(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調節ユニット(101)は、治療中、限外濾過率及び/又は取り出されるべき限外濾過ボリュームをあらかじめ選択するようになっている、請求項1又は2記載の装置(1,2)。
前記血液の流量について所定の値を設定することができ、前記調節ユニットは、前記透析液の流量を調節するようになっている、請求項1〜4のうちいずれか一に記載の装置(1,2)。
前記透析液の流量について所定の値を設定することができ、前記調節ユニットは、前記血液の流量を調節するようになっている、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の装置(1,2)。
正の限外濾過率を有する間隔が負の限外濾過率を有する間隔と交互に位置するよう前記限外濾過率に関するプロフィールを調節ユニット(101)によってあらかじめ選択することができる、請求項1〜6のうちいずれか一に記載の装置(1,2)。
前記血液循環路、前記血液循環路の一部、前記透析液循環路又は前記透析液循環路の一部は、使い捨て物品として設計されている、請求項1〜8のうちいずれか一に記載の装置(2)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療器械を調節し、特に、透析治療の際の限外濾過を調節する方法及び装置に関する。
【0002】
透析は、急性又は慢性腎不全の患者の血液を浄化する方法である。この場合、体外血液循環を用いる方法、例えば血液透析、血液濾過又は血液透析濾過と、体外血液循環を必要としない腹膜透析とは基本的に区別される。
【0003】
血液透析では、血液は、体外血液循環路又は回路内で半透膜によって透析液チャンバから分離された透析器の血液チャンバ中に通される。或る特定の濃度の血液電解質を含む透析液は、透析液チャンバを通って流れる。透析液中の血液電解質の物質濃度は、健常被検者の血液中の濃度に一致している。治療中、患者の血液及び透析液は、通常所定の流量で向流で半透膜の両側を通る。尿中に排出された物質は、半透膜を通って血液チャンバから透析液のためのチャンバ中に拡散することになり、それと同時に、血液及び透析液中に存在する電解質は、濃度の高いチャンバから濃度の低いチャンバ中に拡散することになる。血液側から透析液側までの圧力勾配が透析膜に対して生じた場合、水は、透析膜を通って患者の血液から透析液循環路に進んでいわゆる限外濾過物が生じる。この限外濾過プロセスにより、患者の血液からの所望の水の除去(除水)が行われる。
【0004】
血液濾過では、透析液が患者の血液と反対側に位置した透析器(ダイアライザ)の半透膜を通過することがないようにした状態で膜間圧力を透析器内に加えることによって限外濾過物が患者の血液から取り出される。加うるに、滅菌且つ発熱物質なしの置換溶液を患者の血液に添加するのが良い。この置換溶液が透析器から見て上流側に添加されるか下流側に添加されるかに応じて、事前希釈又は事後希釈と呼ばれる。血液濾過の際の質量交換は、対流によって生じる。
【0005】
置換液が透析治療中に同時に患者の血液に添加される場合は、血液透析と血液濾過の組み合わせである。血液透析濾過とも呼ばれるべきこの形式の治療は、以下の説明において血液透析、透析又は透析治療によっても扱われる。
【0006】
透析治療においては、除液量を高い精度で測定して平衡化することが極めて重要である。と言うのは、除液量がほんの僅かに多すぎた場合であっても患者にとって重篤な結果が生じる場合があるからである。
【0007】
これは、透析液チャンバ内への透析物又は透析液の流入量と透析液チャンバからの透析液の流出量が互いに別々に制御されると共にモニタされるということによって保証される。透析液チャンバに供給される体液の量とそれと同時に透析液チャンバから取り出される体液の量のバランスは、患者の血液から取り出される限外濾過物の量に関する尺度を生じさせる。
【0008】
平衡化のための考えられる一手段は、透析液チャンバへの流入の状態で供給される体液の量が透析液チャンバからの流出の状態で取り出される体液の量に一致するという原理に基づく平衡化チャンバの使用である。
【0009】
患者からの体液の追加の取り出しのため、送り出し装置、いわゆる限外濾過ポンプを備えた別の流路が平衡化チャンバと並列に配置される。取り出されるべき体液の量は、平衡化チャンバを越え、そして限外濾過ポンプを通って延びる並列流路によって測定され、かくして、かかる体液の量は、体液バランスの尺度となる。
【0010】
平衡化又はバランスチャンバは、複雑な構造を有しており、製造公差について高い要求をもたらす。
【0011】
変形例として、限外濾過は、透析液チャンバへの入口ライン内の流量及び透析液チャンバからの出口ライン内の流量を入口ライン及び出口ライン内に配置された別個独立に制御可能なポンプによって制御することによって制御されると共にモニタされても良い。この場合、平衡化は、入口ライン及び出口ライン内に配置されたそれぞれの流量センサ又は計器によって実施され、このことは、これらセンサ又は計器の較正を行うための出費及び複雑さが大きいことと関連している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の教示による限外濾過を調節する装置を備えた透析器械1を概略的に示している。処置されるべき血液は、アクセス114を介して患者から取り出され(脱血され)、次に体外血液循環路又は回路112内の血液ポンプ115によって透析器113内の血液チャンバを通り、そしてアクセス114を通って患者に送り返される(返血される)。アクセス114は、血液を脱血したり返血したりするのに適した患者の血管に血液循環路112を連結している。アクセス114は、血液を脱血したり返血したりするための別々の入口及び出口を有しても良く(「複針」法)又は入口及び出口が単一要素として具体化されても良い(「単針」法)。
【0026】
透析器113内に設けられている半透膜111が透析液チャンバ108を血液チャンバ110から分離している。血液チャンバ110から透析液チャンバ108中への体液交換及び質量交換は、半透膜111を介して行われる。透析液は、透析液チャンバ108から見て上流側の入口ライン106内に設けられた透析液ポンプ107によって透析液循環路109内の濾過器113の透析液チャンバ108を通って運ばれる。変形例として、透析液ポンプは、透析液チャンバから見て下流側で出口ライン105内に配置されていても良い。透析液チャンバに供給されて透析器から流出する透析液を平衡化する(透析液のバランスを取る)ための平衡化装置104が透析液源103からの供給を受ける透析液循環回路109内に配置されている。これを行うため、透析液チャンバへの流入部内の流量及び透析液チャンバからの流出部内の流量を別々に検出することができ又は流量差を体液バランスの尺度として決定することができる。体液バランスは、透析器内の半透膜を通って取り出される限外濾過量に対応している。透析器から流出するいわゆる使用済み透析液は、通常、透析液ドレン102内で破棄される。変形例として、使用済み透析液の再生を行うことができる。
【0027】
透析器113内の半透膜111に関する圧力条件は、透析液チャンバ108と比較して過剰な圧力が血液チャンバ110内で生じるよう血液ポンプ115の制御及び透析液ポンプ107の制御によって影響を受ける。したがって、体液は、半透膜を通って血液チャンバ110から透析液チャンバ108内に運ばれる。
【0028】
血液ポンプは、例えば一実施形態では、蠕動ポンプとして、動作パラメータとして或る特定のポンプ回転速度又は或る特定の血液流量を達成するよう制御可能であるのが良い。変形例として、血液ポンプは、例えばインペラポンプとしてポンプを制御する動作パラメータとして或る特定の送り出し圧力を達成するよう制御可能であっても良い。
【0029】
同様に、或る特定の送り出し量又はポンプ回転速度を達成するため、透析液ポンプは、蠕動ポンプ、ダイヤフラムポンプ、ピストンポンプ等として設計されても良く又は或る特定の送り出し圧力を発生させるために例えばインペラポンプとして設計されても良い。
【0030】
測定ラインを経て平衡化装置104に連結された制御・調節ユニット101が制御ライン13を経て血液ポンプ115に連結されると共に制御ライン14を経て透析液ポンプ107に連結されている。血液処置中、限外濾過の現時点における測定パラメータ、例えば、限外濾過量又は限外濾過率が定期的か連続的かのいずれかで平衡化装置から制御・調節ユニット101に送られる。制御・調節ユニット101は、現時点における測定パラメータを用いて血液ポンプ115及び透析液ポンプ107のための制御信号を導き出す。透析液ポンプ107及び血液ポンプ115は、達成されるべき限外濾過、例えば、治療中全体にわたって達成されるべき或る特定の限外濾過率又は或る特定の限外濾過量に関して制御される。
【0031】
調節は、血液ポンプ115を一定の回転速度で又は一定の送り出し圧力で作動させると共に透析液ポンプ107を平衡化装置104により送られた限外濾過値が操作変数として役立つように制御するよう実施されるのが良い。例えば、このようにして送られた限外濾過率の値が対応の理想値を上回っている場合、透析液ポンプ107を加速させるべきであるが、限外濾過率がその理想値を下回っている場合、透析液ポンプ107を絞る。
【0032】
別の一制御方式は、透析液ポンプ107を一定の回転速度で又は一定の送り出し圧力で作動させると共に血液ポンプ115を制御して平衡化装置104によって送られた限外濾過値を調節するようにすることであっても良い。例えば、このようにして送られた限外濾過率の値が対応の理想値を上回っている場合、血液ポンプ115を絞るべきであるが、限外濾過率がその理想値を下回っている場合、血液ポンプ115を加速させる。
【0033】
これら制御方式の組み合わせが、例えば、内部制御ループ内において、最初に、血液ポンプ115を一定のレベルで作動させ、そして透析液ポンプ107を制御することによって可能である。透析液ポンプについて限界値に達したときだけ血液ポンプ115をそれに応じて制御する。
【0034】
別の組み合わせでは、透析液ポンプを内部制御ループの形式で一定率で作動させ、そして血液ポンプ115を制御する。血液ポンプ115の作動パラメータについて限界値に達したときに透析液ポンプも又制御する。
【0035】
限外濾過の調節は、限外濾過率について或る特定の値を規定することによって達成されるのが良い。変形例として、或る特定の限外濾過プロフィールは、血液処置中に取り出されるべき限外濾過量について規定されても良い。
【0036】
限外濾過率の規定値は、限外濾過率について一定の値又は連続して変化する値であっても良い。
【0037】
変形例として、正の限外濾過率を備えた間隔が負の限外濾過率を備えた間隔と交互に位置するプロフィールを限外濾過率又は限外濾過量について規定しても良い。堆積物を透析器半透膜から放出し又は透析器半透膜上における物質の堆積を減少させ又は阻止するいわゆるプッシュ‐プルモードをこのようにして達成することができる。このようにして、透析器半透膜の透過性が向上すると共に中ぐらいのサイズの分子についての対応の清浄化性能(除去)が向上する。本発明の構成は、なんら追加の機器出費なしで、例えば、振動圧力パルスを生じさせるための追加のポンプなしで、これを達成する。
【0038】
限外濾過の調節は、この場合、限外濾過率について上述した制御方式と同様な方法によって達成でき、その結果、限外濾過率の理想値との平衡化ではなく、限外濾過プロフィールとの対応の比較が行われるようになる。
【0039】
図2は、限外濾過を調節するための別の装置を備えた別の透析器械を概略的に示している。
図2に示された透析器械は、本質的には、
図1の限外濾過装置の設計に対応している。その説明をここで繰り返す代わりに、対応の要素の説明について参照されたい。限外濾過装置の説明は、本質的には、以下に詳細に説明する平衡化装置104の設計に関して異なっている。
【0040】
平衡化装置104は、流量測定セル205,206を有し、流量測定セル205,206は、透析液循環回路109内において、流量測定セル205が透析液チャンバ108から見て上流側に位置し、流量測定セル206が透析液チャンバ108から見て下流側に位置するよう流量差センサ201に接続されている。
【0041】
限外濾過ポンプ211が流路212内に位置し、この流路212は、流量測定セル206と並列であり、流体運搬量は、限外濾過ポンプ211によって制御される。
【0042】
流量差センサ201は、各流量測定セル205,206に関する別個の測定値から成る1対の測定値を決定し、これら測定値は、それぞれの流量測定セルを通る体液の流速を指示している。1対の測定値は、好ましくは、毎秒1回又は2回求められ、そして測定ライン202,203により制御・調節ユニット101に送られる。制御・調節ユニット101は、容積流量対を各測定値対に割り当て、その結果、容積流量上への測定値のマッピングを用いることができ、この画像は、先に実施された較正に基づいている。変形例として、質量流量上へのマッピングも又行われる。制御・調節ユニット101は、このようにして求められた容積流量対からポンプ211のための制御信号を導き出し、例えば、流量差センサの両方の流量測定セル205,206を通る容積流量が同一であるようポンプ211を作動させる。例えば、制御・調節ユニット101は、容積流量対の2つの容積流量から差信号を生じさせ、そして差信号のプラス又はマイナスの符号に応じて適当な仕方で限外濾過ポンプ211の流量を増大させ又はこれを減少させることによって限外濾過ポンプ211の流量を調節し、その結果、差信号が無視できるようになる。流量測定セル205を通る流量が流量測定セル206を通る流量よりも少ない場合、これにより、流量測定セル206の測定値と流量測定セル205の測定値の差について正の値が生じる。すると、制御・調節ユニット101は、限外濾過ポンプ211を通る流量を増大させ、流量測定セル206を通る流量を減少させるよう限外濾過ポンプ211のための制御信号を変更することができ、他方、透析器からの流出部内の流量は不変のままであり、ついには、同じ流量が流量測定セル205を通る流量として定められるようになる。すると、限外濾過ポンプ211を通る流量は、透析液チャンバから出る透析液流量と透析液チャンバに流入する透析液流量の流量差を指示する。この場合、限外濾過ポンプ211を通る流量は、透析器113内の限外濾過物の取出し量の尺度である。
【0043】
一実施形態では、流量は、限外濾過ポンプ211を通る所定の値に設定され、血液ポンプ115及び透析液ポンプ107は、上述したように制御され、その結果、流量差センサ201で測定された流量差は、所定の条件を満たし、例えば無視できるようになる条件を満たすようになる。
【0044】
この場合、限外濾過ポンプ211を通る流量は、透析器113への流入路と透析器113からの流出路との体液バランスの尺度、即ち、透析器113内の限外濾過物の取出し量についての尺度である。
【0045】
平衡化ユニット104は、全体として、受動型コンポーネントのように働き、透析器113内に流入する透析液と透析器から流出する透析液の体液バランスのアクティブな制御又は調節を生じさせるわけではない。
【0046】
差信号の消失は、或る特定の時点における差流量又は差流量の積分の消失に関連している場合がある。
【0047】
別の実施形態では、容積流量又は質量流量への測定値対の割り当ては、両方のチャネルを通る同じ容積流量での測定値相互の差が既知である場合、省かれても良い。この場合、制御・調節ユニット101は、2つの測定値の差を求め、この差が同一の容積流量であらかじめ知られている差に一致するようになるまで適当な仕方でこの差を増減することによって限外濾過ポンプ211の流量を変更する。
【0048】
流量差センサ201は、有利には、流体を向流状態で流す通す2つの流量測定セル205,206が好ましくは長方形の断面を有し、且つ磁界に対して直角に配置された磁気誘導原理に従って機能するのが良い。磁界は、電流差センサ201の制御により調整され、かかる磁界は、均質の磁界が両方の流量測定セル205,206を通って生じるようなものである。これは、例えば、流量測定セル205,206のチャネルが磁界内で互いに隣接して配置されることによって達成される。各チャネル内において、電極が磁界と対向して且つ直角をなし、しかもそれぞれのチャネル内の流れの方向とは逆に且つ直角をなした状態で、磁界に沿って延びる内側チャネル壁に取り付けられている。体液がチャネルを通って流れる場合、体液中に存在するイオンの電荷分離が磁界によって引き起こされ、その結果、電圧が電極に印加された状態で生じるようになる。この電圧は、流速に比例すると共に磁界の強さで決まる。両方の流量測定セル205,206内の磁界が同一である場合、相対流量差信号に関する磁界強さ依存性は、有利には、2つのチャネルから差信号を形成する際になくなる。
【0049】
換言すると、差信号がなくなることは、流量測定セル205,206内の磁界の絶対サイズとは無関係に流量測定セル205を通る流量及び流量測定セル206を通る流量が同じサイズのものであることを意味している。
【0050】
正の限外濾過率を備えた間隔と負の限外濾過率を備えた間隔が交互に位置するよう限外濾過率又は限外濾過量についてプロフィールがあらかじめ定められている実施形態では、所定の条件は、有利には、限外濾過率の積分及び/又は差信号の積分が無視できるようになった場合に満たされる。
【0051】
限外濾過ポンプ211は、好ましくは、容積形ポンプ、より好ましくはダイヤフラムポンプ、ホースローラポンプ(horse roller pump )、ピストンポンプ若しくは歯車ポンプ又は体液の送り出し量を決定することができる任意他のポンプから成る群から選択される。例えば、ホースローラポンプで送り出される量は、公知の方法を用いたホースローラポンプのポンプホース容積及びロータの回転角度に基づいて良好な精度で決定できる。体液の送り出し量を決定する対応の方法は、容積形ポンプの群から他のポンプについて先行技術において知られている。
【0052】
この場合、測定されるべき流体の量は、限外濾過物の量に一致することが有利である。この量は、典型的には、透析治療1回当たり又は1日当たり3〜5リットルであり、流量センサを通って流れる透析液の量は、典型的にはその60〜240リットルに上る。したがって、本発明の教示に一致して、流量差に関する測定装置又は測定方法を利用することは有利に可能であり、かかる測定方法は、流出中の透析液の量及び流入中の透析液の量を検出し、次にその差を求めるに過ぎない測定方法よりも著しく低い公差を備えなければならない。
【0053】
図3は、透析液ポンプ107、血液ポンプ115及び透析器113を備えた
図1に示されている透析器械についての等価線図を示しており、透析液循環路、血液循環路及び透析器内の流れ抵抗は、電気回路図の抵抗として示されている。具体的に説明すると、動脈針抵抗313、動脈ライン抵抗312、静脈針抵抗314、静脈ライン抵抗311が体外血液循環路内に示されており、透析器113内ではこれは、動脈フィルタ長手方向抵抗309及び静脈フィルタ長手方向抵抗310を示している。透析液循環路内の流れ抵抗は、透析器の入力端部側流れ抵抗307、透析器の出力端部側流れ抵抗306、透析液循環路の透析液入口側の流れ抵抗304、透析液循環路の透析液出力側の流れ抵抗303によってモデル化される。透析器内の半透膜は、膜間抵抗308によってモデル化される。
【0054】
表1は、透析液循環路内の抵抗、体外血液循環路内の抵抗及び膜間抵抗の量定を行うために以下に与えられる導関数のための導関数で用いられる個々の抵抗の名称、これらの参照符号及び公式の記号を示している。
【0055】
図4は、
図3に示された電気等価回路図の単純化された等価回路図である。
図4に示されている単純化等価回路図では、体外血液循環回路内の動脈針抵抗(記号:R
aN)、体外血液循環回路内の動脈ライン抵抗(記号:R
aL)及び動脈フィルタ長手方向抵抗(記号:R
aF)を組み合わせると、次のように全動脈抵抗401(記号:R
a)が得られる。
R
a = R
aN + R
aL + R
aF (式 1)
【0056】
同様に、体外血液循環路内の静脈針抵抗(記号:R
vN)、体外血液循環回路内の静脈ライン抵抗(記号:R
vL)及び静脈フィルタ長手方向抵抗(記号:R
vF)を組み合わせると、次のように全静脈抵抗402(記号:R
v)が得られる。
R
v = R
vN + R
vL + R
vF (式 2)
【0057】
透析器循環回路内の抵抗の対応の組み合わせにより、次の結果が生じる。透析液循環路内の入力端部上の流れ抵抗304(記号:R
Din)及び入力端部上の透析器の流れ抵抗307(記号:R
DFin)を組み合わせると、次のように入力抵抗405(記号:R
in)が得られる。
R
in = R
Din + R
DFin (式 3)
【0058】
透析液循環路の出力端部のところの流れ抵抗303(記号:R
Dout)及び出力端部のところの透析器の流れ抵抗306(記号:R
DFout)を組み合わせると、次のように出力抵抗404(記号:R
out)が得られる。
R
out = R
Dout + R
DFout (式 4)
【0059】
図4に示されている抵抗の名称、これらの参照符号及びこの導関数で用いられている記号が以下の表2にまとめて示されている。
【0060】
血液ポンプ及び透析液ポンプを電流源又は電圧源としてモデル化することができ、この場合、適当なモデル化は、ポンプの設計によって影響を受ける。かくして、容積形ポンプを例えばダイヤフラムポンプ、ホースローラポンプ、ピストンポンプ又は歯車ポンプを透析液ポンプとして用いる場合、電流源としての透析液ポンプのモデル化が可能である。この状況は、血液ポンプが容積形ポンプ、例えばホースローラポンプとして具体化されている場合にも同様である。定圧ポンプ、例えばインペラポンプが好ましくは電流源としてモデル化される。血液ポンプ又は透析液ポンプが対応の内部抵抗を持つ非理想電圧源又は電流源としてモデル化される場合、それぞれの内部抵抗は、透析液循環回路及び/又は体外血液循環回路内の抵抗に追加されなければならない。かくして、例えば、透析液ポンプを例えば非理想電圧源としてモデル化する際、透析液ポンプの流れ抵抗は、入力抵抗405に含まれなければならない。この状況は、体外血液循環回路について同様である。当業者であれば、これについて必要な対応の検討事項を知っている。当業者は又、非理想電圧源がモデル化される等価回路図を非理想電流源を備えた対応の等価回路図にどのように変換するかを知っているであろう。
【0061】
体外血液循環回路及び透析液循環回路内の抵抗の量定並びに関与するポンプの内部抵抗の量定及び所望の限外濾過率を達成するために関与するポンプの制御において以下の検討事項が役に立つ場合がある。
【0062】
対応の電流I
UFが等価電気回路図内において限外濾過率について仮定される場合、透析液ポンプが電圧U
Dの電圧源を備えた状態でモデル化されると共に血液ポンプが電圧U
Bの電圧源を備えた状態でモデル化されるときに電圧源としてのポンプのモデル化の場合、限外濾過率について以下の公式を与えることができる。
【0063】
透析液ポンプが電流I
Dの電流源を備えた状態でモデル化されると共に血液ポンプが電流I
Bの電流源を備えた状態でモデル化されるときに電流源としてのポンプのモデル化の場合、限外濾過率について以下の公式が与えられる。
【0064】
以下の検討事項は、出力抵抗404(記号:R
out)の量定について役立つ。或る特定の限外濾過率を達成するのに必要な出力抵抗404(記号:R
out)についての方程式6の変形により、以下の方程式が得られる。
【0065】
方程式7は、膜間抵抗R
TMが高すぎる場合、これが透析液循環回路内の出力抵抗R
outの量定に対して望ましくない影響を及ぼすことを示している。したがって、膜間抵抗R
TMは、できるだけ小さく、例えば、高い比スループット係数を備えたフィルタ(「ハイカットオフフィルタ(high cutoff filter)」)又は十分に広い有効フィルタ面積を備えたフィルタと同じほど小さく選択されるべきである。この場合に考慮に入れるべき一要因は、膜間抵抗R
TM―静脈フィルタ長手方向抵抗R
vFと同様―は、体外血液処置中に増大することになるということである。体外血液循環回路内における静脈フィルタ長手方向抵抗R
vFの増大は、代表的には、血液処置中におけるヘマトクリットの増大、いわゆる血液濃縮並びに体外血液循環路内のあり得る絞りの発生に基づいている。膜間抵抗R
TMの増大は、透析器半透膜上の堆積物に起因して血液処置中に生じる場合が多い。血液処置中にしばしば起こるこれら作用効果は、体外血液循環路内及び透析器循環路内の抵抗の量定の際に考慮に入れられるべきである。
【0066】
以下の数値による実施例は、関与する流量の考えられる量定の開始点を与えることができ、即ち、最小値I
Bmin=60mL/min及び最大値I
Bmax=300mL/minが血液流量I
Bについて仮定され、最大値I
UFmax=I
B/10、即ち、約20mL/min及び最小値I
UFmin=0mL/minが限外濾過率I
UFについて仮定され、最小値I
Dmin=I
B/3及び最大値I
Dmax=200mL/minが透析液流量I
Dについて仮定される。
【0067】
血液流量I
Bは、血液ポンプ115を通る流量として血液ポンプによって設定され、他方、透析液流量I
Dは、透析液ポンプ107を通る流量に対応し、限外濾過率I
UFは、膜間抵抗308を通る流量に対応する。
【0068】
一般に、以下の方程式が透析液流量I
Dについて当てはまる。
【0069】
基本的には、血液流量I
Bが所与の場合、最大限外濾過率は、透析液流量I
Dが最小であるときに達成されることが分かる。
【0070】
方程式8の変形後、以下の方程式が得られる。
【0071】
I
B=50mL/minが最小血液流量について別の数値として用いられると共にI
UF=5mL/minが限外濾過率についての別の数値として用いられる場合、これにより抵抗R
V、R
out及びR
TMの相互の比を1つの方程式で示す以下の方程式が得られる。
又は
【0072】
膜間抵抗R
TMと透析器循環路内の開始抵抗の或る特定の比で始まって、全静脈抵抗R
Vに対する透析器循環路内の出力抵抗R
outを量定するための以下の方程式が得られ、この場合、漸増する値が治療中全体にわたる増加の上述の作用効果を反映して膜間抵抗R
TMについて得られる。
【0073】
この例示としての計算は、膜間抵抗R
TMが大きい場合、出力抵抗R
outが小さく選択されなければならないことを示している。上述したように、透析器循環回路及び体外血液循環回路内の流れ抵抗の設計に関し、膜間抵抗R
TMが高すぎることは、不利益である。例えば、膜間抵抗R
TMがその最大値として、透析液循環回路内の出力抵抗R
outの4倍であると仮定した場合、上記において与えられた数値の例により、R
outがR
Vよりも小さくなければならないという単純な要件が生じる。透析液循環回路内の出力抵抗R
out及び全静脈抵抗R
Vの設計に関し、全静脈抵抗R
Vを血液処置の開始時に仮定すれば十分である。と言うのは、方程式9は、全静脈抵抗が血液処置期間中に増大すると、まもなく満たされるからである。
【0074】
透析液流量I
D、血液流量I
B及び限外濾過率I
UFについての例示としての値の以下の仕様に関し、治療の開始時において、出力抵抗R
outの値が全静脈抵抗R
Vに対応し、治療の開始時における膜間抵抗R
TMが出力抵抗R
outに対応しているものと仮定する。
【0075】
血液流量I
B=200mL/minの場合、最大限外濾過率I
UF =20mL/minが以下のように、方程式9に基づいて透析液流量で達成される。
【0076】
最小限外濾過率I
UF=0mLが次のように透析液流量に対応している。
【0077】
両方の値は、透析液流量I
D≦200mL/minという許容範囲、受け入れることができる範囲又は好ましい範囲内に収まる。
【0078】
以下の数値の実施例に関し、残りの血液処置中、膜間抵抗R
TMは、上述した作用効果の結果として、4倍の値まで上昇することが仮定される。最大限外濾過率I
UF=20mL/minを達成するため、次式、即ち、
への透析液流量の絞りが必要な場合がある。
【0079】
最小限外濾過率I
UF=0mL/minの場合、次式、即ち、
に従う透析液流量は、依然として、上述したのと同一に確立されなければならない。
【0080】
上述の作用効果に起因して、全静脈抵抗R
Vが血液処置中に2倍になったと仮定した場合、これにより、20mL/minという最大限外濾過率を達成するためには、次式、即ち、
という所要の透析液流量が生じる。
【0081】
最小限外濾過率I
UF=0mLの場合、その結果は、次式、即ち、
という透析液流量が得られる。
【0082】
この場合、0〜20mL/minの範囲全体にわたって限外濾過率を調節することができるようにするためには、許容可能であり、受け入れることができ又は好ましいと見なされる透析液流量の範囲を拡張し、或いは、血液流量I
Bを減少させる可能性がある。かくして、例えば、最大許容透析液流量I
D=200mL/minでは、血液流量I
B=170mL/minで最大限外濾過率I
UF=20mL/minが達成され、最小限外濾過率I
UF=0mL/minが血液流量I
B=100mL/minで達成される。
【0083】
以下の例示としての計算は、膜間抵抗R
TMを低く保つことがどのように有利であるかを示しているはずである。例えば、透析器及び透析液循環路の寸法決めにより、膜間抵抗R
TMが最大で透析液循環回路内の出力抵抗R
outに一致していることが確かめられた場合、及び透析液循環回路内の出力抵抗R
outがR
out=3/2R
Vと全静脈抵抗の比の状態にあるように透析液循環回路及び体外血液循環回路が設計されている場合、20mL/minという最大限外濾過率が血液流量I
B=200mL/min及び次式、即ち、
という透析液流量で得られ、0mL/minという最小限外濾過率が同一の血液流量I
B及び次式、即ち、
という透析液流量で得られる。
【0084】
かくして、0mL/minから20mL/minまでの限外濾過率I
UFの範囲を透析液流量I
Dの僅かな変化で制御することができる。