(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388512
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】糠漬装置
(51)【国際特許分類】
A23B 7/10 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
A23B7/10 D
A23B7/10 F
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-178638(P2014-178638)
(22)【出願日】2014年9月3日
(65)【公開番号】特開2016-52258(P2016-52258A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】397020641
【氏名又は名称】有限会社塚本鑛吉商店
(74)【代理人】
【識別番号】100085257
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 有
(72)【発明者】
【氏名】塚本 正義
【審査官】
田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭53−066460(JP,A)
【文献】
特開平07−095846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B 7/00−9/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
インターネット(Google)
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口するボックス内に糠を充填する糠槽と野菜等の食材を投入する漬物槽を隣接して配置してなり、糠槽の底面には糠のエキス成分を含んだ抽出液が透過する孔が形成され、前記漬物槽の底面には前記糠槽からの抽出液を漬物液として取り込む孔が形成され、前記漬物槽内の漬物液は送液手段によって前記糠槽に戻されることを特徴とする漬物装置。
【請求項2】
請求項1に記載の漬物装置において、前記送液手段は、漬物槽内に上端開口部が位置するエア供給パイプと、上端部が前記糠槽に臨み下端部が前記エア供給パイプよりも大径でこの下端部に前記エア供給パイプの上端が隙間を介して入りこむ液供給パイプとからなり、エアの供給につれて前記隙間から液供給パイプ内に漬物液を引き込み、引き込んだ漬物液をエアの作用で糠槽に送り込むことを特徴とする漬物装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の漬物装置において、前記漬物槽には塩水、アルカリ液及び酸性液の供給配管が接続されていることを特徴とする漬物装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の漬物装置において、前記ボックスは内部を一定温度範囲に保持できる恒温槽であることを特徴とする漬物装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸味、塩加減等を好みに応じて簡単に調整することができる糠漬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糠漬けは米糠を発酵させた糠床に野菜等の食材を漬け込んで作る。発酵は乳酸などの嫌気性菌、酵母や酢酸菌などの好気性菌が行う。これら発酵菌は温度、水分、酸素濃度等の影響を受けるため、一定の味を維持するのが困難で、また糠床の管理も難しい。
【0003】
このため、従来から定期的に撹拌して適度の好気性及び嫌気性を維持する糠床の管理、発酵温度の調整を行っている。しかしながら、一般家庭では糠床の管理が難しいため、簡単に糠漬けの味が再現できる糠漬け用の調味液なども提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、糠床収納容器内の半円筒状の内底面に沿って回転する2枚の回転板間に糠床収納部を形成し、この2枚の回転板の間隔が変更できるようして、攪拌時(回転時)に拡大可能とすることで、嫌気性細菌と好気性細菌のバランスを適正に保つことができる糠漬装置が提案されている。
【0005】
特許文献2には、糠床用の容器を素焼きまたはセラミックの通気性の壺の内部に収納し、容器の外周面と壺の内面との間の空間に水を溜め壺の内部微細孔を通して水が蒸発する時に奪われる気化熱により容器を冷却して糠床の温度上昇を抑える提案がされている。
【0006】
特許文献3には、糠床に長期間漬ける代わりに数時間漬けるだけで糠床で漬けた場合と同様の香味が得られる発酵漬液として、糠、食塩、グルタミン酸を主成分とするアミノ酸混合物に、糠漬の種類に応じ、キャベツ、キューリ、大根、大根葉などから選んだ野菜の磨砕物又は搾汁及び水を混合し、酵素で処理した後、糠床から分離培養した乳酸菌及び酵母を接種し、発酵させたてから固形分を除去した発酵香味液が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−187302号公報
【特許文献2】特開平8−289725号公報
【特許文献3】特開平8−126467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示される糠漬装置は、糠床を撹拌することは簡単にでき、嫌気性細菌と好気性細菌のバランスをとることができるが、糠漬けの味をコントロールすることができない。
【0009】
特許文献2に開示される糠漬装置は、発酵を一定の温度範囲で行うことができるが、それ以外の糠床の管理や味の調整を行うことができない。
【0010】
特許文献3に開示される調味液は、糠漬けではなく単に味が糠漬けと同じというだけで、一種のドレッシングと捉えるべきものであり、自分で好みの味に変えることができない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る糠漬装置は、例えば恒温槽として機能する上面が開口したボックス内に糠を充填する糠槽と野菜等の食材を投入する漬物槽を隣接して配置し、前記糠槽の底面には糠のエキス成分を含んだ抽出液が透過する孔を形成し、前記漬物槽の底面には前記糠槽からの抽出液を漬物液として取り込む孔を形成し、前記漬物槽内の漬物液は送液手段によって前記糠槽に戻す構成とした。
【0012】
前記送液手段の一例としては、漬物槽内に上端開口部が位置するエア供給パイプと、上端部が前記糠槽に臨み下端部が前記エア供給パイプよりも大径でこの下端部に前記エア供給パイプの上端が隙間を介して入りこむ液供給パイプとからなり、エアの供給につれて前記隙間から液供給パイプ内に漬物液を引き込み、引き込んだ漬物液をエアの作用で糠槽に送り込む構成が考えられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る漬物装置によれば、糠槽と漬物槽との間で糠床に含まれるエキス成分を含んだ漬物液を循環させるようにしたので、漬物液中に含まれる酸素によって糠槽内での好気性発酵が進行し、また循環を止めることで嫌気性発酵が進行する。
したがって、漬物液を循環パターンをコントロールするだけで発酵を調整できるので、従来面倒であった糠床の手入れ(撹拌)が不要になる。
【0014】
また、本発明に係る漬物装置は、糠槽に野菜を漬け込まずに漬物液中に漬け込むため、糠床に野菜に付着した夾雑物が入りこむ虞れがなく、糠の補充・交換の頻度が少なくて済む。また漬物槽の漬物液には糠槽からのエキス成分に富んだ抽出液が補給されるため、風味豊かな栄養価の高い漬物が得られる。
【0015】
更に、野菜を取り出す際に手に糠が付かず、更に漬物槽の漬物液は透明なのでどの野菜がどこにあるかを外部から見ることができ、簡単に取り出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る糠漬装置は上面が開口したボックス1内に、糠を充填する糠槽2と野菜等の食材を投入する漬物槽3を隣接して配置している。ボックス1としては例えば外側に一定温度の水などが流れるようにした恒温槽を用い、常に温度が5〜20℃の範囲となるようにし、この範囲で温度を調整することで,漬け上がり時間を設定できるようにしている。
【0018】
前記糠槽2は漬物槽3よりも容積が大きく、これら糠槽2及び漬物槽3は下方を開放した仕切板4、5によって左右に仕切られ、両槽とも内容物が反転しやすいように底部を半円筒状或いはコーナを曲線状としている。前記仕切板4は
図2に示すように多数の開口が形成されたパンチングメタルなどによって構成されている。前記仕切板5についても同様である。
【0019】
また
図4に示すように、糠槽2の底部には多数の小孔6を形成している。この小孔6の大きさは液は透過するが糠は透過しない径とする。尚、糠槽2の底部の内側面に不織布などからなるネット7を設けることで、小孔6の径を多少大きくしても糠が漏れないようにしてもよい。
【0020】
前記漬物槽3の底部にも多数の小孔8を形成している。この小孔8の大きさは液は透過するが漬物槽3内部に投入した野菜の小片などは透過しない径とする。尚、漬物槽3の底部の内側面にも糠槽2と同様に不織布などからなるネット9を設けることで、小孔8の径を多少大きくしても野菜の小片などが落下しないようにしてもよい。
尚、漬物槽3内には臭いを取るために粒状活性炭やゼオライトを入れておくことも可能である。
【0021】
このように、糠槽2の底部に多数の小孔6を設け、漬物槽3の底部にも多数の小孔8を設けることで、糠床に含まれるタンパク質、脂質、ビタミンA、ビタミンB1、B2、B6、ビタミンE、ナイアシン、リン、鉄の他に腸内環境を整える乳酸菌や酵素が含まれるエキスは小孔6を介してボックス1の内側部に抽出され、この抽出液は小孔8を介して漬物槽3内に取り込まれる。
【0022】
また、糠槽2と漬物槽3の間には漬物槽3内の漬物液を糠槽2に送り込む送液手段10が設けられている。
この送液手段10は
図4に示すように、液供給パイプ11とエア供給パイプ12からなり、エア供給パイプ12は基端部がボックス1の外側に配置されたエアポンプ13に接続され、漬物槽3の底部をパッキン14を介して貫通してその上端部が漬物槽3内に位置している。
【0023】
液供給パイプ11は逆U字状をなす上部が、糠槽2と漬物槽3とが重なった仕切部を貫通して漬物槽3側から糠槽2に臨み、この液供給パイプ11の貫通部よりも下方にオーバーフロー穴15を形成している。また、漬物槽3側に配置される下部の径は前記エア供給パイプ12よりも大径とされている。この大径の液供給パイプ11の下部に前記エア供給パイプ12が挿入され、エア供給パイプ12外側面と液供給パイプ11の内側面に隙間16が形成される。
【0024】
前記エアポンプ13はタイマーによって間欠的に作動するものを選定している。そして、エアポンプ13が作動するとエア供給パイプ12の上端から液供給パイプ11内にエアが供給され、エアの上昇に伴って前記隙間16を介して液供給パイプ11内に漬物槽3内の漬物液が引き込まれ、引き込まれた漬物液は液供給パイプ11内を上昇して糠槽2内に供給される。
【0025】
上記の実施例にあっては、エア供給パイプ12の上端を液供給パイプ11の下端開口に挿入した例を説明したが、液供給パイプ11の下部側面にエア供給パイプ12aの下端を接続するようにしても良い。この場合にはエア供給パイプ12aの径に制限は課せられない。
【0026】
エアによって漬物液を糠槽2内に供給すると、エアレーションと同じ作用によって糠床を撹拌するのと同じ効果が期待でき、酸素が供給されるので酵母や酢酸菌などの好気性菌による発酵が進行する。また、漬物液の糠槽2内への供給を停止すると、糠槽2への酸素の供給も停止するため、乳酸菌などの嫌気性菌による発酵が進行する。このように漬物液の供給をオン・オフすることで最適な好気性・嫌気性雰囲気を維持することができる。
【0027】
また、糠槽2内に供給された漬物液が多くなりすぎると、前記オーバーフロー15を介して糠槽2から漬物槽3側にオーバーフローすることで漬物液が戻される。この実施例では、糠槽2から漬物槽3へのオーバーフロー穴15は糠上面より10mm程高くし、汲み上げた液が溜りプール状になり、漬物槽3に自然落差で浸透するよう漬物槽3の液面は糠槽2の糠上面より20mm程低くなるように設定している。
【0028】
また、ボックス1の外側には食塩水を貯留する塩水タンク17、石灰液などのアルカリ液を貯留するアルカリ液タンク18および乳酸などの酸性液を貯留する酸性液タンク19が配置され、塩水タンク17内の塩水は塩分計を備えた弁20から配管21を介して漬物槽3に接続され、アルカリ液タンク18内のアルカリ液はpH計を備えた弁22から配管23を介して漬物槽3に接続され、酸性液タンク19内の酸性水は弁24から配管25を介して前記配管23の途中に接続され、配管23を介して漬物槽3内に酸性液を供給する構成になっている。
【0029】
更に、漬物槽3の内側面で前記配管21の開口部の近傍には塩分センサ26を取付け、前記配管23の開口部の近傍にはpHセンサ27を取り付けている。また漬物槽3の外側面にはオーバーフロー管28を取り付け、このオーバーフロー管28によって前記したように糠上面より漬物液上面が低くなるように設定している。
【0030】
上記の構成からなる糠漬装置を使用例を以下に説明する。
先ず好みの調味材を配合した糠を塩水で練るか、または市販の糠漬用加工糠を水で練り、これを糠槽2の7分目まで満たす。この後、糠槽2の上部からオーバーフロー穴15を介して2〜2.5%食塩水を漬物槽3のオーバーフロー管28からオーバーフローするまで徐々に注ぐ。
【0031】
この後、漬物槽3内に捨て野菜を投入する。この後、エアポンプ13を駆動して漬物槽3内の液供給パイプ12の下端にエアを供給し、エアの上昇に伴って漬物槽3内の漬物液(食塩水)を糠槽2内に送り込む。
【0032】
一方、糠槽2内では発酵が進行し、発酵に伴うエキス分を含む液が糠槽2の底部に形成した小孔6から抽出され、この抽出された液は漬物槽3の底部に形成した小孔8から漬物槽3内に取り込まれる。また、漬物槽3内でも発酵は進行する。
【0033】
上記の糠槽2と漬物槽3間での漬物液の循環を24時間以上間欠的に繰り返した後、漬物液の味見を行う。漬物液の塩分が2.5%前後で風味が出てくれば漬物液は完成したことになる。
【0034】
漬物液が完成した後に、漬物槽3に野菜などの食材を投入する。そして、野菜に漬物液が付着あるいは浸み込むことで、極めて栄養素の高い完全食品と言われる漬物が出来上がる。
【0035】
糠の補充は使用頻度によるが、1週間から1ヶ月を目安に行い、新たな糠を糠槽2の中間仕切板4の片面側より押し込み投入する。そして反転して反対方向から上がった古い糠は廃棄する。尚この反転機構と同様に、漬物槽3の野菜の漬け込みも新しい野菜を仕切板5の片面側から漬け込み、多面側から漬け上がった野菜を取り出す。
【0036】
また本発明にあっては、漬物槽3内に塩分センサ26及びpHセンサ27を設けており、更に塩水タンク17からの食塩水を供給する弁20は塩分計を備え、アルカリ液や酸性液を供給する弁22はpH計を備えているため、これらセンサの測定値に基づいて、塩分の自動調整及びpH値の自動調整が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る糠漬装置は一般家庭は勿論のこと、給食施設やホテルなど、漬物を大量に使用する施設に適合する。
【符号の説明】
【0038】
1…ボックス、2…糠槽、3…漬物槽、4、5…仕切板、6、8…小孔、7、9…ネット、10…送液手段、11…液供給パイプ、12…エア供給パイプ、13…エアポンプ、14…パッキン、15…オーバーフロー穴、16…隙間、17…塩水タンク、18…アルカリ液タンク、19…酸性液タンク、20…塩分計を備えた弁、21、23、25…配管、22…pH計を備えた弁、24…弁、26…塩分センサ、27…pHセンサ、28…オーバーフロー管。