特許第6388124号(P6388124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6388124-電解システム 図000002
  • 特許6388124-電解システム 図000003
  • 特許6388124-電解システム 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388124
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】電解システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20060101AFI20180903BHJP
   C25B 1/26 20060101ALI20180903BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20180903BHJP
   C02F 1/70 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   C02F1/461 Z
   C25B1/26 C
   C02F1/50 510D
   C02F1/50 510E
   C02F1/50 520F
   C02F1/50 531P
   C02F1/50 540B
   C02F1/50 550B
   C02F1/50 550H
   C02F1/50 550L
   C02F1/70 Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-228012(P2014-228012)
(22)【出願日】2014年11月10日
(65)【公開番号】特開2016-87582(P2016-87582A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年11月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】高波 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】三田村 章弘
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−085750(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/176032(WO,A1)
【文献】 特開2001−225085(JP,A)
【文献】 特開2013−52354(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/112521(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0299552(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46 − 1/48、
1/50、
1/58 − 1/64、
1/70 − 1/78
C25B 1/00 − 9/20、
13/00 − 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋から取水された海水をプラントに導入する海水ラインと、
前記プラントから排出される窒素含有排水が導入される窒素処理槽と、
前記海水ラインから汲み上げられた海水、又は海洋から汲み上げられた海水を電気分解して次亜塩素酸を有する電解処理水を生成する電解装置と、
前記電解処理水を前記海水ラインに注入する注入ラインと、
前記注入ラインから分岐して前記電解処理水を前記窒素処理槽に注入する分岐ラインと、
前記電解装置にて生成される前記電解処理水の次亜塩素酸量に基づいて前記分岐ラインより前記窒素処理槽へ導入される前記電解処理水の流量を調整する制御装置と、
前記注入ライン上の前記分岐ラインの分岐点よりも上流側から分岐して、前記電解装置から前記電解装置の下流側に排出される前記電解処理水を前記電解装置の上流側に導入して循環させる循環流路と、
前記窒素処理槽内の廃水を放流する廃水ラインと、
前記廃水ラインを流れる前記廃水を前記プラントと前記窒素処理槽との間のラインに返送する返送ラインと、を備え
記制御装置は、前記注入ラインの前記電解処理水の次亜塩素酸量が所定量に達するまでの間、前記返送ラインを介して前記廃水を返送して前記窒素含有排水を滞留させる電解システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水又は塩水を電気分解して次亜塩素酸を含む電解処理水を生成する電解装置を有する電解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海水を多量に使用する火力発電プラント、原子力発電プラント等においては、その取水口や配管、復水器、各種冷却器などの海水と接する部分の藻類や貝類の付着繁殖が課題となっている。
この課題を解決するために、天然の海水に電気分解を施すことで次亜塩素酸ナトリウム(塩素、次亜塩素酸ソーダ)を生成し、次亜塩素酸ナトリウムを含む電解処理水を取水口中に注入することにより海洋生物の付着を抑制する海洋生物付着防止装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、上記プラントにおける給水系統の腐食の要因となる酸素を除去するために、pH(水素イオン指数)の値を大きくした(例えばpH7〜pH10.5)アンモニアを注入する脱酸素方法が知られている。しかしながら、脱酸素剤としてアンモニアを用いることにより今後プラントからの排水のアンモニア濃度が高くなることが想定されている。一方、排水規制により窒素の低減も求められており、早急な対応が望まれている。
特許文献2には、海水を電気分解することによって得られる次亜塩素酸ソーダを用い、塩素処理によってアンモニアを分解するアンモニア性窒素除去装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−85750号公報
【特許文献2】特開2014−563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、火力発電プラントのような海水を大量に取水し、かつボイラ排水等のアンモニア性窒素含有排水を排出するプラントでは、海洋生物付着防止装置とアンモニア性窒素除去装置とをそれぞれ設置する必要があった。
【0006】
即ち、海洋生物付着防止装置では、電解処理水の注入流量を一定にして電解処理水に含まれる次亜塩素酸の濃度を変化させる制御の他、電解処理水の注入流量・次亜塩素酸の濃度を制御する方法がある。一方、アンモニア性窒素除去装置では、次亜塩素酸の濃度を一定とし、電解処理水の注入量を変化させることで運転制御をしている。
よって、単純に一つの海水電解装置を用いて海洋生物付着防止とアンモニア性窒素除去の両方の処理を行うことは困難であった。
【0007】
この発明は、一つの電解装置を用いて、取水口における海洋生物の付着を抑制するとともに、プラントから排出される窒素含有排水に含まれる窒素成分を除去することができる電解システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様によれば、電解システムは、海洋から取水された海水をプラントに導入する海水が流れる海水ラインと、前記プラントから排出される窒素含有排水が導入される窒素処理槽と、前記海水ラインから汲み上げられた海水、又は海洋から汲み上げられた海水を電気分解して次亜塩素酸を有する電解処理水を生成する電解装置と、前記電解処理水を前記海水ラインに注入する注入ラインと、前記注入ラインから分岐して前記電解処理水を前記窒素処理槽に注入する分岐ラインと、前記電解装置にて生成される前記電解処理水の次亜塩素酸量に基づいて前記分岐ラインより前記窒素処理槽へ導入される前記電解処理水の流量を調整する制御装置と、前記注入ライン上の前記分岐ラインの分岐点よりも上流側から分岐して、前記電解装置から前記電解装置の下流側に排出される前記電解処理水を前記電解装置の上流側に導入して循環させる循環流路と、前記窒素処理槽内の廃水を放流する廃水ラインと、前記廃水ラインを流れる前記廃水を前記プラントと前記窒素処理槽との間のラインに返送する返送ラインと、を備え、前記制御装置は、前記注入ラインの前記電解処理水の次亜塩素酸量が所定量に達するまでの間、前記返送ラインを介して前記廃水を返送して前記窒素含有排水を滞留させることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、一つの電解装置を用いて、海水ラインにおける海洋生物の付着を抑制するとともに、プラントから排出される窒素含有排水に含まれる窒素成分を除去することができる。
【0011】
このような構成によれば、窒素処理槽に供給される次亜塩素酸量、及び海水ラインに注入される次亜塩素酸量を一定に保つことができる。
【0013】
このような構成によれば、窒素処理が不十分である窒素含有排水が系外に排出されることを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一つの電解装置を用いて、取水口における海洋生物の付着を抑制するとともに、プラントから排出される窒素含有排水に含まれる窒素成分を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施形態の電解システムの概略構成図である。
図2】本発明の第二実施形態の電解システムの概略構成図である。
図3】本発明の第二実施形態の変形例の電解システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態の電解システム1について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第一実施形態の電解システム1の概略構成図である。図1に示すように、電解システム1は、排熱回収ボイラBを備えたコンバインドサイクル発電プラントPと、海水電解装置2と、制御装置(図示せず)と、を主な構成要素として備えるシステムである。
コンバインドサイクル発電プラントP(以下、プラントPと呼ぶ)は、ガスタービン(図示せず)と、ガスタービンからの排気ガスが送られる排熱回収ボイラB(以下、ボイラBと呼ぶ)と、蒸気タービン(図示せず)と、ガスタービンと蒸気タービンの回転駆動力により駆動されて発電する発電機(図示せず)と、を有する構成とすることができる。
【0017】
プラントPには海水ライン3の取水口4から取水された海水Mが導入されて、例えば冷却などの用途に使用された後放流される。例えばボイラBのボイラ水には、腐食の要因となる酸素を除去するための脱酸素剤としてアンモニアが使用されている。よって、ボイラBから排出されるボイラ排水Wは、アンモニア(NH)、アンモニウムイオン(NH)等のアンモニア性窒素を含むアンモニア性窒素含有排水である。ボイラ排水Wは、排水タンク6に貯留された後、窒素処理槽7に導入される。ボイラ排水Wは、窒素処理槽7にて窒素が除去されたのち、廃水ライン22を介して放流される。
【0018】
電解システム1は、海水供給ポンプ8と、海水供給ポンプ8によって導入された海水Mの電気分解を行う海水電解装置2を有している。海水供給ポンプ8は、海洋から直接海水Mを汲み上げる構成としてもよいし、海水ライン3から海水Mを汲み上げる構成としてもよい。
海水供給ポンプ8と海水電解装置2とは、海水供給ライン12によって接続されている。海水供給ライン12には、海水Mの流量を計測する第一流量センサ13と、海水Mの流量を調整する第一流量調整バルブ14が設けられている。海水供給ライン12には、電気分解の妨げとなる異物の混入を防ぐためのストレーナーを設けてもよい。
【0019】
海水電解装置2は、電解槽9と、直流電源装置10と、を有している。海水電解装置2は、海水Mを電気分解することによって、次亜塩素酸ナトリウム(塩素、次亜塩素酸ソーダ)を含む電解処理水Eを生成する装置である。電解槽9は、複数の電極(図示せず)を有している。
直流電源装置10は、海水Mの電気分解に供される電流を供給する装置であって、例えば、直流電源と定電流制御回路とを備える構成を採用することができる。直流電源は、直流電力を出力する電源であって、例えば交流電源から出力される交流電力を直流に整流して出力する構成であってもよい。
本実施形態の海水電解装置2は、海水Mを電解槽9に一回のみ通すワンスルー方式である。
【0020】
海水電解装置2にて生成された電解処理水Eは、注入ライン15を介して海水ライン3の取水口4に注入される。電解処理水E(次亜塩素酸ナトリウム)が取水口4に注入されることによって、取水口4に対する海洋生物の付着を抑制することができる。即ち、本実施形態の海水電解装置2は、海洋生物付着防止装置としての機能を有する。
注入ライン15には、注入ライン15を流れる電解処理水Eの次亜塩素酸濃度を測定する次亜塩素酸濃度センサ19が設けられている。
【0021】
海水電解装置2と取水口4とを接続する注入ライン15からは、電解処理水Eを窒素処理槽7に導入する分岐ライン16が分岐している。即ち、海水電解装置2にて生成された電解処理水Eは、注入ライン15から分岐する分岐ライン16を介して窒素処理槽7に導入されて、ボイラ排水Wと混合される。
分岐ライン16には、電解処理水Eの流量を計測する第二流量センサ17と、電解処理水Eの流量を調整する第二流量調整バルブ18が設けられている。
【0022】
窒素処理槽7には、窒素処理槽7内のボイラ排水Wと電解処理水Eとからなる処理水のpH(水素イオン指数)を測定するpH測定装置20と、窒素処理槽7内の処理水のpHを調整するpH調整装置21が設けられている。
窒素処理槽7には、ボイラ排水Wと電解処理水Eが導入されて、ボイラ排水W中に存在するアンモニアと次亜塩素酸とが溶液反応して窒素ガス(N)まで分解される。即ち、本実施形態の海水電解装置2は、アンモニア性窒素除去装置としての機能を有する。
【0023】
次に、本実施形態の電解システム1の制御方法について説明する。
制御装置は、取水口4にて必要な次亜塩素酸量(以下、第一次亜塩素酸量と呼ぶ)に基づいて海水電解装置2の直流電源装置10の制御を行う。制御装置は、第一流量センサ13にて計測された海水Mの流量、及び次亜塩素酸濃度センサ19にて計測された次亜塩素酸濃度を用いて、第一次亜塩素酸量を算出する。制御装置は、算出された第一次亜塩素酸量に基づいて、直流電源装置10の制御を行うことによって、生成される電解処理水Eの次亜塩素酸濃度を調整する。
【0024】
ここで、取水口4にて必要となる次亜塩素酸量は、取水口4にて次亜塩素酸がほとんど消費されて、次亜塩素酸がほとんど放流されないような必要最小限の量である。第一次亜塩素酸量は、所定の方法で所定の時間毎に算出される。第一次亜塩素酸量は一定ではなく絶えず変化する。
制御装置は、第一次亜塩素酸量に応じて電解処理水Eの次亜塩素酸濃度を調整する。
【0025】
一方、制御装置は、窒素処理槽7にて必要とされる単位時間当たりの次亜塩素酸量(以下、第二次亜塩素酸量と呼ぶ)を算出する。第二次亜塩素酸量は、略一定である。
制御装置は、算出された第二次亜塩素酸量及び次亜塩素酸濃度センサ19にて測定された次亜塩素酸濃度に基づいて、分岐ライン16を介して窒素処理槽7に導入される電解処理水E2の流量(以下、第二流量と呼ぶ)を調整する。第二流量は、第二次亜塩素酸量及び次亜塩素酸量濃度から算出することができる。
具体的には、制御装置は、第二流量センサ17で分岐ライン16の流量を測定し、測定された流量が第二流量となるように、第二流量調整バルブ18を調整する制御を行う。
【0026】
また、制御装置は、第二流量によって減少する注入ライン15を流れる電解処理水E1の流量(以下、第一流量と呼ぶ)を補うために、海水供給ライン12を介して導入される海水Mの流量を調整する制御を行う。即ち、海水Mの流量をFM、注入ライン15を流れる電解処理水Eの流量をF1、分岐ライン16を流れる電解処理水Eの流量をF2、とすると、FM=F1+F2となるように、導入される海水Mの流量を増加させる。
具体的には、制御装置は、第一流量センサ13で海水供給ライン12の流量を測定し、測定された流量が算出された海水Mの流量となるように、第一流量調整バルブ14を調整する制御を行う。
【0027】
窒素処理槽7においては、pH測定装置20を用いて測定されたpHに基づいてpH調整装置21を用いて窒素処理槽7内の処理水のpHが所定のpHとなるようにpH調整剤を添加して調整する。
【0028】
上記実施形態によれば、一つの海水電解装置2を用いて、取水口4における海洋生物の付着を抑制するとともに、プラントPから排出される窒素含有排水に含まれる窒素成分を除去することができる。
【0029】
また、海水電解装置2にて生成される電解処理水Eの次亜塩素酸量に基づいて分岐ライン16より導入する電解処理水E2の流量を調整することによって、窒素処理槽7に供給される次亜塩素酸量、及び海水ライン3に注入される次亜塩素酸量を一定に保つことができる。
【0030】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態の電解システム1Bを図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、上述した第一実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
本実施形態の電解システム1Bの海水電解装置2は、電解処理水E(海水M)を循環させる循環流路24を備えている。海水電解装置2は、循環流路24の途中で海水Mを電気分解するように配置されている。即ち、本実施形態の海水電解装置2は、循環流路24内に海水Mを循環させることによって、徐々に電解処理水Eの次亜塩素酸濃度を上昇させるリサイクル方式を採用している。
【0031】
また、本実施形態の電解システム1Bの廃水ライン22からは、廃水ライン22を流れる廃水を排水タンク6に返送する返送ライン27が分岐している。
【0032】
次に、本実施形態の電解システム1Bの制御方法について説明する。
海水Mが循環流路24に導入されると、海水Mは循環流路24を循環しつつ所定の次亜塩素酸濃度を有する電解処理水Eとなるまで、徐々に電解処理が施される。即ち、海水電解装置2の立ち上げ時や、電解システム1Bの設定変更後においては、第一次亜塩素酸量に基づいて定められる次亜塩素酸濃度となるまでに所定の時間が必要となる。
【0033】
制御装置は、廃水ライン22及び返送ラインに設けられているバルブ28を操作することによって、循環流路24から流出する電解処理水Eの次亜塩素酸量が所定量に達するまでの間、窒素処理槽7から排出される廃水を返送ライン27を介して排水タンク6に返送する制御を行う。即ち、窒素処理が不十分である廃水を窒素処理槽7に滞留させる制御を行う。
電解処理水Eの次亜塩素酸量が所定量に達した段階で、第一実施形態の電解システム1の制御と同様の制御を行う。
【0034】
なお、窒素処理槽7に廃水を滞留させる方法はこれに限ることはない。例えば、返送ライン27を設けることなく、窒素処理槽7を十分に大きくしてもよい。この構成においては、廃水ライン22上のバルブ29を閉状態にすることによって廃水を窒素処理槽7に滞留させることができる。
【0035】
上記実施形態によれば、海水電解装置2の立ち上げ時や電解システム1Bの設定変更時に廃水を窒素処理槽7に滞留させることによって、窒素処理が不十分である窒素含有排水が系外に排出されることを防止することができる。
換言すれば、上記実施形態によれば、第一実施形態に示すような電解槽9に海水Mを一回のみ通すワンスルー方式の海水電解装置2だけではなく、電解槽9内のスケール防止効果の高いリサイクル方式においても、海洋生物付着防止とアンモニア性窒素除去の両方の処理を行うことができる。
【0036】
(第二実施形態の変形例)
次に第二実施形態の変形例の電解システム1Cについて説明する。
図3に示すように、本変形例の注入ライン15には、注入ライン15を流れる電解処理水Eの流量を計測する第三流量センサ25と、電解処理水E1の流量を調整する第三流量調整バルブ26が設けられている。即ち、本変形例の電解システム1は、注入ライン15を流れる電解処理水E1の電解処理水E1の濃度と共に、電解処理水E1の流量の調整が可能なシステムである。
【0037】
本変形例の制御装置は、第二実施形態の制御装置と同様に、廃水ライン22及び返送ライン27に設けられているバルブ28,29を操作することによって、循環流路24から流出する電解処理水Eの次亜塩素酸量が所定量に達するまでの間、窒素処理槽7から排出される廃水を返送ライン27を介して排水タンク6に返送する制御を行う。
【0038】
上記変形例によれば、注入ライン15の流量、電解処理水Eの濃度が変わる場合においても、海洋生物付着防止とアンモニア性窒素除去の両方の処理を行うことができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
例えば、上記各実施形態では、海水電解装置2には海水Mが導入される構成を示したが、海水電解装置2に塩水を導入する構成としてもよい。即ち、海水電解装置2に導入される液体は、海水Mと同様に塩素イオン(Cl)を含んでいればよい。
【符号の説明】
【0040】
1,1B,1C 電解システム
2 海水電解装置(電解装置)
3 海水ライン
4 取水口
6 排水タンク
7 窒素処理槽
8 海水供給ポンプ
9 電解槽
10 直流電源装置
12 海水供給ライン
13 第一流量センサ
14 第一流量調整バルブ
15 注入ライン
16 分岐ライン
17 第二流量センサ
18 第二流量調整バルブ
19 次亜塩素酸濃度センサ
20 pH測定装置
21 pH調整装置
22 廃水ライン
24 循環流路
25 第三流量センサ
26 第三流量調整バルブ
27 返送ライン
B ボイラ
E,E1,E2 電解処理水
M 海水
P プラント
W ボイラ排水(窒素含有排水)
図1
図2
図3