特許第6388263号(P6388263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388263
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】取水装置および発電装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 9/04 20060101AFI20180903BHJP
   E02B 5/08 20060101ALI20180903BHJP
   E02B 7/16 20060101ALI20180903BHJP
   F03B 11/08 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   E02B9/04 B
   E02B5/08 101Z
   E02B7/16
   F03B11/08
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-23747(P2015-23747)
(22)【出願日】2015年2月10日
(65)【公開番号】特開2016-148136(P2016-148136A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】594150741
【氏名又は名称】日本エンヂニヤ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(72)【発明者】
【氏名】臼井 善彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 幸人
(72)【発明者】
【氏名】ファンダントー
(72)【発明者】
【氏名】牧志 龍男
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 栄二
(72)【発明者】
【氏名】松田 尚之
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 昭一郎
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄介
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−113232(JP,A)
【文献】 特開2014−066084(JP,A)
【文献】 特開平03−055309(JP,A)
【文献】 特開平02−101230(JP,A)
【文献】 特開2006−077478(JP,A)
【文献】 特開2014−169650(JP,A)
【文献】 特開平06−158630(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0235416(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0284934(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/08
E02B 7/16
E02B 9/04
E03B 3/04
E03B 3/36
F03B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路内に設置される取水装置であって、
前記水路内の上流側に配置する上流堰板と、
前記水路内の下流側に配置する下流堰板と、
前記上流堰板の上部と前記下流堰板の上部との間に配置するスクリーンと、
前記下流堰板に形成する出水口と
を備え、
前記スクリーンには、落ち葉などの塵芥を通さない通水開口部を形成し、
前記上流堰板、前記下流堰板、および前記スクリーンによって貯留槽を形成し、
前記貯留槽には、前記通水開口部から水が流入し、
前記貯留槽に流入した前記水は前記出水口から流出し、
前記出水口には、前記出水口の開口面積を調整することで前記スクリーンの上面を流れる前記水の流量を調整する開口調整機構を設けたことを特徴とする取水装置。
【請求項2】
前記スクリーンの前記上面には側面板を設け、
前記側面板によって、前記スクリーンの前記上面に形成する流水幅を前記水路の幅よりも狭くしたことを特徴とする請求項1に記載の取水装置。
【請求項3】
前記側面板によって、上流より下流の前記流水幅を狭くしたことを特徴とする請求項2に記載の取水装置。
【請求項4】
前記スクリーンの下方に導水板を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の取水装置。
【請求項5】
前記上流堰板には、比重の大きな土砂塵芥を通過させる塵芥開口部と、前記塵芥開口部を開閉する遮蔽板とを設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の取水装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の取水装置を用いた発電装置であって、前記出水口から流出させる前記水を用いて発電を行うことを特徴とする発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路内に設置される取水装置および発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、温暖化対策、低炭素化の実現に向けて、自然エネルギーの利用拡大が不可欠な状況となっている。また、我が国では、2011年に再生可能エネルギー特別措置法が可決されるなど自然エネルギーの利用拡大に向けた取り組みが強化されている。自然エネルギーによる発電の中でも、流水が少なくても地域内に豊富に存在し傾斜地の多い日本の中山間地域では、安定性や信頼性の面から小水力発電装置の利用が有用である。小水力発電装置のうち水路に設置する水車発電機は、高効率化に向けて研究開発が進められている。高効率化を実現するためには、水路内に流入する塵芥が、水車発電機の詰まりや水車発電機の破損の原因となるため、塵芥の除去が必要不可欠である。現状の小水力発電における一般的な塵芥の除去方法としては、水車手前に金網や格子状の除塵器具を設置する方法が用いられているが、流下する塵芥によって除塵器具が頻繁に詰まるという問題や詰まりが原因で水路外へ流水が越流するという問題が生じている。そのため、水車発電機の管理者は、清掃作業や保守・点検作業に多大な労力を費やしている。また、このことが小水力発電普及の妨げの一因となっている。
ところで、除塵用にスクリーンを用いた取水装置が既に提案されている。
特許文献1は、スクリーンによって谷川から水とともに流れて来る枯れ葉や木屑を除去し、きれいな水を貯水池に溜める構成を提案している。
特許文献2は、河床に取水槽を形成し、取水槽の上部開口をスクリーンで塞いだ構成を提案している。
特許文献3は、水路中に上下2段構造の分流装置を設置し、下段水槽を水路よりも低い位置に形成し、下段水槽の上面にスクリーンを配置する取水装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実願昭56−118034号(実開昭58−25323号)のマイクロフィルム
【特許文献2】特開2004−183292号公報
【特許文献3】特開2012−140845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、岩石や樹木の枝等もスクリーンに導かれることを前提とした構成であり、特許文献1は、そもそも水路内に設置する取水装置ではない。
特許文献2についても、特許文献1と同様にスクリーンに岩石や樹木の枝等が導かれる可能性があり、また水路内に設置する取水装置ではない。
特許文献3は、水路中に設置する取水装置であるが、スクリーン上を全ての塵芥が通過するために、土砂塵芥が通過することによってスクリーンが損傷することもある。
【0005】
本発明は、スクリーンの上面を流れる水の流量を調整して水路内を流れる水の流量が少ない場合でも貯留槽を満水状態に保ち、落ち葉などの塵芥をスクリーンに堆積させない取水装置を提供することを目的とする。
更に本発明は、落ち葉などの塵芥と、比重の大きな土砂塵芥とを分離し、比重の大きな土砂塵芥はスクリーンに導かれないようにすることでスクリーンの破損を防止できる取水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の取水装置は、水路内に設置される取水装置であって、前記水路内の上流側に配置する上流堰板と、前記水路内の下流側に配置する下流堰板と、前記上流堰板の上部と前記下流堰板の上部との間に配置するスクリーンと、前記下流堰板に形成する出水口とを備え、前記スクリーンには、落ち葉などの塵芥を通さない通水開口部を形成し、前記上流堰板、前記下流堰板、および前記スクリーンによって貯留槽を形成し、前記貯留槽には、前記通水開口部から水が流入し、前記貯留槽に流入した前記水は前記出水口から流出し、前記出水口には、前記出水口の開口面積を調整することで前記スクリーンの上面を流れる前記水の流量を調整する開口調整機構を設けたことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の取水装置において、前記スクリーンの前記上面には側面板を設け、前記側面板によって、前記スクリーンの前記上面に形成する流水幅を前記水路の幅よりも狭くしたことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の取水装置において、前記側面板によって、上流より下流の前記流水幅を狭くしたことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の取水装置において、前記スクリーンの下方に導水板を設けたことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の取水装置において、前記上流堰板には、比重の大きな土砂塵芥を通過させる塵芥開口部と、前記塵芥開口部を開閉する遮蔽板とを設けたことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の取水装置を用いた発電装置であって、前記出水口から流出させる前記水を用いて発電を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、比重の大きな土砂塵芥は上流堰板で堰き止めてスクリーン上面に流さないことでスクリーンの破損を防止でき、開口調整機構によってスクリーンの上面を流れる水の流量を調整することで、落ち葉などの塵芥をスクリーンに堆積させずにスクリーン上面を流れる水とともに流すことができる。これにより、塵芥と水を効率的に分離し、塵芥を含まない水を利用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施例による取水装置を水路内に設置した状態を示す斜視概念図
図2】同取水装置の上面図、側面図および要部上面図
図3】同取水装置に用いる下流堰板および発電機器を示す斜視図、上面図、および側面図
図4】同取水装置を用いた発電装置の上面図および側面図
図5】本発明の他の実施例による取水装置を、段差工を設けた水路内に設置した状態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による取水装置は、水路内の上流側に配置する上流堰板と、水路内の下流側に配置する下流堰板と、上流堰板の上部と下流堰板の上部との間に配置するスクリーンと、下流堰板に形成する出水口とを備え、スクリーンには、落ち葉などの塵芥を通さない通水開口部を形成し、上流堰板、下流堰板、およびスクリーンによって貯留槽を形成し、貯留槽には、通水開口部から水が流入し、貯留槽に流入した水は出水口から流出し、出水口には、出水口の開口面積を調整することでスクリーンの上面を流れる水の流量を調整する開口調整機構を設けたものである。本実施の形態によれば、開口調整機構によってスクリーンの上面を流れる水の流量を調整することで、水路内を流れる水の流量が少ない場合でも貯留槽を満水状態に保つことができる。貯留槽を満水状態に保つことで、スクリーンの表面の負圧が小さくなり、落ち葉などの塵芥がスクリーンの上面に貼り付くことが少なく、塵芥をスクリーンに堆積させずにスクリーン上面を流れる水とともに流すことができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による取水装置において、スクリーンの上面には側面板を設け、側面板によって、スクリーンの上面に形成する流水幅を水路の幅よりも狭くしたものである。本実施の形態によれば、流水幅を水路の幅よりも狭くすることでスクリーン上面を流れる水位を高くすることができ、流水が少ない水路においても塵芥をスクリーンに堆積させることなく取水を行うことができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による取水装置において、側面板によって、上流より下流の流水幅を狭くしたものである。本実施の形態によれば、スクリーンの上面を流れる水の流速を、幅を狭くしない場合と比較して下流側で高めることができ、スクリーン上面への塵芥の堆積を防止できる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれかの実施の形態による取水装置において、スクリーンの下方に導水板を設けたものである。本実施の形態によれば、通水開口部から貯留槽に流れ込む水の流れ方向を下流側に向けることができ、スクリーン上面の塵芥付着量をより軽減できる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれかの実施の形態による取水装置において、上流堰板には、比重の大きな土砂塵芥を通過させる塵芥開口部と、塵芥開口部を開閉する遮蔽板とを設けたものである。本実施の形態によれば、比重の大きな土砂塵芥は上流堰板で堰き止めてスクリーン上面に流れないため、スクリーンの破損を防止でき、上流堰板で堰き止めた比重の大きな土砂塵芥を、塵芥開口部を開いて下流に流すことで、土砂塵芥の堆積を取り除くことができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第1から第5のいずれかの実施の形態による取水装置を用いた発電装置であって、出水口から流出させる水を用いて発電を行うものである。本実施の形態によれば、塵芥を取り除いた水を発電に用いることができ、発電装置を安定して継続運転することができる。
【実施例】
【0015】
以下本発明の一実施例による取水装置について説明する。
図1は本実施例による取水装置を水路内に設置した状態を示す斜視概念図、図2は同取水装置の上面図、側面図、および要部上面図、図3は同取水装置に用いる下流堰板および発電機器を示す斜視図、上面図、および側面図、図4は同取水装置を用いた発電装置の上面図および側面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施例による取水装置は、水路10内に設置されて用いられる。
取水装置は、水路10内の上流側に配置する上流堰板20と、水路10内の下流側に配置する下流堰板30と、上流堰板20の上部と下流堰板30の上部との間に配置するスクリーン40と、下流堰板30に形成する出水口31とを備えている。
【0017】
スクリーン40には、落ち葉などの塵芥11を通さない通水開口部を形成している。スクリーン40は、例えば、流れ方向に少なくとも2本のサポートロッドを配置し、このサポートロッドに対して垂直方向に多数のワイヤーバーをサポートロッド上に配置して構成され、これらのワイヤーバーの間に形成されるスリットによって通水開口部を形成する。ワイヤーバーは、長手方向に垂直な断面を逆三角形状とすることが好ましい。スクリーン40には、例えば日本エンヂニヤ株式会社製の取水スクリーンを用いることができる。
【0018】
上流堰板20、下流堰板30、およびスクリーン40によって貯留槽50が形成される。貯留槽50には、スクリーン40に形成された通水開口部から水が流入する。貯留槽50に流入した水は出水口31から流出させる。出水口31には、出水口31の開口面積を調整する開口調整機構32を設けている。開口調整機構32によって出水口31の開口面積を調整することで、スクリーン40の上面を流れる水の流量を調整することができる。
【0019】
本実施例によれば、開口調整機構32によってスクリーン40の上面を流れる水の流量を調整することで、水路10内を流れる水の流量が少ない場合でも貯留槽50を満水状態に保つことができる。貯留槽50を満水状態に保つことで、スクリーン40の表面の負圧が小さくなり、落ち葉などの塵芥11がスクリーン40の上面に貼り付くことが少なく、塵芥11をスクリーン40に堆積させずにスクリーン40上面を流れる水とともに流すことができる。
【0020】
上流堰板20には、比重の大きな土砂塵芥12を通過させる塵芥開口部21と、塵芥開口部21を開閉する遮蔽板22とを設けている。塵芥開口部21は、上流堰板20の下端から所定高さの位置まで開口している。遮蔽板22は上下方向にスライド移動することで、塵芥開口部21を開閉する。
本実施例によれば、比重の大きな土砂塵芥12は上流堰板20で堰き止めてスクリーン40上面に流れないため、スクリーン40の破損を防止できる。
また本実施例によれば、上流堰板20で堰き止めた比重の大きな土砂塵芥12を、塵芥開口部21を開いて下流に流すことで、土砂塵芥12の堆積を取り除くことができる。
このように、本実施例では、塵芥開口部21は、通常状態においては閉鎖して比重の大きな塵芥を上流堰板20の上流側に堆積させることができ、必要に応じて塵芥開口部21を開口して土砂塵芥12を流すことができる。
【0021】
また本実施例によれば、塵芥開口部21を開いて水を下流に流すことで、スクリーン40上に堆積、付着した塵芥11を取り除くことができる。水量が極めて少なくなった場合に、貯留槽50内を満水状態に保てず、スクリーン40上に、特にスクリーン40の上流部(上流堰板20から溢水する場所)付近に塵芥11が堆積して付着することがある。この場合に、上流堰板20の開口部21を開くことで、上流堰板20で堰止められていた水が一気に流入することで、スクリーン40の下方からスクリーン40の上方に水が溢れ出すため、スクリーン40上で堆積、付着していた塵芥11をスクリーン40から離脱させて下流に流すことができる。
【0022】
スクリーン40の上面には側面板60を設けている。そして、側面板60によって、スクリーン40の上面に形成する流水幅を水路10の幅よりも狭くしている。また、側面板60によって、幅を狭くしない場合と比較して下流の流水幅を狭くしている。なお、本実施例では、一対の側面板60を用いている。
本実施例によれば、流水幅を水路10の幅よりも狭くすることでスクリーン40上面を流れる水位を高くすることができ、流水が少ない水路10においても塵芥11をスクリーン40に堆積させることなく取水を行うことができる。
また本実施例によれば、幅を狭くしない場合と比較して下流の流水幅を狭くすることで、スクリーン40の上面を流れる水の流速を、上流側より下流側で高めることができ、スクリーン40上面への塵芥11の堆積を防止できる。
【0023】
スクリーン40の下方には導水板70を設けている。本実施例では、導水板70の上流端は、上流堰板20の上端または上流堰板20の上端近傍に位置し、導水板70の下流端は上流堰板20から下流堰板30までの距離の半分よりも上流側に位置している。また、導水板70は、下流側を低くなるように傾斜させた第1底面71と、スクリーン40に平行な第2底面72と、第1底面71および第2底面72の両側に配置する一対の側板73、74とで構成している。
本実施の形態によれば、特に上流堰板20近傍におけるスクリーン40の通水開口部から貯留槽50に流れ込む水の流れ方向を下流側に向けることができる。
なお、本実施例では導水板70を、上流堰板20から下流堰板30までの距離の半分よりも上流側に配置した場合を示したが、水路10との状況に応じて導水板70の位置、角度を変えることで、スクリーン40への塵芥付着を軽減できる。
【0024】
下流堰板30の下流側には、スクリーン40の上面を流れる水を下流に導く導水路80を設けている。そして、導水路80の下方空間に、水車91と発電機92とを配置している。
【0025】
図2を用いて本実施例による取水装置の具体的な構成を説明する。
スクリーン40は底面枠体100の上面に配置される。底面枠体100の上流には上流堰板20を垂下している。また、底面枠体100の上流下方には、導水板70を取り付けている。
底面枠体100の両側部には、一対の側板110を設けている。一対の側板110の間には、一対の側面板60が配置される。一対の側面板60の下流側端部には、間隔調整棒61を有している。間隔調整棒61は、保持部材62の長孔63に挿通されている。間隔調整棒61を長孔63内でスライドさせることで、側面板60の下流側端部の位置を変更することができる。側面板60の下流側端部の位置を変更することで、一対の側面板60の間隔を変更することができる。間隔調整棒61を長孔63内で所定位置にスライドさせた後に、ナットなどの締結部材を用いて間隔調整棒61を保持部材62に固定する。
なお、水路10の用水路幅が、本実施例による取水装置の幅と同じ場合には、水路10の用水路幅を形成する側壁を、一対の側板110として利用することができる。また、図2において、一対の側板110は水路10の用水路幅を形成する側壁を利用する場合を例示しており、側板110は底面枠体100より上部のみ設置している。
図2(c)において、破線引き出し線で示す部材の位置は、破線引き出し線で示す部材の位置に対して、一対の側面板60の間隔を狭めた状態を示している。
本実施例では、下流堰板30を導水路80の前端で垂下させているが、底面枠体100の後端で垂下させてもよい。
【0026】
図3を用いて本実施例による取水装置の下流堰板について説明する。
出水口31は、下流堰板30の下端から所定高さの位置まで開口している。出水口31の両側部には、一対のガイダー33が形成されている。開口調整板34は、一対のガイダー33の間に配置され、一対のガイダー33に沿って上下方向にスライド移動する。開口調整板34には、開口調整ねじ35に対応するナット部36を備えている。開口調整ねじ35は、保持部37によって下流堰板30に保持されている。開口調整ねじ35によって開口調整板34の高さを調整することができる。開口調整機構32は、少なくとも開口調整板34を含み、例えば、開口調整ねじ35、ナット部36、保持部37によって構成され、出水口31の開口面積を調整する。
【0027】
出水口31の下流側には一対の取水導出板93を設けている。一対の取水導出板93は、下流堰板30と水車91との間に配置している。一対の取水導出板93によって、出水口31から導出する水を、水車91のブレードに導いている。
【0028】
図4は本実施例による取水装置を発電装置に適用した構成を示している。ここでも一対の側板110は水路10の用水路幅を形成する側壁を利用する場合を例示しており、側板110は底面枠体100より上部のみ設置している。
水車91は、発電機92とともに、下流堰板30の下流側であって、導水路80の下方空間に配置される。
一対の側板110に沿って補強側板120が更に配置される。発電取付部材94は、補強側板120に固定され、導水路80の側方空間に一対の吊り下げ部材95を備えている。水車91および発電機92は、吊り下げ部材95によって吊り下げられている。
水車91および発電機92を吊り下げ固定する発電取付部材94は、補強側板120から取り外すことができ、塵芥開口部21を開いて土砂塵芥12を下流に流す場合には、出水口31を開放するとともに、発電取付部材94を引き上げることで、土砂塵芥12を下流に流すことができる。
【0029】
本実施例による取水装置を用いた発電装置は、出水口31から流出させる水を用いることで、塵芥11を取り除いた水を発電に用いることができ、発電装置を安定して継続運転することができる。
【0030】
なお、本実施例では、下流堰板30の下方に出水口31を設けて水車91の下方に取水を導くものを示したが、下流堰板30の上方に出水口31を設けて水車91の上方に取水を導くものであってもよい。
また、本実施例では水車91を水路10内に配置したものを示したが、水路10の底面よりも下方位置に水車91を配置してもよく、更には出水口31からの取水を配管によって取り出して水車91に導いてもよい。
【0031】
以下本発明の他の実施例による取水装置について説明する。
図5は本実施例による取水装置を、段差工を設けた水路内に設置した状態を示す側面図である。なお、上記実施例と同一部材には同一符号を付して説明を一部省略する。
【0032】
図5に示すように、本実施例による取水装置は、段差工を設けた水路10内に設置されて用いられる。そして、本実施例による取水装置では、段差部20Aが上流堰板20に相当する。段差部20Aは、高位面20Bと低位面20Cとで形成される。
従って、スクリーン40は、段差部20Aの高位面20Bと下流堰板30の上部との間に配置する。
【0033】
本実施例による取水装置では、上流堰板20として用いる段差部20A、下流堰板30、およびスクリーン40によって貯留槽50が形成される。貯留槽50には、スクリーン40に形成された通水開口部から水が流入する。貯留槽50に流入した水は出水口31から流出させる。出水口31には、出水口31の開口面積を調整する開口調整機構32を設けている。開口調整機構32によって出水口31の開口面積を調整することで、スクリーン40の上面を流れる水の流量を調整することができる。
【0034】
本実施例によれば、開口調整機構32によってスクリーン40の上面を流れる水の流量を調整することで、水路10内を流れる水の流量が少ない場合でも貯留槽50を満水状態に保つことができる。貯留槽50を満水状態に保つことで、スクリーン40の表面の負圧が小さくなり、落ち葉などの塵芥11がスクリーン40の上面に貼り付くことが少なく、塵芥11をスクリーン40に堆積させずにスクリーン40上面を流れる水とともに流すことができる。
【0035】
なお、本実施例においても、スクリーン40の上面には側面板60を設け、側面板60によって、スクリーン40の上面に形成する流水幅を水路10の幅よりも狭くできる。
また、本実施例においても、出水口31から水車(図示せず)の下方に取水を導く構成とすることができ、下流堰板30の上方に出水口31を設けて水車(図示せず)の上方に取水を導く構成とすることができる。水車は、水路10内の低位面20C、または水路10の低位面20Cよりも下方位置に配置できる。また、出水口31からの取水を配管によって取り出して水車に導いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明による取水装置は、発電装置に用いられる他、飲料水用、農業用水用、工業用水用、または生活用水用にも用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
10 水路
11 塵芥
12 土砂塵芥
20 上流堰板
21 塵芥開口部
22 遮蔽板
30 下流堰板
31 出水口
32 開口調整機構
40 スクリーン
50 貯留槽
60 側面板
70 導水板
91 水車
92 発電機
図1
図2
図3
図4
図5