(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遮断弁の前記ケーシング側の端部と、前記燃焼器ライナの側部に形成された、前記点火ロッドを挿入するための挿入孔との間に設けられ、前記点火ロッドが内部を進退する管状のスリーブをさらに具備することを特徴とする請求項1記載の点火装置。
【背景技術】
【0002】
近年、タービンから排出された排気中のCO
2の一部を燃焼器に循環させるガスタービン設備が検討されている。このガスタービン設備においては、発電と、CO
2の分離および回収とを同時に行う火力発電システムの実現が検討されている。
【0003】
この環境調和性の高いガスタービン設備において、例えば、酸化剤として酸素を使用し、超臨界圧のCO
2を燃焼器に循環させる火力発電システムが検討されている。この火力発電システムでは、CO
2を有効活用し、NOxを排出しないシステムを実現することができる。
【0004】
このような火力発電システムでは、例えば、燃料(天然ガスやメタン)および酸化剤(酸素とCO
2の混合気)を燃焼器に導入して燃焼させるとともに、冷却媒体などとしてもCO
2を燃焼器に導入する。そして、この燃焼により発生する高温の燃焼ガスによってタービンを回転させて発電する。タービンから排出される燃焼ガス(CO
2および水蒸気)を熱交換器により冷却し、水分を分離してCO
2とする。このCO
2は、高圧ポンプで圧縮され、高圧CO
2となる。この高圧CO
2の大部分は、熱交換器により加熱され燃焼器へ循環させる。残りの高圧CO
2は、回収され他の用途に使用される。
【0005】
この火力発電システムにおける燃焼器では、燃焼器内で混合された燃料と酸化剤の混合ガスに点火装置を用いて着火する。着火時においては、機器に対する急激な熱負荷を押さえるために、酸化剤流量や燃料流量が減らされている。そして、着火後、酸化剤流量を増加して燃焼器内の圧力を上昇させるとともに、燃料流量を増加して燃焼器内の燃焼ガス温度を上昇させる。このように、例えば、燃焼器内の圧力は、タービンの定格負荷条件まで上昇される。
【0006】
従来、ガスタービンの燃焼器においては、燃焼器の壁面に配置された点火装置に電圧を印加し、火花放電によって着火する方法が一般的である。火花放電を生じさせる点火装置の先端は、着火後、火炎に曝される。
【0007】
そのため、点火装置の耐久性などの観点から、燃焼器の内部に点火装置を出し入れする構成が検討されている。この点火装置は、例えば、圧縮機の吐出空気を用いた空気シリンダによって、燃焼器の内部に進退される。そして、着火後、火花放電部である、点火装置の先端は、燃焼器の内部から引き出される。この際、点火装置の先端は、例えば、燃焼器ライナに形成された点火装置を進退させるための挿入孔、または燃焼器ライナとケーシングとの間まで引き出される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る火力発電システムの系統図である。この火力発電システムでは、燃焼器10に導入される作動流体としてCO
2(二酸化炭素)を使用する一例を示す。火力発電システムは、
図1に示すように、燃焼器10と、タービン12と、発電機13と、熱交換器14と、冷却器15と、湿分分離器16と、高圧ポンプ17と備える。また、燃焼器10は、点火装置11を備えている。なお、燃焼器10は、ガスタービン燃焼器として機能する。
【0016】
燃焼器10は、燃料と酸化剤を燃焼させ、高温の燃焼ガスを発生させる。燃焼反応は、点火装置11による着火によって始まる。この燃焼器10には、燃料、酸素および高圧CO
2が導入される。
【0017】
燃料として、例えば、メタン、天然ガスなどの炭化水素が使用される。また、燃料として、例えば、一酸化炭素および水素などを含む石炭ガス化ガス燃料を使用することもできる。酸化剤として、例えば、酸素が使用される。
【0018】
この燃焼器10に導入される高圧CO
2は、超臨界圧の超臨界流体である。この高圧CO
2は、タービン12の排ガスの一部を循環させることで得られる。
【0019】
高圧CO
2の一部は、例えば、酸化剤である酸素に混合される。また、高圧CO
2の残部は、例えば、燃焼器ライナの冷却媒体や、燃焼器ライナ内に導入される希釈媒体などとして利用される。なお、燃焼器ライナについては後述する。
【0020】
ここで、この火力発電システムにおいては、燃焼器10から排出される燃焼ガスに、余剰の酸化剤(酸素)や燃料が残存しないことが好ましい。そこで、燃料および酸素の流量は、例えば、量論混合比(当量比が1)になるように調整されている。なお、ここでいう当量比は、燃料と酸素が均一に混合したと想定したときの当量比(オーバーオールでの当量比)である。
【0021】
タービン12は、燃焼器10から発生する高温の燃焼ガスを導入する。導入された燃焼ガスは、タービン12内で膨張仕事をし、タービンロータを回転させる。そして、タービン12は、膨張仕事を終えた燃焼ガス(CO
2および水蒸気)を排出する。なお、燃焼器10から排出された燃焼ガスは、例えば、トランジションピース(図示しない)を通り、タービン12に導入される。
【0022】
発電機13は、例えば、タービン12と同軸上に配置される。すなわち、発電機13は、タービン12と同軸で連結されている。発電機13は、タービン12の回転に応じて発電する。
【0023】
熱交換器14は、熱交換により、タービン12から排出される燃焼ガス(CO
2および水蒸気)から熱を奪う。そして、その奪った熱を、タービン12に循環されるCO
2に与える。この熱交換によって、例えば、700℃程度の超臨界CO
2が燃焼器10に供給される。
【0024】
冷却器15は、熱交換器14により熱を奪われた燃焼ガスをさらに冷却する。そして、燃焼ガス中の水蒸気を凝縮させて水とする。
【0025】
湿分分離器16は、冷却器15によって冷却された燃焼ガスから水分を分離する。そして、湿分分離器16は、水分が取り除かれたCO
2(ドライCO
2)を排出する。湿分分離器16で分離された水分(凝縮水)は、例えば、外部に排出される。
【0026】
高圧ポンプ17は、湿分分離器16によって水分が取り除かれたCO
2を圧縮して昇圧し、超臨界のCO
2とする。この高圧CO
2の大部分は、熱交換器14を介して燃焼器10に循環される。一方、残りの高圧CO
2は、例えば、他の設備へ供給される。
【0027】
次に、この火力発電システムにおける作用について説明する。
【0028】
燃焼器10に、燃料、酸素、およびタービン12からの排気を利用して得られた高圧CO
2が導入され、燃料と酸素が燃焼すると、高温の燃焼ガスが発生する。この燃焼ガスは、タービン12に導入される。そして、燃焼ガスは、タービン12内で膨張仕事をし、動翼を通じてタービンロータを回転させる。このタービンロータの回転によって発電機13が駆動して発電する。
【0029】
膨張仕事を終えた燃焼ガス(CO
2および水蒸気)は、タービン12から排出される。タービン12から排出された燃焼ガスは、熱交換器14において熱が奪われ、冷却器15に導入される。冷却器15に導入された燃焼ガスは、さらに冷却され、水蒸気が凝縮して水となる。
【0030】
冷却器15によって冷却された燃焼ガスは、湿分分離器16に導かれる。そして、湿分分離器16において、燃焼ガスから水分を分離し、水分が取り除かれたCO
2を排出する。水分が取り除かれたCO
2は、高圧ポンプ17により昇圧され、超臨界の高圧CO
2となる。
【0031】
この高圧CO
2の大部分は、熱交換器14を通り、高温の燃焼ガスから奪った熱によって加熱される。加熱された高圧CO
2は、燃焼器10に循環される。一方、残りの高圧CO
2は、例えば、他の設備へ供給される。
【0032】
ここで、残りの高圧CO
2を、例えば、高純度の高圧CO
2として貯留することができる。これによって、CO
2を分離して回収する設備(CCS)などを別途設けることなく、高純度の高圧CO
2を回収することができる。また、回収される高圧CO
2を、例えば、石油採掘現場で用いられているEOR(Enhanced Oil Recovery)に利用することもできる。
【0033】
上記した火力発電システムでは、発電と、CO
2の分離および回収とを同時に行うことができる。また、この火力発電システムでは、超臨界圧のCO
2を用いた酸素燃焼の循環システムが構成される。この火力発電システムでは、CO
2を有効活用することで、NOxを排出しないゼロエミッションのシステムが実現される。
【0034】
次に、第1の実施の形態の点火装置11を備える燃焼器10について説明する。
【0035】
図2は、第1の実施の形態の点火装置11を備える燃焼器10の縦断面を模式的に示した図である。なお、
図2には、点火を行う際の点火装置11の状態が示されている。
【0036】
図2に示すように、燃焼器10は、ケーシング20と、燃焼器ライナ30と、燃料酸化剤供給部40と、点火装置11とを備える。
【0037】
ケーシング20は、燃焼器ライナ30や燃料酸化剤供給部40を内部に収容する。ケーシング20の閉塞された一端(頭部)には、燃料酸化剤供給部40を挿入するための開口21が形成されている。また、ケーシング20の一端側には、高圧CO
2をケーシング20内に導入する配管22が接続されている。この配管22は、1箇所に限らず、周方向に複数設けられてもよい。なお、配管22は、作動流体供給部として機能する。
【0038】
ケーシング20の外側面には、点火装置11の遮断弁50を取り付けるためのフランジ部23が設けられている。フランジ部23の中央には、ケーシング20を貫通し、ケーシング20の内部と、ケーシング20の外部とを連通させる貫通孔24が形成されている。なお、図示していないが、ケーシング20は、例えば、燃焼器10の長手方向に分割された部品を組み合わせて構成される。
【0039】
燃焼器ライナ30は、ケーシング20の内壁面と所定の間隙をあけて、ケーシング20内に設けられている。燃焼器ライナ30は、例えば、一端(頭部)が閉塞され、他端側が開口された円筒などの筒体で構成される。燃焼器ライナ30の一端には、燃料酸化剤供給部40を燃焼器ライナ30の内部に臨ませるための開口31が形成されている。この開口31を介して燃料酸化剤供給部40から燃焼器ライナ30の内部に燃料および酸化剤が導入される。
【0040】
燃焼器ライナ30の側部には、点火装置11の点火ロッド60を燃焼器ライナ30の内部に挿入するための挿入孔32が形成されている。この挿入孔32は、ケーシング20の貫通孔24に対向する位置に形成される。
【0041】
また、挿入孔32よりも下流側の側部には、例えば、配管22から導入された高圧CO
2を燃焼器ライナ30内に導入するための希釈孔33が形成されている。なお、
図2には示していないが、燃焼器ライナ30の側部に、例えば、多孔式膜冷却用の孔を備えてもよい。この場合、多孔式膜冷却用の孔を通り、高圧CO
2が燃焼器ライナ30内に導入される。
【0042】
なお、燃焼器ライナ30の下流端は、例えば、トランジションピース(図示しない)に連結している。そして、燃焼器ライナ30から排出された燃焼ガスは、トランジションピース(図示しない)を通り、タービン12に導入される。
【0043】
燃料酸化剤供給部40は、中央の燃料供給部41と、この燃料供給部41の周囲に設けられた環状の酸化剤供給部42とを備える。燃料供給部41は、燃焼器ライナ30内に燃料を噴出する。酸化剤供給部42は、燃焼器ライナ30内に酸化剤を噴出する。噴出される酸化剤の流れは、例えば、酸化剤供給部42に備えられたスワーラ43などを通過することで生じた旋回速度成分を有している。
【0044】
次に、点火装置11について説明する。
【0045】
図2に示すように、点火装置11は、遮断弁50と、点火ロッド60と、駆動部70とを備える。
【0046】
遮断弁50は、ケーシング20の内部とケーシング20の外部とを連通または遮断する。遮断弁50は、筒状の筒体部51と、遮断部52とを備える。筒体部51の両端は、例えば、フランジ部54、55を備えている。一端のフランジ部54は、ケーシング20のフランジ部23に固定されている。他端のフランジ部55は、駆動部70に連結されている。
【0047】
遮断部52は、筒体部51内の通路53を遮断する。この遮断部52が開かれているときは、ケーシング20の内部とケーシング20の外部とが連通状態となる。この連通状態では、筒体部51内を通して、点火ロッド60を燃焼器ライナ30側に進退させることができる。一方、遮断部52が閉じられているときは、ケーシング20の内部とケーシング20の外部とが閉鎖状態となる。この閉鎖状態では、遮断部52よりも燃焼器ライナ30側に点火ロッド60を導くことはできない。
【0048】
遮断弁50としては、例えば、ニードルバルブ、ボールバルブなどを使用することができる。なお、遮断弁50は、これらに限られるものではない。遮断弁50としては、遮断部52が開かれているときに、点火ロッド60を進退させることができるものであれば使用できる。
【0049】
点火ロッド60は、長軸のロッド部61と、このロッド部61の先端に設けられた火花放電部62とを備える。火花放電部62に電圧を印加することで、火花放電を生じる。この火花放電によって、燃焼器ライナ30内に導入された燃料と酸素の燃焼反応を開始させる。なお、火花放電部62は、電圧印加装置(図示しない)と電気的に接続されている。また、ロッド部61は、ロッドとして機能する。
【0050】
ロッド部61は、例えば、駆動部70に支持されている。そして、点火ロッド60は、駆動部70を作動させることで、遮断弁50の筒体部51内や、燃焼器ライナ30内を進退可能となる。
【0051】
駆動部70は、点火ロッド60のロッド部61を支持するとともに、例えば、この支持するロッド部61に平行に配置された伸縮シリンダ71を備える。ロッド部61は、例えば、ロッドガイド72の貫通孔73に摺動可能に貫通され、支持されている。また、例えば、貫通孔73の内面には、シール部(図示しない)を備え、高圧CO
2などの漏れを抑制している。
【0052】
ロッド部61の後端は、
図2に示すように、例えば、平板状部材74に固定されている。伸縮シリンダ71は、ロッドガイド72と平板状部材74との間に配置される。そして、この伸縮シリンダ71が点火ロッド60の軸方向に伸縮することで、点火ロッド60を進退させる。
【0053】
伸縮シリンダ71としては、例えば、エアシリンダや油圧シリンダなどが使用される。ここで、伸縮シリンダ71の駆動媒体は、例えば、
図1に示した火力発電システムの系統以外の系統から導入されることが好ましい。例えば、伸縮シリンダ71に駆動媒体を導入するための駆動媒体源を個別に備えてもよい。これによって、火力発電システムの作動状態に影響を受けずに、伸縮シリンダ71を駆動することができる。
【0054】
なお、伸縮シリンダ71は、例えば、配管(図示しない)を介して駆動媒体源に接続されている。そして、この配管を介して、駆動媒体が伸縮シリンダ71へ導入され、または、この配管を介して、駆動媒体が伸縮シリンダ71から導出される。
【0055】
次に、第1の実施の形態の点火装置11を備える燃焼器10の作用について、
図2〜
図4を参照して説明する。
【0056】
図3は、第1の実施の形態の点火装置11を備える燃焼器10の縦断面を模式的に示した図である。なお、
図3には、遮断弁50の遮断部52が閉じられた状態が示されている。この状態は、例えば、着火が完了後における状態として例示される。ここで、遮断部52が閉じられた状態における点火ロッド60の位置を、便宜上、スタンバイ位置と呼ぶ。
【0057】
図4は、第1の実施の形態の点火装置11を備える燃焼器10内の圧力比をタービン負荷の変化に基づいて示した図である。なお、
図4には、比較のため、従来のガスタービンの燃焼器内の圧力比も示している。また、縦軸は、定格負荷時における従来の燃焼器内の圧力を1としたときの圧力比である。
【0058】
燃焼器10において着火を行う際、
図3に示された状態から遮断弁50の遮断部52を開く。そして、伸縮シリンダ71を駆動して、筒体部51の内部、貫通孔24および挿入孔32を通して、
図2に示すように、点火ロッド60の火花放電部62を燃焼器ライナ30の内部の所定の位置まで移動する。
【0059】
ここで、所定の位置とは、例えば、着火を的確に行える位置である。具体的には、所定の位置として、例えば、着火時に酸化剤の流れによって燃焼器ライナ30内に形成される再循環領域内の下流側などが例示できる。
【0060】
続いて、火花放電部62に電圧を印加して火花放電を生じさせる。この火花放電の開始後、燃料供給部41から燃料、および酸化剤供給部42から酸化剤を燃焼器ライナ30内に噴出する。そして、火花放電部62の火花放電によって燃料と酸素との混合気に着火し、燃焼反応が開始する。
【0061】
なお、この着火時における燃焼器10内の圧力は、
図4に示すように、定格負荷時における従来の燃焼器内の圧力よりも低い。すなわち、点火装置11において、従来の燃焼器に使用されている点火装置の耐圧仕様を適用することができる。
【0062】
着火完了後、伸縮シリンダ71を駆動して、点火ロッド60をケーシング20の内部からスタンバイ位置まで引き出す。すなわち、点火ロッド60は、火花放電部62が遮断部52よりも外側(駆動部70側)となる位置まで引き出される。
【0063】
点火ロッド60をスタンバイ位置まで引き出した後、遮断弁50の遮断部52を閉じる。そして、
図3に示された状態になる。この遮断部52が閉じられた状態では、遮断部52よりも外側(駆動部70側)とケーシング20の内部とは遮断される。すなわち、点火ロッド60は、ケーシング20の内部、換言すれば燃焼器10の内部の圧力雰囲気場に曝されない。そのため、
図4に示すように、着火完了後に燃焼器10の内部の圧力が上昇し、定格負荷時において圧力比が15程度になっても、点火ロッド60は、燃焼器10の内部の圧力の影響を受けない。
【0064】
ケーシング20の配管22から導入された高圧CO
2は、ケーシング20と燃焼器ライナ30との間を下流側(燃焼器ライナ30の下流端側)に向かって流れる。この際、高圧CO
2は、燃焼器ライナ30を冷却しながら流れる。そして、高圧CO
2は、例えば、燃焼器ライナ30の希釈孔33を通り、燃焼器ライナ30内に導入される。
【0065】
上記したように、第1の実施の形態の点火装置11によれば、遮断弁50を備えることで、ケーシング20の内部とケーシング20の外部とを遮断することができる。また、着火完了後、点火ロッド60を遮断弁50の遮断部52よりも外側(駆動部70側)となる位置まで引き出すことができる。そして、遮断部52を閉じることで、点火ロッド60は、燃焼器10の内部の圧力雰囲気場に曝されない。
【0066】
そのため、第1の実施の形態の点火装置11では、タービン定格負荷時における燃焼器内の圧力が従来のガスタービンにおける燃焼器内の圧力の10倍以上になっても、従来のガスタービンの燃焼器における点火装置の耐圧仕様を適用することができる。
【0067】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態の点火装置11Aを備える燃焼器10の縦断面を模式的に示した図である。なお、
図5には、遮断弁50の遮断部52が閉じられた状態が示されている。なお、第1の実施の形態の点火装置11を備える燃焼器10と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
【0068】
第2の実施の形態の点火装置11Aは、スリーブ80を備えた以外は、第1の実施の形態の点火装置11と同じ構成である。そのため、ここでは、この異なる構成について主に説明する。
【0069】
図5に示すように、点火装置11Aは、遮断弁50と、点火ロッド60と、駆動部70と、スリーブ80とを備える。
【0070】
スリーブ80は、ケーシング20側の遮断弁50(筒体部51)の端部前縁スナッバ51aと、燃焼器ライナ30の挿入孔32との間に亘って設けられている。スリーブ80は、両端が開口された管状部材で構成される。この管状部材は、例えば、耐熱金属などで構成される。
【0071】
遮断弁50側のスリーブ80の端部81には、例えば、管の半径方向に広がるフランジ部82を備える。このフランジ部82は、例えば、
図5に示すように、ケーシング20のフランジ部23と筒体部51のフランジ部54との間に挟持される。これによって、スリーブ80が固定される。なお、例えば、フランジ部82の位置合わせを容易にするため、
図5に示すように、ケーシング20のフランジ部23の端面23aに、フランジ部82を嵌め込む溝25を設けてもよい。
【0072】
一方、燃焼器ライナ30側のスリーブ80の端部83は、例えば、燃焼器ライナ30の挿入孔32に嵌合される。この場合、端部83は、燃焼器ライナ30の内部に突出しないことが好ましい。なお、この端部83は、挿入孔32に嵌合されることに限られない。例えば、端部83の外径を挿入孔32よりも大きくし、挿入孔32の周囲を覆うように外側から端部83を燃焼器ライナ30に当接させてもよい。すなわち、端部83は、挿入孔32を介して燃焼器ライナ30内に流入する高圧CO
2の流れを阻止するように備えられていればよい。
【0073】
これによって、挿入孔32を介して燃焼器ライナ30内に流入する高圧CO
2の流量は、微量となる。なお、挿入孔32を介して燃焼器ライナ30内に流入する高圧CO
2が遮断されることがより好ましい。
【0074】
このようなスリーブ80を備える点火装置11Aにおいて、燃焼器10において着火を行う際、点火ロッド60は、遮断弁50の筒体部51の内部、スリーブ80の内部を通して、火花放電部62が燃焼器ライナ30の内部の所定の位置となるように移動される。
【0075】
着火完了後には、点火ロッド60は、火花放電部62が遮断部52よりも外側(駆動部70側)となる位置まで引き出される。そして、
図5に示すように、遮断部52が閉じられる。
【0076】
燃焼器10において、ケーシング20の配管22から導入された高圧CO
2は、ケーシング20と燃焼器ライナ30との間の空間90を下流側(燃焼器ライナ30の下流端側)に向かって流れる。この際、スリーブ80の端部83が挿入孔32に嵌合されているため、挿入孔32を介して燃焼器ライナ30内に流入する高圧CO
2の流量は、微量である。すなわち、燃焼器ライナ30内に形成される再循環領域に、挿入孔32を介して流入される高圧CO
2の流量は、微量である。
【0077】
そのため、再循環領域における流れ場が高圧CO
2によって乱されることを抑制できる。これによって、最適な燃焼反応や保炎性能が維持される。
【0078】
上記したように、第2の実施の形態の点火装置11Aによれば、スリーブ80を備えることで、挿入孔32を介して燃焼器ライナ30内に流入する高圧CO
2の流量を抑制することができる。これによって、最適な燃焼反応や保炎性能が維持される。
【0079】
なお、第2の実施の形態の点火装置11Aにおいても、遮断弁50を備えることで得られる作用効果は、第1の実施の形態の点火装置11における作用効果と同じである。
【0080】
ここで、上記した火力発電システムでは、燃焼器に導入される作動流体として超臨界流体のCO
2(二酸化炭素)を使用する一例を示したが、この作動流体として、空気などを使用してもよい。
【0081】
以上説明した実施形態によれば、超臨界圧の作動流体を用いる火力発電システムにおいて、従来のガスタービンの燃焼器における点火装置の耐圧仕様を適用することが可能となる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。