【課題を解決するための手段】
【0008】
噴射量計測装置は、例えば、噴射率波形の特性傾向を解析するためのサンプリング周波数が200kHzである場合、メインルーチンで実施する処理と略同時に、5マイクロ秒ごとの割り込みでのサンプリングと割込みでの演算処理とを行う必要がある。そこで、噴射量計測装置は、メインルーチンで実施する処理と略同時に、次のような割込み処理を行う。
(A)5マイクロ秒ごとの割り込みを1つのステートとし、8つのステート(ステート1からステート8)で1サイクルとする割込み処理(演算処理として、例えば、FIR演算、微分演算)を行い、割込み処理を行っていない時間でメインルーチン処理を実施する。この割込み処理については、4つのチャンネル(例えば、チャンネル1が温度信号、チャンネル2が圧力信号、チャンネル3が排圧信号、チャンネル4が外部信号)について信号をサンプリングする場合、以下の順序で行われる。
(A−1)ステート1で、次のサイクルにおける演算のために、全チャンネル信号の電圧値(例えば、4つのチャンネルのそれぞれの電圧値)をデジタル変換した信号デジタル値が取得されると共に、前のサイクルで取得した8ステート分のチャンネル1のAD値(後述する(A−8)で換算された信号のAD値、以下同様)に対して一括でFIR演算が行われる。
(A−2)ステート2で、次のサイクルにおける演算のための全チャンネル信号デジタル値が取得されると共に、前のサイクルで取得した8ステート分のチャンネル2のAD値に対して一括でFIR演算が行われる。
(A−3)ステート3で、次のサイクルにおける演算のための全チャンネル信号デジタル値が取得されると共に、前のサイクルで取得した8ステート分のチャンネル2のAD値に対して一括で微分演算が行われる。すなわち、チャンネル2の圧力信号のAD値を用いた微分演算が行われ、噴射率が算出される。
(A−4)ステート4で、次のサイクルにおける演算のための全チャンネル信号デジタル値が取得されると共に、前のサイクルで取得した8ステート分のチャンネル3のAD値に対して一括でFIR演算が行われる。
(A−5)ステート5で、次のサイクルにおける演算のための全チャンネル信号デジタル値が取得されると共に、前のサイクルで取得した8ステート分のチャンネル4のAD値に対して一括でFIR演算が行われる。
(A−6)ステート6で、次のサイクルにおける演算のための全チャンネル信号デジタル値が取得される。
(A−7)ステート7で、次のサイクルにおける演算のための全チャンネル信号デジタル値が取得される。
(A−8)ステート8で、次のサイクルにおける演算のための全チャンネル信号デジタル値が取得されると共に、ステート1から8で取得された8ステート分の信号デジタル値のAD値換算変換(取得した信号デジタル値から実際の信号値としてのデジタル値へ換算変換する処理、換算変換した値を信号のAD値と言う。)が行われる。
なお、演算結果の出力は1ステートごとにそれぞれ行われる。
(B)割り込み処理での処理とメイン処理での処理との両方の処理を合わせて、噴射量に関する信号処理を行う。すなわち、割り込み処理で行わなくてもよい処理、例えば、噴射率切り出し、MeasureEnable状態判断結果の取得等は各ステートで割込み処理を行っていないときにメイン処理で行う。
【0009】
具体的には、以下のような解決手段を提供する。
(1) 燃料の噴射量を計測する噴射量計測装置であって、所定の時間ごとに割り込みを発生させる割込制御手段と、前記割込制御手段により発生する割り込みごとを1つのステートとし、前記ステートごとにそれぞれ異なる処理を行い、複数の前記ステートの処理を合わせた処理によって1つのサイクルの信号処理とする割込処理手段と、前記割込処理手段による前記信号処理に基づいて、前記噴射量を計測するための処理をするメイン処理手段と、を備える噴射量計測装置。
【0010】
(1)の構成によれば、(1)に係る噴射量計測装置は、所定の時間ごとに割り込みを発生させ、発生させた割り込みごとを1つのステートとし、そのステートごとにそれぞれ異なる処理を行い、複数のステートの処理を合わせた処理を1つのサイクルの信号処理とし、その信号処理に基づいて、燃料の噴射量を計測するための処理をする。
【0011】
すなわち、(1)に係る噴射量計測装置は、割り込みごとにそれぞれ異なる処理をするステートとしているので、信号をサンプリングするための割り込みが、例えば、5マイクロ秒ごとの高速の割り込みであっても、サンプリングした信号に関する演算処理をステートごとにそれぞれ演算し、次の割り込みまでにそれぞれの演算を完結させることができる。そして、(1)に係る噴射量計測装置は、割り込みごとに完結させた処理を合わせた信号処理によって噴射量を計測するための処理を行う。
したがって、(1)に係る噴射量計測装置は、高速でサンプリングするための割り込みにおいて、燃料の噴射量に関する適切な信号処理をすることができる。
【0012】
(2) 前記ステートの処理は、全チャンネル信号を入力する処理と、チャンネルごとのFIR演算を行う処理と、燃料の噴射率を算出するための微分演算を行う処理とを含み、前記ステートごとに異なる、(1)に記載の噴射量計測装置。
【0013】
したがって、(2)に係る噴射量計測装置は、ステートごとに、全チャンネル信号を入力する処理と、FIR演算処理と、微分演算処理とを含む処理が異なるので、信号をサンプリングするための割り込みが、例えば、5マイクロ秒ごとの高速の割り込みであっても、サンプリングした信号に関する演算処理を、次の割り込みまでにそれぞれ完結させることができ、燃料の噴射量に関する適切な信号処理をすることができる。
【0014】
(3) 前記割込制御手段は、インジェクタドライブ信号の開始から、噴射率波形の立ち上がり開始までの噴射開始遅れ時間と、前記インジェクタドライブ信号の終了から、前記噴射率波形の立ち下がり終了までの噴射終了遅れ時間とを高精度に算出できる、前記所定の時間ごとに割り込みを発生させる、(1)又は(2)に記載の噴射量計測装置。
【0015】
したがって、(3)に係る噴射量計測装置は、噴射開始遅れ時間及び噴射終了遅れ時間を高精度に算出するために高速でサンプリングするための割り込み(例えば、5マイクロ秒ごと)を発生させ、発生させた高速のサンプリングにおいて、燃料の噴射量に関する適切な信号処理をすることができる。
【0016】
(4) (1)に記載の噴射量計測装置が実行する方法であって、前記割込処理手段が、前記割込制御手段により発生する割り込みごとを1つのステートとし、前記ステートごとにそれぞれ異なる処理を行い、複数の前記ステートの処理を合わせた処理によって1つのサイクルの信号処理とする割込処理ステップと、前記メイン処理手段が、前記割込処理ステップによる前記信号処理に基づいて、前記噴射量を計測するための処理をするメイン処理ステップと、を備える方法。
【0017】
したがって、(4)に係る方法は、高速でサンプリングするための割り込みにおいて、燃料の噴射量に関する適切な信号処理をすることができる。