(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388429
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】モジュール型の過給式内燃機関及び当該内燃機関のためのモジュラーシステム並びに過給装置
(51)【国際特許分類】
F02B 37/00 20060101AFI20180903BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20180903BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
F02B37/00 301H
F02B39/00 T
F02M35/10 311C
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-81611(P2014-81611)
(22)【出願日】2014年4月11日
(65)【公開番号】特開2014-206168(P2014-206168A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年11月18日
(31)【優先権主張番号】10 2013 006 302.7
(32)【優先日】2013年4月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ゼンゲン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ベルテンブライター
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・エップラー
【審査官】
齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−115550(JP,A)
【文献】
特開2010−127073(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0056444(US,A1)
【文献】
特表2008−537053(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0071450(US,A1)
【文献】
国際公開第2010/076383(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00−39/16
F02M 21/04
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給式内燃機関のためのモジュラーシステムであって、前記過給式内燃機関は、
原動機(11、11”)であって、シリンダ(12)を有しており、各原動機の前記シリンダ(12)には前記シリンダに至る給気導管を通じて圧縮された給気を供給することが可能であり、各原動機の前記シリンダ(12)からは前記シリンダから延びる排ガス導管を通じて排ガスを排出することができる、原動機と、
過給装置(13、13’、13”)であって、少なくとも1つの排ガスターボチャージャ(15、16)を有しており、各過給装置の前記排ガスターボチャージャ(15、16)内で、各原動機のシリンダから排出された排ガスが膨張可能であり、この際に得られたエネルギーを、各原動機の前記シリンダに供給されるべき給気を圧縮するために利用することが可能である、過給装置と、
を有する過給式内燃機関のためのモジュラーシステムにおいて、
前記過給装置(13、13’、13”)を、インライン型原動機(11)及びV型原動機(11”)双方に使用可能であり、複数のモジュラーシステムモジュールから構成することができること、すなわち、
インライン型原動機(11)に関しては、
前記過給装置の前記原動機に対する給気側の接点を決定する給気冷却器ハウジング(24、24’)と、前記過給装置の前記原動機に対する排ガス側の接点を決定する原動機側の排ガスマニフォールドとが、前記過給装置が前記原動機の連結側(29)において前記原動機に接続されているか、又は、連結側の反対側(30)において前記原動機に接続されているか、に依存し、
それに対して、前記過給装置の周囲に対する給気側の接点を決定する吸気要素(23)と、前記過給装置の周囲に対する排ガス側の接点を決定する周囲側の排ガスマニフォールド(22)とが、前記過給装置が前記原動機の前記連結側(29)において前記原動機に接続されているか、又は、前記連結側の反対側(30)において前記原動機に接続されているか、に依存しないように構成することができ、
V型原動機(11”)に関しては、
前記給気冷却器ハウジング(24、24’)と、前記原動機側の排ガスマニフォールドと、前記インライン型原動機のための吸気要素(23)とが用いられるとともに、V型に適合した、周囲側の排ガスマニフォールド(22”)が用いられる、
を特徴とする過給式内燃機関のためのモジュラーシステム。
【請求項2】
過給装置のためのモジュラーシステムにおいて、
前記過給装置を、インライン型原動機(11)及びV型原動機(11”)双方に使用可能であり、複数のモジュラーシステムモジュールから構成することができること、すなわち、
インライン型原動機(11)に関しては、
前記過給装置の原動機に対する給気側の接点を決定する給気冷却器ハウジング(24、24’)と、前記過給装置の前記原動機に対する排ガス側の接点を決定する原動機側の排ガスマニフォールドとが、前記過給装置が前記原動機の連結側(29)において前記原動機に接続されているか、又は、連結側の反対側(30)において前記原動機に接続されているか、に依存し、それに対して、
前記過給装置の周囲に対する給気側の接点を決定する吸気要素(23)と、前記過給装置の周囲に対する排ガス側の接点を決定する周囲側の排ガスマニフォールド(22)とが、前記過給装置が前記原動機の前記連結側(29)において前記原動機に接続されているか、又は、前記連結側の反対側(30)において前記原動機に接続されているか、に依存しないように構成することができ、
V型原動機(11”)に関しては、
前記給気冷却器ハウジング(24、24’)と、前記原動機側の排ガスマニフォールドと、前記インライン型原動機の吸気要素(23)とが用いられるとともに、V型に適合した、周囲側の排ガスマニフォールド(22”)と、V型に適合したタンク(28”)とが用いられるように構成することができること、
を特徴とする過給装置のためのモジュラーシステム。
【請求項3】
V型原動機(11”)に関しては、前記周囲側の排ガスマニフォールド(22”)が、前記過給装置が前記原動機の連結側において前記原動機に接続されているか、又は、連結側の反対側において前記原動機に接続されているかに依存しないことを特徴とする請求項1又は2に記載のモジュラーシステム。
【請求項4】
特に高圧ターボチャージャ(16)と低圧ターボチャージャ(15)とを有する過給装置を備えたインライン型原動機(11)に関して、さらに、1つ以上のターボチャージャ(15、16)、給気冷却器(25、27)、タンク(28)、及び、必要に応じて前記給気冷却器ハウジング(24、24’)から前記高圧ターボチャージャ(16)までの空気導管(26)は、前記過給装置(13、13’)が各原動機(11、11’)の前記連結側(29)において前記原動機に接続されているか、又は、前記連結側の反対側(30)において前記原動機に接続されているか、に依存しないことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のモジュラーシステム。
【請求項5】
インライン型原動機(11、11’)に関して、前記高圧ターボチャージャ(16)と前記低圧ターボチャージャ(15)との間に延在する排ガスマニフォールド(21、21’)、及び、必要に応じて前記低圧ターボチャージャ(15)から前記給気冷却器ハウジング(24、24’)までの空気導管は、前記過給装置(13、13’)が各原動機(11、11’)の前記連結側(29)において前記原動機に接続されているか、又は、前記連結側の反対側(30)において前記原動機に接続されているか、に依存することを特徴とする請求項4に記載のモジュラーシステム。
【請求項6】
V型原動機(11”)には、1つ以上のターボチャージャ(15、16)、前記給気冷却器(25、27)、及び、必要に応じて前記給気冷却器ハウジング(24、24’)から前記インライン型原動機のための前記高圧ターボチャージャ(16)までの前記空気導管(26)が用いられることを特徴とする請求項4又は5に記載のモジュラーシステム。
【請求項7】
V型原動機(11”)には、V型に適合したタンク(28”)が用いられ、前記タンクは、前記過給装置(13”)が前記原動機の連結側において前記原動機に接続されているか、又は、連結側の反対側において前記原動機に接続されているか、に依存しないことを特徴とする請求項6に記載のモジュラーシステム。
【請求項8】
原動機(11、11”)であって、シリンダ(12)を有しており、前記シリンダに、前記シリンダに至る給気導管を通じて、圧縮された給気を供給することが可能であり、前記シリンダからは、前記シリンダから延びる排ガス導管を通じて排ガスを排出することができる、原動機と、
過給装置(13、13’、13”)であって、少なくとも1つの排ガスターボチャージャを有しており、前記排ガスターボチャージャ内で、シリンダから排出された排ガスが膨張可能であり、この際に得られたエネルギーを、前記シリンダに供給されるべき給気を圧縮するために利用することが可能である、過給装置と、
を有するモジュール型の内燃機関において、
前記過給装置(13、13’、13”)を、インライン型原動機(11)及びV型原動機(11”)双方に使用可能であり、複数のモジュラーシステムモジュールから構成することができること、すなわち、
インライン型原動機(11)に関しては、
前記過給装置の前記原動機に対する給気側の接点を決定する給気冷却器ハウジング(24、24’)と、前記過給装置の前記原動機に対する排ガス側の接点を決定する原動機側の排ガスマニフォールドとが、前記過給装置が前記原動機の連結側(29)において前記原動機に接続されているか、又は、連結側の反対側(30)において前記原動機に接続されているか、に依存し、それに対して、
前記過給装置の周囲に対する給気側の接点を決定する吸気要素(23)と、前記過給装置の周囲に対する排ガス側の接点を決定する周囲側の排ガスマニフォールド(22)とが、前記過給装置が前記原動機の前記連結側(29)において前記原動機に接続されているか、又は、前記連結側の反対側(30)において前記原動機に接続されているか、に依存しないように構成することができ、
V型原動機(11”)に関しては、
前記給気冷却器ハウジング(24、24’)と、前記原動機側の排ガスマニフォールドと、前記インライン型原動機のための吸気要素(23)とが用いられるとともに、V型に適合した、周囲側の排ガスマニフォールド(22”)が用いられるように構成することができること、
を特徴とするモジュール型の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュール型(Baukastenbauform)の過給式内燃機関に関する。さらに、本発明は、過給式内燃機関のためのモジュラーシステム(Baukastensystem)と、過給装置のためのモジュラーシステムと、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内燃機関は、つねに個々の決定された使用目的及び決定された要求に合わせて構成された内燃機関であった。内燃機関を新しく開発する場合、一般的には、内燃機関のアセンブリ全体について新しく開発が行われる。これは、過給式内燃機関の場合でも該当する。当該内燃機関では、特に過給装置のアセンブリがつねに個々に構成される。すなわち、この内燃機関は、過給装置が連結側において内燃機関の本来の(eigentlich)原動機に接続されるか、又は、連結側の反対側において内燃機関の本来の原動機に接続されるか、に適合して、及び、過給装置がインライン型原動機で使用されるか、又は、V型原動機で使用されるか、に適合して、構成される。これまで、内燃機関を新しく開発する際には、既存の部材に介入し、さらに利用することは不可能であったか、又は極めて限られた範囲でのみ可能であった。これは欠点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の課題は、過給式内燃機関のためのモジュラーシステムと、過給装置のためのモジュラーシステムと、モジュール型の過給式内燃機関と、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本課題は、請求項1に係る過給式内燃機関のためのモジュラーシステムによって解決される。
【0005】
過給式内燃機関のためのモジュラーシステムは、シリンダを有する原動機を含んでおり、各原動機のシリンダには、シリンダに至る給気導管を通じて給気を供給することが可能であり、各原動機のシリンダからは、当該シリンダから延びている排ガス導管を通じて排ガスを排出することが可能である。さらに、当該モジュラーシステムは、少なくとも1つの排ガスターボチャージャを有する過給装置を含んでおり、各過給装置の1つ又は各排ガスターボチャージャにおいては、各原動機のシリンダから排出された排ガスが膨張可能であり、この際に得られたエネルギーを、シリンダに供給されるべき給気の圧縮に用いることができる。
【0006】
過給装置は、複数のモジュラーモジュールから構成され得る。つまり、インライン型原動機に関しては、過給装置の原動機に対する給気側の接点を決定する給気冷却器ハウジングと過給装置の原動機に対する排ガス側の接点を決定する原動機側の排ガスマニフォールドとは、過給装置が原動機の連結側において原動機に接続されているか、又は、連結側の反対側において原動機に接続されているか、に依存し、それに対して、過給装置の周囲に対する給気側の接点を決定する吸気要素と過給装置の周囲に対する排ガス側の接点を決定する周囲側の排ガスマニフォールドとは、過給装置が原動機の連結側において原動機に接続されているか、又は、連結側の反対側において原動機に接続されているか、に依存しないように構成されると共に、V型原動機には、給気冷却器ハウジングと原動機側排ガスマニフォールドとインライン型原動機のための吸気要素とが用いられるが、V型に適合した、周囲側の排ガスマニフォールドが用いられるように構成される。このV型に適合した、周囲側の排ガスマニフォールドは、過給装置がV型原動機の連結側において当該原動機に接続されているか、又は、連結側の反対側において当該原動機に接続されているか、に依存しない。
【0007】
本発明に係るモジュラーシステムによって、1つの内燃機関の開発の際に行われた計算及び試験の結果を、別の内燃機関に転用することが可能になる。異なる内燃機関に関して、統一されたアセンブリコンセプトが準備され、内燃機関が異なる構成を有することによるアセンブリの変型例が削減され得る。さらに、顧客及び製造者による交換部品の保持も容易になる。顧客及びアフターサービス担当者の訓練に要する労力も削減可能である。
【0008】
好ましくは高圧ターボチャージャと低圧ターボチャージャとを有する多段式過給装置を備えたインライン型原動機に関して、1つ又は各ターボチャージャ、1つ又は各給気冷却器、タンク、及び、必要に応じて給気冷却器ハウジングから高圧ターボチャージャまでの空気導管は、過給装置が原動機の連結側において当該原動機に接続されているか、又は、連結側の反対側において当該原動機に接続されているかに依存しない。インライン型原動機に関しては、高圧ターボチャージャと低圧ターボチャージャとの間に延在する排ガスマニフォールドは、過給装置が原動機の連結側において当該原動機に接続されているか、又は、連結側の反対側において当該原動機に接続されているかに依存する。
【0009】
V型原動機には、1つ又は各ターボチャージャ、1つ又は各給気冷却器、及び、必要に応じて給気冷却器ハウジングからインライン型原動機の高圧ターボチャージャまでの空気導管が用いられる。
【0010】
V型原動機には、V型に適合したタンクが用いられる。当該タンクは、過給装置がV型原動機の連結側において当該原動機に接続されているか、又は、V型原動機の連結側の反対側において当該原動機に接続されているかに依存しない。
【0011】
これによって、インライン型原動機においても、V型原動機においても、過給装置の原動機への様々な接続可能性のために、すなわち、原動機の連結側での接続可能性及び連結側の反対側での接続可能性のために、共通部材の数を増大させ、内燃機関の具体的な実施形態に適合させたアセンブリの数を最小限に抑えることが可能になる。
【0012】
本発明に係るモジュール型の内燃機関は、請求項7に定義されている。本発明に係る過給装置のためのモジュラーシステムは、請求項9に定義されている。
【0013】
本発明の好ましいさらなる構成は、下位請求項及び以下の説明から明らかになる。本発明の実施例を図を用いて詳細に説明するが、これに限定されるものではない。示されているのは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】モジュール型の第1の内燃機関を示す図である。
【
図3】モジュール型の第2の内燃機関を示す図である。
【
図5】モジュール型の第3の内燃機関を示す図である。
【
図6】モジュール型の第4の内燃機関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明はモジュール型の過給式内燃機関に関するものであり、当該内燃機関においては、内燃機関の具体的な態様とは無関係に、形態学的なモジュラーシステムの意味における多数のコア部材を、変更を加えず、又は、最小限に適合させた上で利用することができる。
【0016】
さらに、本発明は、過給式内燃機関のためのモジュラーシステムと、内燃機関の過給装置のためのモジュラーシステムと、に関する。
【0017】
図1から
図6は、本発明に係る内燃機関の異なる実施変型例を示しており、これらの実施変型例は、本発明に係るモジュラーシステムを用いて、すなわち、本発明に係る過給式内燃機関のためのモジュラーシステム及び本発明に係る過給装置のためのモジュラーシステムを用いて形成されている。
【0018】
図1及び
図2は、内燃機関10の第1の実施例を示しており、当該内燃機関は、複数のシリンダ12を備えた原動機11と過給装置13とを含んでいる。
【0019】
原動機11のシリンダ12内では、燃料が燃焼する。このために、原動機11のシリンダ12には、シリンダ12に至る、
図1及び
図2では視認不可能な給気導管を通じて、過給装置13内で圧縮された給気を供給することが可能であり、原動機11のシリンダ12からは、燃料の燃焼の際に発生する排ガスを、シリンダ12から延びる排ガス導管14を通じて、過給装置13の方向に排出することが可能である。
図1及び
図2において、原動機11はインライン型原動機であり、当該原動機では、全てのシリンダ12が、相前後して一列に配置されている。
【0020】
図1及び
図2の内燃機関10の過給装置13は、図示された実施例において、複数の排ガスターボチャージャを、すなわち、低圧ターボチャージャ15と高圧ターボチャージャ16とを含んでいる。低圧ターボチャージャ15は、低圧圧縮機17と低圧タービン18とを含んでいる。高圧ターボチャージャ16は、高圧圧縮機19と高圧タービン20とを含んでいる。
【0021】
両方の排ガスターボチャージャ15、16においては、排ガス導管14を通じて原動機11のシリンダ12から排出される排ガスが膨張し、この際に得られたエネルギーは、原動機11のシリンダ12に供給されるべき給気の圧縮に用いられる。
【0022】
図1及び
図2に係る内燃機関の原動機11のシリンダ12から過給装置13の方向に排出される排ガスは、まず高圧ターボチャージャ16の高圧タービン20の領域に到達し、当該排ガスは、高圧ターボチャージャ16の高圧タービン20内で部分的に膨張した後、低圧ターボチャージャ15の低圧タービン18の領域に到達し、低圧ターボチャージャ15の低圧タービン18の領域においてさらに膨張する。排ガス導管14から高圧ターボチャージャ16の高圧タービン20への方向における排ガスの輸送は、
図1及び
図2には示されていない、原動機側の排ガスマニフォールドを通じて行われ、当該排ガスマニフォールドは、排ガス導管14と高圧ターボチャージャ16の高圧タービン20との間に接続されている。高圧ターボチャージャ16の高圧タービン20と低圧ターボチャージャ15の低圧タービン18との間には、さらなる排ガスマニフォールド21が延在しており、それによって、排ガスが、高圧タービン20から低圧タービン18の領域に誘導される。低圧ターボチャージャ15の低圧タービン18を離れた排ガスは、周囲側の排ガスマニフォールド22を通じて、過給装置13の周囲に到達する。ここでは、煙突又は排ガス後処理システムに至る排ガス導管も、周囲として理解される。
【0023】
排ガスターボチャージャ15、16内における排ガスの膨張の際に得られたエネルギーは、給気を連続的に圧縮するために用いられる。
図1及び
図2によると、好ましくは消音機を有する吸気要素23を通じて、空気が周囲から吸い込まれ、当該空気は、まず低圧ターボチャージャ15の低圧圧縮機17の領域において圧縮される。
【0024】
低圧ターボチャージャ15の低圧圧縮機17から出発して、圧縮された給気は、給気冷却器ハウジング24に受容された第1の給気冷却器25に供給され、次に、高圧ターボチャージャ16の高圧圧縮機19の領域に到達する。高圧ターボチャージャ16の高圧圧縮機19を離れた給気は、空気導管33を通って、給気冷却器ハウジング24によって受容されたさらなる給気冷却器27に供給され、次に、この給気冷却器27を離れた給気は、給気冷却器ハウジング24を通って、
図1及び
図2には図示されていない給気導管に供給され、内燃機関10のシリンダ12に供給される。給気冷却器ハウジング24又は給気冷却器ハウジング24によって受容された給気冷却器25、27は、給気の冷却に必要な冷却媒体が用意されたタンク28と協働する。
図1及び
図2の実施例では、過給装置13の全てのアセンブリが、原動機11のいわゆる連結側29に構築されている。
【0025】
図1及び
図2に示された内燃機関は、モジュラーシステムによって形成又は組み立てられており、当該モジュラーシステムは原動機と過給装置とを含んでおり、これらの中から、
図1及び
図2に示されたインライン型原動機11と、
図1及び
図2に示された過給装置13のアセンブリとが、原動機11の連結側29における自身の接続のために、選択又は取り出される。
【0026】
この際、過給装置13は、モジュラーシステムにおける複数のモジュラーシステムモジュールから組み立てられている。つまり、R型原動機に関しては、過給装置13の原動機11に対する給気側の接点を決定する給気冷却器ハウジング24と、過給装置13の原動機11に対する排ガス側の接点を決定する原動機側の、
図1及び
図2には示されていない排ガスマニフォールドとが、過給装置13が原動機11の連結側において接続されているか、又は、連結側の反対側において接続されているかに依存するように組み立てられている。
【0027】
これに対して、過給装置13の周囲に対する給気側の接点を決定する吸気要素23と過給装置13の周囲に対する排ガス側の接点を決定する周囲側の排ガスマニフォールド23とは、過給装置13が原動機11の連結側において接続されているか、又は、連結側の反対側において接続されているか、に依存しない。
【0028】
さらに、多段式過給装置13を備えたインライン型原動機において、高圧ターボチャージャ16と、低圧ターボチャージャ15と、給気冷却器25及び27と、タンク28と、給気冷却器ハウジング24から高圧ターボチャージャ16までの空気導管26とは、過給装置13が原動機の連結側において接続されているか、又は、連結側の反対側において接続されているか、に依存しない。これに対して、インライン型原動機に関して、低圧ターボチャージャ15から給気冷却器ハウジング24への
図1及び
図2では視認不可能な空気導管と、高圧ターボチャージャ16と低圧ターボチャージャ15との間に延在している排ガスマニフォールド21とは、過給装置13が原動機の連結側において接続されているか、又は、連結側の反対側において接続されているか、に依存している。
【0029】
インライン型原動機のモジュラーシステムモジュールに関する、すなわち、過給装置13の、過給装置13が原動機の連結側において接続されているか又は連結側の反対側において接続されているかに依存しないモジュラーシステムモジュールと、過給装置が原動機の連結側において接続されているか又は連結側の反対側において接続されているかに依存するモジュラーシステムモジュールと、に関する上記の関係は、インライン型原動機11を有する内燃機関10’を示した
図3及び
図4からも明らかであり、当該図においては、過給装置13’は、
図1及び
図2の実施例とは異なり、原動機11の連結側において接続されているのではなく、原動機11の連結側の反対側30において接続されている。
【0030】
図3及び
図4では、
図1及び
図2と同じアセンブリには同じ参照符号が用いられる。
図3及び
図4の原動機10’の過給装置13’におけるインライン型原動機において過給装置が連結側において接続されているか又は連結側の反対側において接続されているかに依存するモジュラーシステムモジュールには、プライムを添えた参照符号が用いられる。
図1及び
図2の内燃機関10と
図3及び
図4の内燃機関10’との比較から明らかなことに、過給装置13、13’に関しては、過給装置13、13’の8つのモジュラーシステムモジュールが同一であり、過給装置13、13’の4つのモジュラーシステムモジュールが、過給装置が原動機11の連結側において接続されているか、又は、連結側の反対側において接続されているか、に依存している。
【0031】
上述したように、インライン型原動機に関して、過給装置の原動機に対する給気側の接点を決定する給気冷却器ハウジング24、24’と、過給装置の原動機に対する排ガス側の接点を決定する、図示されていない原動機側の排ガスマニフォールドとは、過給装置が原動機の連結側において接続されているか、又は、連結側の反対側において接続されているか、に依存している。
【0032】
さらに、インライン型原動機に関して、高圧ターボチャージャ16と低圧ターボチャージャ15との間に延在する排ガスマニフォールド21、21’は、過給装置13、13’が原動機の連結側において接続されているか、又は、連結側の反対側において接続されているか、に依存する。
【0033】
それに対して、インライン型原動機に関して、過給装置の周囲に対する給気側の接点を決定する吸気要素23と、過給装置の周囲に対する排ガス側の接点23を決定する周囲側の排ガスマニフォールド22とは、過給装置が原動機の連結側において接続されているか、又は、連結側の反対側において接続されているか、に依存しない。
【0034】
さらに、インライン型原動機に関して、高圧ターボチャージャ16と、低圧ターボチャージャ15と、給気冷却器25及び27と、タンク28と、給気冷却器ハウジング24、24’から高圧ターボチャージャ16までの空気導管26とは、過給装置が原動機の連結側において接続されているか、又は、連結側の反対側において接続されているか、に依存しない。
【0035】
本発明に係る過給式内燃機関のためのモジュラーシステム又は本発明に係る当該内燃機関の過給装置のためのモジュラーシステムによって、さらに、V型原動機に関して、インライン型原動機で用いられる、多数の共通部材又は同一のモジュラーシステムモジュールを使用することが可能になる。
【0036】
図5は、V型原動機11”を有する内燃機関10”を示しており、当該原動機のシリンダ12は、2つのシリンダバンクにグループ分けされており、これらのシリンダバンクは、V字を形成している。V型原動機11”に関しては、各シリンダバンクには、それぞれ高圧ターボチャージャ16と低圧ターボチャージャ15とが用いられ、V型原動機11”に関しては、これら両方のターボチャージャ15、16は、インライン型原動機で用いられるターボチャージャ15、16と同一である。さらに、V型原動機11”では、特に給気冷却器25、27を有する給気冷却器ハウジング24、24’と、原動機側の排ガスマニフォールド及び排ガスマニフォールド21、21’と、吸気要素23と、給気冷却器ハウジング24、24’からインライン型原動機のターボチャージャまでの空気導管と、が同じく使用される。
【0037】
しかしながら、V型原動機11”には、V型に適合した、周囲側の排ガスマニフォールド22”が用意されており、当該排ガスマニフォールドには、両方の低圧ターボチャージャ15から排ガスが誘導され得る。V型原動機11”に関して、この周囲側の排ガスマニフォールド22”は、過給装置13”がV型原動機11”の連結側において接続されているか、又は、連結側の反対側において接続されているか、に依存しない。
【0038】
V型原動機11”に関して、さらに、V型に適合したタンク28”が用いられ、当該タンクは、
図5によると、インライン型原動機でも使用可能な両方の給気冷却器ハウジング24、24’の下側に延在している。V型原動機11”に適合したタンク28”は、過給装置13”が原動機11”の連結側において接続されるか、又は、連結側の反対側において接続されるか、に依存しない。
【0039】
それゆえに、本発明に係るモジュラーシステムでは、インライン型原動機11に、多数のモジュラーシステムモジュールが用いられ、当該モジュラーシステムモジュールは、インライン型原動機に関して、インライン型原動機に接続されるべき過給装置13、13’が、原動機11の連結側29において接続されるか、又は、連結側の反対側30において接続されるか、に依存しない。図示された実施例では、インライン型原動機のために、少なくとも8つのモジュラーシステムモジュールが、過給装置が連結側において取り付けられるか、又は、連結側の反対側において取り付けられるか、に依存せずに供給され得る。比較的少ない数のモジュラーシステムモジュール、すなわち好ましい実施変型例では4つのモジュラーシステムモジュールのみが、インライン型原動機11に関して、過給装置が原動機の連結側29において接続されるか、又は、連結側の反対側30において接続されるかに依存している。V型原動機11”に関しては、V型に適合した2つのモジュラーシステムモジュールのみを追加的に供給すれば良い。上述したこれらの両方のモジュール22”及び28”は、過給装置13”が連結側において接続されるか、又は、連結側の反対側において接続されるか、に依存しない。
【0040】
図6は、
図3及び
図4の内燃機関10’のさらなる構成を示している。当該構成においては、モジュラーシステムのさらなるモジュラーシステムモジュールとしての過給装置13’に、SCR触媒式排ガス洗浄装置31が接続されている。すなわち、高圧ターボチャージャ16を離れた排ガスが、低圧ターボチャージャ15の領域に到達する前に、まずSCR触媒式排ガス洗浄装置31を通過するように導かれるように接続されている。
【0041】
SCR触媒式排ガス洗浄装置31は、原動機11がインライン型であるか、それともV型であるか、に依存せず、過給装置が各原動機の連結側29において接続されるべきか、又は、連結側の反対側30において接続されるべきか、にも依存しない。
【0042】
本発明では、過給式内燃機関及び過給装置のためのモジュラーシステムが提案される。当該モジュラーシステムは、インライン型原動機のため、V型原動機のため、並びに、過給装置の連結側及び連結側の反対側における異なる接続可能性のために、多数の同一のモジュラーシステムモジュールを供給し得るものであり、それによって、アセンブリの変型例を削減し、顧客が訓練に要する労力を軽減し、さらに、原動機を新しく開発する際に既存の計算及び試験結果を用いることが可能になる。
【符号の説明】
【0043】
10,10’,10” 内燃機関、11,11” 原動機、12 シリンダ、13,13’,13” 過給装置、14 排ガス導管、15 低圧ターボチャージャ、16 高圧ターボチャージャ、17 低圧圧縮機、18 低圧タービン、19 高圧圧縮機、20 高圧タービン、21,21’,22,22” 排ガスマニフォールド、23 吸気要素、24,24’ 給気冷却器ハウジング、25,27 給気冷却器、26 空気導管、28,28” タンク、29 連結側、30 連結側の反対側、31 SCR触媒式排ガス洗浄装置、33 空気導管