特許第6388516号(P6388516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388516
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】噴射量計測装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20180903BHJP
   G06F 7/57 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   F02D45/00 364N
   F02D45/00 372B
   F02D45/00 372D
   F02D45/00 372F
   G06F7/57 203
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-203476(P2014-203476)
(22)【出願日】2014年10月1日
(65)【公開番号】特開2016-70256(P2016-70256A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】佐野 元洋
(72)【発明者】
【氏名】島田 愛
(72)【発明者】
【氏名】松本 猛
(72)【発明者】
【氏名】松村 省吾
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−007504(JP,A)
【文献】 特開2007−257033(JP,A)
【文献】 特開平10−115249(JP,A)
【文献】 特開2001−323840(JP,A)
【文献】 特開2007−133744(JP,A)
【文献】 特開2010−249049(JP,A)
【文献】 特開2009−057867(JP,A)
【文献】 特開平01−041511(JP,A)
【文献】 特開2012−002174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00 〜 45/00
G06F 7/00
G06F 7/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の噴射量を計測する噴射量計測装置であって、
所定の時間ごとに割り込みを発生させる割込制御手段と、
前記割込制御手段により発生する割り込みごとを1つのステートとし、前記ステートの処理は、信号を入力する処理と、チャンネルごとのFIR演算を行う処理と、燃料の噴射率を算出するための微分演算を行う処理とを含み、前記ステートごとにそれぞれ異なる処理を行い、複数の前記ステートの処理を合わせた処理によって1つのサイクルの信号処理とする割込処理手段と、
前記割込処理手段による前記信号処理に基づく結果から、前記噴射量を計測するための処理をするメイン処理手段と、
を備える噴射量計測装置。
【請求項2】
前記割込制御手段は、インジェクタドライブ信号の開始から、噴射率波形の立ち上がり開始までの噴射開始遅れ時間と、前記インジェクタドライブ信号の終了から、前記噴射率波形の立ち下がり終了までの噴射終了遅れ時間とを高精度に算出できるように、前記所定の時間ごとに割り込みを発生させる、請求項に記載の噴射量計測装置。
【請求項3】
請求項1に記載の噴射量計測装置が実行する方法であって、
前記割込処理手段が、前記割込制御手段により発生する割り込みごとを1つのステートとし、前記ステートの処理は、信号を入力する処理と、チャンネルごとのFIR演算を行う処理と、燃料の噴射率を算出するための微分演算を行う処理とを含み、前記ステートごとにそれぞれ異なる処理を行い、複数の前記ステートの処理を合わせた処理によって1つのサイクルの信号処理とする割込処理ステップと、
前記メイン処理手段が、前記割込処理ステップによる前記信号処理に基づく結果から、前記噴射量を計測するための処理をするメイン処理ステップと、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射量計測装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料噴射ポンプの噴射の効率や性能等を試験するために、燃料の噴射量を計測する技術が知られている。このような計測では、高速のサンプリングによって検出された信号に基づいて演算処理を行い、サンプリング間隔に対し負荷の高い処理を適切に処理する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1は、周期的にサンプリングされたデジタルデータを処理するために、処理負荷の大きい処理を出力タイミングに応じて単位周期ごとに複数の処理ステップ数に分散して割り当て、かつ処理負荷の高い処理専用のアキュムレータレジスタにより演算の途中結果を保持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−257033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、信号を検出するサンプリングがさらに高速になると、サンプリング間で完了するべき演算処理が、次のサンプリングまでに完了しないで、処理が間に合わなくなる場合がある。特に、燃料の噴射量を適切に計測するためには、高速でサンプリングするための割り込みを用いて噴射に関する信号を検出し、検出した信号に関する演算処理を、次のサンプリングのための割り込みまでに完了する必要がある。
【0006】
そこで、燃料の噴射量等の計測における、信号を周期的に高速でサンプリング(例えば、サンプリング周波数が200kHz、すなわち5マイクロ秒ごとにサンプリング)する割り込みにおいて、サンプリングした信号に基づく演算処理(例えば、FIR(Finite Impulse Responce)演算や、燃料の噴射率を算出するための微分演算等)を、適切に処理できる噴射量計測装置が求められている。
【0007】
本発明は、周期的に高速でサンプリングするための割り込みにおいて、燃料の噴射量に関する適切な信号処理をすることができる噴射量計測装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
噴射量計測装置は、例えば、噴射率波形の特性傾向を解析するためのサンプリング周波数が200kHzである場合、メインルーチンで実施する処理と略同時に、5マイクロ秒ごとの割り込みでのサンプリングと割込みでの演算処理とを行う必要がある。そこで、噴射量計測装置は、メインルーチンで実施する処理と略同時に、次のような割込み処理を行う。
(A)5マイクロ秒ごとの割り込みを1つのステートとし、8つのステート(ステート1からステート8)で1サイクルとする割込み処理(演算処理として、例えば、FIR演算、微分演算)を行い、割込み処理を行っていない時間でメインルーチン処理を実施する。この割込み処理については、4つのチャンネル(例えば、チャンネル1が温度信号、チャンネル2が圧力信号、チャンネル3が排圧信号、チャンネル4が外部信号)について信号をサンプリングする場合、以下の順序で行われる。
(A−1)ステート1で、次のサイクルにおける演算のために、全チャンネル信号の電圧値(例えば、4つのチャンネルのそれぞれの電圧値)をデジタル変換した信号デジタル値が取得されると共に、前のサイクルで取得した8ステート分のチャンネル1のAD値(後述する(A−8)で換算された信号のAD値、以下同様)に対して一括でFIR演算が行われる。
(A−2)ステート2で、次のサイクルにおける演算のための全チャンネル信号デジタル値が取得されると共に、前のサイクルで取得した8ステート分のチャンネル2のAD値に対して一括でFIR演算が行われる。
(A−3)ステート3で、次のサイクルにおける演算のための全チャンネル信号デジタル値が取得されると共に、前のサイクルで取得した8ステート分のチャンネル2のAD値に対して一括で微分演算が行われる。すなわち、チャンネル2の圧力信号のAD値を用いた微分演算が行われ、噴射率が算出される。
(A−4)ステート4で、次のサイクルにおける演算のための全チャンネル信号デジタル値が取得されると共に、前のサイクルで取得した8ステート分のチャンネル3のAD値に対して一括でFIR演算が行われる。
(A−5)ステート5で、次のサイクルにおける演算のための全チャンネル信号デジタル値が取得されると共に、前のサイクルで取得した8ステート分のチャンネル4のAD値に対して一括でFIR演算が行われる。
(A−6)ステート6で、次のサイクルにおける演算のための全チャンネル信号デジタル値が取得される。
(A−7)ステート7で、次のサイクルにおける演算のための全チャンネル信号デジタル値が取得される。
(A−8)ステート8で、次のサイクルにおける演算のための全チャンネル信号デジタル値が取得されると共に、ステート1から8で取得された8ステート分の信号デジタル値のAD値換算変換(取得した信号デジタル値から実際の信号値としてのデジタル値へ換算変換する処理、換算変換した値を信号のAD値と言う。)が行われる。
なお、演算結果の出力は1ステートごとにそれぞれ行われる。
(B)割り込み処理での処理とメイン処理での処理との両方の処理を合わせて、噴射量に関する信号処理を行う。すなわち、割り込み処理で行わなくてもよい処理、例えば、噴射率切り出し、MeasureEnable状態判断結果の取得等は各ステートで割込み処理を行っていないときにメイン処理で行う。
【0009】
具体的には、以下のような解決手段を提供する。
(1) 燃料の噴射量を計測する噴射量計測装置であって、所定の時間ごとに割り込みを発生させる割込制御手段と、前記割込制御手段により発生する割り込みごとを1つのステートとし、前記ステートごとにそれぞれ異なる処理を行い、複数の前記ステートの処理を合わせた処理によって1つのサイクルの信号処理とする割込処理手段と、前記割込処理手段による前記信号処理に基づいて、前記噴射量を計測するための処理をするメイン処理手段と、を備える噴射量計測装置。
【0010】
(1)の構成によれば、(1)に係る噴射量計測装置は、所定の時間ごとに割り込みを発生させ、発生させた割り込みごとを1つのステートとし、そのステートごとにそれぞれ異なる処理を行い、複数のステートの処理を合わせた処理を1つのサイクルの信号処理とし、その信号処理に基づいて、燃料の噴射量を計測するための処理をする。
【0011】
すなわち、(1)に係る噴射量計測装置は、割り込みごとにそれぞれ異なる処理をするステートとしているので、信号をサンプリングするための割り込みが、例えば、5マイクロ秒ごとの高速の割り込みであっても、サンプリングした信号に関する演算処理をステートごとにそれぞれ演算し、次の割り込みまでにそれぞれの演算を完結させることができる。そして、(1)に係る噴射量計測装置は、割り込みごとに完結させた処理を合わせた信号処理によって噴射量を計測するための処理を行う。
したがって、(1)に係る噴射量計測装置は、高速でサンプリングするための割り込みにおいて、燃料の噴射量に関する適切な信号処理をすることができる。
【0012】
(2) 前記ステートの処理は、全チャンネル信号を入力する処理と、チャンネルごとのFIR演算を行う処理と、燃料の噴射率を算出するための微分演算を行う処理とを含み、前記ステートごとに異なる、(1)に記載の噴射量計測装置。
【0013】
したがって、(2)に係る噴射量計測装置は、ステートごとに、全チャンネル信号を入力する処理と、FIR演算処理と、微分演算処理とを含む処理が異なるので、信号をサンプリングするための割り込みが、例えば、5マイクロ秒ごとの高速の割り込みであっても、サンプリングした信号に関する演算処理を、次の割り込みまでにそれぞれ完結させることができ、燃料の噴射量に関する適切な信号処理をすることができる。
【0014】
(3) 前記割込制御手段は、インジェクタドライブ信号の開始から、噴射率波形の立ち上がり開始までの噴射開始遅れ時間と、前記インジェクタドライブ信号の終了から、前記噴射率波形の立ち下がり終了までの噴射終了遅れ時間とを高精度に算出できる、前記所定の時間ごとに割り込みを発生させる、(1)又は(2)に記載の噴射量計測装置。
【0015】
したがって、(3)に係る噴射量計測装置は、噴射開始遅れ時間及び噴射終了遅れ時間を高精度に算出するために高速でサンプリングするための割り込み(例えば、5マイクロ秒ごと)を発生させ、発生させた高速のサンプリングにおいて、燃料の噴射量に関する適切な信号処理をすることができる。
【0016】
(4) (1)に記載の噴射量計測装置が実行する方法であって、前記割込処理手段が、前記割込制御手段により発生する割り込みごとを1つのステートとし、前記ステートごとにそれぞれ異なる処理を行い、複数の前記ステートの処理を合わせた処理によって1つのサイクルの信号処理とする割込処理ステップと、前記メイン処理手段が、前記割込処理ステップによる前記信号処理に基づいて、前記噴射量を計測するための処理をするメイン処理ステップと、を備える方法。
【0017】
したがって、(4)に係る方法は、高速でサンプリングするための割り込みにおいて、燃料の噴射量に関する適切な信号処理をすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高速でサンプリングするための割り込みにおいて、燃料の噴射量計測に関する適切な信号処理をすることができる。
本発明は、信号を入力する処理とFIR演算と微分演算とを含む処理が、割り込みごとに異なるので、信号をサンプリングするための割り込みが、例えば、5マイクロ秒ごとの高速の割り込みであっても、サンプリングした信号に関する演算処理を、次の割り込みまでにそれぞれ完結させることができる。その結果、本発明は、完結させた演算処理に基づいて、燃料の噴射量に関する適切な信号処理をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る噴射量計測装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る噴射量計測装置における割込み処理の例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る噴射量計測装置により検出する信号の例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る噴射量計測装置における割り込み処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る噴射量計測装置10の構成を示すブロック図である。噴射量計測装置10は、割込制御手段11と、割込処理手段12と、メイン処理手段21とを備える。各手段ごとに、説明する。
【0021】
割込制御手段11は、所定の時間ごとに割り込みを発生させる。具体的には、割込制御手段11は、インジェクタドライブ信号の開始から、噴射率波形の立ち上がり開始までの噴射開始遅れ時間と、インジェクタドライブ信号の終了から、噴射率波形の立ち下がり終了までの噴射終了遅れ時間とを高精度で算出できる、所定の時間ごとに割り込みを発生させる。より具体的には、割込制御手段11は、噴射量計測装置10のCPUを動作させるクロックに基づく定期的な割り込み(例えば、噴射開始遅れ時間及び噴射終了遅れ時間や、燃料の噴射率を精度良く算出するために必要な5マイクロ秒ごとの割り込み)を発生させ、割り込みに対応する割り込み処理を起動させる。
【0022】
割込処理手段12は、割込制御手段11により発生する割り込みごとを1つのステートとし、そのステートごとにそれぞれ異なる処理を行い、複数のステートの処理を合わせた処理によって1つのサイクルの信号処理とする。ステートの処理は、信号を入力する処理と、チャンネルごとのFIR演算を行う処理と、燃料の噴射率を算出するための微分演算を行う処理とを含み、ステートごとに実施する処理は、異なる。割込処理手段12は、各ステートで実施する処理によって1つのサイクルの信号処理を実施する。
【0023】
メイン処理手段21は、割込み処理を行っていないときに、割込処理手段12により得られた信号に基づいて、噴射量を計測するための処理をする。具体的には、メイン処理手段21は、噴射率波形の立ち上がりや立ち下がりを検出し、燃料の噴射量の算出や、噴射開始遅れ時間や、噴射終了遅れ時間の算出を行う。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態に係る噴射量計測装置10における割込み処理の例を示す図である。図2の表は、縦に、割込みに対応するステートを表わし、横に、ステートごとの各処理内容を表わしている。そして、図2の表は、ステート1から8を1つのサイクルとし、サイクルが1からnまで繰り返されることを表わしている。
図2の表の例では、1つのステートで、最大で処理1〜6の割込み処理が実施される。
処理1は、定期的に全チャンネルの信号をサンプリングし、デジタル入力するための信号デジタル値を取得する処理である。この処理は、サンプリングした信号のADコンバータの出力値である信号デジタル値を取得する処理である。
処理2は、定期的にアナログ出力をするためのDA値出力処理である。この処理は、例えば、他のアプリケーションのために、チャンネル1から4の演算結果のアナログ値を出力する処理である。
処理3は、定期的に、入力したデジタル値を入力順に出力するためのFIFO(First In First Out)処理である。この処理は、例えば、他のアプリケーションのために、微分演算処理の結果を取得順に出力する処理である。
処理4は、MeasureEnable判断処理である。この処理は、メイン処理での処理をするか否かを判断する処理である。
処理5は、AnglePulse状態取得処理である。この処理は、メイン処理で使用する値を取得する処理である。
処理6は、FIR演算、微分演算、又はAD値換算変換を行う処理である。すなわち、ステート1では、チャンネル1のFIR演算が行われ、ステート2では、チャンネル2のFIR演算が行われ、ステート3では、チャンネル2の微分演算が行われ、ステート4では、チャンネル3のFIR演算が行われ、ステート5では、チャンネル4のFIR演算が行われ、ステート8では、AD値換算変換(取得した信号デジタル値から実際の信号値としてのデジタル値へ換算変換する処理)が行われる。
図2の表の例は、サイクル1では、このサイクル前にサンプルしたデータがないので、ステート1からステート5までの処理6でFIR演算処理や微分演算処理が行われないことを、表わしている。また、図2の表の例は、サイクル1では、サイクル2のために、ステート1からステート8までの処理1で信号デジタル値取得処理が行われ、ステート8の処理6でAD値換算変換処理が行われることを、表わしている。
さらに、図2の表の例は、サイクル2以降では、前のサイクルで取得したAD値に基づいてステート1からステート5までの処理6でFIR演算処理や微分演算処理が行われ、次のサイクルのために、ステート1からステート8までの処理1で信号デジタル値取得処理が行われ、ステート8の処理6でAD値換算変換処理が行われることを、表わしている。
【0025】
図3は、本発明の一実施形態に係る噴射量計測装置10により検出する信号の例を示す図である。図3の例は、インジェクタを駆動するための信号の開始(噴射開始指令)から終了(噴射終了指令)までを示すインジェクタドライブ信号100と、インジェクタの駆動に応じて噴射される燃料の噴射率を示す噴射率波形200との例である。
噴射量計測装置10は、インジェクタドライブ信号と噴射率とを演算するための信号を高速(例えば、5マイクロ秒ごとの割り込み)でサンプリングし、割り込み周期(5マイクロ秒ごとの割り込みを1つのステートとし、8つのステートで1サイクルとする周期)の間で演算処理(FIR演算、微分演算)を行うことにより、噴射率波形200を高精度に復元し、噴射率波形200の立ち上がり開始点及び立ち下がり終了点を高精度に検出することができる。
したがって、噴射量計測装置10は、インジェクタドライブ信号100の開始から、噴射率波形200の立ち上がり開始までの噴射開始遅れ時間SDT201(300マイクロ秒〜500マイクロ秒)と、インジェクタドライブ信号100の終了から、噴射率波形200の立ち下がり終了までの噴射終了遅れ時間EDT202とを高精度に算出し、算出する時間の時間分解能を向上させることができる。
【0026】
図4は、本発明の一実施形態に係る噴射量計測装置10における割り込み処理のフローチャートである。噴射量計測装置10は、コンピュータ及びその周辺装置(特に、信号のAD値を取得するためのADコンバータや、デジタル値をアナログ値に変換するためのDAコンバータ、信号のAD値を記憶する記憶装置等)を備えるハードウェア並びに該ハードウェアを制御するソフトウェアによって構成され、以下の処理は、制御部(例えば、CPU)が所定のソフトウェアに従い実行する処理である。噴射量計測装置10における割り込み処理は、リアルタイム制御を行うOSの下で、割込制御手段11によって定期的(例えば、5マイクロ秒ごと)に発生する割り込みによって起動される。なお、本フローチャートは、ステート変数の初期値(例えば、噴射量計測装置10の電源を入れたときの値が1)が設定された後の処理を示す。
【0027】
ステップS101において、CPU(割込処理手段12)は、ステートによって各処理に処理を移す。より具体的には、CPUは、ステート変数の値をステート数(例えば、8)で除算したときの剰余が1(ステート1)の場合に、CPUは、処理をステップS102に移し、剰余が2(ステート2)の場合に、CPUは、処理をステップS103に移し、剰余が3(ステート3)の場合に、CPUは、処理をステップS104に移し、剰余が4(ステート4)の場合に、CPUは、処理をステップS105に移し、剰余が5(ステート5)の場合に、CPUは、処理をステップS106に移し、剰余が6(ステート6)の場合に、CPUは、処理をステップS107に移し、剰余が7(ステート7)の場合に、CPUは、処理をステップS108に移し、剰余が0(ステート8)の場合に、CPUは、処理をステップS109に移す。
【0028】
ステップS102において、CPU(割込処理手段12、ステート1)は、チャンネル1から4の信号デジタル値の取得を行い、記憶させ、DA値出力と、FIFO出力と、MeasureEnable判断処理と、AnglePulse状態取得処理とを行う。そして、CPUは、前のサイクルのステート1からステート8で記憶させたAD値の内、一括でチャンネル1のFIR演算を行う。その後、CPUはステップS110に処理を移す。
【0029】
ステップS103において、CPU(割込処理手段12、ステート2)は、チャンネル1から4の信号デジタル値の取得を行い、記憶させ、ステート1と同様のDA値出力からAnglePulse状態取得処理までを行う。そして、CPUは、前のサイクルのステート1からステート8で記憶させたAD値の内、一括でチャンネル2のFIR演算を行う。その後、CPUはステップS110に処理を移す。
【0030】
ステップS104において、CPU(割込処理手段12、ステート3)は、チャンネル1から4の信号デジタル値の取得を行い、記憶させ、ステート1と同様のDA値出力からAnglePulse状態取得処理までを行う。そして、CPUは、前のサイクルのステート1からステート8で記憶させたAD値の内、一括でチャンネル2の微分演算を行う。その後、CPUはステップS110に処理を移す。
【0031】
ステップS105において、CPU(割込処理手段12、ステート4)は、チャンネル1から4の信号デジタル値の取得を行い、記憶させ、ステート1と同様のDA値出力からAnglePulse状態取得処理までを行う。そして、CPUは、前のサイクルのステート1からステート8で記憶させたAD値の内、一括でチャンネル3のFIR演算を行う。その後、CPUはステップS110に処理を移す。
【0032】
ステップS106において、CPU(割込処理手段12、ステート5)は、チャンネル1から4の信号デジタル値の取得を行い、記憶させ、ステート1と同様のDA値出力からAnglePulse状態取得処理までを行う。そして、CPUは、前のサイクルのステート1からステート8で記憶させたAD値の内、一括でチャンネル4のFIR演算を行う。その後、CPUはステップS110に処理を移す。
【0033】
ステップS107において、CPU(割込処理手段12、ステート6)は、チャンネル1から4の信号デジタル値の取得を行い、記憶させ、ステート1と同様のDA値出力からAnglePulse状態取得処理までを行う。その後、CPUはステップS110に処理を移す。
【0034】
ステップS108において、CPU(割込処理手段12、ステート7)は、チャンネル1から4の信号デジタル値の取得を行い、記憶させ、ステート1と同様のDA値出力からAnglePulse状態取得処理までを行う。その後、CPUはステップS110に処理を移す。
【0035】
ステップS109において、CPU(割込処理手段12、ステート8)は、チャンネル1から4の信号デジタル値の取得を行い、記憶させ、ステート1と同様のDA値出力からAnglePulse状態取得処理までを行う。そして、CPUは、ステート1から8において記憶させた信号デジタル値を換算変換処理し、換算変換したAD値を次のサイクルのために記憶させる。その後、CPUはステップS110に処理を移す。
【0036】
ステップS110において、CPU(割込処理手段12)は、ステート変数に1を加算する。その後、CPUは処理を終了する。
【0037】
本実施形態によれば、噴射量計測装置10は、所定の時間(例えば、サンプリング周波数が200kHz、すなわちサンプリング周期5マイクロ秒)ごとに割り込みを発生させ、発生させた割り込みごとを1つのステートとし、そのステートごとにそれぞれ異なる処理を行い、複数のステートの処理を合わせた処理を1つのサイクルの信号処理とし、その信号処理に基づいて、噴射量を計測するための処理をする。ステートの処理は、信号を入力する処理と、チャンネルごとのFIR演算を行う処理と、燃料の噴射率を算出するための微分演算を行う処理とを含み、ステートごとに実行内容が異なる。
よって、噴射量計測装置10は、信号をサンプリングするための割り込みが、例えば、5マイクロ秒ごとの高速の割り込みであっても、サンプリングした信号に関する演算処理を、次の割り込みまでにそれぞれ完結させることができる。
したがって、噴射量計測装置10は、時間分解能を向上させるために必要な5マイクロ秒ごとの割り込みを発生させ、噴射開始遅れ時間(SDT)と、噴射終了遅れ時間(EDT)も高精度に算出することが可能である。
したがって、噴射量計測装置10は、高速でサンプリングするための割り込みにおいて、燃料の噴射量に関する適切な信号処理をすることができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
なお、本実施形態では、FIR演算や微分演算に使用する演算ライブラリによる規定から8ステートを1サイクルとする例を示したが、これに限られない。割り込み間隔と演算の処理時間との関係から適切な信号処理ができるように複数のステートを1サイクルとしてよい。
【符号の説明】
【0039】
10 噴射量計測装置
11 割込制御手段
12 割込処理手段
21 メイン処理手段
図1
図2
図3
図4