(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388289
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】湿式又は液体の流動体の微小磁性異物除去装置
(51)【国際特許分類】
B03C 1/28 20060101AFI20180903BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20180903BHJP
B03C 1/034 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
B03C1/28
B03C1/00 A
B03C1/00 B
B03C1/034
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-113903(P2016-113903)
(22)【出願日】2016年5月23日
(65)【公開番号】特開2017-209658(P2017-209658A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2017年7月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594107996
【氏名又は名称】株式会社マグネテックジャパン
(72)【発明者】
【氏名】物集 高彦
(72)【発明者】
【氏名】米山 広太
【審査官】
田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−040692(JP,A)
【文献】
実開昭61−011959(JP,U)
【文献】
国際公開第2015/190179(WO,A1)
【文献】
特開2004−255249(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3044299(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 1/00− 1/32
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性異物を含む流動体内の数100nm〜数10μmの微小な磁性異物を除去出来る異物除去装置であって、該装置は、前記流動体の通過する通路とその入口部及び出口部を有するケースと、該ケース内に挿入され外面に複数の突起部を併設し内部に突起部の直前又は直前の近傍に配置されるように構成した磁極を併設したバーマグネットを有するアウターパイプ(鞘管)又は、磁極を併設し磁極の直後又は直後の近傍、かつ外面に複数の突起部を併設する突起付のバーマグネットを有するものからなり、前記突起部は、前記磁極に吸着した前記微小な磁性異物が前記流動体によって剥離される事を防ぐために形成される垂直面からなる正面側を、前記流動体が前記突起部を通過する際、次の前記磁極に前記微小な磁性異物が吸着しやすくなるように前記流動体内の前記微小な磁性異物が分散されやすくするために形成される傾斜面からなる背面側とからなり、前記磁極に前記微小な磁性異物が吸着されやすくなるように前記突起部の頂点と前記ケースの内面との間には微小な隙間が形成されるものからなることを特徴とする湿式又は液体の流動体の微小磁性異物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来技術では強力な磁力を有する磁石を用いても、かつその他の手段を用いても完全除去出来なかった微細な磁性異物をほぼ100%除去出来る湿式又は液体の流動体の微小磁性異物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より微性磁性異物や微小異物を除去する装置としては各種のものが有り、例えば「特許文献1」の如きものや「非特許文献1」の如きものがあるが後に説明する本発明の如き湿式又は液体の流動体の微小磁性異物除去奘置は公知文献としては見当らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
「特許文献1」の「特開2005−40692号」の「固定異物除去機能を有する濾過装置」は流動体の中の微細な異物を除去するもので外観的には本発明に似ている点もあるが磁力を使用するものでなくフィルタ的の機能を有するものである基本的構造において本発明とは相違するものである。
【0005】
「非特許文献1」は
図8に示す構造のものでありケース1内にバーマグネット3を微小隙間を介して挿入したものであるが、この構造では折角バーマグネット側に吸着した異物が流動体の流れに伴って剥がされて流出してしまう問題点があり、微小異物を除去することが出来ない。。
【0006】
一般に磁性異物は微小化するにつけ磁性が弱くなり吸着が出来にくい性質がある。また、磁性の弱い微小異物はマグネット吸着しても流動体によって引き剥がされてしまう問題点がある。
また、流動体の流速が速くなればなるほどまた粘度が高いほど前記の問題点の現象が強くなる。
【0007】
そこで後に詳しく説明するように本発明は突起部やケースとの間のクリアランスを狭くしたり、異物の滞留の効果と異物の分散の容易化を計って異物を磁界内に滞留させて異物除去効果を促進し、前記の問題点を解決することを目的とした異物除去装置を創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以上の目的を達成するために開発されたものであり、請求項1の発明は、磁性異物を含む流動体内の数100nm〜数10μmの微小な磁性異物を除去出来る異物除去装置であって、該装置は、前記流動体の通過する通路とその入口部及び出口部を有するケースと、該ケース内に挿入され外面に複数の突起部を併設し内部に突起部の直前又は直前の近傍に配置されるように構成した磁極を併設したバーマグネットを有するアウターパイプ(鞘管)又は、磁極を併設し磁極の直後又は直後の近傍、かつ外面に複数の突起部を併設する突起付のバーマグネットを有するものからなり、前記突起部は、前記磁極に吸着した前記微小な磁性異物が前記流動体によって剥離される事を防ぐために形成される垂直面からなる正面側と、前記流動体が前記突起部を通過する際、次の前記磁極に前記微小な磁性異物が吸着しやすくなるように前記流動体内の前記微小な磁性異物が分散されやすくするために形成される傾斜面からなる背面側とからなり、前記磁極に前記微小な磁性異物が吸着されやすくなるように前記突起部の頂点と前記ケースの内面との間には微小な隙間が形成されるものからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1の湿式又は液体の流動体の微小磁性異物除去装置によれば、入口部と出口部を有するケース内に複数の突起部を併設したアウターパイプやバーマグネットを配設しこの突起部の前面側に垂直面又はほぼ垂直な面(垂直面等と仮称する)を形成し流動体の滞留時間を促進すると共に背面側に傾斜面を形成し異物の分散を促進させ異物の除去の効率化を計ると共にケースとのクリアランスを微小化して流動体の流速を制限し、更に垂直面等を磁極の直後又は直後の近傍に配設して吸着した異物の引き剥きを防止する効果を上げることが出来る。
また、アウターパイプの構造を設けることにより異物の清掃作業の効果を計ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明の湿式又は液体の流動体の微小磁性異物除去装置のケースの構造を示す軸断面図。
【
図3】本発明の湿式又は液体の流動体の微小磁性異物除去装置のアウターパイプを示す平面図。
【
図4】アウターパイプ内に挿入されるバーマグネットを示す平面図。
【
図5】アウターパイプの外周に形成されている突起部の形状とその配置を示す部分断面図。
【
図6】本発明の湿式又は液体の流動体の微小磁性異物除去装置の異物除去作用を説明するための説明用断面図。
【
図7】突起付磁石を有する磁性物除去装置の部分的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の湿式又は液体の流動体の微小磁性異物除去装置の実施の形態を図面を参照して詳述する。
【実施例1】
【0012】
図1に示すように、本発明の湿式又は液体の流動体の微小磁性異物除去装置100は、細長なケース1とこの中に収納されているアウターパイプ(鞘管)2と図示では明確ではないがアウターパイプ2内に密接して収納されているバーマグネット3等とから構成されている。
【0013】
図2はケース1の全体構造を示すものである。ケース1は細長なパイプ部1aと流動体(図略)の出入する入口部1bと出口部1cとを有し、パイプ部1aは一方側(図示では左側)に開放口1dが設けられている。
【0014】
図3に示すように、アウターパイプ2はケース1の開放口1dから挿入される細長なパイプ状のものからなり、その軸部2aには突起4aを頂部に形成する突起部4がリング状に等間隔で多数個配列されている。また、アウターパイプ2はその一端(図示では右側)が閉止され他端(図示では左側)は開放されたものでケース1内の所定位置に挿入されるようにフランジ2bが設けられ他端には内部に収納される
図4のバーマグネットの挿入位置を決めるためのフランジ2cが形成されている。
【0015】
図4は
図3のアウターパイプ2内に挿入されるバーマグネット3を示す。このバーマグネット3は図略されているが磁極5(
図6)とマグネット6とを交互に配置したものからなり、アウターパイプ2への挿入位置を決めるためのフランジ3aと把持部3bとを有するものからなる。
【0016】
図5は
図1の丸印のA部の拡大図であり本発明の主要部の構造の一実施例を示すものである。アウターパイプ2には図示のように外周から出っ張り頂部に鋭角に突出する突起4aを有する突起部4が複数個等間隔で配列される。この突起部4は流動体の流れ方向の前面側に垂直面等有し後方側に傾斜面を有するほぼ垂直の三角形の如き形状からなる。また、この突起4aとケース1の内面との間には微小隙間7が形成されている。また、アウターパイプ2の内部には
図4に示したバーマグネット3が密接して挿入されている。
【0017】
図6は本発明の作用を示すものである。ケース1内に入口部1bにより導入された磁性異物を含む流動体はまず垂直面等に当り、
図6に示すように滞留11が生じ流動体の磁性異物9が磁極5に吸着する。次に、流動体は突起4aとケースとの間の微小隙間7を通過するがこの際に図示のように渦流8が発生する。この渦流8の発生と突起部4の傾斜面により流動体内の磁性異物9が分散され次の突起部4の垂直面等に当り磁極5に吸着される。この現象により湿式又は液体の流動体の磁性異物9が除去される。この分散された磁性異物9は図示のようにその根本に吸着される。この分散された磁性異物9は突起部4の下方に磁極5が配置されているためアウターパイプ2側に強く吸着して剥がされることなく、結果として流動体は磁性異物9を分離した状態で出口部1cから吐出されることになる。
この結果、従来技術では除去出来なかった微小の磁性異物9が除去されると共に更に遥かに小さい磁性異物9も流動体から除去されることになる。
以上のように、本発明の湿式又は液体の流動体の微小磁性異物除去装置100によれば、従来技術にない磁性異物9の除去が可能となる素晴らしい効果を上げることが出来る。
【実施例2】
【0018】
図7は実施例1とはやや相異する湿式又は液体の流動体の微小磁性異物除去装置の部分的断面図を示す。
このものは実施例1のようにアウターパイプ2に突起部4を設けたものではなく、磁石そのものに突起部4を形成したものである。即ち、突起付磁石10を設けたものである。この突起付磁石10も前記のバーマグネット3の磁力と同様に高い磁性力を有するものである。
この突起付磁石10の突起部4の突起4aをケース1の内面に微小隙間7を介して配置する事により実施例1とほぼ同様の効果を上げる事が出来る。なお、微小隙間としては、例えば1mm程度のものからなる。なお、このものには図示のように磁極5が併設されておりこのバーマグネットは突起付のバーマグネットとも言うべきものである。
【0019】
本発明は、以上の内容のものからなるが、その内容は以上のものに限定するものではなく、同一技術的範疇のものが適用されることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、磁性異物を含む流動体の全てから微小異物を除去する効果があり、構造も簡単であり、適用範囲は広く、利用可能性は極めて高い。
【符号の説明】
【0021】
1 ケース
1a パイプ部
1b 入口部
1c 出口部
1d 開放口
2 アウターパイプ(鞘管)
2a 軸部
2b フランジ
2c フランジ
3 バーマグネット
3a フランジ
3b 把持部
4 突起部
4a 突起
5 磁極
6 マグネット
7 微小隙間
8 渦流
9 磁性異物
10 突起付磁石
11 滞留
100 湿式又は液体の流動体の微小磁性異物除去装置