(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PTCA(経皮的冠動脈形成術)や末梢PTA(経皮的血管形成術)において使用するバルーンカテーテルには、狭窄部などの細い血管部位に対して挿通できることが要求され、このためには、外径の小さなインナーチューブを使用して、ラッピング径(インナーチューブにバルーンを巻いたときの径)を小さくする必要がある。
【0007】
他方、最近におけるPTCA用のバルーンカテーテルにおいて、高い耐圧性(例えば、最大拡張圧(RBP)が18atm以上)が要求されている。
このような高耐圧バルーンカテーテルを構成するインナーチューブには、バルーンの拡張・収縮を繰り返すことによって起こる不可逆的変形(ガイドワイヤルーメンの潰れ)に伴うガイドワイヤのスタックを防止してガイドワイヤの摺動性を維持するために、その肉厚を大きくして強度を高くする必要がある。
然るに、インナーチューブの肉厚を大きくすると、インナーチューブの外径が不可避的に大きくなるために、そのようなインナーチューブを備えたバルーンカテーテルは、細い血管部位に対して挿通することができなくなる。
【0008】
末梢PTAに使用されるバルーンカテーテルは、狭窄部の長さに応じた長いバルーン(例えば、40〜300mmであるもの)を備えている。
このような長いバルーンを備えた末梢PTA用のバルーンカテーテルは、血管内を挿通させる際のプッシャビリティに劣るという問題がある。
ここに、プッシャビリティの向上を図るために、インナーチューブの肉厚を大きくして強度を高くすることも考えられるが、インナーチューブの肉厚を大きくすると、PTCA用のバルーンカテーテルの場合と同様に、そのようなインナーチューブを備えたバルーンカテーテルは、細い血管部位に対する挿通性が損なわれることになる。
【0009】
上記のような問題を解決するために、本発明者等は、狭窄部など細い血管部位に対する挿通性に優れているとともに高い耐圧性および優れたプッシャビリティを有するバルーンカテーテルとして、PEEK樹脂により構成されたインナーチューブを備えることを特徴点の1つとするバルーンカテーテルを提案している(特願2016−14403号明細書参照)。
【0010】
然るに、上記の特許文献1に記載されたバルーンカテーテルでは、バルーンの先端側において、インナーチューブの先端部と、先端チップの基端部と、バルーンの先端側ネック部とが積層された状態で溶着(熱溶着)されているため、PEEK樹脂により構成された細径のインナーチューブを採用したとしても、上記の溶着部位が相当太くなるため、細い血管部位に対する挿通性に劣るものとなる。
【0011】
また、上記の特許文献2に記載されたバルーンカテーテルでは、インナーチューブと、先端チップとの界面において硬度(剛性)が大きく変化するため、当該界面でのキンクが生じやすいという問題がある。
特に、PEEK樹脂により構成されたインナーチューブを採用した場合、PEEK樹脂は、通常、先端チップの構成材料と溶着(熱溶着)できないために、インナーチューブの先端面と先端チップの基端面とが単に当接されている状態となり、しかも、界面における硬度変化も相当大きくなるため、当該界面でのキンクがきわめて生じやすい。
また、上記特許文献2に記載されたバルーンカテーテルにおいて、PEEK樹脂により構成されたインナーチューブを採用した場合には、先端チップを保持することができずに先端チップが脱落してしまうことも考えられる。
【0012】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の目的は、バルーンの先端側における外径を十分に小さくすることにより、細い血管部位に対する挿通性に優れたものとすることができ、インナーチューブと先端チップとが互いに溶着できない材料から構成される場合であっても、先端チップを確実に保持することができ、バルーンの先端側においてキンクを生じさせないバルーンカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明のバルーンカテーテルは、アウターチューブと、
拡張収縮するバルーン部の両端にネック部を有してなり、前記アウターチューブの先端部に基端側のネック部が固定されているバルーンと、
前記アウターチューブのルーメンおよび前記バルーンの内部に挿通されてガイドワイヤルーメンを形成し、前記バルーンの先端側ネック部に固定されている先端部を有するインナーチューブと、
前記バルーンの先端側ネック部に固定されている基端部を有し、前記インナーチューブのルーメンに連通するルーメンを形成し、その先端が開口している軟質チューブ材料からなる先端チップとを備えてなり;
前記バルーンの先端側ネック部は、第1外径(D1)および第1内径(d1)を有する基端部と、前記第1内径(d1)より小さな第2内径(d2)を有する先端部と、前記基端部と前記先端部との境界に形成される段差部とを有し;
前記インナーチューブの先端部は、その先端面と前記先端側ネック部の段差部とが溶着、接着または当接された状態で、その外周面と前記先端側ネック部の基端部の内周面とが溶着または接着されることにより、前記先端側ネック部の基端部に固定され、
前記先端チップの基端部は、前記先端側ネック部の先端部に溶着されることにより固定され、
前記先端側ネック部の先端部は、前記第1外径(D1)を最大外径とし、第2外径(D2)を最小外径として先端方向に外径が縮小するテーパ部分を有し、
前記先端チップの基端部は、前記第1外径(D1)と略同一の内径を最大内径とし、前記第2外径(D2)と略同一の内径を最小内径として先端方向に内径が縮小するテーパ部分を有し、
前記先端チップの基端部の内周面と前記先端側ネック部の先端部の外周面とが溶着されることにより、前記先端チップの基端部が、前記先端側ネック部の先端部に固定されていることを特徴とする。
【0014】
このような構成のバルーンカテーテルによれば、インナーチューブの先端部が、先端側ネック部の「基端部」に固定され、先端チップの基端部が、先端側ネック部の「先端部」に固定されているので、バルーンの先端側において、インナーチューブの先端部と、バルーンの先端側ネック部と、先端チップの基端部とが積層された状態(三層構成)となることはなく、従って、バルーンの先端側における外径を十分に小さくすることができる。
【0015】
また、インナーチューブの先端部の先端面と先端側ネック部の段差部とが溶着、接着または当接された状態で、インナーチューブの先端部の外周面と先端側ネック部の基端部の内周面とが溶着または接着され、これにより、インナーチューブの先端部が先端側ネック部の基端部に固定されているので、インナーチューブの先端部は、先端側ネック部に覆われた状態で、先端側ネック部の基端部に固定されていることになる。これにより、インナーチューブと先端側ネック部との界面におけるキンクを防止することができる。
【0016】
なお、インナーチューブとバルーンとが互いに溶着できない材料から構成される場合であっても、インナーチューブの先端部の外周面を表面改質することにより、インナーチューブの先端部を先端側ネック部の基端部に対して接着することができる。
【0017】
一方、先端チップの基端部は先端側ネック部の先端部に溶着されているので、先端チップの基端部を先端側ネック部の先端部に対して強固に固定することができる。
【0018】
これにより、インナーチューブと先端チップとが互いに溶着できない材料から構成される場合であっても、バルーンの先端側ネック部を介して、インナーチューブの先端部に対して先端チップを固定することができ、この結果、先端チップを確実に保持することができる。
【0020】
また、このような構成のバルーンカテーテルによれば、先端側ネック部の先端部と先端チップの基端部との溶着部分における硬度を軸方向に連続的に変化させることができ、当該溶着部分におけるキンクも確実に防止することができる。
【0021】
(2)本発明のバルーンカテーテルにおいて、前記インナーチューブがPEEK樹脂により構成されることが好ましい。
【0022】
(3)本発明のバルーンカテーテルは、前記アウターチューブの基端に接続された金属チューブと、前記金属チューブの基端に接続されたハブとを備えてなり、PTCA(経皮的冠動脈形成術)に使用されることが好ましい。
【0023】
(4)本発明のバルーンカテーテルは、前記アウターチューブの基端に接続されたハブを備えてなり、末梢PTA(経皮的血管形成術)に使用されることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明のバルーンカテーテルによれば、バルーンの先端側における外径を十分に小さくすることができ、細い血管部位に対する挿通性に優れたものとすることができる。
また、インナーチューブと先端チップとが互いに溶着(熱溶着)できない材料から構成されている場合であっても、先端チップを確実に保持することができるとともに、インナーチューブと先端側ネック部との界面におけるキンクを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
図1および
図2に示す本実施形態のバルーンカテーテル100は、PTCA(経皮的冠動脈形成術)に使用される。
【0027】
このバルーンカテーテル100は、アウターチューブ10(先端側シャフト)と、アウターチューブ10の基端に接続された金属チューブ20(基端側シャフト)と、拡張収縮するバルーン部33の両端にネック部(基端側ネック部31および先端側ネック部32)を有し、アウターチューブ10の先端部に基端側ネック部31が固定されているバルーン30と、アウターチューブ10のルーメンおよびバルーン30の内部に挿通されてガイドワイヤルーメンを形成し、バルーン10の先端側ネック部32に固定されている先端部42を有するインナーチューブ40と、バルーン30の先端側ネック部32に固定されている基端部51を有し、インナーチューブ40のルーメンに連通するルーメンを形成し、その先端が開口している軟質チューブ材料からなる先端チップ50と、アウターチューブ10のルーメンに挿通されているコアワイヤ60とを備えてなり、インナーチューブ40の基端部41が、アウターチューブ10の側面において開口してガイドワイヤポートPを形成するラピッドエクスチェンジタイプのバルーンカテーテルであって、バルーン30の先端側ネック部32は、第1外径(D1)および第1内径(d1)を有する基端部321と、第1内径(d1)より小さな第2内径(d2)を有するとともに、第1外径(D1)を最大外径とし、第2外径(D2)を最小外径として先端方向に外径が縮小するテーパ部分3221を有する先端部322と、基端部321と先端部322との境界に形成される段差部323とを有し;先端チップ50は第1外径(D1)と略同一の外径を有するとともに、先端チップ50の基端部51は、第1外径(D1)と略同一の内径を最大内径とし、第2外径(D2)と略同一の内径を最小内径として先端方向に内径が縮小するテーパ部分511を有し、インナーチューブ40の先端部42は、その先端面425と先端側ネック部32の段差部323とが接着された状態で、その外周面426と先端側ネック部32の基端部321の内周面327とが接着されることにより、先端側ネック部32の基端部321に固定され、先端チップ50の基端部51は、その内周面517と先端側ネック部32の先端部322の外周面326とが溶着されることにより、先端側ネック部32の先端部322に固定されているバルーンカテーテルである。
図1において、70は、金属チューブ20の基端に装着されたハブ、80はストレインリリーフである。
【0028】
バルーンカテーテル100を構成するアウターチューブ10には、バルーン30を拡張収縮させるための流体を流通するルーメン(拡張ルーメン)が形成されている。
【0029】
アウターチューブ10は、ポリアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂から構成される。
アウターチューブ10を構成するポリアミド系樹脂としては、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリエーテルブロックアミド〔PEBAX(登録商標)〕およびナイロンなどの熱可塑性樹脂を挙げることができ、これらのうちPEBAXが好ましい。
アウターチューブ10を構成する樹脂の硬度としては、D型硬度計による硬度で63〜80であることが好ましい。
なお、アウターチューブ10は、軸方向に沿って同じ硬度のポリアミド系樹脂により構成してもよいが、軸方向に沿って硬度の異なるポリアミド系樹脂を使用して一体的に形成することもできる。
【0030】
アウターチューブ10の外径は、通常0.70〜0.90mmとされ、好適な一例を示せば0.75mmとされる。
アウターチューブ10の内径は、通常0.55〜0.75mmとされ、好適な一例を示せば0.62mmとされる。
アウターチューブ10の長さは、通常150〜450mmとされ、好ましくは200〜400mmとされる。
【0031】
バルーンカテーテル100を構成する金属チューブ20には、アウターチューブ10のルーメンに連通するルーメン(拡張ルーメン)が形成されている。
金属チューブ20は、ステンレススチール、Ni−Ti合金、Cu−Mn−Al系合金などから構成されており、この金属チューブ20の先端部分には、螺旋状のスリットが形成されていてもよい。
【0032】
図1に示すように、金属チューブ20の先端部はアウターチューブ10の基端部に挿入されているとともに、金属チューブ20の基端部はハブ70に挿入されている。
【0033】
金属チューブ20の外径は、通常0.50〜0.80mmとされ、好適な一例を示せば0.65mmとされる。
金属チューブ20の内径は、通常0.40〜0.50mmとされ、好適な一例を示せば0.45mmとされる。
金属チューブ20の長さは、通常900〜1500mmとされ、好ましくは1000〜1200mmとされる。
【0034】
バルーンカテーテル100を構成するバルーン30は、拡張収縮するバルーン部33と基端側ネック部31と先端側ネック部32とからなる。
基端側ネック部31が、アウターチューブ10の先端部に固定されることにより、バルーン30は、アウターチューブ10の先端に装着されている。
バルーン30(バルーン部33)は、アウターチューブ10および金属チューブ20のルーメンを流通する液体によって拡張する。ここに、液体としては、生理食塩水や造影剤を挙げることができる。
【0035】
バルーン30は、ポリアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂から構成される。
バルーン30を構成するポリアミド系樹脂としては、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、PEBAXおよびナイロンなどの熱可塑性樹脂を挙げることができ、これらのうち、ナイロン12などのナイロンが好ましい。
バルーン30を構成する樹脂の硬度としては、D型硬度計による硬度で70〜90であることが好ましい。
拡張時におけるバルーン30(バルーン部33)の直径としては、通常1.0〜5.0mmとされ、好ましくは2.0〜3.5mmとされる。
バルーン30の長さとしては、通常5〜40mmとされ、好ましくは15〜30mmとされる。
【0036】
図2に示すように、バルーン30の先端側ネック部32は、第1外径(D1)および第1内径(d1)を有する基端部321と、第1内径(d1)よりも小さな第2内径(d2)を有するとともに、第1外径(D1)を最大外径とし、第2外径(D2)を最小外径として先端方向にその外径が縮小するテーパ部分3221を有する先端部322と、基端部321と先端部322との境界に形成される段差部323とを有している。
【0037】
基端部321の外径である第1外径(D1)としては、通常0.50〜1.30mmとされ、好適な一例を示せば0.60mmとされる。
また、基端部321の内径である第1内径(d1)としては、通常0.45〜0.60mmとされ、好適な一例を示せば0.48mmとされる。
【0038】
先端部322は、第1内径(d1)より小さな第2内径(d2)を有している。
先端部322は、第1外径(D1)を最大外径とし、第2外径(D2)を最小外径として先端方向に外径が縮小するテーパ部分3221と、テーパ部分3221の先端側に位置し、第2外径(D2)を有するストレート部分3222とからなる。
【0039】
先端部322の最小外径である第2外径(D2)としては、通常0.41〜1.20mmとされ、好適な一例を示せば0.45mmとされる。
また、先端部322の内径である第2内径(d2)は、後述するインナーチューブ40の内径と略同一であり、通常0.35〜0.55mmとされ、好適な一例を示せば0.40mmとされる。
【0040】
バルーンカテーテル100を構成するインナーチューブ40は、アウターチューブ10のルーメンおよびバルーン30の内部(内腔)に挿通されており、このインナーチューブ40によりガイドワイヤルーメンが形成される。
【0041】
図1に示すように、インナーチューブ40の基端部41は、アウターチューブ10の側面において開口してガイドワイヤポートPを形成している。
【0042】
インナーチューブ40は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂から構成されている。
インナーチューブ40の構成材料であるPEEK樹脂は、機械的特性に優れた結晶性の熱可塑性樹脂である。
【0043】
バルーンカテーテル100のインナーチューブ40を機械的特性に優れたPEEK樹脂で構成することにより、高圧条件でバルーン30の拡張・収縮を繰り返した後においても当該インナーチューブ40の変形(ガイドワイヤルーメンの潰れ)が起こりにくくなる。これにより、バルーンカテーテル100は、高い耐圧性(優れた耐スタック性)を発揮することができ、高い耐圧性が要求されるPTCA用のバルーンカテーテルとして好適に使用することができる。
【0044】
なお、バルーンカテーテル100の高い耐圧性(優れた耐スタック性)は、インナーチューブ40の肉厚(壁厚)を小さくした場合であっても達成することができる。
ここに、インナーチューブ40の肉厚(壁厚)としては、通常0.02〜0.06mm、好適な一例を示せば0.04mmとされ、従来のバルーンカテーテルを構成するポリアミド系樹脂からなるインナーチューブの肉厚(例えば0.05〜0.09mm)と比較して小さいものである。
【0045】
このようなインナーチューブ40の薄肉化により、当該インナーチューブ40の外径を小さくすることができ、延いては、ラッピング径およびバルーンの先端側における外径を十分に小さくすることができる。この結果、インナーチューブ40を備えた本実施形態のバルーンカテーテル100は、狭窄部などの細い血管部位に対する挿通性に優れたものとなる。
【0046】
図2に示すように、インナーチューブ40の先端部42は、その先端面425と先端側ネック部32の段差部323とが接着された状態で、その外周面426と先端側ネック部32の基端部321の内周面327とが接着されることにより、先端側ネック部32の基端部321に固定されている。
【0047】
ここに、インナーチューブ40を構成するPEEK樹脂の融点と、バルーン30を構成する熱可塑性樹脂(ポリアミド系樹脂)の融点とは大きく異なるため、インナーチューブ40の先端部42の先端面425と、先端側ネック部32の段差部323とを熱溶着させることはできず、また、インナーチューブ40の先端部42の外周面426と、先端側ネック部32の基端部321の内周面327とを熱溶着させることもできないが、インナーチューブ40の先端面425および外周面426が表面改質されていることによって、先端面425と段差部323との間、および、外周面426と内周面327との間において接着力が発現され、これにより、インナーチューブ40の先端部42は、先端側ネック部32の基端部321に対して接着されている。
【0048】
また、インナーチューブ40の先端部42が、先端側ネック部32に覆われた状態で、先端側ネック部32の基端部321に固定されているので、インナーチューブ40と先端側ネック部32との界面(先端面425と段差部323との接着面)におけるキンクを防止することができる。
【0049】
インナーチューブ40を構成する樹脂の硬度は、バルーン30の構成樹脂の硬度よりも高く、D型硬度計による硬度で85以上であることが好ましい。
インナーチューブ40の外径は、通常0.40〜0.60mmとされ、好適な一例を示せば0.48mmとされる。
インナーチューブ40の内径は、通常0.35〜0.55mmとされ、好適な一例を示せば0.40mmとされる。
【0050】
本実施形態のバルーンカテーテル100において、ガイドワイヤポートPの形成位置からバルーン30の基端位置までの軸方向の距離(L1)としては、通常150〜300mmとされる。
ガイドワイヤポートPの形成位置から金属チューブ20の先端までの軸方向の距離(L2)としては、通常0〜200mmとされる。
【0051】
バルーンカテーテル100を構成する先端チップ50は、基端部51と先端部52とを有しており、基端部51においてバルーン30の先端側ネック部32の先端部322に固定されている。
先端チップ50にはインナーチューブ40のルーメンに連通するルーメン(拡張ルーメン)が形成されており、先端チップ50の先端は開口している。
【0052】
バルーンカテーテル100を血管に挿入する際に、その先端部分によって血管を傷つけることがないよう、先端チップ50は軟質(低硬度)の樹脂のチューブ材料から構成されている。
ここに、先端チップ50を構成する樹脂の硬度は、バルーン30の構成樹脂の硬度よりも低く、D型硬度計による硬度で40〜72であることが好ましい。
インナーチューブ40の先端部42に、バルーン30の先端側ネック部32を介して、先端チップ50が固定され、基端側から、インナーチューブ40、先端側ネック部32、先端チップ50の順に配列されてなる本実施形態のバルーンカテーテル100において、先端チップ50の構成樹脂の硬度がバルーン30の構成樹脂の硬度よりも低く、インナーチューブ40の構成樹脂の硬度がバルーン30の構成樹脂の硬度よりも高いことにより、インナーチューブ40から先端チップ50に至る硬度変化が緩やかになり、これによってもキンクの発生を抑制することができる。
【0053】
先端チップ50の構成樹脂としては、バルーン30の構成樹脂と熱溶着できる樹脂から選択され、具体的には、ポリアミド、ポリエーテルアミド、PEBAX、ナイロン、ポリウレタンなどを挙げることができる。
【0054】
図2に示すように、先端チップ50(基端部51および先端部52)は、先端側ネック部32の基端部321の外径である第1外径(D1)と略同一の外径を有している。
【0055】
先端チップ50の先端部52は、先端側ネック部32の先端部322の内径である第2内径(d2)と略同一の内径を有している。
【0056】
先端チップ50の基端部51は、第1外径(D1)と略同一の内径を最大内径とし、先端側ネック部32の先端部322の最小外径である第2外径(D2)と略同一の内径を最小内径として先端方向に内径が縮小するテーパ部分511と、一定の内径を有するストレート部分512とからなる。
【0057】
先端チップ50を構成する熱可塑性樹脂(ポリアミド系樹脂)と、バルーン30を構成する熱可塑性樹脂とは熱溶着させることができ、先端チップ50の基端部51(テーパ部分511およびストレート部分512)の内周面517と、先端側ネック部32の先端部322(テーパ部分3221およびストレート部分3222)の外周面326とが溶着されることにより、先端チップ50の基端部51は、先端側ネック部32の先端部322に対して強固に固定されている。
【0058】
このように、先端チップ50の基端部51が先端側ネック部32の先端部322に対して強固に固定され、上述したように、インナーチューブ40の先端面425および外周面426が表面改質されていることによってインナーチューブ40の先端部42が先端側ネック部32の基端部321に対して接着されることにより、先端チップ50とインナーチューブ40とが互いに熱溶着できない材料から構成されていても、先端チップ50の基端部51を、バルーン30の先端側ネック部32を介して、インナーチューブ40の先端部42に対して確実に固定することができる。
【0059】
また、先端側ネック部32の先端部322のテーパ部分3221と、先端チップ50の基端部51のテーパ部分511とが溶着されていることにより、溶着部分における硬度を軸方向に連続的に変化させることができるため、当該溶着部分におけるキンクも防止することができる。
【0060】
バルーンカテーテル100を構成するコアワイヤ60は、ストレート部61とテーパ部62とからなる。コアワイヤ60は、テーパ部62を先端側にしてアウターチューブ10のルーメンに挿通されているとともに、コアワイヤ60の基端側の一部は、金属チューブ20のルーメンに挿通されている。
【0061】
コアワイヤ60は、ストレート部61の基端側において、金属チューブ20の内周面(金属チューブ20の先端位置から基端側に10〜150mm程度離間した位置における内周面)にスポット溶接されることにより、金属チューブ20に対して強固に溶着されている。
【0062】
本実施形態のバルーンカテーテル100によれば、機械的特性に優れたPEEK樹脂によって高強度の(潰れにくい)インナーチューブ40が構成されているので、高い耐圧性(優れた耐スタック性)を発揮することができる。
また、PEEK樹脂により構成される高強度のインナーチューブ40は、肉厚を小さくすることができるので、当該インナーチューブ40の外径を小さくすることができる。
しかも、先端側ネック部32の基端部321に、インナーチューブ40の先端部42が固定され、先端側ネック部32の先端部322に、先端チップ50の基端部51が固定されているので、バルーン30の先端側において、インナーチューブの先端部と、バルーンの先端側ネック部と、先端チップの基端部とが積層された状態(三層構成)となることはなく、従って、ラッピング径およびバルーンの先端側における外径を小さくすることができ、これにより、この実施形態のバルーンカテーテル100は、狭窄部などの細い血管部位に対する挿通性にも優れたものとなる。
【0063】
また、インナーチューブ40がPEEK樹脂によって構成され、先端チップ50がポリアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂により構成されていても、先端チップ50を確実に保持することができるとともに、インナーチューブ40と先端側ネック部32との界面(先端面425と段差部323との接着面)を含むバルーンの先端側において、キンクの発生を防止することができる。
【0064】
なお、本実施形態のバルーンカテーテルにおいて、種々の変更が可能である。
例えば、バルーンカテーテルのインナーチューブは、PEEK樹脂以外の樹脂から構成されていてもよく、金属など樹脂以外の材料により構成されていてもよい。
【0065】
また、
図2に示した先端側ネック部32の先端部322は、テーパ部分3221と、ストレート部分3222とからなるものであったが、
図3に示すように、第1外径(D1)を有するストレート部分3225と、先端方向に外径が縮小するテーパ部分3226と、第2外径(D2)を有するストレート部分3227とからなるもの(テーパ部分の両側にストレート部分が存在するもの)であってもよい。
また、先端側ネック部の先端部が、先端方向に外径が縮小するテーパ部分のみからなるものであってもよい。この場合には、先端チップの基端部が、先端方向に内径が縮小するテーパ部分のみからなる。
【0066】
<第2実施形態>
図4および
図5に示す本実施形態のバルーンカテーテル200は、下肢の末梢PTA(経皮的血管形成術)に使用される。
【0067】
このバルーンカテーテル200は、アウターチューブ15と、拡張収縮するバルーン部38の両端にネック部(基端側ネック部36および先端側ネック部37)を有し、アウターチューブ15の先端部に基端側ネック部36が固定されているバルーン35と、アウターチューブ15の基端に接続されたハブ70と、アウターチューブ15のルーメンおよびバルーン35の内部に挿通されてガイドワイヤルーメンを形成し、バルーン10の先端側ネック部37に固定されている先端部47を有するインナーチューブ45と、バルーン35の先端側ネック部37に固定されている基端部56を有し、インナーチューブ45のルーメンに連通するルーメンを形成し、その先端が開口している軟質チューブ材料からなる先端チップ55と、アウターチューブ15のルーメンに挿通されているコアワイヤ65とを備えてなり、インナーチューブ45の基端部46が、アウターチューブ15の側面において開口してガイドワイヤポートPを形成するラピッドエクスチェンジタイプのバルーンカテーテルであって、バルーン35の先端側ネック部37は、第1外径(D3)および第1内径(d3)を有する基端部371と、第1内径(d3)より小さな第2内径(d4)を有するとともに、第1外径(D3)を最大外径とし、第2外径(D4)を最小外径として先端方向に外径が縮小するテーパ部分3721を有する先端部372と、基端部371と先端部372との境界に形成される段差部373とを有し;先端チップ55は第1外径(D3)と略同一の外径を有するとともに、先端チップ55の基端部56は、第1外径(D3)と略同一の内径を最大内径とし、第2外径(D4)と略同一の内径を最小内径として先端方向に内径が縮小するテーパ部分561を有し、インナーチューブ45の先端部47は、その先端面475と先端側ネック部37の段差部373とが接着された状態で、その外周面476と先端側ネック部37の基端部371の内周面377とが接着されることにより、先端側ネック部37の基端部371に固定され、先端チップ55の基端部56は、その内周面567と先端側ネック部37の先端部372の外周面376とが溶着されることにより、先端側ネック部37の先端部372に固定されているバルーンカテーテルである。
図4において、80はストレインリリーフである。
【0068】
図4に示すように、バルーンカテーテル200を構成するアウターチューブ15は、バルーン35との接続位置からハブ70との接続位置に至る全長にわたり樹脂から構成されている。このアウターチューブ15には、バルーン35を拡張させるための流体を流通するルーメン(拡張ルーメン)が形成されている。
【0069】
バルーンカテーテル200を構成するアウターチューブ15には、バルーン35を拡張収縮させるための流体を流通するルーメン(拡張ルーメン)が形成されている。
【0070】
アウターチューブ15を構成するポリアミド系樹脂としては、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、PEBAXおよびナイロンなどの熱可塑性樹脂を挙げることができ、これらのうちPEBAXが好ましい。
アウターチューブ15を構成する樹脂の硬度としては、D型硬度計による硬度で63〜80であることが好ましい。
なお、アウターチューブ15は、軸方向に沿って同じ硬度のポリアミド系樹脂により構成してもよいが、軸方向に沿って硬度の異なるポリアミド系樹脂を使用して一体的に形成することもできる。
【0071】
アウターチューブ15の外径は、通常0.80〜1.30mmとされ、好適な一例を示せば1.20mmとされる。
アウターチューブ15の内径は、通常0.70〜1.00mmとされ、好適な一例を示せば0.85mmとされる。
アウターチューブ15の長さは、通常1200〜1700mmとされ、好ましくは1450〜1550mmとされる。
図4に示すように、アウターチューブ15の基端部はハブ70に挿入されている。
【0072】
バルーンカテーテル200を構成するバルーン35は、拡張収縮するバルーン部38と基端側ネック部36と先端側ネック部37とからなる。
基端側ネック部36が、アウターチューブ15の先端部に固定されることにより、バルーン35は、アウターチューブ15の先端に装着されている。
バルーン35(バルーン部38)は、アウターチューブ15のルーメンを流通する液体によって拡張する。ここに、液体としては生理食塩水や造影剤を挙げることができる。
【0073】
バルーン35は、ポリアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂から構成される。
バルーン35を構成するポリアミド系樹脂としては、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、PEBAXおよびナイロンなどの熱可塑性樹脂を挙げることができ、これらのうち、ナイロン12などのナイロンが好ましい。
バルーン35を構成する樹脂の硬度としては、D型硬度計による硬度で70〜90であることが好ましい。
【0074】
拡張時におけるバルーン35(バルーン部38)の直径としては、通常1.5〜8mmとされ、好ましくは2〜6mmとされる。
バルーン35の長さとしては、通常40〜300mm、好ましくは50〜200mmとされ、好適な一例を示せば120mmとされる。
【0075】
図5に示すように、バルーン35の先端側ネック部37は、第1外径(D3)および第1内径(d3)を有する基端部371と、第1内径(d3)よりも小さな第2内径(d4)を有するとともに、第1外径(D3)を最大外径とし、第2外径(D4)を最小外径として先端方向にその外径が縮小するテーパ部分3721を有する先端部372と、基端部371と先端部372との境界に形成される段差部373とを有している。
【0076】
基端部371の外径である第1外径(D3)としては、通常0.50〜1.30mmとされ、好適な一例を示せば0.60mmとされる。
また、基端部371の内径である第1内径(d3)としては、通常0.45〜0.60mmとされ、好適な一例を示せば0.48mmとされる。
【0077】
先端部372は、第1内径(d3)より小さな第2内径(d4)を有している。
先端部372は、第1外径(D3)を最大外径とし、第2外径(D4)を最小外径として先端方向に外径が縮小するテーパ部分3721と、テーパ部分3721の先端側に位置し、第2外径(D4)を有するストレート部分3722とからなる。
【0078】
先端部372の最小外径である第2外径(D4)としては、通常0.41〜1.20mmとされ、好適な一例を示せば0.45mmとされる。
また、先端部372の内径である第2内径(d4)は、後述するインナーチューブ45の内径と略同一であり、通常0.38〜0.42mmとされ、好適な一例を示せば0.40mmとされる。
【0079】
バルーンカテーテル200を構成するインナーチューブ45は、アウターチューブ15のルーメンおよびバルーン35の内部(内腔)に挿通されており、このインナーチューブ45によりガイドワイヤルーメンが形成される。
【0080】
図4に示すように、インナーチューブ45の基端部46は、アウターチューブ15の側面において開口してガイドワイヤポートPを形成している。
【0081】
インナーチューブ45は、PEEK樹脂から構成されている。
インナーチューブ45の構成材料であるPEEK樹脂は、機械的特性に優れた結晶性の熱可塑性樹脂である。
【0082】
機械的特性に優れたPEEK樹脂でインナーチューブ45を構成することにより、本実施形態のバルーンカテーテル200は、上記のような長いバルーン35を備えているにも関わらず優れたプッシャビリティを発揮することができ、下肢の末梢PTA用のバルーンカテーテルとして好適に使用することができる。
【0083】
なお、バルーンカテーテル200の優れたプッシャビリティは、インナーチューブ45の肉厚(壁厚)を小さくした場合であっても達成することができる。
ここに、インナーチューブ45の肉厚(壁厚)としては、通常0.03〜0.05mm、好適な一例を示せば0.04mmとされ、従来のバルーンカテーテルを構成するポリアミド系樹脂からなるインナーチューブの肉厚(例えば0.06〜0.08mm)と比較して小さいものである。
【0084】
このようなインナーチューブ45の薄肉化により、当該インナーチューブ45の外径を小さくすることができ、延いては、ラッピング径およびバルーンの先端側における外径を十分に小さくすることができる。この結果、インナーチューブ45を備えた本実施形態のバルーンカテーテル200は、狭窄部などの細い血管部位に対する挿通性に優れたものとなる。
【0085】
図5に示すように、インナーチューブ45の先端部47は、その先端面475と先端側ネック部37の段差部373とが接着された状態で、その外周面476と先端側ネック部37の基端部371の内周面377とが接着されることにより、先端側ネック部37の基端部371に固定されている。
【0086】
ここに、インナーチューブ45を構成するPEEK樹脂の融点と、バルーン35を構成する熱可塑性樹脂(ポリアミド系樹脂)の融点とは大きく異なるため、インナーチューブ45の先端部47の先端面475と、先端側ネック部37の段差部373とを熱溶着させることはできず、また、インナーチューブ45の先端部47の外周面476と、先端側ネック部37の基端部371の内周面377とを熱溶着させることもできないが、インナーチューブ45の先端面475および外周面476が表面改質されていることによって、先端面475と段差部373との間、および、外周面476と内周面377との間において接着力が発現され、これにより、インナーチューブ45の先端部47は、先端側ネック部37の基端部371に対して接着されている。
【0087】
また、インナーチューブ45の先端部47が、先端側ネック部37に覆われた状態で、先端側ネック部37の基端部371に固定されているので、インナーチューブ45と先端側ネック部37との界面(先端面475と段差部373との接着面)におけるキンクを防止することができる。
【0088】
インナーチューブ45を構成する樹脂の硬度は、バルーン35の構成樹脂の硬度よりも高く、D型硬度計による硬度で85以上であることが好ましい。
インナーチューブ45の外径は、通常0.46〜0.50mmとされ、好適な一例を示せば0.48mmとされる。
インナーチューブ45の内径は、通常0.38〜0.42mmとされ、好適な一例を示せば0.40mmとされる。
【0089】
バルーンカテーテル200を構成する先端チップ55は、基端部56と先端部57とを有しており、基端部56においてバルーン35の先端側ネック部37の先端部372に固定されている。
先端チップ55にはインナーチューブ45のルーメンに連通するルーメン(拡張ルーメン)が形成されており、先端チップ55の先端は開口している。
【0090】
バルーンカテーテル200を血管に挿入する際に、その先端部分によって血管を傷つけることがないよう、先端チップ55は軟質(低硬度)の樹脂のチューブ材料から構成されている。
ここに、先端チップ55を構成する樹脂の硬度は、バルーン35の構成樹脂の硬度よりも低く、D型硬度計による硬度で40〜72であることが好ましい。
インナーチューブ45の先端部47に、バルーン35の先端側ネック部37を介して、先端チップ55が固定され、基端側から、インナーチューブ45、先端側ネック部37、先端チップ55の順に配列されてなる本実施形態のバルーンカテーテル200において、先端チップ55の構成樹脂の硬度がバルーン35の構成樹脂の硬度よりも低く、インナーチューブ45の構成樹脂の硬度がバルーン35の構成樹脂の硬度よりも高いことにより、インナーチューブ45から先端チップ55に至る硬度変化が緩やかになり、これによってもキンクの発生を抑制することができる。
【0091】
先端チップ55の構成樹脂としては、バルーン35の構成樹脂と熱溶着できる樹脂から選択され、具体的には、ポリアミド、ポリエーテルアミド、PEBAX、ナイロン、ポリウレタンなどを挙げることができる。
【0092】
図5に示すように、先端チップ55(基端部56および先端部57)は、先端側ネック部37の基端部371の外径である第1外径(D3)と略同一の外径を有している。
【0093】
先端チップ55の先端部57は、先端側ネック部37の先端部372の内径である第2内径(d4)と略同一の内径を有している。
【0094】
先端チップ55の基端部56は、第1外径(D3)と略同一の内径を最大内径とし、先端側ネック部37の先端部372の最小外径である第2外径(D4)と略同一の内径を最小内径として先端方向に内径が縮小するテーパ部分561と、一定の内径を有するストレート部分562とからなる。
【0095】
先端チップ55を構成する熱可塑性樹脂(ポリアミド系樹脂)と、バルーン35を構成する熱可塑性樹脂とは熱溶着させることができ、先端チップ55の基端部56(テーパ部分561およびストレート部分562)の内周面567と、先端側ネック部37の先端部372(テーパ部分3721およびストレート部分3722)の外周面376とが溶着されることにより、先端チップ55の基端部56は、先端側ネック部37の先端部372に対して強固に固定されている。
【0096】
このように、先端チップ55の基端部56が先端側ネック部37の先端部372に対して強固に固定され、上述したように、インナーチューブ45の先端面475および外周面476が表面改質されていることによってインナーチューブ45の先端部47が先端側ネック部37の基端部371に対して固着されることにより、先端チップ55とインナーチューブ45とが互いに熱溶着できない材料から構成されていても、先端チップ55の基端部56を、バルーン35の先端側ネック部37を介して、インナーチューブ45の先端部47に対して確実に固定することができる。
【0097】
また、先端側ネック部37の先端部372のテーパ部分3721と、先端チップ55の基端部56のテーパ部分561とが溶着されていることにより、溶着部分における硬度を軸方向に連続的に変化させることができるため、当該溶着部分におけるキンクも防止することができる。
【0098】
バルーンカテーテル200を構成するコアワイヤ65は、ストレート部66とテーパ部67とからなる。コアワイヤ65は、テーパ部67を先端側にしてアウターチューブ15のルーメン(拡張ルーメン)に挿通されている。
【0099】
図4に示すように、コアワイヤ65の基端はハブ70の内部まで到達している。これにより、アウターシャフト15の全長にわたって十分な剛性を確保することができる。
【0100】
コアワイヤ65は、ストレート部66の基端側において、アウターチューブ15の内周面(ガイドワイヤポートPの形成位置より基端側における内周面)に固着されている。
【0101】
本実施形態のバルーンカテーテル200において、ガイドワイヤポートPの形成位置からバルーン35の後端位置までの軸方向の距離(L3)は、バルーン35の長さによって異なるが、例えば120〜300mmとされる。
ガイドワイヤポートPの形成位置から、コアワイヤ65がアウターシャフト10の内周面に固着されている位置(
図4に示す固着位置90)までの軸方向の距離(L4)としては600mm以下であることが好ましく、更に好ましくは1〜150mmとされる。
【0102】
本実施形態のバルーンカテーテル200によれば、機械的特性に優れたPEEK樹脂によって高強度のインナーチューブ45が構成されているので、長いバルーン35を備えているものでありながら優れたプッシャビリティを発揮することができる。
また、PEEK樹脂により構成される高強度のインナーチューブ45は、肉厚を小さくすることができるので、当該インナーチューブ45の外径を小さくすることができる。
しかも、先端側ネック部37の基端部371に、インナーチューブ45の先端部47が固定され、先端側ネック部37の先端部372に、先端チップ55の基端部56が固定されているので、バルーン35の先端側において、インナーチューブの先端部と、バルーンの先端側ネック部と、先端チップの基端部とが積層された状態(三層構成)となることはなく、従って、ラッピング径およびバルーンの先端側における外径を小さくすることができ、これにより、この実施形態のバルーンカテーテル200は、狭窄部などの細い血管部位に対する挿通性にも優れたものとなる。
【0103】
また、インナーチューブ45がPEEK樹脂によって構成され、先端チップ55がポリアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂により構成されていても、先端チップ55を確実に保持することができるとともに、インナーチューブ45と先端側ネック部37との界面(先端面475と段差部373との接着面)を含むバルーンの先端側において、キンクの発生を防止することができる。