特許第6388416号(P6388416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388416
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/14 20060101AFI20180903BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   B24B9/14 A
   B24B9/14 E
   G02C13/00
【請求項の数】4
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2017-92053(P2017-92053)
(22)【出願日】2017年5月4日
(62)【分割の表示】特願2013-164240(P2013-164240)の分割
【原出願日】2013年8月7日
(65)【公開番号】特開2017-164897(P2017-164897A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2017年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】713008706
【氏名又は名称】波田野 義行
(72)【発明者】
【氏名】波田野 義行
【審査官】 宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−074560(JP,A)
【文献】 特開2007−181889(JP,A)
【文献】 特開2005−046938(JP,A)
【文献】 実開昭53−099095(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0305614(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 9/00−19/28
B24B 41/00−51/00
G02C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズを保持可能に設けられ且つレンズ軸方向であるZ軸方向にZ軸方向駆動モータで移動制御可能に設けられたレンズ回転軸と、
前記眼鏡レンズの玉型形状データ(θi,ρi)と前記眼鏡レンズの周縁を研削加工する砥石の半径とに基づいて、前記レンズ回転軸と前記研削砥石の砥石回転軸との軸間距離Liを前記玉型形状データ(θi,ρi)の動径ρi毎に演算して、前記軸間距離Liと回転角θiとからなる軸間距離データ(θi,Li)を求め、前記軸間距離データ(θi,Li)に基づきレンズ軸回転駆動手段を作動制御して前記レンズ回転軸を回転角θi毎に回転させると共に、前記軸間距離データ(θi,Li)に基づき軸間距離調整手段を作動制御して前記軸間距離Liを前記回転角θi毎に調整させる演算制御手段を、備える眼鏡レンズ研削加工装置であって、
前記演算制御手段は、玉型形状上加工制御点の眼鏡レンズコバ端部の面取砥石との接触状態を想定したときの加工制御点に隣接する周辺の玉型形状点での面取砥石喰い込み量を演算し、その喰い込み量が最大となる周辺の玉型形状点での喰い込み量をレンズ回転軸の軸方向制御量に加えた制御量で面取加工制御することを特徴とする眼鏡レンズ研削加工装置。
【請求項2】
眼鏡レンズを保持可能に設けられ且つレンズ軸方向であるZ軸方向にZ軸方向駆動モータで移動制御可能に設けられたレンズ回転軸と、
前記眼鏡レンズの玉型形状データ(θi,ρi)と前記眼鏡レンズの周縁を研削加工する砥石の半径とに基づいて、前記レンズ回転軸と前記研削砥石の砥石回転軸との軸間距離Liを前記玉型形状データ(θi,ρi)の動径ρi毎に演算して、前記軸間距離Liと回転角θiとからなる軸間距離データ(θi,Li)を求め、前記軸間距離データ(θi,Li)に基づきレンズ軸回転駆動手段を作動制御して前記レンズ回転軸を回転角θi毎に回転させると共に、前記軸間距離データ(θi,Li)に基づき軸間距離調整手段を作動制御して前記軸間距離Liを前記回転角θi毎に調整させる演算制御手段を備え、
前記研削砥石は外周面がテーパ状に形成されていると共に、前記砥石回転軸は、前記研削砥石の前記レンズ回転軸側の稜線が前記レンズ回転軸の軸線と平行になるように、前記レンズ回転軸の軸線と平行な軸線に対して砥石傾斜角ξだけ傾斜させた眼鏡レンズ研削加工装置であって、
前記演算制御手段は、玉型形状上加工制御点のヤゲン砥石との接触状態を想定したときの加工制御点に隣接する周辺の玉型形状点でのヤゲンのレンズ表面側傾斜面とレンズ裏面側傾斜面それぞれのヤゲン砥石喰い込み量を演算し、その喰い込み量が最大となる周辺の玉型形状点での喰い込み量をレンズ回転軸と砥石回転軸の軸間距離方向制御量に加えた制御量でヤゲン加工制御することを特徴とする眼鏡レンズ研削加工装置。
【請求項3】
眼鏡レンズを保持可能に設けられ且つレンズ軸方向であるZ軸方向にZ軸方向駆動モータで移動制御可能に設けられたレンズ回転軸と、
前記眼鏡レンズの玉型形状データ(θi,ρi)と前記眼鏡レンズの周縁を研削加工する砥石の半径とに基づいて、前記レンズ回転軸と前記研削砥石の砥石回転軸との軸間距離Liを前記玉型形状データ(θi,ρi)の動径ρi毎に演算して、前記軸間距離Liと回転角θiとからなる軸間距離データ(θi,Li)を求め、前記軸間距離データ(θi,Li)に基づきレンズ軸回転駆動手段を作動制御して前記レンズ回転軸を回転角θi毎に回転させると共に、前記軸間距離データ(θi,Li)に基づき軸間距離調整手段を作動制御して前記軸間距離Liを前記回転角θi毎に調整させる演算制御手段を備え、
前記研削砥石は外周面がテーパ状に形成されていると共に、前記砥石回転軸は、前記研削砥石の前記レンズ回転軸側の稜線が前記レンズ回転軸の軸線と平行になるように、前記レンズ回転軸の軸線と平行な軸線に対して砥石傾斜角ξだけ傾斜させた眼鏡レンズ研削加工装置であって、砥石回転軸には溝掘り用の砥石であってその砥石幅が所望の溝幅より小さい溝掘砥石が装着されている。
前記演算制御手段は、レンズ表面側溝面を加工するための制御に基づき、玉型形状上溝掘加工制御点の溝砥石との接触状態を想定したときの加工制御点に隣接する周辺の玉型形状点での溝砥石の喰い込み量を演算し、その喰い込み量が最大となる周辺の玉型形状点での喰い込み量を表側最大喰い込み量として求め、レンズ裏面側溝面についても同様に、その喰い込み量が最大となる周辺の玉型形状点での喰い込み量を裏側最大喰い込み量として求め、
前記の溝のレンズ表面側溝面を加工するためのレンズ軸に平行な方向の制御量に表側最大喰い込み量を加えた制御量でレンズ表面側溝面を加工する制御と、前記の溝のレンズ裏面側溝面を加工するためのレンズ軸に平行な方向の制御量に裏側最大喰い込み量を加えた制御量でレンズ裏面側溝面を加工する制御とを実施することを特徴とする眼鏡レンズ研削加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置で、演算制御手段は、レンズ表面側溝面を加工するための制御に基づき、玉型形状上溝掘加工制御点の溝砥石との接触状態を想定したときの加工制御点に隣接する周辺の玉型形状点での溝砥石の喰い込み量を演算し、その喰い込み量が最大となる周辺の玉型形状点での喰い込み量を表側最大喰い込み量として求め、レンズ裏面側溝面についても同様に、その喰い込み量が最大となる周辺の玉型形状点での喰い込み量を裏側最大喰い込み量として求め、前記の表側最大喰い込み量と裏側最大喰い込み量との和が、特定のレンズ加工制御角度位置で、目的の溝幅と溝加工砥石の厚さの差より大きい場合、目的の溝幅と溝加工砥石の厚さの差と同値となるように表側最大喰い込み量、及び裏側最大喰い込み量を減じた後、前記の溝のレンズ表面側溝面を加工するためのレンズ軸に平行な方向の制御量に表側最大喰い込み量を加えた制御量でレンズ表面側溝面を加工する制御と、前記の溝のレンズ裏面側溝面を加工するためのレンズ軸に平行な方向の制御量に裏側最大喰い込み量を加えた制御量でレンズ裏面側溝面を加工する制御とを実施することを特徴とする眼鏡レンズ研削加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、テーパ状の研削砥石で眼鏡レンズの周縁の粗研削加工から面取まで行えるようにした眼鏡レンズ研削加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡レンズの周縁を研削加工する装置としては、レンズ回転軸に保持された眼鏡レンズの周縁をテーパ状の研削砥石で粗研削加工すると共に、テーパ状の研削砥石に設けた面取砥石部で面取を行えるようにした眼鏡レンズ研削加工装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
尚、このような眼鏡レンズ研削加工装置において研削加工される眼鏡レンズの玉型形状は、眼鏡フレームのレンズ枠または眼鏡レンズの幾何学中心間距離から周縁までの距離が周方向の回転角θiにより変化する動径ρiとして玉型形状測定装置により求められることが一般的である。この回転角θiと動径ρiのデータは、玉型形状データ(θi,ρi)として眼鏡レンズ研削加工装置による眼鏡レンズの周縁形状の研削加工に用いられる。
【0004】
一方、従来の眼鏡レンズ研削加工装置では、レンズ回転軸と研削砥石の軸間距離Liを玉型形状データ(θi,ρi)と研削砥石の半径とから求めて、回転角θiに対する軸間距離Liのデータを軸間距離データ(θi,Li)とし、この軸間距離データ(θi,Li)に基づいてレンズ回転軸を眼鏡レンズと一体に研削砥石に対して進退駆動制御することにより、眼鏡レンズの周縁を玉型形状データ(θi,ρi)に基づく玉型形状に研削加工するとともに、目的の仕上がり状態であるヤゲン、溝掘り、面取りなどの加工を行うためにレンズ回転軸の軸方向にレンズと研削砥石との相関距離についても制御しながら研削加工するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,803,035号公報
【0006】
【特許文献2】米国特許第4,928,439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したテーパ状の研削砥石を用いた眼鏡レンズ研削加工装置において、面取幅の加工部位による変動、ヤゲン加工時の加工干渉によるヤゲン痩せ、溝掘り加工での溝幅の部分的拡大などの問題は、テーパ状の研削砥石による効果として低減されているが、条件により問題認識される発生量があった。
【0008】
そこで、この発明は、面取幅の加工部位による変動、ヤゲン加工時の加工干渉によるヤゲン痩せ、溝掘り加工での溝幅の部分的拡大などの問題の発生を無くす、または低減するための加工制御データを演算することのできる眼鏡レンズ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、この発明は、眼鏡レンズを保持可能に設けられ且つレンズ軸方向であるZ軸方向にZ軸方向駆動モータで移動制御可能に設けられたレンズ回転軸と、前記眼鏡レンズの玉型形状データ(θi,ρi)と前記眼鏡レンズの周縁を研削加工する砥石の半径とに基づいて、前記レンズ回転軸と前記研削砥石の砥石回転軸との軸間距離Liを前記玉型形状データ(θi,ρi)の動径ρi毎に演算して、前記軸間距離Liと回転角θiとからなる軸間距離データ(θi,Li)を求め、前記軸間距離データ(θi,Li)に基づきレンズ軸回転駆動手段を作動制御して前記レンズ回転軸を回転角θi毎に回転させると共に、前記軸間距離データ(θi,Li)に基づき軸間距離調整手段を作動制御して前記軸間距離Liを前記回転角θi毎に調整させるようになっている。また、前記演算制御手段は、玉型形状上加工制御点の眼鏡レンズコバ端部の面取砥石との接触状態を想定したときの加工制御点に隣接する周辺の玉型形状点での面取砥石喰い込み量を演算し、その喰い込み量が最大となる周辺の玉型形状点での喰い込み量をレンズ回転軸の軸方向制御量に加えた制御量で面取加工制御することを特徴とする。
【0010】
また、この発明は、眼鏡レンズを保持可能に設けられ且つレンズ軸方向であるZ軸方向にZ軸方向駆動モータで移動制御可能に設けられたレンズ回転軸と、前記眼鏡レンズの玉型形状データ(θi,ρi)と前記眼鏡レンズの周縁を研削加工する砥石の半径とに基づいて、前記レンズ回転軸と前記研削砥石の砥石回転軸との軸間距離Liを前記玉型形状データ(θi,ρi)の動径ρi毎に演算して、前記軸間距離Liと回転角θiとからなる軸間距離データ(θi,Li)を求め、前記軸間距離データ(θi,Li)に基づきレンズ軸回転駆動手段を作動制御して前記レンズ回転軸を回転角θi毎に回転させると共に、前記軸間距離データ(θi,Li)に基づき軸間距離調整手段を作動制御して前記軸間距離Liを前記回転角θi毎に調整させる演算制御手段を備えている。研削砥石は外周面がテーパ状に形成されていると共に、前記砥石回転軸は、前記研削砥石の前記レンズ回転軸側の稜線が前記レンズ回転軸の軸線と平行になるように、前記レンズ回転軸の軸線と平行な軸線に対して砥石傾斜角ξだけ傾斜させた状態となっている。前記演算制御手段は、玉型形状上加工制御点のヤゲン砥石との接触状態を想定したときの加工制御点に隣接する周辺の玉型形状点でのヤゲンのレンズ表面側傾斜面とレンズ裏面側傾斜面それぞれのヤゲン砥石喰い込み量を演算し、その喰い込み量が最大となる周辺の玉型形状点での喰い込み量をレンズ回転軸と砥石回転軸の軸間距離方向制御量に加えた制御量でヤゲン加工制御することを特徴とする。
【0011】
また、この発明は、眼鏡レンズを保持可能に設けられ且つレンズ軸方向であるZ軸方向にZ軸方向駆動モータで移動制御可能に設けられたレンズ回転軸と、前記眼鏡レンズの玉型形状データ(θi,ρi)と前記眼鏡レンズの周縁を研削加工する砥石の半径とに基づいて、前記レンズ回転軸と前記研削砥石の砥石回転軸との軸間距離Liを前記玉型形状データ(θi,ρi)の動径ρi毎に演算して、前記軸間距離Liと回転角θiとからなる軸間距離データ(θi,Li)を求め、前記軸間距離データ(θi,Li)に基づきレンズ軸回転駆動手段を作動制御して前記レンズ回転軸を回転角θi毎に回転させると共に、前記軸間距離データ(θi,Li)に基づき軸間距離調整手段を作動制御して前記軸間距離Liを前記回転角θi毎に調整させる演算制御手段を備え、前記研削砥石は外周面がテーパ状に形成されていると共に、前記砥石回転軸は、前記研削砥石の前記レンズ回転軸側の稜線が前記レンズ回転軸の軸線と平行になるように、前記レンズ回転軸の軸線と平行な軸線に対して砥石傾斜角ξだけ傾斜させている。砥石回転軸には溝掘り用の砥石であってその砥石幅が所望の溝幅より小さい溝掘砥石が装着されている。前記演算制御手段は、レンズ表面側溝面を加工するための制御に基づき、玉型形状上溝掘加工制御点の溝砥石との接触状態を想定したときの加工制御点に隣接する周辺の玉型形状点での溝砥石の喰い込み量を演算し、その喰い込み量が最大となる周辺の玉型形状点での喰い込み量を表側最大喰い込み量として求め、レンズ裏面側溝面についても同様に、その喰い込み量が最大となる周辺の玉型形状点での喰い込み量を裏側最大喰い込み量として求め、前記の溝のレンズ表面側溝面を加工するためのレンズ軸に平行な方向の制御量に表側最大喰い込み量を加えた制御量でレンズ表面側溝面を加工する制御と、前記の溝のレンズ裏面側溝面を加工するためのレンズ軸に平行な方向の制御量に裏側最大喰い込み量を加えた制御量でレンズ裏面側溝面を加工する制御を実施することを特徴とする。
【0012】
また、この発明は、前記演算制御手段は、前記表側最大喰い込み量、前記裏側最大喰い込み量を求めた後、前記の表側最大喰い込み量と裏側最大喰い込み量との和が、特定のレンズ加工制御角度位置で、目的の溝幅と溝加工砥石の厚さの差より大きい場合、目的の溝幅と溝加工砥石の厚さの差と同値となるように表側最大喰い込み量、及び裏側最大喰い込み量を減じた後、前記の溝のレンズ表面側溝面を加工するためのレンズ軸に平行な方向の制御量に表側最大喰い込み量を加えた制御量でレンズ表面側溝面を加工する制御と、前記の溝のレンズ裏面側溝面を加工するためのレンズ軸に平行な方向の制御量に裏側最大喰い込み量を加えた制御量でレンズ裏面側溝面を加工する制御を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この構成によれば、フレーム形状、レンズカーブにより発生する面取加工時の喰い込みを発生させることなく加工することができる。また、ヤゲン加工時にフレーム形状、ヤゲンカーブによるヤゲン砥石の喰い込みの発生しない所望の正確な形状にヤゲン加工を行うことができる。また、溝掘り加工時にフレーム形状、溝カーブにより発生する溝砥石の喰い込みの結果生じるヤゲン溝幅の拡大を低減することができる。また、溝幅低減目的の補正による逆面への喰い込み発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明にかかる眼鏡レンズ研削加工装置と型形状測定装置との関係を示す概略斜視図である。
図2】(A)は図1に示した眼鏡レンズ研削加工装置の操作パネルの説明図、(B)は図1に示した眼鏡レンズ研削加工装置の液晶表示器の説明図である。
図3図1に示した眼鏡レンズ研削加工装置の加工室の部分斜視図である。
図4図3のA−A線に沿う断面図である。
図5図3に示した加工室およびレンズ回転軸を支持するキャリッジの駆動機構を示す斜視図である。
図6図5に示したレンズ回転軸と研削砥石との関係を示す説明図である。
図7図5に示したキャリッジの駆動機構を示す斜視図である。
図8図5に示したレンズ回転軸の昇降駆動する軸間距離調整手段の説明図である。
図9図1に示した眼鏡レンズ研削加工装置の制御回路図である。
図10図8に示した眼鏡レンズの周縁を粗研削砥石に接触させた状態を示す説明図である。
図11図10の眼鏡レンズと研削砥石を矢印A1方向から見た説明図である。
図12図8に示した眼鏡レンズの周縁を粗研削砥石に接触させた状態で砥石回転軸を水平にした状態を示す説明図である。
図13図12の眼鏡レンズと研削砥石を矢印A2方向から見た説明図である。
図14図10の矢印A1方向から見た眼鏡レンズと研削砥石の形状を示す説明図である。
図15図14の眼鏡レンズを玉型形状に形成する際の軸間距離を求める説明図である。
図16図13の矢印A2方向から見た眼鏡レンズと研削砥石の形状を示す説明図である。
図17図16の眼鏡レンズを玉型形状に形成する際の軸間距離を求める説明図である。
図18】眼鏡レンズの回転角θiがθ0の回転開始位置における研削砥石とこの研削砥石により研削加工された眼鏡レンズの玉型形状との関係を示し、(a)は図10の矢印A1方向から研削砥石と眼鏡レンズとの軸間距離の模式図であり、(b)は図12の矢印A2方向から見た研削砥石と眼鏡レンズの軸間距離を説明するための模式図である。
図18A図18の眼鏡レンズを回転開始位置からθi回転させたときにおける、図18の(a)と(b)との軸間距離の関係をより詳細に説明した模式図である。
図18B図18Aの眼鏡レンズを更に回転させたときにおける、図18の(a)と(b)との軸間距離の関係をより詳細に説明した模式図である。
図18C図18B眼鏡レンズを更に回転させたときにおける、図18の(a)と(b)との軸間距離の関係をより詳細に説明した模式図である。
図18D図18の眼鏡レンズを回転開始位置から90°回転させたときにおける、図18の(a)と(b)との軸間距離の関係をより詳細に説明した模式図である。
図19】(a)は図6の粗研削砥石により周縁が玉型形状に形成された眼鏡レンズの模式図、(b)は(a)の眼鏡レンズと図6における研削砥石の面取砥石部とにより眼鏡レンズ周縁に面取加工するための面取条件の説明図、(c)は(b)の(i)〜(vii)の断面図である。
図20A】ヤゲンを付け玉型形状に形成された眼鏡レンズがこの発明に係るヤゲン用研削砥石との接触状態にある平面図である。
図20B】ヤゲンを付け玉型形状に形成された眼鏡レンズがこの発明に係るヤゲン用研削砥石との接触状態にある正面図である。
図20C】ヤゲン用砥石軸の中心を通る(i)(ii)(iv)(vi)(vii)の断面図である。干渉除去をしていない状態を示している。
図20D】ヤゲン用砥石軸の中心を通る(ii)(iv)(vi)の断面図である。干渉除去をした状態を示している。
図20E】ヤゲン形成された眼鏡レンズとヤゲン用砥石との詳細な接触状態を示す平面図である。干渉除去していない状態、及び、干渉除去をした状態を示している。
図21A】溝掘り加工された玉型形状に形成された眼鏡レンズがこの発明に係る溝掘砥石との接触状態にある平面図である。
図21B】溝掘り加工された玉型形状に形成された眼鏡レンズがこの発明に係る溝掘砥石との接触状態にある正面図である。
図21C】眼鏡レンズ、ナイロン糸、溝掘砥石の相互関係を示す断面図である。
図21D】溝掘砥石軸の中心を通る(i)〜(v)の断面図である。干渉除去をしていない状態を示している。
図21E】溝掘砥石軸の中心を通る(i)〜(v)の断面図である。溝幅より小さい厚さの溝掘砥石でレンズ表面側の干渉除去をした状態を示している。
図21F】溝掘砥石軸の中心を通る(i)〜(v)の断面図である。溝幅より小さい厚さの溝掘砥石でレンズ裏面側の干渉除去をした状態を示している。
図22】この発明に係る眼鏡レンズ研削加工装置の他の実施例を示す研削砥石の断面図である。
図23】この発明に係る眼鏡レンズ研削加工装置の研削砥石に穴あけ加工用のドリルを設けた実施例を示す説明図である。
図24図23の研削砥石の砥石回転軸を回転駆動させる回転駆動機構の説明図である。
図25図23の研削砥石の砥石回転軸を傾斜調整させる傾斜機構の説明図である。
図26図7のキャリッジ及びレンズ回転軸の他の実施例を示す説明図である。
図27図26の眼鏡レンズと図22の研削砥石のドリルとの関係を示す穴開けの説明図である。
図28図6に示した溝掘砥石による眼鏡レンズへの溝掘条件を求めるための模式図である。
図29図28の溝掘砥石と眼鏡レンズのコバ面との関係を示す模式図である。
図30図28の眼鏡レンズの加工位置を求める模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
[構成]
図1を参照すると、本発明に係る眼鏡レンズ研削加工装置が示してある。
図1において、1は眼鏡フレームFのレンズ枠形状やその型板或いは玉型モデル(デモレンズ)等からレンズ形状情報である玉型形状データ(θi,ρi)[I=0,1,2・・・n]を読み取る玉型形状データ測定装置(フレーム形状測定装置)、2は玉型形状測定装置1から送信等によって入力された眼鏡フレームの玉型形状データに基づいて生地レンズ等から眼鏡レンズ(リムレスレンズを含む)MLを研削加工するレンズ研削加工装置(玉摺機)である。尚、玉型形状測定装置1には周知のものを用いることができるので、その詳細な構成やデータ測定方法等の説明は省略する。
【0017】
<レンズ研削加工装置2>
レンズ研削加工装置2の上部には、図1に示したように、装置本体3の前側に傾斜する上面(傾斜面)3aが設けられていると共に、上面3aの前部側(下部側)に開口する加工室4が形成されている。この加工室4は、斜め上下にスライド操作可能に装置本体3に取り付けられたカバー5で開閉される様になっている。
また、装置本体3の上面3aには、加工室4の側方に位置させた操作パネル6(図2(A)参照)と、加工室4の上部開口より後部側に位置させた操作パネル7(図2(B)参照)と、操作パネル7の下部側より後方に位置し且つ操作パネル6,7による操作状態を表示させる液晶表示器8が設けられている。
【0018】
更に、装置本体3内には、図3および図5に示すように、加工室4を有する研削加工部10が設けられている。この加工室4は、研削加工部10に固定の周壁11内に形成されている。この周壁11は、図3図5に示したように左右の側壁11a,11b、後壁11c、前壁11d及び底壁11eを有する。しかも、側壁11a,11bには円弧状のガイドスリット11a1,11b1が形成されている(図3図4参照)。また、底壁11eは、図3に示したように、後壁11cから手前側下方に円弧状に延びる円弧状底壁(傾斜底壁)11e1と、円弧状底壁11e1の前下端から前壁11dまで延びる下底壁11e2を有する。この下底壁11e2には、円弧状底壁11e1に近接させて下方の廃液タンク(図示せず)まで延びる排水管(図示せず)が設けられている。
(カバー5)
カバー5は、無色透明又は有色透明(例えば、グレー等の有色透明)の一枚のガラスや樹脂製のパネルから構成され、装置本体3の前後にスライドする。
【0019】
(操作パネル6)
操作パネル6は、図2(A)に示すように、眼鏡レンズMLを後述する一対のレンズ回転軸23,24によりクランプするための『クランプ』スイッチ6aと、眼鏡レンズMLの右眼用・左眼用の加工の指定や表示の切換え等を行う『左』スイッチ6b,『右』スイッチ6cと、砥石を左右方向に移動させる『砥石移動』スイッチ6d,6eと、眼鏡レンズMLの仕上加工が不十分である場合や試し摺りする場合の再仕上又は試し摺り加工するための『再仕上/試』スイッチ6fと、レンズ回転モード用の『レンズ回転』スイッチ6gと、ストップモード用の『ストップ』スイッチ6hとを備えている。
【0020】
(操作パネル7)
操作パネル7は、図2(B)に示すように、液晶表示器8の表示状態を切り換える『画面』スイッチ7aと、液晶表示器8に表示された加工に関する設定等を記憶する『メモリー』スイッチ7bと、玉型形状データ(θi,ρi)を取り込むための『データ要求』スイッチ7cと、数値補正等に使用されるシーソー式の『−+』スイッチ7d(『−』スイッチと『+』スイッチとを別々に設けても良い)と、カーソル式ポインタ移動用の『▽』スイッチ7eとを液晶表示器8の側方に配置している。また、ファンクションキーF1〜F6が液晶表示器8の下方に配列されている。
【0021】
このファンクションキーF1〜F6は、眼鏡レンズMLの加工に関する設定時に使用されるほか、加工工程で液晶表示器8に表示されたメッセージに対する応答・選択用として用いられる。
各ファンクションキーF1〜F6は、加工に関する設定時(レイアウト画面)においては、ファンクションキーF1はレンズ種類入力用、ファンクションキーF2は加工コース入力用、ファンクションキーF3はレンズ素材入力用、ファンクションキーF4はフレーム種類入力用、ファンクションキーF5は面取り加工種類入力用、ファンクションキーF6は鏡面加工入力用として用いられる。
【0022】
ファンクションキーF1で入力されるレンズ種類としては、『単焦点』、『眼科処方』、『累進』、『バイフォーカル』、『キャタラクト』、『ツボクリ』、『8カーブ』等がある。尚、『キャタラクト』とは、眼鏡業界では一般にプラスレンズで屈折度数が大きいものをいい、『ツボクリ』とは、マイナスレンズで屈折度数が大きいものをいう。
ファンクションキーF2で入力される加工コースとしては、『オート』、『試し』、『モニター』、『枠替え』等がある。
ファンクションキーF3で入力される被加工レンズの素材としては、『プラスチック』、『ハイインデックス』、『ガラス』、『ポリカーボネイト』、『アクリル』等がある。
ファンクションキーF4で入力される眼鏡フレームFの種類としては、『メタル』、『セル』、『オプチル』、『平』、『溝掘り(細)』、『溝掘り(中)』、『溝掘り(太)』等がある。なお、この各『溝掘り』とは、ヤゲン加工の一種であるヤゲン溝を示す。
ファンクションキーF5で入力される面取り加工種類としては、『なし』、『小』、『中』、『大』、『特殊』等がある。
ファンクションキーF6で入力される鏡面加工としては、『なし』、『あり』、『面取部鏡面』等がある。
尚、上述したファンクションキーF1〜F6のモードや種別或いは順序は特に限定されるものではない。また、後述する各タブTB1〜TB4の選択として、『レイアウト』、『加工中』、『加工済』、『メニュー』等を選択するためのファンクションキーを設けるなど、キー数も限定されるものではない。
【0023】
(液晶表示器8)
液晶表示器8は、『レイアウト』タブTB1、『加工中』タブTB2、『加工済』タブTB3、『メニュー』タブTB4によって切り替えられ、下方にはファンクションキーF1〜F6に対応したファンクション表示部H1〜H6を有する。尚、各タブTB1〜TB4の色は独立しており、後述する各エリアE1〜E4を除いた周囲の背景も各タブTB1〜TB4の選択切換と同時に各タブTB1〜TB4と同一の背景色に切り替わる。
例えば、『レイアウト』タブTB1とそのタブTB1が付された表示画面全体(背景)は青色、『加工中』タブTB2とそのタブTB2が付された表示画面全体(背景)は緑色、『加工済』タブTB3とそのタブTB3が付された表示画面全体(背景)は赤色、『メニュー』タブTB4とそのタブTB4が付された表示画面全体(背景)は黄色で表示されている。
このように、作業毎に色分けした各タブTB1〜TB4と周囲の背景とが同一色で表示されるので、作業者は、現在、どの作業中であるのかを容易に認識又は確認することができる。
【0024】
ファンクション表示部H1〜H6は、必要に応じたものが適宜表示され、非表示状態の時にはファンクションキーF1〜F6の機能に対応したものとは異なった図柄や数値、或いは、状態等を表示することができる。
また、ファンクションキーF1〜F6を操作している際、例えば、ファンクションキーF1を操作している際には、そのファンクションキーF1をクリックする毎にモード等の表示が切り替わっても良い。例えば、ファンクションキーF1に対応する各モードの一覧を表示して(ポップアップ表示)選択操作を向上させることも可能である。また、ポップアップ表示中の一覧は、文字、図形又はアイコン等で表わされる。
『レイアウト』タブTB1、『加工中』タブTB2、『加工済』タブTB3を選択した状態の時には、アイコン表示エリアE1、メッセージ表示エリアE2、数値表示エリアE3、状態表示エリアE4に区画した状態で表示される。また、『メニュー』タブTB4を選択した状態の時には、全体的に一つのメニュー表示エリアとして表示される。尚、『レイアウト』タブTB1を選択している状態の時には、『加工中』タブTB2と『加工済』タブTB3とを表示せず、レイアウト設定が終了した時点で表示しても良い。
尚、上述したような液晶表示器8を用いてのレイアウト設定は、特願2000−287040号又は特願2000−290864号と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0025】
<研削加工部10>
研削加工部10は、図1の装置本体3内に設けられた図5の固定のトレイ12と、このトレイ12上に配置されたベース13と、トレイ12に固定されたベース駆動モータ14と、図7のようにトレイ12から立ち上げられた支持部12aに先端が回転可能に支持されたベース駆動モータ(Z軸方向駆動モータ)14の出力軸(図示せず)に連動するネジ軸15とを備えている。また、研削加工部10は、眼鏡レンズMLの回転駆動系16と、眼鏡レンズMLの研削手段17と、眼鏡レンズMLのコバ厚測定系(コバ厚測定手段)18を備えている。
【0026】
(ベース13)
図7に示すようにベース13は、トレイ12の後縁部に沿って左右に延びる後側支持部13aと、後側支持部13aの左端部から前側に延びる側方側支持部13bから略V字状に形成されている。この後側支持部13aの左右両端部上にはVブロック状の軸支持部13c,13dが固定され、側方側支持部13bの前端部上にはVブロック状の軸支持突部13eが固定されている。
また、装置本体3内には、左右に延び、且つ、前後に平行に並設された一対の平行ガイドバー19,20が配設されている。この平行ガイドバー19,20の左右両端部は装置本体3内の左右の部分に取り付けられている。しかも、この平行ガイドバー19,20には、ベース13の側方側支持部13bが軸線方向に沿って左右に進退動可能に軸支されている。
【0027】
また、軸支持部13c,13d上のV溝部には左右に延びるキャリッジ旋回軸21の両端部が配設されている。22はキャリッジ旋回軸21に取り付けるキャリッジである。このキャリッジ22は、左右に間隔をおいて位置し且つ前後に延びる軸取付用のアーム部22a,22bと、左右に延び且つアーム部22a,22bの後端部間を連設している連設部22cと、連設部22cの左右中央部に後方に向けて突設した支持突部22dから二股形状に形成されている。尚、アーム部22a,22b及び連設部22cはコ字状になっている。このアーム部22a,22b間に加工室4を形成する周壁11が配置されている。
そして、このキャリッジ旋回軸21は、支持突部22dを貫通し且つ支持突部22dに保持されていると共に、軸支持部13c,13dに対して回動自在になっている。これにより、キャリッジ22の前端部側はキャリッジ旋回軸21を中心に上下回動できるようになっている。尚、キャリッジ旋回軸21は、軸支持部13c,13dに固定して、支持突部22dをキャリッジ旋回軸21に対して回動可能且つ軸線方向に移動不能に保持させても良い。
【0028】
このキャリッジ22は、左右に延び且つ眼鏡レンズ(円形の未加工眼鏡レンズ、即ち円形の被加工レンズ素材)MLを同軸上で挟持する一対のレンズ回転軸(レンズ軸)23,24を備えている。レンズ回転軸23は、左右に向けてアーム部22aの先端部を貫通すると共に、アーム部22aの先端部に軸線回りに回転自在に且つ軸線方向に移動不能に保持されている。また、レンズ回転軸24は、左右に向けてアーム部22bの先端部を貫通すると共に、アーム部22bの先端部に軸線回りに回転自在に且つ軸線方向に移動調整可能に保持されている。この構造には周知の構造が採用されるので、その詳細な説明は省略する。
【0029】
また、ベース13にはガイド部13fが一体に形成されていて、ガイド部13fにはネジ軸(送りネジ)15が螺着されている。そして、ベース駆動モータ14を作動させて、ベース駆動モータ14でネジ軸15を回転駆動することにより、ガイド部13fがネジ軸15の軸線方向に進退動され、ベース13がガイド部13fと一体に移動する様になっている。この際、ベース13が一対の平行ガイドバー19,20に案内されて軸線方向に沿って変位する。
【0030】
[キャリッジ22]
上述した周壁11のガイドスリット11a1,11b1は、キャリッジ旋回軸21を中心に円弧状に形成されている。そして、ガイドスリット11a1、11b1には、キャリッジ22に保持させたレンズ回転軸23,24の互いに対向する端部が挿通されている。これによりレンズ回転軸23,24の対向端部は周壁11で囲まれた加工室4内に突出している。
また、側壁11aの内壁面には図3に示したように円弧状で断面ハット状のガイド板P1が取り付けられ、側壁11bの内壁面には図4に示したように円弧状で断面ハット状のガイド板P2が取り付けられている。このガイド板P1,P2にはガイドスリット11a1,11b1に対応して円弧状に延びるガイドスリット11a2′,11b2′が形成されている。
【0031】
そして、側壁11aとガイド板P1との間にはガイドスリット11a1,11a2′を閉成するカバー板11a2が前後及び上下に移動可能に配設され、側壁11bとガイド板P2との間にはガイドスリット11b1,11b2′を閉成するカバー板11b2が前後及び上下に移動可能に配設されている。また、レンズ回転軸23,24はカバー板11a2,11b2をそれぞれ摺動自在に貫通している。これによりカバー板11a2,11b2はレンズ回転軸23,24にそれぞれ軸線方向に相対移動可能に取り付けられている。
しかも、ガイド板P1にはガイドスリット11a1,11a2′の上下に位置してガイドスリット11a1,11a2′の上下縁に沿う円弧状のガイドレールGa,Gbが設けられ、ガイド板P2にはガイドスリット11b1,11b2′の上下に位置してガイドスリット11b1,11b2′の上下縁に沿う円弧状のガイドレールGc,Gdが設けられ、カバー板11a2はガイドレールGa,Gbに上下を案内されて円弧状に上下移動できる様になっている。カバー板11b2はガイドレールGc,Gdに上下を案内されて円弧状に上下移動できる様になっている。
【0032】
キャリッジ22のレンズ回転軸23が円弧状のカバー板11a2を摺動自在に貫通して、レンズ回転軸23、側壁11a,ガイド板P1及びカバー板11a2の組み付け性を良くし、キャリッジ22のレンズ回転軸24が円弧状のカバー板11b2を摺動自在に貫通して、レンズ回転軸24、側壁11b,ガイド板P2及びカバー板11b2の組み付け性を良くしている。
また、カバー板11a2とレンズ回転軸23との間はシール部材Saを介してシールされていると共に、カバー板11a2はレンズ回転軸23にシール部材Sa,Saを介して保持されている。更に、カバー板11b2とレンズ回転軸24との間はシール部材Sbを介してシールされていると共に、カバー板11b2はレンズ回転軸24にシール部材Sb,Sbを介して軸線方向に相対移動可能に保持されている。これにより、レンズ回転軸23及び24がガイドスリット11a1,11a2′及び11b1,11b2′に沿って上下に円弧状に回動すると、カバー板11a2,11b2もレンズ回転軸23,24と一体に上下に移動できる。
【0033】
尚、シール部材Saは、カバー板11a2に保持させるか、周縁部をカバー板11a2と側壁11aとの間及びカバー板11a2とガイド板P1との間に配設するかして、レンズ回転軸23が軸線方向に移動したとき、レンズ回転軸23の軸線方向に移動しないようにしても良い。また、同様にシール部材Sbは、カバー板11b2に保持させるか、周縁部をカバー板11b2と側壁11bとの間及びカバー板11b2とガイド板P2との間に配設するかして、レンズ回転軸24が軸線方向に移動したとき、レンズ回転軸24の軸線方向に移動しないようにしても良い。
なお、側壁11aとガイド板P1は円弧状のカバー板11a2と密着するように接近しており、側壁11bとガイド板P2は円弧状のカバー板11b2は密着するように接近している。
【0034】
さらに、加工室4の内のガイド板P1,P2は、後壁11c及び下底壁11e2の近傍まで延設して、上下端が測定子(フィーラー)41の側方及び研削砥石35の上近傍あたりで切れるようにすることにより、ガイド板P1,P2の上下端を加工室4内に開放して、研削液が側壁11a,11bの内面に沿って流れるようにすることにより、側壁11aとガイド板P1との間及び側壁11bとガイド板P2との間に研削液が溜まることがないようになっている。
キャリッジ22がキャリッジ旋回軸21を中心に上下回動して、レンズ回転軸23,24がガイドスリット11a1,11b1に沿って上下動したとき、カバー板11a2,11b2もレンズ回転軸23,24と一体に上下動して、ガイドスリット11a1,11b1がカバー板11a2,11b2で常時閉成された状態となっていて、周壁11内の研削液等が周壁11の外側に漏れないようになっている。尚、このレンズ回転軸23,24の上下動に伴い、眼鏡レンズMLが研削砥石35に対して接近・離反する。
【0035】
また、眼鏡レンズMLの生地レンズ等のレンズ回転軸23,24への装着時並びに研削加工終了後の離脱時には、レンズ回転軸23,24がガイドスリット11a1,11b1の上下方向の中間位置に位置するように、キャリッジ22が上下方向の回動中心に位置決めされるようになっている。
更に、キャリッジ22は、コバ厚測定時及び研削加工時に眼鏡レンズMLの研削加工量に応じて上下回動制御されて傾斜させられる(レンズ回転軸23,24の回転駆動系16)。
レンズ回転軸23,24の回転駆動系16は、キャリッジ22に図示を省略した固定手段で固定されたレンズ回転軸駆動用モータ(レンズ軸回転駆動手段)と、キャリッジ22に回転自在に保持され且つレンズ回転軸駆動用モータ25の出力軸に連動する動力伝達軸(駆動軸)25aと、動力伝達軸25aの先端に設けられた駆動ギヤ26と、駆動ギヤ26に噛合し且つ一方のレンズ回転軸23に取り付けられた従動ギヤ26aを有する。図7では、駆動ギヤ26にウオームギヤを用い、従動ギヤ26aにウオームホイールを用いている。尚、駆動ギヤ26、従動ギヤ26aにはベベルギヤ(傘歯車)を用いることができる。
【0036】
更に、回転駆動系16は、一方のレンズ回転軸23の外端部(レンズ回転軸24側とは反対側の端部)に固定されたプーリ27と、キャリッジ22に設けられた動力伝達機構28と、他方のレンズ回転軸24の外端部(レンズ回転軸23側とは反対側の端部)に回転自在に保持されたプーリ29とを備えている。このプーリ29は、レンズ回転軸24に対して軸線方向に相対移動可能に設けられていると共に、レンズ回転軸24が軸線方向に移動調整されたときに、軸線方向の位置が変化しないようにキャリッジ22に設けた図示しない移動規制部材等で移動規制されるようになっている。
【0037】
動力伝達機構28は、伝達プーリ28a,28bと、伝達プーリ28a,28bが両端部に固定された伝達軸(動力伝達軸)28cを有する。この伝達軸28cは、レンズ回転軸23,24と平行に配設されていると共に、図示しない軸受でキャリッジ22に回転自在に保持されている。また、動力伝達機構28は、プーリ27と伝達プーリ28aとの間に掛け渡された駆動側ベルト28dと、プーリ29と伝達プーリ28bとの間に掛け渡された従動側ベルト28eとを備えている。
レンズ回転軸駆動用モータ25を作動させて動力伝達軸25aを回転させると、動力伝達軸25aの回転が駆動ギヤ26及び従動ギヤ26aを介してレンズ回転軸23に伝達されて、レンズ回転軸23及びプーリ27が一体に回転駆動される。一方、プーリ27の回転は、駆動側ベルト28d,伝達プーリ28a,伝達軸28c,伝達プーリ28b及び従動側ベルト28eを介してプーリ29に伝達され、プーリ29及びレンズ回転軸24が一体に回転駆動される。この際、レンズ回転軸24及びレンズ回転軸23と同期して一体的に回転する様になっている。
【0038】
(研削手段17)
研削加工部10の加工室4を形成する周壁11は上述したように側壁11a,11bを有する。この研削加工部10には、図5に示したような研削手段17が設けられている。
この研削手段17は、側壁11aの外側に位置させてトレイ12に固定された支持フレーム(支持部材)30と、支持フレーム30の上端部に取り付けられた軸受31,31と、加工室4内に配設され且つ一端部が軸受31,31に回転自在に保持された砥石回転軸32と、支持フレーム(支持部材)30の下端部内に取り付けられた砥石駆動モータ33を有する。この砥石駆動モータ33の回転駆動力は図示を省略した動力伝達機構により砥石回転軸32に伝達されるようになっている。この動力伝達機構としては、ギヤ動力伝達機構やプーリとベルトを用いたベルト動力伝達機構等を用いることができる。
【0039】
砥石回転軸32は図5図6に示したように下方に傾斜させられている。この図6において、砥石回転軸32の軸線をO1とし、レンズ回転軸24の軸線Oと平行な軸線(仮想線)O2、軸線O1,O2の為す角度をξとすると、砥石回転軸32は下方(実際の設計上はキャリッジが円弧軌跡を描くので単純に下方に対する傾斜角ではなく、レンズ軸の移動軌跡を特定の位置を通る平面を想定し、その平面内で傾斜させた位置に砥石回転軸を配置する。)に傾斜角ξで傾斜させられた状態で加工室4内に配設されている。
また、研削手段17は、砥石回転軸32に固定されたテーパ状の研削砥石35を円錐砥石として有する。この研削砥石35のテーパ角度(円錐角度)は傾斜角ξと同じであり、研削砥石35の外周面(テーパ面)のレンズ回転軸23,24側の稜線がレンズ回転軸23,24と平行又は略平行に設けられている。
【0040】
この研削砥石35は、図6に示したように、プラスチックレンズを粗加工させるテーパ状の粗加工研削砥石36と、ガラスレンズを粗加工させるテーパ状の粗加工研削砥石37と、仕上砥石38と、テーパ状の鏡面仕上砥石39と、溝掘砥石40を、この順に有する。仕上砥石38は、面取砥石部38aと、ヤゲン山形成用のヤゲン溝部38bを有する。尚、砥石回転軸32は各砥石36〜40を貫通している。
【0041】
溝掘砥石40は砥石ディスク本体40aの周縁に薄肉の溝掘砥石部40bを一体に形成したものである。しかも、溝掘砥石部40bは、鏡面仕上砥石39とは反対側に位置させられている。また、砥石ディスク本体40aは取付のためにレンズ回転軸23,24に対して傾斜しているが、薄肉の溝掘砥石部40bはレンズ回転軸23,24側の部分がレンズ回転軸23,24に対して垂直になるように設定されている。
【0042】
尚、各砥石36〜40は、配列方向に径が徐々に小さくなるようなテーパ状に形成されていると共に、研削砥石35全体を配列方向に概略的にテーパ状に形成している。そして、各砥石36〜40は、砥石回転軸(スピンドル)32の先端部に螺着した固定ネジ200で、先端から抜け外れないように砥石回転軸(スピンドル)32に固定されている。また、図示は省略したが粗加工研削砥石37は、図示を省略した周知の手段(例えば段差やテーパ等)で砥石回転軸(スピンドル)32の所定位置から先端とは反対方向に移動しないように設けられる。また、200aは固定ネジ200の頭部、200bは固定ネジ200のネジ部、200cは周面が鏡面仕上砥石39及び溝掘砥石40を支持し且つ固定ネジ200のネジ部200bが貫通するリング状(環状)のスペーサ、200bは固定ネジ200の頭部200aと溝掘砥石40との間に介装されたワッシャである。
【0043】
<軸間距離調整手段43>
ところで、レンズ回転軸23,24と砥石回転軸32との間は図5図8に示した軸間距離調整手段(軸間距離調整機構)43によって調整されるようになっている。
この軸間距離調整手段43は、レンズ回転軸23,24と平行な軸線の回転軸34を有する。この回転軸34は側壁11aに回転自在に支持されている。また、軸間距離調整手段43は圧力調整機構45を有する。
【0044】
この圧力調整機構45は、図5に示したように、回転軸線をキャリッジ旋回軸21と平行にトレイ12に取り付けたガイドローラ51と、トレイ12に水平に取り付けた開度ローラ52,53と、図5の側壁11aに一端を固定したスプリング54と、このガイドローラ51,52,53に掛け渡されたワイヤ55を有する。このワイヤ55の一端部はスプリング54の他端に連結されている。
また、圧力調整機構45は、キャリッジ22の下面に取り付けられた移動子変位用モータ48と、移動子変位用モータ48の出力軸(図示せず)に同軸に設けられた送りネジ48aと、送りネジ48aに螺着された移動子50を有する。この送りネジ48aは、軸線がキャリッジ旋回軸21の軸線と平行な軸線直交する方向で且つキャリッジ22の傾斜方向に向けて上下に延びていて、回転により移動子50を上下に移動させるようになっている。
【0045】
しかも、ワイヤ55の他端部が移動子50に固定されている。これにより、スプリング54のバネ力がワイヤ55を介してキャリッジ22をキャリッジ旋回軸21を中心として下方に回動するように付勢している。
また、軸間距離調整手段43は、回転軸34に保持させたベース盤56と、ベース盤56に取り付けられ且つ上面から斜め上方に延びる一対の平行なガイドレール57,57と、ガイドレール57と平行且つ回動可能にベース盤56に設けられたスクリュー軸(送りネジ)58と、ベース盤56の下面に設けられてスクリュー軸58を回転させるパルスモータ59と、スクリュー軸58が螺着され且つガイドレール57,57に上下動自在に保持された受台60を有する。
更に、軸間距離調整手段43は、受台60の上方に配設され且つガイドレール57,57に上下動自在に保持されたレンズ軸ホルダー61と、ガイドレール57,57の上端を保持し且つスクリュー軸58の上端部を回転自在に保持する補強部材62を備えている。
【0046】
このレンズ軸ホルダー61は、キャリッジ22の自重と図5の圧力調整機構45のスプリング54のバネ力により、常時下方に回動付勢されて受台60に押し付けられるようになっている。
また、この受台60には、レンズ軸ホルダー61が当接したのを検出するセンサSが図8に示したように取り付けられている。
そして、パルスモータ59を正転又は逆転させてスクリュー軸58を正転又は逆転させることにより、受台60がスクリュー軸58によりガイドレール57,57に沿って上昇又は降下させられると、レンズ軸ホルダー61は受台60と一体に上昇又は降下させられる。これによりキャリッジ22がキャリッジ旋回軸21を中心にして回動する。
【0047】
<コバ厚測定系18>
レンズ形状測定装置としてのコバ厚測定系(レンズコバ厚測定装置、コバ厚測定手段)18は、図3に示したように、加工室4の後縁上部に配設された測定子41と、レンズ回転軸23,24と平行に設けられ且つ一端が測定子41と一体に設けられた測定軸42aと、側壁11bの後縁側上部に近接させて加工室4の外側に配設された測定部(測定子移動量検出部)42を有する。この測定軸42aは側壁11bを貫通して加工室4の内外に突出している。
【0048】
(測定子41)
測定子41は、図3(a),図4に示したように、フィーラー保持部材100を有すると共に、一対のフィーラー101,102を有する。フィーラー保持部材100は、左右に延びる連設部100aと、連設部100aの左右両端部に同方向に向けて突設した平行な対向片100b,100cを有する。また、フィーラー101,102は、円柱状に形成されていると共に、対向片100b,100cの先端部に対向して取り付けられている。
また、フィーラー保持部材100は、図4に示したように側壁11bを貫通して左右に延びる測定軸42aに取り付けられている。この測定軸42aは、側壁11bの外側に配設された測定部42に左右に移動可能に保持されている。そして、この測定部42は、測定軸42aを介してフィーラー保持部材100の左右への移動量を検出するようになっている。
【0049】
(制御回路)
上述の操作パネル6,7(即ち、操作パネル6,7の各スイッチ)は、図9に示したように、CPUを有する演算制御回路(演算制御手段、演算手段)80に接続されている。また、この演算制御回路80には、記憶手段としてのROM81、記憶手段としてのデータメモリ82、RAM83が接続されていると共に、補正値メモリ84が接続されている。
更に、演算制御回路80には、表示用ドライバ85を介して液晶表示器8が接続されていると共に、パルスモータドライバ(パルスモータ駆動回路)86が接続されている。このパルスモータドライバ86は、演算制御回路80により作動制御されて、研削加工部10の各種駆動モータ、即ち、ベース駆動モータ14,レンズ回転軸駆動用モータ25,移動子変位用モータ48及びパルスモータ59等を作動制御(駆動制御)するようになっている。
【0050】
更に、演算制御回路80には、モータドライバ(モータ駆動回路)86aを介して砥石駆動モータ33が接続されている。また、演算制御回路80には、通信ポート88を介して図1の玉型形状測定装置1が接続され、玉型形状測定装置1(フレーム形状測定装置)1からのフレーム形状データ,レンズ形状データ等の玉型形状データが入力されるようになっている。
しかも、演算制御回路80には、測定部42からの移動量検出信号が入力される様になっている。
【0051】
この演算制御回路80は、ベース駆動モータ14の駆動パルスや玉型形状測定装置1からの玉型形状データ(θi,ρi)に基づいて作動制御されるレンズ回転軸駆動用モータ25,パルスモータ59等の駆動パルスと、測定部42からの移動量検出信号等から、玉型形状データ(θi,ρi)における眼鏡レンズMLの前側屈折面(図4中、眼鏡レンズの左側の面)の座標位置と後側屈折面(図4中、眼鏡レンズの右側の面)の座標位置をそれぞれ求めて、この求めた玉型形状データ(θi,ρi)における眼鏡レンズMLの前側屈折面の座標位置と後側屈折面の座標位置からコバ厚Wiを演算により求めるようになっている。
そして、演算制御回路80は、加工制御開始後に、玉型形状測定装置1からのデータ読み込みや、データメモリ82の記憶領域m1〜m8に記憶されたデータの読み込みがある場合には、時分割による加工制御とデータの読み込みやレイアウト設定の制御を行う様になっている。
【0052】
即ち、時間t1,t2間の期間をT1、時間t2,t3間の期間をT2、時間t3,t4間の期間をT3、・・・、時間tn−1,tn間の期間をTnとすると、期間T1,T3…Tnの間で加工制御が行われ、データの読み込みやレイアウト設定の制御を期間T2,T4…Tn−1の間に行う。従って、被加工レンズの研削加工中に、次の複数の玉型形状データの読み込み記憶や、データの読み出しとレイアウト設定(調整)等を行うことができ、データ処理の作業効率を格段に向上させることができるようになっている。
【0053】
また、上述のROM81にはレンズ研削加工装置2の動作制御のための種々のプログラムが記憶され、データメモリ82には複数のデータ記憶領域が設けられている。また、RAM83には、現在加工中の加工データを記憶する加工データ記憶領域83a、新たなデータを記憶する新データ記憶領域83b、フレームデータや加工済みデータ等を記憶するデータ記憶領域83cが設けられている。
尚、データメモリ82には、読み書き可能なFEEPROM(フラッシュEEPROM)を用いることもできるし、メインの電源がオフされても内容が消えないようにしたバックアップ電源使用のRAMを用いることもできる。
更に、演算制御回路80には、レンズ加工データメモリ,補正テーブルメモリ(補正データ用メモリ)、レンズ回転軸用の基準回転速度用メモリ、形状情報メモリ、軸間距離用のメモリ、ズレ角メモリが接続されている。
【0054】
[作用]
次に、上述した演算制御回路80の機能を作用と共に説明する。
(1).レンズ形状データの読み込み
スタート待機状態からメイン電源がオンされると、演算制御回路80は玉型形状測定装置1からデータ読み込みがあるか否かを判断する。
即ち、演算制御回路80は、操作パネル6の『データ要求』スイッチ7cが押されたか否かが判断される。そして、『データ要求』スイッチ7cが押されてデータ要求があれば、玉型形状測定装置1から玉型形状データ(θi,ρi)のデータをRAM83の新データ記憶領域83bに読み込む。この読み込まれたデータは、データメモリ82の記憶領域m1〜m8のいずれかに記憶(記録)される。これに伴い演算制御回路80は、図2(B)に示したようなレイアウト画面を液晶表示器8に表示させ、読み込んだ玉型形状データ(θi,ρi)からレンズ形状を状態表示エリアE4に表示させる。尚、図2(B)では、レンズ形状の表示を省略している。
【0055】
(2).コバ厚Wiの測定
また、図2(A)の『クランプ』スイッチ6aを操作して、レンズ回転軸23をレンズ回転軸24に対して軸線方向に離間させることにより、レンズ回転軸23,24を開く。この状態で、レンズ回転軸23,24に眼鏡レンズMLを配設して、『クランプ』スイッチ6aを再度操作して、レンズ回転軸23をレンズ回転軸24に対して軸線方向に接近させることにより、レンズ回転軸23,24でレンズ回転軸23,24間に眼鏡レンズMLを挟持させる。
このクランプ後に眼鏡レンズMLに右,左に応じて『左』スイッチ6b又は『右』スイッチ6cを操作し、眼鏡レンズMLの玉型形状データ(θi,ρi)におけるコバ厚Wiの測定を開始させる。
【0056】
これにより演算制御回路80は、測定部42を作動制御して、フィーラー101を眼鏡レンズ(被加工レンズ)MLの前側屈折面に当接(接触)させると共に、玉型形状データ(θi,ρi)に基づいてレンズ回転軸駆動用モータ25及びパルスモータ59を作動制御することにより、フィーラー101と眼鏡レンズMLの前側屈折面とを玉型形状データ(θi,ρi)に基づいて相対的に接触移動させる。
この際、フィーラー101は前側屈折面の湾曲に従って左右に移動させられ、この左右への移動量が測定軸42aを介して測定部42により測定される。この測定部42からの測定信号は演算制御回路80に入力され、演算制御回路80は測定部42からの測定信号に基づいて玉型形状データ(θi,ρi)における眼鏡レンズMLの前側屈折面の座標位置を求める。
【0057】
同様に演算制御回路80は、測定部42を作動制御して、フィーラー102を眼鏡レンズ(被加工レンズ)MLの後側屈折面に当接(接触)させると共に、玉型形状データ(θi,ρi)に基づいてレンズ回転軸駆動用モータ25及びパルスモータ59を作動制御することにより、フィーラー102と眼鏡レンズMLの後側屈折面とを玉型形状データ(θi,ρi)に基づいて相対的に接触移動させる。
この際、フィーラー101は後側屈折面の湾曲に従って左右に移動させられ、この左右への移動量が測定軸42aを介して測定部42により測定される。この測定部42からの測定信号は演算制御回路80に入力され、演算制御回路80は測定部42からの測定信号に基づいて玉型形状データ(θi,ρi)における眼鏡レンズMLの後側屈折面の座標位置を求める。
この様な前側屈折面の座標位置や後側屈折面の座標位置を求めることによる具体的な方法は、特願2001−30279号に開示のものが採用できるので、その詳細な説明は省略する。
【0058】
そして、この求めた玉型形状データ(θi,ρi)における眼鏡レンズMLの前側屈折面の座標位置と後側屈折面の座標位置からコバ厚Wiを演算により求める。
また、演算制御回路80は、例えば特開平11−42543号公報等に記載された適正ヤゲンカーブ設定装置等を設けることができ、玉型形状デ−タ(θi,ρi)から選択された少なくとも任意の2箇所のコバ厚データWiと、選択した玉型形状データ(θi,ρi)、選択されたコバ厚データWiの各々の組み合わせから予め定められた、異なるコバ分割比率で各々分割するヤゲン頂点位置を求め、眼鏡レンズのヤゲンカーブを求めることができる。
【0059】
(3).加工データの算出
図6において、砥石回転軸(円錐砥石回転軸)32とレンズ回転軸23,24は平面内に配置されている。この砥石回転軸32には、テーパ状の研削砥石(円錐砥石)35を有する。この研削砥石(円錐砥石)35の外周面の砥石回転軸32に対する傾斜角度を円錐砥石傾斜角度(テーパ角度)とすると、円錐砥石傾斜角度とほぼ同じ角度に砥石回転軸(回転軸)32は傾斜させることで、研削砥石35の周面と眼鏡レンズMLのコバ面が平行な状態又は略平行な状態で接触研削可能な状態となる。
【0060】
従って、上述したように砥石回転軸(円錐砥石回転軸)32の軸線をO1とし、レンズ回転軸23,24の軸線Oと平行な軸線O2、軸線O1,O2の為す角度をξとすると、砥石回転軸32は研削砥石(円錐砥石)35の外周面の砥石回転軸32に対する傾斜角度を円錐砥石傾斜角度(テーパ角度)だけ下方に傾斜角ξで傾斜させることにより、研削砥石35と眼鏡レンズMLのコバ面が平行な状態又は略平行な状態で接触研削可能な状態となる。例えば、研削砥石35の粗加工研削砥石36,37や鏡面仕上砥石39テーパ状の周面は眼鏡レンズMLのコバ面が平行な状態又は略平行な状態で線接触研削可能な状態となる。
このような研削砥石35の粗加工研削砥石36,37や鏡面仕上砥石39で円形で未加工な眼鏡レンズMLの周縁を玉型形状デ−タ(θi,ρi)の玉型形状(図15図167に示した玉型形状MLF(レンズ形状))に粗研削する前には、粗加工研削砥石36,37,鏡面仕上砥石39の半径(軸方向又は幅方向の中心位置における半径)と玉型形状デ−タ(θi,ρi)とから眼鏡レンズMLが粗加工研削砥石36,37,鏡面仕上砥石39に接触する位置を加工データとして算出させる。
【0061】
尚、軸間距離データを求めるための研削砥石35の各砥石36,37,39等の半径は、たとえば、各砥石36,37,39の軸方向(即ち幅方向)の中心位置の半径データを基準半径として用いるが、各砥石36,37,39の軸方向(即ち幅方向)の端の半径データを基準半径として用いても良い。
そして、加工データとしては、眼鏡レンズMLが研削砥石35に接触する位置、研削砥石35の軸線と眼鏡レンズMLの中心(レンズ回転軸23,24の軸線)との軸間距離、眼鏡レンズMLの球面状の屈折面による眼鏡レンズMLおよびキャリッジ22のZ軸方向(レンズ回転軸23,24の軸方向)への移動制御量等がある。
【0062】
ところで、レンズ回転軸(レンズ軸)23,24に沿った方向(レンズ回転軸23,24の軸線方向)から研削砥石35や眼鏡レンズMLを見たとき、即ち図10に示した矢印A1方向から研削砥石35や眼鏡レンズMLを見たとき、研削砥石35は図11に示したように楕円形に見え、眼鏡レンズMLは真円に見える。一方、研削砥石35の軸線に沿った方向から研削砥石35や眼鏡レンズMLを見たとき、即ち図12に示した矢印A2方向から研削砥石35や眼鏡レンズMLを見たとき、研削砥石35は図13に示したように真円に見え、眼鏡レンズMLは楕円形に見える。
そして、上述した加工データの算出に際しては、2つの加工データ算出方法が考えられる。ここで、図12のIpDを砥石回転軸32と垂直な第1の仮想平面とし、図10のIpLをレンズ回転軸23,24と垂直な第2の仮想平面として、加工データ算出方法を以下に説明する。
【0063】
第1の加工データ算出方法は、レンズ回転軸(レンズ軸)23,24に沿った方向(レンズ回転軸23,24の軸線方向)から研削砥石35を第2の仮想平面IpL(図10参照)に投影して、即ち図10の矢印A1で示した方向から研削砥石35を第2の仮想平面IpLに投影して、図14図15に示したような研削砥石35の楕円形状を用いる方法である。
また、第2の加工データ算出方法は、図12の矢印A2で示した研削砥石35の軸線に沿った方向から研削砥石35を第1の仮想平面IpD(図12参照)に投影することにより、研削砥石35を図16図17に示したような研削砥石35の真円形状を用いる方法である。
【0064】
第1の加工データ算出方法における研削砥石35の楕円投影形状を用いる場合には、図14図15に示した研削砥石35の楕円投影形状と玉型形状デ−タ(θi,ρi)とから眼鏡レンズMLが粗加工研削砥石36,37,鏡面仕上砥石39等に接触する位置P(図15参照)を求める際に、この研削砥石35の平面への楕円投影形状の位置Pまでの径を楕円の式を用いて求める必要がある。尚、以下の説明では、Pを接触点または接触位置として説明する。
しかし、この楕円の式を用いて眼鏡レンズMLが粗加工研削砥石36,37,鏡面仕上砥石39等に接触する位置を求めるには演算式が複雑になる。この結果、この楕円の式に基づく演算式を用いて演算制御回路80に眼鏡レンズMLが粗加工研削砥石36,37,鏡面仕上砥石39等に接触する位置を求めさせる場合、真円の研削砥石35の投影形状を用いて眼鏡レンズMLが粗加工研削砥石36,37,鏡面仕上砥石39等に接触する位置を求めさせるのに比べて時間が長く係る。
【0065】
また、第2の加工データ算出方法における研削砥石35の真円投影形状を用いる場合には、図16図17に示した研削砥石35の真円投影形状と玉型形状デ−タ(θi,ρi)とから眼鏡レンズMLが粗加工研削砥石36,37,鏡面仕上砥石39等に接触する位置P(図17参照)を求める。
この場合、演算制御回路80に眼鏡レンズMLが粗加工研削砥石36,37,鏡面仕上砥石39等に接触する位置を求めさせる演算式が簡単になり、この接触する位置を求める時間も楕円の式を用いた演算式より短くできるので、接触する位置を求める効率を高くできる。
【0066】
この実施例において加工データを算出する際には、図13に示したように研削砥石35の真円投影形状を用いるものとする。すなわち、加工データの算出に際しては、砥石回転軸32に直行する図12の仮想平面すなわち砥石傾斜角ξ分傾斜した第1の仮想平面IpDへ投影して、砥石回転軸32に沿う方向から見たとき研削砥石35は真円となり、フレーム2次元形状データすなわち玉型形状データ(θ,ρ)の仮想平面への投影データ(θ,ρ)ξを考える。
この際、投影データ(θ,ρ)ξは、眼鏡レンズML(レンズ回転軸23,24)を基準位置である回転開始位置から微小回転角θごとに回転させた状態を想定し、その回転位置を基準位置からの回転角ζとすると投影データは回転角ζにより変化する。これを投影データ(θ,ρ)ξ,ζとする。基準位置にあるときの投影データを(θi,ρi)ξ,ζ=θと表すことができる。投影データは、この状態でi=0〜nで表されるデータ群となるが、このデータ郡がζ=θ〜θnだけ存在することとなる。ここで投影データ(θ,ρ)ξ,ζは玉型形状データ(θ,ρ)とξ、ζを用いて表すことができる。投影データのθをθξと、ρをρξとするとき、θξ=arctan(ρ・sin(θ−ζ)/(ρ・cos(ξ)・cos(θ−ζ)))、またρξ=√((ρ・sin(θ−ζ))+(ρ・cos(ξ)・cos(θ-ζ)))として求めることができる。
この結果、投影データは、(θi,ρi)ξ,ζ=θj(i=0〜n、j=0〜n)と表現できる。
【0067】
尚、図18(a),(b)の眼鏡レンズMLは、円形で未加工の眼鏡レンズを研削砥石35により玉型形状(矩形)に研削加工した状態で、研削砥石35と接触している状態を示す。また、図18(a)は眼鏡レンズMLが回転開始位置である0°にあるときに眼鏡レンズMLおよび研削砥石35を図10の矢印A1方向(レンズ回転軸23,24の軸線方向)から見た模式図、図18(b)は眼鏡レンズMLが回転開始位置である0°にあるときに眼鏡レンズMLおよび研削砥石35を図10の矢印A1方向(研削砥石35の軸線O1方向)から見た模式図である。また、図18Dは、図18の眼鏡レンズMLを回転開始位置から90°回転させたときの状態を示したものである。更に、図18A図18Cは、図18の状態から図18Dの状態まで眼鏡レンズMLを回転させたときの玉型形状が変化する状態の一例を示す模式図である。この図18図18A図18Cは、玉型形状データ(θi,ρi)ξに基づいて投影データ(θi,ρi)ξを求める場合の、途中の課程を示したものである。
【0068】
次に、演算制御回路80は、周知のρL変換と称している演算と同じ作業をして、研削砥石35の軸線と玉型形状の軸間距離Liを投影データ(θi,ρi)ξ,ζ=θj(i=0〜1000,j=0〜1000)と砥石半径Rに基づいて求める。この際、特定のレンズ回転位置で軸間距離L(ヤゲン位置などの特定の制御位置での距離とする)が最大となる制御点(投影フレーム形状の特定点が投影面内の砥石(円形)と接する位置)を求める。このようにして演算制御回路80は、眼鏡レンズML(レンズ軸23,24)の一回転の分割数(回転角θi)とその加工に使用する砥石半径R(テーパ状砥石のため、使用目的による砥石が異なり、それぞれ粗砥石の半径Ra、ヤゲン仕上砥石の半径Rv、平仕上砥石の半径Rf、溝堀砥石の半径Rg、面取り砥石の半径Rc)に応じた軸間距離Liを軸間距離(θ,L)ξ,Rすなわち軸間距離データとして求める。そして、演算制御回路80は、軸間距離データ(θi,Li)ξ,Rを加工データ記憶領域83aに記憶させる。実際にはこの演算処理と記憶の処理は、目的別の砥石の半径に合わせてそれぞれ実施する必要があり、軸間距離データ(θi,Li)ξ,Ra、(θi,Li)ξ,Rv、(θi,Li)ξ,Rf、・・・・などとなる。
【0069】
次に、この演算制御回路80は、軸間距離データ(θi,Li)ξ,Rからレンズ回転軸(レンズ軸)23,24に沿った第2の仮想平面IpLへ逆投影したときの軸間距離データ(θi,Li)p,Rを研削加工用の軸間距離データとして求め、加工データ記憶領域83aに記憶させる。この軸間距離データ(θi,Li)p,Rは、軸間距離データ(θi,Li)ξ,Rと砥石傾斜角ξとから求めることができる。
また、眼鏡レンズMLの屈折面はメガネの処方箋に応じた曲率(曲率半径)を有するので、眼鏡レンズMLの研削砥石35への接触点Pは玉型形状データ(θi,ρi)の動径ρiに応じてZ軸方向(レンズ軸23,24の軸線方向)に変化する。従って、フレーム2次元形状データ(θ,ρ)すなわち玉型形状データ(θi,ρi)に対応させて眼鏡レンズMLにヤゲン、溝、面取りなどの加工制御をする際、眼鏡レンズMLをキャリッジ22と一体にZ軸方向(レンズ軸方向)に移動制御する必要がある。
【0070】
しかも、眼鏡レンズMLを研削砥石35で玉型形状データ(θi,ρi)の玉型形状に研削加工する場合、図14に示したように眼鏡レンズMLが研削砥石35に接触する位置Pが眼鏡レンズMLに回転中心(レンズ回転軸23,24の中心である軸線O)と研削砥石35の回転中心(軸線O1)とを結ぶ仮想線La上から図15図17に示したように眼鏡レンズMLの研削砥石35への接触点(接触位置)Pが動径ρiによって研削砥石35の周方向にズレる。このため、フレーム2次元形状データ(θ,ρ)すなわち玉型形状データ(θi,ρi)に対応させて眼鏡レンズMLにヤゲン、溝、面取りなどの加工制御をする際、眼鏡レンズMLと研削砥石35の接触点(接触位置)Pの周方向へのズレを考慮して眼鏡レンズMLをキャリッジ22と一体にZ軸方向(レンズ軸方向)に移動制御する必要がある。尚、研削砥石35がテーパ状に傾斜しているため砥石半径Rが使用目的砥石により異なるため、眼鏡レンズMLの研削砥石35との接触点(接触位置)Pの研削砥石35の周方向へのズレ量が変化する。また、テーパ状に傾斜していることから周方向へのズレ量に伴い、砥石上での接触位置のZ方向への変位があり、使用される砥石の半径の影響を受ける。
【0071】
眼鏡レンズMLにヤゲン、溝、面取りなどの加工制御をする際のデータとして、レンズ軸方向制御データ(θ,Z)を回転角θi毎にZ方向制御データZiを求める場合、眼鏡レンズMLと研削砥石35の接触点(接触位置)Pの周方向へのズレに伴う砥石上でのZ方向変位を考慮しなければ、回転角θi毎にZ方向制御データZiであるレンズ軸方向制御データ(θi,Zi)を眼鏡レンズMLの曲率(または曲率半径)と動径ρiから周知の方法で求めることができる。
しかし、実際には、眼鏡レンズMLの研削砥石35への接触点(接触位置)Pは、動径ρiの変化に応じて研削砥石35の周方向へズレが発生する。このため、軸間距離(θ,L)ξ,Rすなわち軸間距離データ(θi,Li)ξ,Rを求める段階で、砥石回転軸32とレンズ回転軸(レンズ軸)23,24と結ぶ仮想線La上の点P0から制御点(接触位置である接触点P)までのズレ角(Δθ,η)ξ,Rすなわち(Δθi,ηi)ξ,Rを求める。
【0072】
ここで、ズレ角(Δθ,η)ξ,Rの(η)ξ,Rすなわち(ηi)ξ,Rは仮想線La上の点P0から制御点(接触点P)までの研削砥石35側のズレ角であり、ズレ角(η,Δθ)ξ,Rの(Δθ)ξ,Rすなわち(Δθi)ξ,Rは仮想線La上の点P0から制御点(接触点P)までの眼鏡レンズML側のズレ角である。
このようなズレ角(Δθ,η)ξ,Rによる眼鏡レンズMLの研削砥石35への接触点Pは、研削砥石35の砥石傾斜角ξと動径(ρi)ξ,Rにおける眼鏡レンズMLの屈折面の曲率又は曲率半径等から求めることができる。このズレ角(Δθi,ηi)ξ,RのηiやΔθiは周知の方法により求めることができる。
【0073】
そして、このズレ角(Δθi,ηi)ξ,Rを用いて上述した軸間距離データ(θi,Li)ξ,Rを周知の方法で補正することにより求める。しかも、ズレ角(Δθi,ηi)ξ,Rがある場合の眼鏡レンズMLのZ方向制御データ(Zi)ξは、
Zξ,R=R・(1−cos(η))・sin(ξ)
から
(Zi)ξ,R=R・(1−cos(ηi))・sin(ξ)
として求めることができる。
そして、Z軸方向(レンズ回転軸23,24の軸線方向)におけるキャリッジ22の原点位置を設定して、キャリッジ22およびレンズ回転軸23,24間に挟持された眼鏡レンズMLのZ軸方向(レンズ回転軸23,24の軸線方向)におけるZ軸方向位置をZとしたとき、キャリッジ22および眼鏡レンズMLのレンズ軸方向制御量(Zx)は、
(Zx)=Z+Zξ,R
となるので、実際の回転角θiのレンズ軸方向制御データは(θ,Z+Zξ,R)となる。そして、演算制御回路80は、このようにして求めたレンズ軸方向制御データ(θ,Z+Zξ,R)を加工データ記憶領域83aに記憶させる
【0074】
このように演算制御回路80は、投影データ(θi,ρi)ξ,R,軸間距離データ(θi,Li)ξ,R,ズレ角(Δθi,ηi)ξ,R,軸間距離データ(θi,Li)ξ,Rから傾斜角ξに基づき逆演算して求めた軸間距離データ(θi,Li)p,R,Z方向制御データ(θ,Z+Zξ,R)等を加工データとして算出すると、算出した加工データを加工データ記憶領域83aに記憶させるようになっている。
【0075】
(4).眼鏡レンズMLの粗研削加工による玉型形状(レンズ形状)形成
演算制御回路80は、上述した(3)の軸間距離データ(θi,Li)p,Ra,Z方向制御データ(θ,Z+Zξ,Ra)等の加工データに基づきモータドライバ86aにより砥石駆動モータ33を作動制御して、研削砥石35を図6中、時計回り方向に回転駆動制御する。
一方、演算制御回路80は、加工データ記憶領域83aに記憶させた加工データに基づいて、パルスモータドライバ86を介してレンズ回転軸駆動モータ25を駆動制御し、レンズ回転軸23,24及び眼鏡レンズMLを回転制御する。
この際、演算制御回路80は、加工データ記憶領域83aに記憶させた加工データに基づいて、まずi=0の位置でパルスモータドライバ86を作動制御することによりパルスモータ59を駆動制御して、スクリュー軸58を逆転させ、受台60を所定量ずつ降下させる。この受台60の降下に伴い、レンズ軸ホルダー61がキャリッジ22の自重及び加工圧調整機構の調整の下に受台60と一体に降下する。
【0076】
この降下に伴って未加工で円形の眼鏡レンズMLが粗加工研削砥石36又は粗加工研削砥石37に当接した後は、受台60のみが降下させられる。この降下により受台60がレンズ軸ホルダー61から下方に離反すると、この離反したことがセンサSにより検出され、このセンサSからの検出信号が演算制御回路80に入力される。この演算制御回路80は、センサSからの検出信号を受けた後、更にパルスモータ59を駆動制御して、受台60を所定量だけ微小に降下させる。
これにより、加工データに基づいて、研削砥石35が眼鏡レンズMLを所定量研削する。この研削に伴いレンズ軸ホルダー61が降下して受台60に当接すると、センサSがこれを検出して検出信号を出力し、この検出信号が演算制御回路80に入力される。
この演算制御回路80は、この検出信号を受けると、加工データに基づいて眼鏡レンズMLを研削砥石により研削加工させる。そして、演算制御回路80は、この様な制御をi=n(iがnのときにレンズ回転軸23,24が一回転)行って、加工データの角度θi毎に動径ρi′となるように眼鏡レンズMLの周縁を粗加工研削砥石36又は粗加工研削砥石37により研削加工する。
このような研削に際して、演算制御回路80は、研削液供給装置から研削液が吐出される。
【0077】
(5).溝掘加工
眼鏡レンズMLをリムレスフレームのワイヤで保持するために、加工データの形状に研削された眼鏡レンズMLの周縁部(周面)に溝掘加工を行う場合には、研削砥石35を構成する溝掘砥石40の溝掘砥石部40bを用いる。この溝掘砥石部40bは、研削砥石35の中で最も小さい径に設定されていて、玉型形状に粗研削された眼鏡レンズMLの周面への接触点(接触位置)が動径ρiに応じてZ軸方向に変化しても、眼鏡レンズMLの周面に形成されるワイヤ溝がZ軸方向に広がる量を少なくなるようにしている。この加工に際して演算制御回路80は、上述した(3)の軸間距離データ(θi,Li)p,Rg, Z方向制御データ(θ,Z+Zξ,Rg)等の加工データに基づいて、キャリッジ22および眼鏡レンズMLを上述した粗研削加工と同様にして昇降制御すると共に、Z方向制御データ(θ,Z+Zξ,Rg)に基づいてベース駆動モータ14を作動制御して、ベース駆動モータ14によりキャリッジ22および眼鏡レンズMLをZ軸方向(レンズ回転軸23,24の軸線方向)に移動制御する。
【0078】
(6).ヤゲン加工
研削砥石35は、面取砥石部38aおよびヤゲン溝部38bが設けられた仕上砥石38を有する。
演算制御回路80は、眼鏡レンズMLをメガネフレームのレンズ枠に枠入れするために研削加工する場合、上述した(3)の軸間距離データ(θi,Li)p,Rv,Z方向制御データ(θ,Z+Zξ,Rv)等の加工データに基づいて上述の粗研削加工と略同様に眼鏡レンズMLを昇降制御して、研削砥石35のヤゲン形成溝部38aで、加工データの形状に粗研削された眼鏡レンズMLの周縁部に、ヤゲン加工をする。この際、演算制御回路80は、Z方向制御データ(θ,Z+Zξ,Rv)に基づいてベース駆動モータ14を作動制御して、ベース駆動モータ14により眼鏡レンズMLおよびキャリッジ22をZ軸方向に移動制御させる。
【0079】
(7).面取加工
玉型形状に研削加工された眼鏡レンズMLの周縁部における前側屈折面Rfとコバ面Faとの角部Laや後側屈折面Bfとコバ面Faとの角部Lbに面取加工を行う場合には、仕上砥石38の面取砥石部38aを用いる。
この面取加工に際して演算制御回路80は、上述した(3)の軸間距離データ(θi,Li)p,Rc,Z方向制御データ(θ,Z+Zξ,Rc)等の加工データに基づいてキャリッジ22および眼鏡レンズMLを上述した粗研削加工と略同様にして昇降制御すると共に、Z方向制御データ(θ,Z+Zξ,Rc)に基づいてベース駆動モータ14を作動制御して、ベース駆動モータ14によりキャリッジ22および眼鏡レンズMLをZ軸方向(レンズ回転軸23,24の軸線方向)に移動制御する。
【0080】
(変形例1)
以上説明した実施例では、研削砥石35を真円の砥石形状に投影して、真円の砥石形状から研削砥石の軸線とレンズ回転軸23,24(眼鏡レンズMLの回転中心)との軸間距離を求めるようにした例を示したが、必ずしもこれに限定されるものではない。
例えば、図10に示した未加工で円形の眼鏡レンズMLおよび円形の研削砥石35をレンズ回転軸23,24の軸線Oと垂直な第2の仮想平面IpLに投影したときに、眼鏡レンズMLのレンズ形状は図14に示したように真円形状となる一方、研削砥石35の砥石形状は図14に示したように楕円形状となる。
【0081】
この図14において、レンズ回転軸23,24の軸線Oと研削砥石35の中心(軸線)O1を結ぶ線をY軸とし、研削砥石35の楕円の砥石形状の中心(軸線O1)を通り且つY軸と垂直な線をX軸とし、楕円の砥石形状の焦点cを(xc、yc),焦点−cを(−xc、yc)とし、楕円の砥石形状の任意の点をPaとする。
また、aを楕円の長径とし、bを楕円の短径とすると、楕円の一般式は、
x^2/a^2+y^2/b^2=1・・・・・・(1)
となる。
ここで、第2の仮想平面IpLに投影された研削砥石35の楕円の砥石形状は、Y軸方向のみが変形させられて、砥石形状のY軸方向が短径となり、砥石形状のX軸方向が長径となる。
【0082】
この結果、研削砥石35の半径をrとし、軸線Oに対する研削砥石35の軸線O1の傾斜角をξとすると、第2の仮想平面IpLに投影された研削砥石35の楕円の砥石形状の長径aは
a=r・・・・・・(2)
と変わらず、砥石傾斜角ξによって短径bは、
b=r・cos(ξ)・・・・・(3)
となる。
この(2),(3)式を一般式(1)
に代入すると、研削砥石35の楕円の砥石形状の式は、
x^2/r^2+y^2/(r・cos(ξ))^2=1・・・・・(4)
となる。
【0083】
尚、図15のように眼鏡レンズMLの基準位置からの回転角をθiとし、この回転角θiにおいて眼鏡レンズMLの玉型形状(レンズ形状)MLが研削砥石35の楕円の砥石形状と接触する接触点をPiとすると、このとき眼鏡レンズMLの接触点Piは回転角θiに対してΔθズレた角度となり、この接触点Piと研削砥石35の中心を結ぶ線はY軸に対してη(ηi)の角度となる。この接触点Piの座標を(xp,yp)とし、このときの砥石形状の動径をRpとすると、砥石形状データは(ηi,Rp)として表すことができる。
【0084】
この接触点Piの座標(xp、yp)から、研削砥石35の接触点PiのY軸方向における距離はypであり、この距離ypは、
xp^2/r^2+yp^2/(r・cos(ξ))^2=1・・・・(5)式から
yp=√{(1−xp^2/r^2)・(r・cos(ξ))}・・・(6)
従来ρL変換と称している物と同様な考え方を円ではなく楕円で適用する。
特定のレンズ回転位置で軸間距離L(ヤゲン位置などの特定の制御位置での距離とする)が最大となる制御点(フレーム形状の特定点が砥石(楕円形)と接する)を定める。軸間距離Lをレンズ回転角分割数分もとめる(θ,L)が定まる。
フレーム2次元形状データ(θ,ρ)に対応させて加工制御するヤゲン、溝、面取りなどのレンズ軸方向制御データ(θ,Z)を従来より知られる手段で得られる。
【0085】
一方で(θ,L)を定める段階で砥石とレンズの接触点P(xp,yp)が定まり、砥石中心からのY方向長さYpが求まる。
接触点Pは楕円のY方向頂点との接触ではZ方向はその位置で接触するが、短径bと接触点のY座標ypとの差に砥石軸の傾斜角から
ZW=(b−yp)・sin(ξ)=(r・cos(ξ)−yp)・sin(ξ)
として定まる。
レンズ軸方向制御データ(θ,Z)にこの砥石傾斜角補正分(θ,ZW)を加えたデータでZ方向制御を行う。
軸間距離を(θ,L)に基づき、レンズ軸方向制御を(θ,Z+ZW)に基づき制御する。
【0086】
尚、投影面IpDにおいて、真円形状に投影された砥石形状での場合と同様に実際の砥石は、テーパ状の形状となっているため、加工目的別の各砥石の半径が異なることがそれぞれの制御データに影響することは、投影面をIpLにし、楕円形状に砥石を投影する場合にも同様に発生するので、制御データを各砥石別に求める必要性があるが、その詳細は同様となるためここでは省略する。
【実施例2】
【0087】
<面取制御時の加工干渉除去>
図19は、この発明の実施例2を示したものである。以下、図19を用いて演算制御回路80による実施例2の面取制御について説明する。
一般に、メガネのフレーム形状と眼鏡レンズのレンズ度数の組み合わせによりレンズコバ面の厚さは変化することが知られている。また、眼鏡レンズの周面を玉型形状に研削加工する場合、円筒(または円錐の一部断面)形状を有する砥石で眼鏡レンズの外周面を研削加工するのが普通である。しかし、眼鏡レンズの研削砥石への接触点を求めることは難しく、砥石外形を小さくすることで接触点の移動を小さくしたり、研削砥石と眼鏡レンズとの相対的位置関係にフレキシビリティーを設けるなどの工夫が実行されてきている。
【0088】
そこで、仕上砥石38の面取砥石部38aにより眼鏡レンズMFLのコバ端の角部に面取加工をする場合、研削砥石の大きさ、傾斜、軸傾斜など影響されず、またフレキシビリティーによることなく、加工干渉の発生しない制御データを得る手段を用いる。即ち、フレーム2次元形状データ(θ,ρ)から眼鏡レンズの面取り幅の大きさの分だけ小さい形状(θ,ρ)chfを面取幅小形状データとして求めさせる(図19(a)参照)。
尚、ここで(θ,ρ)のθは眼鏡レンズ及びレンズ回転軸23,24の1回転である360°をn分割(例えば、1000分割)した回転角であり、ρは回転角θ毎の動径を意味する。従って、(θ,ρ)は、レンズ回転軸23,24の回転角θを0からnまで変化させたときの動径のデータを示すもので、実際には(θi,ρi)[i=0,1,2・・・n]であるが、「i」を省略している。
【0089】
この(θ,ρ)chfから周知のρL変換と称している物と同じ作業を行って、特定のレンズ回転位置で軸間距離Li(ヤゲン位置などの特定の制御位置での距離とする)が最大となる制御点(フレーム形状の特定点が砥石と接する接触点P)を求める。この軸間距離Lを、眼鏡レンズML(レンズ回転軸23,24)の一回転の分割数分だけ求めることで(θ,L)chfが求められる(図19(b)参照)。この(θ,L)chfも実際には軸間距離データ(θi,Li)chfであるが、「i」を省略している。
次に、図19(b)のように実際の制御点(接触点P)となる(θ,ρ)chfと砥石中心とを通る切断面(iv)を想定した時に、その制御点(接触点P)に隣接する面取幅小形状データ(θi,ρi)chfと砥石中心とを通る切断面(i)〜(iii)、(v)〜(vii)内で砥石表面の外側または内側(加工干渉により食い込む状態)にあるかを判定する。この際、隣接点はレンズ回転進行方向及び逆方向に存在するので両側で判定する。
【0090】
この際、砥石表面の内側にあると判定した時には、その食い込み量を加工データ記憶領域83aに記憶させ、その次の隣接点で同様な判定をして、加工データを加工データ記憶領域83aに記憶させる。この判定が砥石表面の外側となるまで繰り返し実施する。このようにして記憶した食い込み量が最大となる±n番目の隣接点を求める。この最大となる食い込み量をΔmaxとする。
このようにして、面取のためのフレーム形状(θ,ρ)chf を元に得られたレンズ面データ(θ,Z)chfに最大となる食い込み量Δmaxを加えてZ制御データを得る。
そして、玉型形状に粗研削加工された眼鏡レンズMLの周縁部のコバ面における角部に面取加工を行う際に、求めた軸間距離を(θ,L)chfに基づいて、眼鏡レンズMLおよびキャリッジ22のレンズ軸方向制御(Z軸方向制御)を(θ,Z)にΔmaxを加えた値で制御させる。
【実施例3】
【0091】
<ヤゲン制御時の加工干渉除去>
図20は、この発明の実施例3を示したものである。以下、図20を用いて演算制御回路80による実施例3のヤゲン制御について説明する。
一般に、円筒、円錐形状の砥石を用いてヤゲン形状をレンズ度数のある眼鏡レンズのカーブに倣う加工をすると加工干渉が発生し、その干渉量はレンズ度数とフレーム形状の影響を受ける。レンズ度数が増すと干渉量が増加し、また、フレーム形状が矩形など直線的になるほど、干渉量が増加することが周知である。
そこで、ヤゲン砥石38により眼鏡レンズMLFにヤゲン加工する場合、フレーム2次元形状データ(θ,ρ)とヤゲン砥石半径を用いて従来から使用されている所謂ρL変換を用いて特定の制御回転位置での軸間距離Liが最大となる制御点(フレームの特定点が砥石と接する接触点P)を求める。この軸間距離Lを眼鏡レンズMLの一回転の分割数分だけ求めることで(θ,L)bvlが求める。
【0092】
図20(A)では加工干渉が発生しなかったと仮定した時の仕上がり眼鏡レンズ形状と共に特定の位置P(加工点)での接触状態の砥石形状の側面を示している。図20(B)では眼鏡レンズ正面とその接触点P(加工点)と砥石軸を通る断面(iv)位置、及び、その接触点P(加工点)に隣接するフレーム形状点と砥石軸を通る断面(i)〜(vii)位置を示している。図20(C)では、図20(B)で示した断面位置の断面状態を一部示している。図20(C)断面(iv)は接触点P(加工点)を通る断面で加工干渉が発生しなかったと仮定した時の仕上がりレンズとヤゲン砥石とはヤゲン形状全体で接触している。ヤゲン頂点のフレーム形状軌跡を考えたときにヤゲンのレンズ表面側、ヤゲンのレンズ裏面側の双方でヤゲン頂点が砥石と接触している状態となる。
【0093】
これに対してこの接触点P(加工点)に隣接する点を接触点P(加工点)の両側に順次考えた時、隣接する点断面(i),(ii)では、ヤゲンのレンズ裏面側の傾斜面に対して内側(砥石内に喰い込んでいる)になっており、ヤゲンのレンズ表面側の傾斜面に対して外側(砥石から離れる)になっている。断面(vi),(vii)では、ヤゲンのレンズ表面側の傾斜面に対して内側(砥石内に喰い込んでいる)になっており、ヤゲンのレンズ裏面側の傾斜面に対して外側(砥石から離れる)になっている。このようにヤゲンのレンズ表面側、または裏面側の傾斜面に対してフレーム形状の接触点P(加工点)に隣接する点が、その隣接点を含む砥石断面の内側か外側かを判定することで喰い込みの有無を判断できる。喰い込みが無いと判断できる場合には、接触点P(加工点)を加工制御する値を用いて制御する。
【0094】
喰い込みがある場合には、その喰い込み量を砥石軸とレンズ軸との軸間距離に並行する量として計算し、ヤゲンのレンズ表面側ΔYf、ヤゲンのレンズ裏面側ΔYbを求める。これは接触点P(加工点)に隣接する双方向に順次計算、その大きさを比較し、ヤゲンのレンズ表面側、ヤゲンのレンズ裏面側での喰い込み量がそれぞれ最大となるΔmaxYf、ΔmaxYbを求める。一般的にはこの最大となる喰い込み量は、ヤゲンのレンズ表面側、ヤゲンのレンズ裏面側で接触点P(加工点)のそれぞれ異なる方向の隣接点の喰い込み量として得られる。また、この喰い込み量はレンズ軸に平行な方向Zへの喰い込み量として計算することができるので、軸間距離と並行する方向での喰い込み量最大値ΔmaxYf、ΔmaxYbが得られた隣接点でそれぞれレンズ軸に平行な方向Zへの喰い込み量を求め、ΔmaxZf、ΔmaxZbとする。
【0095】
軸間距離と並行する方向での喰い込み量最大値ΔmaxYf、ΔmaxYbとは、フレーム形状の分割が細かければ、それぞれ近い値にはなるが一致はしない。そこで2次元形状として接触する点P(加工点)を加工するフレーム回転制御角での軸間距離は、ΔmaxYf、ΔmaxYbの平均値となる(ΔmaxYf+ΔmaxYb)/2を元の軸間距離に加えた値で制御する。
レンズ軸に平行な方向Zについては、ΔmaxZf、ΔmaxZbの平均値となる(ΔmaxZf+ΔmaxZb)/2を求める。これはそれぞれΔmaxZf、ΔmaxZbが互いに異なる方向の値となるので中間位置を求めることとなる。この値を接触点P(加工点)を制御するためのZ値に加えた値でレンズ軸に平行な方向Zを制御する。
Z方向の平均値は、Z方向による補正であるが、Y方向に於ける異なるΔmaxYf、ΔmaxYbを平均化したことによるY方向のそれぞれのずれをバランスさせる結果となる。
【0096】
この制御(加工干渉を除去)による断面(ii),(iv),(vi)の状態を図20(D)の「干渉除去有り」の指示する図で示している。この制御角の加工状態を示す断面(iv)では、接触点P(加工点)では接触無く浮いた状態となっている。また、ヤゲンのレンズ表面側で最も喰い込み量が大きかった断面(vi)では加工干渉のない仕上がりレンズのヤゲンのレンズ表面側とヤゲン砥石前面が接触している。同様に、ヤゲンのレンズ裏面側で最も喰い込み量が大きかった断面(ii)では加工干渉のない仕上がりレンズのヤゲンのレンズ裏面側とヤゲン砥石裏面が接触している。また、図20(E)では眼鏡レンズMLFのヤゲン部、特にその接触点P(加工点)部分を拡大した平面図を示している。「干渉除去無し」で指示の図では、砥石接触部がレンズ表面側とレンズ裏面側にヤゲン頂点Pで接し、互いに異なる方向に広がる状態を示している。図20(E)「干渉除去有り」の指示図では、砥石接触部がレンズ表面側とレンズ裏面側とで互いに離れ、限られた一部分となっている状態を示している。
【実施例4】
【0097】
<溝掘り制御時の加工干渉除去>
図21は、この発明の実施例4を示したものである。以下、図21を用いて演算制御回路80による実施例4の溝掘り制御について説明する。
溝掘り加工では一般に、小径の円筒形状、または円錐形状の砥石が用いられる。小径砥石のため影響は小さいが、眼鏡レンズのカーブに倣う加工をするため加工干渉が発生する。その干渉量はレンズ度数とフレーム形状の影響を受ける。レンズ度数が増すと干渉量が増加し、また、フレーム形状が矩形など直線的になるほど、干渉量が増加することが周知である。一般的に小径の砥石が用いられるのはこの干渉量を減らすためであり、溝掘砥石軸をレンズ軸に対して傾斜させることも、また、干渉量を減少させる効果があることが知られている。しかしながらレンズ度数、フレーム形状により変化し、安定した十分な効果があるとはいえない。
【0098】
そこで、溝掘砥石40により眼鏡レンズMLFに溝掘り加工する場合、出来上がりレンズ外径と一致するフレーム2次元形状データ(θ,ρ)から溝に入る糸の素線中心が通る溝芯フレーム形状データ(θ,ρ)grvを計算する。図21(C)に眼鏡レンズMLFの溝と糸素線径、溝掘砥石40の関係を示す。求めた溝芯フレーム形状データと溝掘砥石半径〔=(砥石外半径)−(糸素線半径)〕を用いて所謂ρL 変換を使用して特定の回転位置での軸間距離Liが最大となる制御点(フレーム形状の特定点が溝掘砥石と接する接触点Pf)を求める。この軸間距離Lを眼鏡レンズMLの一回転の分割数分だけ求めることで(θ,L)grvが求められる。
【0099】
図21では加工干渉が発生しなかったと仮定した時の仕上がり眼鏡レンズ形状(溝形状を含む)と共に特定の位置Pfでの接触状態の溝掘砥石形状を示している。図21(B)では眼鏡レンズ正面とその接触点Pfと砥石軸を通る断面(iii)の位置、及び、その接触点Pfに隣接するフレーム形状点と砥石軸を通る断面(i)〜(v)の位置を示している。図21(D)では、図21(B)で示した断面位置の断面図を示している。断面(iii)は接触点Pfを通る断面で加工干渉が発生しなかったと仮定した時の溝仕上がりレンズと溝掘砥石とは溝レンズ表面側、溝レンズ裏面側の双方で溝掘砥石と接触している状態となる。
【0100】
これに対してこの接触点Pfに隣接する点を接触点Pfの両側に順次考えた時、隣接点は断面(i),(ii)では、レンズ表面側の溝砥石面に対して内側(砥石内に喰い込んでいる)になっている。断面(iv),(v)では、レンズ表面側の溝砥石面に対して外側(砥石から離れる)になっている。このレンズ表面側の溝砥石面に対して、溝芯フレーム形状が内側、または外側であることを判定することでレンズ表面側での喰い込みの有無を判断できる。喰い込みが無いと判断できる場合には、接触点Pfを加工制御するレンズ軸方向制御値を用いて制御する。
【0101】
同様にレンズ裏面側での接触点Pb、及びその隣接点についても溝砥石面に対して内側(砥石内に喰い込んでいる)、または外側(砥石から離れる)であることを判定してレンズ裏面側での喰い込みの有無を判断し、喰い込みがないと判断する場合には、接触点Pbを加工制御するレンズ軸方向制御値を用いて制御する。
喰い込みがある場合には、その喰い込み量をレンズ軸に並行する量として計算し、溝レンズ表面側をΔZf、溝レンズ裏面側をΔZbとして求める。これは接触点Pfに隣接する双方に順次計算、その大きさを比較し、のレンズ表面側、のレンズ裏面側での喰い込み量がそれぞれ最大となるΔmaxZf(図21(D)断面(ii))、ΔmaxZb(図21(D)断面(iv))を求める。一般的にはこの最大となる喰い込み量は、溝レンズ表面側の接触点Pf、溝レンズ裏面側の接触点Pbでそれぞれ異なる方向の隣接点の喰い込み量として得られる。
【0102】
図21(D)では溝掘砥石の厚さが仕上がり溝幅と一致した断面として示している。加工には図21(E)、(F)で示す通り溝幅よりも小さい厚さの溝堀砥石を用いて加工する。図21(E)で、断面(ii)の加工干渉が発生しなかったと仮定した時の仕上がりレンズMLFに溝掘砥石40のレンズ表面側が接触している状態を示している。断面(iii)の接触点Pfでは、レンズ表面側の溝砥石面の喰い込みを無くすため、接触点Pfを制御するレンズ軸方向制御値にΔmaxZfを加え、この値でレンズ軸に平行な方向に制御する。一方、図21(F)で、断面(iv)の加工干渉が発生しなかったと仮定した時の仕上がりレンズMLFに溝掘砥石40のレンズ裏面側が接触している状態を示している。断面(iii)の接触点Pbでは、レンズ裏面側の溝砥石面の喰い込みを無くすため、接触点Pbを制御するレンズ軸方向制御値にΔmaxZbを加え、この値でレンズ軸に平行な方向に制御する。このようにレンズ表面側とレンズ裏面側とを異なる制御にて加工することで加工干渉のない溝掘り加工を実現する。
【0103】
レンズ表面側とレンズ裏面側を異なる制御とする場合に、加工干渉を除去するためのレンズ表面側の追加移動量ΔmaxZfとレンズ裏面側の追加移動量ΔmaxZbの和が仕上がり溝幅と溝掘砥石の厚さとの差を越えるときには、レンズ表面側を加工干渉のない状態で加工するための制御でレンズ裏面側に加工干渉を与え、同様にレンズ裏面側への加工干渉をなくすための加工制御がレンズ表面側に加工干渉を与える結果となる。これを防止するため、仕上がり溝幅と溝掘砥石の厚さとの差を越えた量の1/2をそれぞれの追加移動量から引いた値を用いて制御量を求めることで意図的な制御と逆側の面に発生する加工干渉を防止する。但し、この場合には結果的に制御している面側での加工干渉には除去されない部分が残ることになる。
【実施例5】
【0104】
実施例1では溝掘砥石40の外径が砥石回転軸(スピンドル)32の外径より大きく形成された例を示したが、必ずしもこれに限定されるものではない。
例えば、図22に示したように、砥石回転軸(スピンドル)32の先端部に固定ネジ300のネジ部300aを同軸に螺着して、砥石36〜39を砥石回転軸(スピンドル)32の先端部に固定ネジ300の中間部に設けたフランジ部300bで固定すると共に、固定ネジ300に砥石回転軸(スピンドル)32よりも小径の砥石取付軸部300cを一体に形成し、この砥石取付軸部300cに砥石回転軸(スピンドル)32の外径より小さい径の溝掘砥石40′を固定ネジ202で固定した構成としても良い。
【0105】
この実施例によれば、溝掘砥石40′を用いて眼鏡レンズに溝掘加工をする際、玉型形状に研削された眼鏡レンズMLの周面への接触点(接触位置)が動径に応じてZ軸方向に変化しても、眼鏡レンズMLの周面に形成されるワイヤ溝がZ軸方向に広がる量を実施例1における溝掘砥石40を用いた場合よりも小さくできる。
【実施例6】
【0106】
また、図23図25に示したように、固定ネジ200の先端部にチャック203を設けて、このチャック203に穴あけ加工用のドリル204を取り付けた構成としてもよい。
この場合、図5のトレイ12の図示を省略した位置に固定される図25の固定板205を設けて、この固定板205に図25のスピンドル傾斜ベース206を設けると共に、スピンドル傾斜ベース206の筒状の軸保持部206aにスピンドル保持部材(軸保持部材)207を傾斜軸208で回転可能に保持させる。
そして、スピンドル保持部材(軸保持部材)207に砥石回転軸(スピンドル)32を回転自在に保持させる。この砥石回転軸32と傾斜軸208は直交させられていて、傾斜軸208の軸線回りの回動により、砥石回転軸32のレンズ回転軸23,24に対する傾斜角度を調整できる。
【0107】
また、固定板205には傾斜モータ(傾斜角度調整モータ)209が固定され、この傾斜モータ209の回転は回転伝達手段210で傾斜軸208に伝達されるようになっている。回転伝達手段210は、傾斜モータ209の出力軸209aに固定された駆動ギヤ210aと、傾斜軸208に固定され且つ駆動ギヤ210aに噛合する従動ギヤ210bを有する。
更に、砥石回転軸32を回転駆動するスピンドル駆動モータ211はスピンドル傾斜ベース206に取り付けられている。また、スピンドル駆動モータ211の回転は砥石回転軸32にベルト212を介して伝達されるようになっている。
この構成において、傾斜モータ209を作動させて、この傾斜モータ209の回転を回転伝達手段210で傾斜軸208に伝達させることにより、傾斜軸208が軸線回りに回動させられて、スピンドル傾斜ベース206およびスピンドル保持部材207が傾斜軸208と一体に傾斜軸208が軸線回りに回動させられる。
【0108】
これにより、砥石回転軸32がスピンドル保持部材207と一体に傾斜軸208の軸線回りに上下に回動させられるので、研削砥石35で眼鏡レンズMLの周縁を研削加工する際には研削砥石35の上側の軸線(仮想線である軸線O2)がレンズ回転軸23,24の軸線Oと平行になるように砥石回転軸32を上下回動させる。
【0109】
一方、スピンドル駆動モータ211を駆動することにより、スピンドル駆動モータ211の回転がベルト212を介して砥石回転軸32に伝達され、研削砥石35およびドリル204が砥石回転軸32と一体に回転させられる。
従って、回転砥石35の上側の軸線(仮想線である軸線O2)がレンズ回転軸23,24の軸線Oと平行になった状態で、スピンドル駆動モータ211で研削砥石35を回転駆動させると共に、レンズ回転軸駆動用モータ25を玉型形状データ(θi,ρi)又は加工データに基づいて作動制御させて眼鏡レンズMLをレンズ回転軸23,24と一体に軸線回りに回動させる。これに伴い、パルスモータ59を玉型形状データ(θi,ρi)又は加工データに基づいて作動制御させてキャリッジ22を昇降制御させ、眼鏡レンズMLおよびレンズ回転軸23,24をキャリッジ22を昇降制御させ、研削砥石35とレンズ回転軸23,24との軸線間距離を調整することにより、研削砥石35による眼鏡レンズMLの周縁の研削加工を実施例1と同様にして実行できる。
【0110】
また、このようにして玉型形状に研削加工された眼鏡レンズMLの縁部にテンプル取付金具やブリッジ金具を取り付けるための取付穴を開ける場合には、レンズ回転軸駆動用モータ25,パルスモータ59,傾斜モータ209を作動制御して、ドリル204による穴あけ位置を設定する。
即ち、この設定に際しては、レンズ回転軸駆動用モータ25を玉型形状データ(θi,ρi)又は加工データに基づいて作動制御させて眼鏡レンズMLをレンズ回転軸23,24と一体に軸線回りに回動させると共に、パルスモータ59を玉型形状データ(θi,ρi)又は加工データに基づいて作動制御させてキャリッジ22を昇降制御させ、砥石回転軸32及び研削砥石35とレンズ回転軸23,24との軸線間距離を調整する。これに伴い、上述したように砥石回転軸32の軸線を上下に回動させて、ドリル204の先端を穴あけ位置の高さになるように調整すると共に、砥石回転軸32の先端部に取り付けたドリル204の軸線(砥石回転軸32の軸線と一致)を眼鏡レンズMLの屈折面の接線に垂直になるように調整する。尚、本実施例では、ドリル204の軸線を眼鏡レンズMLの屈折面の接線に垂直になるように設定するようにしているが、ドリル204の軸線を必ずしも眼鏡レンズMLの屈折面の接線に垂直になるようにする必要はない。すなわち、穴をあける方向は限定されるものではない。
【0111】
このような穴あけ位置の設定を行った後、スピンドル駆動モータ211を駆動させてドリル204を砥石回転軸32と一体に回転させ、ベース駆動モータ14でキャリッジ22をZ軸方向(レンズ回転軸23,24の軸線方向)に駆動制御して、眼鏡レンズMLの周縁部の穴あけ位置にドリル204で穴あけ加工する。
この構成によれば、眼鏡レンズMLの縁部にテンプル取付金具やブリッジ金具を取り付けるための取付穴を開ける場合、研削砥石35の回転駆動機構とは別のドリル回転機構を設ける必要がないので、部品点数を省略できる。
【0112】
(変形例)
この実施例6において、眼鏡レンズMLの保持構造は図26に示したようにすることができる。この図26においては、キャリッジ22にレンズ回転軸24と平行な支持部材220を固定し、この支持部材220の先端部に板状の支持アーム221をレンズ回転軸24の先端側に向けて固定すると共に、レンズ回転軸24の軸線と同軸のレンズ保持軸222を支持アーム221の先端部にレンズ回転軸24の先端に対向させて軸線回りに回転自在に保持させた構成としても良い。
この構成では、眼鏡レンズMLの縁部にテンプル取付金具やブリッジ金具を取り付けるための取付穴をドリル204で開ける際に、レンズ保持軸222や支持アーム221が図27に示したように邪魔になることはない。
【0113】
(変形例)
この実施例6において、図25のスピンドル傾斜ベース206の筒状の軸保持部206aにスピンドル保持部材(軸保持部材)207を傾斜軸208で回転可能に保持させることでスピンドル軸傾斜角度が調整できることを示したが、スピンドル軸の傾斜角度調整ができない構造の場合の作用について説明する。
この場合、ドリル直径は目的の穴直径に比較し小さい物を用いる。レンズ軸に対するドリルの傾斜角はスピンドル軸の傾斜角ξに固定される。レンズの取り付け穴はフレーム形状、レンズ度数により影響を受け、穴位置、穴あけ角が変化するが、穴あけ角は、スピンドル軸の傾斜角度に固定したまま、穴深さを穴中心位置でドリル直径の1/2〜3/4に留めて下穴を開ける。
表示画面8に、レンズ軸に対する穴あけ傾斜角度を数値表示する。操作者は、この数値表示に基づき、この発明とは無関係なハンドドリル装置などのレンズ保持台を数値表示を基に傾斜させて、穴あけ作業を完了させることができる。
【実施例7】
【0114】
また、砥石回転軸32が傾斜している場合に、研削砥石35の溝掘砥石40が眼鏡レンズMLF(ML)コバ面に作る溝の傾斜角は、以下のようになる。即ち、眼鏡レンズMLFのレンズ仕上がり形状により砥石加工角が変化し、これらには以下の関係が有る。図28は、眼鏡レンズMLFと溝掘砥石40を上側から見た平面視の状態を示す説明図である。
【0115】
図28において、眼鏡レンズMLFのレンズ中心(軸線O)と溝掘砥石40(研削砥石35)の砥石中心(軸線O1)とを結ぶ仮想線(第1の仮想線)をLoとし、眼鏡レンズMLFの溝掘砥石40への加工点をPoとし、加工点Poと砥石中心(軸線O1)とを結ぶ線を仮想線(第2の仮想線)Lpとし、仮想線Lo,Lpの為す角度を砥石加工角ηとする。また、図28Aにおいて、研削砥石35の溝掘砥石40における溝掘砥石部40bの傾斜角を砥石軸傾斜角θaとする。この砥石軸傾斜角θaは、実施例1では眼鏡レンズMLF(ML)のコバ面(コバ端面)Fa、又はコバ面Faと平行な仮想線O2(図6参照)に対する傾斜角である。
【0116】
また、図29に示したように、レンズコバ面に対する溝傾斜角をτとすると、溝傾斜角τは、
τ=arcsin(sin(θa)・sin(η))・・・(a)
となる。
一方、眼鏡レンズMLFのレンズ形状とそのコバ面に作る溝の出来上がりカーブ値を設定することでレンズコバ面に仕上るべき溝角度を求めることができる。
ここで、レンズコバ面に形成する溝カーブをCとすると、溝カーブCは一般的フレームでは4〜5カーブ(曲率半径R:523/4〜523/5)となる。また、眼鏡レンズMLFの動径(レンズ動径)ρ(幾何学中心などの基準からの半径)は、一般的フレームでは10〜30mm程度でできている。 尚、動径ρは、一般的フレームの値よりも更に小さい部分や大きい部分を有する形状も有る。尚、本実施例では動径ρのnを下付のρとして示しているが、動径ρは上述した動径ρnと同じものである。
【0117】
ここで、レンズコバ面に対する溝傾斜角(レンズ動径ρn位置)τ とし、図30に示したように動径ρの前後の動径をρn−1,ρn+1とし、動径ρと動径ρn−1の為す角度をΔεとすると、溝傾斜角τは、加工されるカーブ値Cをとして
τ=arcsin[[√{(523/C)−(ρn+1}−√{(523/C)−(ρn−1}]/√[(ρn+1+(ρn−1−2・(ρn+1)・(ρn−1)・cos(2・Δε)]]・・・(b)
で求めることができる。
ここで523は一般的クラウン硝子レンズの屈折率1.523から 曲率半径=1000・(1.523−1)/C
である。
【0118】
従って、眼鏡レンズMLFのレンズコバ面に仕上るべき溝傾斜角τは上述した(b)式で求めることができる。しかし、砥石軸傾斜角θaを任意に制御できる場合には、求められた角度τと一致するτとなるように、τを上述した(a)式に於ける砥石軸傾斜角θaと砥石加工角ηとの関係から砥石軸傾斜角θaを求めて、この砥石軸傾斜角θaとなるように図25における傾斜モータ209を作動制御する。
また、砥石軸傾斜角θaを一定とする場合には、一般的フレームのカーブから定まるτの平均的な値、及びフレーム形状から定まる砥石加工角ηから定まる平均的なτとが近い値となる砥石軸傾斜角θaを定めることが望ましく、例えば約25度を中心に±15度の範囲で設定できる。尚、この数値は一例であるので、この数値に限定されるものではない。
【0119】
以上説明したように、この発明の実施の形態の眼鏡レンズ研削加工装置は、眼鏡レンズを保持可能に設けられ且つレンズ軸方向であるZ軸方向にZ軸方向駆動モータで移動制御可能に設けられたレンズ回転軸と、前記眼鏡レンズの玉型形状データ(θi,ρi)と前記眼鏡レンズの周縁を研削加工する砥石の半径とに基づいて、前記レンズ回転軸と前記研削砥石の砥石回転軸との軸間距離Liを前記玉型形状データ(θi,ρi)の動径ρi毎に演算して、前記軸間距離Liと回転角θiとからなる軸間距離データ(θi,Li)を求め、前記軸間距離データ(θi,Li)に基づきレンズ軸回転駆動手段を作動制御して前記レンズ回転軸を回転角θi毎に回転させると共に、前記軸間距離データ(θi,Li)に基づき軸間距離調整手段を作動制御して前記軸間距離Liを前記回転角θi毎に調整させるようになっている。また、前記演算制御手段は、玉型形状上加工制御点の眼鏡レンズコバ端部の面取砥石との接触状態を想定したときの加工制御点に隣接する周辺の玉型形状点での面取砥石喰い込み量を演算し、その喰い込み量が最大となる周辺の玉型形状点での喰い込み量をレンズ回転軸の軸方向制御量に加えた制御量で面取加工制御するようになっている。この構成によれば、フレーム形状、レンズカーブにより発生する面取加工時の喰い込みを発生させることなく加工することができる。
【0120】
また、この発明の実施の形態の眼鏡レンズ研削加工装置は、眼鏡レンズを保持可能に設けられ且つレンズ軸方向であるZ軸方向にZ軸方向駆動モータで移動制御可能に設けられたレンズ回転軸と、前記眼鏡レンズの玉型形状データ(θi,ρi)と前記眼鏡レンズの周縁を研削加工する砥石の半径とに基づいて、前記レンズ回転軸と前記研削砥石の砥石回転軸との軸間距離Liを前記玉型形状データ(θi,ρi)の動径ρi毎に演算して、前記軸間距離Liと回転角θiとからなる軸間距離データ(θi,Li)を求め、前記軸間距離データ(θi,Li)に基づきレンズ軸回転駆動手段を作動制御して前記レンズ回転軸を回転角θi毎に回転させると共に、前記軸間距離データ(θi,Li)に基づき軸間距離調整手段を作動制御して前記軸間距離Liを前記回転角θi毎に調整させる演算制御手段を備えている。研削砥石は外周面がテーパ状に形成されていると共に、前記砥石回転軸は、前記研削砥石の前記レンズ回転軸側の稜線が前記レンズ回転軸の軸線と平行になるように、前記レンズ回転軸の軸線と平行な軸線に対して砥石傾斜角ξだけ傾斜させた状態となっている。前記演算制御手段は、玉型形状上加工制御点のヤゲン砥石との接触状態を想定したときの加工制御点に隣接する周辺の玉型形状点でのヤゲンのレンズ表面側傾斜面とレンズ裏面側傾斜面それぞれのヤゲン砥石喰い込み量を演算し、その喰い込み量が最大となる周辺の玉型形状点での喰い込み量をレンズ回転軸と砥石回転軸の軸間距離方向制御量に加えた制御量でヤゲン加工制御するようになっている。この構成によれば、ヤゲン加工時にフレーム形状、ヤゲンカーブによるヤゲン砥石の喰い込みの発生しない所望の正確な形状にヤゲン加工を行うことができる。
【0121】
また、この発明の実施の形態の眼鏡レンズ研削加工装置は、眼鏡レンズを保持可能に設けられ且つレンズ軸方向であるZ軸方向にZ軸方向駆動モータで移動制御可能に設けられたレンズ回転軸と、前記眼鏡レンズの玉型形状データ(θi,ρi)と前記眼鏡レンズの周縁を研削加工する砥石の半径とに基づいて、前記レンズ回転軸と前記研削砥石の砥石回転軸との軸間距離Liを前記玉型形状データ(θi,ρi)の動径ρi毎に演算して、前記軸間距離Liと回転角θiとからなる軸間距離データ(θi,Li)を求め、前記軸間距離データ(θi,Li)に基づきレンズ軸回転駆動手段を作動制御して前記レンズ回転軸を回転角θi毎に回転させると共に、前記軸間距離データ(θi,Li)に基づき軸間距離調整手段を作動制御して前記軸間距離Liを前記回転角θi毎に調整させる演算制御手段を備え、前記研削砥石は外周面がテーパ状に形成されていると共に、前記砥石回転軸は、前記研削砥石の前記レンズ回転軸側の稜線が前記レンズ回転軸の軸線と平行になるように、前記レンズ回転軸の軸線と平行な軸線に対して砥石傾斜角ξだけ傾斜させている。砥石回転軸には溝掘り用の砥石であってその砥石幅が所望の溝幅より小さい溝掘砥石が装着されている。前記演算制御手段は、レンズ表面側溝面を加工するための制御に基づき、玉型形状上溝掘加工制御点の溝砥石との接触状態を想定したときの加工制御点に隣接する周辺の玉型形状点での溝砥石の喰い込み量を演算し、その喰い込み量が最大となる周辺の玉型形状点での喰い込み量を表側最大喰い込み量として求め、レンズ裏面側溝面についても同様に、その喰い込み量が最大となる周辺の玉型形状点での喰い込み量を裏側最大喰い込み量として求め、前記の溝のレンズ表面側溝面を加工するためのレンズ軸に平行な方向の制御量に表側最大喰い込み量を加えた制御量でレンズ表面側溝面を加工する制御と、前記の溝のレンズ裏面側溝面を加工するためのレンズ軸に平行な方向の制御量に裏側最大喰い込み量を加えた制御量でレンズ裏面側溝面を加工する制御とを実施するようにできている。この構成によれば、溝掘り加工時にフレーム形状、溝カーブにより発生する溝砥石の喰い込みの結果生じるヤゲン溝幅の拡大を低減することができる。
【0122】
また、この発明の実施の形態の眼鏡レンズ研削加工装置は、前記演算制御手段は、レンズ表面側溝面を加工するための制御に基づき、玉型形状上溝掘加工制御点の溝砥石との接触状態を想定したときの加工制御点に隣接する周辺の玉型形状点での溝砥石の喰い込み量を演算し、その喰い込み量が最大となる周辺の玉型形状点での喰い込み量を表側最大喰い込み量として求め、レンズ裏面側溝面についても同様に、その喰い込み量が最大となる周辺の玉型形状点での喰い込み量を裏側最大喰い込み量として求め、前記の表側最大喰い込み量と裏側最大喰い込み量との和が、特定のレンズ加工制御角度位置で、目的の溝幅と溝加工砥石の厚さの差より大きい場合、目的の溝幅と溝加工砥石の厚さの差と同値となるように表側最大喰い込み量、及び裏側最大喰い込み量を減じた後、前記の溝のレンズ表面側溝面を加工するためのレンズ軸に平行な方向の制御量に表側最大喰い込み量を加えた制御量でレンズ表面側溝面を加工する制御と、前記の溝のレンズ裏面側溝面を加工するためのレンズ軸に平行な方向の制御量に裏側最大喰い込み量を加えた制御量でレンズ裏面側溝面を加工する制御とを実施するようにできている。この構成によれば、溝掘り加工時にフレーム形状、溝カーブにより発生する溝砥石の喰い込みの結果生じるヤゲン溝幅の拡大を低減することができる。また、溝幅低減目的の補正による逆面への喰い込み発生を防止できる。
【符号の説明】
【0123】
23・・・レンズ回転軸
24・・・レンズ回転軸
25・・・レンズ回転軸駆動用モータ(レンズ軸回転駆動手段)
32・・・砥石回転軸
35・・・研削砥石
38・・・仕上砥石(ヤゲン砥石)
38a・・・面取砥石部
40・・・溝掘砥石
43・・・軸間距離調整手段
80・・・演算制御回路(演算制御手段)
209・・・傾斜モータ(傾斜角調整モータ)
Fa・・・コバ面
O・・・軸線
O1・・・軸線
P・・・接触点(接触位置)
Pf・・・レンズ表面側接触点(接触位置)
Pb・・・レンズ裏面側接触点(接触位置)
ML・・・眼鏡レンズ
MLF・・・眼鏡レンズ
図1
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