特許第6388310号(P6388310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388310
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】セメント添加剤
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/18 20060101AFI20180903BHJP
   C04B 103/30 20060101ALN20180903BHJP
【FI】
   C04B24/18 Z
   C04B103:30
【請求項の数】4
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-254333(P2014-254333)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2015-163571(P2015-163571A)
(43)【公開日】2015年9月10日
【審査請求日】2017年10月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-15406(P2014-15406)
(32)【優先日】2014年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、農林水産省「木質リグニンからの材料製造技術の開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】501186173
【氏名又は名称】国立研究開発法人森林研究・整備機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 竜彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 史帆
(72)【発明者】
【氏名】服部 真美
(72)【発明者】
【氏名】森本 正和
【審査官】 永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−53010(JP,A)
【文献】 特開2011−240224(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/033464(WO,A1)
【文献】 本間春海ほか,各種単離リグニンから調製した両親媒性誘導体の性状,第44回高分子学会北海道支部研究発表会 講演要旨集,2010年 1月,p.10(O3)
【文献】 本間春海ほか,高界面活性リグニン誘導体の調製とその分散性能の評価,日本木材学会北海道支部講演集第41号,2009年,p.17-20(A-6)
【文献】 本間春海,外6名,両親媒性リグニンの調整及びセメント分散剤としての評価,第54回リグニン討論会講演集,日本,第54回リグニン討論会事務局,2009年10月15日,第162-163頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B7/00−32/02
C04B40/00−40/06
C04B103/00−111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグニン部位とポリアルキレングリコール部位とを必須とするリグニン誘導体を含むセメント添加剤であって、
該リグニン誘導体は、ポリアルキレングリコール部位を構成するアルキレンオキサイドの平均付加モル数が10を超え、ポリアルキレングリコール部位とリグニン部位とのモル比率が0.1〜20であり、かつ、数平均分子量が6000〜20万、分子量分布が1.0〜3.5である
ことを特徴とするセメント添加剤。
【請求項2】
前記ポリアルキレングリコール部位を構成するアルキレンオキサイドの平均付加モル数は、30以上であることを特徴とする請求項1に記載のセメント添加剤。
【請求項3】
前記ポリアルキレングリコール部位とリグニン部位とのモル比率は、1.0〜13であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセメント添加剤。
【請求項4】
前記リグニン誘導体の分子量分布は、1.0〜2.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセメント添加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リグニン誘導体を含有するセメント添加剤に関する。より詳しくは、セメントや石膏などのセメント組成物やその他の水硬性材料に有用なセメント添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
リグニンは、木材等の植物系バイオマスの3大主成分のうちの一つ(3大主成分:セルロース、ヘミセルロース、リグニン)であり、天然の芳香族ポリマーとして地球上に最も豊富に存在している。リグニンの構造については、光合成において合成されるp−クマリルアルコール・コニフェニルアルコール・シナピルアルコールという3種類の基本骨格であるリグニンモノマーが、一電子酸化され、フェノキシラジカルとなり、これが不定形にラジカルカップリングすることにより、複雑な三次元網目構造をとっている。
【0003】
上述のように、リグニンの分子構造は複雑であり、また、植物体から単離する際の単離方法によりリグニンの化学的特性が大きく変化することから、リグニンの工業材料としての利用は限られている。さらに、リグニンは、基本的には疎水性物質であり、難水溶性であることも、その利用が限られる1つの原因となっている。
【0004】
リグニンの利用の一例として、疎水性のリグニンに親水性基を導入した両親媒性のリグニン誘導体をコンクリート用混和剤や界面活性剤として利用することが開示されている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−184230号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】本間 春海(H HOMMA)他4名「ジャーナル オブ ウッド ケミストリー アンド テクノロジー(Journal of Wood Chemistry and Technology)」、(英国)、2008年、第28巻、p270−282
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにリグニンに親水性を付与し、それによって水溶性用途への展開を図ることが模索されている。
しかしながら、両親媒性のリグニン誘導体がその用途に充分に適しているといえる程の性能を発揮するものとはなっていない。そのため、親水性が要求される用途の一つであるセメント添加剤用途においては、セメント減水性等の性能を高め、当該用途において際立った性能を発揮できるようにする工夫の余地があった。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、従来のリグニン誘導体よりも、少量の添加量でも充分な減水性能を発揮したり、セメント分散性の保持性能を向上したりすることができるセメント添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、リグニン部位とポリアルキレングリコール部位とを有するリグニン誘導体に着目し、ポリアルキレングリコール部位の構造、両部位のモル比率、数平均分子量及び分子量分布が相まってセメント添加剤としての性能に影響を及ぼし、これらを好適化することによってセメント減水性能や分散保持性能が向上し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0010】
すなわち本発明は、リグニン部位とポリアルキレングリコール部位とを必須とするリグニン誘導体を含むセメント添加剤であって、上記リグニン誘導体は、ポリアルキレングリコール部位を構成するアルキレンオキサイドの平均付加モル数が10を超え、ポリアルキレングリコール部位とリグニン部位とのモル比率が0.1〜20であり、かつ、数平均分子量が6000〜20万、分子量分布が1.0〜3.5であるセメント添加剤である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0011】
<リグニン誘導体>
本発明のリグニン誘導体は、リグニン部位とポリアルキレングリコール部位とを必須とする。これらの部位以外にその他の構造部位を有していてもよい。
【0012】
上記リグニン部位は、リグニンに由来する構造単位である。リグニンとしては、特に限定されず、例えば、アルカリリグニン、クラフトリグニン、酢酸リグニン、オルガノソルブルリグニン、爆砕リグニン、硫酸リグニン等が挙げられ、これらのリグニンを1種又は2種以上を用いることができる。
これらのリグニンの中でもアルカリリグニン、酢酸リグニン、オルガノソルブルリグニン、爆砕リグニンは、蒸解に硫黄含有化合物を用いないことから、硫黄臭の発生がない点で有利である。
【0013】
上記リグニンの原料となる植物についても特に限定されず、スギ、モミ、ヒノキ、マツ等針葉樹、ユーカリ、アカシア、シラカバ、ブナ、ナラ等の広葉樹、稲藁、穀物、バガス、竹、ケナフ、葦等の草本植物等が挙げられる。
これらの中でも、木質系のものが分散性能の点で好ましく、針葉樹や広葉樹のものがさらに好ましく、特に、針葉樹のものが好ましい。
【0014】
本発明で使用するリグニンは、通常行われる方法、例えば、「リグニンの化学(中野準三編 ユニ出版)」に記載の方法を用いて原料物質より単離することにより得ることができる。
【0015】
リグニンの分子量は、原料物質、単離方法によって異なり、本発明において使用されるリグニンの重量平均分子量は特に限定されないが、例えば、重量平均分子量500〜100万のリグニンを使用することができる。好ましくは、重量平均分子量5000〜10万のリグニンである。重量平均分子量は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法を用い、後述する実施例に記載の条件により測定することができる。
【0016】
本発明のリグニン誘導体に用いられるリグニン中の硫黄元素の含有率は、リグニン100質量%に対して0.1〜4質量%の範囲であることが好ましい。硫黄元素の含有率は、0.1〜3質量%の範囲であることがより好ましい。更に好ましくは、0.1〜2質量%の範囲であり、特に好ましくは、0.1〜1質量%の範囲である。
リグニン中の硫黄元素の含有率は、後述する実施例に記載の測定機器、測定条件で元素分析によって測定することができる。
【0017】
本発明のリグニン誘導体におけるポリアルキレングリコール部位は、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物(以下、ポリアルキレングリコール含有化合物ともいう。)に由来する構造単位であり、ポリアルキレングリコール部位を構成するアルキレンオキサイドの平均付加モル数が10を超えることを特徴とする。
上記アルキレンオキサイドの平均付加モル数とは、ポリアルキレングリコール部位を構成する1つのポリアルキレングリコール鎖において付加しているアルキレンオキサイドのモル数の平均値を意味する。
上記アルキレンオキサイドの平均付加モル数が10以下であれば、セメント添加剤の減水性能が充分なものとはならず、セメントの適正な分散性を得るために必要なセメント添加剤の純分添加量が多くなる。該添加量は、セメント添加剤の減水性能の指標となり、少ないほど減水性能が優れると評価される。多量に使用されるセメントに対して、該添加量がわずかでも少なくなれば大きな効果が認められることになる。
【0018】
上記ポリアルキレングリコール部位を構成するアルキレンオキサイドの平均付加モル数は、11以上が好ましく、より好ましくは13以上、更に好ましくは15以上、特に好ましくは20以上、一層好ましくは25以上、より一層好ましくは30以上、最も好ましくは50以上である。上限としては、上記アルキレンオキサイドの平均付加モル数は通常300以下であることが好ましく、より好ましくは250以下、さらに好ましくは200以下、特に好ましくは150以下、一層好ましくは100以下である。
またセメント分散性の保持性能については、上記アルキレンオキサイドの平均付加モル数が11以上であることが好ましく、より好ましくは13以上、更に好ましくは15以上、特に好ましくは20以上、一層好ましくは25以上である。保持性能の観点から上限としては、上記アルキレンオキサイドの平均付加モル数は100以下であることが好ましく、より好ましくは75以下、更に好ましくは60以下、特に好ましくは50以下、一層好ましくは40以下、より一層好ましくは30以下である。
【0019】
上記アルキレンオキサイドとしては、特に限定されないが、炭素数2〜18のアルキレンオキサイドを用いることが好ましく、より好ましくは炭素数2〜8のアルキレンオキサイドであり、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイド、1−ブテンオキサイド、2−ブテンオキサイド、トリメチルエチレンオキサイド、テトラメチレンオキサイド、テトラメチルエチレンオキサイド、ブタジエンモノオキサイド、オクチレンオキサイド等が挙げられる。また、ジペンタンエチレンオキサイド、ジヘキサンエチレンオキサイド等の脂肪族エポキシド;トリメチレンオキサイド、テトラメチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オクチレンオキサイド等の脂環エポキシド;スチレンオキサイド、1,1−ジフェニルエチレンオキサイド等の芳香族エポキシド等を用いることもできる。
【0020】
上記ポリアルキレングリコール部位を構成するアルキレンオキサイドとしては、セメント粒子との親和性の観点から、炭素数2〜8程度の比較的短鎖のアルキレンオキサイド(オキシアルキレン基)が主体であることが好適である。より好ましくは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の炭素数2〜4のアルキレンオキサイドが主体であることであり、更に好ましくは、エチレンオキサイドが主体であることである。
【0021】
ここでいう「主体」とは、ポリアルキレングリコール部位が、2種以上のアルキレンオキサイドにより構成されるときに、全アルキレンオキサイドの存在数において、大半を占めるものであることを意味する。「大半を占める」ことを全アルキレンオキサイド100モル%中のエチレンオキサイドのモル%で表すとき、50〜100モル%が好ましい。これにより、本発明のリグニン誘導体がより高い親水性を有することとなる。より好ましくは60モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上である。
【0022】
上記ポリアルキレングリコール含有化合物としては、ポリアルキレングリコール部位のアルキレンオキサイドの平均付加モル数が上述の範囲となる限り特に限定されないが、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール系化合物(以下、グリコール系化合物ともいう。);ポリエチレングリコール−モノエチル−グリシジルエーテル、ポリエチレングリコール−モノメチル−グリシジルエーテル、ラウリルアルコール−ポリエチレンオキサイド−グリシジルエーテル等の単官能のグリシジルエーテル系化合物;ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル等の二官能のグリシジルエーテル系化合物;及びこれらのグリシジル基(以下、エポキシ基ともいう。)をメトキシ、エトキシ等のアルコキシド化合物と反応させて、グリシジルエーテル基の官能度を低下させたグリシジルエーテル系化合物;メトキシポリエチレングリコール等のアルコキシポリアルキレングリコールとエピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンとの反応により得られる単官能型エポキシポリアルキレングリコール化合物が挙げられる。
なお、ポリアルキレングリコール部位は、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物に由来する構造となっていればよく、そのような構造を構成するための原料が特定されるものではないが、上記化合物から構成されることが好ましい。その場合、これらの化合物は、化合物中のアルキレンオキサイドの平均付加モル数が10を超えるものである。
【0023】
上記ポリアルキレングリコール含有化合物としては、不飽和結合を有しないポリアルキレングリコール含有化合物が好ましく、不飽和結合を有しないポリアルキレングリコール含有化合物の中でもより好ましくは単官能のグリシジルエーテル系化合物、アルコキシポリアルキレングリコールとエピハロヒドリンとの反応により得られる単官能型エポキシポリアルキレングリコール化合物であり、更に好ましくはアルコキシポリアルキレングリコールとエピハロヒドリンとの反応により得られる単官能型エポキシポリアルキレングリコール化合物である。
【0024】
本発明のリグニン誘導体におけるポリアルキレングリコール部位とリグニン部位とのモル比率は、0.1〜20である。上記モル比率は、リグニン部位1モルに対するポリアルキレングリコール部位のモル比率を表す。
上記モル比率が上記範囲よりも小さいと、セメント添加剤としての性能を充分に発揮できず、該用途に適さないものとなる。上記範囲よりも大きいと、セメントの適正な分散性を得るために必要なセメント添加剤の純分添加量が多くなる。
上記ポリアルキレングリコール部位とリグニン部位とのモル比率は、好ましくは、1.0〜13であり、より好ましくは1.5〜12であり、更に好ましくは2〜11であり、特に好ましくは2.5〜10であり、最も好ましくは3〜9である。
上記ポリアルキレングリコール部位とリグニン部位とのモル比率は、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0025】
本発明のリグニン誘導体の数平均分子量は6000〜20万であり、好ましくは6000〜10万であり、より好ましくは6000〜5万であり、更に好ましくは6000〜3万であり、特に好ましくは6000〜2万である。数平均分子量が上記範囲を外れると、セメント添加剤としての用途に適さないものとなる。
本発明のリグニン誘導体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は1.0〜3.5である。
上記分子量分布が上記範囲よりも小さいと、分子量分布曲線がシャープなものとなり過ぎ、セメント添加剤としての製造が困難となる。上記範囲よりも大きいと、セメントの適正な分散性を得るために必要なセメント添加剤の純分添加量が多くなる。
本発明のリグニン誘導体の分子量分布は、好ましくは1.0〜2.0であり、より好ましくは1.0〜1.8であり、更に好ましくは1.0〜1.6である。リグニン誘導体の数平均分子量、分子量分布は、GPCを用い、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0026】
<リグニン誘導体の製造方法>
本発明のリグニン誘導体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、リグニンとポリアルキレングリコール含有化合物とを反応させる製造方法が挙げられる。
このような、リグニン部位とポリアルキレングリコール部位とを必須とするリグニン誘導体の製造方法であって、上記製造方法は、リグニンとポリアルキレングリコール含有化合物とを反応させる工程を含むリグニン誘導体の製造方法もまた本発明の1つである。
【0027】
上記リグニンとポリアルキレングリコール含有化合物との反応において、例えば、リグニン中の水酸基にポリアルキレングリコール含有化合物の反応基を反応させることにより、リグニンを誘導体化することができる。
上記ポリアルキレングリコール含有化合物の反応基としては、リグニンの水酸基と反応することができる限り制限されないが、例えば、グリシジル基、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、アミノ基等が挙げられ、反応性の観点から、好ましくはグリシジル基、水酸基である。
【0028】
上記リグニンとポリアルキレングリコール含有化合物との反応において、リグニンに対するポリアルキレングリコール含有化合物の添加量は、本発明のリグニン誘導体のポリアルキレングリコール部位とリグニン部位とのモル比率に依存する。また、理論的には、リグニン中の全ての水酸基は親水性化合物中の反応基と反応する可能性があり得るため、ポリアルキレングリコール含有化合物の添加量は、リグニン中の水酸基の量、ポリアルキレングリコール含有化合物中の上記反応基の量と上記モル比率に基づき算出される。ポリアルキレングリコール含有化合物の添加量は、通常、リグニン100質量%に対し、5〜400質量%、好ましくは10〜300質量%、より好ましくは15〜250質量%である。
【0029】
ポリアルキレングリコール含有化合物として、グリシジル基を有しないグリコール系化合物を用いる場合、リグニンとグリコール系化合物との混合物に、酸触媒を添加して反応させることにより、リグニン誘導体を調製することができる。グリコール系化合物としては上述の化合物を用いることができる。
【0030】
上記反応において、酸触媒としては、塩酸、硫酸等を用いることができる。収率向上の観点から、好ましい条件として、添加量は、ポリアルキレングリコール含有化合物に対して0.1〜3.0質量%、反応温度は、100℃〜200℃、より好ましくは120℃〜160℃、更に好ましくは140℃、反応時間は、30分〜180分、より好ましくは60分〜120分、更に好ましくは、90分である。
【0031】
上記反応において、リグニンとグリコール系化合物との反応終了後、反応系に水を添加して、水不溶部を取り除くことが好ましい。
【0032】
本発明のリグニン誘導体の製造方法において用いられるポリアルキレングリコール含有化合物としては、反応性の観点から、グリシジルエーテル系化合物を用いることが好ましい。
【0033】
上記グリシジルエーテル系化合物としては、上述の化合物を用いることができるが、(1)二官能のグリシジルエーテル系化合物とナトリウムエトキシド等のアルコキシド化合物との反応により得られる単官能型エポキシポリアルキレングリコール化合物、(2)アルコキシポリアルキレングリコールとエピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンとの反応により得られる単官能型エポキシポリアルキレングリコール化合物を用いることが反応性の観点から、好ましい。上記(1)及び(2)の反応の一例として、それぞれ下記式(1)及び(2)に示す。式中、nは、10を超える数を表す。Rは、炭素数1〜12のアルキル基を表す。
【0034】
【化1】
【0035】
【化2】
【0036】
上記グリシジルエーテル系化合物としてより好ましくは、(2)の単官能型エポキシポリアルキレングリコール化合物である。
上記(1)の反応生成物には、副生成物として、二官能のグリシジルエーテル系化合物の有する2つのグリシジル基と2分子のアルコキシド化合物とが反応し生成するエポキシ基を有しない化合物や未反応の二官能のグリシジルエーテル系化合物が含まれる。この反応生成物とリグニンとを反応させてリグニン誘導体を合成した場合には、未反応の二官能のグリシジルエーテル系化合物が架橋剤として作用し、リグニン誘導体の分子量分布が大きくなるおそれがある。上記(2)の反応においては、このような副反応が起きず、完全単官能型エポキシポリアルキレングリコール化合物を合成することができ、分子量分布の小さいリグニン誘導体を合成することができる。
【0037】
上記(2)の反応に用いられるアルコキシポリアルキレングリコールとしては、上述の化合物を用いることができ、好ましくはメトキシポリエチレングリコールである。
上記エピハロヒドリンとしては、上述の化合物を用いることができ、好ましくは収率向上の観点から、エピクロロヒドリンである。
【0038】
上記(2)の反応に用いられるエピハロヒドリンの添加量は、特に限定されないが、アルコキシポリアルキレングリコール100モル%に対し、好ましくは100〜1000モル%、より好ましくは300〜800モル%である。
【0039】
上記(2)の反応において、塩基としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物等を用いることができる。具体的には、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。塩基として好ましくは反応性の観点から水素化ナトリウムであり、添加量は、アルコキシポリアルキレングリコール100モル%に対して80〜150モル%であることが好ましい。
さらに、溶媒としては、一般的な合成に使用される有機溶媒を用いることができ、好ましくはアセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、テトラヒドロフランである。
上記(2)の反応の好ましい条件として、反応温度は、50℃〜150℃、より好ましくは50℃〜80℃、反応時間は、60分〜600分、より好ましくは180分〜360分である。
【0040】
上記リグニンの水酸基とグリシジルエーテル系化合物のエポキシ基との反応は、通常用いられる方法により行うことができる。
例えば、リグニンをアルカリ水溶液に溶解し、アルカリ性条件下で遊離したリグニン中の水酸基(リグニン−OH)をグリシジルエーテル系化合物中のエポキシ基と反応させることにより、リグニン誘導体を調製することができる。リグノセルロース系バイオマスをアルカリ蒸解した後に得られる。
黒液を、上記リグニンのアルカリ水溶液として用いることもできる。
【0041】
上記リグニンの水酸基とグリシジルエーテル系化合物のエポキシ基との反応条件として、反応温度は、通常、50℃〜100℃、好ましくは70℃、反応時間は、通常、30分〜24時間、好ましくは1時間〜12時間、より好ましくは、2時間〜6時間である。
【0042】
上記反応において、リグニンとグリシジルエーテル系化合物との反応終了後、反応系に酸を添加して中和することが好ましい。添加する酸としては、悪影響を及ぼさない限り何れの酸でもよく、例えば、塩酸、リン酸、硫酸等の無機酸、及びギ酸、酢酸等の有機酸を使用することができる。
【0043】
上記反応は、疎水性のリグニンにグリシジルエーテル系化合物の有するポリアルキレングリコール鎖が導入されたことにより、得られるリグニン誘導体が親水性になった時点で完了する。リグニンとグリシジルエーテル系化合物との反応の完了は、例えば、反応中の溶液を一部サンプリングしたものに酸を加えてpHを下げた際、沈殿を生じるか否かで判定することができる。反応が不十分である場合、未反応のリグニンが沈殿として析出する。反応が完了した場合は沈殿が生じず、両親媒性リグニン誘導体が得られている。
以下、本発明のリグニン誘導体は、両親媒性リグニン誘導体ともいう。
【0044】
本発明の一実施形態において、リグニンを水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、得られたリグニンのアルカリ水溶液を常圧下で約70℃に温め、所定量のグリシジルエーテル系化合物を加え、約3時間攪拌しながら反応させ、反応終了後、反応系に酸を加えて中和することにより、リグニン誘導体が得られる。
【0045】
上記反応により得られたリグニン誘導体は、そのままコンクリート用混和剤として使用することもできるし、必要に応じて、脱塩及び未反応の親水性化合物の除去のために、限外濾過に付すことができる。例えば、分子量3000以下を排除できる限外濾過装置を用いて濾過に付すことが好ましい。
【0046】
上記リグニンとグリシジルエーテル系化合物との反応の一例として、好ましい反応形態を下記式(3)に示す。式中、nは、10を超える数を表す。Rは、炭素数1〜12のアルキル基を表す。
【0047】
【化3】
【0048】
<セメント添加剤>
本発明のリグニン誘導体をセメント添加剤として使用する場合は、水溶液の形態で使用してもよいし、又は、乾燥させたものを粉体化して使用してもよい。乾燥させる場合、凍結乾燥機等の従来使用されている乾燥方法により完全に乾燥させてもよい。また、粉体化した本発明のセメント添加剤を予めセメント粉末やドライモルタルのような水を含まないセメント組成物に配合して、左官、床仕上げ、グラウトなどに用いるプレミックス製品として使用してもよいし、セメント組成物の混練時に配合してもよい。
【0049】
好ましくは、本発明のリグニン誘導体を主成分とするセメント添加剤は、水溶液の形態で使用する。水溶液の濃度は任意であるが、例えば、5〜50%であり、好ましくは、10〜30%程度である。
【0050】
セメントに添加する際の本発明のセメント添加剤の配合量は、任意であるが、例えば、固形分換算で、セメントの質量に対して、0.01〜10.0質量%、好ましくは0.02〜5.0質量%、より好ましくは0.1〜1.0質量%である。このような配合量により、通常の汎用セメントにおいては、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上などの各種の好ましい諸効果がもたらされる。特に、配合量が0.1質量%以上である場合は、流動性が著しく付与されるため、いわゆるセメント減水剤としての効果に優れ、好ましい。
【0051】
本発明のセメント添加剤はまた、他のセメント添加剤と組み合わせて用いることもでき、ポリカルボン酸系減水剤と併用することもできる。ポリカルボン酸系減水剤としては、ポリ(メタ)アクリル酸等のポリカルボン酸の側鎖に(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する重合体を含む減水剤であればよい。
上記ポリカルボン酸を構成する不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸系単量体;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸等のジカルボン酸系単量体、これらのジカルボン酸無水物及びこれらの塩等が挙げられる。
上記(ポリ)アルキレングリコール鎖としては、特に限定されないが、上述のアルキレンオキサイドから構成される高分子鎖((ポリ)アルキレンオキサイド)であることが好ましい。
上記ポリカルボン酸系減水剤の特性については、本発明のセメント添加剤と併用して分散性を向上し、減水性能を発揮できるものであれば特に限定されるものではない。
上記ポリカルボン酸系減水剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい
【0052】
本発明のセメント添加剤はまた、オキシカルボン酸系化合物と併用することもできる。オキシカルボン酸系化合物を併用することにより、高温の環境下においても、より高い分散保持性能を発揮することができる。オキシカルボン酸系化合物としては、炭素原子数4〜10のオキシカルボン酸又はその塩が好ましく、具体的には、例えば、グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸や、これらのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミンなどの無機塩又は有機塩などが挙げられる。これらのオキシカルボン酸系化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのオキシカルボン酸系化合物のうち、グルコン酸又はその塩が特に好適である。特に、貧配合コンクリートの場合には、分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤としてリグニンスルホン酸塩系の分散剤を使用し、オキシカルボン酸系化合物としてグルコン酸もしくはその塩を使用することが好ましい。
本発明のセメント添加剤はまた、その他のセメント添加剤として、特開2013−53010号公報に記載されているようなその他のセメント添加剤を併用することができる。
【0053】
本発明のセメント添加剤と組み合わせて用いることができる他のセメント添加剤としては、更に、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、遅延剤、早強剤・促進剤、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤、アルコール系消泡剤、アミド系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤、AE剤、その他界面活性剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張材等が挙げられ、これらは、特開2012−131997号公報に記載のものと同様のものを用いることができる。
【0054】
その他のセメント添加剤(材)として、例えば、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏等が挙げられる。
【0055】
本発明のセメント添加剤と他のセメント添加剤と組み合わせて用いる場合の配合割合は、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニン誘導体の固形分と他のセメント添加剤の固形分との質量割合が1〜99/99〜1であることが好ましい。より好ましくは、5〜95/95〜5であり、更に好ましくは、10〜90/90〜10であり、特に好ましくは、20〜80/80〜20である。
また、本発明のセメント添加剤とポリカルボン酸系減水剤又はオキシカルボン酸系化合物と他のセメント添加剤とを用いる場合、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニンとポリカルボン酸系減水剤又はオキシカルボン酸系化合物と他のセメント添加剤との質量割合は、1〜98/1〜98/1〜98であることが好ましい。より好ましくは、5〜90/5〜90/5〜90であり、更に好ましくは、10〜90/5〜85/5〜85であり、特に好ましくは、20〜80/10〜70/10〜70である。
【0056】
上述した種々の他のセメント添加剤の中でも、本発明のセメント添加剤と併用するセメント添加剤としては、ポリカルボン酸系減水剤やオキシカルボン酸系化合物の他に、オキシアルキレン系消泡剤、促進剤、分離低減剤、AE剤が好ましく、AE剤を用いる場合、本発明のセメント添加剤とオキシアルキレン系消泡剤とAE剤との3成分を併用することが好ましい。
【0057】
本発明のセメント添加剤と併用するオキシアルキレン系消泡剤としては、上記のものの中でも、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が好ましい。
本発明のセメント添加剤とオキシアルキレン系消泡剤とを併用する場合、オキシアルキレン系消泡剤の配合割合は、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニン誘導体の固形分の質量に対して0.01〜20質量%であることが好ましい。
また、本発明のセメント添加剤とオキシアルキレン系消泡剤とAE剤との3成分を併用する場合、オキシアルキレン系消泡剤の割合は、上記と同様であり、AE剤の割合は、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニン誘導体の固形分の質量に対して0.001〜2質量%であることが好ましい。
【0058】
本発明のセメント添加剤と促進剤とを併用する場合、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニン誘導体と促進剤との質量割合は、10/90〜99.9/0.1であることが好ましい。より好ましくは、20/80〜99/1である。
【0059】
本発明のセメント添加剤と分離低減剤とを併用する場合、分離低減剤としては、非イオン性セルロースエーテル類等の各種増粘剤、部分構造として炭素原子数4〜30の炭化水素鎖からなる疎水性置換基と炭素原子数2〜18のアルキレンオキサイドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物等の1種又は2種以上を用いることができる。
本発明のセメント添加剤と分離低減剤とを併用する場合、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニンと分離低減剤との質量割合は、10/90〜99.99/0.01であることが好ましい。より好ましくは50/50〜99.9/0.1である。本発明のセメント添加剤と分離低減剤とを含むセメント組成物は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材として好適に用いることができる。
【0060】
本発明のセメント添加剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に加えて用いることができ、このような本発明のセメント添加剤を含んでなるセメント組成物もまた、本発明の1つである。
【0061】
上記セメント組成物としては、セメント、水、細骨材、粗骨材等を含むものが好適であり、セメントとしては、特に限定されず、例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩、及びそれぞれの低アルカリ形)等が挙げられ、特開2009−046655号に記載のものと同様のものを用いることができる。上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
【0062】
上記セメント組成物の1mあたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比(質量比)としては、例えば、単位水量100〜185kg/m、使用セメント量200〜800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.1〜0.7とすることが好適であり、より好ましくは、単位水量120〜175kg/m、使用セメント量250〜800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.2〜0.65とすることである。このように、本発明の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体を含むセメント混和剤は、貧配合から富配合に至るまでの幅広い範囲で使用可能であり、高減水率領域、すなわち、水/セメント比(質量比)=0.15〜0.5(好ましくは0.15〜0.4)といった水/セメント比の低い領域でも使用可能であり、更に、単位セメント量が多く水/セメント比が小さい高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
【発明の効果】
【0063】
本発明のセメント添加剤は、上述の構成よりなり、従来のリグニン誘導体に比べて、優れた減水性能を発揮し、セメント組成物を流動性に優れるものとすることができるセメント添加剤である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】ポリアルキレングリコール含有化合物の反応率の算出におけるGPC RIチャートの例を示した図である。
図2】実施例2、6、9及び比較例1、5、6のリグニン誘導体(セメント添加剤)の純分換算添加量と0打フロー値との関係を示した図である。
図3】実施例2及び比較例7の混練後の経過時間とスランプフロー値との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0066】
<GPC測定条件>
装置:Waters社製、Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー社製
・TSKguard column α
・TSKgel α―3000
・TSKgel α―4000
・TSKgel α―5000
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters社製、Waters 2414)
溶離液:100mMホウ酸水溶液14304gに50mM水酸化ナトリウム水溶液96gとアセトニトリル3600gを混合した溶媒
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール[ピークトップ分子量(Mp)300000、200000、107000、50000、27700、11840、6450、1470、1010、400]
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
測定時間:60分
試料液注入量:100μL(試料濃度0.5wt%の溶離液調製溶液)
【0067】
<硫黄元素含有率>
リグニンの硫黄元素含有率は、以下の測定方法により測定した。
測定機器:vario EL cube(エレメンタール社製、CHNSO全自動元素分析計)
測定条件:
測定モード CHNS
燃焼管設定温度1150℃、還元管設定温度850℃
燃焼管充填剤:酸化タングステン
還元管充填剤:還元銅
測定ガスフローメーター:MFC−TCD 約230ml/min
ヘリウムガスフローメーター:Fiow He 230ml/min
試料量:約2mg、スズボート包み込み
検出器:TCD
【0068】
<蒸解条件>
以下の条件により蒸解を行い、リグニンを含む黒液を得た。
木材:スギ(Cryptomeria japonica)材
蒸解温度:170℃、蒸解時間:2h
活性アルカリ(水酸化ナトリウム)添加率(活性アルカリ(酸化ナトリウム)換算):19.5%(木材に対する割合)
AQ(アントラキノン)添加率:0.1%(木材に対する割合)
液比:5L/kg
パルプ収率:44%
パルプ中の残留リグニン含有率:2.8%
【0069】
<リグニンの精製>
上記蒸解により得られた強アルカリ性水溶液である黒液に対して、約30%の硫酸水溶液を添加し、撹拌しながらpHを2.0に調製し、沈殿を生じせしめた。遠心分離により 沈殿物を回収し、蒸留水を用いて洗浄した。沈殿は、濾過、もしくは遠心分離で回収し、風乾後、減圧乾燥した。乾燥物を乳鉢で軽く粉砕し、精製リグニンを得た。精製リグニンの数平均分子量(Mn)は12600、重量平均分子量(Mw)は16000であった。精製リグニンの中の硫黄元素の含有率は、精製リグニン100質量%に対して0.2質量%であった。
【0070】
<製造例1:単官能型エポキシPEG(25モル)>
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、テトラヒドロフランを50.0部、濃度60%の水素化ナトリウム2.0部を仕込んだ。
エチレンオキサイドの平均付加モル数が25であるメトキシポリエチレングリコール(メトキシPEG(25モル)ともいう。)50.0部にテトラヒドロフラン50.0部を加え、充分に均一化した後、氷冷した反応容器に添加した。その後10分間、攪拌した。
次に、反応容器を氷冷しながら、エピクロロヒドリン16.4部を添加し、反応容器を70℃に加温した。加温開始から5時間で加温をやめ、反応終了とした。反応容器を氷冷し、1.5部の水を加え、未反応の水素化ナトリウムを失活させた。
得られた反応物を濃縮するため、エバポレーターにより、テトラヒドロフラン、未反応のエピクロロヒドリンを留去した。
得られた反応物の濃縮液を、ジエチルエーテル400.0部にゆっくりと滴下し、生じた沈殿物を減圧ろ過し、室温で乾燥することで、実施例1〜4及び比較例5のリグニン誘導体の製造に用いる単官能型エポキシPEGを得た。
【0071】
<製造例2:単官能型エポキシPEG(50モル)>
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、テトラヒドロフランを10.0部、濃度60%の水素化ナトリウム1.0部を仕込んだ。
エチレンオキサイドの平均付加モル数が50であるメトキシポリエチレングリコール(メトキシPEG(50モル)ともいう。)50.0部にテトラヒドロフラン100.0部を加え、充分に均一化した後、氷冷した反応容器に添加した。その後10分間、攪拌した。
次に、反応容器を氷冷しながら、エピクロロヒドリン7.0部を添加し、反応容器を70℃に加温した。加温開始から5時間で加温をやめ、反応終了とした。反応容器を氷冷し、0.8部の水を加え、未反応の水素化ナトリウムを失活させた。
得られた反応物を濃縮するため、エバポレーターにより、テトラヒドロフラン、未反応のエピクロロヒドリンを留去した。
得られた反応物の濃縮液を、ジエチルエーテル400.0部にゆっくりと滴下し、生じた沈殿物を減圧ろ過し、室温で乾燥することで、実施例5〜10のリグニン誘導体の製造に用いる単官能型エポキシPEGを得た。
【0072】
<製造例3:単官能型エポキシPEG(10モル)>
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、テトラヒドロフランを60.0部、濃度60%の水素化ナトリウム5.1部を仕込んだ。
エチレンオキサイドの平均付加モル数が10であるメトキシポリエチレングリコール(メトキシPEG(10モル)ともいう。)60.0部にテトラヒドロフラン60.0部を加え、充分に均一化した後、氷冷した反応容器に添加した。その後10分間、攪拌した。
次に、反応容器を氷冷しながら、エピクロロヒドリン38.4部を添加し、反応容器を70℃に加温した。加温開始から5時間で加温をやめ、反応終了とした。反応容器を氷冷し、3.9部の水を加え、未反応の水素化ナトリウムを失活させた。
得られた反応物を濃縮するため、エバポレーターにより、テトラヒドロフラン、未反応のエピクロロヒドリンを留去した。
得られた反応物の濃縮液を、ジエチルエーテル400.0部にゆっくりと滴下し、生じた沈殿物を減圧ろ過し、室温で乾燥することで、比較例1〜4のリグニン誘導体の製造に用いる単官能型エポキシPEGを得た。
【0073】
<製造例4:単官能型エポキシPEG(90モル)>
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、テトラヒドロフランを10.0部、濃度60%の水素化ナトリウム1.0部を仕込んだ。
エチレンオキサイドの平均付加モル数が90であるメトキシポリエチレングリコール(メトキシPEG(90モル))90.0部にテトラヒドロフラン180.0部を加え、充分に均一化した後、氷冷した反応容器に添加した。その後10分間、攪拌した。
次に、反応容器を氷冷しながら、エピクロロヒドリン7.0部を添加し、反応容器を70℃に加温した。加温開始から5時間で加温をやめ、反応終了とした。反応容器を氷冷し、0.8部の水を加え、未反応の水素化ナトリウムを失活させた。
得られた反応液は遠心分離を行い、生成した塩を取り除いた。
塩を取り除いた反応液を、ジエチルエーテル720.0部にゆっくりと滴下し、生じた沈殿物を減圧ろ過し、室温で乾燥することで、実施例11、12のリグニン誘導体の製造に用いる単官能型エポキシPEGを得た。
【0074】
<実施例1のリグニン誘導体の製造>
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、精製リグニン32.7部と製造例1で得られた単官能型エポキシPEG4.9部を、20%水酸化ナトリウム溶液151.2部に溶解させた。容器を70℃に加温し、3時間反応させ、実施例1の両親媒性リグニン誘導体を得た。
得られたサンプルのGPC測定結果から、実施例1の両親媒性リグニン誘導体の単官能型エポキシPEGの反応率は、99.0%であり、サンプル固形分中の、実施例1の両親媒性リグニン誘導体の純分濃度は50.8%であった。
【0075】
実施例2〜4及び比較例5のリグニン誘導体は、製造例1で得られた単官能型エポキシPEGを用い、実施例5〜10のリグニン誘導体は、製造例2で得られた単官能型エポキシPEGを用い、比較例1〜4のリグニン誘導体は、製造例3で得られた単官能型エポキシPEGを用い、実施例1と同様の処方で製造した。各原料の仕込み量は表1に示す通りである。表1において単官能型エポキシPEGは、EPEGと示した。
【0076】
【表1】
【0077】
<実施例11:リグニン誘導体11>
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、精製リグニン18.6部(固形分92.6%、リグニン純分88.0%)を2M水酸化ナトリウム水溶液30.3部(NaOH 2.4部)及び蒸留水75.7部に溶解させ、製造例4で得られた単官能型エポキシPEG(以下、EPEGともいう)18.8部を添加した。容器を70℃に加温し、3時間反応させ、両親媒性リグニン11を得た。得られたサンプルのGPC測定結果から、実施例11の両親媒性リグニンの単官能型エポキシPEGの反応率は85%であり、サンプル固形分中の、両親媒性リグニンの純分濃度は82%であった。さらに、両親媒性リグニン11におけるリグニン由来の構造部位とEPEG由来の構造部位との質量比は、49:51であった。リグニン由来の構造部位とEPEG由来の構造部位との質量比は後述する算出方法により求めた。
【0078】
<実施例12:リグニン誘導体12>
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、精製リグニン13.5部(固形分92.6%、リグニン純分88.0%)を2M水酸化ナトリウム水溶液22.0部(NaOH 1.8部)及び蒸留水55.0部に溶解させ、製造例4で得られた単官能型エポキシPEG(以下、EPEGともいう)23.2部を添加した。容器を70℃に加温し、3時間反応させ、両親媒性リグニン12を得た。得られたサンプルのGPC測定結果から、実施例12の両親媒性リグニンの単官能型エポキシPEGの反応率は90%であり、サンプル固形分中の、両親媒性リグニンの純分濃度は86%であった。さらに、両親媒性リグニン12におけるリグニン由来の構造部位とEPEG由来の構造部位との質量比は、35:65であった。リグニン由来の構造部位とEPEG由来の構造部位との質量比は後述する算出方法により求めた。
【0079】
<比較例6のリグニン誘導体の製造>
(グリシジルエーテル系化合物の調製)
エチレンオキサイドの平均付加モル数が13のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEX−841)24部をアセトン20部に加え、攪拌しながら50℃に加熱した。次に、ナトリウムエトキシド1.36部をエタノール12部に溶解し、これを50℃に加熱した。50℃に加熱されたグリシジルエーテル系化合物アセトン溶液に、ナトリウムエトキシド溶液を20分かけて滴下し、さらに同温度で10分間攪拌した。溶液を酢酸で中和した後、ロータリエバポレーターで溶媒を除去し、デシケーター内で真空乾燥を24時間行い、エトキシにより単官能化されたグリシジルエーテル系化合物(エトキシ−(2−ヒドロキシ)−プロポキシ−ポリエチレングリコールグリシジルエーテル)を得た。
【0080】
(リグニンの誘導体化)
上記の18.0部のアルカリリグニン1N水酸化ナトリウム水溶液に、上記の方法で調製した単官能のグリシジルエーテル系化合物を33.3部加えた。溶液を70℃に加熱し、3時間攪拌して反応させた。反応を、酢酸を加えてpHを4にすることで終了させ、比較例6のリグニン誘導体を得た。
【0081】
<ポリアルキレングリコール部位とリグニン部位とのモル比率>
リグニン誘導体におけるポリアルキレングリコール部位とリグニン部位とのモル比率は、下記式(4)に基づき、原料となる精製リグニンとポリアルキレングリコール含有化合物の合計100質量%に対するリグニンとポリアルキレングリコール(以下、PAGともいう。)含有化合物の仕込み比率(質量%)(以下、仕込み組成比ともいう。)と反応率(%)からリグニンとPAGの仕上がりの組成比(質量%)を求め、この組成比(質量%)をモル比に換算することにより求めることができる。なお、精製リグニンの反応率は100%である。
【0082】
【数1】
【0083】
<PAG反応率の算出>
PAG反応率は、下記式(5)に基づき、(a)〜(c)の数値を用いて算出することができる。図1にGPC RIチャートの例を示す。図中、(1)と(2)との面積の差が、反応したPAGの量に相当する。
(a)各種原料の仕込み重量
(b)原料リグニンのGPC RIチャートにおける、10〜32分までの面積100%に対する10〜25分における面積比率
(c)両親媒性リグニン誘導体のGPC RIチャートにおける、10〜32分までの面積100%に対する10〜25分における面積比率
なお、図1のGPC RIチャートにおいては、面積が0のところを省略し、溶出時間15分から示している。
なお、PAGの反応率の測定方法としては、GPCのRI面積比より算出する方法の他に、紫外可視分光光度計により、リグニン中のフェノール性水酸基の数を、反応前後で測定しその測定値より算出する方法等があるが、本願では、上記GPCによる方法により測定した。
【0084】
【数2】
【0085】
実施例1〜12及び比較例1〜6のリグニン及びPAGの仕込み組成(質量%)、PAG反応率、リグニン及びPAGの仕上がり組成(質量%及びモル比)、純分、数平均分子量、重量平均分子量、分子量分布を表2に示した。なお、実施例及び比較例においては、PAGとしてエポキシポリエチレングリコールを使用しているため、表2においてPAGは、EPEGと表す。
【0086】
【表2】
【0087】
<モルタル試験>
以下のようにしてモルタルを調製し、初期のモルタル空気量(以下、単に空気量ともいう。)及び0打フロー値を測定した。結果を表3及び4に示す。また、表3及び4の結果の一部をグラフ化したものを図2に示す。
なお、モルタル試験では消泡剤としてMA−404(BASFポゾリス社製)を有姿で25質量%対各成分固形分となる量を、各成分に添加した。
【0088】
<モルタルフロー試験>
モルタルフロー試験は、温度が20℃±1℃、相対湿度が60%±10%の環境下で行った。
モルタル配合は、C/S/W=500/1350/250(g)とした。
ただし、
C:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
S:セメント強さ試験用標準砂(セメント協会製)
W:実施例1〜12、比較例1〜6のサンプル、及び、消泡剤のイオン交換水溶液
Wとして、表3及び4に示した添加量の各成分を量り採り、消泡剤MA−404を有姿で各成分の固形分に対して25質量%加え、更にイオン交換水を加えて所定量とし、充分に均一溶解させた。表3及び4において、各成分の添加量は、セメント質量に対する各成分の固形分の質量%で表されている。
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
<モルタルの調製>
ホバート型モルタルミキサー(型番N−50;ホバート社製)にステンレス製ビーター(撹拌羽根)を取り付け、C、Wを投入し、1速で30秒間混練した。更に1速で混練しながら、Sを30秒かけて投入した。S投入終了後、2速で30秒間混練した後、ミキサーを停止し、15秒間モルタルの掻き落としを行い、その後、75秒間静置した。75秒間静置後、更に60秒間2速で混練を行い、モルタルを調製した。
【0092】
<0打フロー値測定>
モルタルを混練容器からポリエチレン製1L容器に移し、スパチュラで20回撹拌した後、直ちにフロー測定板(30cm×30cm)に置かれたミニスランプコーン(マイクロコンクリートスランプコーン、JIS−A−1173に記載) (上端内径50mm、下端内径100mm、高さ150mm)フローコーン(JIS−R−5201(1997年改正)に記載)に半量詰めて15回つき棒で突き、更にモルタルをフローコーンのすりきりいっぱいまで詰めて15回つき棒で突き、最後に不足分を補い、ミニスランプコーンの表面をならした。その後、直ちにフローコーンを垂直に引き上げ、広がったモルタルの直径(最も長い部分の直径(長径)及び前記長径に対して90度をなす部分の直径)を2箇所測定し、その平均値を0打フロー値とした。
なお、0打フロー値は、数値が大きいほど、分散性能が優れている。
【0093】
<適正フロー220mmに必要な添加量の算出>
モルタル評価より得られたデータをもとに、純分換算添加量とフロー値とをプロットし、適正フロー値である220mmになるのに必要な純分換算添加量を算出し、結果を表5に示した。実施例1〜12のリグニン誘導体を用いたセメント添加剤は、比較例1〜6のリグニン誘導体を用いたセメント添加剤に比べて、より少量の使用で高いセメント分散効果を発揮することが確認された。
【0094】
【表5】
【0095】
<コンクリート試験>
実施例2で得られたセメント添加剤と比較例7として市販のリグニンスルホン酸(ポゾリスNo.8、BASFポゾリス社製)を用いて、所定のスランプフロー値を得るための添加剤添加量と混練直後、混練20分後、40分後、60分後のスランプフロー値及び空気量を評価し、結果を表6及び図3に示した。実施例2のリグニン誘導体を用いたセメント添加剤は、比較例7のセメント添加剤に比べて、高い分散保持性能を発揮することが確認された。
【0096】
【表6】
【0097】
上記コンクリート試験の試験条件を以下に示した。
<コンクリート組成物における配合>
単位セメント量:366.0kg/m
単位水量:174kg/m(添加剤、消泡剤等の混和剤を含む。)
単位細骨材量:790.0Kg/m
単位粗骨材量:968kg/m
水/セメント比(W/C):47.5%
骨材量比(s/a):45.0%
セメント:太平洋セメント製、普通ポルトランドセメント
細骨材:大井川産川砂、君津産山砂
粗骨材:青梅産砕石
【0098】
<コンクリート組成物の調製>
上記コンクリート原料、配合により、練り混ぜ量が30Lとなるようにそれぞれの材料を計量し、パン型ミキサーを使用して下記に記載の方法によって材料の混練を実施した。
まず細骨材、粗骨材及びセメントを10秒間混練した後、セメント混和剤を含む所定量の水道水を加えて90秒間混練し、コンクリート組成物を得た。
【0099】
<セメント添加剤の調製>
重合体と消泡剤とを用いて調製した。所定量のリグニン誘導体水溶液を量り採り、消泡剤には市販のオキシアルキレン系消泡剤(BASFポゾリス社製、マイクロエア404)を用い、空気量が3〜6%(体積%)となるように調整した。
【0100】
<スランプフロー値及びモルタル空気量の測定方法>
上記スランプフロー値の測定は、JIS−A−1101(2005年改正)の方法により行った。
上記モルタル空気量(初期空気量)の測定は、JIS−A−1128(2005年改正)の方法により行った。モルタルを500mLのガラス製メスシリンダーに約200mL詰め、径8mmの丸棒で突き、手で軽く振動させて粗い気泡を抜いた。更にモルタルを約200mL加えて同様に気泡を抜いた後、モルタルの体積と質量を測り、各材料の密度から空気量を計算した。
【0101】
<乾燥収縮低減性能試験>
実施例2及び4で得られたセメント添加剤と比較例7として市販のリグニンスルホン酸(ポゾリスNo.8、BASFポゾリス社製)について、乾燥収縮低減性能を評価した。上記コンクリート試験の方法により得られたコンクリート組成物について、JIS−A−1132の方法により供試体を作成し、JIS−A−1129(2009年改正)の方法により一定期間保存した後の供試体の長さの変化を測定した。上記供試体を20±2℃、湿度60±5%で保存し、保存開始時の供試体の長さ100%に対する8週間保存後の供試体の長さの変化率を表7に示した。
実施例2、4を用いた場合、市販のリグニンスルホン酸(BASFポゾリス社製 ポゾリスNo.8)である比較例7を用いた場合より、長さの変化率が低く、乾燥収縮低減性が確認された。
【0102】
【表7】
図1
図2
図3