のずれを求めるための電流量の測定とは、別々に実行する必要がある。以下、具体的に説明する。
【0097】
電流量測定部41は、測定用トランジスタに起因する輝度信号の補正量のずれを求めるために、測定用トランジスタが飽和領域で動作するように測定用トランジスタのソース−ドレイン間の電圧を調整して、モニター用配線LTFT2に流れる電流量を測定する(S13)。
【0098】
なお、測定用トランジスタについては、補正量のずれ(第一ずれ量)は、第一劣化状態にある測定用トランジスタにおいて、上述した理論的な第一ゲート電圧と、電流量の実測値から求められる所望の電流量の電流を流すために必要な第二ゲート電圧との比で表される。このため、ゲート電圧の変動によらず電流量が一定になる飽和領域で測定用トランジスタを動作させる。
【0099】
さらに、電流量測定部41は、測定用素子に起因する輝度信号の補正量のずれを求めるために、測定用トランジスタが線形領域で動作するように測定用トランジスタのソース−ドレイン間の電圧を調整して、モニター用配線LTFT2に流れる電流量を測定する(S14)。上述したように、ここでは、測定用トランジスタである駆動トランジスタT5を線形領域で動作させている。この場合、駆動トランジスタT5のソースドレイン間にかかる電圧Vdsは、OEL素子OEL1の電圧によって変化する。ここで、駆動トランジスタT5を飽和領域で使用すると、駆動トランジスタT5のソースドレイン間の電圧Vdsが変化しても駆動トランジスタT5のソースドレイン間に流れる電流の電流量はほとんど変化しない。つまり、駆動トランジスタT5を飽和領域で使用すると、OEL素子OEL1の電圧差は電流量にほとんど影響を与えない。これに対し、駆動トランジスタT5を線形領域で使用すれば、OEL素子OEL1の端子間電圧の変化量ΔVが、電流量の変化量ΔIに現れるため、電流値を測定することでΔVの測定が可能となる。
【0100】
なお、測定用素子については、補正量のずれ(第二ずれ量)は、第一劣化状態にある測定用素子において、上述した理論的な第一電流量と、電流量の実測値から求められる所望の発光量を得るために必要な第二電流量との比で表される。本実施の形態では、発光量を直接測定は出来ないが、発光効率の変化量Δηと測定用素子の端子間電圧の変化量ΔVとの間には相関関係があることが知られている。
【0101】
ここで、
図10は、発光効率の変化量Δηと測定用素子の端子間電圧の変化量ΔVとの関係を示すグラフである。本実施の形態では、この相関関係を利用して、補正量のずれを求める。すなわち、補正量のずれは、測定用素子の端子間電圧ΔVと電流量の変化量ΔIとの相関関係から求められる。
【0102】
但し、測定用素子の端子間電圧を直接測定することは困難である。そこで、本実施の形態では、測定用トランジスタを線形領域で動作させたときのソースドレイン間電流Idsの変化量ΔIds(=ΔI)とソースドレイン間電圧Vdsの変化量ΔVds(VTFT−ΔV)の相関関係(IV特性)を利用する。例えば、電圧VTFTを2点以上変動させて電流量を測定することで、測定用トランジスタのIV特性から、測定用素子の電流量の変化量ΔIと端子間電圧の変動量ΔVとの関係を求めることができる。
【0103】
ずれ量算出部43は、上述したずれ量を算出する(S15)。具体的には、測定用トランジスタのゲート電圧の補正量のずれ量(第一ずれ量算出処理の一部)と、測定用素子の電流量の補正量のずれ量(第二ずれ量算出処理の一部)とを算出する。
【0104】
先ず、ずれ量算出部43は、ステップS13で求めた測定用トランジスタの電流量の実測値から、所望の電流量を得るために必要な第二ゲート電圧を算出する(ゲート電圧の実測値)。
【0105】
ずれ量算出部43は、ステップS11で求めた測定用トランジスタの理論的な第一ゲート電圧と、電流量の実測値を用いて求められる第二ゲート電圧との間の第一ずれ量を求める。より詳しくは、第一ずれ量は、測定用トランジスタの第二ゲート電圧/第一ゲート電圧で求められる。
【0106】
次に、ずれ量算出部43は、ステップS14で求めた測定用素子の電流量の測定結果を用いて、発光効率の変化量Δηを求める。発光効率の変化量Δηは、上述したように、測定用トランジスタを線形領域で動作させた場合におけるIV特性から求められる。大規模メモリ42には、ΔηとΔVの関係を示す関係式またはテーブルを記憶しておく。ずれ量算出部43は、ステップS14で求めた測定用素子の電流量の実測値からΔVを求め、大規模メモリ42に記憶されたΔηとΔVの関係から、Δηを求める。さらに、発光効率の変動量Δηを用いて、所望の発光量を得るために必要な第二電流量(実測値から求められる第二電流量)を求める。ずれ量算出部43は、ステップS11で求めた測定用画素の理論的な第一電流量と、実測値から求められる第二電流量との間の第二ずれ量を求める。より詳しくは、第二ずれ量は、第二電流量/第一電流量で求められる。
【0107】
輝度信号補正部44は、第一ずれ量および第二ずれ量を用いて、表示画素PIXの輝度信号の補正信号を補正するための補正係数を算出する(S16)。ここでの補正係数は、第一ずれ量×第二ずれ量で求められる。
【0108】
また、本実施の形態では、補正係数は色毎に求める。また、各色の測定用画素が複数ある場合は、複数の測定用画素における補正係数の平均値を、表示画素PIXの補正係数として用いても良い。
【0109】
[1−2−4.輝度信号の補正]
本実施の形態における輝度信号の補正方法について説明する。
【0110】
制御部40の輝度信号補正部44は、理論的に求められる表示画素PIXの輝度信号の第三補正量(=補正後の輝度信号、補正信号)に、補正係数を乗算して、表示画素PIXの輝度信号の第四補正量を算出する。
【0111】
輝度信号の補正は、映像信号のフレーム毎、表示画素PIX毎に行われる。ただし、補正係数は、ここでは、全フレームおよび全表示画素PIXで共通である。これは、劣化の理論値と実測値とのずれの要因、例えば、電源OFF時における劣化の回復、温度あるいは湿度等の周辺環境が、有機ELディスプレイ100全体で略同じであり、補正量のずれ量も略同じになると考えられるからである。
【0112】
制御部40は、表示画素PIXに映像を表示する際に、映像信号の輝度値を第二劣化状態に応じて理論的に補正した輝度信号(第三補正量)に上述した補正係数を乗算して、第四補正量を算出する。制御部40は、第四補正量を用いて映像の表示を行う。上述したように、補正係数は、複数の表示画素PIXで共通である。
【0113】
[1−3.効果等]
本実施の形態の有機ELディスプレイ100は、測定用画素における理論的な第一補正量と電流量の実測値から求められる第三補正量との間のずれ量を求め、表示画素PIXの理論的な第三補正量を補正するので、有機ELディスプレイ100の実際の劣化状態に応じた映像の表示が可能になる。
【0114】
なお、特許文献1に記載の表示装置では、有機EL素子OEL1の電流量と発光量とを直接測定して、表示画素に対して実際に用いる輝度信号を求めたが、本実施の形態では、補正量のずれ量を算出することにより、発光量を測定する必要がない。
【0115】
本実施の形態の測定部120は、上述したように、走査線駆動回路を備えるCOF22と、表示部110との間に配置されている。このように配置することにより、測定部120は、表示部110と走査線SCNを共用することができ、測定部120のための専用の走査線SCNを設ける必要がない。
【0116】
[1−4.変形例等]
(1)上記実施の形態では、有機ELディスプレイ100全体で共通の補正係数を算出するように構成したが、例えば、有機ELディスプレイ100の表示部110を2×2の4ブロック等、複数のブロックに分割し、ブロック単位で補正係数を算出しても良い。なお、ブロックの分割数は任意に設定して良い。また、各ブロックの補正係数は、各ブロックの近傍に配置されている測定用画素のずれ量を用いることができる。距離が近い測定用画素程、測定用画素の特性が、ブロックに含まれる表示画素と特性が近いと考えられる。このため、距離が近い測定用素子を用いる程、補正の精度は高くなると考えられる。さらに、ブロック分割して補正係数を算出する場合、1つの測定用画素の測定結果を複数のブロックで用いるように構成しても構わない。
【0117】
(2)上記実施の形態では、複数の測定用画素を、劣化量が最も大きい表示画素および劣化量が最も小さい表示画素等、複数の劣化量に対応させて劣化させたが、これに限るものではない。測定用画素がRGBの1セットの場合には、表示画素の平均的な劣化量に応じて一律に劣化させてもよい。
【0118】
なお、複数の測定用画素を複数の劣化量に対応させて劣化させる場合、劣化量の範囲に応じて複数の補正係数を算出してもよい。この場合、表示画素の補正係数は、当該表示画素の劣化量が、どの劣化量の範囲に属するかで選択することができる。
【0119】
さらに、上記実施の形態では、測定用画素を、高負荷をかける劣化量の大きい画素と、低負荷をかける劣化量の小さい画素に分けていたが、これに限るものではない。
【0120】
劣化量は、1種類または3種類以上であっても良い。劣化量が1種類の場合、測定用画素の劣化処理において、例えば、RGBの色別に、表示画素PIXの平均的な輝度値を示す輝度信号を生成し、測定用画素の輝度信号として用いる。これにより、劣化量が1種類の場合の測定用素子および測定用トランジスタの劣化の程度は、複数の表示画素PIXの有機EL素子および駆動トランジスタT5の平均的な劣化と同程度になると考えられる。
【0121】
(3)なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されても良い。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されても良い。ここで、上記各実施の形態の表示装置などを実現するソフトウェアは、次のようなプログラムである。
【0122】
すなわち、このプログラムは、コンピュータに、第一劣化状態における測定用画素に流れる電流量を測定するステップ(S13、S14)と、第一劣化状態における前記測定用画素について、電流量を測定するステップにおいて測定された電流量の実測値から求められる輝度信号の補正量と、輝度信号の補正量の理論値との間のずれ量を算出するステップ(S15、S16)と、ずれ量を算出するステップにおけるずれ量の算出結果を用いて、第二劣化状態における表示画素PIXの輝度信号の補正量を補正するステップとを実行させる。
【0123】
以上、有機ELディスプレイ(表示装置)について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれても良い。