特許第6388090号(P6388090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6388090アクリル系繊維束の製造方法および炭素繊維束の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6388090
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】アクリル系繊維束の製造方法および炭素繊維束の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/18 20060101AFI20180903BHJP
   D01D 10/06 20060101ALI20180903BHJP
   D01F 9/22 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   D01F6/18 E
   D01D10/06
   D01F9/22
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-506619(P2018-506619)
(86)(22)【出願日】2018年1月30日
(86)【国際出願番号】JP2018003008
【審査請求日】2018年5月24日
(31)【優先権主張番号】特願2017-16467(P2017-16467)
(32)【優先日】2017年2月1日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中野 真輝
(72)【発明者】
【氏名】林田 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 公唯
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第2790698(US,A)
【文献】 特開2008−088616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00 − 13/02
D01F 1/00 − 6/96
D01F 9/00 − 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系重合体溶液を紡糸して凝固糸条束とした後、凝固糸条束に対して少なくとも浴中処理工程および油剤付与工程を行うアクリル系繊維束の製造方法であって、
前記浴中処理工程は、浴中洗浄工程を含み、
前記浴中洗浄工程は、前記凝固糸条束複数本が、洗浄液の流入部および流出部を備えた1つ以上の洗浄浴中において、並列に走行し、洗浄される工程であって、
少なくとも1つの洗浄浴は、洗浄液が凝固糸条束の走行方向の下流側の位置にある流入部から流入し、凝固糸条束の走行方向の上流側の位置にある流出部から流出する向流洗浄浴であって、
前記向流洗浄浴の流入部における洗浄液の線速度の変動係数CVの平均が0.30以下、前記向流洗浄浴の流出部における洗浄液の線速度の変動係数CVの平均が0.30以下である、
アクリル系繊維束の製造方法。
【請求項2】
洗浄液の流入を、下記a)〜c)の手段のうち少なくとも1つの手段によって行う請求項1記載のアクリル系繊維束の製造方法。
a)堰の中央部に対する両端部の高さの差が0.0〜±7.0mmであるオーバーフロー堰を用いたオーバーフローによる流入。
b)0.5N個以上の孔のノズルからの流入(Nは3以上の整数であって、並列に走行させる凝固糸条束の本数である。)。
c)複数の孔を有する板からの流入であって、板の面積に対する複数の孔の面積の和の比率(開孔率)が10〜60%である。
【請求項3】
洗浄液の流出を、下記d)、e)の手段のうち少なくとも1つの手段によって行う請求項1または2記載のアクリル系繊維束の製造方法。
d)堰の中央部に対する両端部の高さの差が0.0〜±7.0mmであるオーバーフロー堰を用いたオーバーフローによる流出。
e)複数の孔を有する板からの流出であって、板の面積に対する複数の孔の面積の和の比率(開孔率)が10〜60%である。
【請求項4】
向流洗浄浴が、並列に走行する複数本の凝固糸条束に沿って直列に複数配置されている請求項1〜3のいずれか記載のアクリル系繊維束の製造方法。
【請求項5】
次式により定義される糸条束密度指数Mが500〜5000dtex/mmの凝固糸条束を、3本以上並列に走行させ、次式により定義される凝固糸条束の糸条束幅密度指数Lが5〜100%で浴中処理する請求項1〜4のいずれか記載のアクリル系繊維束の製造方法。
M[dtex/mm]=(凝固糸条束1本あたりの繊度[dtex])/(凝固糸条束幅[mm])
L[%]=(凝固糸条束間距離[mm])×100/(凝固糸条束幅[mm])
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載のアクリル系繊維束の製造方法でアクリル系繊維束を製造した後、酸化性雰囲気中での耐炎化処理、次いで不活性雰囲気中で炭化処理を行う炭素繊維束の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系繊維束の製造方法および炭素繊維束の製造方法に関する。特に生産性を向上させるためアクリル系繊維束が太糸条束化、もしくは多糸条束化した場合においても、製造時の工程通過性に優れるとともに、品位も優れたアクリル系繊維束の製造方法およびそのアクリル系繊維束を用いた炭素繊維束の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリル系繊維は、炭素繊維の前駆体繊維として広く利用されている。炭素繊維は、他の繊維に比べて優れた強度および弾性率をもつため、複合材料用補強材料として、スポーツ用途・航空宇宙用途だけでなく、自動車や風車、圧力容器等の一般産業用途にも幅広く使用されている。各種用途における多種多様な要求に応えるためには、製造コストを低減して安価な炭素繊維を提供することが必要である。アクリル系繊維の製造工程においてもこれまで多くの生産効率化によるコスト低減に関する改善技術が開示されている。例えば、複数の糸条束を並列に走行させた場合、処理する糸条束を太くすること、および製造する糸条束数を増やすことによって、生産性を高めることが製造コスト低減のために有効な手段といえる。
【0003】
アクリル系繊維束を製造する工程は、一般的には、重合体溶液を紡糸して凝固糸条束とした後、浴中で、紡糸溶媒を除去するために洗浄し、さらに浴中で延伸する工程をもつ。延伸後の繊維に油剤を付与することがある。上で説明した生産性を高める方法を安易に進めると、浴中で処理する工程(以下「浴中処理工程」ということがある。)で、糸条束間の混繊や単糸同士の接着が発生し、毛羽や断糸、洗浄不足が起きる。そして装置の幅方向に並んでいる繊維束を比較した場合、洗浄むらが起きる。これらは、浴中処理工程より後行われるアクリル系繊維束の製造工程、および続く炭素繊維束の製造工程における工程通過性が阻害されるのみならず、得られる炭素繊維束の品質を大きく低下させていた。
【0004】
洗浄液で満たした洗浄浴の中を通過させることにより、得られる糸条束を洗浄する方法は既に広く利用されている。その効率化についてもいくつかの検討がなされている。
【0005】
例えば、特許文献1には、糸条密度を5000デニール/cm以下になるように広げた糸条束を複数の洗浄浴中で、糸条束の走行とは反対の方向に水を向流させ、多段水洗する方法が提案されている。
【0006】
また、特許文献2では、複数の洗浄浴を用いて、50℃以上65℃以下の洗浄水から95℃以上99℃以下の洗浄水の中に段階的に糸条束を通過させる方法が提案されている。
【0007】
さらに特許文献3には、2200〜5500dtex/mmである太い糸条束を浴中処理するに際し、糸条束を支持する部材を外周部に持つロールを使用する方法が提案されている。
【0008】
また、走行糸条束への洗浄液の随伴流から生じる洗浄液の乱流により隣接している糸条束間の混繊を発生させている問題に対しては、洗浄液の流れを制御する方法が提案されている。特許文献3には洗浄浴中に遮蔽板を設けることで、糸条束への随伴流が遮蔽板で反射して、遮蔽板の手前での領域で生じる洗浄液の流れにより、糸条束に含まれる溶媒が段階的に除去される方法が開示されている。また、特許文献4には、洗浄浴の側面の内側および底面に沿って整流板を配することで、随伴流に伴う洗浄液の流れの乱れを抑制する方法が記載されている。
【0009】
さらに、近年では、アクリル系繊維束の製造において、生産性を向上させるために糸条束を太くしたり、糸条束の数を増やしたりしている。この場合、機幅方向に並列して走行している糸条束が他の糸条束と異なる状況で発生し、結果として、得られるアクリル系繊維束の品質がばらつくという問題があった。
【0010】
この問題に対し、特許文献5では、走行する繊維束に対して均一な液体処理が行えるノズルヘッダーを備える洗浄浴を用いて、複数本の糸条束を並列して走行させながら洗浄を行う方法が開示されている。全ての糸条束毎にその全幅に亘り、繊維束の走行方向の下流側から上流側へ高速洗浄水が噴射されている。洗浄水が糸条束の走行の上流のほうへと糸条束の間を貫通して飛散するため、効率的に溶媒が除去され、洗浄の多段処理が不必要であると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭59−36716号公報
【特許文献2】特開2008−88616号公報
【特許文献3】特開2005−171447号公報
【特許文献4】特開平8−246222号公報
【特許文献5】特開2008−95256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年はますます糸条束の高密度化が要求されるようになってきており、高密度である糸条束に含まれる溶媒の効率的な洗浄方法が求められていた。つまり、特許文献1に開示されている方法では高密度化した糸条束の洗浄不足となることで、その後の乾燥処理する工程で残存した溶媒によって緻密化が阻害され、品位低下が顕在化する問題があった。
【0013】
また、特許文献2に開示されている方法では、実際には、単に温度を高めただけでは、単糸同士が接着しやすくなり、この接着は続く延伸工程で単糸もしくは糸条束が切れる原因となり、結果として工程通過性が低下することが問題となった。
【0014】
特許文献3に開示されている方法は、これにより十分な洗浄効率と、さらには単糸間接着を抑止する効果が得られる。しかしロールの外周部に部材を設けることで、糸条束を振動させて水洗効果を上げようとすると糸条束が傷つく懸念があることや、複数の洗浄浴を用いた場合に装置が複雑化し、生産性が低下する問題があった。
【0015】
また、特許文献3または特許文献4のように洗浄浴内へ部材を過剰に設置した場合、単繊維屑が部材に引っかかりこれが走行する糸に擦られることで、得られる繊維束の品質が低下するという問題があった。
【0016】
さらに、特許文献5の方法では、炭素繊維束用のアクリル系繊維束等では洗浄液が糸条束の単糸間を高速で通過する時に、洗浄液の力で糸条束が傷み、続く後工程で単繊維が切断し、毛羽が発生することで、品位が低下するという問題、また糸条束全体が切断されることで工程通過性が低下する問題があった。
【0017】
このように、品位の高いアクリル系繊維束を製造するために、アクリル系繊維束を製造する工程、特に浴中処理工程における技術課題があった。
【0018】
そこで本発明は、アクリル系繊維束を製造する工程での洗浄工程において、その洗浄が十分に行われること、隣接する糸条束の間で起きる混繊や、単繊維の毛羽の発生を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を達成するために、アクリル系繊維束の製造方法として、本発明は以下の構成を開示する。
(1)アクリル系重合体溶液を紡糸して凝固糸条束とした後、凝固糸条束に対して少なくとも浴中処理工程および油剤付与工程を行うアクリル系繊維束の製造方法であって、
前記浴中処理工程は、浴中洗浄工程を含み、
前記浴中洗浄工程は、前記凝固糸条束複数本が、洗浄液の流入部および流出部を備えた1つ以上の洗浄浴中において、並列に走行し、洗浄される工程であって、
少なくとも1つの洗浄浴は、洗浄液が凝固糸条束の走行方向の下流側の位置にある流入部から流入し、凝固糸条束の走行方向の上流側の位置にある流出部から流出する向流洗浄浴であって、
前記向流洗浄浴の流入部における洗浄液の線速度の変動係数CVの平均が0.30以下、前記向流洗浄浴の流出部における洗浄液の線速度の変動係数CVの平均が0.30以下である、
アクリル系繊維束の製造方法。
【0020】
アクリル系繊維束の好ましい製造方法として、さらに以下の好ましい態様がある。
(2)洗浄液の流入を、下記a)〜c)の手段のうち少なくとも1つの手段によって行う前記アクリル系繊維束の製造方法。
a)堰の中央部に対する両端部の高さの差が0.0〜±7.0mmであるオーバーフロー堰を用いたオーバーフローによる流入。
b)0.5N個以上の孔のノズルからの流入(Nは3以上の整数であって、並列に走行させる凝固糸条束の本数である。)。
c)複数の孔を有する板からの流入であって、板の面積に対する複数の孔の面積の和の比率(開孔率)が10〜60%である。
(3)洗浄液の流出を、下記d)、e)の手段のうち少なくとも1つの手段によって行う前記いずれかのアクリル系繊維束の製造方法。
d)堰の中央部に対する両端部の高さの差が0.0〜±7.0mmであるオーバーフロー堰を用いたオーバーフローによる流出。
e)複数の孔を有する板からの流出であって、板の面積に対する複数の孔の面積の和の比率(開孔率)が10〜60%である。
(4)向流洗浄浴が、並列に走行する複数本の凝固糸条束に沿って直列に複数配置されている前記いずれかのアクリル系繊維束の製造方法。
(5)次式により定義される糸条束密度指数Mが500〜5000dtex/mmの凝固糸条束を、3本以上並列に走行させ、次式により定義される凝固糸条束の糸条束幅密度指数Lが5〜100%で浴中処理する前記のいずれか記載のアクリル系繊維束の製造方法。
【0021】
M[dtex/mm]=(凝固糸条束1本あたりの繊度[dtex])/(凝固糸条束幅[mm])
L[%]=(凝固糸条束間距離[mm])×100/(凝固糸条束幅[mm])
また炭素繊維束の製造方法として、本発明は以下の構成を開示する。
(6)前記いずれかのアクリル系繊維束の製造方法でアクリル系繊維束を製造した後、酸化性雰囲気中での耐炎化処理、次いで不活性雰囲気中で炭化処理を行う炭素繊維束の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明のアクリル系繊維束の製造方法によれば、アクリル系重合体溶液を紡糸して凝固糸条束とした後の浴中処理工程において、隣接糸条束間で起きる混繊や、単繊維の毛羽の発生を防止し、その結果、質の高いアクリル系繊維が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】オーバーフロー堰により洗浄液流入を行う場合における、流入部での洗浄液の線速度のCVの測定方法を示す概略図である。(1−A)は平面図、(1−B)は側面図である。
図2】ノズルにより洗浄液流入を行う場合における、流入部での洗浄液の線速度のCVの測定方法を示す概略図である。(2−A)は平面図、(2−B)は側面図である。
図3】オーバーフロー堰により洗浄液流出を行う場合における、流出部での洗浄液の線速度のCVの測定方法を示す概略図である。(3−A)は平面図、(3−B)は側面図である。
図4】本発明の実施形態の一例として、オーバーフロー堰を用いて洗浄液の流入および流出を行う方法の概略図である。(4−A)は平面図、(4−B)は側面図である。
図5】本発明の実施形態の一例として、ノズルを用いて洗浄液の流入を行い、オーバーフロー堰を用いて洗浄液の流出を行う方法の概略図である。(5−A)は平面図、(5−B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
複数本のアクリル系繊維束を並列に安定して製造するには、乾燥処理工程の前に糸条束に含有する溶媒の除去が糸条束間でむらなく行われることが重要である。本発明では高い品位を維持したまま、並列に走行する糸条束に含有される溶媒を効率的に洗浄除去できることを見出したものである。
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、特に示さないかぎり、本発明で下流という用語は、繊維束の走行方向であり、上流という用語はその逆の方向である。また本発明で使用する、複数の孔を有する板のことを「開孔板」ということがある。
【0026】
まず、アクリル系繊維束の製造方法について説明する。本発明に使用するアクリル系繊維束は、主としてアクリロニトリルからなる重合体で構成され、具体的にはアクリロニトリル85質量%以上からなる重合体であり、15質量%以内で他のコモノマーが共重合されていてもよい。特に好ましいアクリロニトリルの含有量は、95質量%以上である。コモノマーとしてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等、及びそれらのメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル等のアルキルエステル、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、あるいはアリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸等及びそれらのアルカリ金属塩、等を挙げることができる。ただこれらに特に限定されるものではない。コモノマーの含有量が15質量%を超えると、最終的に得られる炭素繊維束の物性が低下するので好ましくない。アクリル系重合体は通常の乳化重合、懸濁重合、溶液重合等の重合法を用いて重合される。該アクリル系重合体と、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、硝酸、塩化亜鉛、ロダンソーダ水溶液等とからなる重合体溶液を紡糸原液として、通常の湿式紡糸法、乾湿式紡糸法によって紡糸して、浴中処理・油剤付与、その他の工程を経ることによりアクリル系繊維束とすることができる。
【0027】
本発明の製造方法では、前述したようなアクリル系重合体から紡糸された凝固糸条束であればいずれの凝固糸条束も好ましく適用できる。その構成単繊維数が3000〜70000本、好ましくは6000〜50000本、さらに好ましくは12000〜25000本のマルチフィラメント糸である場合にさらに効果が著しい。
【0028】
特に3本以上の糸条束を処理するときに洗浄の効率が大きく、5本以上であることがより効果が大きく好ましい。
【0029】
本発明では、アクリル系重合体溶液を紡糸して凝固糸条束とした後、必要に応じて複数の糸条を合糸して、凝固糸条束(以下単に「糸条束」と言うことがある)としたのち、浴中で洗浄する。そこで、洗浄液の流入部および流出部を備えた1つ以上の洗浄浴中に、複数本の糸条束を並列に走行させる。単位時間あたりに洗浄浴中を走行する糸条束中のアクリル系重合体の質量に対して、5倍以上の質量の洗浄液を、向流洗浄浴の下流側に位置する流入部から流入させ、上流側に位置する流出部から流出させることが好ましく、5〜20倍であることがより好ましく、7〜15倍以下であることがさらに好ましい。5倍以上であれば糸条束に含有される溶媒の除去が十分である。また、溶媒回収設備等にかかる費用の観点から20倍以下とすることが好ましい。
【0030】
ここでいう洗浄液の質量の倍率とは、単位時間あたりに向流洗浄浴中を走行する凝固糸条束中のアクリル系重合体の質量[g/分]に対する流入部から流入される洗浄液の単位時間あたりの質量[g/分]の比である。以下、この比率を「洗浄液質量比」と言うことがある。糸条束中のアクリル系重合体の質量とは、糸条束中に含有される溶媒等の質量は含まないアクリル系重合体の質量そのものを意味する。
【0031】
さらに、本発明の向流洗浄浴では、糸条束の走行方向の下流部から洗浄液を流入し、糸条上流部から洗浄液を流出する。複数の向流洗浄浴を用いる場合は、各向流洗浄浴から流出する洗浄液は、一つ上流の向流洗浄浴に流入することが好ましい。なお、最上流の向流洗浄浴から流出する洗浄液は、回収工程で処理したり、その一部を凝固浴に供給し、残りは回収工程で処理したりすることもできる。
【0032】
本発明では、浴中での洗浄工程において、向流洗浄浴の流入部における洗浄液の線速度の変動係数CVの平均が0.30以下、かつ向流洗浄浴の流出部における洗浄液の線速度の変動係数CVの平均が0.30以下とする必要がある。ここで変動係数CVの平均とは、向流洗浄浴が複数あった場合、各向流洗浄浴で観測される変動係数CVを算術平均したものである。
【0033】
また向流洗浄浴の流入部における洗浄液の線速度の平均が0.25未満であることが好ましく、向流洗浄浴の流出部における洗浄液の線速度の変動係数CVの全平均が0.25未満とすることがより好ましく、機幅方向に並列に走行する凝固糸条束間で比較した場合の洗浄むらを低くおさえることができる。
【0034】
ここで、洗浄液の線速度の変動係数CVは次のようにして求めることができる。
【0035】
<流入部での洗浄液の線速度の変動係数CV[−]>
図1および図2は流入部での洗浄液の線速度の測定方法を図示したものである。洗浄液に直径3mmの球体である発泡スチロールを浮かせ、流入される洗浄液の液面上を、発泡スチロールの中心部が、凝固糸条束が走行する方向と平行にかつ反対方向に30mm移動する時間を測定し流入部での線速度を算出する。ただし、ノズルから流入する場合は、図2のようにノズルから洗浄液の進行方向へ30mmの地点から、さらに30mm移動する時間を測定する。並列に走行する端の凝固糸条束から端の凝固糸条束までの範囲、すなわち図1および図2に示したA−B線分の、A点、B点を含めて等間隔で9点測定し、洗浄液の線速度を求めた。その算術平均と標準偏差の割合を流入部での洗浄液の線速度のCVとした。尚、本測定はアクリル系繊維束を製造する条件の下で行う。ここで標準偏差は、下記の数式(1)で求めた。
【0036】
【数1】
【0037】
ここで、x(iは1〜9の値をとる)は線速を表し、μはx〜xの算術平均である。
【0038】
<流出部での洗浄液の線速度の変動係数CV[−]>
図3は、流出部での洗浄液の線速度のCVの測定方法を図示したものである。洗浄液に直径3mmの球体である発泡スチロールを浮かせ、洗浄液が流出される前の液面上を、凝固糸条束が走行する方向と平行に発泡スチロールの中心部が30mm移動する時間を測定し、流出部での線速度を算出する。並列して走行する端の凝固糸条束から端の凝固糸条束までの範囲、すなわち図3中のA−B線分の、A点、B点を含めて等間隔で9点測定し、その算術平均と標準偏差の割合をCVとして算出し流出部での洗浄液の線速度のCVとする。尚、本測定はアクリル系繊維束を製造する条件の下で行う。また、ここで標準偏差は上記数式(1)のように定義する。
【0039】
本発明の浴中洗浄に使用する向流洗浄浴では、複数の凝固糸条束は、向流洗浄浴の上流側の入口から、回転する供給ローラやガイドなどによって洗浄浴の液面下に供給され、同様の手段で下流側の出口から洗浄浴の外部に搬出される。この形態はトレー型の洗浄浴と呼ばれる。搬出された凝固糸条束は、次の洗浄浴に供給される。当該洗浄浴が最下流に位置する洗浄浴から搬出された凝固糸条束は、給油装置などに供給される。洗浄では、洗浄液を加熱することが好ましく、少なくとも洗浄浴のいくつかでは、水洗と同時に凝固糸条束を延伸することが好ましい。
【0040】
本発明では、洗浄液の流入部および流出部を備えた1つ以上の向流洗浄浴を用いる必要がある。複数の向流洗浄浴を用いる場合は、並列に走行する複数本の凝固糸条束の方向に、それらが直列に配置されることが好ましい。向流洗浄浴の数は、5〜40であることが好ましく、5〜30であることがより好ましく、10〜25であることがさらに好ましい。5浴以上であれば凝固糸条束に含有されている溶媒の除去が十分であり、10浴以上であれば洗浄液に濃度勾配ができることで洗浄の効率を上げることができる。設備等にかかる費用の観点から40以下であることが好ましい。上で説明したとおり、1つの向流洗浄浴の流入部における洗浄液の線速度の変動係数CVの全ての洗浄浴での平均が0.30以下、1つの洗浄浴の流出部における洗浄液の線速度の変動係数CVの全ての洗浄浴での平均を0.30以下とする必要がある。全ての向流洗浄浴が、流入部での洗浄液の線速度のCVが0.30以下、流出部での洗浄液の線速度のCVが0.30以下を満たしていることが最も好ましい。
【0041】
1つの向流洗浄浴の流入部における洗浄液の線速度の変動係数CVの全ての洗浄浴の平均が0.30以下となるようにするためには、下記a)〜c)の手段のうち少なくとも1つの手段によって行うことが好ましい。
a)堰の中央部に対する両端部の高さの差が0.0〜±7.0mmであるオーバーフロー堰を用いたオーバーフローによる流入。さらに好ましくは、堰の中央部から両端部へ高さが平滑に変化している。ここで、平滑に変化するとは、中央部からそれぞれの端部までの間で極小点もしくは極大点がないことを示す。
b)0.5N個以上の孔を有するノズル(Nは3以上の整数であって、並列に走行させる凝固糸条束の本数である。)による流入。
c)開孔板からの流入であって、板の面積に対する複数の孔の面積の和の比率(開孔率)が10〜60%である。
【0042】
上記の組み合わせや変形もできる。例えば、以下の洗浄液の流出入である。
i)最も下流にある向流洗浄浴において、下流側からオーバーフロー堰を用いて洗浄液を流入する。
ii)続いて、その向流洗浄浴のすぐ上流にある向流洗浄浴へ、向流洗浄浴の下流側にある開孔率10〜60%の開孔板を通じて流入する。
iii)さらに、その向流洗浄浴のすぐ上流にある向流洗浄浴へ、ポンプ等を介してその向流洗浄浴の下流側にあるノズルから洗浄液を流入する。
【0043】
堰やノズル、開孔板の材質は、限定されるものではなく、例えばステンレスのように洗浄液によって腐食されず、熱によって変形しないものであるものが良い。堰については、堰の中央部に対する両端部の高さの差は、0.0〜±7.0mmであると洗浄液の流速のばらつきが抑制されるため、好ましい。その高さの差は、より好ましくは+1.0〜−5.0mm、さらに好ましくは0.0〜−3.0mmとし、さらに中央部からそれぞれの端部まで堰の上端部の線が平滑に変化していることが好ましい。上端部の線に角があると洗浄液の流れに乱流が起きやすく、洗浄液の線速度のCVが大きくなりやすいからである。堰の中央部または端部の高さとは、ある水平面を想像し、その水平面からのその部位の上端の高さである。高さの差が正の値であることは、端部の高さのほうが中央部の高さより高いことを意味する。
【0044】
ノズルを使用する場合、その孔の形状は限定されない。また0.5N個以上の孔を有するノズルを用いることがよく、より好ましくは0.7〜3.0N、さらに好ましくは0.8〜1.2Nであると洗浄液の線速度のむらが抑制される効果がある。Nとは上で説明したとおり、3以上の整数であって、並列して走行させる凝固糸条束の本数である。孔の配置については、好ましくは、中央部の孔密度より両端部の孔密度が高い場合に、洗浄液の線速度のむらが抑制される効果がある。この時の洗浄液は走行する凝固糸条束と垂直方向から直接吹き出すのではなく、走行する凝固糸条束と平行に吹き出すのが良い。0.5N個未満の孔を有するノズルでは、流入する洗浄液の線速度にむらが発生して凝固糸条束の洗浄むらが発生する場合がある。
【0045】
また、開孔板については、多孔板や網等が使用できる。板の形状および孔の形状は限定されない。多孔板の場合、液面より下部での開孔率は10〜60%とするのが良い。より好ましくは板の両端部分では30〜50%であり、中央部分が10〜40%以下である。さらに好ましくは板の両端部分が40〜50%であり、中央部分が20〜30%以下である。このようにすることで線速度の分布が小さくなる。
【0046】
開孔を有する板が網である場合は、金網が使用できる。網の大きさとしては24メッシュ以上であることが好ましく、より好ましくは60メッシュ以上、さらに好ましくは100メッシュ以上である。これにより洗浄液の線速度の分布が小さくなる。また、使用する洗浄液としては、アクリル系繊維束に含有される溶媒を洗浄除去する液体であればよく、溶媒回収や、洗浄液の費用の観点から水を用いることが好ましい。
【0047】
向流洗浄浴の流出部における洗浄液の線速度の変動係数CVの平均を0.30以下となるようにするために洗浄液を流出する手段としては、下記d)、e)のうち少なくとも一つの手段によって行うことが好ましい。
d)堰の中央部に対する両端部の高さの差が0.0〜±7.0mmであるオーバーフロー堰を用いたオーバーフローによる流出。さらに好ましくは、堰の中央部から両端部へ高さが平滑に変化している。ここでも、平滑に変化するとは、中央部からそれぞれの端部までの間で極小点もしくは極大点がないことを示す。
e)複数の孔を有する板からの流出であって、板の面積に対する複数の孔の面積の和の比率(開孔率)が10〜60%である。
【0048】
例えば、凝固糸条束の走行方向に対し下流の洗浄浴からオーバーフロー堰を用いて洗浄液を流出し、続いて、凝固糸条束の走行方向に対し一つ上流の洗浄浴へ開孔率10〜60%の板を用いて流出するというように、各流出方法を組み合わせることができる。
【0049】
オーバーフロー堰を使用する場合、本明細書の流入部のところで説明したオーバーフロー堰と同様のものを利用するのがよい。上で示した堰の高さの状態があることにより、洗浄液の線速度が均一になっていく。
【0050】
開孔板については、本明細書の流入部のところで説明した開孔板と同様のものが好ましい。このような開口率やメッシュの大きさを有する場合にも、洗浄液の線速度の分布が小さくなる。
【0051】
ここで、外観上洗浄浴がひとつのように見えても、上記オーバーフロー堰や開孔板により糸走行方向に、浴槽が2つに区切られた場合は洗浄浴の数は2と数えることとする。3つに区切られた場合には数は3と数える。区切られた区間の数が増えるごとに洗浄浴の数は同様に増えることになる。走行する凝固糸条束は洗浄液の液面より下にある必要があるが、洗浄浴間では搬送ローラやガイド等を用いて、凝固糸条束を液面より上を走行させることができる。
【0052】
凝固糸条束は、次式により定義される糸条束密度指数Mが500〜5000dtex/mmであるのが好ましく、より好ましくは1000〜3000dtex/mmとするのがよい。500dtex/mm以上とすることで、全体の設備をコンパクトにすることができ、5000dtex/mm以下とすることにより洗浄の効率を上げることができる。
【0053】
M[dtex/mm]=(凝固糸条束1本あたりの繊度[dtex])/(凝固糸条束幅[mm])。
【0054】
また、全ての凝固糸条束は、次式により定義される糸条束幅密度指数Lが5〜100%であることが好ましく、より好ましくは5〜90%、さらに好ましくは10〜80%である場合に、本発明の効果が顕著となる。5%以上であれば凝固糸条束間での混繊が抑制され、設備等にかかる費用の観点から100%以下であることが好ましい。
【0055】
L[%]=(凝固糸条束間距離[mm])×100/(凝固糸条束幅[mm])。
【0056】
本発明において、乾燥処理工程に供する際、糸条束中の紡糸由来の溶媒残存量が1000質量ppm以下となるまで、さらに400質量ppm以下となるまで洗浄することがさらに好ましい。洗浄を十分することで、その後の乾燥処理工程において、糸にボイドの発生、あるいは単繊維同士の接着を防止することができる。洗浄液質量比を上げることや、洗浄浴数を増やすことなどにより、洗浄を十分行い、糸条束中の溶媒残存量を減少することができる。
【0057】
このように、糸条糸での溶媒残存量は、乾燥処理工程におけるボイドの発生、または単繊維同士の接着に影響するため、糸条束単位の太糸条束化や高密度化、多糸条束化を進めた場合、糸条束間における洗浄むらを低減することが好ましい。糸条束間の洗浄むらを表す指標としては、溶媒残存量のばらつきである。溶媒残存量の変動係数CVは、0.25以下であることが好ましく、0.15未満であることがより好ましい。
【0058】
また、本発明のアクリル系繊維束の製造方法では、浴中処理工程の前または後に、糸条束に洗浄液をシャワーリングしてもいいし、糸条束に対し加圧気体を噴射してもいい。また糸条束やローラ、洗浄液に超音波処理を行ってもよい。
【0059】
本発明の浴中処理工程において、少なくとも洗浄浴のいくつかでは入口側のローラ回転と出口側のローラ回転とに速度差を与えることにより、洗浄と同時に延伸することが好ましい。延伸は、目的とする延伸倍率を得るために、延伸をする複数の洗浄浴の延伸倍率をそれぞれの洗浄浴ごとに設定して行うことができる。前半又は後半の一部の浴で延伸し、その他の浴では延伸せず、糸条が緊張する程度の張力を付与しながら処理することもできる。糸条束は、通常50〜98℃の液体中で約2〜6倍に延伸され、さらに油剤が付与される。その後、ホットローラ等による乾燥処理や、スチーム付与による2次延伸などを行うことができる。このようにして得られたアクリル系繊維束のアクリル系繊維は、特に炭素繊維の前駆体として用いた場合、炭素繊維束製造の工程通過性、および得られる炭素繊維束の品質が良好となる。
【0060】
次に、本発明の製造方法によって得られたアクリル系繊維束から炭素繊維束を製造する方法について説明する。
【0061】
前述の製造方法によって得られたアクリル系繊維束を、200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化処理する。処理温度は低温から高温に向けて複数段階に昇温するのが耐炎化繊維束を得る上で好ましい。さらに毛羽の発生を伴わない程度に高い延伸比で繊維束を延伸するのが、炭素繊維束の性能を十分に発現させる上で好ましい。次いで得られた耐炎化繊維束を窒素等の不活性雰囲気中で1000℃以上に加熱することにより、炭素繊維束を製造する。
【0062】
その後、電解質水溶液中で陽極酸化を行うことにより、炭素繊維表面に官能基を付与し樹脂との接着性を高めることが可能となる。また、例えば炭素繊維束にエポキシ樹脂等からなるサイジング剤を付与すれば、耐擦過性に優れたものが得られる。得られた炭素繊維束は複合材料用補強材料として、スポーツ用途・航空宇宙用途だけでなく、自動車や風車、圧力容器等の一般産業用途にも幅広く使用することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例において本発明をさらに具体的に説明する。
<洗浄液の流れ>
水を洗浄液として用いた。各実施例、比較例では、新しい洗浄液は、凝固糸条束の走行方向の最下流にある向流洗浄浴に流入させている。それぞれの向流洗浄浴においては、その下流のところから洗浄液を流入し、その上流のところから洗浄液を流出させている。向流洗浄浴から流出した洗浄液は、上流側に向流洗浄浴がある場合は、そのすぐ上流側にある向流洗浄浴に流入させている。
【0064】
<流入部での洗浄液の線速度のCV[−]>
図1および図2は向流洗浄浴の流入部での洗浄液の線速度のCVの測定方法を図示したものである。洗浄液に直径3mmの球体である発泡スチロールを浮かせ、流入される洗浄液の面上を、発泡スチロールの中心部が、凝固糸条束と平行な方向に30mm移動する時間を測定し、流入部での線速度を算出した。ただし、ノズルから流入する場合は、図2のようにノズルから洗浄液の進行方向へ、すなわち上流方向へ、30mmの地点を始点として、さらに30mm移動する時間を測定した。並列に走行する凝固糸条束の最も端から反対の最も端の凝固糸条束までの範囲、すなわち図1および図2中のA−B線分の間で、A点、B点を含んで、等間隔の9点を測定し、その算術平均と標準偏差の割合を求め、流入部での洗浄液の線速度のCVとした。尚、本測定はアクリル系繊維束を製造する条件の下で行った。また、標準偏差は、下記の数式(1)で求めた。
【0065】
【数2】
【0066】
ここで、x(iは1〜9の値をとる)は線速度を表し、μはx〜xの算術平均である。
【0067】
<流出部での洗浄液の線速度のCV[−]>
図3は流出部での洗浄液の線速度のCVの測定方法を図示したものである。洗浄液に直径3mmの球体である発泡スチロールを浮かせ、流出される洗浄液の面上を、凝固糸条束が走行する方向と逆方向に、かつ平行に発泡スチロールの中心部が30mm移動する時間を測定し流出部での線速度を算出した。並列して走行する凝固糸条束のうち、最も端から反対の最も端の凝固糸条束までの範囲、すなわち図3中のA−B線分の間で、A点、B点を含んで等間隔の9点を測定し、その算術平均と標準偏差の割合を求め、流出部での洗浄液の線速度のCVとした。尚、本測定はアクリル系繊維束を製造する条件の下で行った。また標準偏差は上記数式(1)で求めた。
【0068】
<質量の測定>
質量は、JIS L0105(2006)に基づき20±2℃、相対湿度65%±4%の条件で測定した。
【0069】
<糸条束中の溶媒>
浴中処理工程通過後の糸条束を採取した。それを100℃の蒸留水中で1.5時間煮沸した。その糸条束を遠心分離機で脱水した後、100℃の乾燥機で2.0時間乾燥し、その後質量を測り、試料乾燥質量(g)とした。また、前記煮沸した液および遠心分離機で絞った液の混合液を100℃のウォーターバスを用いて水分を蒸発し濃縮した。その濃縮液をガスクロマトグラフィーによって分析し、予め作成した検量線を用いてジメチルスルフォキサイド(以下「DMSO」と言う)の質量(g)を求め、糸条束に残存する溶媒の量とした。ここで、アセト酢酸メチルを内部標準として用いた。溶媒残存量[糸条束中のDMSO残存量]は、計算式、糸条束中のDMSO残存量(ppm)=糸条束中のDMSO質量(g)×1000000/試料乾燥質量(g)により算出した。
【0070】
<溶媒残存量のCV>
並列に走行する全ての凝固糸条束の溶媒残存量を測定し、その算術平均と標準偏差の割合を求めて、溶媒残存量のCVとした。ここで標準偏差は下記の数式(2)で求めた。
【0071】
【数3】
【0072】
ここで、y(nは1〜Nの値をとる)は溶媒残存量を表し、μはy〜yの算術平均である。Nは凝固糸条束の本数である。
【0073】
<洗浄液質量比[−]>
単位時間あたりに向流洗浄浴中を走行する凝固糸条束中のアクリル系重合体の質量[g/分]に対する流入部から流入される洗浄液の単位時間あたりの質量[g/分]の比である。ここで、凝固糸条束中のアクリル系重合体の質量は、一定時間に吐出される重合体をサンプリングし、温水により溶媒等を抽出した後、100℃の乾燥機で2.0時間乾燥して残ったものの質量とした。一方最下流に位置する洗浄浴に、同じ時間に流入される洗浄液の質量を測定し、その比によって求めた。
【0074】
<混繊発生頻度[回/糸条束間/100m]>
洗浄浴の走行糸条束に対して下流のローラ出側において、並列して走行する糸条束間で走行距離100mの間に繊維同士が交差する頻度を数えた。
【0075】
<毛羽発生量[個/糸条束/1000m]>
スチーム延伸後、走行する糸条束を目視により観察し、1つの糸条束1000mあたりの毛羽の発生個数を数えた。
【0076】
<実施例1>
アクリロニトリル99.5モル%、イタコン酸0.5モル%からなり、アクリル系共重合体を20質量%含むDMSO溶液を紡糸原液として、口金からDMSOと水からなる凝固浴中に紡出して、凝固糸条束を得た。
【0077】
図4に示すように、複数が直列に配列している向流洗浄浴の中に凝固糸条束を走行させ、浴中洗浄を行った。なお二重の波線は複数の向流洗浄浴の図示を省略していることを意味する。
【0078】
単繊維数12000本の凝固糸条束を並列に40本配置し、糸条束密度Mを2400dtex/mmとし、糸条束幅密度指数Lを15%とし、洗浄液質量比10とした。本実施例では向流洗浄浴の数は10である。
【0079】
最下流にある向流洗浄浴1dに、堰の中央部に対して両端部の高さの差が−3.0mmであって、中央部の上端部からそれぞれの端部の上端部までの高さが平滑に変化するオーバーフロー堰5dを超えて洗浄液を流入した。その向流洗浄浴から、前で説明したものと同じ形態のオーバーフロー堰を超えて洗浄液を流出した。さらに同じ形態の流入用オーバーフロー堰および流出用オーバーフロー堰を有する向流洗浄浴を用いて、洗浄液を流入、洗浄液を流出した。この流入、流出を向流洗浄浴すべてで行った。各向流洗浄浴において、洗浄液の流入部および流出部の線速度のCVを測定した。また浴中処理工程の後の糸条束の溶媒残存量を測定し溶媒残存量のCVを算出した。
【0080】
さらに、洗浄後の糸条束を浴中で延伸し、さらに浴中で油剤を付与した。尚、油剤としてはアミノ変性されたシリコーンを含有する油剤を用いた。次いで、160℃の加熱ローラを用いて、糸条束の含有水分量が1質量%以下となるまで乾燥し、次いで、加圧スチーム中で延伸することにより、フィラメント数12000本のアクリル系繊維束を得た。またスチーム延伸を行った後の糸条束毛羽発生量を測定した。結果を表1および表2に示す結果を得た。その後、得られたアクリル系繊維束を、空気中240〜280℃の耐炎化炉内を駆動ロールで搬送しながら耐炎化を行い耐炎化繊維束に転換した。さらに不活性雰囲気中300〜800℃の前炭化炉内を駆動ロールで搬送して予備炭化した後、不活性雰囲気中1500℃の炭化炉内を駆動ロールで搬送しながら炭化を行い、炭素繊維束を得た。
【0081】
【表1】
【0082】
表1中、「流入方法」および「流出方法」の列の各欄で、かっこ内の数字は下に示す値である。
オーバーフローの場合:堰の中央部に対する両端部の高さの差
ノズルの場合:孔の数
多孔板の場合:開孔率。
【0083】
【表2】
【0084】
結果に対しては、次のとおりの基準で判定し、表1および表2に示した。
【0085】
<流入部での洗浄液の線速度のCVの平均[−]>
A:0.25未満、B:0.25以上0.30以下、C:0.30より大きい
なお、表1中のCVの範囲(A、BまたはC)は、1つの向流洗浄浴の流入部における洗浄液の線速度のCVの全ての向流洗浄浴での平均が該範囲(A、BもしくはC)にあることを示す。
【0086】
<流出部での洗浄液の線速度のCVの平均[−]>
A:0.25未満、B:0.25以上0.30以下、C:0.30より大きい
なお、表1中のCVの範囲(A、BまたはC)は、1つの向流洗浄浴の流出部における洗浄液の線速度のCVの全ての向流洗浄浴での平均が該範囲(A、BもしくはC)にあることを示す。
【0087】
<溶媒残存量のCV[−]>
A:0.15未満、B:0.15以上0.25以下、C:0.25より大きい。
【0088】
<混繊発生頻度[回/糸条束間/100m]>
A:10.0未満、B:10.0以上25.0未満、C:25.0以上。
【0089】
<スチーム延伸後の糸条束毛羽発生量[個/糸条束/1000m]>
A:0.0以上8.0未満、B:8.0以上16.0未満、C:16.0以上。
【0090】
<判定>
溶媒残存量のCV、混繊発生頻度、スチーム延伸後の糸条束毛羽発生量の各結果について、1項目でもCがある場合はC、Cはないが1項目でもBがある場合はB、全てがAの場合はAとした。
【0091】
<実施例2>
洗浄液質量比を13とした以外は実施例1と同様に製造、評価を行い、アクリル系繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。その後、得られたアクリル系繊維束から実施例1と同様の方法で炭素繊維束を得た。
【0092】
<実施例3>
向流洗浄浴の数を13とした以外は実施例1と同様に製造、評価を行い、アクリル系繊維束を得た。結果を表1および表2に示す。その後、得られたアクリル系繊維束から実施例1と同様の方法で炭素繊維束を得た。
【0093】
<実施例4>
図4のように、最下流にある向流洗浄浴1dに、堰の中央部に対する両端部の高さが0.0mmであって、中央部の上端部からそれぞれの端部の上端部までが直線であるオーバーフロー堰5dを超えて洗浄液を流入した。向流洗浄浴1dから、オーバーフロー堰5dと同じ形態のオーバーフロー堰を超えて洗浄液を流出した。流出した洗浄液は、オーバーフロー堰5dと同じ形態のオーバーフロー堰を超えて流入した。このような洗浄液の流入、流出を各向流洗浄浴で行った。そして、最上流にある向流洗浄浴1tでは、最上流にあり、オーバーフロー堰5dと同じ形態のオーバーフロー堰5tにより流出した。それ以外の工程は、実施例1と同様に製造を行い、アクリル系繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。その後、得られたアクリル系繊維束から実施例1と同様の方法で炭素繊維束を得た。
【0094】
<実施例5>
洗浄液質量比7とした以外は、実施例4と同様に製造を行い、アクリル系繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。その後、得られたアクリル系繊維束から実施例1と同様の方法で炭素繊維束を得た。
【0095】
<実施例6>
洗浄液質量比4とした以外は実施例4と同様に製造を行い、アクリル系繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。その後、得られたアクリル系繊維束から実施例1と同様の方法で炭素繊維束を得た。
【0096】
<実施例7>
7つが直列で配置された向流洗浄浴で浴中処理を行った以外は、実施例4と同様に製造を行い、アクリル系繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。その後、得られたアクリル系繊維束から実施例1と同様の方法で炭素繊維束を得た。
【0097】
<実施例8>
4つが直列で配置された向流洗浄浴で浴中処理を行った以外は、実施例4と同様に製造を行い、アクリル系繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。その後、得られたアクリル系繊維束から実施例1と同様の方法で炭素繊維束を得た。
【0098】
<実施例9>
オーバーフロー堰を、堰の中央部に対する両端部の高さの差を−7.0mmにした以外は、実施例4と同様に製造を行い、アクリル系繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。その後、得られたアクリル系繊維束から実施例1と同様の方法で炭素繊維束を得た。
【0099】
<実施例10>
オーバーフロー堰を堰の中央部に対する両端部の高さを+5.0mmにした以外は、実施例4と同様に製造を行い、アクリル系繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。その後、得られたアクリル系繊維束から、実施例1と同様の方法で炭素繊維束を得た。
【0100】
<実施例11>
図5に示すように、複数が直列に配列している向流洗浄浴の中に凝固糸条束を走行させ、浴中洗浄を行った。なお二重の波線は複数の向流洗浄浴の図示を省略していることを意味する。
【0101】
最下流にある向流洗浄浴1dに、40個の孔を有する流入ノズルを用いて洗浄液を流入し、そして中央部に対する両端部の高さの差が−5.0mmであって、中央部の上端部からそれぞれの端部の上端部までの高さが平滑に変化するオーバーフロー堰を超えて洗浄液を流出した。一つ上流の向流洗浄浴へは、ポンプにより、最下流にある向流洗浄浴に用いたものと同じ形態の40個の孔を有する流入ノズルを用いて洗浄液を流入した。向流洗浄浴からは、最下流にある向流洗浄浴に用いたものと同じ形態のオーバーフロー堰を超えて洗浄液を流出した。洗浄液の、流入、流出以外の条件は実施例1と同様に製造を行い、アクリル系繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。その後、得られたアクリル系繊維束から実施例1と同様の方法で炭素繊維束を得た。
【0102】
<実施例12>
図5に示すように、最下流にある向流洗浄浴1dに、150個の孔を有する流入ノズルを用いて洗浄液を流入し、その後、中央部に対する両端部の高さの差が0.0mmであって、中央部の上端部からそれぞれの端部への堰の上端部までが直線であるオーバーフロー堰を超えて流出した。流出した洗浄液を、一つ上流の向流洗浄浴へ、ポンプにより最下流にある向流洗浄浴1dに用いたものと同様の150個の孔を有する流入ノズルを用いて流入した。各向流洗浄浴でも同様の洗浄液の流入、流出を行った。向流洗浄浴での流出、流入以外の条件は実施例1と同様に製造を行い、アクリル系繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。その後、得られたアクリル系繊維束から実施例1と同様の方法で炭素繊維束を得た。
【0103】
<実施例13>
オーバーフロー堰に代えて、流入用および流出用の開孔板を使用した。開孔板の開孔率は31%とした。向流洗浄浴での流出、流入以外の条件は実施例1と同様に製造を行い、アクリル系繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。その後、得られたアクリル系繊維束から実施例1と同様の方法で炭素繊維束を得た。
【0104】
<実施例14>
各洗浄浴において、洗浄液を堰の中央部に対して両端部の高さの差が0.0mmであって中央部の上端部から両端部の上端部までが直線であるオーバーフロー堰により、洗浄液を流入させ、そして各向流洗浄浴から開孔率31%の板により洗浄液を流出した。向流洗浄浴以外の条件は、実施例1と同様に製造を行い、アクリル系繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。その後、得られたアクリル系繊維束から実施例1と同様の方法で炭素繊維束を得た。
<実施例15>
各向流洗浄浴において、20個の孔を有する流入ノズルを用いて洗浄液を流入し、開孔率31%の板を通じて洗浄液を流出した。向流洗浄浴での流出、流入以外での条件は実施例1と同様に製造を行い、アクリル系繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。その後、得られたアクリル系繊維束から実施例1と同様の方法で炭素繊維束を得た。
<実施例16>
各向流洗浄浴において、開孔率10%の板を通じて洗浄液を流入し、堰の中央部に対する両端部の高さの差が0.0mmで、中央部の上端部からそれぞれの端部の上端部までが直線であるオーバーフロー堰を超えて洗浄液を流出した。向流洗浄浴での流入、流出以外での条件は実施例1と同様に製造を行い、アクリル系繊維束を得た。結果を表1および表2に示す。その後、得られたアクリル系繊維束から実施例1と同様に行い炭素繊維束を得た。
<実施例17>
各向流洗浄浴で、開孔率60%の板を通じて洗浄液を流入し、開孔率60%の板を通じて洗浄液を流出した。流出、流入での条件以外は実施例1と同様に製造を行い、アクリル系繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。その後、得られたアクリル系繊維束から実施例1と同様の方法で炭素繊維束を得た。
【0105】
<比較例1>
図4に示すように、それぞれの向流洗浄浴に、洗浄液を堰の中央部に対する両端部の高さの差が+8.0mmであって、中央部の上端部からそれぞれの端部の上端部への高さが平滑に変化するオーバーフロー堰を超えて洗浄液を流入した。また洗浄液を流入したオーバーフロー堰と同様の形態のオーバーフロー堰を超えて洗浄液を流出した。流出、流入での条件以外は、実施例1と同様に製造を行い、アクリル系繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。
【0106】
<比較例2>
それぞれの向流洗浄浴では、15個の孔を有する流入ノズルを用いて洗浄液を流入し、堰の中央部に対する両端部の高さが0.0mmであって、中央部の上端部からそれぞれの端部の上端部までが直線であるオーバーフロー堰を超えて洗浄液を流出した。流出、流入以外は実施例1と同様に、製造を行い、アクリル繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。
【0107】
<比較例3>
それぞれの向流洗浄浴で開孔率65%の板を通じて洗浄液を流入し、開孔率65%の板を通じて洗浄液を流出した以外は実施例1と同様に製造を行い、アクリル繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。
【0108】
<比較例4>
それぞれの向流洗浄浴で開孔率8%の板を通じて洗浄液を流入し、開孔率8%の板を通じて洗浄液を流出した。流入、流出の条件以外は実施例1と同様に製造を行い、アクリル系繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。
【0109】
<比較例5>
それぞれの向流洗浄浴の最下流部に、液面の上部から直径30mmの円筒状の給水口を用いて洗浄液を流入した。各向流洗浄浴の最上流部に、堰の中央部に対する両端部の高さの差が0.0mmであって、中央部の上端部から両端部の上端部までが直線であるオーバーフロー堰を超えて、洗浄液を流出した。流入、流出の条件以外は実施例1と同様に行い、アクリル系繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。
【0110】
<比較例6>
それぞれの向流洗浄浴で、堰の中央部に対する両端部の高さの差が0.0mmであって中央部から両端部への上端部が直線であるオーバーフロー堰を超えて洗浄液を流入した。各向流洗浄浴では浴の最上流部の底に開けた抜き出し穴により洗浄液を流出した。それ以外は、実施例1と同様に製造を行い、アクリル繊維束を得た。また測定、評価も同様に行った。結果を表1および表2に示す。
【符号の説明】
【0111】
1:向流洗浄浴
1d:最下流にある向流洗浄浴
1t:最上流にある向流洗浄浴
2:洗浄液
3:糸条束
4:ロール
5:オーバーフロー堰
5d:最下流にあるオーバーフロー堰
5t:最上流にあるオーバーフロー堰
6:ノズル
7:ポンプ
X:糸条束走行方向
Y:洗浄液の流れる方向
【要約】
本発明は、品位の高いアクリル系繊維および炭素繊維を得るために、アクリル系繊維束を製造する工程での洗浄工程において、その洗浄が十分に行われること、隣接する糸条束の間で起きる混繊や、単繊維の毛羽の発生を防止することを課題とする。そして本発明はアクリル系重合体溶液を紡糸して凝固糸条束とした後、凝固糸条束に対して少なくとも浴中処理工程および油剤付与工程を行うアクリル系繊維束の製造方法であって、前記浴中処理工程は、浴中洗浄工程を含み、前記浴中洗浄工程は、前記凝固糸条束複数本が、洗浄液の流入部および流出部を備えた1つ以上の洗浄浴中において、並列に走行し、洗浄される工程であって、少なくとも1つの洗浄浴は、洗浄液が凝固糸条束の走行方向の下流側の位置にある流入部から流入し、凝固糸条束の走行方向の上流側の位置にある流出部から流出する向流洗浄浴であって、前記向流洗浄浴の流入部における洗浄液の線速度の変動係数の平均が0.30以下、前記向流洗浄浴の流出部における洗浄液の線速度の変動係数の平均が0.30以下である。
図1
図2
図3
図4
図5