【実施例1】
【0019】
図1(a)、(b)は、本発明に係るヒンジ装置を用いた情報端末の一例としてのノートパソコン1を示す。このノートパソコン1は、キーボード部2aを設けた第1筐体2と、ディスプレイ部3aを設けた第2筐体3の各後部の左右個所を本発明に係る一対のヒンジ装置4と5で開閉可能に連結されている。
【0020】
ヒンジ装置4と5の構成は、両者共に同じであるので、その一方の指示記号4のもののみを説明し、他方の指示記号5で示したものの説明は省略する。勿論、動作に支障がない場合には、指示記号5で示したヒンジの構造を別なものとしても良い。尚、本発明においてヒンジ装置4或は5の選択的回転規制手段、フリクショントルク発生手段、ストッパー手段、吸い込み手段等の構成は一例であり、以下に説明するものに限定されない。
【0021】
図2〜
図14は、ヒンジ装置4の一実施例を示す。図面において、指示記号10で示したものは、第1ヒンジシャフトであり、この第1ヒンジシャフト10は、とくに
図5に示したように、その一端部側から断面略台形状を呈し取付孔10b、10bを有する
断面扁平な形状を有する取付軸部10aと、この取付軸部10aに続いて設けられたところの外周に係合凹部10cを有するフランジ部10dと、このフランジ部10dに続いて設けられたところの断面略楕円形状を呈した第1変形軸部10eと、この第1変形軸部10eに続いて設けられたところの当該第1変形軸部10eよりも小径の同じく断面略楕円形状を呈して成る第2変形軸部10fとを有している。
【0022】
取付軸部10aには、第1取付プレート11が取り付けられており、この第1取付プレート11の取付軸部10aへの取付方法は、第1ヒンジシャフト10の取付孔10b、10bと第1取付プレート11の取付孔11a、11aを通したフランジ部付の取付ピン10g、10g・・の端部をかしめることによってなされている。そして、第1取付プレート11は、当該第1取付プレート11に設けた取付孔11b、11b・・を介して、とくに
図2に示したように、取付ネジ3c、3c、3cを用いて第2筐体3へ取り付けられる構成である。
【0023】
次に、指示記号12で示したものは、第1ヒンジシャフト10に対して上下方向へ平行に配置した第2ヒンジシャフトであり、この第2ヒンジシャフト12は、とくに
図5に示したように、その一端部側から、断面略台形状を呈し、取付孔12b、12bを有する
断面扁平な形状を有する取付軸部12aと、この取付軸部12aに続いて設けられたところの外周に係合凹部12cを有するフランジ部12dと、このフランジ部12dに続いて設けられたところの断面略楕円形状を呈した第1変形軸部12eと、この第1変形軸部12eに続いて設けられたところの第1変形軸部12eよりも小径の同じく断面略楕円形状を呈して成る第2変形軸部12fとを有している。
【0024】
取付軸部12aには、第2取付プレート13が取り付けられており、この第2取付プレート13の取付軸部12aへの取付方法は、第2ヒンジシャフト12の取付孔12b、12bと第2取付プレート13の取付孔13a、13aを通したフランジ部付の取付ピン12g、12gの端部をかしめることによってなされている。そして、第2取付プレート13は、当該第2取付プレート13に設けた取付孔13b、13b・・を介して、とくに
図2に示したように、取付ネジ4c、4c・・を用いて第2筐体3へ取り付けられる構成である。第1取付プレート11と第2取付プレート13を第1筐体2と第2筐体3へ取り付けることにより、第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12は、その軸方向に対して垂直にかつ平行に配置される構成である。
【0025】
指示記号14で示したものがヒンジケースであり、このヒンジケース14の中に第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12の各フランジ部10d、12dから先の部分が取付軸部10a、12aの部分を残して収容されている。
【0026】
ヒンジケース14は、とくに
図2乃至
図6に示したように、断面長孔形状を示した筒状のものであり、その内部に第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12に装備した後述する選択的回転規制手段15、フリクショントルク発生手段16、吸い込み手段17及びストッパー手段19が収容され、とくに
図6に示したように、ヒンジケース14内に設けた雌ネジ部14bを設けた隔壁14aに選択的回転規制手段15の連結部材20がその中央部を、とくに
図7に示したように、取付ネジ18で固定される構成である。このヒンジケース14は、とくに
図1と
図2に示したように、第1筐体2と第2筐体3に設けた収容凹部2bと3b内に収容されている。
【0027】
本発明に係る制振手段6は、第1ヒンジシャフト10側の第1制振手段7と、第2ヒンジシャフト12側の第2制振手段8とから成る。
【0028】
第1制振手段7は、第1ヒンジシャフト10の取付軸部10aと第1取付プレート11との間に設けられた帯状の弾性部材から成る第1A制振部材7aと、この第1A制振部材7aを介して第1取付プレート11を取付軸部10aに取り付ける取付ピン10g、10g・・と取付軸部10aとの間に介在された弾性部材から成るワッシャー形状の第1B制振部材7bと、第1取付プレート11を第2筐体3へ取り付ける際に、当該第1取付プレート11と第2筐体3の間に介在された弾性部材から成る変形プレート状の第1C制振部材7cとで構成されている。これらの第1A〜第1C制振部材7a〜7cは、合成樹脂、ゴム、板バネ、皿バネ等の弾性を有するもの、粘着性の振動を吸収できる性質を有するものなどを適宜選択することができる。尚、第1A制振部材7aと第1B制振部材7bには、それぞれ取付ピン10g、10gを挿通させる挿通孔7d、7d・7e、7eが設けられ、第1C制振部材7cには、取付ネジ3c、3c、3cを挿通させる挿通孔7f、7f、7fが設けられている。また、各挿通孔7d、7e、7fの数に限定はない。
【0029】
第2制振手段8は、第2ヒンジシャフト12の取付軸部12aと第2取付プレート13との間に設けられた帯状の弾性部材から成る第2A制振部材8aと、この第2A制振部材8aを介して第2取付プレート13を取付軸部12aに取り付ける取付ピン12g、12gと取付軸部12aとの間に介在された弾性部材から成るワッシャー形状の第2B制振部材8bと、第2取付プレート13を第1筐体2へ取り付ける際に、当該第2取付プレート13と第1筐体2の間に介在された弾性部材から成る矩形プレート状の第2C制振部材8cとで構成されている。尚、第2A制振部材8aと第2B制振部材8bには、それぞれ取付ピン12g、12gを挿通させる挿通孔8d、8d・8e、8eが設けられ、第2C制振部材8cには、取付ネジ2c、2cを挿通させる挿通孔8f、8fが設けられている。また、各挿通孔8d、8e、8fの数に限定はない。以上の第2A〜第2C制振部材8a〜8cは、第1A制振部材〜第1C制振部材7a〜7cと同じように、合成樹脂、ゴム、板バネ、皿バネ等の弾性を有するもの、粘着性の振動を吸収できる性質を有するものなどを適宜選択することができる。
【0030】
次に、回転制御手段の一つを構成する選択的回転規制手段15について説明する。この選択的回転規制手段15は、連結部材20とロック部材21とスライドガイド部材22と一対の第1ロックカム部材23及び第2ロックカム部材24とから構成されている。連結部材20は上部と下部の略円盤形状を呈した第1軸受部20a及び第2軸受部20bと、この第1及び第2軸受部20a、20b間をつなぐ連結部20cとを有する側面略瓢箪形状のもので、第1軸受部20a及び第2軸受部20bには、それぞれ断面円形状の第1軸受孔20k及び第2軸受孔20mが設けられ、この第1軸受孔20k及び第2軸受孔20mに第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12のそれぞれの第2変形軸部10f、12fを挿通させて回転自在に軸受する構成である。連結部20cには、雌ネジ部20eを設けた突起部20dが設けられ、この突起部20dは、上述したように取付ネジ18によって、ヒンジケース14の隔壁14aへ取り付けられる構成である。また、連結部20cは、上部側と下部側に第1カム凸部21aと第2カム凸部21bを設けたロック部材21の係合用溝部21c内に嵌入され、ロック部材21の上下方向のスライド動作を許容している。
【0031】
スライドガイド部材22は、連結部材20と同じように、上部と下部に略円盤形状を呈した第1軸受部22aと第2軸受部22bと、この第1軸受部20a及び第2軸受部20b間をつなぐ連結部22cを有する瓢箪形状のもので、第1軸受部22aと第2軸受部22bには、第1軸受孔22d及び第2軸受孔22eが設けられ、これらの第1軸受孔22dと第2軸受孔22eに第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12の第1変形軸部10eと12eが回転可能に挿通されて回転可能に軸受される構成である。連結部22cは、ロック部材21のもう一方の係合用溝部21d内に嵌入され、ロック部材21の上下方向のスライド動作を許容している。第1軸受部22aと第2軸受部22bには、第1軸受孔22dと第2軸受孔22eの周囲を削除することにより第1ストッパー部22fと第2ストッパー部22gが設けられている。
【0032】
そして、ロックカム部材は上下一対のもので、上側の第1ロックカム部材23と下側の第2ロックカム部材24には、それぞれ変形挿通孔23a、24aが設けられ、この変形挿通孔23a、24aへ第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12の各第1変形軸部10e、12eが挿通係合されることにより、この第1ロックカム部材23と第2ロックカム部材24は、第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12にそれぞれ回転を拘束されて取り付けられている。この第1ロックカム部材23と第2ロックカム部材24は、それぞれ外周に軸方向両端部に達する第1カム凹部23bと第2カム凹部24bが設けられていると共に、組み立てた際にスライドガイド部材22側に位置する側には、その回転角度によって、スライドガイド部材22に設けた第1ストッパー部22fと第2ストッパー部22gとに当接する第1ストッパー片23cと第2ストッパー片24cが設けられている。そして、その第1ロックカム部材23と第2ロックカム部材24は、連結部材20とスライドガイド部材22の間に挟まれると共に、ロック部材21を挟んでその上部側と下部側に位置しており、それぞれの第1カム凹部23bと第2カム凹部24bは、ロック部材21の第1カム凸部21aと第2カム凸部21bとその回転角度により対向して嵌合する構成である。
【0033】
次に、回転制御手段の一つを構成するフリクショントルク発生手段について説明する。このフリクショントルク発生手段16は、第1ヒンジシャフト10側の第1フリクショントルク発生手段16aと、第2ヒンジシャフト12側の第2フリクショントルク発生手段16bから成るが、ここではまとめて説明する。このフリクショントルク発生手段16は、上部と下部に第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12の各々の第1変形軸部10e、12eを回転可能に挿通させた第1軸受孔25aと第2軸受孔25bを有しているところの、スライドガイド部材22とフランジ部10d、12dの間に設けられたフリクションプレート25と、外周にフランジ部10d、12dに設けた係合凹部10c、12cと係合する係止片26b、27bを有し、その軸心部軸方向に設けた変形係合孔26aと27aへ第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12の各第1変形軸部10e、12eを回転可能に挿通係合させて、フランジ部10d、12dとフリクションプレート25との間に介在させた第1Aフリクションワッシャー26と第1Bフリクションワッシャー27と、中心部軸方向に第1ヒンジシャフト10及び第2ヒンジシャフト12の各第1変形軸部10e、12eを挿通係合させた変形挿通孔28a、29aを有し、フリクションプレート25とスライドガイド部材22との間に介在された第2Aフリクションワッシャー28及び第2Bフリクションワッシャー29と、スライドガイド部材22を介してフリクションプレート25へ第1Aフリクションワッシャー26及び第1Bフリクションワッシャー27と第2Aフリクションワッシャー28及び第2Bフリクションワッシャー29を圧接させる後述する第1弾性手段32と第2弾性手段33とで構成されている。
【0034】
次に、同じく回転制御手段の一つを構成する吸い込み手段17は、上側の第1ヒンジシャフト10側の第1吸い込み手段17aと、下側の第2ヒンジシャフト12側の第2吸い込み手段17bとから成るが、ここではまとめて説明する。この吸い込み手段17は、その中心部軸方向に設けた変形挿通孔30a、31aへ第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12の第2変形軸部10f、12fを挿通係合させると共に、その側面の外側と内側に設けた大小の第1A湾曲カム凸部30b及び第1B湾曲カム凸部30cと第2A湾曲カム凸部31b及び第2B湾曲カム凸部31cを、連結部材20の各第1及び第2軸受部20a、20bの側面部の外側と内側に設けた大小の第1A湾曲カム凹部20f及び第1B湾曲カム凹部20gと第2A湾曲カム凹部20h及び第2B湾曲カム凹部20iと対向させて設けられた第1カムフォロワー30及び第2カムフォロワー31と、この第1カムフォロワー30と第2カムフォロワー31に接してその中心部軸方向に設けた挿通孔32b、33bへ第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12の各第2変形軸部10f、12fを挿通させて設けた複数の皿バネ32a、32a・・・・33a、33a・・・・からなる第1弾性手段32及び第2弾性手段33と、この第1弾性手段32と第2弾性手段33に接してその中心部軸方向に設けた変形挿通孔34a、35aに第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12の第2変形軸部10fと第2変形軸部12fを挿通係合させて設けた第1押えワッシャー34と第2押えワッシャー35と、第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12の各第2変形軸部10f、12fの自由端部側に設けた第1雄ネジ部10hと第2雄ネジ部12hに捻子着させた第1締付ナット36と第2締付ナット37とで構成されている。
【0035】
そして、同じく回転制御手段の一つを構成するストッパー手段19も、第1ヒンジシャフト10側の第1ストッパー手段19aと、第2ヒンジシャフト12側の第2ストッパー手段19bとから成るが、ここではまとめて説明する。このストッパー手段19は、第1ロックカム部材23及び第2ロックカム部材24に設けた第1ストッパー片23c及び第2ストッパー片24cと、スライドガイド部材22の第1軸受部22a及び第2軸受部22bに設けた第1ストッパー部22f及び第2ストッパー部22gとで構成されており、第1筐体2と第2筐体3の閉成状態の位置と全開成状態(共に180度)の位置を規制するものである。
【0036】
次に、上記した本発明に係るヒンジ装置4の動作について以下に説明する。まず、第1筐体2と第2筐体3が閉じられた
図1の(b)に示した状態においては、
図3と
図15に示したように、各第1取付プレート11と第2取付プレート13は同一方向を向いており、
図15に示したように、第1ロックカム部材23の第1カム凹部23bは上側に位置し、その外周がロック部材21の第1カム凸部21aと当接し、第2ロックカム部材24の第2カム凹部24bがロック部材21の第2カム凸部21bと嵌合状態にあるので、この第1筐体2と第2筐体3の閉成状態においては、第1ヒンジシャフト10は回転可能であるが、第2ヒンジシャフト12は回転させることができないことになる。したがって、第1筐体2と第2筐体3の閉成状態においては、選択的回転規制手段15により第2筐体3のみが第1筐体2に対して開閉することが可能である。
【0037】
そこで、第2筐体3を第1筐体2に対して開くと、第1ヒンジシャフト10が共に回転し、ロック部材21の上側の第1カム凸部21aが第1ロックカム部材23の外周に当接しつつ開かれることになるので、この第2筐体3の開閉操作時には、選択的回転規制手段15により、第1筐体2を第2ヒンジシャフト12と共に回転させることはできない。続いて第2筐体3を第1筐体2に対して開いて行くと、最初は第1吸い込み手段17aの第1カムフォロワー30の第1A湾曲カム凸部30b及び第1B湾曲カム凸部30cが連結部材20に設けた第1A湾曲カム凹部20f及び第1B湾曲カム凹部20gを脱する際の抵抗に遭遇するが、第1A湾曲カム凸部30bと第1B湾曲カム凸部30cが第1A湾曲カム凹部20fと第1B湾曲カム凹部20gを脱出することによって、第2筐体3は第1筐体2に対して開かれ、その際に、第1フリクショントルク発生手段16aの上部の第1Aフリクションワッシャー26と、同じく上部の第2Aフリクションワッシャー28とフリクションプレート25との間にフリクショントルクが発生することから、第2筐体3は第1筐体2に対してフリーストップに開かれ、任意の開閉角度で第2筐体3を第1筐体2に対して停止保持させることが可能となるものである。
【0038】
このようにして、第2筐体3を第1筐体2に対してフリーストップに開いて行くと、180度開いたところで、
図16に示したことから解るように、第1ストッパー手段19aの第1ロックカム部材23の第1ストッパー片23cがスライドガイド部材22の第1ストッパー部22fに当接することにより、第1ヒンジシャフト10の回転は規制されるので、第2筐体3は第1筐体2に対して180度開かれたところで停止する。すると、同時に第1ロックカム部材23の第1カム凹部23bが、
図16に示したように、180度回転してロック部材21の第1カム凸部21aの位置に来て、両者の間に間隙aが生じるので、第1筐体2の回転(開閉)が許容される状態となる。
【0039】
尚、第2筐体3の第1筐体2に対する180度の開成位置から、閉じようとすれば、それは問題なく閉じられる。即ち、第2筐体3を第1筐体2に対して閉じ方向へ回転させると、第1ヒンジシャフト10と共に回転する第1ロックカム部材23の第1カム凹部23bとロック部材21の第1カム凸部21aとの間には間隙aが存在するので、第2筐体3は第1筐体2に対して閉じることが可能である。一度第2筐体3を第1筐体2に対して閉方向へ回転させると、その外周が第1カム凸部21aと当接することになるので、ロック部材21の第2カム凸部21bは第2ヒンジシャフト12に固定させた第2ロックカム部材24の第2カム凹部24bと嵌合状態のままとなり、この第2筐体3の閉成操作時においても、第1筐体2の回動動作は規制される。
【0040】
このように第2筐体3は第1筐体2に対して0度から180度の間で自由に開閉でき、その間、選択的回転規制手段15により、第1筐体2の回転は規制されたままである。
【0041】
次に、第1筐体2は、
図1(b)に示したような第2筐体3との間の閉成状態のときには、上記したように第1ロックカム部材23の外周が、ロック部材21の第1カム凸部21aと当接しているため、開閉操作を行うことはできないが、第2筐体3を180度開いた後は、開かれた第2筐体3とは逆方向に回転して180度まで回転することが可能となる。即ち、第2筐体3を180度回転させると、
図16に示したように、第1ロックカム部材23の第1カム凹部23bが、180度回転してロック部材21の第1カム凸部21aと対向しており、両者の間には間隙aが生じているので、第2ヒンジシャフト12に回転を規制して取り付けられている第2ロックカム部材24の回転が可能となり、第1筐体2が回転すると、当該第2ロックカム部材24の外周がロック部材21の第2カム凸部21bと当接することになるので、第2筐体3の閉成操作はできなくなる。
【0042】
そこで、第1筐体2を第2筐体3に対して第2筐体3のときとは反対方向へ回転させると、第2ヒンジシャフト12が共に回転し、ロック部材21の下側の第2カム凸部21bが第2ロックカム部材24の外周に当接しつつ開かれることになるので、選択的回転規制手段15により、第2筐体3は閉方向へ回転させることができなくなる。第1筐体2を第2筐体3に対して回転させて行くと、最初は第2吸い込み手段17bの第2カムフォロワー31の第2A湾曲カム凸部31bと第2B湾曲カム凸部31cが、連結部材20に設けた第2A湾曲カム凹部20hと第2B湾曲カム凹部20iを脱する際の抵抗に遭遇するが、第2カムフォロワー31の第2A湾曲カム凸部31bと第2B湾曲カム凸部31cが第2A湾曲カム凹部20hと第2B湾曲カム凹部20iを脱出することによって、第1筐体2は第2筐体3に対して回転し、その際に、第2フリクショントルク発生手段16bの下部の第2Bフリクションワッシャー29及び同じく下部の第1Bフリクションワッシャー27とフリクションプレート25との間にフリクショントルクが発生することから、第1筐体2は第2筐体3に対してフリーストップに回転し、任意の回転(開閉)角度で第1筐体2を第2筐体3に対して停止保持させることが可能となるものである。
【0043】
このようにして、第1筐体2を第2筐体3に対して第2筐体3の開成方向とは反対の方向へフリーストップに回転させて行くと、180度回転させたところで、
図17に示したことから解るように、第2ストッパー手段19bを構成する第2ロックカム部材24の第2ストッパー片24cが、スライドガイド部材22の第2ストッパー部22gに当接することにより、第2ヒンジシャフト12の回転は規制されるので、第1筐体2は第2筐体3に対して180度開かれたところで停止する。この状態が、ちょうど第1筐体2と第2筐体3が互いに重なり合った状態である。
【0044】
尚、第1筐体2を第2筐体3に対する180度の開成位置より、元位置に戻そうとすれば、それは問題なく戻せる。即ち、
図17に示した状態より、第1筐体2を第2筐体3に対して閉じ方向へ回転させると、第2ヒンジシャフト12と共に回転する第2ロックカム部材24の外周は、ロック部材21の第2カム凸部21bと当接した状態にあり、ロック部材21の第1カム凸部21aは第1ヒンジシャフト10に固定させた第1ロックカム部材23の第1カム凹部23bと嵌合状態のままであるので、第1筐体2を元位置の方向へ回転させることが可能となる。この際には、第2筐体3は、第1ヒンジシャフト10に固定させた第1ロックカム部材23の第1カム凹部23bが、ロック部材21の第1カム凸部21aと嵌合状態のままであるので、第2筐体3の開閉操作は規制されたままである。
【0045】
このように第1筐体2は、第2筐体3が180度開かれた状態においては、第2筐体3に対して0度から180度の間で自由に回転させることができ、その間、第2筐体3の開閉操作は選択的回転規制手段15により規制されたままである。以上の説明から明らかなように、第2筐体3と第1筐体2は、選択的回転規制手段15により選択的に開閉され、一方の開閉操作時には他方の開閉操作は規制される。
【0046】
そして、第2筐体3を第1筐体2に対して開き、180度までの所定の開成角度で第2筐体3のディスプレイ部3aに対して手指でタッチ操作する場合、或は第2筐体3を第1筐体2に対して180度開いた状態の後、さらに第1筐体2を第2筐体3に対して180度反対方向へ開いて行く途中の開成角度において、第2筐体3のディスプレイ部3aに対し同じく手指でタッチ操作する場合には、その際にディスプレイ部3aに生じる振動は、制振手段6を構成する第1制振手段7と第2制振手段8によって抑えられるので、画面が視認しにくかったり、操作者にそのことによる疲労感を与えたりするのを防止できるという効果を奏し得る。
【0047】
制振手段6は、上述した構成の第1制振手段7と第2制振手段8で構成することが最も望ましいが、第1制振手段7と第2制振手段8のどちらか一方のみを採用することも可能である。また、第1制振手段7の第1A制振部材7a、第1B制振部材7b、及び第1C制振部材7cの一部、或は第2制振手段8の第2A制振部材8a、第2B制振部材8b、及び第2C制振部材8cの一部は、必要に応じて省略することも可能である。
【0048】
よって、以上の説明から明らかなように、本願発明に係るヒンジ装置4は、第1筐体2と第2筐体3をそれぞれ第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12を介して交互に180度ずつ回転させて合計で360度の開閉操作を可能としたものであるが、その開閉角度にとくに限定はない。
【0049】
そして、ノートパソコンをそれ本来の用い方で用いることができた上で、第1筐体を第2筐体に対して同一方向に折り曲げて、略L時形状にしたり、山形状にしたり、重ね合わせて平板状としたりして、第2筐体を操作者側に向けてタブレットとして種々多様な用い方をすることができるものである。
【0050】
以上の説明から明らかなように、本発明は以上説明したもの以外に、例えば、第1及び第2弾性手段32、33をフリクショントルク発生手段16と吸い込み手段17の両機構に作用せしめることが可能となったので、効率の良いものとなっており、かつ、ロック部材21と第1及び第2ロックカム部材23、24をその外形を用いたり、吸い込み手段17のカム形状を任意に変えることが容易となって、カム特性の設計が容易となったため、第2筐体3の第1筐体2に対する開成角度を特定の角度においてふらつきの生じないようにしたり、特定の開成角度において吸い込み機能をもたせることもできるものである。
【0051】
尚、その他の実施例としては、連結部材20に設ける各第1A湾曲カム凹部20f及び第1B湾曲カム凹部20gと第2A湾曲カム凹部20h及び第2B湾曲カム凹部20iと、第1カムフォロアー30や第2カムフォロアー31に設ける第1A湾曲カム凸部30b及び第1B湾曲カム凸部30cと第2A湾曲カム凸部31b及び第2B湾曲カム凸部31cは、これらを連結部材20と第1及び第2ロックカム部材23、24の軸心部から外周へ放射状に設けたカム凸部とカム凹部に変えることは可能である。また、複数の皿バネ32aや33aから成る第1及び第2弾性手段32、33は、これをスプリングワッシャー、圧縮コイルスプリング、弾性を備えたゴムを始とする合成樹脂製のものなどに代えることができ、第1及び第2締付ナット36、37は、第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト12の端部をかしめることによって代えることが可能である。さらに、各第1カム凹部23b及び第2カム凹部24bの設置位置を変えることにより、第1筐体2が第2筐体3より先に開閉することができるように構成することも可能である。また、ヒンジケース14は、これがなくともとくにヒンジ装置4、5の機能に支障は生じないが、このヒンジケース14があると、ヒンジ装置4を情報端末1へ取り付けた際に選択的回転規制手段15や、フリクショントルク発生手段16、吸い込み手段17等が外部へ露出することがないので、外観上すっきりとしたものになるという利点がある。