(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持ブロックは、前記ボルトを貫通させるボルト貫通穴を有し、そのボルト貫通穴は鉛直方向に伸びた長穴形状を有し、前記ボルトを緩めることで前記保持ブロックが前記ボルトとは相対的に上下動する請求項2に記載のオートサンプラ。
前記高さ調節機構は、鉛直方法へ伸びるように配置された送りネジ、前記注入ポートを保持する保持ブロックに設けられ前記送りネジを貫通させるとともに前記送りネジと螺合するネジがその内面に設けられたネジ穴、及び前記送りネジをその軸を中心に回転させるモータを備え、前記モータの駆動により前記注入ポートを上下動させるものである請求項1に記載のオートサンプラ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のオートサンプラにおける高さ調節機構は、注入ポートを保持する保持ブロックをボルトにより任意の高さに固定するものとすることができる。そうすれば、装置構成が簡単になり、コストの増大を抑制できる。
【0013】
上記の場合、保持ブロックは、ボルトを貫通させるボルト貫通穴を有し、そのボルト貫通穴は鉛直方向に伸びた長穴形状を有し、ボルトを緩めることで保持ブロックがボルトとは相対的に上下動するものであることが好ましい。そうすれば、ユーザは注入ポートの高さ調節を容易に行なうことができる。
【0014】
また、高さ調節機構は、鉛直方法へ伸びるように配置された送りネジ、注入ポートを保持する保持ブロックに設けられ送りネジを貫通させるとともに送りネジと螺合するネジがその内面に設けられたネジ穴、及び送りネジをその軸を中心に回転させるモータを有し、モータの駆動により注入ポートを上下動させるものであってもよい。そうすれば、モータの駆動により注入ポートの高さ調節を行なうことができるため、ユーザによる高さ調節作業がさらに容易になる。
【0015】
オートサンプラにおける試料注入動作においてニードルの移動に要する時間が最も短くなるのは、注入ポートの上端の高さと試料容器の上端の高さとが一致している場合である。そのため、高さ調節機構によって注入ポートの高さを調節する際に、注入ポートの上端の高さを試料容器の上端の高さに目分量で合わせることは容易でない。
【0016】
そこで、保持ブロック又はその近傍に、注入ポートの高さの目安となる目盛りが設けられていてもよい。そうすれば、注入ポートの上端の高さを試料容器の上端の高さに合わせやすくなる。
【0017】
制御部は、ニードルを試料容器の位置及び注入ポートの位置へ移動させたときのニードルの位置に基づいて検知された、試料容器の上端の高さ又は注入ポートの上端の高さに基づき、ニードルの水平移動時高さを決定する水平移動時高さ決定部を備えていることが好ましい。そうすれば、ニードルが移動する際の基準位置を設定するティーチングの際に、ニードルの水平移動時高さが自動的に決定されるので、ユーザがニードルの水平移動時高さを設定する必要がなくなる。
【0018】
以下、オートサンプラの一実施例について図面を用いて説明する。
【0019】
まず、
図1を用いて、同実施例のオートサンプラの流路構成について説明する。
【0020】
オートサンプラ2はラック14を設置する試料設置部12を備えている。試料を収容した試料容器としての試料びん16はラック14に設置される。ラック14には、試料びん16を設置するための複数の設置穴15が設けられている(
図2参照)。なお、この実施例では、試料容器として試料びん16が試料設置部12に設置される場合について説明するが、ラック14及び試料びん16に代えて、試料を収容するための複数のリザーバを上面に備えたマイクロタイタープレートを試料設置部12に設置することもできる。
【0021】
ラック14に設置された試料びん16から試料を採取するために、ニードル8がサンプリング流路6の先端に設けられている。サンプリング流路8は、ロータリー式の高圧バルブ4の一つのポート(1)に接続されている。高圧バルブ4は(1)−(6)の6つのポートを有し、互いに隣接するポート間の接続を切り替えるものである。高圧バルブ4のポート(2)にはシリンジポンプ22、ポート(3)にはドレインへ通じるドレイン流路23、ポート(4)には注入ポート20へ通じる注入流路21、ポート(5)には分析カラム26及び検出器28へ通じる分析流路24、ポート(6)には送液装置30からの移動相を送液する送液流路32、がそれぞれ接続されている。
【0022】
高圧バルブ4は、ポート(1)−(2)間、ポート(3)−(4)間及びポート(5)−(6)間を接続した状態(
図1の状態)と、ポート(1)−(6)間、ポート(2)−(3)間及びポート(4)−(5)間を接続した状態のいずれか一方の状態となる。高圧バルブ4において、ポート(1)−(2)間、ポート(3)−(4)間及びポート(5)−(6)間を接続した状態をローディングモード、ポート(1)−(6)間、ポート(2)−(3)間及びポート(4)−(5)間を接続した状態をインジェクティングモードと称する。
【0023】
サンプリング流路6上におけるニードル8の基端側に、ニードル8の先端から吸入された試料を保持するためのサンプルループ10が設けられている。ニードル8は後述するニードルアセンブリ34(ニードル移動機構、
図2参照)により水平面内方向と鉛直方向へ移動させられる。
【0024】
注入ポート20はニードル8の先端を挿入することによってサンプリング流路6と注入流路21とを連通させるものである。注入ポート20は保持ブロック18に保持されている。保持ブロック18は後述する高さ調節機構によって鉛直方向の位置が調節可能になっている。保持ブロック18の鉛直方向の位置調節により、注入ポート20の上端の高さが試料びん16の上端の高さに合わせられている。試料設置部12にマイクロタイタープレートが設置される場合には、注入ポート20の上端の高さがマイクロタイタープレートの上端の高さに合わせられる。
【0025】
この実施例の動作について説明すると、ニードル8は先端を注入ポート20に挿入した状態で待機している。このとき、高圧バルブ4はインジェクティングモードになっており、送液装置30からの移動相がサンプリング流路6、注入流路21及び分析流路24を流れている。
【0026】
分析流路24への試料注入が実行されると、高圧バルブ4がローディングモードに切り替わり、シリンジポンプ22とサンプリング流路6とが連通する。この状態で、ニードル8が上昇し、ニードル8の先端が注入ポート8から引き抜かれる。このときのニードル8の先端の高さは、注入ポート20の上端よりも、例えば4mm程度高い高さである。ニードル8はその高さで目的の試料びん16の上方の位置まで水平面内方向へ移動する。ニードル8が水平移動する際のニードル8の高さ(以下、「水平移動時高さ」という。)は、注入ポート8の高さ等、初期設定を行なった後のティーチングの際に、注入ポート20の上端の高さ又は試料びん16の上端の高さに基づいて設定されたものである。初期設定及びティーチングについては後述する。
【0027】
ニードル8は目的の試料びん16の上方の位置に到達した後、所定の高さまで下降して先端をその試料びん16内に挿入する。そして、シリンジポンプ22を吸入駆動させることによってニードル8の先端から所定量の試料を吸入し、サンプルループ10に試料を保持する。
【0028】
所定量の試料を吸入した後、ニードル8は再び水平移動時高さまで上昇し、注入ポート20の上方の位置まで水平面内方向へ移動した後、所定の高さまで下降して先端を注入ポート20に挿入する。その後、高圧バルブ4がインジェクティングモードに切り替わり、送液流路32と分析流路24との間にサンプリング流路6が介挿されることで、送液装置30からの移動相によってサンプルループ10に保持された試料が分析流路24に導入される。分析流路24に導入された試料は分析カラム26によって成分ごとに分離され、各成分が検出器28により検出される。
【0029】
次に、オートサンプラ2について、
図2の斜視図を用いてさらに説明する。
【0030】
ニードル8を保持するニードルアセンブリ34は、ニードル8を鉛直方向へ移動させる機構を内部に搭載している。ニードルアセンブリ34はラック14が設置される試料設置部12及び注入ポート20の上方において水平面内方向の2方向に移動する。
【0031】
試料設置部12の側方に注入ポート20を保持する保持ブロック18がボルト44によって固定ブロック38に固定されている。保持ブロック18には鉛直方向に伸びた長穴形状のボルト貫通穴42が設けられており、そのボルト貫通穴42をボルト44が貫通した状態でボルト44を締め付けることにより、保持ブロック18を任意の高さで固定ブロック38に固定することができる。固定ブロック38には、保持ブロック18の側面を支持して保持ブロック18の姿勢を維持するためのガイド40が設けられている。
【0032】
保持ブロック18のボルト貫通穴42及びボルト44は、注入ポート20の高さ調節を行なうための高さ調節機構を構成する。この高さ調節機構により、ユーザはボルト44を緩めるだけで、保持ブロック18をボルト貫通穴42の範囲内で自在に上下動させることができ、それによって注入ポート20の上端の高さを試料びん16の上端の高さに合わせることができる。
【0033】
ここで、注入ポート20の上端の高さを試料びん16の上端の高さに目分量で合わせることは容易でない。そこで、
図6に示されているように、試料びん16の高さに対応した目盛りを保持ブロック18に設けておくことで、注入ポート20の高さ調節を容易かつ正確に行なうことができる。なお、目盛りは保持ブロック18以外の部分、例えば固定ブロック38に設けてもよい。
【0034】
オートサンプラ2の制御系統を
図3のブロック図を用いて説明する。
【0035】
オートサンプラ2は制御部46を備えている。制御部46は高圧バルブ4、シリンジポンプ22及びニードルアセンブリ34の動作を制御する。制御部46はこのオートサンプラ2の内部に設けられた専用のコンピュータ、種々の情報を記憶する記憶装置、及びその記憶装置に格納された種々のプログラムにより実現されるものである。制御部46は、その機能として、ティーチング部48、水平移動時高さ決定部50及び水平移動時高さ保持部52を備えている。
【0036】
ティーチング部48は、ニードル8を移動させる際の位置決めの基準位置を設定するためのティーチングを実行する機能である。水平移動時高さ決定部50は、ティーチング時に、試料びん16の上端の高さ及び注入ポート20の上端の高さを検知し、それらの情報に基づいてニードル8の水平移動時の高さを決定する機能である。水平移動時高さ保持部52は水平移動時高さ決定部50により決定された水平移動時高さを保持する機能である。
【0037】
オートサンプラ2の使用開始時には、
図4のフローチャートに示されている手順で初期設定を行なう。具体的には、まず、ラック14を試料設置部12に設置し、試料設置部12に設置されたラック14の試料びんの高さに合わせて注入ポート20の高さを調節する。注入ポート20の高さを調節した後、ティーチングを行なう。
【0038】
ティーチングの手順の一例を
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0039】
まず、ニードル8の先端が注入ポート20の開口の中心にくるように、ユーザがニードル8の位置を微調整する。ニードル8の先端が注入ポート20の中心の開口に挿入されたときのニードル8の位置及び高さを、基準となる位置からのニードル8の移動量(ニードル8を駆動するモータの回転数)などから検知し、注入ポート20の位置情報及び高さ情報として保存する。次に、ニードル8の先端が所定位置に配置された試料びん16(試料容器)の上端面中心にくるように、ユーザがニードル8の位置を微調整する。ニードル8の先端が試料びん16の上端面中心にきたときのニードル8の位置及び高さを、基準となる位置からのニードル8の移動量(ニードル8を駆動するモータの回転数)などから検知し、試料びん16の位置情報及び高さ情報として保存する。
【0040】
制御部46の水平移動時高さ決定部50(
図3参照)は、注入ポート20の高さ情報及び試料びん16の高さ情報に基づき、ニードル8の水平移動時の高さを決定する。注入ポート20の高さは試料びん16の上端の高さに合わせて調節されているが、その調節はユーザの手動によるものであるため、まったく同一であるとは限らない。そのため、ニードル8が水平面内方向へ移動する際、試料びん16や注入ポート20がニードル8の移動に干渉しないように、試料びん16の上端の高さと注入ポート20の上端の高さのうち高いほうの上端の高さを基準に、そこから一定のマージン(例えば2mm)を加味した高さをニードル8の水平移動時高さとして決定する。ここで決定された水平移動時高さは、次にティーチングが実施されるまで水平移動時高さ保持部52(
図3参照)に保持される。
【0041】
このオートサンプラ2のニードル8は、注入ポート20と試料びん16との間を上記水平移動時高さで水平面内方向へ移動する。これにより、ニードル8の移動に要する時間を最小化することができる。
【0042】
注入ポート20の高さ調節及び水平移動時高さの設定による効果について
図7を用いて説明する。
【0043】
注入ポート20の高さ調節及び水平移動時高さの設定を行なわない場合、ニードル8は最大限の高さまで上昇して水平面内方向へ移動することとなる(上側の図)。この例では、ニードル8の先端が注入ポート20に挿入される高さから24mm、ニードル8の先端が試料びん16内に挿入される高さから52mmの高さの位置で水平面内方向への移動を行なうこととなる。したがって、分析流路24への試料注入動作の際には、ニードル8が注入ポート20と試料びん16との間を1往復することとなるため、鉛直方向だけで24mm+52mm+52mm+24mm=152mmの移動が必要となる。
【0044】
これに対し、注入ポート20の高さを、注入ポート20の上端の高さが試料びん16の上端の高さと同じになるように調節し、ニードル8の水平移動時高さを試料びん16及び注入ポート20の上端から2mmの高さに設定した場合には、ニードル8の先端が注入ポート20に挿入される高さから4mm、ニードル8の先端が試料びん16内に挿入される高さから32mmの高さの位置で水平面内方向への移動を行なうこととなる。この場合、ニードル8が注入ポート20と試料びん16との間を1往復するときの鉛直方向の移動距離は、4mm+32mm+32mm+4mm=72mmとなる。
【0045】
したがって、注入ポート20の高さ調節及び水平移動時高さの設定により、ニードル8が注入ポート20と試料びん16との間を1往復するときの鉛直方向の移動距離を80mm短縮することができる。これにより、このオートサンプラ2では、ニードル8の1つの試料の前処理に要する時間が2.5秒短縮された。液体クロマトグラフでは、100以上の検体の分析を連続的に行なうことがあるが、そのような場合、1検体に要する前処理時間を2.5秒短縮することができれば、100検体では250秒もの前処理時間を短縮することができ、従来よりも短時間での液体クロマトグラフによる分析が可能になる。
【0046】
次に、オートサンプラの他の実施例について、
図8及び
図9を用いて説明する。
【0047】
この実施例のオートサンプラ2aは注入ポート20を保持する保持ブロック18aを機械的に上下動させるポート上下機構54(高さ調節機構)を備えている。ポート上下機構54は、鉛直方向に伸びるように配置された送りネジ56、送りネジ56をその軸を中心に回転させるモータ58及び鉛直方向に伸びたガイド60を備えている。モータ58は、例えばステッピングモータである。保持ブロック18aには送りネジ56を貫通させるとともに、その内面に送りネジ56と螺合するネジが切られたネジ穴が設けられている。また、保持ブロック18aをガイド60がスライド可能に貫通しており、送りネジ56とともに保持ブロック18aが回転することがガイド60によって防止される。
【0048】
これにより、モータ58を駆動して送りネジ56を回転させると、保持ブロック18aは回転することなく上下動し、注入ポート20の高さ調節がなされる。
【0049】
図10を用いて、オートサンプラ2aについてさらに説明すると、オートサンプラ2aの制御部46aは、ティーチング部48、水平移動時高さ決定部50、水平移動時高さ保持部52のほかに、ポート高さ調節部53を備えている。ティーチング部48、水平移動時高さ決定部50及び水平移動時高さ保持部52は、上述の実施例におけるオートサンプラ2の制御部46に設けられているものと同様である。
【0050】
ポート高さ調節部53は、ユーザが入力部(図示は省略)を介して入力した上昇又は下降の信号に基づいてモータ58を駆動し、注入ポート20を上下動させる機能である。
【0051】
ユーザが注入ポート20の高さ調節を行なう際に用いる入力部としては、例えばユーザに押下させる上昇、下降のボタンが挙げられる。その場合、ポート高さ調節部53は、ユーザが上昇又は下降のボタンを1回押下すると1パルス分だけモータ58を回転させるように構成されていてもよく、又はボタンを押下げている間中、連続してパルスを発生するように構成されていてもよい。
【0052】
この場合、注入ポート20の高さ調節はユーザの目分量で行なうため、その作業をより容易に行なうことができるように、
図6の例と同様に、保持ブロック18a又はその近傍に目盛りを設けてもよい。
【0053】
また、ユーザが注入ポート20の高さ調節を行なう際に用いる入力部として、ユーザに注入ポート20の高さに関する数値を入力させるものであってもよい。その場合、ポート高さ調節部53は、ユーザにより入力された数値に基づいてモータ58を駆動するように構成されていてもよい。
【0054】
このオートサンプラ2aのように、注入ポート20の高さ調節を機械的に行なうようになっている場合には、注入ポート20を試料びん16の高さに合わせる作業を自動化させることもできる。具体的には、試料設置部12に設置された試料びん16などの試料容器の高さを自動的に検知する手段をさらに設け、検知した試料容器の高さに応じてモータ58を自動的に駆動し、注入ポート20の上端の高さを試料容器の上端の高さに自動的に合わせるようにする。試料容器の高さを自動的に検知する手段としては、例えば、光学的センサを用いたもののほか、試料容器を撮像した画像の2次元処理によるものが挙げられる。