特許第6388517号(P6388517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388517
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】芯地
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/018 20120101AFI20180903BHJP
   D04H 3/011 20120101ALI20180903BHJP
   D04H 3/14 20120101ALI20180903BHJP
   D01F 6/62 20060101ALI20180903BHJP
   D01F 8/14 20060101ALI20180903BHJP
   D06M 15/507 20060101ALI20180903BHJP
   D06M 101/32 20060101ALN20180903BHJP
【FI】
   D04H3/018
   D04H3/011
   D04H3/14
   D01F6/62 303F
   D01F6/62 302A
   D01F8/14 B
   D06M15/507
   D06M101:32
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-209244(P2014-209244)
(22)【出願日】2014年10月10日
(65)【公開番号】特開2016-79514(P2016-79514A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木原 幸弘
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−076182(JP,A)
【文献】 特開2000−017556(JP,A)
【文献】 実開平03−067020(JP,U)
【文献】 実開平02−125993(JP,U)
【文献】 特開昭63−288275(JP,A)
【文献】 特開平07−316962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00−18/04
D01F 6/62
D01F 8/14
D06M 15/507
D06M 101/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル長繊維不織布により構成される芯地であって、長繊維不織布を構成する長繊維の単繊維繊度が10デシテックス以上であり、該長繊維の横断面形状が、略Y字の下端で上下左右に連結した
形状(以下、「略Y4形状」という。)であることを特徴とする芯地。
【請求項2】
略Y4形状の各々の略V字部が低融点ポリエステルよりなり、その他の略+字部が高融点ポリエステルよりなる複合型ポリエステル長繊維よりなる請求項1記載の芯地。
【請求項3】
低融点ポリエステルの融着によって、ポリエステル長繊維相互間が結合されている請求項2記載の芯地。
【請求項4】
ポリエステル長繊維不織布の少なくとも片側表面に接着剤が付着してなる接着芯地であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の芯地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保形性を有しながら、洗濯等による濡れた後の乾燥時間が短い芯地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衣服の形状を保持することを目的として、衣服の一部の個所に芯地が使われている。芯地には、形状保持するための保形性が求められる。たとえば、特許文献1では、保形性や良好な反発性を具備するために、2段階の熱処理を施すことにより特定の荷重伸長曲線を描くものを提案されている。また、特許文献2では、シート状物を複数枚重ねた積層布帛を芯地として用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−105011号
【特許文献2】特許第3033421号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、特定の段階にて特定の温度で2回の熱処理を施す必要があり加工が煩雑である。また、特許文献2に記載された方法では、複数枚の布帛を重ねたものを芯地として用いているため、洗濯等により濡らした際に、積層布帛により通気が不良であるため、乾きにくいという問題がある。
【0005】
本発明は、良好な保形性を有しながら、洗濯等による濡れた後の乾燥時間を短くすることが可能となる芯地を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、ポリエステル長繊維不織布により構成される芯地であって、長繊維不織布を構成する長繊維の単繊維繊度が10デシテックス以上であり、該長繊維の横断面形状が、略Y字の下端で上下左右に連結した
【0007】
形状(以下、「略Y4形状」という。)であることを特徴とする芯地に関するものである。
【0008】
本発明の芯地を構成するポリエステル長繊維不織布は、その構成繊維の横断面形状に特徴を有するものである。この横断面形状は、図1に示すような略Y字を四個持つものである。そして、略Y字の下端1で上下左右に連結して、図2に示すような略Y4形状となっている。この略Y4形状は、四個の凹部2と八個の凸部3と四個の小凹部4とを有している。中央の略+字部5と、略+字部5の各先端に連結された四個の略V字部6により、高剛性となっている。すなわち、六角形やY字等の単なる異形ではなく、剛性の高い略+字部5と略V字部6の組み合わせによって、より高剛性となるのである。
【0009】
ポリエステル長繊維は、一種類のポリエステルからなるものでもよいが、低融点ポリエステルと高融点ポリエステルとを組み合わせるのが好ましい。すなわち、ポリエステル長繊維の横断面形状の略V字部6が低融点ポリエステルで形成され、略+字部5が高融点ポリエステルで形成された複合型するのが好ましい。複合型ポリエステル長繊維を集積した後、低融点ポリエステルを軟化又は溶融させた後、固化させることにより、ポリエステル長繊維相互間が低融点ポリエステルによって融着された不織布が得られるからである。このように低融点ポリエステルの融着により長繊維相互間が結合することにより、長繊維不織布の剛性や保形性が良好となる。
【0010】
長繊維相互間が結合するための融着は、加熱処理を施すことにより得られるが、この熱処理は、熱エンボス加工によって部分的に熱圧着部を形成させるものであっても、また、熱風処理により長繊維同士の交点を融着により結合させたものであってもよい。また、これらの方法を併用したものでもよい。熱エンボス加工を採用する場合、用いるエンボスロールの圧着面積率(エンボスロールの凸部の面積率)は、10〜20%程度がよい。
【0011】
長繊維を構成する低融点ポリエステルと高融点ポリエステルとの複合比は、繊維の強度や繊維同士の交点での接合強度、接合部が過度に樹脂化しないこと等を考慮して、1/4〜1/1が好ましい。なお、低融点ポリエステルの複合比が小さくなると、低融点ポリエステルにより形成される略V字がより扁平形になり、また、高融点ポリエステルにより形成される略十字の各4箇所の先端部分が末広がりの形状になるが、このような変形した略V字および略十字であっても、本発明の範囲にあることは言うまでもない。
【0012】
このようなポリエステル長繊維不織布は、溶融紡糸する際に用いるノズル孔を変更する以外は、従来公知の方法で得られる。すなわち、ポリエステル樹脂を溶融紡糸して得られたポリエステル長繊維を集積してポリエステル長繊維不織布を製造する方法において、溶融紡糸する際に用いるノズル孔の形状が、Y字の下端で上下左右に連結し、かつ、隣り合うY字の/同士及び\同士が平行である
【0013】
形状(以下、「Y4形」という。)のものを用いるというものである。
【0014】
このノズル孔は、Y字を四個持つものである。Y字の下端7で上下左右に連結して、図3に示すY4形となっている。このY4形は、隣り合うY字の/8,8同士が平行であり、また\9,9同士が平行となっている。かかるY4形のノズル孔にポリエステル樹脂を供給して溶融紡糸することにより、横断面が略Y4形状のポリエステル長繊維を得ることができるのである。特に、隣り合うY字の/8,8同士及び\9,9同士が平行となっていることにより、四個の凹部2を持つポリエステル長繊維を得ることができる。また、略+字部5と、その各々の先端に設けられた略V字部6とを持つポリエステル長繊維を得ることができる。
【0015】
Y4形のノズル孔に供給するポリエステル樹脂は、一種類であってもよいし、二種類であってもよい。特に、低融点ポリエステル樹脂と高融点ポリエステル樹脂の二種類を用いるのが好ましい。すなわち、低融点ポリエステル樹脂をY4形のV字部10に供給し、高融点ポリエステル樹脂をY4形の+字部11に供給するのが好ましい。かかる供給態様で溶融紡糸することにより、略V字部6が低融点ポリエステルで形成され、略+字部5が高融点ポリエステルで形成された複合型ポリエステル長繊維が得られる。
【0016】
長繊維を得た後、これを集積して繊維ウェブを形成する。そして、繊維ウェブを部分的に加熱することにより、長繊維の一部(二成分の組合せの場合は低融点ポリエステル)を軟化又は溶融させ、冷却して固化させることにより、長繊維相互間を融着して、ポリエステル長繊維不織布を得る。
【0017】
長繊維不織布の構成繊維である長繊維の繊度は、10デシテックス以上とする。10デシテックス以上とすることにより、剛性に優れた不織布が得られる。なお、上限は23デシテックス程度とする。
【0018】
長繊維不織布の目付も任意であるが、実用的な高性と優れた保形性を併せ持ち、洗濯後の乾燥が早いポリエステル長繊維不織布とするには、20〜80g/m程度がよい。
【0019】
本発明においては、長繊維不織布の少なくとも片側表面に接着剤、好ましくはホットメルト接着剤を付着させて接着芯地とするとよい。ホットメルト接着剤は、長繊維不織布の全面もしくはドット状に付着させるとよい。付着量は3〜30g/m程度がよい。なお、本発明における長繊維不織布は、単繊維繊度が10デシテックス以上と大きいため、繊維と繊維の間の空隙が大きく、一定面積中に繊維が存在しない箇所の面積の比率も大きく、繊維が存在しない箇所は開孔として存在している。したがって、不織布全面に接着剤を付着させても、不織布における繊維が存在する箇所に接着剤が付着し、開孔部分には接着剤が付着することはないため、接着剤の付着量が多すぎて硬くなり過ぎることはない。
【0020】
ホットメルト系接着剤が付着した接着芯地は、適宜の大きさに裁断した接着芯地の片側もしくは両側に布地を載置し、熱プレスすることにより布地と芯地とを接着し、芯地により補強されてなる布地を容易に得ることができる。
【0021】
ホットメルト系の接着剤としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系等が挙げられる。
【0022】
本発明の芯地は、適宜の大きさに裁断し、布地と付着させることにより良好な形保持性を発揮することができるため、シャツの襟や袖口、コート、ズボンのベルト部分、ネクタイ等の各種衣料やその他の布地製品(カーテン、鞄、雑貨等)の形状を保持するための補強材として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の芯地を構成する長繊維不織布の構成繊維であるポリエステル長繊維は、その横断面が、略+字部とこの各先端に設けられた略V字部とからなる。略+字部も略V字部も、いずれも円形等と比べて高剛性であり、しかも高剛性のものが組み合わされていることにより、さらに高剛性になる。したがって、かかるポリエステル長繊維を構成繊維とする長繊維不織布によって構成される芯地は、高剛性であり、保形性に優れるという効果を奏する。よって、目付を大きくしなくても、軽量でありながら適度な厚みを有し、高剛性と保形性を達成することができる。
【0024】
また、長繊維の単繊維繊度が10デシテックス以上と大きいため、繊維と繊維の間の空隙が大きく、一定面積中に繊維が存在しない箇所の面積の比率も大きく、繊維が存在しない箇所は開孔として存在する。したがって、不織布の全面積に対して開孔部の開孔面積率が大きくなり、通気性が非常に高い。よって、本発明の芯地により補強された布地は、洗濯等により濡れた後、良好な通気性により早く乾燥しうるという効果を奏する。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における各特性値は、以下のようにして求めた。
(1)ポリエステルの極限粘度[η]:フェノールと四塩化エタンとの等質量比の混合溶媒100ccに試料0.5gを溶解し、測定した。
(2) 融点(℃):パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC−7型を用い、昇温速度20℃/分で測定した。
(3)目付(g/m):標準状態の試料から縦10cm×横10cmの試料片10点を作成し、各試料片の質量(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算して目付(g/m)とした。
(4)厚み(μm):標準状態の試料から縦10cm×横10cmの試料片10点を作成し、JIS L 1913 6.1A法に準拠し、ダイヤルシックネスゲージを用いて(プレッサーフード25mmφ、加重1.96KPa)、厚み(μm)を測定した。
(5)単繊維繊度(dtex):温度20℃、湿度60%の環境下で1昼夜保管した長さ1.8mの試料(略Y4断面糸)5点の質量について上皿天秤(Mettler AE50)を用いて測定し、その平均値より繊度を求めた。
(6)通気性(cc/m/秒):JIS L 1096 フラジール形法
【0026】
[長繊維不織布の準備]
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸(TPA)92mol%及びイソフタール酸(IPA)8mol%を用い、ジオール成分としてエチレングリコール(EG)100mol%を用いて共重合し、低融点ポリエステル(相対粘度〔ηrel〕1.44、融点230℃)を得た。この低融点ポリエステルに、結晶核剤として4.0質量%の酸化チタンを添加して、低融点ポリエステル重合体を準備した。一方、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸(TPA)100mol%とジオール成分としてエチレングリコール(EG)100mol%を用いて共重合し、高融点ポリエステル重合体(ポリエチレンテレフタレート、相対粘度〔ηrel〕1.38、融点260℃)を準備した。そして、図4に示したノズル孔を用い、V字部に低融点ポリエステル重合体を供給し、+字部に高融点ポリエステル重合体を供給して、紡糸温度285℃、単孔吐出量8.33g/分で溶融紡糸した。なお、低融点ポリエステル重合体の供給量と高融点ポリエステル重合体の供給量の重量比は、1:2であった。
【0027】
ノズル孔から排出されたフィラメント群を、2m下のエアーサッカー入口に導入し、複合型ポリエステル長繊維の繊度が17デシテックスとなるように牽引した。エアーサッカー出口から排出された複合型ポリエステル長繊維群を開繊装置にて開繊した後、移動するネット製コンベア上に集積し、繊維ウェブを得た。この繊維ウェブを、表面温度が213℃のエンボスロール(各エンボス凸部先端の面積は0.7mm2で、ロール全面積に対するエンボス凸部の占める面積率は15%)とフラットロールからなる熱融着装置に導入し、両ロール間の線圧300N/cmの条件で熱融着して、目付70g/mのポリエステル長繊維不織布とした。
【0028】
次いで、得られた長繊維不織布をリラックスさせた状態(端部を引っ張って緊張状態にしない状態)で、220℃に設定した空気循環型熱処理装置内に2分間投入し熱処理を行った。熱処理を行うことにより熱収縮しにくい耐熱性を付与した。熱処理によって得られた長繊維不織布の乾熱収縮率(リラックス状態で200℃の熱処理機内で5分間暴露した後の熱収縮率)は、機械方向が0.3%、機械方向と直行する方向が0.0%であり、熱変形が生じにくいものであった。
【0029】
[接着芯地]
熱処理が施された長繊維不織布の表面に、20g/mの共重合ポリエステルからなるホットメルトパウダー(Abifor社製 商品名:AC−2066、融点130〜136℃)を均一に散布した後、170℃に設定した熱処理機内に1分間滞留させ、その後冷却し、一旦溶融したホットメルトパウダーを長繊維不織布の面上に固着させて、接着剤が片側表面に付着してなる接着芯地とした。得られた接着芯地は、厚み457μm、目付90g/mであった。
【0030】
得られた接着芯地より100mm×100mmの大きさのものを切り取り、ワイシャツ地片(100mm×100mm、コットン繊維70%、ポリエステル繊維30%からなる織物)と、接着芯地の接着剤が付着してなる面が重なるように合わせて、プレス機を用いて160℃、面圧0.6N/cm、2分間圧着して接着一体化し、本発明の芯地によって形態保持されてなる芯地が貼り合せてなる布地を得た。
【0031】
一方、市販品のポリエステル製芯地として厚みが比較的薄いものと厚いものの2種を用意し、上記と同様にワイシャツ地片と接着一体化し、貼り合わせ布地(比較)を得た。
市販の芯地(薄地):厚み430μm、目付124g/m
市販の芯地(厚地):厚み682μm、目付205g/m
【0032】
[乾燥試験]
ワイシャツ地片に芯地が貼り合わせ布地(実施例、比較例−薄地、比較例−厚地)について、水中に投入し、軽く揉み洗いにより布地に水を馴染ませて吸水させた。吸水させた布地を室内(室温28℃、湿度48%)に吊り下げ1分後、30分後、60分後、120分後における布地の含水量を測定した。その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
本発明の芯地は、目付が小さく軽量であるにも関わらず、適度な厚みを有し、剛性にも優れたものであり、通気度も良好であった。乾燥試験においては、初期の含水量は、比較−薄地に比べて多かったものの、90分後は、薄地の芯地と同様の水分含水量となり、乾燥にも優れるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明におけるポリエステル長繊維の横断面形状である略Y4形状の一つの略Y字を示した図である。
図2】本発明におけるポリエステル長繊維の横断面形状である略Y4形状を示した図である。
図3】本発明に用いるY4形のノズル孔を示した図である。
【符号の説明】
【0036】
1 長繊維の横断面形状である略Y形状の一つの略Y字の下端
2 略Y4形状で形成された凹部
3 略Y4形状で形成された凸部
4 略Y4形状で形成された小凹部
5 略Y4形状中の略十字部
6 略Y4形状中の略V字部
7 溶融紡糸する際のノズル孔の形状であるY4形状の一つのY字の下端
8 Y字の/
9 Y字の\
10 Y4形のV字部
11 Y4形の十字部
図1
図2
図3