特許第6388170号(P6388170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388170
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】木製軒裏納まり
(51)【国際特許分類】
   E04F 19/04 20060101AFI20180903BHJP
   E04D 13/15 20060101ALI20180903BHJP
   E04D 13/158 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   E04F19/04 A
   E04D13/15 G
   E04D13/158 501R
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-239187(P2016-239187)
(22)【出願日】2016年12月9日
(65)【公開番号】特開2018-96049(P2018-96049A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2017年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 俊之
(72)【発明者】
【氏名】宮地 宏和
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−170137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/04
E04D 13/158
E04B 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅の構造部材に固定された軒先見切りと、この軒先見切りの軒裏側で上端側を軒裏と反対側へ露出しないように支持され下端側を軒裏側へ入り込んだ位置で軒裏と反対側に露出している木製軒裏回り縁と、この木製軒裏回り縁の下方面と略同一面となるように配置された木製軒裏と、を具備することを特徴とする木製軒裏納まり。
【請求項2】
前記軒先見切りが、前記住宅の構造部材に固定される上面板と、該上面板の軒裏と反対側から屈曲して形成された側面板と、該側面板の下端側から軒裏側に屈曲して形成された下面板と、前記上面板と前記下面板の間に前記木製軒裏回り縁の上端側を支持する支持部を具備することを特徴とする請求項1の木製軒裏納まり。
【請求項3】
前記木製軒裏回り縁高さ方向の長さが前記側面板の高さ方向の長さより長い本体部と、該本体部の上方から軒裏と反対側に突出して前記支持部に収納支持される収納凸部と、前記本体部の上方から軒裏側に突出して形成され前記上面板に固定する取付板部と、を有することを特徴とする請求項1又は請求項2の木製軒裏納まり。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、住宅の軒裏で軒先見切り及び軒裏回り縁を用いて構成される木製軒裏納まりに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、住宅用軒裏納まりとしては、特許文献1のように水切りを第1見切部材と第2見切部材の2つの見切部材とすることによって、一方の見切部材に影響を与えずに他方の見切部材に有用な機能を持たせたり、一方の見切部材の表面色及び質感を軒天の表面色及び質感と同一か、又は、他の見切部材の表面色や質感よりも表面色及び質感よりも軒天の表面色及び質感に近くすることなどの機能を持たせることができる。あるいは、2つの見切部材の表面色や材質を異ならせることにより、立体感や奥行き感が感じられて上質感も出せる見切り設置構造が提案されている。又、特許文献2にように、上部破風水切りと下部破風水切りに分けて構成すれば、少ない構成部材で簡単に施工できる軒構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−31116号公報
【特許文献2】特開平9−151583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記2つの特許文献は、第1、第2水切部材や上部、下部破風水切部材は、金属製板であるので防水機能は十分に具備しているので、仮に、軒裏納まりが天然木製品であっても雨水が到達することがないので、カビの発生や歪の発生という不具合は生じなく耐久性は維持される。しかしながら、一方、天然木製品の美しさがそれらの金属性板で覆い隠されているので外から見えなくなるという課題がある。このような課題を解決するための従来技術文献としての文献は示されていないが、実際状は天然木製品が見える状態に施工されている軒裏納まりも存在している。この場合においては、使用されている天然木製品の外から見える木口から雨水が浸み込んで、カビの発生や製品の歪の発生など前記のような不具合が生じるという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記事情に鑑み、天然木製品の木口を見せながら厚み感や質感を味うことが出来、しかも耐久性を維持できる木製軒裏納まりと軒先見切り及び軒裏回り縁を提供することを目的としてなされたものであって、その特徴とするところは、住宅の構造部材に固定された軒先見切りと、この軒先見切りの軒裏側で上端側を軒裏と反対側へ露出しないように支持され下端側を軒裏側へ入り込んだ位置で軒裏と反対側に露出している木製軒裏回り縁と、この木製軒裏回り縁の下方面と略同一面となるように配置された木製軒裏と、を具備する木製軒裏納まりとしたところにある。
【0006】
前記軒先見切りが、前記住宅の構造部材に固定される上面板と、該上面板の軒裏と反対側から屈曲して形成された側面板と、該側面板の下端側から軒裏側に屈曲して形成された下面板と、前記上面板と前記下面板の間に前記木製軒裏回り縁の上端側を支持する支持部としたことにある。
【0007】
前記木製軒裏回り縁高さ方向の長さが前記側面板の高さ方向の長さより長い本体部と、該本体部の上方から軒裏と反対側に突出して前記支持部に収納支持される収納凸部と、前記本体部の上方から軒裏側に突出して形成され前記上面板に固定する取付板部とを、具備することにある。
【発明の効果】
【0008】
この発明の木製軒裏納まりは、住宅の構造部材である例えば軒裏の一端側である外壁の下端に軒先見切りを固定し、そして、この軒先見切りの軒裏側で上端側が軒裏と反対側に露出しないように支持され、下端側が軒裏側へ入り込んだ位置で軒裏と反対側に露出している木製軒裏回り縁を設けているので、この木製軒裏回り縁の上端側は軒先水切りによって雨水に触れることはなく、下端側は軒裏側へ入り込んだ位置にあるので雨水に触れることはないので軒先見切りに遮られることなく露出しているので、軒先の下方から見上げてみることが出来る。又、この木製軒裏回り縁の下方面と木製軒裏は略同一平面にあり同じ木質系としてデザインが統一されている。このため、住宅の軒下の外側から見た場合には、木製軒裏回り縁の木目模様と質感を目視することが出来るのみならず、軒裏全体の統一した木質感を得られ、住宅の高級感を醸し出すことが出来る。加えて、雨水に木製軒裏回り縁が触れることがないので、カビや歪の発生が抑制されて耐久性を向上させることが出来る。
【0009】
又、この発明の木製軒裏納まりは、住宅の構造部材である軒裏の下側に位置する外壁にも接近して設けた場合には、木製軒裏の周囲を全てこの発明の木製軒裏回り縁とすることができるので、軒下の下方から見上げた場合には木製軒裏の周囲全体が木製の縁であることが視認でき、住宅の高級感をより一層醸し出すことが出来る。
【0010】
軒先見切りが、前記住宅の構造部材に固定される上面板と、該上面板の軒裏と反対側から屈曲して形成された側面板と、該側面板の下端側から軒裏側に屈曲して形成された下面板と、前記上面板と前記下面板の間に前記木製軒裏回り縁の上端側を支持する支持部を設けた構成としたので、前記上面板によって住宅の構造部材への固定ができ、側面板、下面板によって木製軒裏回り縁への雨水の接触の防止を図り、支持部によって木製軒裏回り縁を支持出来る。
【0011】
前記木製軒裏回り縁が、前記側面板より長い本体部と、該本体部の上方から軒裏と反対側に突出して前記支持部に収納支持される収納凸部と、前記本体部の上方から軒裏側に突出して形成され前記上面板に固定する取付板部とを具備する構成としたので、前記軒先見切りに取付され、本体部の下方面及び下方側面が軒先の下方から木製品の木口を目視できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】木製軒裏納まりの要部説明図
図2】木製軒裏納まりを用いた軒裏構造の断面説明図
図3図2のA−A線断面図
図4】軒先見切りの断面図
図5】木製軒裏回り縁の断面図
図6】大型庇の軒裏に木製軒裏納まりを用いた断面説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の木製軒裏納まりの最良の実施形態について以下図1図2を参考にしつつ説明する。木製軒裏納まり1は、住宅の構造部材2に固定された軒先見切り3と、この軒先見切り3の軒裏側で上端側を軒裏と反対側へ露出しないように支持され、下端側を軒裏側へ入り込んだ位置で、軒裏と反対側に露出している木製軒裏回り縁4と、この木製軒裏回り縁4の下方面と略同一面となるように配置された木製軒裏5と、を具備する構成としたところにある。
【0014】
前記軒先見切り3は、図4に示すように、前記木製軒裏回り縁5を支持するための部材であり、住宅の構成部材2に固定されている。この実施形態では、住宅の構成部材2は梁6に固定された取付桟7であり、この取付桟7と軒先水切り3が取付アングル材8を介して連結固定されている。軒先見切り3の構成は、住宅の梁6に固定されている外壁9の下端9aに前記取付アングル材8を介してビス10で固定する上面板3aと、該上面板3aの軒裏と反対側から屈曲して形成された側面板3bと、該側面板3bの下端側から軒裏側に屈曲して形成された下面板3cと、前記上面板3aと前記下面板3cの間に軒裏と反対方向に窪んだ支持部3dを有している。前記上面板3aの上方に突出して前記取付アングル材8の位置決めする係止突起3eが設けられ、又、側面板3bの下方には落下する雨水の水切りをする水切り突起3fが設けられている。
【0015】
木製軒裏回り縁4は、図5に示すように、木製軒裏5の周囲に配置される天然の木を加工してなるものであって、前記軒先見切り3の側面板3bより長い本体部4aと、該本体部4aの上方から軒裏と反対側に突出して前記支持部3dに収納支持される収納凸部4bと、前記本体部4aの上方から軒裏側に突出して形成され前記上面板3aに固定する取付板部4c、更に本体部4aの下方から軒裏側へ前記取付板部4cの突出長さより短く突出した下方突部4dとを有している。そして、この下方凸部4dと略同一平面状には、軒裏を形成する木製軒裏5が、梁6に固定された吊り金具11、野縁受け12、野縁13、胴縁14を介して配置されている。
【0016】
上記構成からなる木製軒裏納まり1を組立てるには、図1図2に示されるように、住宅の構成部材2である梁6に固定された取付桟7に上片8aを固定した取付アングル材8を介して垂れ外壁9の下端9aに軒先見切り3を取付固定する。この取付固定は取付アングル材8の下片8bを上面板3aの上面に載せてその端を係止突起3eに当て位置決めしてから、上面板3aの略中央部の下方からビス10で垂れ外壁9の下端9aに固定することによってなされている。そして、垂れ外壁9の下端9aと上面板3aの間隙からの雨水の浸入を阻止するためにパッキン材15が詰められている。この状態では、側面板3bの外面が外壁9の外壁面9bより少し軒裏側に入り込んだ位置にあるようにして、外壁面9bを伝って流れ落ちる雨水ができるだけ側面板3bに当たらないようにしている。
【0017】
前記軒先見切り3への木製軒裏回り縁4の取付固定は、図1に良く現れているように、収納凸部4bを支持部3dに挿入して支持してから木製軒裏回り縁4の上面を上面板3aに添わせて、取付板部4cの下方からビス10で上面板3aに固定するだけで良い。この時、本体部4aの下端から軒裏方向に突出している下方突部4dは上方に位置している取付板部4cより軒裏側への突出長さが短いために、ビス10の打ち込み作業が容易となっている。又、この下方突部4dは下方から軒裏を見上げた場合に、木製軒裏回り縁4の幅を本体部4aの幅より広く視認させる作用をも有している。
【0018】
上記のようにして住宅の構成部材1に取付けられた木製軒裏納まり1は、垂れ外壁9の外壁面9bを伝って落下する雨水は略そのまま地上へ落下するが、下端9aを回り込んだ雨水や風によって横方向から当たる雨水はパッキン材15や側面板3bによって遮られて、側面板3bを伝って地上へ落下する。この時、側面板3bの下方には水切り突起3fがあるために下面板3c側へは回り込まない。又、側面板3bの長さより本体部4aの方が長いので、本体部4aの下方側の軒裏側と反対側面は露出しているものの側面板3bより下面板3cの長さ分だけ軒裏側へ入り込んでいるので、雨水が触れ難くなっている。このために、下方から見上げた場合には、本体部4aの軒裏側と反対側の下方側、本体部4aの下面及び下方凸部4dの下面は目視できるので、天然木製品である軒裏回り縁4の木口を見せながら厚み感や質感を味うことが出来、しかも耐久性を維持できる木製軒裏納まり1を得ることが出来る。
【0019】
以上の説明においては、木製軒裏納まり1を外壁9の下端に設置した場合について説明したが、軒裏回り縁4は木製軒裏5の外周囲全部に亘って設置するものであるから、図2に示すように、軒下側の1階の外壁91に接近した壁際の位置でも使用される。この場合には、木製軒裏納まり1は雨水には触れない場所にあるので、軒先見切り3の雨水防止作用には関係がないものの、下方から見上げた場合には、軒先から入った光によって木製軒裏回り縁4の本体部4aの影が下面板3cに投影されて、これが軒裏回り縁4を構成する天然木製品の木口を更に引き立たせて、木の立体感や質感を一層引き出させる効果を得ることが出来る。従って、軒下に居る人が見上げれば木製軒裏5の木質感と共にその四周囲が立体感、木質感を醸し出す同じ意匠性の高い木製軒裏納まり1を得ることが出来る。
【0020】
この発明の木製軒裏納まり1は、図6に示すように、大型庇16にも用いることが出来る。この場合には、軒先部分については軒先から軒裏側に向かって比較的長い鼻隠し部材17が用いられているので、木製軒裏回り縁41が雨水に濡れることがないために、軒先見切り3を使用する必要がない。そのために、軒先側においては上方側面だけが鼻隠し部材17に隠れるようにして屋根の構造部材18にビス10などで固定するだけで良い。従って、ここで使用される木製軒裏回り縁41は、鼻隠し部材17よりも上下方向に長くて下方側が露出している略矩形の本体部41aとこの本体部41aの上方から軒裏側へ突出してビス10止めされる取付板部41cを具備していればよい。その他の軒下の部位については前述した木製軒裏納まり1の構造が使用される。この木製軒裏回り縁41を使用した木製軒裏納まり1であっても、軒下から見上げた場合には、前記の実施形態と同様に木製軒裏回り縁41の下方の側面と下方面が目視できるので、同様の効果を得ることが出来る。軒先側、壁際、庇下など異なる部位においても同じ断面で設計されているからである。その結果、軒先から見上げた場合には、四周囲全部が立体感、木質感を醸し出す同じ意匠性の高い木製軒裏納まり1を得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0021】
この発明の木製軒裏納まりは、木製軒裏を具備する新築の住宅のみならず、既存の木製軒裏を有する住宅にも適用できるので、広い利用が見込まれる。
【符号の説明】
【0022】
1 木製軒裏納まり
2 住宅の構造部材
3 軒先見切り
3a 上面板
3b 側面板
3c 下面板
3d 支持部
4 木製軒裏回り縁
4a 本体部
4b 収納凸部
4c 取付板部
4d 下方凸部
5 木製軒裏
6 梁
7 軒先取付桟
9 外壁
15 パッキン材
図1
図2
図3
図4
図5
図6