(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388501
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】スラリー分散システム
(51)【国際特許分類】
B01F 5/10 20060101AFI20180903BHJP
B01F 7/16 20060101ALI20180903BHJP
B01F 15/06 20060101ALI20180903BHJP
B01F 3/12 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
B01F5/10
B01F7/16 F
B01F15/06 Z
B01F3/12
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-133279(P2014-133279)
(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2016-10756(P2016-10756A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年4月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】393028357
【氏名又は名称】シブヤマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100086852
【弁理士】
【氏名又は名称】相川 守
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】竹中 正司
(72)【発明者】
【氏名】関本 峰幸
(72)【発明者】
【氏名】坂口 淳
【審査官】
小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−166531(JP,A)
【文献】
特開2010−030797(JP,A)
【文献】
特開平09−122466(JP,A)
【文献】
実開昭60−046137(JP,U)
【文献】
特開2002−069343(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/111218(WO,A1)
【文献】
国際公開第01/047812(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/00−15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を液体に分散させてスラリー化するスラリー分散システムにおいて、
粉体と液体を混合させた混合物を収容する収容タンクと、収容タンクから供給される混合物を攪拌して送り出す分散装置と、分散装置から送り出された混合物を収容タンクに戻す循環管路と、循環管路から分岐して貯留タンクに接続される分岐管路と、分散装置から送り出された混合物を収容タンクと貯留タンクのいずれかに流通させる流路切替手段と、分散装置から循環管路における分岐管路の分岐点までの間に配置されて循環管路を流通する混合物を冷却する冷却手段とを備え、
分散装置から送り出された混合物を冷却手段で冷却しつつ循環管路で循環させて粉体を液体に分散させた後、流路切替手段を切り替えて分散装置から送り出された混合物を冷却手段で冷却しつつ貯留タンクに送るよう構成され、
上記分散装置は、回転して混合物を分散しスラリー化するとともに、混合物を送り出す推進力を発生させるロータを備えて、上記流路切替手段を切り替えて分散装置から送り出された混合物を貯留タンクに送る際は、冷却手段による冷却温度を収容タンクに戻す場合よりも低くするとともに、上記ロータの回転速度を低下させて分散装置から送り出される混合物の送出流量を収容タンクに戻す場合よりも少なくする
ことを特徴とするスラリー分散システム。
【請求項2】
冷却手段から貯留タンクに送られる混合物の温度を検出する温度検出手段を備え、混合物が所定温度以下に冷却されない場合は、流路切替手段を切り替えて収容タンクに戻すことを特徴とする請求項1に記載のスラリー分散システム。
【請求項3】
粉体が酸化アルミニウム粉末であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスラリー分散システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体を液体に分散させてスラリー化するスラリー分散システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
導電性材料等の粉体を液体に分散させてスラリー化する発明はすでに知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、複数の混合及び分散装置により構成される混合設備1が開示されている。この混合設備1では、成分を溶解させるのに用いられる液体が液体供給部5から第1の混合及び分散装置2に供給され、同時に、固体の成分、すなわちバインダが、別の供給部7から調量装置8を介して供給され、第1の混合及び分散装置2に導入され、この第1の混合及び分散装置2において、第1の混合プロセスが連続的に実施される。
【0003】
第1の混合プロセスにおいて生じた混合物は、緩衝又は中間貯蔵容器12に送られ、攪拌工具13により混合状態を維持して第2の混合及び分散装置3に供給される。この第2の混合及び分散装置3には、固形の成分のための供給部7から活性材料及び導電性材料が供給され、第1の混合及び分散装置2の混合結果物と再び集中的に混合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2014−509057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載された発明では、複数の混合及び分散装置を有し、先ず、第1の混合及び分散装置に液体とバインダを供給して混合プロセスを行った後、この混合物を第2の混合及び分散装置に供給し、さらに、この第2の混合及び分散装置に固体成分を供給して再び混合プロセスを行う。また、第3の混合及び分散装置に混合物を送って混合させることも記載されている。このような特許文献1に記載された発明の構成では、十分な分散化を行い完全にスラリー化することは困難である。また、複数の分散装置を介して連続的に分散化を行うと、混合物の温度が上昇しバインダ等が変質してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、粉体を液体に分散させてスラリー化するスラリー分散システムにおいて、粉体と液体を混合させた混合物を収容する収容タンクと、収容タンクから供給される混合物を攪拌して送り出す分散装置と、分散装置から送り出された混合物を収容タンクに戻す循環管路と、循環管路から分岐して貯留タンクに接続される分岐管路と、分散装置から送り出された混合物を収容タンクと貯留タンクのいずれかに流通させる流路切替手段と、分散装置から循環管路における分岐管路の分岐点までの間に配置されて循環管路を流通する混合物を冷却する冷却手段とを備え、分散装置から送り出された混合物を冷却手段で冷却しつつ循環管路で循環させて粉体を液体に分散させた後、流路切替手段を切り替えて分散装置から送り出された混合物を冷却手段で冷却しつつ貯留タンクに送る
よう構成され、上記分散装置は、回転して混合物を分散しスラリー化するとともに、混合物を送り出す推進力を発生させるロータを備えて、上記流路切替手段を切り替えて分散装置から送り出された混合物を貯留タンクに送る際は、冷却手段による冷却温度を収容タンクに戻す場合よりも低くするとともに、上記ロータの回転速度を低下させて分散装置から送り出される混合物の送出流量を収容タンクに戻す場合よりも少なくすることを特徴とするものである。
【0009】
また、第
2の発明は、前記第
1の発
明において、冷却手段から貯留タンクに送られる混合物の温度を検出する温度検出手段を備え、混合物が所定温度以下に冷却されない場合は、流路切替手段を切り替えて収容タンクに戻すことを特徴とするものである。
【0010】
また、第
3の発明は、前記第1の発明
または第
2の発明において、粉体が酸化アルミニウム粉末であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスラリー分散システムは、粉体と液体を混合させた混合物を収容する収容タンクと、収容タンクから供給される混合物を攪拌して送り出す分散装置とを循環管路を介して接続し、混合物を循環させるようにしたので、分散装置で繰り返し分散化を行うことができるので、高品質なスラリーを生産することが可能である。しかも、循環管路に冷却手段を設けているので、分散装置を繰り返し通過しても混合物の温度の上昇を抑制することができ、バインダ等の変質を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1はスラリー分散システムの全体の構成を簡略化して示す構成図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0013】
収容タンクに溶剤タンクから溶媒を送り込み、この溶媒に酸化アルミニウム粉末を供給して攪拌するとともに、この収容タンクにバインダ溶解液を供給し、攪拌して混合し混合物を生成する。この混合物を、ステータとロータを有する分散装置に供給し、ロータの回転によってこれらステータとロータの間隙を通過する混合物を分散しスラリー化する。分散された混合物は、循環管路を介して前記収容タンクに還流させ、再び分散装置に供給して分散化を行う。このようにして混合物を循環させて分散装置による分散化を繰り返し行う。循環管路には冷却手段が設けられており、分散化された混合物は循環管路を通過することにより冷却される。また、収容タンクにはジャケットが装着されて冷却水が導入されるようになっており、これらジャケットと冷却手段によって循環管路を循環するスラリーの温度を制御する。
【0014】
循環管路の冷却手段よりも下流側に分岐管路が接続されており、この分岐管路に貯留タンクが連結されている。循環管路と分岐管路との分岐部に、分岐手段としての一対のバルブを設け、一方のバルブを開放するとともに他方のバルブを閉じて、循環管路と分岐管路のいずれかに混合物を送るようになっている。循環管路により混合物を循環させ、前記分散装置で繰り返し分散させてスラリー状態になった混合物を、分岐管路から貯留タンクに送液する。循環管路のクーラーよりも下流側で混合物の温度を検知している温度センサによって、循環している混合物の温度を管理しており、循環時は40℃以下に制御し、分岐管路から貯留タンクに送液する際には、その後の工程で常温処理を行うので、25℃以下に制御する。貯留タンクに送液する混合物の温度が25℃以下になっていないときには、分岐部のバルブを切り替えて、循環管路から収容タンクへ還流させる。
【実施例1】
【0015】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。このスラリー分散システムは(全体として符号1で示す)は、溶剤タンク2からポンプ4により送り出された溶媒が、第1流量計6により自動計量されて収容タンク8へ送液される。この収容タンク8には、送液された溶媒に粉体(この実施例では酸化アルミニウム粉末)が供給されて撹拌された後、バインダ溶解液が供給されて混合される。この粉末とバインダ溶解液との混合物を分散装置10に供給する。分散装置10では、収容タンク8から送られてきた混合物を、攪拌し分散させて送り出す。分散装置10の出口10aは、循環管路12を介して前記収容タンク8に接続されており、攪拌して分散させた混合物を収容タンク8に戻して攪拌した後、再度、分散装置10に送って混合物を攪拌し分散させてスラリー化する。この循環管路12にはポンプ等の混合物の送り手段を備えておらず、分散装置10から送り出された力で循環管路12を循環させるようになっている。
【0016】
循環管路12の途中から分岐して貯留タンク14に接続される分岐管路16が設けられている。循環管路12と分岐管路16との接続部に、流路切替手段としての一対のバルブ18、20が設けられており、これらバルブ18、20の開閉により、混合物を分散装置10から循環管路12および収容タンク8を通して循環させることができ、また、バルブ18、20を切り替えることにより、収容タンク8および分散装置10へ循環させず、貯留タンク14へ送り出すことができる。循環管路12の、分散装置10の出口10aから分岐管路16への分岐部の間に冷却手段22が設けられており、この冷却手段22によって混合物を冷却しつつ循環させ、また、冷却手段22によって冷却しつつ貯留タンク14へ送り出すことができる。この循環管路12の流量は、第2流量計23により計測されており、この実施例では、分散装置10から送り出された混合物を、貯留タンク14へ送る際は、収容タンク8へ戻すときよりも流量を
少なくしている。
【0017】
収容タンク8には、固体成分としての酸化アルミニウム(アルミナ)の粉末を供給するアルミナ供給部24と、バインダ溶解液を供給するバインダ供給部26が設けられており、これらの供給部24、26から、それぞれ酸化アルミニウムおよびバインダ溶解液が供給される。また、この収容タンク8の内部に攪拌翼28が配置されており、モータ30の駆動軸32に連結されて回転され、この収容タンク8内に溶剤タンクから送られてきた溶媒に酸化アルミニウム粉末を供給して撹拌した後、バインダ溶解液を供給する。さらに、収容タンク8の外面には、ジャケット34が装着されており、冷水供給源36からこのジャケット34内に冷水を供給することができる。収容タンク8内の温度を計測する温度計38が設けられており、この温度計38による計測値に応じて、冷水供給配管40のバルブ42を調整してジャケット34に供給する冷却水の量を調整して、収容タンク8内の混合物の温度を調節することができる。このジャケット34には、供給された冷却水を排出する排出管44が接続されている。
【0018】
また、収容タンク8には、その内部を洗浄する洗浄手段が設けられている。この洗浄手段は、前記溶剤タンク2からの溶媒供給配管46に、分岐して接続された洗浄流路48と、この洗浄流路48の先端に取り付けられ、収容タンク8の内部に配置されたシャワーボウル50を備えている。通常運転時には、溶媒供給配管46に設けられたバルブ52を開放するとともに、洗浄流路48のバルブ54を閉鎖して収容タンク8に溶媒を供給する。一方、収容タンク8内の洗浄を行う際には、溶媒供給配管46に設けられたバルブ52を閉鎖するとともに、洗浄流路48のバルブ54を開放してシャワーボウル50に洗浄液を送る。
【0019】
収容タンク8から供給される混合物を分散して送り出す分散装置10は、上側に下向きで配置されたステータ56と、このステータ56の下方に配置され、ステータ56の内部空間に小さい間隙を隔てて嵌合しているロータ58を備えており、モータ60の駆動によりロータ58を回転させつつ、ステータ56とロータ58との間の間隙を混合物を通過させることにより混合物の分散を行ってスラリー化する。ロータ58の回転により出口10aから混合物を送り出す推進力が発生され、モータ60の回転を制御することにより出口10aからの送出流量を調節することができる。
【0020】
冷却手段22には、冷水供給源62から冷水が供給できるようになっており、冷水によって循環管路12を通過する混合物を冷却した後、この冷水は排出管64から排出される。この冷却手段22によって冷却されて循環管路12を流れる混合物の温度を検出する温度検出手段66が設けられている。この温度検出手段66による検出値によって、図示しない制御手段が冷水供給用のバルブ68の開度を制御して循環管路12を流れる混合物の温度を制御する。
【0021】
貯留タンク14は、内部に攪拌翼70が設置されており、モータ72の駆動によってこの攪拌翼70を回転させることにより、次の工程に送るために貯留している混合物の分散状態を維持する。この貯留タンク14には、内部を吸引する吸引手段74が設けられており、貯留タンク14内の真空引きを行うことにより、混合物の泡を除去する。また、貯留タンク14内の圧力を検出する圧力検出手段76が設けられており、この圧力検出手段76の検出値によって貯留タンク14内の圧力を制御している。この貯留タンク14に供給管78が接続されており、ポンプ80によって貯留タンク14から送り出された混合物を塗布工程等の次の工程に送る。
【0022】
以上の構成に係るスラリー分散システムの作動について説明する。溶剤タンク2内の溶媒が、ポンプ4の駆動により溶剤供給配管46を通って収容タンク8へ送られる。このときには、第1流量計6による自動計量送液が行われる。溶媒が送られた収容タンク8には、アルミナ供給部24から酸化アルミニウム粉末が供給され、撹拌翼28の回転によって撹拌され、さらにバインダ供給部26からバインダ溶解液が供給されて混合される。収容タンク8には、冷水が供給されるジャケット34が装着されており、温度計38により混合物の温度を検出しつつ温度管理を行う。
【0023】
収容タンク8内で攪拌され混合された混合物は、分散装置10へ送られ、ステータ56とモータ58の回転によりこのステータ56内で回転するロータ58との間隙を通過することにより分散される。分散されスラリー化した混合物は、分散装置10の出口10aから送り出されて循環管路12を通って収容タンク8に還流する。収容タンク8に還流した混合物は再び攪拌された後、分散装置10に送られて分散され、循環管路12に送られる。この循環流量は第2流量計23により管理されている。
【0024】
循環管路12には冷却手段22が設けられており、循環管路12を流れるスラリー化された混合物を冷却する。この実施例に係るスラリー分散システムでは、混合物が分散装置10の高速回転するロータ58とステータ56との間の間隙を通過して分散されるので、混合物の温度が次第に上昇して、混合物の成分が変質するおそれがあるため、冷却手段22によって冷却して所定以下の温度にコントロールする。この実施例では、循環時の混合物の温度を40度以下に抑えることによりバインダの性質が変化することを防止している。なお、循環する混合物の温度の制御は、この冷却手段22と前記収容タンク8のジャケット34により行われる。
【0025】
分散装置10による分散を繰り返しながら循環させることにより混合物を高分散化してスラリー状にした後、この混合物を貯留タンク14へ送液する。その時には、分岐手段の一対のバルブ18、20を切り替えて、循環管路12の収容タンク8側のバルブ18を閉じるとともに、分岐管路16のバルブ20を開放する。この状態で分散装置10から循環管路12に送り出された混合物を冷却手段22で冷却して分岐管路16から貯留タンク14へ送液する。貯留タンク14に送液する混合物は、その後送られる次の工程では常温での作業が行われるので、循環させながら冷却手段22で25度以下に冷却して送る。なお、このときの分散装置10からの送出流量を収容タンク8に戻す場合よりも
少なくしてロータ58の回転速度を低下させ、混合物の温度上昇を抑えるようにしている。また冷却手段22で冷却した後の循環管路12内の混合物の温度が25度以上の時には、分岐手段の両バルブ18、20を切り替えて、貯留タンク14へ送らずに収容タンク8へ還流させる。なお、流路切替手段としては、一対のバルブ18、20に代えて、循環管路12に分岐管路16が接続される分岐点に三方弁を設けてもよい。
【0026】
貯留タンク14へ送液された混合物は、次の工程に送られる間、攪拌翼70の回転によって攪拌されて高分散状態を維持される。また、吸引手段74によって吸引されて混合物の泡が除去される。その後、貯留タンク14内の混合物を次の工程に送る際には、ポンプ80を駆動して供給管78から塗布工程等の次の工程へ送る。
【符号の説明】
【0027】
8 収容タンク
10 分散装置
12 循環管路
14 貯留タンク
16 分岐管路
18 流路切替手段(バルブ)
20 流路切替手段(バルブ)
22 冷却手段