特許第6388439号(P6388439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388439
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】オイル圧検出用の圧力スイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 35/34 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
   H01H35/34 Q
   H01H35/34 L
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-222339(P2014-222339)
(22)【出願日】2014年10月31日
(65)【公開番号】特開2016-91676(P2016-91676A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(74)【代理人】
【識別番号】100207561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳元 八大
(74)【代理人】
【識別番号】100076196
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 寛治
(72)【発明者】
【氏名】中川 正人
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−036735(JP,U)
【文献】 特開2011−113710(JP,A)
【文献】 実開平01−088439(JP,U)
【文献】 特開2000−195395(JP,A)
【文献】 米国特許第04767898(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 35/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディとターミナルベースとの間に形成された内部空間にダイヤフラムを配設し、前記内部空間をこのダイヤフラムにより接点室と圧力室とに2分し、前記接点室には前記圧力室に加わるオイルの圧力変化に応動する前記ダイヤフラムに連動して開閉する接点部を設けたオイル圧検出用の圧力スイッチにおいて、
前記ターミナルベースには、その外部と前記接点室とを連通させた通気孔と、この通気孔から入る水等の水溶液の浸入を防止する選択透過性シートと、
前記ダイヤフラムの亀裂等の破壊に基づいて前記接点室に浸入したオイルが前記通気孔から流出することを阻止するオイル受け止め部材とを備えたことを特徴する圧力スイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載した圧力スイッチにおいて、
前記ターミナルベースに形成された前記通気孔の孔口を覆うカバー部材を設けると共に、このカバー部材には、前記孔口に対向させた凹形部と、その凹形部とカバー部材外部とを連通させたカバー通気孔とを形成し、
さらに、前記選択透過性シートは、前記凹形部内面に形成されたカバー通気孔の孔口を塞ぐ位置に固着すると共に、前記オイル受け止め部材は、前記凹形部内に遊嵌配設したことを特徴とする圧力スイッチ。
【請求項3】
請求項に記載した圧力スイッチにおいて、
前記ターミナルベースに形成された前記通気孔の孔口を覆うカバー部材を設けると共に、このカバー部材には、前記孔口に対向させた凹形部と、その凹形部とカバー部材外部とを連通させたカバー通気孔とを形成し、
前記選択透過性シートは、前記カバー部材外部に形成されたカバー通気孔の孔口を塞ぐ位置に固着すると共に、前記オイル受け止め部材は、前記凹形部内に遊嵌配設したことを特徴とする圧力スイッチ。
【請求項4】
請求項1に記載した圧力スイッチにおいて、
前記ターミナルベースには、その外部側に前記通気孔に連通させた収容凹部を形成し、その収容凹部の開口部には選択透過性シートを固着し、当該収容凹部内には膨潤性と反発弾性を有するゴム部材で形成したオイル受け止め部材を遊嵌配設したことを特徴する圧力スイッチ。
【請求項5】
請求項に記載した圧力スイッチにおいて、
前記ターミナルベースには、その外部側に前記通気孔に連通させた収容凹部を形成し、その収容凹部の開口部には選択透過性シートを固着し、当該収容凹部内にはオイルを固化する粉末状の油固化材で形成した前記オイル受け止め部材を装填したことを特徴する圧力スイッチ。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載した圧力スイッチにおいて、
前記オイル受け止め部材は、オイル圧力を受けて移動可能に配設したことを特徴とする圧力スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルの圧力変化に応動するダイヤフラムに連動する接点部の開閉によりスイッチングする圧力スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
オイルの圧力変化を検出する圧力スイッチとしては、例えば、エンジン設備に備えてオイル圧を検出する圧力スイッチとして広く知られている。
すなわち、車両用のエンジンは、エンジン内のオイル圧が低下すると焼付きの可能性があるため、オイル圧が低下していることを警報する必要がある。
【0003】
図12は、エンジン設備に備えてエンジンオイルの圧力変化を検出し、オイル圧が異常に低下しているときに警報を通知する圧力スイッチの一例を示す断面図である。
なお、この図はエンジン設備に取り付ける前のスイッチ状態を示している。
図示する如く、上記の圧力スイッチは、エンジン設備に螺着されるネジ部11aを有する金属性のボディ11と、このボディ11に加締め止めされて一体化された電気絶縁性のターミナルベース12とを備えている。
【0004】
そして、ボディ11とターミナルベース12によって形成された内部空間には、ゴム等の可撓性材からなる円盤状のダイヤフラム13が配設されており、このダイヤフラム13によってその内部空間が圧力室14と接点室15とに2分されている。
なお、ダイヤフラム13は、その周囲部が固定接点16とボディ11とで挟持固定さている。
【0005】
固定接点16は、その周囲がボディ11とターミナルベース12とで挟持固定さており、その内部には、プッシュブロック17が上下動可能に設けられている。
すなわち、プッシュブロック17は、その下面をダイヤフラム13に当接させ、また、その連動部17aを固定接点16の孔部16aを通して可動接点18に当接させてある。
【0006】
可動接点18は、ターミナル19との間に設けたコイルバネ20のバネ勢力で常に固定接点16に接合している。
すなわち、圧力スイッチをエンジン設備に取り付ける前は、ダイヤフラム13にはオイル圧力が加わらないから、ダイヤフラム13が変動しなく、図示する如く、可動接点18が固定接点16に接合している。
なお、ターミナル19がコードを介してエンジン設備の圧力検出回路に接続されている。
【0007】
このように構成された圧力スイッチは、ネジ部11aを螺合させてエンジン設備に取り付けると、ネジ部11aに設けた連結孔11bを通して圧力室14にエンジンオイルが入り、ダイヤフラム13がオイル圧力によって変動する。
【0008】
すなわち、エンジンオイルが圧力室14に入ると、ダイヤフラム13がオイル圧力によって上方向に湾曲変形するため、プッシュブロック17がコイルバネ20のバネ勢力に抗して上方に移動することから、可動接点18が固定接点16から離れる。
これより、ターミナル19、コイルバネ20,可動接点18、固定接点16、ボディ11からなるスイッチング経路が開放され、スイッチOFF信号が圧力検出回路に送られ、この圧力検出回路がオイル圧力の正常であることを確認する。
【0009】
また、エンジンオイルが、所定以下に降下した場合は、ダイヤフラム13がオイル圧力で変形しないから、プッシュブロック17が下降した位置にあり、可動接点18がコイルバネ20のばね勢力により固定接点16に接合している。
これより、スイッチング経路が閉成し、スイッチON信号が送られるから、圧力検出回路によってオイル圧力が異常に降下したことが認識され、この場合には、運転者などに警報が通知される。
【0010】
一方、上記した圧力スイッチには、ターミナルベース12に形成した通気孔21が設けられ、この通気孔21によって接点室15と大気圧とを連通させてある。
すなわち、ターミナルベース12を加締め止めするボディ11の近くにOリング22を設けて接点室15を密閉にする関係で、接点室15が気密室となり、ダイヤフラム13の変形動作や接点動作に不具合が生じることがあるために、通気孔21を通して接点室15を大気圧に保つようになっている。
【0011】
また、通気孔21の出口には選択透過性シート(通気シート)23を貼り合わせ、さらに、その選択透過性シート23がターミナルベース12に係止固定したカバー24によって保持されている。
選択透過性シート23は、通気孔21から水の浸入することを防止し、かつ、接点室15を大気圧に保つものである。
【0012】
したがって、選択透過性シート23は、気体のみを通し、溶体(例えば、水)の通過を阻止するシート部材で、通気孔21から接点室15内への浸水を防止し、固定接点16や可動接点18などが浸水した水によって腐食することがないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第5382446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記した従来の圧力スイッチは、経年使用などによってダイヤフラム13に亀裂等が発生し、そのため、オイルがダイヤフラム13を通過し圧力室14から接点室15内に流入することがある。
【0015】
この場合、オイルが通気孔21を通ってスイッチ外に流れ出ようとするオイルが選択透過性シート23によって一旦は阻止されるが、しかし、オイル圧力が強い場合などには、選択透過性シート23を突き破り、また、そのシート23を剥離させてカバー24の隙間からスイッチ外にオイルが流れ出ることがある。
【0016】
スイッチ外にオイルが流れ出た場合にはオイルが枯渇してエンジン焼き付きの原因となり、また、流れ出たオイルが路上などに滴下する。
この結果、エンジンからのオイルの滴下は重大故障扱いとなり大きな問題となる。
そこで、本発明では、上記の実情にかんがみ、ダイヤフラムの破壊などスイッチの故障にかかわらず、スイッチ外に漏出するオイルを確実に防止することができる圧力スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記した目的を達成するため、本発明では第1の発明として、ボディとターミナルベースとの間に形成された内部空間にダイヤフラムを配設し、前記内部空間をこのダイヤフラムにより接点室と圧力室とに2分し、前記接点室には前記圧力室に加わるオイルの圧力変化に応動する前記ダイヤフラムに連動して開閉する接点部を設けたオイル圧検出用の圧力スイッチにおいて、前記ターミナルベースには、その外部と前記接点室とを連通させた通気孔と、この通気孔から入る水等の水溶液の浸入を防止する選択透過性シートと、前記ダイヤフラムの亀裂等の破壊に基づいて前記接点室に浸入したオイルが前記通気孔から流出することを阻止するオイル受け止め部材とを備えたことを特徴する圧力スイッチを提案する。
【0018】
第2の発明としては、上記した第1の発明の圧力スイッチにおいて、前記ターミナルベースに形成された前記通気孔の孔口を覆うカバー部材を設けると共に、このカバー部材には、前記孔口に対向させた凹形部と、その凹形部とカバー部材外部とを連通させたカバー通気孔とを形成し、さらに、前記選択透過性シートは、前記凹形部内面に形成されたカバー通気孔の孔口を塞ぐ位置に固着すると共に、前記オイル受け止め部材は、前記凹形部内に遊嵌配設したことを特徴とする圧力スイッチを提案する。
【0019】
第3の発明としては、上記第2の発明の圧力スイッチにおいて、前記選択透過性シートは、前記カバー部材外部に形成されたカバー通気孔の孔口を塞ぐ位置に固着すると共に、前記オイル受け止め部材は、前記凹形部内に遊嵌配設したことを特徴とする圧力スイッチを提案する。
【0020】
第4の発明としては、上記第1の発明の圧力スイッチにおいて、前記ターミナルベースには、その外部側に前記通気孔に連通させた収容凹部を形成し、その収容凹部の開口部には選択透過性シートを固着し、当該収容凹部内には膨潤性と反発弾性を有するゴム部材で形成したオイル受け止め部材を遊嵌固着したことを特徴する圧力スイッチを提案する。
【0021】
第5の発明としては、上記した第4の発明の圧力スイッチにおいて、前記オイル受け止め部材は、オイルを固化する粉末状の油固化材で形成したことを特徴する圧力スイッチを提案する。
【0022】
第6の発明としては、上記した第1〜第3のいずれかの発明の圧力スイッチにおいて、前記オイル受け止め部材は、オイル圧力を受けて移動可能に配設したことを特徴とする圧力スイッチを提案する。
【発明の効果】
【0023】
第1の発明の圧力スイッチは、接点室が通気孔を塞ぐ選択透過性シートを介してスイッチ外と連通しており、接点室が大気圧に保たれ、ダイヤフラムや接点部の動作がスムーズな圧力スイッチとなっている。
一方、経年使用などによりダイヤフラムが破壊し、オイルが圧力室から接点室に入った場合には、通気孔から流出するオイルがオイル受け止め部材によって阻止されるから、オイルはスイッチ外には漏出しない。
【0024】
また、ダイヤフラムが破壊してオイルが接点室に流れ込む状態では、ダイヤフラム前後のオイル圧が等圧となるので、ダイヤフラムは変動しない。
このため、接点部が閉成したままの状態となるから、オイルが漏出しているにもかかわらず、接点部が開放してスイッチOFF信号があたかも正常動作のごとく出力するようなことがない。
【0025】
第2の発明の圧力スイッチは、通気孔の孔口に対向させた凹形部とカバー通気孔とを形成したカバー部材をターミナルベースに取り付け、そして、カバー部材の凹形部内面に形成されたカバー通気孔の孔口を塞ぐ位置に選択透過性シートを固着し、さらに、前記凹形部内にはオイル受け止め部材を遊嵌配設した構成となっている。
【0026】
すなわち、この圧力スイッチによれば、選択透過性シートを通過する気体と遊嵌配置されたオイル受け止め部材の周囲を通過する気体とが通気孔を通り抜け接点室が大気圧に保持される。
つまり、オイル受け止め部材は、凹形部内に遊嵌配設されているので、オイル受け止め部材の周囲には凹形部内壁との間に少ない隙間が生じており、この隙間を通って気体が通過する。
【0027】
そして、オイルが接点室に流入した場合には、通気孔を流れ出たオイルによってオイル受け止め部材がオイルによって押動されて選択透過性シートに重なり、オイル受け止め部材がカバー通気孔の孔口を閉塞する。
この結果、オイルが通気孔やカバー通気孔を通ってスイッチ外に漏出することがない。
【0028】
第3の発明の圧力スイッチは、第2の発明の圧力スイッチと同様にカバー部材を設け、このカバー部材外部に形成されたカバー通気口の孔口を塞ぐ位置に選択透過性シートを固着させた構成としてある。
【0029】
この発明の圧力スイッチは、第2の発明と同様に、選択透過性シートとオイル受け止め部材の周囲を通る気体によって接点室が大気圧に保たれる。
そして、オイルが接点室に入った場合には、通気孔から流出するオイルによってオイル受け止め部材が押動されて凹形部内面に接合することから、オイル受け止め部材がカバー通気口の孔口を閉塞する。
【0030】
第4の発明の圧力スイッチは、ターミナルベースの外部に通気孔に連通させた収容凹部を形成し、収容凹部の開口部を塞ぐ位置に選択透過性シートを固着し、さらに、その収容凹部内に膨潤性と反発弾性を有するゴム部材からなるオイル受け止め部材を遊嵌配設した構成としてある。
【0031】
この圧力スイッチも選択透過性シートとオイル受け止め部材の周囲を通る気体とによって接点室が大気圧に保たれる。
そして、接点室にオイルが入った場合には、通気孔を通って収容凹部に入ったオイルによってオイル受け止め部材が膨張するため、オイル受け止め部材が収容凹部から漏出するオイルを遮断する。
【0032】
第5の発明の圧力スイッチは、第4の発明の圧力スイッチが備えるオイル受け止め部材について、オイルを固化する粉末状の油固化材で形成したことを特徴としている。
この圧力スイッチは、オイル受け止め部材が粉末状の油固化材であることから、このオイル受け止め部材を通して気体が通過するので、選択透過性シートとオイル受け止め部材とを通過する気体によって接点室が大気圧に保たれる。
そして、オイルが接点室に入った場合には、通気孔を通って収納凹部に入ったオイルによってオイル受け止め部材が固化し、収容凹部からのオイルの流出を遮断する。
【0033】
第6の発明の圧力スイッチは上記した第1〜第3の発明のいずれかの圧力スイッチにおいて、オイル受け止め部材を移動可能に配設することによって、オイル受け止め部材がオイル圧を受けて移動して通気孔の孔口を閉塞し、オイルの流出を防ぐ構成となっている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の第1実施形態として示したオイル圧検出用の圧力スイッチの正面図である。
図2図1上のA−A線断面図である。
図3】上記した第1実施形態の圧力スイッチに備えたカバーを示す正面図である。
図4】上記したカバーの背面図である。
図5図3上のB−B線断面図である。
図6図3上のC−C線断面図である。
図7】上記カバーに選択透過性シートとオイル受け止め部材を組付けた状態を示す図6同様の断面図である。
図8】第2実施形態として示した圧力スイッチの図2同様の断面図である。
図9】第3実施形態として示した圧力スイッチの図2同様の断面図である。
図10】第4実施形態として示した圧力スイッチの図2同様の断面図である。
図11】第5実施形態として示した圧力スイッチの図2同様の断面図である。
図12】従来例として示した圧力スイッチの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に本発明に係わる圧力スイッチについて車両のエンジン設備に備える圧力スイッチの実施形態について図面に沿って説明する。
図1は第1実施形態として示した圧力スイッチの正面図、図2図1上のA−A線断面図、図3図6図1に示した圧力スイッチが備えるカバーを示す図である。
【0036】
これらの図面より分かるように、この第1実施形態の圧力スイッチは、従来例同様に、ネジ部31a付きのボディ31にターミナルベース32を加締め止めにより一体的に取り付けてあり、そして、これらボディ31とターミナルベース32とで形成される内部空間には、ゴム等の可撓性材からなる円盤状のダイヤフラム33を配設し、このダイヤフラム33によってその内部空間を圧力室34と接点室35とに2分している。
なお、加締め止め近くには内部空間を密閉するOリング36が設けてある。
【0037】
そして、ボディ31とターミナルベース32とで形成される内部空間内には、従来例同様の固定接点37と可動接点38とが備えてある。
すなわち、可動接点38が、ダイヤフラム33の変動に連動するプッシュブロック39の連動部39aに押動されて固定接点37から離れるように移動してスイッチOFF状態となる。
【0038】
また、プッシュブロック39の連動部39aは固定接点37の孔部37aを通して可動接点38に当接させてあり、また、ダイヤフラム33の変動がないときは、可動接点38がターミナル40との間に設けたコイルバネ41のバネ勢力で常に固定接点37に接触し、スイッチON状態となっている。
なお、ターミナル40は、コードによってオイル圧検出回路に接続してある。
【0039】
一方、この圧力スイッチのターミナルベース32には、横向き形成した通気孔42が設けてある。
この通気孔42は、接点室35をスイッチ外と連通させ、従来例同様に接点室35を大気圧に保つものである。
【0040】
また、上記の圧力スイッチは、上記の通気孔42を覆うようにターミナルベース32にネジ止めしたカバー43が設けてある。
このカバー43は、図3図6に示した通り円形断面の短柱状に形成し、外周部にネジ部43aを設け、このネジ部43aをターミナルベース32のネジ部32aにネジ込んで取り付けてある。
【0041】
上記のカバー43は、選択透過性シート44とオイル受け止め部材45とを通気孔42に対向させて配設させるためのものである。
なお、これら選択透過性シート44は従来例として説明したものと同部材であり、また、オイル受け止め部材45はゴム部材などの弾性材で、空気や水溶液(オイルを含む)の通過を阻止するゴム部材などの弾性部材によって形成してある。
【0042】
すなわち、カバー43の背面側には、通気孔42に対向させるように形成した凹形部43bを設けると共に、凹形部43bの内壁面の4等分位置には円弧凸部43cが設けてある。
また、このカバー43には、上記の通気孔42と同方向の向きとしてその孔口を対向させた第1カバー通気孔43dと、この第1カバー通気孔43dに直交させた第2カバー通気孔43eとが形成してある。
【0043】
このように形成したカバー43は、図4図7に示す如く、ターミナルベース32にネジ止めする前に、凹形部43bの底面に選択透過性シート44を貼付して第1カバー通気孔43dの孔口を塞ぎ、さらに、凹形部43bの円弧凸部43cに接するようにして円板状のオイル受け止め部材45を摺動可能に嵌合(遊嵌)させる。
【0044】
このように選択透過性シート44とオイル受け止め部材45を組付けたカバー43は、ターミナルベース32のネジ部32aにねじ込んで取り付けることにより、図2に示す如く、選択透過性シート44とオイル受け止め部材45とを通気孔42の孔口に接近させて対向配設することができる。
【0045】
上記の如く構成した第1実施形態の圧力スイッチは、ネジ部31aを螺合してエンジン設備に取り付ければエンジンオイルが連結孔31bから圧力室34に入る。
したがって、圧力室34に入ったエンジンオイルが所定以上である場合は、ダイヤフラム33がオイル圧を受け、その中程部が上方向に移動変動するので、可動接点38が固定接点37から離れる。
したがって、ターミナル40、コイルバネ41、可動接点38、固定接点37、ボディ31からなるスイッチ
回路が遮断されてスイッチOFF信号を出力するので、圧力検出回路がオイル圧力の正常を確認する。
【0046】
一方、圧力室34に入ったエンジンオイルの圧力が低下している場合には、ダイヤフラム33が変動しないので、可動接点38が図2に示すように固定接点37に接触する。
したがって、スイッチ回路がON信号を出力するので、圧力検出回路がオイル圧力の異常低下の検出動作となり、運転者に警報を通知する。
【0047】
他方、この実施形態の圧力スイッチは、ダイヤフラム33が破壊されないかぎり、接点室35にはオイルが流入しないので、通気孔42、選択透過性シート44、第1、第2カバー通気孔43d、43eを介して気体が流通するから、接点室35が大気圧に保たれる。
なお、オイル受け止め部材45は空気を通さないが、その周囲の隙間、つまり、複数の円弧凸部43cの間に当たる凹形部43bの内壁とオイル受け止め部材45の外周部との隙間43f(図4参照)から空気が流通する。
【0048】
また、経年使用などのためにダイヤフラム33に亀裂などの破壊が発生し、オイルが圧力室34から接点室35に流入した場合には、オイルが通気孔42を通ってスイッチ外に流出しようとするが、この場合、オイル受け止め部材45がオイルによって押動され選択透過性シート44に接合し、第1カバー通気孔43dの孔口を閉塞する。
【0049】
この結果、通気孔42から流出しょうとするオイルがオイル受け止め部材45によって遮断され、スイッチ外に漏出することがない。
なお、オイル受け止め部材45がオイルによって選択透過性シート44に接合するため、選択透過性シート44がオイル圧を受けて破けたり、剥離するようなこともない。
【0050】
図8は第2実施形態の圧力スイッチを示す図2同様の断面図である。
この第2実施形態の圧力スイッチは、上記したカバー43と同様のカバー51をターミナルベース32の側部に嵌合固定した構成となっている。
そして、このカバー51には、通気孔42に対面する側面に凹形部51aが形成してあり、さらに、この凹形部51aの底面とカバー外部とを連通させたカバー通気孔51bが設けてあり、また、その凹形部51a内にはオイル受け止め部材52を摺動自在に配設(遊嵌)すると共に、カバー外面に形成されたカバー通気孔51bの孔口を塞ぐ位置には選択透過性シート53を貼付した構成としてある。
その他は、上記した第1実施形態の圧力スイッチと同構成となっているから、同じ部材及び部所については同符号を付して説明を省略する。
【0051】
なお、オイル受け止め部材52と選択透過性シート53は上記した第1実施形態のオイル受け止め部材45と選択透過性シート44と同構成のものであり、また、カバー51については、ターミナルベース32の凹形部に対して接着材などを使って固着することができる。
【0052】
このように構成した圧力スイッチは、通常時には接点室35が、選択透過性シート53、カバー通気孔51b、オイル受け止め部材52と凹形部51aとの内壁面との隙間51c、通気孔42を通る通路で気体が流通するので、接点室35を大気圧に保つことができる。
また、オイルがダイヤフラム33の破壊によって接点室35に入ったときは、通気孔42から流出するオイルによってオイル受け止め部材52が押動されるため、オイル受け止め部材52が凹形部51の底面に接合してカバー通気孔51bの孔口を閉塞する。
したがって、オイルがスイッチ外に漏出することがない。
【0053】
図9は第3実施形態の圧力スイッチを示す図2同様の断面図である。
この第3実施形態の圧力スイッチは、通気孔42に連通させた収容凹部61をターミナルベース32の側部に直接に形成し、この収容凹部61内にオイル受け止め部材62を配設し、さらに、収容凹部61の開放口を塞ぐ位置に選択透過性シート63を貼付した構成としてある。
なお、選択透過性シート63は上記した第1実施形態の選択透過性シート44と同構成のものであるが、オイル受け止め部材62は膨潤性と反発弾性を有するゴム部材で形成してある。
その他は、上記した第1実施形態の圧力スイッチと同構成である。
【0054】
当該第3実施形態の圧力スイッチは、選択透過性シート63、オイル受け止め部材62の周囲と収容凹部61の内壁面との間の隙間61a、通気孔42を通して気体が流通するので、接点室35が大気圧に保たれる。
また、オイルがダイヤフラム33の破壊によって接点室35に入ったときは、通気孔42から流出したオイルが収容凹部61内に入るため、オイル受け止め部材62がオイルの浸透によって膨張して収容凹部61内を閉塞する。
したがって、オイルがスイッチ外に漏出することがない。
【0055】
図10は第4実施形態の圧力スイッチを示す図2同様の断面図である。
この第4実施形態の圧力スイッチは、図9に示した圧力スイッチと同様にターミナルベース32に収容凹部71を形成し、この収容凹部71内にオイルを固化する粉末状の油固化材をオイル受け止め部材72として装填し、さらに、収容凹部71の開放口を塞ぐ位置に選択透過性シート73を貼付した構成としてある。
なお、選択透過性シート73は上記した第1実施形態の選択透過性シート44と同構成のものであるが、オイル受け止め部材72が粉末状の油固化材としてある。
その他は、上記した第1実施形態の圧力スイッチと同構成である。
【0056】
この第4実施形態の圧力スイッチは、選択透過性シート73、粉末状のオイル受け止め部材72、通気孔42を気体が流通することから、接点室35が大気圧に保たれる。
また、接点室35にオイルが入ると、通気孔42から流出するオイルが収容凹部71内に入りオイル受け止め部材72に浸透する。
したがって、油固化材であるオイル受け止め部材72が固化し、収容凹部71内を閉塞してオイルの流出を遮断する。
【0057】
図11は第5実施形態の圧力スイッチを示す図2同様の断面図である。
この第5実施形態の圧力スイッチは、接点室35に開放口を露出させるようにターミナルベース32に形成した収容凹部81と、この収容凹部81とターミナルベース32の外部とを連通させた通気孔42とを形成し、収容凹部81内にはオイル受け止め部材82を配設し、ターミナルベース32の外部に形成された通気孔42の孔口を塞ぐ位置に選択透過性シート83を貼付した構成としてある。
また、オイル受け止め部材82と選択透過性シート83は上記した第1実施形態のものと同構成のものである。
なお、その他は、上記した第1実施形態の圧力スイッチと同構成である。
【0058】
上記した構成の圧力スイッチは、選択透過性シート83、通気孔42、オイル受け止め部材82の周囲と収容凹部81の内壁面との間の隙間81aを気体が流通して接点室35が大気圧に保持される。
また、オイルが接点室35に入ったときは、オイル受け止め部材82がオイルに押動されて収納凹部81の底面に圧接するように移動し、通気孔42の孔口を閉塞し、通気孔42からのオイルの流出を阻止する。
したがって、オイルがスイッチ外に漏出することがない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
車両のエンジンオイルの圧力変化を検出する圧力スイッチなどに適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
31 ボディ
32 ターミナルベース
33 ダイヤフラム
34 圧力室
35 接点室
37 固定接点
38 可動接点
39 プッシュブロック
40 ターミナル
42 通気孔
43 カバー
43a ネジ部
43b 凹形部
43d 第1カバー通気孔
43e 第2カバー通気孔
43f 隙間
44 選択透過性シート
45 オイル受け止め部材












図1
図2
図3
図4
図5
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図12