特許第6388099号(P6388099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6388099鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6388099
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20180903BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   C22C38/00 302A
   C22C38/00 302X
   C22C38/00 301T
   C22C38/58
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-520633(P2018-520633)
(86)(22)【出願日】2017年12月15日
(86)【国際出願番号】JP2017045065
【審査請求日】2018年4月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】特許業務法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】竹田 健悟
(72)【発明者】
【氏名】林 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】上西 朗弘
(72)【発明者】
【氏名】川田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】吉永 千智
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 康信
(72)【発明者】
【氏名】中村 登代充
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/057570(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/147549(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/102901(WO,A1)
【文献】 特開2016−130358(JP,A)
【文献】 特開2016−130356(JP,A)
【文献】 特表2015−510032(JP,A)
【文献】 特開2013−100590(JP,A)
【文献】 特開2008−231493(JP,A)
【文献】 特開2007−211279(JP,A)
【文献】 特開2005−154870(JP,A)
【文献】 特開2003−129175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00 − 38/60
C21D 7/00 − 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材の化学組成が、質量%で、
C:0.17〜0.40%、
Si:0.10〜2.50%、
Mn:1.00〜10.00%、
P:0.001〜0.03%、
S:0.0001〜0.02%、
Al:0.001〜2.50%、
N:0.0001〜0.010%、
O:0.0001〜0.010%、
Ti:0〜0.10%、
Nb:0〜0.10%、
V:0〜0.10%、
B:0〜0.010%、
Cr:0〜2.00%、
Ni:0〜2.00%、
Cu:0〜2.00%、
Mo:0〜2.00%、
Ca:0〜0.50%、
Mg:0〜0.50%、
REM:0〜0.50%、
残部:Feおよび不純物であり、
前記母材の表面から5.0μm以上の深さまで、結晶粒界の少なくとも一部が酸化物に被覆された内部酸化層を有し、かつ、
前記母材の表面から5.0μmの深さまでの領域において、前記酸化物の粒界被覆率が60%以上であり、
900MPa以上の引張強さを有する、
鋼板。
【請求項2】
前記母材の表面から50μm以上の深さまで、脱炭層を有する、
請求項1に記載の鋼板。
【請求項3】
前記母材の表面上にニッケル電気めっき層を有する、
請求項1または請求項2に記載の鋼板。
【請求項4】
980MPa以上の引張強さを有する、
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の鋼板。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の鋼板の表面上に溶融亜鉛めっき層を有する、
溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項6】
前記溶融亜鉛めっき層の付着量が、70g/m以下である、
請求項5に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項7】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の鋼板の表面上に合金化溶融亜鉛めっき層を有する、
合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項8】
前記合金化溶融亜鉛めっき層の付着量が、70g/m以下である、
請求項7に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項9】
前記合金化溶融亜鉛めっき層が、質量%で、Fe:7.0〜15.0%を含有する、
請求項7または請求項8に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車を軽量化して燃費を高め、炭酸ガスの排出量を低減するとともに、搭乗者の安全性を確保するため、自動車用鋼板として高強度鋼板が使用されている。近年、車体および部品の耐食性を十分に確保するため、高強度溶融亜鉛めっき鋼板に加えて、高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板も使用されている(例えば、特許文献1〜4を参照)。
【0003】
しかし、車体および/または部品の組立てのため、高強度の溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板にスポット溶接を施したり、高強度冷延鋼板と亜鉛めっき鋼板とをスポット溶接したりすると、スポット溶接部において、溶融金属脆化割れ(Liquid Metal Embrittlement:LME)と呼ばれる割れが発生することがある。LMEは、スポット溶接時に発生する熱で亜鉛めっき層の亜鉛が溶融し、溶接部の鋼板組織の結晶粒界に溶融亜鉛が侵入し、その状態に引張応力が作用することで生じる割れである。
【0004】
LMEは、高強度TRIP鋼板(変態誘起塑性鋼板)をスポット溶接した際に、顕著に発生する。高強度TRIP鋼板とは、通常の高強度鋼板よりもC、Si、Mn濃度が高く、残留オーステナイトを含むことにより、優れたエネルギー吸収能およびプレス成形性を有する鋼板のことである。
【0005】
また、LMEは、亜鉛めっきを施した高強度鋼板のスポット溶接時に発生するのが一般的である。しかし、亜鉛めっきを施していない高強度冷延鋼板であっても、亜鉛めっき鋼板とスポット溶接する際に、亜鉛めっき鋼板で溶融した亜鉛が高強度冷延鋼板に接することによりLMEが発生することがある。
【0006】
溶融金属脆化割れを抑制する技術として、特許文献5には、表面に合金化溶融亜鉛めっきが施されためっき鋼板であって、その下地鋼が、C:0.04〜0.25質量%、Si:0.01〜2.0質量%、Mn:0.5〜3.0質量%、P:0.1質量%以下、S:0.03質量%以下と、さらに、Ti:0.001〜0.1質量%、Nb:0.001〜0.1質量%、V:0.01〜0.3質量%、Mo:0.01〜0.5質量%、Zr:0.01〜0.5質量%の一種または二種以上を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有するとともに、面積率40〜95%のフェライトと、ベイナイト、パーライト、マルテンサイトの一種または二種以上および体積率1〜10%の残留オーステナイトからなる金属組織を有する、加工性および耐溶融金属脆化割れ性に優れた合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板が提案されている。
【0007】
また、特許文献6には、質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.5〜2.0%、Mn:1.0〜2.5%、残部にFeおよび不可避的不純物を含有する下地鋼を熱間圧延し、熱間圧延後に30℃/秒以上の冷却速度で冷却し、かつ、450〜580℃で巻き取ることによって、熱間圧延鋼板の粒界酸化深さを5μm以下にし、熱間圧延鋼板を冷間圧延し、冷間圧延鋼板に3g/m以上の付着量になるようにFe系電気めっき処理を行い、該冷間圧延鋼板に合金化溶融亜鉛めっき処理を行うことによって、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の粒界酸化深さを5μm以下にする、スポット溶接用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−060742号公報
【特許文献2】特開2004−323970号公報
【特許文献3】特開2006−233333号公報
【特許文献4】特開2004−315960号公報
【特許文献5】特開2006−265671号公報
【特許文献6】特開2008−231493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献5に記載される鋼板は、スポット溶接時に生成するオーステナイトを、添加元素の析出物および/または複合析出物のピニング作用で微細化し、溶融亜鉛の拡散侵入経路を複雑にして、溶融亜鉛の侵入を抑制するものである。しかしながら、溶融亜鉛の拡散侵入経路の複雑化だけでは、必ずしも、耐溶融金属脆化割れ性の向上は十分ではない。
【0010】
また、ピニングとして作用する複合析出物を形成する添加元素の量を増加すると、強度と耐溶融金属脆化割れ性とが向上する。しかし、一方で、延性および靱性が低下するため、特許文献5の鋼板は、複雑で過酷な加工が求められる自動車用鋼板としての適用は困難である。
【0011】
特許文献6に記載される方法で製造される鋼板は、粒界酸化深さを5μm以下とすることにより、散りが発生するような大電流かつ大きな入熱の条件でスポット溶接する場合でも、溶融金属脆化割れの発生を抑制し得るものである。しかしながら、加工後の残留応力が大きい部位をスポット溶接すると、溶融亜鉛が溶接部の結晶粒界に侵入して、溶融金属脆化割れが発生し易くなる。
【0012】
本発明は、耐溶融金属脆化割れ性に優れた鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、下記の鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を要旨とする。
【0014】
(1)母材の化学組成が、質量%で、
C:0.17〜0.40%、
Si:0.10〜2.50%、
Mn:1.00〜10.00%、
P:0.001〜0.03%、
S:0.0001〜0.02%、
Al:0.001〜2.50%、
N:0.0001〜0.010%、
O:0.0001〜0.010%、
Ti:0〜0.10%、
Nb:0〜0.10%、
V:0〜0.10%、
B:0〜0.010%、
Cr:0〜2.00%、
Ni:0〜2.00%、
Cu:0〜2.00%、
Mo:0〜2.00%、
Ca:0〜0.50%、
Mg:0〜0.50%、
REM:0〜0.50%、
残部:Feおよび不純物であり、
前記母材の表面から5.0μm以上の深さまで、結晶粒界の少なくとも一部が酸化物に被覆された内部酸化層を有し、かつ、
前記母材の表面から5.0μmの深さまでの領域において、前記酸化物の粒界被覆率が60%以上である、
鋼板。
【0015】
(2)前記母材の表面から50μm以上の深さまで、脱炭層を有する、
上記(1)に記載の鋼板。
【0016】
(3)前記母材の表面上にニッケル電気めっき層を有する、
上記(1)または(2)に記載の鋼板。
【0017】
(4)980MPa以上の引張強さを有する、
上記(1)から(3)までのいずれかに記載の鋼板。
【0018】
(5)上記(1)から(4)までのいずれかに記載の鋼板の表面上に溶融亜鉛めっき層を有する、
溶融亜鉛めっき鋼板。
【0019】
(6)前記溶融亜鉛めっき層の付着量が、70g/m以下である、
上記(5)に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
【0020】
(7)上記(1)から(4)までのいずれかに記載の鋼板の表面上に合金化溶融亜鉛めっき層を有する、
合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【0021】
(8)前記合金化溶融亜鉛めっき層の付着量が、70g/m以下である、
上記(7)に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【0022】
(9)前記合金化溶融亜鉛めっき層が、質量%で、Fe:7.0〜15.0%を含有する、
上記(7)または(8)に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、耐溶融金属脆化割れ性に優れた鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】溶接部に発生したLMEの態様を模式的に示す図である。
図2】熱処理時において引張応力の変化により鋼板内での酸素の固溶状態が変化することを模式的に示す図である。(a)は、強い引張応力を付与された場合の酸素の固溶状態を示し、(b)は弱い引張応力を付与された場合の酸素の固溶状態を示す。
図3図3は粒界被覆率を算出する過程を説明するための模式図である。(a)はSEM−反射電子像により撮影した鋼表層の粒界酸化物を示し、(b)は同じ位置における結晶方位差が15°以上の結晶粒界MAPを示す。また、(c)は結晶粒界において酸化物によって被覆された部分を示し、(d)は酸化物によって被覆されていない部分を示す。
図4】耐溶融金属脆化割れ性を評価する試験の態様を示す図である。(a)は、2枚の鋼板をスポット溶接する態様を示し、(b)は、2枚の鋼板をスポット溶接するときの電流制御の態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に、溶接部に発生したLMEの態様を模式的に示す。鋼板1a、鋼板1bおよび鋼板1cを重ねてスポット溶接してナゲット2を形成することにより、3枚の鋼板を接合することができる。この際、図1に示すように、鋼板間に内割れ3aが、鋼板とスポット溶接電極との接触部に外割れ3bが、そして該電極とは直接接していない鋼板部分に外割れ3cが発生することがある。
【0026】
上述のように、LMEは、溶接時の熱で溶融しためっき層の亜鉛が溶接部組織の結晶粒界に侵入して、粒界が脆化し、溶接中、溶接部周囲に生じる応力によって発生する。LMEは、図1に例示するような、3枚の鋼板を重ねて溶接した場合だけでなく、2枚または4枚での鋼板を重ねてスポット溶接した場合にも起こり得る。
【0027】
本発明者らは、鋼板表層の状態に着目し、溶融金属(特に、溶融亜鉛)によるLMEの発生を抑制する方法について鋭意研究を重ね、以下の知見を得るに至った。
【0028】
母材中にSi、Mn等の易酸化性元素が含まれている鋼板に対して、所定の条件で熱処理を施すと、鋼板の表面ではなく、鋼板内部の結晶粒界において、易酸化性元素を含む酸化物が形成することがある。
【0029】
種々の鋼板に対してスポット溶接を行ったところ、上記の内部酸化物が生じている鋼板では、LMEの発生が抑制される傾向にあることが分かった。内部酸化物によって母材表層における結晶粒界を予め覆うことにより、溶接時の溶融亜鉛の侵入が抑制されたと考えられる。
【0030】
そこで、さらなる検証を行い、LMEの発生を抑制するためには、上記の内部酸化が生じている層(以下、「内部酸化層」という。)を所定の深さまで存在させるとともに、酸化物による結晶粒界の被覆率(以下、「粒界被覆率」という。)を高めることが重要であることを見出した。
【0031】
また、本発明者らが上記の条件を満足する鋼板を製造する方法について検討を行ったところ、内部酸化層を形成する際の熱処理条件の制御が重要であることが分かった。
【0032】
焼鈍中に鋼板表層で生じる酸化物は、焼鈍雰囲気中の酸素ポテンシャルによって外部酸化と内部酸化の形態に分かれる。この形態の変化は、鋼板の板厚中心から表面への易酸化性元素の拡散による流束と、鋼板の表面から板厚中心への酸素の拡散による流束との競合により決まる。
【0033】
雰囲気中の酸素ポテンシャルが低い場合、または露点が低い場合は、酸素の鋼板内部への拡散の流速が小さく、相対的に易酸化元素の鋼板表面への拡散の流速が大きいため、外部酸化物が生成してしまう。
【0034】
したがって、結晶粒界を酸化物によって被覆するためには内部酸化物を生成させる必要があり、焼鈍中の雰囲気における酸素ポテンシャルを高める、または露点を高めることが必須となる。
【0035】
なお、熱処理時の雰囲気制御のみでは粒界を内部酸化物で十分に被覆することができないことも判明した。そこで内部酸化物により粒界を効率的に被覆させる方法について検討を行った。
【0036】
その結果、熱処理温度を高めに設定するとともに、鋼板に対して引張応力を付与し、結晶格子を拡げた状態で熱処理を行うことで、効率的に酸素を鋼板表層の結晶粒内の格子中に固溶させることが可能となり、粒界への内部酸化物の被覆率も向上することを見出した。
【0037】
加えて、粒界への内部酸化物の被覆率を高めるためには、上記の引張応力を一定にするのではなく、強い応力と弱い応力を交互に付与する必要がある。
【0038】
図2(a)に示すように、強い引張応力が付与された状態では、酸素は結晶の粒界および粒内に固溶する。その後、図2(b)に示すように、引張応力が弱くなると、結晶格子が狭まるため、結晶粒内に固溶していた酸素は粒界に移動し、そこで安定化し、析出物として存在するようになる。その後、再度強い応力が付与されると、外部から新たな酸素が結晶粒内に固溶してくる。これを繰り返すことで、結晶粒界に析出する酸化物が増加し、粒界被覆率が上昇する。
【0039】
本発明は上記の知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
【0040】
(A)母材の化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
【0041】
C:0.17〜0.40%
炭素(C)は、鋼板強度の向上に必要な元素である。C含有量が0.17%未満では、残留オーステナイトを十分に得ることができず、高強度と高延性との両立が困難になる。一方、C含有量が0.40%を超えると、溶接性が著しく低下する。したがって、C含有量は0.17〜0.40%とする。C含有量は0.20%以上であるのが好ましく、0.35%以下であるのが好ましい。
【0042】
Si:0.10〜2.50%
ケイ素(Si)は、固溶強化に加えて、マルテンサイトの焼戻し軟化を抑制することで、鋼板強度の向上に寄与する元素である。また、Siは、残留オーステナイトの変態誘起塑性(TRIP効果)により加工性を改善した鋼板において、オーステナイト中の鉄系炭化物の析出を抑制し、鋼板組織の残留オーステナイト体積率を確保するのに重要な元素である。
【0043】
Si含有量が0.10%未満では、焼戻しマルテンサイトの硬さが大幅に低下するとともに、残留オーステナイトを十分に得ることができず、加工性が不足する。一方、Si含有量が2.50%を超えると、鋼板が脆化し、延性が低下するとともに、めっき性が低下し、不めっきが発生し易くなる。したがって、Si含有量は0.10〜2.50%とする。Si含有量は0.50%以上であるのが好ましく、2.00%以下であるのが好ましい。
【0044】
Mn:1.00〜10.00%
マンガン(Mn)は、焼入れ性を高め、鋼板強度の向上に寄与する元素である。Mn含有量が1.00%未満では、焼鈍後の冷却中に軟質な組織が生成し、強度の確保が困難になる。一方、Mn含有量が10.00%を超えると、還元・焼鈍時の選択酸化により、めっき性が低下するとともに、加工性および溶接性が低下する。したがって、Mn含有量は1.00〜10.00%とする。Mn含有量は1.30%以上であるのが好ましく、溶接性の観点から、5.00%以下であるのが好ましい。
【0045】
P:0.001〜0.03%
リン(P)は、鋼板強度を高め、溶融亜鉛の鋼板組織への侵入を抑制する作用を有する元素である。P含有量が0.001%未満では、上記の効果が十分に得られない。一方、P含有量が0.03%を超えると、結晶粒界へのPの偏析により鋼板が脆化する。したがって、P含有量は0.001〜0.03%とする。P含有量は0.005%以上であるのが好ましく、0.02%以下であるのが好ましい。
【0046】
S:0.0001〜0.02%
硫黄(S)は、熱間脆性の原因をなし、また、溶接性および耐食性を阻害する元素である。S含有量を0.0001%未満にするためには、製造コストが大幅に上昇するため、S含有量は、実質的には0.0001%以上となる。一方、S含有量が0.02%を超えると、熱間加工性、溶接性および耐食性が著しく低下する。したがって、S含有量は0.0001〜0.02%とする。S含有量は0.0010%以上であるのが好ましく、0.01%以下であるのが好ましい。
【0047】
Al:0.001〜2.50%
アルミニウム(Al)は、脱酸元素であり、また、鉄系炭化物の生成を抑えて、強度の向上に寄与する元素である。Al含有量が0.001%未満では、脱酸効果が十分に得られない。一方、Al含有量が2.50%を超えると、フェライト分率が上昇して、強度が低下する。したがって、Al含有量は0.001〜2.50%とする。Al含有量は0.005%以上であるのが好ましく、2.00%以下であるのが好ましい。
【0048】
N:0.0001〜0.010%
窒素(N)は、窒化物を形成して、伸びフランジ性を阻害し、また、溶接時のブローホールの発生原因になる元素である。N含有量を0.0001%未満にするためには、製造コストが大幅に上昇するため、N含有量は、実質的には0.0001%以上となる。一方、Nが0.010%を超えると、伸びフランジ性が著しく低下し、また、溶接時、ブローホールが発生する。したがって、N含有量は0.0001〜0.010%とする。N含有量は、少ないほど好ましいが、製造コストの点から、0.0010%以上であるのが好ましい。また、N含有量は0.008%以下であるのが好ましい。
【0049】
O:0.0001〜0.010%
酸素(O)は、酸化物を形成し、伸びフランジ性を阻害する元素である。O含有量を0.0001%未満にするためには、製造コストが大幅に上昇するため、O含有量は、実質的には0.0001%以上となる。一方、O含有量が0.010%を超えると、伸びフランジ性が著しく低下する。したがって、O含有量は0.0001〜0.010%とする。O含有量は、少ないほど好ましいが、製造コストの点から、0.0010%以上であるのが好ましい。また、O含有量は0.007%以下であるのが好ましい。
【0050】
Ti:0〜0.10%
Nb:0〜0.10%
V:0〜0.10%
チタン(Ti)、ニオブ(Nb)およびバナジウム(V)は、いずれも、析出強化、結晶粒の成長抑制による細粒強化および再結晶の抑制を通じた転位強化により、鋼板強度の向上に寄与する元素である。そのため、これらの元素から選択される1種以上を必要に応じて含有させてもよい。
【0051】
しかしながら、いずれの元素の含有量も0.10%を超えると、粗大な炭窒化物が析出して成形性が低下する。したがって、Ti、NbおよびVの含有量はいずれも、0.10%以下とする。なお、上記の効果を得たい場合には、Ti、NbおよびVから選択される1種以上の含有量は0.005%以上であるのが好ましく、0.010%以上であるのがより好ましい。
【0052】
B:0〜0.010%
ホウ素(B)は、溶接時に、オーステナイト粒界に偏析して、結晶粒界を強化し、耐溶融金属脆化割れ性の向上に寄与する元素である。そのため、Bを必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、B含有量が0.010%を超えると、炭化物および窒化物が生成し、上記の効果が飽和するとともに、熱間加工性が低下する。したがって、B含有量は0.010%以下とする。B含有量は0.005%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合には、B含有量は0.0005%以上であるのが好ましく、0.0008%以上であるのがより好ましい。
【0053】
Cr:0〜2.00%
Ni:0〜2.00%
Cu:0〜2.00%
クロム(Cr)、ニッケル(Ni)および銅(Cu)は、いずれも、強度の向上に寄与する元素である。そのため、これらの元素から選択される1種以上を必要に応じて含有させてもよい。
【0054】
しかしながら、いずれの元素の含有量も2.00%を超えると、酸洗性、溶接性および熱間加工性が低下する。したがって、Cr、NiおよびCuの含有量はいずれも、2.00%以下とする。これらの元素の含有量は1.50%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合には、Cr、NiおよびCuから選択される1種以上の含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.10%以上であるのがより好ましい。
【0055】
Mo:0〜2.00%
モリブデン(Mo)は、MnおよびNiと同様に、鋼の焼入れ性を高め、強度の向上に寄与する元素である。そのため、Moを必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Mo含有量が2.00%を超えると、熱間加工性が低下し、生産性が低下する。したがって、Mo含有量は2.00%以下とする。Mo含有量は1.50%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合には、Mo含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.10%以上であるのがより好ましい。
【0056】
Ca:0〜0.50%
Mg:0〜0.50%
REM:0〜0.50%
カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)および希土類元素(REM)は、いずれも、成形性の向上に寄与する元素である。そのため、これらの元素から選択される1種以上を必要に応じて含有させてもよい。
【0057】
しかしながら、いずれの元素の含有量も0.50%を超えると、酸洗性、溶接性および熱間加工性が低下する。したがって、Ca、MgおよびREMの含有量はいずれも、0.50%以下とする。これらの元素の含有量は0.35%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合には、Ca、MgおよびREMから選択される1種以上の含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0010%以上であるのがより好ましい。
【0058】
また、Ca、MgおよびREMを複合的に含有させる場合には、それらの合計含有量は0.50%以下であるのが好ましく、0.35%以下であるのがより好ましい。
【0059】
ここで、本発明において、REMはSc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、前記REMの含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。なお、ランタノイドは、工業的には、ミッシュメタルの形で添加される。
【0060】
本発明の鋼板の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。
【0061】
ここで「不純物」とは、鋼板を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
【0062】
(B)内部酸化層
本発明に係る鋼板は、母材の表面から5.0μm以上の深さまで、内部酸化層を有する。内部酸化層とは、母材の結晶粒界の少なくとも一部がSi、Mn等の易酸化性元素の酸化物によって被覆された層のことである。結晶粒界が酸化物によって被覆されることで、溶接時に溶融金属の結晶粒界への侵入を抑制するとともに、溶接中のLME割れを抑制することが可能になる。
【0063】
また、Si、Mn等の易酸化性元素が酸化物として結晶粒界に存在すると、母材の表面への酸化物の濃化が抑制される。母材表面に形成された酸化物は、溶融めっき金属の濡れ性を低下させ、不めっきの原因ともなる。そのため、内部酸化層を形成することにより、不めっきの発生を防止し、めっき性を向上させることができる。
【0064】
また、母材の表面から5.0μmの深さまでの領域において、酸化物の粒界被覆率は60%以上である必要がある。粒界被覆率は、上記の領域における結晶粒界の全長に対する、酸化物によって被覆された結晶粒界の長さの割合(%)である。内部酸化層の存在する深さが5.0μm未満であるか、または粒界被覆率が60%未満であると、鋼板の耐溶融金属脆化割れ性を向上させる効果が得られない。
【0065】
内部酸化層の存在する深さは、5.5μm以上であるのが好ましく、6.0μm以上であるのがより好ましい。また、粒界被覆率は70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。なお、粒界被覆率は100%が最も好ましいものの、実現のためには多大な製造条件の制約が必要となり、大幅な製造コストの増加を招く。このため、上限を100%未満とする。
【0066】
本発明において、図3に示すように内部酸化層の存在する深さおよび粒界被覆率は以下の方法により求めるものとする。組織の観察には走査型電子顕微鏡(SEM)および後方散乱電子による結晶方位解析(SEM−EBSD)を用いる。初めに、板厚断面の組織を観察できるように、鋼板からミクロ組織観察用のサンプルを採取する。
【0067】
採取後のサンプルにおいて、圧延方向に対して平行かつ、板厚に対して垂直な面に、エメリー紙による湿式研磨を施し、さらに、平均径が1μmのダイヤモンド砥粒を用いたバフ研磨を実施して、観察面を鏡面に仕上げる。続いて、前述の機械研磨によって研磨面に導入された歪を除去するために、アルコールを溶剤とする懸濁液を用いてコロイダルシリカ研磨を施す。
【0068】
なお、コロイダルシリカ研磨では、研磨時に荷重の負荷が高まると、歪がさらに導入されることもあるため、研磨時には荷重を抑えることが重要である。このため、コロイダルシリカによる研磨では、BUEHLER社製のバイブロメット2を用いて、出力40%の設定にて1時間の自動研磨を施してもよい。
【0069】
ただし、機械研磨によって導入された歪を除去する過程で、電解研磨または化学エッチング等を適用すると、酸化物が溶けるため、粒界上に存在する酸化物の実態を観察では捉えることができなくなる。また、水を溶剤とする研磨を施す場合も同様の注意が必要であり、水溶性の酸化物は水を溶剤とする研磨の途中で溶解し、粒界上の内部酸化物が観察できなくなる。このため、研磨の仕上げ工程では、上記の手順を含まない工程を採用する必要がある。
【0070】
上記の手順で調整したサンプルの表層をSEMおよびSEM−EBSDにより観察する。観察の倍率は1000〜9000倍のうち、ミクロ組織中のフェライトの結晶粒数が10個以上含まれる倍率を選択し、例えば3000倍とする。
【0071】
まず、図3(a)に示すように、SEMにおける反射電子像で粒界に存在する酸化物を確認する。反射電子像では、原子番号(または質量)によって色調が変化するため、酸化物と鉄鋼組織とを容易に区別することができる。
【0072】
そして、反射電子像の組織観察において、例えば、原子番号(または質量)が小さい状態を“黒い色調”で表示するように設定した場合、鉄に対して質量が小さい酸化物は黒い色調で観察画像中に表示されるようになる(図3(a)参照)。この観察条件で、5視野の鋼板表層の組織を撮影し、内部酸化物の存在状態を確認しておく。
【0073】
続いて、上記のSEM−反射電子像によって観察した視野と同じ位置において、SEM−EBSDによりB.C.C.−鉄の結晶方位データを取得する。測定の倍率は1000〜9000倍のうち任意の倍率を選択し、例えば前述のSEM−反射電子像の観察と同じ倍率としてもよい。また、測定の間隔(STEP)は0.01〜0.1μmの倍率とし、0.05μmを選択してもよい。
【0074】
この測定条件で得られたB.C.C.−鉄の結晶方位MAPデータにおいて、信頼値(CI値)が0.1未満の領域を除き、結晶方位差が15°以上である境界を結晶粒界とする。なお、CI値とは、解析ソフトにおいて示される結晶方位決定の信頼性の指標となる数値であり、一般的にその値が0.1未満であると信頼性が低いとされる。
【0075】
フェライトの結晶粒界に酸化物が存在する場合はB.C.C.−鉄の結晶方位データが得られないため、隣接する結晶粒との間にCI値が0.1未満の領域が多く存在するようになる。この場合、結晶粒界を明瞭には確認できないものの、隣接するフェライトの結晶粒の方位差が15°以上である境界では、CI値が0.1未満の領域の中心を通るように結晶粒界をMAP上に描く。
【0076】
以上の手順で得られたフェライトの結晶粒界MAP(図3(b)参照)において、図3(c)に示めすように、酸化物によって被覆された結晶粒界の長さ(以下、「酸化物被覆長さ」と記載する。)を測定する。続いて、図3(d)に示すように、酸化物で被覆されていない結晶粒界の長さ(以下、「酸化物非被覆長さ」と記載する。)を測定する。そして、得られた酸化物被覆長さを全ての結晶粒界の長さで除することによって、粒界被覆率(%)を算出する。
【0077】
(C)脱炭層
本発明に係る鋼板は、母材の表面から50μm以上の深さまで、脱炭層を有することが好ましい。脱炭層とは、母材の表面付近に存在する炭素欠乏層のことである。脱炭層では、炭素含有量の低下に伴い、硬さが低下する。本発明では、母材表層において、板厚が2/5〜3/5の領域の平均硬さに対して硬さが80%以下の表層の領域を脱炭層とする。
【0078】
上述のように、溶接部の結晶粒界に溶融金属が侵入した状態で、引張応力が作用することで、LMEが発生しやすくなる。母材表層に軟質な脱炭層が存在すると、応力が低減し、割れが生じにくくなる。そのため、母材の表面から50μm以上の深さまで、脱炭層が存在することが好ましい。
【0079】
脱炭層が存在する深さは、80μm超であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。上限は特に定めないが、150μmを超えても、LMEの発生を抑制する効果は飽和し、かえって引張強度の低下とともに、曲げ変形時の耐荷重の低下を招く。そのため、脱炭層が存在する深さは、150μm以下であることが好ましい。
【0080】
(D)引張強さ
上述のように、本発明に係る鋼板を自動車用鋼板として使用する場合には、高い強度を有することが望まれる。機械特性について特に制限は設けないが、引張強さは980MPa以上であるのが好ましく、1050MPa以上であるのがより好ましく、1100MPa以上であるのがさらに好ましい。なお、引張強度が2000MPaを超えると、溶接時の残留応力が高まるため、粒界上の内部酸化層が割れるようになり、LME割れの抑制の効果は顕著に低下する。このため、引張強度の上限は2000MPaとするのが好ましい。
【0081】
(E)めっき層
本発明に係る鋼板は、表面に溶融亜鉛めっき層を有していてもよい。鋼板表面に溶融亜鉛めっき層を付与することで、耐食性が向上する。
【0082】
また、溶融亜鉛めっき層は、合金化されていてもよい。合金化溶融亜鉛めっき層では、合金化処理によって溶融亜鉛めっき層中にFeが取り込まれているため、優れた溶接性および塗装性が得られる。
【0083】
溶融亜鉛めっき層または合金化溶融亜鉛めっき層の付着量について、特に制限は設けない。しかし、付着量が多すぎると溶接時の溶融亜鉛量が増加する。そのため、LMEの発生をより効果的に抑制する点から、いずれの付着量も70g/m以下とするのが好ましく、60g/m以下とするのがより好ましい。
【0084】
さらに、表面に合金化溶融亜鉛めっき層を有する場合、めっき層中のFe濃度が高いほど、スポット溶接中の合金化反応が進み易くなり、溶接中に存在する溶融亜鉛量を低減できる。そのため、合金化溶融亜鉛めっき層のFe濃度は、7.0質量%以上であるのが好ましく、9.0質量%以上であるのがより好ましい。
【0085】
一方、合金化溶融亜鉛めっき層のFe濃度が15.0質量%を超えると、溶融亜鉛めっき層の合金化層において、加工性に乏しい金属間化合物であるΓ相の割合が高くなり、プレス成形中、めっき層の割れが発生し、いわゆる、パウダリング現象により、プレス成形時の塑性変形によるめっきの剥離現象が発生するおそれがある。そのため、合金化溶融亜鉛めっき層のFe濃度は、15.0質量%以下であるのが好ましく、13.0質量%以下であるのがより好ましい。
【0086】
(F)ニッケル電気めっき層
本発明に係る鋼板は、母材の表面上にニッケル電気めっき層を有していてもよい。ニッケル電気めっき層が存在すると、スポット溶接中、亜鉛とニッケルとが融合し、溶融亜鉛の凝固温度が上昇する。その結果、溶融亜鉛が、結晶粒界に侵入する前に凝固するため、LMEの発生が効果的に抑制される。
【0087】
(G)製造方法
本発明に係る鋼板は、例えば、熱延鋼板または冷延鋼板に対して、所定の条件で焼鈍を施すことにより製造することができる。
【0088】
熱延鋼板または冷延鋼板の製造条件について特に制限はない。例えば、上述した化学組成を有する溶鋼を、通常の条件で鋳造して鋼片とした後、通常の条件で熱間圧延を施すことにより、熱延鋼板を製造することができる。
【0089】
なお、鋳造後の鋼片は、500℃以下の温度まで一度冷却した後、再加熱してから熱間圧延を施してもよい。しかし、500〜800℃の温度域で長時間滞留すると、鋼片の表面において、易酸化性元素の酸化物皮膜が成長するようになる。その結果、母材表層において、易酸化性元素の含有量が低下し、その後、内部酸化層が形成されにくくなる。そのため、鋳造後は、鋼片の表面温度が800℃以下まで低下する前に所定の温度まで再加熱し、熱間圧延を施すことが好ましい。
【0090】
また、上記の熱延鋼板に、通常の条件で冷間圧延を施すことにより、冷延鋼板を製造することができる。
【0091】
次に、内部酸化層を形成するための焼鈍条件について、以下に詳しく説明する。なお、焼鈍は、例えば、連続焼鈍ラインによって行うことができる。
【0092】
<焼鈍雰囲気>
易酸化性元素の鋼板表面への拡散を防止し、内部酸化を促進するためには、焼鈍時の加熱帯での酸素ポテンシャルの制御が重要である。具体的には、焼鈍は、0.1〜30体積%の水素および露点−40〜20℃のHOを含み、残部が窒素および不純物である雰囲気で行うことが好ましい。より好ましくは、0.5〜20体積%の水素および露点−30〜15℃のHOを含む雰囲気、さらに好ましくは、1〜10体積%の水素および露点−20〜10℃のHOを含む雰囲気である。
【0093】
なお、焼鈍炉は、予熱帯、加熱帯および均熱帯の3つの領域に大別される。そして、本発明に係わる鋼板では、加熱帯における雰囲気を上記の条件とする。予熱帯および均熱帯においても雰囲気制御は可能である。しかし、予熱帯では雰囲気温度が低く、酸素および易酸化性元素の拡散の流束が顕著に低下する。また、均熱帯では保持温度が高く、組織中にオーステナイトが生成することにより、酸素および易酸化性元素の拡散の流束が顕著に低下する。すなわち、予熱帯および均熱帯における雰囲気制御が、内部酸化層の粒界被覆率に及ぼす影響は小さい。
【0094】
<焼鈍温度>
焼鈍時に酸素を効率的に鋼板内部に固溶させるためには、焼鈍温度は750℃を超えて900℃以下とする必要がある。焼鈍温度が750℃以下では、内部酸化層が十分に形成されないおそれがあるためである。一方、焼鈍温度が900℃を超えると、通板工程での板破断、過度な脱炭および表面疵の生成を招く。焼鈍温度は780℃以上であるのが好ましく、840℃以下であるのが好ましい。
【0095】
<引張応力>
酸素を効率的に鋼板内部に固溶させるため、焼鈍時の加熱帯の300℃以上の領域において、鋼板に3〜150MPaの引張応力を付与する。付与する最小引張応力が3MPa未満では、鋼板のタクレが発生し、製造性が低下する。また、付与する最大引張応力が3MPa未満では、結晶格子を拡げ酸素を固溶しやすくする効果が十分には得られない。なお、内部酸化層の粒界被覆率を高める観点から、最大引張応力は15MPa以上であるのが好ましい。一方、最大引張応力が150MPaを超えると、通板工程での板の絞りおよび破断を招く。
【0096】
また、上述のように、粒界への酸化物の被覆率を高めるためには、引張応力を一定にするのではなく、強い応力と弱い応力とを交互に付与する。これは強い応力を付与した際に粒内の格子中に酸素が固溶し、続いて付与する応力を弱めた際に格子内に固溶していた酸素が粒界に向かって拡散し(図2参照)、粒界上で析出物(酸化物)を生じるためである。
【0097】
本発明における鋼板で規定する粒界被覆率60%以上を満足するためには、最大引張応力と最小引張応力との差(以下、「最大−最小応力差」と記載する。)が2MPa以上であるのが好ましく、4MPa以上であるのがより好ましい。さらに、粒界被覆率80%以上を満足するためには、最大−最小応力差が20MPa以上であるのが好ましい。
【0098】
したがって、繰返し応力を付与する場合は、強弱の差を高めることが好ましい。なお、鋼板に付与する引張応力は、例えば、連続焼鈍ライン通板時における各ローラーの送り速度および摩擦力を適宜調整することによって変化させることが可能であり、ピンチローラーで測定する張力から引張応力を求めることができる。
【0099】
鋼板表面に溶融亜鉛めっきを施す場合は、例えば、上記連続焼鈍ライン通板後に連続溶融亜鉛めっきラインを通してもよい。
【0100】
溶融亜鉛めっきを施す際の、鋼板を浸漬するめっき浴の組成および温度については特に制限は設けない。例えば、めっき浴の組成は、Znを主体とし、有効Al量(めっき浴中の全Al量から全Fe量を引いた値)が0.050〜0.250質量%であることが好ましい。
【0101】
めっき浴中の有効Al量が0.050質量%未満であると、めっき層中へのFeの侵入が過度に進み、めっき密着性が低下するおそれがある。一方、めっき浴中の有効Al量が0.250質量%を超えると、鋼板とめっき層との境界に、Fe原子およびZn原子の移動を阻害するAl系酸化物が生成し、めっき密着性が低下するおそれがある。めっき浴中の有効Al量は0.065質量%以上であるのがより好ましく、0.180質量%以下であるのがより好ましい。
【0102】
なお、めっき浴は、Ag、B、Be、Bi、Ca、Cd、Co、Cr、Cs、Cu、Ge、Hf、I、K、La、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Ni、Pb、Rb、S、Si、Sn、Sr、Ta、Ti、V、W、ZrおよびREMから選択される1種以上を含んでいてもよい。
【0103】
また、めっき浴温度は450〜490℃であることが好ましい。めっき浴温度が450℃未満であると、めっき浴の粘度が過大に上昇し、めっき層の厚さの制御が困難となり、溶融亜鉛めっき鋼板の外観が損なわれるおそれがある。一方、めっき浴温度が490℃を超えると、多量のヒュームが発生し、安全なめっき操業が困難となるおそれがある。めっき浴温度は455℃以上であるのがより好ましく、480℃以下であるのがより好ましい。
【0104】
鋼板をめっき浴に浸漬する際の鋼板温度は440〜500℃が好ましい。鋼板温度が440℃未満であると、めっき温度を450〜490℃に維持するため、めっき浴に多量の熱量を与える必要が生じ、製造コストが上昇する。一方、鋼板がめっき浴に浸漬する際の鋼板温度が500℃を超えると、めっき浴温度を490℃以下に維持するために、めっき浴から多量の熱量を抜熱する設備が必要となり、製造コストが上昇する。鋼板温度は450℃以上であるのがより好ましく、490℃以下であるのがより好ましい。
【0105】
鋼板をめっき浴から引き上げた後、鋼板表面に窒素を主体とする高圧ガスを吹き付けて、過剰な亜鉛を除去して、めっき付着量を適正な量とすることが好ましい。
【0106】
溶融亜鉛めっき層に合金化処理を施す場合は、溶融亜鉛めっき層を形成した鋼板を450〜600℃の温度範囲で加熱する。合金化温度が450℃未満であると、合金化が十分に進行しないおそれある。一方、合金化温度が600℃を超えると、合金化が進行しすぎて、Γ相の生成により、めっき層中のFe濃度が15%を超えるおそれがある。合金化温度は470℃以上であるのがより好ましく、580℃以下であるのがより好ましい。
【0107】
合金化温度は、鋼板の成分組成および内部酸化層の形成度合いにより変える必要があるので、めっき層中のFe濃度を確認しながら設定すればよい。
【0108】
本発明に係る鋼板は、スポット、MIG、TIG、レーザー等、溶接時に、LMEが発生し得るすべての溶接に適用することが可能な鋼板である。特に、スポット溶接を適用した場合、スポット溶接部における耐溶融金属脆化割れ性が顕著に優れているものである。
【0109】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0110】
表1に示す化学組成を有する鋼を溶製して鋼片を鋳造した。その後、表2に示す温度まで冷却した各鋼片を1220℃まで再加熱してから熱間圧延を施し板厚が2.8mmの熱延鋼板を製造した。続いて、酸洗を施した後、表2に示す圧下率の冷間圧延を行い、冷延鋼板を得た。得られた冷延鋼板に対して、表2に示す条件にて焼鈍を施した。焼鈍に際して、最大引張応力および最小引張応力は、ロールの回転の摩擦係数と鋼板に与える引張応力の平均値の値を調整することで制御した。なお、最大−最小応力差は30秒毎の値の変動値を用いて測定した。
【0111】
次に、一部の鋼板に対しては、表2に示す条件においてめっき処理を施し、溶融亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)または合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)とした。めっき浴中の有効Al量は0.1質量%とした。
【0112】
さらに、鋼板、GI鋼板およびGA鋼板の一部には、母材の表面上にニッケル電気めっき層を設けた。以上により、各試験材を得た。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
その後、各試験材から、板厚断面の組織を観察できるように、ミクロ組織観察用の試験片を採取した。続いて、採取後の試験片において、圧延方向に対して平行かつ、板厚に対して垂直な面に、エメリー紙による湿式研磨を施し、さらに、平均径が1μmのダイヤモンド砥粒を用いたバフ研磨を実施して、観察面を鏡面に仕上げた。
【0116】
さらに、前述の機械研磨によって研磨面に導入された歪を除去するために、アルコールを溶剤とする懸濁液を用いてコロイダルシリカ研磨を施した。コロイダルシリカによる研磨では、BUEHLER社製のバイブロメット2を用いて、出力40%の設定にて1時間の自動研磨とした。
【0117】
上記の手順で調整した試験片の表層をSEMおよびSEM−EBSDにより観察した。測定に用いたSEMは、日本電子社(JEOL)製のJSM−7001Fである。観察の倍率は1000〜9000倍のうち、ミクロ組織中のフェライトの結晶粒数が10個以上含まれる倍率を選択した。その後、SEMにおける反射電子像で粒界に存在する酸化物を確認した。そして、5視野の鋼板表層の組織を撮影し、内部酸化物の存在状態を確認した。
【0118】
続いて、上記のSEM−反射電子像によって観察した視野と同じ位置において、SEM−EBSDによりB.C.C.−鉄の結晶方位データを取得した。EBSDによる測定はSEMに付属しているEBSD検出器を用いて行ない、測定の倍率はSEM−反射電子像の観察と同じ倍率とした。また、試験片の測定の間隔(STEP)は0.05μmとした。この際に、本発明では結晶方位のデータ取得ソフトとして、株式会社TSLソリューションズ製のソフトウェア「OIM Data Collection TM (ver.7)」等を用いた。
【0119】
この測定条件で得られたB.C.C.−鉄の結晶方位MAPデータにおいて、信頼値(CI値)が0.1未満の領域を除き、結晶方位差が15°以上である境界を結晶粒界とした。この際に、本発明では結晶方位のデータ解析ソフトとして、株式会社TSLソリューションズ製のソフトウェア「OIM Analysis TM (ver.7)」等を用いた。
【0120】
なお、フェライトの結晶粒界に酸化物が存在する場合はB.C.C.−鉄の結晶方位データが得られないため、隣接する結晶粒との間にCI値が0.1未満の領域が多く存在するようになる。この場合、結晶粒界を明瞭には確認できないものの、隣接するフェライトの結晶粒の方位差が15°以上である境界では、CI値が0.1未満の領域の中心を通るように結晶粒界をMAP上に描いた。
【0121】
以上の手順で得られたフェライトの結晶粒界MAPにおいて、酸化物被覆長さを全ての結晶粒界の長さで除することによって、粒界被覆率(%)を算出した。
【0122】
続いて、上記の試験片を用いて、脱炭層の存在する深さの測定を行った。具体的には、各試験片の母材表面から深さ方向に20μmステップで深さ300μmの位置までと、試験材の板厚2/5から3/5の領域におけるビッカース硬さの測定を行った。この際、試験力は10gfとした。そして、板厚2/5から3/5の領域における平均硬さに対して硬さが80%以下まで低下している表層の領域を脱炭層とした。
【0123】
次に、母材表面にめっき層を有する試験材については、めっき層の付着量(g/m)およびFe濃度(質量%)の測定を行った。また、母材の表面上にニッケル電気めっき層を有する試験材については、ニッケル電気めっき層の付着量(g/m)の測定を行った。なお、めっき層のFe濃度(質量%)の測定は、電子線マイクロアナライザ分析装置(EPMA)を用いて行った。測定に用いた機器は、日本電子社(JEOL)製のJXA−8500Fであった。
【0124】
さらに、各試験材の圧延方向および厚さ方向に直角な方向(幅方向)からJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行い、引張強度(TS)を測定した。
【0125】
そして、各試験材を用いて、耐溶融金属脆化割れ性についての評価を以下の手順により行った。
【0126】
図4に、耐溶融金属脆化割れ性を評価する試験の様子を示す。図4(a)に、2枚の鋼板をスポット溶接する態様を示し、図4(b)に、2枚の鋼板をスポット溶接するときの電流制御の態様を示す。鋼板1dと鋼板1eを重ねて、一対の電極4a、4bでスポット溶接した。溶接条件は、次のとおりである。
【0127】
電極4a、4b:Cr−Cu製のDR型電極、先端外径:8mm、R:40mm
加圧力P:450kg
電極の傾斜角(電極中心線5と垂直線6のなす角)θ:3°
アップスロープ:なし
第1通電時間t1:0.2秒
無通電間tc :0.04秒
第2通電時間t2:0.4秒
電流比I1/I2 :0.7
通電終了後の保持時間:0.1秒
【0128】
なお、表2の試験No.24に示す合金化溶融亜鉛めっき鋼板を、常に、図4の鋼板1dに用い、評価対象の鋼板を1eとして2枚を重ねてスポット溶接し、1e側の鋼板のLMEの発生状況を断面観察により評価した。
【0129】
ここで、表2および表3に示すように、試験No.1〜3、6、7、10〜22、25、28、31、34、37〜46の試料では、1e側の鋼板の一部はめっきを施していない冷延鋼板を用いて試験を行なった。この場合でも、1e側の鋼板の表面は鋼板1dの亜鉛めっきを施した表面と接するので、1e側の鋼板の表面が亜鉛めっきを施していない冷延鋼板の場合でも、耐溶融金属脆化割れ性を評価することができる。
【0130】
LMEの態様は、ナゲットの中心を含む鋼板断面を研磨し、上述と同様の手法でSEM観察し、鋼板間の内割れ3a、鋼板とスポット溶接電極との接触部の外割れ3b、そして該電極とは直接接していない鋼板部分の外割れ3cの3箇所における割れを、以下の割れ評点で評価した。
【0131】
1:いずれの場所においても割れが無い。
2:いずれか1箇所で割れが存在し、その長さが60μm以下である。
3:割れが2箇所以上かつ3箇所以下に認められ、かつ、それぞれの割れの長さは60μm以下である。
4:いずれか1箇所以上で割れの長さが60μmを超える。
【0132】
これらの結果を表3に示す。
【0133】
【表3】
【0134】
表3の結果から分かるように、試験No.1〜5および11〜24は、本発明の規定を全て満足するため、割れ評点が1〜3であり、良好な耐溶融金属脆化割れ性を示した。なお、試験No.1、14および17は、鋳造後、鋳片を500℃以下の温度まで一度冷却し、再加熱を行なったため、割れ評点が3となり、他の本発明例と比較し、耐溶融金属脆化割れ性が劣る結果となった。
【0135】
一方、試験No.6〜10および25〜30は、焼鈍条件が不適切であることに起因して、内部酸化層の存在深さおよび粒界被覆率の少なくともいずれかが規定から外れ、割れ評点が4となり、耐溶融金属脆化割れ性が悪化した。なお、試験No.9は、付与した最大−最小応力差が2MPa以上であるが、焼鈍時の露点が著しく低く、粒界被覆率が低下した。このように、組成、焼鈍条件等が本発明の規定の範囲外である場合、最大−最小応力差が大きい場合であっても、粒界被覆率が低下するケースがあった。また、試験No.10は、焼鈍時に引張応力を付与しなかったため、粒界被覆率が低下した。
【0136】
試験No.31〜36および38〜46は、化学組成が規定から外れるため、製造条件にかかわらず、割れ割れ評点が4となり、耐溶融金属脆化割れ性が悪化した。また、試験No.37は、C含有量が下限値未満であるため、耐溶融金属脆化割れ性は良好であるものの、強度が低下する結果となった。
【0137】
なお、試験No.33およびNo.44では、最大−最小応力差は小さいが、粒界被覆率は高くなっている。これは、試験No.33およびNo.44では、SiまたはAl含有量が本発明の規定する範囲より高いため、酸化物が多量に形成したためであると考えられる。しかしながら、上記組成が本発明の規定範囲外であるため、耐溶融金属脆化割れ性は悪化した。
【実施例2】
【0138】
続いて、特性に及ぼす評点の影響を調査するため、試験No.2、4および24の3つの試験材を用いて、実施例1と同様に溶接を行った。溶接条件は、次のとおりである。
【0139】
電極4a、4b:Cr−Cu製のDR型電極、先端外径:8mm、R:40mm
加圧力P:450kg
電極の傾斜角(電極中心線5と垂直線6のなす角)θ:1〜10°
アップスロープ:なし
第1通電時間t1:0.2秒
無通電間tc :0.04秒
第2通電時間t2:0.4秒
電流比I1/I2 :0.7
通電終了後の保持時間:0.1秒
【0140】
なお、実施例1と同様に、試験No.24に示す合金化溶融亜鉛めっき鋼板を、常に、図4の鋼板1dに用い、評価対象の鋼板を1eとして2枚を重ねてスポット溶接し、1e側の鋼板のLMEの発生状況を断面観察により評価した。また、溶接後の割れの長さは、電極の傾斜角を3〜10°に変化させることで調整した。傾斜角が大きいほど、溶接時に鋼板表層に生じる残留応力が増加するため、LME割れは発生しやすくなる。
【0141】
そして、溶接後の鋼板を用いて、十字引張強さ(Cross tension strength:CTS)を評価した。その結果を表4に示す。
【0142】
【表4】
【0143】
表4の結果から分かるように、評点が1〜3の範囲では、電極の傾斜角θを1°で行った場合のCTS値に対する相対CTS値が0.9以上となる。それに対して、評点が4の場合には、相対CTS値が0.6未満となり、特性が著しく悪化することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明によれば、耐溶融金属脆化割れ性に優れた鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
【要約】
母材の化学組成が、質量%で、C:0.17〜0.40%、Si:0.10〜2.50%、Mn:1.00〜10.00%、P:0.001〜0.03%、S:0.0001〜0.02%、Al:0.001〜2.50%、N:0.0001〜0.010%、O:0.0001〜0.010%、Ti:0〜0.10%、Nb:0〜0.10%、V:0〜0.10%、B:0〜0.010%、Cr:0〜2.00%、Ni:0〜2.00%、Cu:0〜2.00%、Mo:0〜2.00%、Ca:0〜0.50%、Mg:0〜0.50%、REM:0〜0.50%、残部:Feおよび不純物であり、母材の表面から5.0μm以上の深さまで、結晶粒界の少なくとも一部が酸化物に被覆された内部酸化層を有し、かつ、母材の表面から5.0μmの深さまでの領域において、酸化物の粒界被覆率が60%以上である、鋼板。
図1
図2
図3
図4