特許第6388361号(P6388361)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリンパス株式会社の特許一覧

特許6388361駆動ユニット、光学ユニット、撮像装置及び内視鏡
<>
  • 特許6388361-駆動ユニット、光学ユニット、撮像装置及び内視鏡 図000002
  • 特許6388361-駆動ユニット、光学ユニット、撮像装置及び内視鏡 図000003
  • 特許6388361-駆動ユニット、光学ユニット、撮像装置及び内視鏡 図000004
  • 特許6388361-駆動ユニット、光学ユニット、撮像装置及び内視鏡 図000005
  • 特許6388361-駆動ユニット、光学ユニット、撮像装置及び内視鏡 図000006
  • 特許6388361-駆動ユニット、光学ユニット、撮像装置及び内視鏡 図000007
  • 特許6388361-駆動ユニット、光学ユニット、撮像装置及び内視鏡 図000008
  • 特許6388361-駆動ユニット、光学ユニット、撮像装置及び内視鏡 図000009
  • 特許6388361-駆動ユニット、光学ユニット、撮像装置及び内視鏡 図000010
  • 特許6388361-駆動ユニット、光学ユニット、撮像装置及び内視鏡 図000011
  • 特許6388361-駆動ユニット、光学ユニット、撮像装置及び内視鏡 図000012
  • 特許6388361-駆動ユニット、光学ユニット、撮像装置及び内視鏡 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388361
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】駆動ユニット、光学ユニット、撮像装置及び内視鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20060101AFI20180903BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20180903BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   G02B7/04 E
   A61B1/00 715
   A61B1/00 731
   G02B23/24 B
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-13274(P2014-13274)
(22)【出願日】2014年1月28日
(65)【公開番号】特開2015-141278(P2015-141278A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2017年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100097777
【弁理士】
【氏名又は名称】韮澤 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100145920
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 聡
(72)【発明者】
【氏名】河野 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】井口 武彦
【審査官】 辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−308780(JP,A)
【文献】 特開2007−041616(JP,A)
【文献】 特開平10−133126(JP,A)
【文献】 特開2004−280039(JP,A)
【文献】 特許第5274733(JP,B1)
【文献】 特開2007−174222(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/066681(WO,A1)
【文献】 特開2005−064887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
A61B 1/00
G02B 23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸を中心とした筒形状の固定部と、
前記固定部の内側に配置され前記軸を中心とした筒形状の可動部と、
前記固定部の一端側に取り付けられ、少なくとも磁性体を有する前枠部と、
前記固定部の外周に巻かれたコイルと、前記可動部に配置された磁石と、によって、前記可動部を前記固定部に対して、前記軸方向に相対移動させることが可能なボイスコイルモータと、
を備え、
前記可動部の磁石は、前記磁性体によって付勢され、
前記コイルの軸方向の幅は、前記磁石の軸方向の幅より長い
ことを特徴とする駆動ユニット。
【請求項2】
前記磁石は、前記可動部の外周側に配置され、
前記前枠部の少なくとも一部は、前記可動部の内周側に配置される
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
前記磁性体の少なくとも一部は、前記可動部の内周側に配置される
請求項1又は2に記載の駆動ユニット。
【請求項4】
前記前枠部は、前記磁性体からなる
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の駆動ユニット。
【請求項5】
前記磁性体は、透磁率が1.0001以上である
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の駆動ユニット。
【請求項6】
前記軸から前記可動部の磁石の径方向の外側の面までの第1の距離は、前記軸から前記固定部の内周面までの第2の距離より長い
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の駆動ユニット。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の駆動ユニットの前記可動部に取り付けられる可動レンズ群を有する
ことを特徴とする光学ユニット。
【請求項8】
前記前枠部に取り付けられる前レンズ群を有する
請求項7に記載の光学ユニット。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の前記光学ユニットと、
前記固定部の他端側に取り付けられ、光学部材を有する後枠部と、
を備え、
前記後枠部は、
前記可動レンズ群を通過した光が入射する前記光学部材としての後レンズ群と、
前記後レンズ群を通過した光が入射する撮像素子と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項9に記載の前記撮像装置を備える
ことを特徴とする内視鏡。
【請求項11】
前記可動部は前記前枠部側に付勢される
請求項10に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイスコイルモータを用いて可動部を進退駆動する駆動ユニット、光学ユニット、撮像装置及び内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動ユニットを移動する駆動力として、ボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)が用いられることがある。また、近年、診断技術の進歩により、内視鏡観察において可変焦点、可変視野角等、光学特性を変更することが可能なものが望まれている。通常観察及び拡大観察が可能な内視鏡では、挿入部内に内蔵される撮像装置内に光学レンズを有する移動ユニットを光軸方向に移動させる移動手段が備えられている。このような内視鏡における移動手段としてもVCMが用いられることがある。このような場合、移動ユニットがワイド端(広角)側に移動されているときに通常観察状態となり、テレ端(望遠)側に移動されるにしたがって拡大観察状態になる。内視鏡観察においては通常観察状態で使用される場合が多く、ボイスコイルモータで移動ユニットをワイド端面に当てつけて保持する場合、移動ユニットの位置を保持するため、ボイスコイルモータには、常に電流を流す必要があった。そのため、ボイスコイルモータの消費電力が増大し、コイルからの発熱によって温度上昇が生じる場合があった。そこで、移動ユニットの端面当てつけに必要な力を小さくし、コイルに流れる電流を減らす方法として、磁気回路からの漏れ磁束を利用し付勢力を発生させる技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4804325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたボイスコイルモータでは、磁気回路を形成するヨークが必要であり、装置の小型化及び軽量化の妨げとなっていた。
【0005】
本発明にかかる実施形態は、ボイスコイルモータを用いて固定部に対して可動部を進退駆動することができると共に、簡単な構造で付勢力を発生する小型化及び軽量化された駆動ユニット、光学ユニット、撮像装置及び内視鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る駆動ユニットは、所定の軸を中心とした筒形状の固定部と、前記固定部の内側に配置され前記軸を中心とした筒形状の可動部と、前記固定部の一端側に取り付けられ、少なくとも磁性体を有する前枠部と、前記固定部に配置されたコイルと、前記可動部に配置された磁石と、によって、前記可動部を前記固定部に対して、前記軸方向に相対移動させることが可能なボイスコイルモータと、を備え、前記可動部の磁石は、前記コイルの非通電時に前記磁性体によって付勢されることを特徴とする。
【0007】
本発明のある態様に係る撮像装置は、前記光学ユニットと、前記固定部の他端側に取り付けられ後枠部と、を備え、前記後枠部は、前記光学部材を通過した光が入射する後レンズ群と、前記後レンズ群を通過した光が入射する撮像素子と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明のある態様に係る内視鏡は、前記撮像装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる実施形態によれば、ボイスコイルモータを用いて固定部に対して可動部を進退駆動することができると共に、簡単な構造で付勢力を発生する小型化及び軽量化された駆動ユニット、光学ユニット、撮像装置、及び内視鏡を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の駆動ユニットを示す軸に直交する断面図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3図1のB−B断面図である。
図4】第1実施形態の駆動ユニットの固定部を示す図である。
図5】第1実施形態の駆動ユニットの可動部を示す図である。
図6】第1実施形態の駆動ユニットの前枠部を示す図である。
図7】第1実施形態の駆動ユニットの作動状態を示す図である。
図8】本実施形態の駆動ユニットの作動状態を示す図である。
図9】本実施形態の光学ユニット及び撮像装置を示す断面図である。
図10】本実施形態の撮像装置を備えたデジタルカメラの一例を示す図である。
図11】本実施形態のデジタルカメラの主要部の内部回路を示すブロック図である。
図12】本実施形態の撮像装置を備えた内視鏡の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態の駆動ユニットについて説明する。
【0012】
図1は、第1実施形態の駆動ユニットを示す軸に直交する断面図である。図2は、図1におけるA−A断面図、図3は、図1におけるB−B断面図である。図4は、本実施形態の駆動ユニットの固定部を示す図である。図5は、本実施形態の駆動ユニットの可動部を示す図である。図6は、本実施形態の駆動ユニットの前枠部を示す図である。図7は、本実施形態の駆動ユニットの磁性体を示す図である。なお、図1の断面図は、図2及び図3におけるZ−Z断面図である。
【0013】
本実施形態の駆動ユニット1は、固定部2と、固定部2に対して移動可能な可動部3と、固定部2に取り付けられた前枠部4と、固定部2に対して可動部3を移動させる駆動力を発生するボイスコイルモータ10と、を備える。
【0014】
固定部2は、図4に示すように、所定の軸Cに対して筒形状の部材からなる。本実施形態の固定部2は、筒部21と、筒部21の外周側の一部に形成された平面部22と、を有する。なお、筒部21及び平面部22の内周面23は筒状のシリンドリカル面でよい。平面部22の一部には、肉抜き部2aが形成される。第1実施形態では、筒部21の軸Cを中心として90°毎に径方向に対して直交する4つの平面部22が形成され、各平面部22のうち、軸方向の両端部を残して肉抜き部としての孔2aが形成される。なお、孔2aは、少なくとも平面部22の一部に形成されればよく、筒部21の一部にはみ出すように形成されてもよい。
【0015】
可動部3は、図5に示すように、所定の軸Cに対して筒形状の部材からなる。本実施形態の可動部3は、筒部31と、筒部31の軸C方向の両端部に形成され、筒部31よりも外周の径が大きい突縁部32と、突縁部32の外周側の一部に形成された平面部33と、軸C方向で両端の平面部33の間で筒部31よりも内周側に形成される段差部34と、図2及び3に示すように、軸方向の一方で筒部31の内周面よりも内径が小さく形成される小内径部35と、を有する。可動部3の筒部31と突縁部32は、別体の部材を組み立てる構成でもよい。
【0016】
本実施形態では、筒部31の軸Cを中心として90°毎に4つの段差部34が形成され、各段差部34は、軸Cの中心に対して90°毎に、径方向に対して直交する平面を形成する。
【0017】
前枠部4は、外周部41と内周部42とを有する筒状の部材であって、磁性体からなる。外周部41は、第1外周部41a、第2外周部41b、第3外周部41c、第1外段部41d及び第2外段部41eを有する。内周部42は、第1内周部42a、第2内周部42b、第3内周部42c、第1内段部42d及び第2内段部42eを有する。
【0018】
第1外周部41aは外周部41のうち最も大径の部分であって、第3外周部41cは外周部41のうち最も小径の部分である。第2外周部41bは、第1外周部41aと第3外周部41cの間の長さの径を有する。第1外周部41aと第2外周部41bの間には第1外段部41dが形成され、第2外周部41bと第3外周部41cの間には第2外段部41eが形成されている。
【0019】
第1内周部42aは内周部42のうち最も大径の部分であって、第3内周部42cは内周部42のうち最も小径の部分である。第2内周部42bは、第1内周部42aと第3内周部42cの間の長さの径を有する。第1内周部42aと第2内周部42bの間には第1内段部42dが形成され、第2内周部42bと第3内周部42cの間には第2内段部42eが形成されている。
【0020】
前枠部4は、比透磁率が1.0001以上の磁性体を有する。本実施形態の前枠部4は、全体を磁性体としてのオーステナイト系ステンレスで形成しているが、少なく一部に磁性体を有しているものでもよい。また、素材を銅、銀、鉛のような比透磁率の低い材料で形成し、ニッケルメッキ等の処理を施すことによって、比透磁率が1.0001以上となるように形成してもよい。
【0021】
図2及び3に示すように、ボイスコイルモータ10は、固定部2に配置されたコイル11と、コイル11に対向するように可動部3に配置された磁石12と、を有する。
【0022】
図2に示すように、本実施形態のコイル11は、固定部2の外周に巻かれる。コイル11は、固定部2の孔2aに対応する平面11pを有する。すなわち、コイル11は、周方向に平面部11pと円筒部11tとが交互に配置される。
【0023】
図2に示すように、磁石12は、コイル11の平面部11pに対向するように、軸中心に対して90°毎に、可動部3の段差部34に配置される。そのため、磁石12を安定して設置することができ、安定した磁界が形成され、固定部2に対して移動する可動部3のブレを抑制することが可能となる。磁石12は、径方向に着磁される。例えば、磁石12のコイル11側をN極、その反対側をS極とすればよい。
【0024】
本実施形態の駆動ユニット1は、コイル11の巻かれた固定部2の内周側に、コイル11に対向して磁石12を設置した可動部3が配置される。したがって、コイル11の平面部11pは、磁石12の径方向の外側の面121に直交する方向の磁界の中に存在する。したがって、駆動効率が向上し、可動部3を迅速に移動させることが可能となる。また、磁石12の径方向の外側の面121を平面で形成することで、駆動ユニット1を容易に組み立てることが可能となる。
【0025】
コイル11の軸方向の幅は、磁石12の軸方向の幅よりも長くし、可動部3の移動範囲内で磁石12が常にコイル11の軸方向の幅内にそれぞれ存在するように設定することが好ましい。
【0026】
図2及び図3に示すように、可動部3に磁石12を設置した状態では、磁石12の径方向の外側の面121が固定部2の孔2a内に配置される。すなわち、それぞれ軸Cから磁石12の径方向の外側の面121までの第1の距離は、軸Cから固定部2の内周面23までの第2の距離よりも長い。第1の距離を第2の距離よりも長くすることで、固定部2の径を小さくすることができ、駆動ユニット1を小型化及び軽量化することが可能となる。その結果、駆動ユニット1は、駆動効率が向上し、可動部3を迅速に移動させることが可能となる。
【0027】
また、図3に示すように、可動部3の突縁部32の外周面は、固定部2の内周面23に接触する摺動面32aを構成する。固定部2の内周面23と可動部3の摺動面32aを接触させることで、固定部2に対して可動部3を常に接触した状態で移動させることができ、固定部2に対する可動部3の傾斜を抑制することができ、可動部3を的確に移動させることが可能となる。
【0028】
さらに、駆動ユニット1は、軸Cに対して対称に形成されることが好ましい。固定部2の内周面23と可動部3の摺動面32aを接触させる構造に加えて、駆動ユニット1全体を軸Cに対して対称に形成することで、重心を軸C上に配置することができ、固定部2に対する可動部3の傾斜をさらに抑制すること、つまり、固定部2と可動部3との当て付け平行度を維持することが可能となる。
【0029】
なお、本実施形態では、軸Cを中心として90°毎に磁石12を設置したが、90°に限らず、他の角度で複数設置されてもよい。
【0030】
前枠部4は、第3外周部41cが可動部3の内周面の内側に配置されるように挿入され、且つ、固定部2の一端部が第1外段部41dに接触するまで、第2外周部41bが固定部2の内周面23に接触しながら挿入される。
【0031】
図7は、磁石によって発生する磁界に磁性体を配置した模式図である。
【0032】
本実施形態の磁石12は、軸Cに対して直交する方向に着磁されている。したがって、磁石12が発生する磁界は、図7に示すように、磁石12のN極からS極に向かう矢印で示される。磁石12の着磁方向に磁性体4aを配置すると、磁性体4aには、磁束密度の2乗及び磁石12の表面積に比例する磁力が発生する。
【0033】
本実施形態では、磁石12と磁性体4aを軸Cの方向にずらして配置する。すると、図7に示した領域Dのベクトル成分は磁性体4aには影響しない。したがって、磁性体4aにかかる磁力のバランスがくずれ、付勢力が発生する。本実施形態の場合、前枠部4は固定部2に取り付けられ、磁石12が可動部3に設置されているので、磁石12に矢印Eの方向の付勢力が働く。すなわち、前枠部4の第2外段部41eに可動部3が接触する方向の付勢力が働くこととなる。
【0034】
図8は、本実施形態の駆動ユニットの作動状態を示す図である。
【0035】
駆動ユニット1のコイル11に電流を流すと、磁石12の磁界の影響によって、可動部3に軸方向の力が発生し、固定部2に対して可動部3が矢印Fの方向に移動する。例えば、コイル11に流す電流を制御することによって、可動部3は、固定部2に対して、図2に示す位置から図8に示す位置まで移動することが可能となる。なお、可動部3が移動している状態でも磁石12の径方向の外側の面は、固定部2の孔2a内に配置される。
【0036】
その後、コイル11に流れる電流を止めると、図7に示した理由によって、可動部3は、図2の状態に戻ろうとする。図2の状態では、磁石12に付勢力が働いて、コイル11に流す電流を小さくでき、もしくは電流を流さずに、可動部2は第2上段部41eに接触した位置で保持される。
【0037】
このように、本実施形態の駆動ユニット1は、小型で軽量に形成することができ、駆動効率が向上し、可動部3を迅速に作動させることが可能となる。また、作動中も固定部2の内周面23と可動部3の摺動面32aが接触することで、固定部2に対する可動部3の傾斜を抑制することができ、可動部3を的確に移動させることが可能となる。さらに、磁石12が磁性体4aに対して付勢力を発生するので、可動部3を的確に保持することが可能となる。
【0038】
図9は、本実施形態の光学ユニット70及び撮像装置80を示す図である。
【0039】
光学ユニット70は、第1実施形態と同様の駆動ユニット1と、駆動ユニット1の前枠部4に取り付けられた前レンズ群Gfと、可動部3の小内径部35に取り付けられた可動レンズ群Gvと、を有する。
【0040】
前レンズ群Gfは、第1内周部42aに取り付けられた第1前レンズLf1と、第2内周部42bに取り付けられた第2前レンズLf2と、第3内周部42cに取り付けられた第3前レンズLf3と、を有する。可動レンズ群Gvは、可動レンズLvを有する。各レンズの中心軸は、駆動ユニット1の軸Cと同一であることが好ましい。
【0041】
光学ユニット70は、可動レンズ群Gvに可動レンズLvを取り付けた状態で、固定部2に対して可動部3が軸C方向に移動可能な状態となっている。固定部2に対して可動部3を移動させることによって、光学ユニット70の焦点位置を移動させることが可能となる。
【0042】
撮像装置80は、光学ユニット70と、光学ユニット70の像側で固定部2に取り付けられた後枠部5に取り付けられる後レンズ群Gbと、像面に受光部が配置される撮像素子枠6に取り付けられた撮像素子ISと、を有する。なお、後枠部5と撮像素子枠6は、一体に形成して後枠部としてもよい。
【0043】
本実施形態の後レンズ群Gbは、固定部2に圧入又は接着等によって取り付けられる後枠部5に保持される第1後レンズLb1を有する。本実施形態の撮像素子ISは、CCD又はCMOS等の各種形式のイメージセンサからなり、撮像素子枠6に保持される。撮像素子ISの物体側には、フィルター又はカバーガラス等の光学素子ODが隣接して配置される。
【0044】
なお、前レンズ群Gf、後レンズ群Gb及び可動レンズ群Gvのレンズ構成は、本実施形態に限らず、適宜変更してもよい。また、本実施形態では、上述のように固定部2に対して前枠部4および後枠部5が接着され、また後枠部5に撮像素子枠6が保持されている構成としたが、固定部2に対するこれらの枠のうち1つまたは複数をまとめて固定部と見なすこともできる。
【0045】
本実施形態の撮像装置80では、可動部3が移動可能範囲の最も像側に位置している場合に撮影倍率が最も高く、可動部3が移動可能範囲の最も物体側に位置している場合に撮影倍率が最も低い。言い換えると、可動部3が移動可能範囲の最も像側に位置している場合に焦点距離が最も長く、視野が狭いテレ端の状態であり、可動部3が移動可能範囲の最も物体側に位置している場合に焦点距離が最も短く、視野が広いワイド端の状態である。
【0046】
このように、駆動ユニット1を小型化及び軽量化することで、撮像装置80を小型化及び軽量化することが可能となる。また、固定部2に対して可動部3を移動させることによって、撮像装置80のズーム変更を迅速に行うことが可能となる。
【0047】
さて、以上のような本実施形態の撮像装置80は、電子撮影装置、とりわけデジタルカメラやビデオカメラ等に用いることができる。以下に、その実施形態を例示する。
【0048】
図10は、本実施形態の撮像装置80を備えたデジタルカメラ81の一例を示す図である。
【0049】
撮像装置80は、デジタルカメラ81、デジタルビデオカメラ、又は携帯電話等の製品に用いることが可能である。本実施形態の撮像装置80は、デジタルカメラ81に用いた場合について説明する。
【0050】
本実施形態のデジタルカメラ81は、図10に示すように、カメラ本体82及び交換レンズとしてのレンズ鏡筒83を有する。なお、カメラ本体82とレンズ鏡筒83とは、脱着可能な構成を有してもよいし、一体に形成されてもよい。
【0051】
カメラ本体82には、撮像素子ISが配設されており、被写体像を電子的に撮像し記録する。撮像素子ISの受光部には、入射する光に応じた電気信号を所定のタイミングで出力する複数の素子が面状に配列されている。レンズ鏡筒83には、光軸CLの方向に沿って複数の対物レンズ86が設けられ、図9に示した光学ユニット70が含まれている。すなわち、カメラ本体82とレンズ鏡筒83の一部が、撮像装置80を構成する。なお、レンズ鏡筒83に図9に示した前レンズ群Gfを配設し、カメラ本体82に図9に示した光学ユニット70及び後レンズ群Gbを配設してもよい。
【0052】
カメラ本体82の上部には、撮影者が撮像動作の指示を入力するためのレリーズスイッチ84及び撮影者がカメラ本体82の電源オン及び電源オフの指示を入力するための電源スイッチ85が配設されている。
【0053】
本実施形態では、レリーズスイッチ84は、押しボタン型のスイッチである。レリーズスイッチ84を全押下量の途中まで押下する半押し操作を行うと、撮像装置80がオートフォーカス等の動作を行う。レリーズスイッチ84を半押し操作からさらに押下し、全押し操作すると、撮像動作を行い、画像を記録する。なお、レリーズスイッチ84は、押しボタン型に限らず、タッチセンサ等の他の形態のスイッチでもよい。
【0054】
図示しないカメラの背面には、画像表示部及び撮像装置80のズーム動作を指示するズーム操作部等が配設されている。また、カメラ本体82には、電力を供給するための一次電池又は二次電池を収容する電池収容部及び画像を記録するためのフラッシュメモリを収容する記録媒体収容部が配設されている。
【0055】
図11は、本実施形態のデジタルカメラ80の主要部の内部回路を示すブロック図である。なお、以下の説明では、処理手段は、例えば、CDS/ADC部124、一時記憶メモリ117、画像処理部118等で構成され、記憶手段は、記憶媒体部等で構成される。
【0056】
図11に示されるように、デジタルカメラ81は、操作部112と、この操作部112に接続された制御部113と、この制御部113の制御信号出力ポートにバス114及び115を介して接続された撮像駆動回路116並びに一時記憶メモリ117、画像処理部118、記憶媒体部119、表示部120、及び設定情報記憶メモリ部121を備えている。
【0057】
上記の一時記憶メモリ117、画像処理部118、記憶媒体部119、表示部120、及び設定情報記憶メモリ部121は、バス122を介して相互にデータの入力、出力が可能とされている。また、撮像駆動回路116には、撮像素子ISとCDS/ADC部124が接続されている。
【0058】
操作部112は、各種の入力ボタンやスイッチを備え、これらを介して外部(カメラ使用者)から入力されるイベント情報を制御部113に通知する。制御部113は、例えばCPUなどからなる中央演算処理装置であって、不図示のプログラムメモリを内蔵し、プログラムメモリに格納されているプログラムに従って、デジタルカメラ81全体を制御する。
【0059】
CCD等の撮像素子ISは、撮像駆動回路116により駆動制御され、光学ユニット70を介して形成された物体像の画素ごとの光量を電気信号に変換し、CDS/ADC部124に出力する撮像素子である。
【0060】
CDS/ADC部124は、撮像素子ISから入力される電気信号を増幅し、かつ、アナログ/デジタル変換を行って、この増幅とデジタル変換を行っただけの映像生データ(ベイヤーデータ、以下RAWデータという。)を一時記憶メモリ117に出力する回路である。
【0061】
一時記憶メモリ117は、例えばSDRAM等からなるバッファであり、CDS/ADC部124から出力されるRAWデータを一時的に記憶するメモリ装置である。画像処理部118は、一時記憶メモリ117に記憶されたRAWデータ又は記憶媒体部119に記憶されているRAWデータを読み出して、制御部113にて指定された画質パラメータに基づいて歪曲収差補正を含む各種画像処理を電気的に行う回路である。
【0062】
記憶媒体部119は、例えばフラッシュメモリ等からなるカード型又はスティック型の記憶媒体を着脱自在に装着して、これらのフラッシュメモリに、一時記憶メモリ117から転送されるRAWデータや画像処理部118で画像処理された画像データを記録して保持する。
【0063】
表示部120は、液晶表示モニターなどにて構成され、撮影したRAWデータ、画像データや操作メニューなどを表示する。設定情報記憶メモリ部121には、予め各種の画質パラメータが格納されているROM部と、操作部112の入力操作によってROM部から読み出された画質パラメータを記憶するRAM部が備えられている。
【0064】
このように構成されたデジタルカメラ81は、本実施形態の光学ユニット70を採用することで、小型で動画撮像に適した撮像装置80とすることが可能となる。
【0065】
図12は、本実施形態の撮像装置80を備えた内視鏡90の一例を示す図である。
【0066】
本実施形態の内視鏡90は、人体等の被検体内に導入可能であって、被検体内の所定の観察部位を光学的に撮像する。なお、内視鏡90が導入される被検体は、人体に限らず、他の生体でもよく、機械、建造物等の人工物でもよい。
【0067】
内視鏡90は、被検体の内部に導入される挿入部91と、挿入部91の基端に位置する操作部92と、操作部92から延出される複合ケーブルとしてのユニバーサルケーブル93と、を備える。
【0068】
挿入部91は、先端に配設される先端部91a、先端部91aの基端側に配設される湾曲自在な湾曲部91b、及び湾曲部91bの基端側に配設されて操作部92の先端側に接続され可撓性を有する可撓管部91cを有する。先端部91aには、図9に示した撮像装置80が内蔵されている。なお、内視鏡90は、挿入部91に可撓管部91cを有しない硬性内視鏡でもよい。
【0069】
操作部92は、湾曲部91bの湾曲状態を操作するアングル操作部92aと、図9に示したボイスコイルモータ10の動作を指示し、撮像装置80のズーム動作を行うズーム操作部92bと、を有する。アングル操作部92aはノブ形状で形成され、ズーム操作部92bはレバー形状で形成されているが、それぞれボリュームスイッチ、プッシュスイッチ等の他の形式であってもよい。
【0070】
ユニバーサルコード93は、操作部92と外部装置94とを接続する部材である。外部装置94とは、コネクタ93aを介して接続される。外部装置94は、湾曲部91bの湾曲状態を制御する駆動制御部94a、撮像装置80を制御する画像制御部94b、及び図示しない光源部及び光源部を制御する光源制御部94c等を有する。
【0071】
挿入部91、操作部92、及びユニバーサルコード93には、ワイヤ、電気線及び光ファイバ等のケーブル95が挿通される。ワイヤは、外部装置94に配設された駆動制御部94aと操作部92及び湾曲部91bとを接続する。電気線は、撮像装置80と操作部92及び画像制御部94bとを電気的に接続する。光ファイバは、光源と操作部92及び光源制御部94cとを光学的に接続する。
【0072】
駆動制御部94aは、アクチュエータ等からなり、ワイヤを進退させることで湾曲部91bの湾曲状態を制御する。画像制御部94bは、図9に示した撮像装置80に内蔵するボイスコイルモータ10の駆動制御及び撮像素子ISが撮像した画像の処理を行う。画像制御部94bが処理した画像は、画像表示部96に表示される。光源制御部94cは、先端部91aから照射される光源の明るさ等を制御する。
【0073】
なお、操作部92及び外部装置94は、挿入部91と別体で形成され、遠隔操作によって挿入部91を操作及び制御してもよい。
【0074】
このように構成された内視鏡90は、本実施形態の撮像装置80を採用することで、小型で迅速にズーム変更することができ、動画撮像に適したものとすることが可能となる。
【0075】
このように本実施形態によれば、所定の軸Cを中心とした筒形状の固定部2と、固定部2の内側に配置され軸Cを中心とした筒形状の可動部3と、固定部2の一端側に取り付けられ、少なくとも磁性体を有する前枠部4と、 固定部2に配置されたコイル11と、可動部3に配置された磁石12と、によって、可動部3を固定部2に対して、軸C方向に相対移動させることが可能なボイスコイルモータ10と、を備え、可動部3の磁石12は、磁性体によって付勢されるので、ボイスコイルモータを用いて固定部に対して可動部を進退駆動することができると共に、簡単な構造で付勢力を発生する小型化及び軽量化された駆動ユニット1を提供することが可能となる。
【0076】
本実施形態では、磁石12は、可動部3の外周側に配置され、前枠部4の少なくとも一部は、可動部3の内周側に配置されるので、より小型化及び軽量化された駆動ユニット1を提供することが可能となる。
【0077】
本実施形態は、磁性体の少なくとも一部は、可動部3の内周側に配置されるので、より小型化及び軽量化された駆動ユニット1を提供することが可能となる。
【0078】
本実施形態は、前枠部4は、磁性体からなるので、より小型化及び軽量化された駆動ユニット1を提供することが可能となる。
【0079】
本実施形態では、磁性体は、透磁率が1.0001以上であるので、可動部3を的確に付勢する駆動ユニット1を提供することが可能となる。
【0080】
本実施形態では、駆動ユニット1の可動部3に取り付けられる可動レンズ群Gvを有するので、固定部2に対して可動部3を移動させることによって、焦点位置を移動させる光学ユニット70を提供することが可能となる。
【0081】
本実施形態では、前枠部4に取り付けられる前レンズ群Gfを有するので、高性能の光学ユニット70を提供することが可能となる。
【0082】
本実施形態では、光学ユニット70と、固定部2の他端側に取り付けられ後枠部5と、を備え、後枠部5は、可動レンズ群Gvを通過した光が入射する後レンズ群Gbと、後レンズ群Gbを通過した光が入射する撮像素子ISと、を有するので、小型化及び軽量化されルと共に、ズーム変更を迅速に行う撮像装置80を提供することが可能となる。
【0083】
本実施形態では、撮像装置80を備えるので、小型で迅速にズーム変更することができ、動画撮像に適した内視鏡90を提供することが可能となる。
【0084】
本実施形態の内視鏡90では、可動部3は前枠部4側に付勢されるので、通常、広角側に焦点をあわせて広い範囲を撮像し、観察時や処置時等に望遠側に焦点をあわせて拡大することで、用途にあわせて使用することが可能となる。
【0085】
なお、この実施形態によって本発明は限定されるものではない。すなわち、実施形態の説明に当たって、例示のために特定の詳細な内容が多く含まれるが、当業者であれば、これらの詳細な内容に色々なバリエーションや変更を加えても、本発明の範囲を超えないことは理解できよう。従って、本発明の例示的な実施形態は、権利請求された発明に対して、一般性を失わせることなく、また、何ら限定をすることもなく、述べられたものである。
【符号の説明】
【0086】
1…駆動ユニット
2…固定部
3…可動部
4…前枠部
5…後枠部
6…撮像素子枠(後枠部)
10…ボイスコイルモータ
11…コイル
12…磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12