特許第6388450号(P6388450)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6388450アルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物およびそれを用いたプリント配線板
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  • 特許6388450-アルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物およびそれを用いたプリント配線板 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388450
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】アルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物およびそれを用いたプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20180903BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20180903BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20180903BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20180903BHJP
   C08L 75/14 20060101ALI20180903BHJP
   C08L 101/08 20060101ALI20180903BHJP
   C08K 5/33 20060101ALI20180903BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   G03F7/027 513
   G03F7/004 503Z
   G03F7/004 501
   G03F7/004 512
   G03F7/20 501
   H05K3/28 D
   C08L75/14
   C08L101/08
   C08K5/33
   C08L63/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-531780(P2015-531780)
(86)(22)【出願日】2014年8月5日
(86)【国際出願番号】JP2014070638
(87)【国際公開番号】WO2015022885
(87)【国際公開日】20150219
【審査請求日】2017年7月28日
(31)【優先権主張番号】特願2013-167997(P2013-167997)
(32)【優先日】2013年8月13日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-235021(P2013-235021)
(32)【優先日】2013年11月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮部 英和
(72)【発明者】
【氏名】林 亮
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕
(72)【発明者】
【氏名】小池 直之
【審査官】 川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−105068(JP,A)
【文献】 特開2000−128957(JP,A)
【文献】 特開2011−164516(JP,A)
【文献】 特開2013−054247(JP,A)
【文献】 特開2013−054246(JP,A)
【文献】 特開2011−213828(JP,A)
【文献】 特開2010−256729(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/001484(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/027
C08K 5/33
C08L 63/00
C08L 75/14
C08L 101/08
G03F 7/004
G03F 7/20
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を有するウレタン樹脂、
ウレタン樹脂以外のカルボキシル基を有する樹脂、
光塩基発生剤、および、
熱硬化成分、
を含み、
前記光塩基発生剤が、9−アンスリルメチルN,N’−ジエチルカルバメートおよび/または(E)−1−ピペリジノ−3−(2−ヒドロキシフェニル)−2−プロペン−1−オンを含むことを特徴とするアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記カルボキシル基を有するウレタン樹脂がエチレン性不飽和基を有するものである請求項1記載のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、エチレン性不飽和基を有するモノマーを含む請求項1記載のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱硬化成分が環状エーテル化合物である請求項1記載のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
カバーレイ接着層用である請求項1記載のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1記載のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥させてなる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
【請求項7】
請求項1記載のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物、または、請求項記載のドライフィルムを硬化してなることを特徴とする硬化物。
【請求項8】
請求項記載の硬化物を備えることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物およびフレキシブルプリント配線板に関し、詳しくは、アルカリによる現像が可能であり、屈曲性に優れ、かつ、現像後の加熱処理時のダレの発生が抑制され、特にはさらに、深部硬化性が良好でパターン形成性に優れるアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物および該アルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物の硬化物を備えたフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット端末の普及と性能の向上が急速に進行している。これらに代表される情報機器端末は、小型化、薄型化への消費者の要求が高く、その要求に応えるべく、製品内部の回路基板の高密度化、省スペース化が必要となっている。そのため、折り曲げての収納が可能で、回路配置の自由度を高めることのできるフレキシブルプリント配線板の用途が拡大しており、フレキシブルプリント配線板に対する信頼性もこれまで以上に高いものが求められている。
【0003】
現在、フレキシブルプリント配線板の絶縁信頼性を確保するための絶縁膜として、折り曲げ部(屈曲部)には、ポリイミドをベースとしたカバーレイが用いられ、実装部(非屈曲部)には、感光性樹脂組成物を用いた混載プロセスが広く採用されている(特許文献1、2参照)。ポリイミドは、耐熱性および屈曲性などの機械的特性に優れ、一方、実装部に用いられる感光性樹脂組成物は、電気絶縁性やはんだ耐熱性などに優れ微細加工が可能であるという特性を有する。
【0004】
従来のポリイミドをベースとしたカバーレイでは、金型打ち抜きによる加工を必要とするため、微細配線には不向きである。そのため、微細配線が必要となるチップ実装部には、フォトリソグラフィーによる加工ができるアルカリ現像型の感光性樹脂組成物(ソルダーレジスト)を部分的に併用することが行われている。フレキシブルプリント配線板の製造においてこのような樹脂組成物の部分的な使い分けをする場合、カバーレイを貼り合わせる工程とソルダーレジストを形成する工程の2つの工程を経ることになり、コストと作業性に劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−263692号公報
【特許文献2】特開昭63−110224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまで、混載プロセスによらないカバーレイの検討がなされてきている。例えば、ソルダーレジスト用の感光性樹脂組成物をフレキシブルプリント配線板のカバーレイとして適用することが検討されているが、ソルダーレジスト用の樹脂組成物では、カバーレイとしての耐衝撃性や屈曲性などの信頼性が不十分である。ソルダーレジスト用の樹脂組成物では、アクリル系の光重合による硬化収縮も伴うため、フレキシブル配線板の反りなど寸法安定性にも課題があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、屈曲性、作業性に優れ、フレキシブルプリント配線板の絶縁膜、特に折り曲げ部(屈曲部)と実装部(非屈曲部)の一括形成プロセスに好適なアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、カルボキシル基を有するウレタン樹脂、光塩基発生剤および熱硬化成分を含む樹脂組成物が上記課題を解決しうることを見出した。
即ち、光照射によって光塩基発生剤が活性化し、発生した塩基を触媒としてカルボキシル基を有するウレタン樹脂と熱硬化成分とを、加熱によって付加反応させることにより、未露光部分のみをアルカリ溶液によって除去することが可能となることが見出された。これによって、アルカリ現像による微細加工が可能となる一方、ウレタン樹脂を含むことから屈曲性に優れた硬化物を得ることが期待できる。
【0009】
ところが、カルボキシル基を有するウレタン樹脂、熱硬化成分および光塩基発生剤を含む組成物を光照射後の現像に続いて加熱硬化させる際に、加熱によって樹脂が溶け出し、いわゆるダレが発生することによってパターンが崩れる現象が起こる場合があることが認められた。
そこで、本発明者らはさらなる検討を重ね、上記成分の他に、ウレタン樹脂以外のカルボキシル基を有する樹脂を含有させることによって上記問題が解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。また、上記組成物に、エチレン性不飽和基を有するモノマーを配合するか、もしくは、前記カルボキシル基を有するウレタン樹脂としてエチレン性不飽和基を有するものを用いることが、ダレ発生の防止がより一層期待できることから好適であることも併せて見出した。
【0010】
一方、上記のような、光照射により発生した塩基を触媒とする付加反応を利用してアルカリ現像による微細加工をする場合、深部硬化性に改良の余地があることが明らかとなった。特に、アルカリ現像型樹脂組成物を、多層構造のカバーレイにおける基板に近接する層に用いる場合、上層に含まれる樹脂や感光剤によって光が吸収され、樹脂層の深部まで光が十分に届かないことがあった。
【0011】
そこで、本発明者らはさらなる検討を重ね、光塩基発生剤として、特定の構造を有するオキシムエステル系光塩基発生剤を採用することによって上記問題が解消できることを見出した。また、アルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物の光照射後の加熱硬化反応において、加熱温度や加熱時間の選択幅を広げることができ、より作業性に優れた樹脂組成物となることを併せて見出した。
【0012】
本発明は、以下の[1]〜[9]である。
[1]カルボキシル基を有するウレタン樹脂、ウレタン樹脂以外のカルボキシル基を有する樹脂、光塩基発生剤、および、熱硬化成分、を含むことを特徴とするアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
[2]前記光塩基発生剤が、下記一般式(I)で表される基を有するオキシムエステル系光塩基発生剤を含む[1]のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
(式中、Rは、水素原子、無置換または炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基もしくはハロゲン原子で置換されたフェニル基、無置換または1個以上の水酸基で置換された炭素数1〜20のアルキル基、1個以上の酸素原子で中断された該アルキル基、無置換または炭素数1〜6のアルキル基もしくはフェニル基で置換された炭素数5〜8のシクロアルキル基、無置換または炭素数1〜6のアルキル基もしくはフェニル基で置換された炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基を表し、
は、無置換または炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基もしくはハロゲン原子で置換されたフェニル基、無置換または1個以上の水酸基で置換された炭素数1〜20のアルキル基、1個以上の酸素原子で中断された該アルキル基、無置換または炭素数1〜6のアルキル基もしくはフェニル基で置換された炭素数5〜8のシクロアルキル基、無置換または炭素数1〜6のアルキル基もしくはフェニル基で置換された炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基を表す。)
[3]前記カルボキシル基を有するウレタン樹脂がエチレン性不飽和基を有するものである[1]のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
[4]さらに、エチレン性不飽和基を有するモノマーを含む[1]のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
[5]前記熱硬化成分が環状エーテル化合物である[1]のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
[6]カバーレイ接着層用である[1]のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
[7][1]のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥させてなる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
[8][1]のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物、または、[7]のドライフィルムを硬化してなることを特徴とする硬化物。
[9][8]の硬化物を備えることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、現像後の加熱硬化時のダレの発生が抑制されたアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物を提供することが可能となる。また、屈曲性に優れ、フレキシブルプリント配線板の絶縁膜、特に折り曲げ部(屈曲部)と実装部(非屈曲部)の一括形成プロセスに好適なアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物、および、その硬化物を備えるプリント配線板を提供することが可能となる。また、本発明のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物は、光照射後加熱硬化時の温度・時間管理が容易であり、作業性に優れる。
本発明のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物は、フレキシブルプリント配線板のカバーレイに好適である。本発明のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物は、多層構造のカバーレイの接着層用樹脂組成物としても好適である。ここで、接着層とは、2層以上の積層構造を有するカバーレイの、フレキシブルプリント基板に接する樹脂層のことを指す。
【0014】
また、光塩基発生剤として、上記一般式(I)で表される基を有するオキシムエステル系光塩基発生剤を用いることで、深部硬化性に優れたアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物を提供することが可能となる。さらに、光照射後加熱硬化時の温度・時間の選択幅が広くなり、作業性に優れるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物(以下、単に「本発明の樹脂組成物」とも称する。)は、カルボキシル基を有するウレタン樹脂、ウレタン樹脂以外のカルボキシル基を有する樹脂、光塩基発生剤、および、熱硬化成分、を含むことを特徴とするものである。
本発明の樹脂組成物は、光塩基発生剤から生じる塩基を触媒として、カルボキシル基を有するウレタン樹脂と熱硬化成分とを露光後の加熱によって付加反応させ、未露光部分をアルカリ溶液によって除去することによって現像が可能となる樹脂組成物である。
カルボキシル基を有するウレタン樹脂、熱硬化成分および光塩基発生剤を含む樹脂組成物に、さらに、上記ウレタン樹脂以外の樹脂でカルボキシル基を有するものを配合することによって、現像後の加熱硬化時のダレの発生を抑制することができる。詳細なメカニズムは定かでは無いが、考えられる理由の一つとして、カルボキシル基を有するウレタン樹脂中のカルボキシル基は、熱硬化成分との反応性が低く、ウレタン樹脂以外の樹脂でカルボキシル基を有するものを配合することによって、現像後の加熱硬化時の付加反応がより進み、強固なマトリックスが形成されることが挙げられる。
【0017】
また、本発明の樹脂組成物は、系内にエチレン性不飽和基を含有することが、ダレ発生抑制効果の観点から好ましい。エチレン性不飽和基は、上記カルボキシル基を有するウレタン樹脂中に存在してもよく、本発明の樹脂組成物に対して、さらに、後述するエチレン性不飽和基を有するモノマーを配合してもよく、またその双方であってもよい。エチレン性不飽和基が存在することにより、光によるラジカル重合反応が起こり、強固なマトリックスが形成され、現像後の加熱硬化時のダレの発生を抑制することができると考えられる。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、フレキシブルプリント配線板の樹脂絶縁層、例えば、カバーレイや、ソルダーレジストに好適である。
本発明の樹脂組成物を用いてフレキシブルプリント配線板の樹脂絶縁層を形成する場合、好適な製造方法は、下記のようになる。即ち、フレキシブルプリント配線板上に本発明の樹脂組成物からなる樹脂層を形成する工程、パターン状に光を樹脂層に照射する工程、樹脂層を加熱する工程(Post Exposure Bake;PEBとも称する)、及び、樹脂層をアルカリ現像して、パターンを有する樹脂絶縁層を形成する工程を含む製造方法である。必要に応じて、アルカリ現像後、さらなる光照射や加熱硬化(ポストキュア)を行い、樹脂組成物を完全硬化させて信頼性の高い樹脂絶縁層を得る。
このように、本発明の樹脂組成物は、好適には、選択的な光照射後の加熱処理により、カルボキシル基と熱硬化成分とが付加反応することによって、アルカリ現像によるネガ型のパターン形成が可能となるものである。
得られる硬化物が耐熱性および屈曲性に優れ、かつ、アルカリ現像により微細加工が可能であることから、アルカリ現像型の感光性樹脂組成物を部分的に併用する必要がなく、フレキシブルプリント配線板の折り曲げ部(屈曲部)と実装部(非屈曲部)のいずれにも用いることができ、折り曲げ部(屈曲部)と実装部(非屈曲部)の一括形成プロセスに好適である。
【0019】
上記したように、ウレタン樹脂中のカルボキシル基は反応性が低く、その他のカルボキシル基含有樹脂のみを含む場合に比べて、露光後の加熱硬化反応時(PEB工程時)において同一の加熱温度下での、付加反応によりアルカリ耐性となるまでの時間を長くすることができる。また、加熱硬化反応時(PEB工程時)の加熱温度の選択幅を広げることができる。これらのことから、樹脂組成物の作業性や取扱性が向上する。未露光部がアルカリ耐性となる、いわゆるかぶりの発生を抑制することもできる。
以下、各成分について詳述する。
【0020】
[カルボキシル基を有するウレタン樹脂]
本発明の樹脂組成物に含まれるカルボキシル基を有するウレタン樹脂としては、分子中にカルボキシル基を含有している公知慣用のウレタン樹脂化合物が使用できる。また、上記のように、加熱時のダレ発生防止効果向上の点から、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂が好ましい。ここで、ダレとは、樹脂組成物を光照射後の現像に続いて加熱硬化させる際に、加熱によって樹脂が溶け出し、パターンが崩れる現象のことをいう。エチレン性不飽和二重結合としては、(メタ)アクリル酸もしくは(メタ)アクリル酸誘導体由来のものが好ましい。カルボキシル基を有するウレタン樹脂の具体例としては、以下に(1)〜(4)として列挙するような化合物(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。
【0021】
(1)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物及びポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(2)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物及びジオール化合物の重付加反応による感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(3)上記(1)又は(2)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化した感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(4)上記(1)又は(2)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化した感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
カルボキシル基を有するウレタン樹脂は、その酸価が20〜200mgKOH/gであることが好ましく、40〜150mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が上記の範囲内であると、アルカリ溶解性が良好で、アルカリ現像によるパターニングが容易となる。
また、カルボキシル基を有するウレタン樹脂の質量平均分子量は、1,000〜100,000が好ましく、さらに3,000〜50,000が好ましい。質量平均分子量を1,000以上とすることで十分な硬化物の柔軟性を得ることができる。また質量平均分子量が100,000以下の場合アルカリ現像性を良くする事ができる。
カルボキシル基を有するウレタン樹脂の配合量は、カルボキシル基を有するウレタン樹脂とウレタン樹脂以外のカルボキシル基を有する樹脂との合計100質量部中10質量部以上が好ましく、30質量部以上であることがより好ましい。10質量部以上配合することで柔軟性が良好となる。
【0022】
[ウレタン樹脂以外のカルボキシル基を有する樹脂]
本発明の樹脂組成物に含まれるウレタン樹脂以外のカルボキシル基を有する樹脂は、上記のカルボキシル基を有するウレタン樹脂以外の樹脂であって、分子内にカルボキシル基を有する樹脂である。そのような樹脂としては、分子中にカルボキシル基を含有している公知慣用の樹脂化合物が使用できる。また、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂であってもよい。エチレン性不飽和二重結合としては、(メタ)アクリル酸もしくは(メタ)アクリル酸誘導体由来のものが好ましい。
カルボキシル基を有するウレタン以外の樹脂の具体例としては、以下に(5)〜(11)として列挙するような化合物(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。
【0023】
(5)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
(6)2官能又はそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有樹脂。
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有樹脂。
(8)2官能オキセタン樹脂にジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
(9)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド及び/又はエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネート化合物を反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸で部分エステル化し、得られた反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド及び/又はエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネート化合物を反応させて得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
(11)上記(5)〜(10)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリル基を有する化合物を付加してなる感光性カルボキシル基含有樹脂。
ウレタン樹脂以外のカルボキシル基を有する樹脂は、その酸価が20〜200mgKOH/gであることが好ましく、より好適には40〜150mgKOH/gであることが好ましい。酸価が上記の範囲内であると、アルカリ溶解性が良好で、アルカリ現像によるパターニングが容易となる。
また、ウレタン樹脂以外のカルボキシル基を有する樹脂の質量平均分子量は、1,000〜100,000が好ましく、さらに3,000〜50,000が好ましい。分子量が上記の範囲内であると、アルカリ溶解性が良好で、アルカリ現像によるパターニングが容易となる。
ウレタン樹脂以外のカルボキシル基を有する樹脂の配合量は、カルボキシル基を有するウレタン樹脂とウレタン樹脂以外のカルボキシル基を有する樹脂の合計100質量部中5質量部以上、好ましくは20質量部以上であることが好ましい。5質量部以上配合することで光照射後の加熱時(PEB工程)に低温または短時間で露光部の耐現像性を得ることができる。
【0024】
[光塩基発生剤]
本発明において用いられる光塩基発生剤は、紫外線や可視光等の光照射により分子構造が変化するか、または、分子が開裂することにより、カルボキシル基と後述する熱硬化成分の付加反応の触媒として機能しうる1種以上の塩基性物質を生成する化合物である。塩基性物質として、例えば2級アミン、3級アミンが挙げられる。
本発明の樹脂組成物がエチレン性不飽和基を系内に有する場合、光照射によるエチレン性不飽和基の重合反応を開始させることができることから、光塩基発生剤の中でも、光照射による活性化の過程でラジカルを生成する光ラジカル重合開始剤としても機能するものが好ましい。
光塩基発生剤として、例えば、α−アミノアセトフェノン化合物、オキシムエステル化合物や、アシルオキシイミノ基,N−ホルミル化芳香族アミノ基、N−アシル化芳香族アミノ基、ニトロベンジルカーバメイト基、アルコオキシベンジルカーバメート基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。なかでも、オキシムエステル化合物、α−アミノアセトフェノン化合物が好ましい。α−アミノアセトフェノン化合物としては、特に、2つ以上の窒素原子を有するものが好ましい。
【0025】
その他の光塩基発生剤として、WPBG-018(商品名:9-anthrylmethylN,N'-diethylcarbamate),WPBG-027(商品名:(E)-1-[3-(2-hydroxyphenyl)-2-propenoyl]piperidine),WPBG-082(商品名:guanidinium2-(3-benzoylphenyl)propionate), WPBG-140 (商品名:1-(anthraquinon-2-yl)ethyl imidazolecarboxylate)等を使用することもできる。
【0026】
α―アミノアセトフェノン化合物は、分子中にベンゾインエーテル結合を有し、光照射を受けると分子内で開裂が起こり、硬化触媒作用を奏する塩基性物質(アミン)が生成する。α−アミノアセトフェノン化合物の具体例としては、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン(イルガキュア369、商品名、BASFジャパン社製)や4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン(イルガキュア907、商品名、BASFジャパン社製)、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(イルガキュア379、商品名、BASFジャパン社製)などの市販の化合物またはその溶液を用いることができる。
【0027】
オキシムエステル化合物としては、光照射により塩基性物質を生成する化合物であればいずれをも使用することができる。かかるオキシムエステル化合物としては、市販品として、BASFジャパン社製のCGI−325、イルガキュアーOXE01、イルガキュアーOXE02、アデカ社製N−1919、NCI−831などが挙げられる。また、特許第4,344,400号公報に記載された、分子内に2個のオキシムエステル基を有する化合物も好適に用いることができる。
【0028】
その他、特開2004−359639号公報、特開2005−097141号公報、特開2005−220097号公報、特開2006−160634号公報、特開2008−094770号公報、特表2008−509967号公報、特表2009−040762号公報、特開2011−80036号公報記載のカルバゾールオキシムエステル化合物等を挙げることができる。
【0029】
このような光塩基発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の樹脂組成物中の光塩基発生剤の配合量は、好ましくは熱硬化成分100質量部に対して0.1〜40質量部であり、さらに好ましくは、0.1〜30質量部である。0.1質量部以上の場合、光照射部/未照射部の耐現像性のコントラストを良好に得ることができる。また、40質量部以下の場合、硬化物特性が向上する。
【0030】
本発明においては、上記のうちでも、下記一般式(I)で表される構造を有するオキシムエステル系光塩基発生剤を使用することが好ましい。かかるオキシムエステル系光塩基発生剤は、紫外線や可視光等の光照射によって分子が開裂することにより、カルボキシル基と後述する熱硬化成分の付加反応の触媒として機能しうる1種以上の塩基性物質を生成する化合物である。塩基性物質として、例えば1級アミン、2級アミン、3級アミンが挙げられる。
【0031】
光塩基発生剤として、一般式(I)で表される構造を有するオキシムエステル系光塩基発生剤を用いると、その他の光塩基発生剤を用いた場合に比べて、樹脂組成物の深部硬化性が良好となる。また、オキシムエステル系光塩基発生剤は、光照射によりラジカルと塩基の両方を発生するため、樹脂組成物系内にエチレン性不飽和基などのラジカル重合するものが含まれている場合であっても、光塩基発生剤に加えて光ラジカル重合開始剤を含ませる必要がなくなる。その結果、光ラジカル重合開始剤と光塩基発生剤の双方が含まれることによって十分な光が深部まで到達しないという問題の発生を避けることができる。以上のことから、オキシムエステル系光塩基発生剤を用いることで、深部まで十分に硬化し、断面形状が良好なパターンを形成することが可能となる。
また、一般式(I)で表される構造を有するオキシムエステル系光塩基発生剤を用いると、露光後の加熱硬化反応時(PEB工程時)において同一の加熱温度下での、加熱時間の選択幅を広げることができる。これらのことから、樹脂組成物の作業性、取扱性が向上する。
【0032】
一般式(I)で表される構造を有するオキシムエステル系光塩基発生剤を光塩基発生剤として用いることにより、深部硬化性が良くPEBの時間管理幅を広くとることができる。また、オキシムエステル系光塩基発生剤を用いることにより、望まざる部分においても付加反応による硬化が起きてしまい、現像ができなくなるといういわゆる熱かぶりの発生が抑制される。詳細な理由は定かではないが、考えられる理由として、一般式(I)で表される構造を有するオキシムエステル系光塩基発生剤は、光照射されていない状態では塩基を発生せず、光照射による分子の開裂を経て初めて塩基が発生する。従って、未露光部では塩基を触媒とする付加反応が進行しないということが挙げられる。これに対して、光塩基発生剤であっても、光照射により立体構造が変化し塩基性が強くなる性質を備える化合物では、もともと分子内にアミンなどの塩基を有しており、これが未露光部でも付加反応を引き起こしてしまうと考えられる。このような場合、露光部と未露光部とで、付加反応による樹脂組成物の硬化度合いの差が小さくなり、アルカリ現像による明確なコントラストが得られなくなったり、熱かぶりが発生してしまうことになる。
【0033】
(式中、Rは、水素原子、無置換または炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基もしくはハロゲン原子で置換されたフェニル基、無置換または1個以上の水酸基で置換された炭素数1〜20のアルキル基、1個以上の酸素原子で中断された該アルキル基、無置換または炭素数1〜6のアルキル基もしくはフェニル基で置換された炭素数5〜8のシクロアルキル基、無置換または炭素数1〜6のアルキル基もしくはフェニル基で置換された炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基を表し、
は、無置換または炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基もしくはハロゲン原子で置換されたフェニル基、無置換または1個以上の水酸基で置換された炭素数1〜20のアルキル基、1個以上の酸素原子で中断された該アルキル基、無置換または炭素数1〜6のアルキル基もしくはフェニル基で置換された炭素数5〜8のシクロアルキル基、無置換または炭素数1〜6のアルキル基もしくはフェニル基で置換された炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基を表す。)
【0034】
オキシムエステル系光塩基発生剤の市販品としては、前掲したようなものがある。また、分子内に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤も好適に用いることができ、具体的には、下記一般式で表されるカルバゾール構造を有するオキシムエステル化合物が挙げられる。
(式中、Xは、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)を表し、Y、Zはそれぞれ、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表し、Arは、結合か、炭素数1〜10のアルキレン、ビニレン、フェニレン、ビフェニレン、ピリジレン、ナフチレン、チオフェン、アントリレン、チエニレン、フリレン、2,5−ピロール−ジイル、4,4’−スチルベン−ジイル、4,2’−スチレン−ジイルで表し、nは0か1の整数である。)
【0035】
特に、前記一般式中、X、Yが、それぞれメチル基又はエチル基であり、Zはメチル基又はフェニル基であり、nは0であり、Arは、結合か、フェニレン、ナフチレン、チオフェン又はチエニレンであることが好ましい。
【0036】
また、好ましいカルバゾールオキシムエステル化合物として、下記一般式で表すことができる化合物を挙げることもできる。
(式中、R11は、炭素原子数1〜4のアルキル基、または、ニトロ基、ハロゲン原子もしくは炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基を表す。
12は、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、または、炭素原子数1〜4のアルキル基もしくはアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基を表す。
13は、酸素原子または硫黄原子で連結されていてもよく、フェニル基で置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基で置換されていてもよいベンジル基を表す。
14は、ニトロ基、または、X−C(=O)−で表されるアシル基を表す。Xは、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいアリール基、チエニル基、モルホリノ基、チオフェニル基、または、下記式で示される構造を表す。)
【0037】
その他、前掲した公報記載のカルバゾールオキシムエステル化合物等も用いることができる。
【0038】
このようなオキシムエステル系光塩基発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物中の光塩基発生剤の配合量は、好ましくは熱硬化成分100質量部に対して0.1〜40質量部であり、さらに好ましくは、0.1〜30質量部である。0.1質量部以上の場合、光照射部/未照射部の耐現像性のコントラストを良好に得ることができる。また、40質量部以下の場合、硬化物特性が向上する。
【0039】
[光ラジカル重合開始剤]
本発明の樹脂組成物は、上記光塩基発生剤以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、光ラジカル重合開始剤を含んでいてもよい。光ラジカル重合開始剤としては、光照射によってラジカルを生成する公知の光ラジカル重合開始剤を用いることができる。例えば、上記した光塩基発生剤として機能しうるα−アミノアセトフェノン系光重合開始剤以外のアルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤等を挙げることができる。
【0040】
アルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等が挙げられる。
【0041】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、具体的には2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、BASFジャパン社製のルシリンTPO、BASFジャパン社製のイルガキュアー819などが挙げられる。
【0042】
これらアルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の配合量は、カルボキシル基を有するウレタン樹脂とウレタン樹脂以外のカルボキシル基を有する樹脂との合計量100質量部に対して、0.01〜15質量部であることが好ましい。0.01質量部未満であると、光硬化性が不足し、耐薬品性などの塗膜特性が低下することがある。一方、15質量部を超えると、アウトガスの低減効果が得られず、さらに塗膜表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。より好ましくは0.5〜10質量部である。
【0043】
チタノセン系光重合開始剤としては、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)−ジフェニル−チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ジクロロ−チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,3,4,5,6ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピロール−1−イル)フェニル)チタニウムなどが挙げられる。市販品としては、BASFジャパン社製のイルガキュアー784などが挙げられる。
【0044】
チタノセン系光重合開始剤の配合量は、カルボキシル基を有するウレタン樹脂とウレタン樹脂以外のカルボキシル基を有する樹脂の合計量100質量部に対して、0.01〜15質量部であることが好ましい。0.01質量部未満であると、銅上での光硬化性が不足し、塗膜が剥離するとともに、耐薬品性等の塗膜特性が低下する場合がある。一方、15質量部を超えると、光吸収量が過剰に高くなり深部硬化性が悪化する場合がある。より好ましくは0.5〜10質量部である。
【0045】
上記光重合開始剤の他に、光開始助剤、増感剤を用いることができる。感光性樹脂組成物に好適に用いることができる光重合開始剤、光開始助剤及び増感剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、及びキサントン化合物などを挙げることができる。
【0046】
ベンゾイン化合物としては、具体的には、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0047】
アセトフェノン化合物としては、具体的には、例えばアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。
【0048】
アントラキノン化合物としては、具体的には、例えば2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンなどが挙げられる。
【0049】
チオキサントン化合物としては、具体的には、例えば2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
【0050】
ケタール化合物としては、具体的には、例えばアセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。
【0051】
ベンゾフェノン化合物としては、具体的には、例えばベンゾフェノン、4−ベンゾイルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−エチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−プロピルジフェニルスルフィドなどが挙げられる。
【0052】
3級アミン化合物としては、具体的には、例えばエタノールアミン化合物、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物、例えば、市販品では、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(日本曹達社製ニッソキュアーMABP)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)などのジアルキルアミノベンゾフェノン、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン(7−(ジエチルアミノ)−4−メチルクマリン)などのジアルキルアミノ基含有クマリン化合物、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製カヤキュアーEPA)、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure DMB)、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure BEA)、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル(日本化薬社製カヤキュアーDMBI)、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル(Van Dyk社製Esolol 507)などが挙げられる。
【0053】
これらのうち、チオキサントン化合物及び3級アミン化合物が好ましい。特に、チオキサントン化合物が含まれることが、深部硬化性の面から好ましい。中でも、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン化合物を含むことが好ましい。
【0054】
このようなチオキサントン化合物の配合量としては、上記カルボキシル基を有するウレタン樹脂とウレタン樹脂以外のカルボキシル基を有する樹脂の合計量100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましい。チオキサントン化合物の配合量が20質量部を超えると、厚膜硬化性が低下するとともに、製品のコストアップに繋がる。より好ましくは10質量部以下である。
【0055】
また、3級アミン化合物としては、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物が好ましく、中でも、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、最大吸収波長が350〜450nmの範囲内にあるジアルキルアミノ基含有クマリン化合物及びケトクマリン類が特に好ましい。
【0056】
ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物としては、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンが、毒性も低く好ましい。ジアルキルアミノ基含有クマリン化合物は、最大吸収波長が350〜410nmと紫外線領域にあるため、着色が少なく、無色透明な硬化被膜はもとより、着色顔料を用い、着色顔料自体の色を反映した着色硬化被膜を提供することが可能となる。特に、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オンが、波長400〜410nmのレーザー光に対して優れた増感効果を示すことから好ましい。
【0057】
このような3級アミン化合物の配合量としては、カルボキシル基を有するウレタン樹脂とウレタン樹脂以外のカルボキシル基を有する樹脂の合計量100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましい。3級アミン化合物の配合量が0.1質量部未満であると、十分な増感効果を得ることができない傾向にある。一方、20質量部を超えると、3級アミン化合物による塗膜の表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。より好ましくは0.1〜10質量部である。
【0058】
これらの光ラジカル重合開始剤、光開始助剤及び増感剤は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上の混合物として使用することもできる。
このような光ラジカル重合開始剤、光開始助剤、及び増感剤の総量は、カルボキシル基を有するウレタン樹脂とウレタン樹脂以外のカルボキシル基を有する樹脂の合計量100質量部に対して35質量部以下であることが好ましい。35質量部を超えると、これらの光吸収により深部硬化性が低下する傾向にある。
【0059】
[熱硬化成分]
熱硬化成分は、熱によって、カルボキシル基と付加反応が可能な官能基を有するものである。熱硬化成分としては、例えば、環状(チオ)エーテル基を有する化合物が好ましく、エポキシ樹脂、多官能オキセタン化合物等が挙げられる。
【0060】
上記エポキシ樹脂は、エポキシ基を有する樹脂であり、公知のものをいずれも使用できる。分子中にエポキシ基を2個有する2官能性エポキシ樹脂、分子中にエポキシ基を多数有する多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、水素添加された2官能エポキシ化合物であってもよい。
【0061】
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ナフタレン基含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂、CTBN変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0062】
その他の液状2官能性エポキシ樹脂としては、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、(3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル)−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、(3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキシルメチル)−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
なお、熱硬化成分として、マレイミド化合物、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、エピスルフィド樹脂などの公知慣用の化合物を配合してもよい。
【0064】
熱硬化成分の配合量としては、上記カルボキシル基を有するウレタン樹脂および上記ウレタン樹脂以外のカルボキシル基を有する樹脂との当量比(カルボキシル基:エポキシ基などの熱反応性基)が1:0.1〜1:10であることが好ましい。このような配合比の範囲とすることにより、現像が良好となり、容易に微細パターンを形成できる。上記当量比は、1:0.2〜1:5であることがさらに好ましい。
【0065】
[感光性モノマー]
本発明の樹脂組成物は、エチレン性不飽和基を有するモノマー(感光性モノマーと称する)を含有することができる。感光性モノマーは、分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物である。感光性モノマーは、活性エネルギー線照射によるエチレン性不飽和基の重合反応を助けるものである。エチレン性不飽和基が存在することにより、光によるラジカル重合反応が起こり、強固なマトリックスが形成され、現像後の加熱硬化時のダレの発生を抑制することができる。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリレート由来のものが好ましい。
【0066】
前記感光性モノマーとして用いられる化合物としては、例えば、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、もしくはε−カプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;前記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類及びメラミンアクリレート、及び前記アクリレートに対応する各メタクリレート類の少なくとも何れか一種などが挙げられる。
【0067】
さらに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂などを感光性モノマーとして用いてもよい。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
【0068】
前記の感光性モノマーとして用いられる分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物の配合量は、好ましくはカルボキシル基を有するウレタン樹脂とウレタン樹脂以外のカルボキシル基を有する樹脂の合計量100質量部に対して、1〜50質量部、より好ましくは、3〜30質量部の割合である。前記配合量が、1質量部未満の場合、十分なダレ防止効果が得られないことがある。一方、50質量部を超えた場合、硬化膜が脆くなることがある。
【0069】
(高分子樹脂)
本発明の樹脂組成物には、得られる硬化物の可撓性、指触乾燥性の向上を目的に慣用公知の高分子樹脂を配合することができる。高分子樹脂としてはセルロース系、ポリエステル系、フェノキシ樹脂系ポリマー、ポリビニルアセタール系、ポリビニルブチラール系、ポリアミド系、ポリアミドイミド系バインダーポリマー、ブロック共重合体、エラストマー等が挙げられる。上記高分子樹脂は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0070】
(無機充填剤)
本発明の樹脂組成物には、無機充填剤を配合することができる。無機充填剤は、樹脂組成物の硬化物の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度などの特性を向上させるために使用される。無機充填剤としては、例えば、硫酸バリウム、無定形シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ノイブルグシリシャスアース等が挙げられる。上記無機充填剤は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0071】
(着色剤)
さらに、本発明の樹脂組成物には、着色剤を配合することができる。着色剤としては、赤、青、緑、黄、白、黒などの慣用公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。
【0072】
(有機溶剤)
本発明の樹脂組成物には、樹脂組成物の調製のためや、基材やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のために、有機溶剤を使用することができる。
このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などを挙げることができる。このような有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0073】
(その他の任意成分)
本発明の樹脂組成物には、必要に応じてさらに、メルカプト化合物、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。また、上記の樹脂組成物には、微粉シリカ、ハイドロタルサイト、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、シランカップリング剤、防錆剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0074】
〔ドライフィルム〕
本発明のドライフィルムは、本発明の樹脂組成物からなる樹脂層を有することを特徴とする。本発明の樹脂組成物以外の樹脂組成物からなる層も有する多層構造のドライフィルムであってもよい。
ドライフィルム化に際しては、例えば、本発明の樹脂組成物を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター等の公知の手法でキャリアフィルム上に均一な厚さに塗布する。その後、通常、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥し、キャリアフィルム上に樹脂層を形成する。
【0075】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられる。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10〜150μmの範囲で適宜選択される。キャリアフィルム上に樹脂層を形成した後、さらに、樹脂層の表面に剥離可能なカバーフィルムを積層してもよい。
【0076】
〔フレキシブルプリント配線板及びその製造方法〕
本発明のフレキシブルプリント配線板は、感光性熱硬化性樹脂組成物、又は、ドライフィルムの樹脂層からなる硬化物を有することを特徴とするものである。
本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法は、フレキシブルプリント配線板上に感光性熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を形成する工程、パターン状に光を樹脂層に照射する工程、樹脂層を加熱する工程、及び、樹脂層をアルカリ現像して、カバーレイ及びソルダーレジストのうちの少なくともいずれか一方を形成する工程を含む。
【0077】
[樹脂層形成工程]
この工程では、フレキシブルプリント配線板上にアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を少なくとも一層形成する。
樹脂層の形成方法としては、塗布法と、ラミネート法が挙げられる。
塗布法の場合、スクリーン印刷等の方法により、アルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物をフレキシブルプリント配線板上に塗布し、乾燥することにより樹脂層を形成する。
ラミネート法の場合、まずは、アルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、キャリアフィルム上に塗布、乾燥して樹脂層を有するドライフィルムを作成する。次に、ラミネーター等により樹脂層が、フレキシブルプリント配線板と接触するように貼り合わせた後、キャリアフィルムを剥離する。
【0078】
また、樹脂層には、他の層を積層させることができる。他の層は、アルカリ現像型感光性樹脂組成物からなることが好ましい。アルカリ現像型感光性樹脂組成物としては、公知の組成物を使用することができ、例えば、カバーレイ用又はソルダーレジスト用の公知の組成物を使用できる。このように他の層を含めた積層構造とすることにより、さらに耐衝撃性と屈曲性に優れた硬化物を得ることができる。
【0079】
[光照射工程]
この工程は、ネガ型のパターン状に光照射にて樹脂層に含まれる光塩基発生剤を活性化して光照射部を硬化する。この工程では、光照射部で発生した塩基により、光塩基発生剤が不安定化し、塩基が化学的に増殖することにより、樹脂層の深部まで十分硬化できる。
【0080】
光照射機としては、直接描画装置、メタルハライドランプを搭載した光照射機などを用いることができる。パターン状の光照射用のマスクは、ネガ型のマスクである。
光照射に用いる活性エネルギー線としては、最大波長が350〜450nmの範囲にあるレーザー光又は散乱光を用いることが好ましい。最大波長をこの範囲とすることにより、効率よく光塩基発生剤を活性化させることができる。この範囲のレーザー光を用いていればガスレーザー、固体レーザーのいずれでもよい。また、その光照射量は膜厚等によって異なるが、一般には100〜1500mJ/cmとすることができる。
【0081】
[加熱工程]
この工程は、光照射後、樹脂層を加熱することにより光照射部を硬化する。この工程により、光照射工程で発生した塩基により深部まで硬化できる。加熱温度は、例えば、80〜140℃である。加熱時間は、例えば、10〜100分である。
本発明におけるアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物の硬化は、例えば、熱反応によるエポキシ樹脂の開環反応であるため、光ラジカル反応で硬化が進行する場合と比べてひずみや硬化収縮を抑えることができる。
【0082】
[現像工程]
現像工程は、アルカリ現像により、未照射部を除去して、ネガ型のパターン状の絶縁膜、特に、カバーレイ及びソルダーレジストを形成する。
現像方法としては、ディッピング等の公知の方法によることができる。また、現像液としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、アミン類、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)等のアルカリ水溶液またはこれらの混合液を用いることができる。
なお、現像工程の後に、さらに、絶縁膜を光照射してもよい。また、例えば、150℃以上で加熱してもよい。
【0083】
次に、本発明の樹脂組成物から本発明のフレキシブルプリント配線板を製造する方法の一例を図1の工程図に基づき説明する。なお、図1では、樹脂層が積層構造である場合を示すが、1層のみからなる場合でもよい。
【0084】
図1の積層工程は、樹脂層3と樹脂層4からなる積層構造体を、銅回路2が形成されたフレキシブルプリント配線基材1に形成する。
樹脂層3は、カルボキシル基を有するウレタン樹脂、ウレタン樹脂以外のカルボキシル基を有する樹脂および光塩基発生剤を含む本発明のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物からなる。
樹脂層4は、樹脂層3上に形成され、1分子中に1個以上のイミド環と1個以上のカルボキシル基とを有するポリイミド樹脂、光塩基発生剤、及び熱硬化成分を含む感光性熱硬化性樹脂組成物からなる。
【0085】
図1の光照射工程は、樹脂層4上にマスク5を配置し、ネガ型のパターン状に光照射することにより、各樹脂層に含まれる光塩基発生剤を活性化して光照射部を硬化する工程である。図1の加熱工程は、光照射工程の後、樹脂層を加熱することにより、光照射部を硬化する工程(PEB工程)である。図1の現像工程は、アルカリ性水溶液によって現像することにより、未照射部が除去され、ネガ型のパターン層を形成する工程である。
【0086】
なお、図1の第2光照射工程は、必要に応じて、残った光塩基発生剤を活性化して塩基を発生させるための工程であり、熱硬化工程は、必要に応じて、パターン層を十分に熱硬化させるための工程である。
【実施例】
【0087】
以下、実施例、比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例、比較例によって制限されるものではない。
【0088】
[実施例1、参考例1〜5、比較例1〜4]
<樹脂組成物の調製>
下記表1記載の配合に従って、実施例、参考例および比較例に記載の材料をそれぞれ配合、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルにて混練し、アルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物を調製した。表中の値は、特に断りが無い限り固形分(質量部)である。
【0089】
<樹脂層の形成工程>
銅厚18μmで回路が形成されているフレキシブルプリント配線基材を用意し、メック社CZ−8100を使用して、前処理を行った。その後、前記前処理を行ったフレキシブルプリント配線板に、実施例1、参考例1〜5および比較例1〜4の樹脂組成物を液状塗布方法にて乾燥後で20μmになるようにコーティングを行った。その後、熱風循環式乾燥炉にて80℃、30分にて乾燥し、樹脂層を形成した。その後、ORC社HMW680GW(メタルハライドランプ、散乱光)にて500mJ/cmの露光量でネガ型のパターン状に光照射した。
【0090】
<PEB工程の温度による現像性評価>
上記の樹脂層の形成工程により得られた露光後の樹脂層を有する基板を、80℃60分、90℃30分、100℃15分間加熱処理を行った。その後30℃の1質量%の炭酸ナトリウム水溶液中に基材を浸漬して3分間現像を行い、現像性の可否を評価し、現像可能な加熱時間の幅(分)を評価した。評価基準は以下の通り。
○:現像可能で、塗膜の状態も良好。
× ※1:露光部が現像液に溶解するためパターン形成不可。
× ※2:未露光部が現像液に溶解しないためパターン形成不可。
【0091】
<硬化後のパターン形状評価>
上記の樹脂層の形成工程により得られた露光後の樹脂層を有する基板を、90℃30分加熱処理(PEB)を行った。その後30℃の1質量%の炭酸ナトリウム水溶液中に基材を浸漬して3分間現像を行った。その後150℃60分加熱し、硬化後にパターン形状がダレているかを評価した。評価基準は以下の通り。得られた結果を下記表1に示す。
◎:パターン形状にダレなく、しかもシャープな形状。
○:パターン形状にダレなし。
×:パターン形状にダレ有り。
【0092】
【表1】
*1:酸価47mgKOH/g ポリウレタンアクリレート(共栄社化学製)
*2:酸価50mgKOH/g ポリウレタン樹脂(根上工業社製)
*3:酸価63mgKOH/g 酸変性ノボラック型エポキシアクリレート樹脂(日本化薬社製)
*4:酸価104mgKOH/g ビスフェノールAノボラック樹脂
*5:トリメチロールプロパンEO 変性トリアクリレート(東亞合成社製)
*6:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製)
*7:α−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤(BASF社製)
*8:光塩基発生剤(和光純薬社製)
*9:オキシム系光重合開始剤(BASF社製)
【0093】
表1に示す評価結果から明らかなように、実施例1および参考例1〜5の感光性熱硬化性樹脂組成物は、80℃、90℃、100℃のいずれの温度での露光後加熱処理であっても現像性が良好であった。また、硬化後のパターン形状にダレがなく、シャープな形状が得られた。
【0094】
[実施例2,3および参考例6〜11]
<樹脂組成物の調製>
下記表2記載の配合に従って、実施例および参考例に記載の材料をそれぞれ配合、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルにて混練し、アルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物を調製した。表中の値は、特に断りが無い限り固形分(質量部)である。
【0095】
<樹脂層の形成工程>
銅厚18μmで回路が形成されているフレキシブルプリント配線基材を用意し、メック社CZ−8100を使用して、前処理を行った。その後、前記前処理を行ったフレキシブルプリント配線板に、実施例2,3および参考例6〜11の樹脂組成物を液状塗布方法にて乾燥後で20μmになるようにコーティングを行った。その後、熱風循環式乾燥炉にて80℃、30分にて乾燥し、樹脂層を形成した。
【0096】
<PEB工程の時間による現像性評価>
上記の樹脂層の形成工程により得られた樹脂層に、ORC社HMW680GW(メタルハライドランプ、散乱光)にて500mJ/cmの露光量でネガ型のパターン状に光照射した。
露光後の樹脂層を有する基板を、90℃30分、60分、70分、80分間、それぞれ加熱処理を行った。その後30℃の1質量%の炭酸ナトリウム水溶液中に基材を浸漬して3分間現像を行い、現像性の可否を評価し、現像可能な加熱時間の幅(分)を評価した。評価基準は以下の通り。
○:現像可能で、塗膜の状態も良好。
×:未露光部も硬化反応を起こし現像によるパターン形成不可。
【0097】
<保護層用の組成物の調製>
下記パターニング性評価において用いる、保護層用の樹脂組成物を以下のように調製した。酸価86mgKOH/g Mw:10000のカルボキシル基を有するポリイミドを100質量部、jER828を63.5質量部、イルガキュアOXE02を10質量部の配合量でそれぞれ配合、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルにて混練し、保護層用の樹脂組成物を調製した。
【0098】
<接着層として用いたときのパターンニング性評価>
実施例および参考例それぞれの樹脂組成物を用い、上記の樹脂層の形成工程により得られた乾燥後の樹脂層の上に、保護層用の組成物の調製で得られた樹脂組成物を液状塗布方法にて乾燥後で10μmになるようにコーティングを行い、熱風循環式乾燥炉にて80℃、30分乾燥し、2層の樹脂層を形成した。その後、ORC社HMW680GW(メタルハライドランプ、散乱光)にて500mJ/cmの露光量でネガ型のパターン状に光照射し、90℃30分間加熱処理を行った。その後30℃の1質量%の炭酸ナトリウム水溶液中に基材を浸漬して3分間現像を行い、パターンニングした。パターンニング後、断面の形状を光学顕微鏡にて確認しその形状を評価した。
○:下層のアンダーカット発生なし。
×:下層のアンダーカット発生大。
結果を下記表2に示す。
【0099】
【表2】
※11:酸価47mgKOH/g カルボキシル基含有ポリウレタンアクリレート、共栄社化学社製
※12:酸価63mgKOH/g 酸変性ノボラック型エポキシアクリレート樹脂(日本化薬社製)
※13:酸価104mgKOH/g ビスフェノールAノボラック樹脂
※14:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、jER828(三菱化学社製)
※15:イルガキュアOXE−02(BASF社製)
※16:NCI−831(ADEKA社製)
※17:下記構造式で表される化合物
※18:イルガキュア184(ヒドロキシルアルキルフェノン系光重合開始剤、BASF社製)
※19:イルガキュア907(アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、BASF社製)
※20:WPRG−018(9−アンスリルメチル N,N’−ジエチルカルバメート)(和光純薬社製)
【0100】
上記表2から明らかなように、本発明の一般式(I)で表される構造を有するオキシムエステル系光塩基発生剤を含む参考例6〜10に係る樹脂組成物は、PEB工程における加熱時間の選択幅が広く、取扱性に優れたものであった。
これに対して、一般式(I)で表される構造を有するオキシムエステル系光塩基発生剤を含まない実施例2,3および参考例11に係る樹脂組成物は、90℃で70分以上加熱すると未露光部であってもアルカリ現像ができず、パターン形成が不可能であった。
また、参考例6〜10に係る樹脂組成物は、上層として光を吸収する樹脂組成物からなる保護層を有する2層構造の下層に位置しても、十分な深部硬化性を示した。
【符号の説明】
【0101】
1 フレキシブルプリント配線基材
2 銅回路
3 樹脂層
4 樹脂層
5 マスク
図1