特許第6388487号(P6388487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388487
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】保全評価システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
   G05B23/02 T
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-82884(P2014-82884)
(22)【出願日】2014年4月14日
(65)【公開番号】特開2015-203966(P2015-203966A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】509148865
【氏名又は名称】旭国際テクネイオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】深町 光宏
(72)【発明者】
【氏名】重田 為和
【審査官】 加藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−272023(JP,A)
【文献】 特開平09−062340(JP,A)
【文献】 特開平08−152912(JP,A)
【文献】 特開2014−049010(JP,A)
【文献】 特開2009−222132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械・装置を分解点検することにより保全するための保全評価システムにおいて、
前記機械・装置に対する複数の点検項目用データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶した点検項目用データを呼び出して点検項目及び点検結果チェック欄を含むように表形式に展開して表示する表示手段と、
前記表示手段に表示した点検結果チェック欄に点検結果を分解点検の作業者が入力するための入力手段と、
前記入力手段による入力結果を点検結果データとして前記記憶手段に蓄積して記憶させる点検結果データ蓄積手段と、
前記点検項目のそれぞれに対して予め設定した評価レベルと前記点検結果チェック欄の点検結果とに基づいて算出した保全評価レベル値に基づいて保全評価を判定する判定手段と、
前記判定手段によって判定した保全評価結果を出力する出力手段と、
を備え、
前記記憶手段は、前記点検項目毎の前記評価レベルとして複数段階に区分した評価レベル値を記憶しており、
前記判定手段は、前記入力手段を用いて分解点検の作業者が入力した前記点検結果チェック欄の点検結果に対応する前記点検項目毎の前記評価レベル値を、過去に行った分解点検も含めて累積した累積値を算出するとともに、前記評価レベル値が所定値以上に設定されている前記点検項目に対応する前記点検結果チェック欄が、過去に行った分解点検も含めて所定個数以上チェックされた場合、或いは、前記累積値が所定値以上に達した場合に、所定の保全評価判定結果を前記出力手段に出力させ、
前記判定手段は、さらに、前記機械・装置の点検周期の見直し、点検レベルの見直し、の少なくとも1つを含む情報又はデータを所定の保全評価判定結果として前記出力手段に出力させ
前記表示手段は、該当する機械・装置に対して自動的に選定された第1のチェック欄と第2のチェック欄とを含む前記点検結果チェック欄を表示し、前記第1のチェック欄は、前記作業者が点検で不具合を発見したとき入力する欄であり、前記第2のチェック欄は、前記作業者が前記不具合の対処が完了したとき入力する欄であり、前記第2のチェック欄は、前記第1のチェック欄に不具合を示す表記がなされると同時に不具合を示す表記がなされ、前記不具合の対処が完了したとき前記作業者により前記不具合の表記が削除されることにより、不具合への対処完了または未完了を含む対処情報も同時に前記記憶手段に記憶されることを特徴とする保全評価システム。
【請求項2】
機械・装置を分解点検することにより保全するための保全評価システムにおいて、
前記機械・装置に対する複数の点検項目用データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶した点検項目用データを呼び出して点検項目及び点検結果チェック欄を含むように表形式に展開して表示する表示手段と、
前記表示手段に表示した点検結果チェック欄に点検結果を分解点検の作業者が入力するための入力手段と、
前記入力手段による入力結果を点検結果データとして前記記憶手段に蓄積して記憶させる点検結果データ蓄積手段と、
前記点検項目のそれぞれに対して予め設定した評価レベルと前記点検結果チェック欄の点検結果とに基づいて算出した保全評価レベル値に基づいて保全評価を判定する判定手段と、
前記判定手段によって判定した保全評価結果を出力する出力手段と、
を備え、
前記記憶手段は、前記点検項目毎の前記評価レベルとして複数段階に区分した評価レベル値を記憶しており、
前記判定手段は、前記入力手段を用いて分解点検の作業者が入力した前記点検結果チェック欄の点検結果に対応する前記点検項目毎の前記評価レベル値を、過去に行った分解点検も含めて累積した累積値を算出するとともに、前記評価レベル値が所定値以上に設定されている前記点検項目に対応する前記点検結果チェック欄が、所定個数以上チェックされた場合、所定の保全評価判定結果を前記出力手段に出力させ、
前記判定手段は、さらに、前記機械・装置の点検周期の見直し、点検レベルの見直し、の少なくとも1つを含む情報又はデータを所定の保全評価判定結果として前記出力手段に出力させ、
前記表示手段は、該当する機械・装置に対して自動的に選定された第1のチェック欄と第2のチェック欄とを含む前記点検結果チェック欄を表示し、前記第1のチェック欄は、前記作業者が点検で不具合を発見したとき入力する欄であり、前記第2のチェック欄は、前記作業者が前記不具合の対処が完了したとき入力する欄であり、前記第2のチェック欄は、前記第1のチェック欄に不具合を示す表記がなされると同時に不具合を示す表記がなされ、前記不具合の対処が完了したとき前記作業者により前記不具合の表記が削除されることにより、不具合への対処完了または未完了を含む対処情報も同時に前記記憶手段に記憶されることを特徴とする保全評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械・装置を点検して保全する保全評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リアルタイム系データベースからのオンライン情報を元に生成した機能故障モード影響解析(FMEA:Failure Mode and Effects Analysis)シートを使用した保全評価システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この保全評価システムは、FMEAシートに、機械・装置の特定、保全計画の立案、予防保全及び事後保全の実施からなる保全機能等を加えることにより、リアルタイム系データベースからオンラインで故障情報を取り込む。これにより、それぞれの対処方法を選択方式により入力するインターフェースを介して自動的に故障データベースを生成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−4219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した保全評価システムは、FMEAシート生成部で生成した保全データに基づいて、各機器の運転状態のモニタリングや運転信号の積算を行うとともに、故障発生時にはコメントの記入を考慮して真因追究を行う。これにより、機械・装置の交換時期などの保全情報をプロセス監視システムに表示するようにしている。
【0006】
したがって、故障データベースそのものは自動的に生成してはいるものの、実際には、機械・装置の交換時期などは現場の作業者(以下、「作業者」と称する。)による高度な判断を必要としており、機械・装置そのものの交換の要否判定、点検周期や点検レベルの変更判定等の保全評価を効率的に判定するものではなかった。
【0007】
例えば、作業者がプラント設備の点検作業現場において、プラント設備に使用されている圧力伝送器、バタフライ弁、その他各種調節計といった機械・装置が点検対象(故障対象)となっていた場合、作業者は、その機械・装置を点検し、必要に応じて分解作業を行って故障要因となる部品の交換を行う。この際、通常の点検作業(故障修理作業)にあっては、作業者は単に部品交換の有無の判断だけを作業現場で行っていた。
【0008】
このため、交換対象部品の重要度や基準となる交換時期との差、その他の各種要因等を考慮して、機械・装置そのものを交換した方が良いのか、点検周期を速めた方が良いのか、点検レベルを高くした方が良いのか、などの保全評価を客観的に効率よく判定し、その判定結果を作業者や管理者或いは顧客に提示するものではなかった。
【0009】
そこで、本発明は、上述したような従来の問題を解決するためになされたもので、保全評価を効率的に判定することができる保全評価システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る保全評価システムは、上記課題を解決するため、機械・装置を分解点検することにより保全するための保全評価システムにおいて、前記機械・装置に対する複数の点検項目用データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶した点検項目用データを呼び出して点検項目及び点検結果チェック欄を含むように表形式に展開して表示する表示手段と、前記表示手段に表示した点検結果チェック欄に点検結果を分解点検の作業者が入力するための入力手段と、前記入力手段による入力結果を点検結果データとして前記記憶手段に蓄積して記憶させる点検結果データ蓄積手段と、前記点検項目のそれぞれに対して予め設定した評価レベルと前記点検結果チェック欄の点検結果とに基づいて算出した保全評価レベル値に基づいて保全評価を判定する判定手段と、前記判定手段によって判定した保全評価結果を出力する出力手段と、を備え、前記記憶手段は、前記点検項目毎の前記評価レベルとして複数段階に区分した評価レベル値を記憶しており、前記判定手段は、前記入力手段を用いて分解点検の作業者が入力した前記点検結果チェック欄の点検結果に対応する前記点検項目毎の前記評価レベル値を、過去に行った分解点検も含めて累積した累積値を算出するとともに、前記評価レベル値が所定値以上に設定されている前記点検項目に対応する前記点検結果チェック欄が、過去に行った分解点検も含めて所定個数以上チェックされた場合、或いは、前記累積値が所定値以上に達した場合に、所定の保全評価判定結果を前記出力手段に出力させ、前記判定手段は、さらに、前記機械・装置の点検周期の見直し、点検レベルの見直し、の少なくとも1つを含む情報又はデータを所定の保全評価判定結果として前記出力手段に出力させ、前記表示手段は、点検対象の該当する計装機器に対して自動的に選定された第1のチェック欄と第2のチェック欄とを含む前記点検結果チェック欄を表示し、前記第1のチェック欄は、前記作業者が点検で不具合を発見したとき入力する欄であり、前記第2のチェック欄は、前記作業者が前記不具合の対処が完了したとき入力する欄であり、前記第2のチェック欄は、前記第1のチェック欄に不具合を示す表記がなされると同時に不具合を示す表記がなされ、前記不具合の対処が完了したとき前記作業者により前記不具合の表記が削除されることにより、不具合への対処完了または未完了を含む対処情報も同時に前記記憶手段に記憶されることを特徴とする。
【0011】
この構成により、本発明に係る保全評価システムにおいては、保全する機械・装置に対する複数の点検項目用データが記憶手段に記憶され、記憶手段に記憶した点検項目用データが表示手段に呼び出されて点検項目及び点検結果チェック欄を含む表形式に展開して表示され、表示手段に表示した点検結果チェック欄に表示手段を用いて点検結果が作業者により入力され、入力手段による入力結果が点検結果データ蓄積手段により点検結果データとして記憶手段に蓄積して記憶される。これにより、判定手段は、点検項目のそれぞれに対して予め設定した評価レベルと点検結果チェック欄の点検結果とに基づいて算出した保全評価レベル値に基づいて保全評価を判定する。さらに、その判定結果である保全評価結果は出力手段により出力される。
【0012】
なお、ここでの出力には、例えば、表示手段に判定結果を表示することができることに加え、例えば、電気通信回線を通じてサーバ或いは端末装置にデータ転送する場合等が含まれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、保全評価を効率的に判定することができる保全評価システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る保全評価システムの概略構成図である。
図2】実施形態に係る保全評価システムにおける点検の点検項目の表示画面である。
図3】実施形態に係る保全評価システムの対象となる機械・装置の一例としての空気式差圧伝送器の要部の分解斜視図である。
図4】実施形態に係る保全評価システムの対象となる設備を構成する機械・装置の評価レベル値と算出結果とを示す表示画面である。
図5】実施形態に係る保全評価システムの対象となる設備を構成し不具合のある同一機械・装置の評価レベル値と個数を示めすグラフである。
図6】実施形態に係る保全評価システムの点検作業のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る保全評価システムを保全評価システム1に適用した実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1に示すように、実施形態に係る保全評価システム1は、管理事務所等に設置するとともに保全データベース11を格納したサーバ12と、現場の作業者(以下、単に「作業者」と称する)が携帯して作業現場で使用する携帯情報端末13と、を備えている。管理者等によって管理されるサーバ12と作業者が使用する携帯情報端末13とは、社内イントラネット回線やインターネット回線等の電気通信回線を通じて双方にデータの送受信が可能となっている。
【0017】
この保全評価システム1は、例えば、作業現場であるプラント設備に使用されている圧力伝送器、バタフライ弁、その他各種調節計といった機械・装置(以下、「計装機器」と称する)を保全対象としている。その計装機器を所定の周期或いは不具合の発生により点検・修理・整備等のメンテナンス(以下、特に限定しない限り「点検」で総称する)を行うことで、過去の点検履歴を含み蓄積された点検結果データを利用しつつ、最適な保全評価を行うものである。
【0018】
実施形態に係る保全データベース11は、サーバ12のコンピュータ装置14が備える記憶手段としての大容量記憶装置(HDD)に記憶されている。保全データベース11は、本発明に係る保全評価システム1における計装機器毎に複数の点検項目用データや図面データを含んでいる。また、保全データベース11は、計装機器の点検後の点検結果データを点検項目用データの一部として蓄積(又は更新)する点検データ蓄積手段を兼ねている。
【0019】
したがって、サーバ12は、新たな計装機器に対する保全データベース11をモニタ装置15の表示画面15aに表示しつつ作成することができるとともに、既に作成済みの計装機器に対する保全データベース11の変更・修正・更新を含めた管理が可能となっている。
【0020】
なお、サーバ12は所謂パーソナルコンピュータを用いており、コンピュータ装置14の大容量記憶装置には、本発明の保全管理システムを実現するためのプログラムソフトがインストールされており、制御回路(CPU)を判定手段として用いることができ、ROMやRAMを記憶手段の一部として用いることができるようになっている。
【0021】
なお、保全データベース11は、例えば、コンパクトディスク、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ディジタルビデオディスク、磁気テープ、外付けハードディスク等の各種メディア等に格納したものでもよい。
【0022】
保全データベース11には、作業現場でなされた点検経過や点検結果を含む点検結果データが、作業者によって携帯情報端末13により入力され、電気通信回線を通じた出力により蓄積されるようになっている。
【0023】
なお、保全データベース11は、管理事務所が複数箇所に設置されているときには、各事務所毎に設定した端末機で利用することができる。この際、保全データベース11は、任意の一つのサーバ12をメインサーバとし、電気通信回線を通じてデータの送受信を可能とすることができる。これにより、1箇所の事務所のサーバ12をメインサーバとして保全データベース11のデータを共有することができ、全現場事務所の点検結果データを一元化して蓄積することができる。
【0024】
また、保全データベース11は、インターネット上のコアデータベースを用いてデータの送受信を行うようにしてもよい。このコアデータベースには、保全データベース11のバックアップとしての機能も具備させることができる。
【0025】
サーバ12は、具体的なハードウェア構成を図示しないが、制御回路であるCPU、内蔵メモリとしての大容量記憶装置(HDD)、ROM、RAM等を含み、さらに、A/D変換器などを含む入力インターフェース回路と、ドライバやリレースイッチを含む出力インターフェース回路とを含んで構成されている。
【0026】
サーバ12は、ROMや大容量記憶装置に格納された処理プログラムに従って計算処理を実行する処理コンピュータ、例えば、同時に複数の処理を並行して行う、いわゆるマルチタスク処理コンピュータで構成されている。このサーバ12は、複数のタスク(プロセス)を切り替えて実行することができようになっている。
【0027】
サーバ12は、携帯情報端末13により入力された点検結果データに基づいて計算処理を行うようになっている。例えば、サーバ12は、保全データベース11の一部情報として、計装機器の部品毎の評価レベルであって、この評価レベルに対応するよう複数段階に区分して予め数値化された評価レベル値を用いる。この評価レベル値は、計装機器に不具合が発生した場合に、計装機器の全体としての機能への影響や、この計装機器を設置したプラント設備全体への影響、不具合がより悪化する進行の程度、劣化の程度などの重要度を総合的に考慮して、複数段階に区分して予め設定されている。
【0028】
具体的には、評価レベルが極めて軽微(例えば、評価レベル段階1)である場合、例えば、部品交換等を行うことにより、その他の部品に不具合がなければ計装機器の機能を初期レベルと同等に担保することができる部品或いは不具合(例えば、ボルトの弛み)等である場合の評価レベル値を“1”とする。
【0029】
また、評価レベルが軽微(例えば、評価レベル段階2)である場合、例えば、部品交換等を行うことにより、その他の部品に不具合がなければ計装機器の機能を充分に担保することができる部品或いは不具合等である場合の評価レベル値を“2”とする。
【0030】
また、評価レベルがやや重大(例えば、評価レベル段階3)である場合、例えば、部品交換等を行うことにより、その他の部品の不具合等との兼ね合いによっては計装機器の機能が低下する方向に悪影響を受ける部品或いは不具合等である場合の評価レベル値を“3”とする。
【0031】
また、評価レベルが極めて重大(例えば、評価レベル段階4)である場合、例えば、部品交換等を行ったとしても、プラント設備の稼働率が下がる程度の悪影響を与えてしまう部品或いは不具合等である場合の評価レベル値を“4”とする。
【0032】
そして、評価レベルが致命的(例えば、評価レベル段階5)である場合、例えば、プラント設備の稼働に明らかな悪影響を与えかねない不具合である場合、部品交換ができない場合、耐用年数が過ぎている場合、の評価レベル値を“5”とする。
【0033】
なお、上述した評価レベル段階及び評価レベル値は、単なる一例であって、実際の評価レベル段階及び評価レベル値を示すものでも基準となるものではなく、計装機器の種類等によって適正に設定される。
【0034】
また、以下の説明においては、説明の便宜上、部品交換を対象として説明するが、実際においては、部品交換に限るものではなく、例えば、ボルト・ナットの緩み解消等の不具合の解消等がある。また、評価レベル段階と評価レベル値とを数字的に対応させて説明するが、実際においては、評価レベル段階が最低段階の1であっても評価レベル値が“1”であるとは限らない。
【0035】
そして、点検作業の結果、評価レベル値1の部品交換数が2個、評価レベル値2の部品交換数が3個、評価レベル値3の部品交換数が5個、評価レベル4の部品交換数が5個、評価レベル5の部品交換数が1個であった場合には、評価レベル段階1〜5の全ての評価レベル値の合計としては、以下のようになる。
【0036】
(1×2個)+(2×3個)+(3×5個)+(4×5個)+(5×1個)=48
となり、評価レベル値の算出結果は48となる。
【0037】
携帯情報端末13には、例えば、タッチパネル方式の表示画面を表示手段として備えたタブレット型コンピュータ(タブレット端末)やスマートフォン等の携帯端末を用いており、専用のアプリケーションが予めインストールされている。これにより、サーバ12から点検対象となる計装機器の保全データベース11を取得し、作業現場において使用することができる。
【0038】
携帯情報端末13は、通信用のインターフェースを備え、表示画面13aにタッチパネル方式を採用することにより、表示画面13aを入力手段として兼用するようになっている。この携帯情報端末13は、インターフェースを介してサーバ12にアクセスして保全データベース11を取得するとともに、その保全データベース11を内蔵メモリに記憶する。
【0039】
作業者が携帯情報端末13のアプリケーションを起動させると、CPUは内蔵メモリから取得した保全データベース11を読み出して表示画面13aに所定の表形式状態に展開して表示する。作業者は、表示画面13aのタッチパネルにより点検結果を入力する。その点検後の点検結果データは、新たな保全データベース11として内蔵メモリに記憶され、インターフェースを介してサーバ12に送信される。なお、上述したサーバ12による評価レベル値の算出を、この携帯情報端末13のCPUで行うことも可能である。
【0040】
以下、携帯情報端末13の表示画面13aにおける点検作業時の表示例を説明する。携帯情報端末13の表示画面13aには、取得した保全データベース11に基づいて点検作業に必要な種々の情報が表示されるようになっている。
【0041】
この情報としては、例えば、図2に示すように、点検作業の際に点検対象である計装機器を点検するための点検項目及び点検項目に対応する入力欄や、図3に示す計装機器の分解図等がある。この点検項目や分解図面を表示画面13aに表示することにより、点検項目の漏れが低減され、点検作業者(以下、単に「作業者」と称する)により的確な点検が行われるようになる。
【0042】
なお、図2に示すように、表示画面13aの表示は、タブ形式で表示画面の切り替えが可能となっており、図2においては点検項目タブを選択した状態、図3においては分解図Aタブを選択した状態である。また、例えば、図3に示した分解図Aの表示において、例えば、所望の部品をタッチすると、保全データベース11から品番等の補助情報や点検内容・方法等を呼び出してコメント表示することができる。
【0043】
さらに、例えば、図3に示した分解図Aの表示において、例えば、所望の部品を連続タッチ(ダブルタッチ)すると、点検項目タブの表示に切り替えられるとともに、該当する部品の点検項目欄の表示を反転表示することができる。
【0044】
また、図2に示すように、点検項目タブを選択した状態の表示画面13aには、各点検項目毎に「処理前」欄及び「処理後」欄の各入力欄が升目状に設けられており、該当する升目をタッチすることにより「×」マーク(「レ」マーク等でもよい)を入力するようになっている。「処理前」欄の「×」マークは、作業者により、計装機器の不具合を発見した時点で入力されたことを示す。この際、「処理後」欄においても「×」マークが同時に併記される。この「処理後」欄の「×」マークは、作業者により、計装機器の不具合の対処が完了した時点で削除される。なお、「処理後」欄の「×」マークは、作業者により、計装機器の不具合の対処が完了した時点で入力するようにしてもよい。
【0045】
また、この点検項目は、項目毎にその重要性の程度を考慮した重み付けである評価レベル値を表示するようにしてもよい。図2に示す点検項目の表示画面は、携帯情報端末13の表示画面13aにも同様に表示される。表示画面13aに表示された重み付けを参考にして、作業者による計装機器の評価レベル段階を選定する参考として使うようにしてもよい。
【0046】
なお、サーバ12のモニタ装置15(別のモニタ装置でもよい)に、例えば、作業現場に設置した図示しないカメラや携帯情報端末13に取り付けた図示しないカメラを用い、その映像を表示画面15aに表示してもよい。
【0047】
モニタ装置15には、作業者が所持する携帯情報端末13の表示画面13aにおける表示と同期した画像を表示画面15aに表示させることができ、作業現場から離れた場所で作業者の点検作業を管理者等がサポート等することもできる。
【0048】
なお、図3に示した分解斜視図は、保全データベース11に蓄積された計装機器としての空気式差圧伝送器の下半分(受圧体)の分解斜視図を表示しており、外観タブを選択している状態では空気式差圧伝送器の外観斜視図、本体内部タブを選択している状態では空気式差圧伝送器の断面図、分解図Aタブを選択している状態では空気式差圧伝送器の上半分(増幅部)の分解斜視図、をそれぞれ表示することができる。この際、これらの他、例えば、プラント装置全体の経路図等や標準仕様、特性、部品型名やコード一覧等の各種情報を表示することができる。
【0049】
なお、図3に示した計装機器の分解斜視図は、流量、液位、圧力などの測定に用いられ、これらのプロセス変量を所定の空気圧信号に変換する空気式差圧伝送器30の下半分を分解した状態の斜視図を示している。
【0050】
具体的には、この空気式差圧伝送器30は、ボディ31、カバー32、ダイヤフラムカプセル33、高圧側及び低圧側の各接続口を構成するコネクタ34,35、プレート36、ガスケット37,38,39,41、オーリング42、ボルト51,52,53を含んで構成されている。なお、上記各構成の名称等は参照用の一例であって、ダイヤフラムカプセル33を除き、図2に示す項目の部品名等と必ずしも一致したものではない。また、具体的な構成は機能の説明は省略する。
【0051】
また、このモニタ装置15は、サーバ12の計算処理の内容や計算結果を表にして表示するようになっている。例えば、図4に示すように、評価レベル段階に対応した「不具合の程度」の欄と、評価レベル値を示す「5計 1−4 5 4 3 2 1」欄として表示し、評価レベル値の各数値の列の下方に各評価レベル値の不具合個数と算出値(保全評価レベル値)とを表示する。なお、「5計 1−4 5 4 3 2 1」欄の各数字の表示は評価レベル段階であってもよい。
【0052】
例えば、図4の破線の楕円で囲った行の場合、評価レベル値「1」の下方列は2(個又はヶ所)、評価レベル値「2」の下方列は3、評価レベル値「3」の下方は5、評価レベル値「4」の下方は5、評価レベル値「5」の下方は1、となっている。
【0053】
また、図4の「1−4」欄は、各評価レベル段階1〜4までの評価レベル値と数とを各列で乗算したうえで、各列の乗算結果を加算した加算結果を算出値として数値表示している。また、図4の「5計」欄は、評価レベル値5の乗算結果を算出値として数値表示している。
【0054】
なお、この際の算出値は、過去に点検を行い、評価レベル値の入力があった場合には累積値となる。
【0055】
さらに、モニタ装置15は、破線の楕円の右側に示すように、「点検レベル」の欄と、「点検周期」の欄とを表示するようになっている。
【0056】
この点検レベルは、例えば、点検レベル「A」は分解等を含む精密点検を行うもの、点検レベル「B」は電気信号に入出力(信号レベル)を確認するもの、、点検レベル「C」は外観目視を行うもの、点検レベル「なし」は点検の対象外を表している。また、点検周期は、例えば、点検周期「6」は6か月周期の点検がよい場合、点検周期「12」は12か月周期で点検を行ってよい場合、点検周期「24」は24か月周期で点検を行う場合、を表している。この点検周期の長短は、保全評価システム1の管理者などのユーザーにより適宜、計装機器に応じて設定及び変更可能である。また、これら点検レベル及び点検周期は、サーバ12(のCPU)又は携帯情報端末13(のCPU)を判定手段とする保全評価の一つとして用いることができる(詳細は後述する)。
【0057】
さらに、図5に示すように、モニタ装置15の表示画面15aには、評価レベル値を点数表示し、横軸に点検実施日を表し、縦軸に数を表して、点検実施日における保全評価の一つとして棒グラフで表示する。
【0058】
ユーザーは、図4図5の表示を参照して、不具合の発生状況や保全評価を的確に把握することができ、点検周期や点検レベルの設定・変更をきめ細かく行うことができる。
【0059】
例えば、サーバ12のCPU(又は携帯情報端末13のCPU)は、破線の楕円で示す計装機器の評価レベル値の算出結果である「1−4」欄の43や、「5計」欄の5を参照して、予め設定した各点検レベル毎の基準値を参照し、例えば、点検レベル「C」から点検レベル「A」に変更する。逆に、評価レベル値の算出結果である「1−4」欄の数値が前回よりも低くなって他の点検レベルの基準値になった場合には、例えば、点検レベル「A」を点検レベル「C」に変更する。同様に、サーバ12のCPU(又は携帯情報端末13のCPU)は、破線の楕円で示す計装機器の評価レベル値の算出結果である「1−4」欄の43や、「5計」欄の5を参照して、予め設定した各点検周期毎の基準値を参照し、例えば、点検周期「6」から点検周期「12」に変更する。逆に、評価レベル値の算出結果である「1−4」欄の数値が前回よりも低くなって他の点検周期の基準値になった場合には、例えば、点検周期「12」を点検周期「6」に変更する。
【0060】
次いで、実施形態に係る保全評価システム1を用いた点検作業ルーチンの一例について、図6を参照して説明する。
【0061】
まず、点検対象の設備を点検しようとする作業者は、図1に示す現場事務所のサーバ12の稼働を確認するとともに、点検工具、点検用計測器などの点検対象となる計装機器の点検に必要なものを準備了する(ステップS11)。
【0062】
次いで、作業者は、図1に示す携帯情報端末13を用い、サーバ12にアクセスして保全データベース11から点検対象となる計装機器の点検に必要な最新のデータを取得し、内部メモリに記憶する(ステップS12)。
【0063】
この際、携帯情報端末13は、サーバ12へのアクセスや認証、ダウンロードアプリケーション等を起動させる。一方、サーバ12は、携帯情報端末13のアクセスや認証、アップロードアプリケーション等を起動させ、必要なデータを保算データベース11から携帯情報端末13にアップロードする。なお、この際の電気通信回線手段は公知の技術を用いて任意である。また、アップロード・ダウンロード技術に関しても公知の技術を用いることができる。
【0064】
そして、作業者は、携帯情報端末13のアプリケーションを点検現場で立ち上げ、表示画面13aの入力手段としてのタッチパネル方式を利用し点検対象の計装機器の資料、すなわち、図2に示す点検項目や図3に示す分解斜視図を含む点検対象となる計装機器の点検に必要なデータを携帯情報端末13の表示画面13aに表示させる(ステップS13)。
【0065】
この際、携帯情報端末13のCPUは、作業者によるアプリケーション操作に準じて所定の処理を行い、、内部メモリに記憶した保全データベース1からダウンロードしたデータに基づいて、表示画面13aに表示させる。
【0066】
続いて、作業者は、表示画面13aに表示された点検対象の計装機器の資料、点検項目、図面などのデータを参照しながら、外観点検、分解点検、清掃などのメンテナンスを実施する(ステップS14)。
【0067】
そして、作業者は、点検対象の計装機器に不具合があったか否かをチェックする(ステップS15)。
【0068】
点検対象の計装機器に不具合があったときは、交換や修理などの不具合に応じた処置を実施する(ステップS16)。
【0069】
点検対象の計装機器に不具合がなかったときは、ステップS17に進める。
【0070】
作業者は、分解点検、清掃などのメンテナンスを行った計装機器の組み付けを実施する(ステップS17)。
【0071】
続いて、作業者は、携帯情報端末13を用い、図2に示す点検項目タブを選択して点検結果を入力する(ステップS18)。
【0072】
この際、携帯情報端末13のCPUは、作業者による点検項目毎の入力結果(チェック結果)に応じて、内部メモリに記憶した保全データベース1からダウンロードしたデータを点検結果データとして更新し、内部メモリに記憶する。
【0073】
そして、作業者は、サーバ12にアクセスし、作成した点検結果データを携帯情報端末13からサーバ12を介して保全データベース11に送信出力する(ステップS19)。
【0074】
この際、サーバ12は、受信した点検結果データを保全データベース11の該当するデータとして更新して蓄積する。
【0075】
この送信出力の完了をもって作業者は、現場作業を終了する(ステップS20)。
【0076】
一方、管理者は、サーバ12を操作して、保全評価を実行させる。
【0077】
サーバ12のCPUは、更新した点検結果データを用い、主として評価レベル値の算出を行う。そして、その算出結果において、評価レベル1〜4の合計の算出結果(図2の「1−4」欄の数値)が所定値(以下、「基準値」と称する)として、例えば、基準値「0」の場合には「なし」と判定し、基準値「1〜10」の場合には点検レベル「C」と判定し、基準値「11〜30」の場合には点検レベル「B」と判定し、基準値「31以上」の場合には点検レベル「A」と判定する。
【0078】
また、サーバ12のCPUは、例えば、評価レベル5に該当するものが1つでもあった場合には、評価レベル1〜4の合計の算出結果に拘わらず、点検レベル「A」と判定する。さらに、サーバ12のCPUは、例えば、評価レベル5に該当するものが1つでもあった場合には、点検レベル「C]を点検レベル「B」又は点検レベル「B]を点検レベル「A」のように一つ上の点検レベルに変更する判定を行う。
【0079】
なお、管理者は、この判定結果を参照し、プラント設備の規模や他の計装機器との相互関係、稼働率等を含めた総合判断により、点検レベルをより詳細に設定・変更することも可能である。これにより、管理者は、例えば、契約しているプラント設備の担当者と点検レベルの変更や計装機器そのものの交換等の相談を後日行うことができる。
【0080】
したがって、この場合においては特許請求の範囲の出力手段は、携帯情報端末13からサーバ12に変更結果データをアップロードするものとする。
【0081】
また、上述した判定は、作業現場において、作業者の操作によって携帯情報端末13のCPUで行わせることも可能である。このような場合、作業者は、作業現場において、例えば、契約しているプラント設備の担当者と点検レベルの変更や計装機器そのものの交換等の相談を直接行うことができる。
【0082】
したがって、この場合においては特許請求の範囲の出力手段は、表示画面13aに図4及び図5に示した結果を表示するものとする。
【0083】
また、上記実施の形態では、保全評価の一例として、点検レベルを例に示したが、点検周期においても、同様の判定を行うことができる。なお、点検周期は点検レベルと必ずしもリンクして判定結果が変更されるとは限らない。
【0084】
また、このような点検レベルや点検周期が変更された場合には、重み付としての評価レベル値を割り増し(例えば、20%アップ)したり、点検レベルや点検周期の判定用の基準値(所定値)を割り引き(例えば、20%ダウン)してもよい。
【0085】
さらに、点検レベルや点検周期の表示の他、算出結果の数値に応じて計装機器の交換を推奨するメッセージを表示画面15a(13a)に表示することも可能である。
【0086】
このように、実施形態に係る保全評価システム1は、
実施形態に係る保全評価システム1は、機械・装置に対する複数の保全データベース11を記憶する記憶手段(コンピュータ装置14のメモリ・携帯情報端末13のメモリ)と、記憶手段に記憶した保全データベース11を呼び出して点検項目及び点検結果チェック欄を含むように表形式に展開して表示する表示画面13a(15a)と、表示画面13aに表示した点検結果チェック欄に点検結果を作業者が入力するための表示画面13a(サーバ12のマウス・キーボード)と、表示画面13aによる入力結果を点検結果データとして記憶手段に蓄積して記憶させる点検結果データ蓄積手段(コンピュータ装置14のCPU・携帯情報端末13のCPU)と、点検項目のそれぞれに対して予め設定した評価レベルと点検結果チェック欄の点検結果とに基づいて算出した保全評価レベル値に基づいて保全評価を判定する判定手段(コンピュータ装置14のCPU・携帯情報端末13のCPU)と、判定手段によって判定した保全評価結果を出力する出力手段(携帯情報端末13からサーバ12への点検結果データのアップロード・表示画面13aへの表示)と、を備えることにより、保全評価を効率的に判定することができる。
【0087】
ところで、上記実施の形態に係る保全評価システム1では、計装機器の評価レベルを5段階で区分した評価レベル値の場合について説明した。しかしながら、本発明に係る保全評価システムは、計装機器の評価レベルを5段階以外の区分で表示するようにしてもよい。例えば、この評価レベルを3段階で表示するようにしてもよく、10段階で表示するようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施の形態に係る保全評価システム1では、点検周期の表示については、点検周期「6」は6か月周期、「12」は12か月周期、「24」は24か月周期とした場合について説明した。しかしながら、本発明に係る保全評価システムは、点検周期について、前述の周期と異なったもので表してもよい。例えば、点検周期「3M」を3か月周期、点検周期「6M」を6か月周期、点検周期「1Y」を1年周期、点検周期「2Y」を2年周期、点検周期「4Y」を4年周期のように表示してもよい。
【0089】
以上のように、本発明に係る保全評価システムは、保全評価を効率的に判定することができるという効果を有し、保全評価システム全般に有用である。
【符号の説明】
【0090】
1 保全評価システム
11 保全データベース
12 サーバ
13 携帯情報端末
13a 表示画面(表示手段・入力手段)
14 コンピュータ装置
15 モニタ装置
15a 表示画面(表示手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6