特許第6388521号(P6388521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388521
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】釣り用ルアー
(51)【国際特許分類】
   A01K 85/00 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
   A01K85/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-217498(P2014-217498)
(22)【出願日】2014年10月24日
(65)【公開番号】特開2016-82907(P2016-82907A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年10月16日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年9月10日 有限会社バスメイトに釣り用ルアーの注文記入用紙を送付
(73)【特許権者】
【識別番号】595015214
【氏名又は名称】メガバス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】394000493
【氏名又は名称】ヒーハイスト精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】伊東 浩一
(72)【発明者】
【氏名】福留 弘人
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−274798(JP,A)
【文献】 特開2003−061516(JP,A)
【文献】 実開昭50−102875(JP,U)
【文献】 国際公開第2013/183763(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 85/00−85/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小魚を模した外観形状となるように形成されたルアーボディの先端部付近に、適度に前下がり傾斜するリップを付設してなる釣り用ルアーであって、
前記ルアーボディの中空内部に前部付近から後部にかけてガイドシャフトを設けると共に、このガイドシャフトに装着されたリニアブッシュが前記ガイドシャフトに沿って前後にスライド可能とし、
前記ガイドシャフトの前端付近に配置されたマグネットに前記リニアブッシュが磁着保持されるようにしたことを特徴とする釣り用ルアー。
【請求項2】
合成樹脂材料により真直棒状に形成された前記ガイドシャフトの外周面で、前記リニアブッシュに内蔵された複数のボールが転動することを特徴とする請求項1に記載の釣り用ルアー。
【請求項3】
前記リニアブッシュは、バランスウェイトとして機能することを特徴とする請求項1又は2に記載の釣り用ルアー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は釣り用ルアー、特にバランスウェイトがルアーボディ内で移動可能にしたルアーに関する。
【背景技術】
【0002】
ルアー釣りにおいて、対象魚の種類等に応じて様々な形態や工夫が施されたルアーが考案されている。例えば所謂、フィッシュイーターと呼ばれる主に小魚を常食餌とする大型の対象魚の場合等において、小魚に似せた形態のルアーが使用される。対象魚を誘い、つまり対象魚に対して強くアピールする集魚効果を得るために、ルアーの形や色彩等につき工夫がなされている。
【0003】
この種のルアーにおいて、キャスティング時のルアーの飛距離を出すために、ウェイトをルアーの後方へ移動させ、リトリーブ時にルアーの前部あるいは中央部付近に戻す機構(重心移動機構)が採用される。従来の重心移動システムとしては、ウェイト(主に球形状のもの)がルアー内部の溝に沿って転動する方式と、中通しのウェイト(主に円柱形状のもの)がワイヤを伝って移動する方式との2つの方式に大別される。
【0004】
上記のような重心移動式ルアーとして、例えば特許文献1や特許文献2等に開示されるようなルアーが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−346601号公報
【特許文献2】特開2008−253205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来ルアーにおいて、キャスティングからリトリーブまでの一連の動作中に、機械的摩擦等の要因でウェイトを円滑に移動させるのは必ずしも容易でなかった。また、このことがルアーアクションに影響する場合があり、結果的に魚に対するアピール効果にも影響が生じる。
【0007】
本発明はかかる実情に鑑み、ウェイトの円滑且つ効果的な移動動作を実現する釣り用ルアーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による釣り用ルアーは、小魚を模した外観形状となるように形成されたルアーボディの先端部付近に、適度に前下がり傾斜するリップを付設してなる釣り用ルアーであって、前記ルアーボディの中空内部に前部付近から後部にかけてガイドシャフトを設けると共に、このガイドシャフトに装着されたリニアブッシュが前記ガイドシャフトに沿って前後にスライド可能とし、前記ガイドシャフトの前端付近に配置されたマグネットに前記リニアブッシュが磁着保持されるようにしたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の釣り用ルアーにおいて、合成樹脂材料により真直棒状に形成された前記ガイドシャフトの外周面で、前記リニアブッシュに内蔵された複数のボールが転動することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の釣り用ルアーにおいて、前記リニアブッシュは、バランスウェイトとして機能することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マグネットから外れたリニアブッシュの遠心力が、キャスティング方向への慣性力へとロスなく変換され、円滑且つ素早いキャスティングを実現し、タイミングを逃すことなくリリースすることができる。
また、リニアブッシュの前部への移動時の摩擦係数が最も小さく、ルアーの前傾角度が僅少な状態でリニアブッシュが前部へと移動し、リトリーブ開始と同時にルアーが即座に泳ぎ始める。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態におけるルアーの構成例を示す側断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るリニアブッシュ及びガイドシャフトの構成例を示す側面図及び断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るリニアブッシュの具体的構成例を示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係るルアーにおけるキャスティング時の代表的なロッドアクションの例を模式的に示す図である。
図5】本発明の実施形態に係るルアーにおけるキャスティング時のリニアブッシュの挙動を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るルアーにおけるキャスティング後の着水時の状態を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係るルアーにおける着水後のリトリーブ時の状態を示す図である。
図8】本発明のルアーに係るリニアブッシュの変形例等をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明における釣り用ルアーの好適な実施の形態を説明する。
図1は、この実施形態における釣り用ルアー10の例を示している。図1において、11はルアーボディであり、このルアーボディ11は合成樹脂等の材料により小魚に似せた外観形状となるように形成されている。この場合、ルアーボディ11の長手方向(前後方向)に沿って左右二分した2つのボディハーフを相互に当接させることで一体化し、中空構造を有する。
【0014】
また、12はルアーボディ11の先端部に設けた糸環であり、この糸環12に釣糸もしくはライン13が結び付けられる。更に、14〜16はそれぞれフックハンガであり、これらにそれぞれスプリットリング17を介してフロントフック(釣針)18、ミドルフック19及びリヤフック20が係着する。21はルアーボディ11の先端部下側に付設したリップ(潜水板)である。このリップ21は薄い板状に形成され、ルアーボディ11に対して適度に下方に傾斜(典型的には前下がり)するように設けられる。ライン13を引くことで、リップ21が受けた水流抵抗によりルアー10は前傾して潜行姿勢をとることができる。
【0015】
本発明のルアー10において、ルアーボディ11の中空内部にはその前部付近から後部にかけて長手方向に沿ってガイドシャフト22が設けられると共に、このガイドシャフト22に装着されたリニアブッシュ23がガイドシャフト22上を前後にスライド可能になっている。
ガイドシャフト22は合成樹脂材料等(好適にはポリアセタール等)により真直な棒状に形成され、円形断面形状を有する。ルアーボディ11内部には前部付近と後部付近にそれぞれリブ24,25が設けられ、これらのリブ24,25によってガイドシャフト22の前後端が固定支持される。
【0016】
リニアブッシュ23は、その一部がステンレス鋼やタングステン等の金属により形成され、バランスウェイトとして機能するが、図2(A),(B)に示すように後述する直動軸受(もしくはリニア軸受)として構成されるブッシュ本体26の前後両側に典型的には磁石として構成されるウェイト27が結合してなる。ブッシュ本体26の内周面側には、ガイドシャフト22の長手方向に沿って複数のボール28が配列されたものが複数条配設される。全てのボール28は図示しないリテーナによってブッシュ本体26の内周面側に保持され、挿入されたガイドシャフト22の外周面に対して転動可動となる。
なお、ブッシュ本体26及びウェイト27は上記とは逆の構成、即ちウェイト27の両側にブッシュ本体26が結合してなるものであってもよい。また、ウェイト27の代わりに、同様な形状寸法を有する磁化されていないステンレス鋼製のものでも実施可能である。
【0017】
上記のようにガイドシャフト22に装着されたリニアブッシュ23は、ガイドシャフト22に沿って前後にスライド可能である。そしてリニアブッシュ23は、そのスライド位置に応じてルアー10全体の重心位置を変えることができ、即ちバランスウェイトとして機能する。リニアブッシュ23がガイドシャフト22の前端までスライド移動して(スイムポジション)、後述のマグネット29の磁力により磁着保持されることで、遊泳に適した前傾姿勢をとることができる。
【0018】
ここで、ブッシュ本体26について更に具体的に説明する。ブッシュ本体26を構成する直動軸受は所謂、球体無限循環型の転がり軸受であり、図3に示したように直動軸受30は外筒31と、外筒31の内側に装着されたリテーナ32と、リテーナ32により保持される前述のボール28とから構成され、ボール28はリテーナ32に無限循環可能に収容される。この場合、直動軸受30の両端面からボール28が脱落するのを防止するために外筒31の両端面の内側周面に抜け止め用の止め輪33(もしくはシール)が付設される。なお、図示を省略するが、外筒31の外周には筒状に成形した磁石が外筒31と同軸に装着固定される。
【0019】
上記の場合、直動軸受30のボール28は、非磁性球体であるのが好ましい。また、ガイドシャフト22及び外筒31やリテーナ32についても非磁性材料により形成されることが好ましい。非磁性材料としては例えば、非磁性金属あるいは合成樹脂材料及びセラミック材料等が好適である。
【0020】
図1を参照して、ルアーボディ11の前部付近にはマグネット29が配置固定される。リニアブッシュ23はマグネット29の磁力により磁着保持可能である。本例ではリブ24を利用してガイドシャフト22の前端付近にマグネット29が装着される。マグネット29として、ネオジム磁石が好適である。
【0021】
図4(A),(B),(C)はキャスティング時の代表的なロッドアクション(釣り竿1の操作)の例を示し、図5(A),(B),(C)は各ロッドアクションに対応するルアーボディ11内のリニアブッシュ23の挙動を示している。図4(A)に示すキャスティング当初には図5(A)のようにリニアブッシュ23はマグネット29の磁力によりルアーボディ11の前部(頭部側)に磁着保持されている。図4(B)のようにキャスティングされることで、図5(B)のようにリニアブッシュ23はマグネット29から外れて、ガイドシャフト22に沿ってルアーボディ11の後部(尾部側)へと向けて移動する。更に、図4(C)のようにリリース時には図5(C)のようにリニアブッシュ23は、ルアーボディ11の後部まで完全に移動する。
【0022】
キャスティング後、図6のように着水時にはリニアブッシュ23は、ルアーボディ11の後部に移動している。着水後、リトリーブすることにより図7のようにリップ21が受けた水流抵抗によりルアーボディ11の前部(頭部側)が下方へ回動する。この場合、ルアーボディ11が3°程度前傾することで、リニアブッシュ23は滑らかに前方へスライドし、そのままマグネット29に磁着保持される。これによりルアー10は所望の潜行姿勢をとることができる。
【0023】
本発明のルアー10において、キャスティング時の遠心力によりバランスウェイトとしてのリニアブッシュ23が、マグネット29の磁力を振り切って後部に移動する。この場合、キャスティングリリースの瞬間にリニアブッシュ23が後部へ移動するようにマグネット29及びリニアブッシュ23間に生じる磁力を調整することで、マグネット29から外れたリニアブッシュ23の遠心力が、キャスティング方向を指向する慣性力へとロスなく変換される。これにより円滑且つ素早いキャスティングを実現し、タイミングを逃すことなくリリースすることができる。
【0024】
また、ルアー10の着水後にライン13を適度に引いて前傾姿勢をとった瞬間に、バランスウェイトとしてのリニアブッシュ23がルアーボディ11の前部に移動してマグネット29の磁力で固定される。この移動時、ブッシュ本体26のボール28は、合成樹脂製のガイドシャフト22の平滑な外周面上で転動する。このため従来のバランスウェイトと比較してリニアブッシュ23の移動時の摩擦係数が最も小さく、ルアー10の前傾角度が僅少な状態でリニアブッシュ23が前部側へと移動し、これによりリトリーブ開始と同時にルアー10が即座に泳ぎ始めることができる。
【0025】
ちなみに、金属製のワイヤが貫通する金属製ウェイト等にあっては、ワイヤによってガイドされながら移動する際、ウェイトが受ける摩擦抵抗のために円滑動作が阻害されることがある。このためウェイトはギクシャクとした動きになり、そのままでは意図する釣りタイミングを逸してしまい、ひいては釣果に影響する。
【0026】
ここで、図8を参照してリニアブッシュ23の変形例等を説明する。リニアブッシュ23の基本的構成は図8(A)に示すように、上述のようにブッシュ本体26及びウェイト27が結合してなるが、図8(B)〜図8(E)に示すように両者は一体化せず、即ち分離して構成し、更にそれらの個数を増設することも可能である。
例えば図8(B)あるいは図8(C)のようにいずれか一方のウェイト27がブッシュ本体26から分離される。
【0027】
また、図8(D)あるいは図8(E)のようにいずれか一方のウェイト27側に更なるウェイト27が増設される。なお、図示を省略するが、リニアブッシュ23の両側のウェイト27の双方に対してウェイト27を増設することもでき、いずれの場合も合計で2個あるいは3個以上のウェイト27を増設することも可能である。
【0028】
各変形例においてリニアブッシュ23(ブッシュ本体26、ウェイト27)は上記同様に、ガイドシャフト22に沿って円滑にスライドする。これに加えて、図8(B)〜図8(E)のようにブッシュ本体26及びウェイト27を分離し、あるいはウェイト27を増設することで、リニアブッシュ23としてガイドシャフト22上で不規則あるいは変則的な特殊な動作をする。これによりルアー10の着水後の遊泳時に対象魚に対してアピール効果の高いルアーアクションを実現することができ、この点でも高い釣果を期待することができる。
【0029】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
本発明は上記実施形態に係るルアーの他に、フックを有するタイプのものに対して同様に適用可能であり、上記実施形態と同様な作用効果を得る。
【符号の説明】
【0030】
10 ルアー、11 ルアーボディ、12 糸環、13 ライン、14〜16 フックハンガ、17 スプリットリング、18 フロントフック、19 ミドルフック、20 リヤ、21 リップ、22 ガイドシャフト、23 リニアブッシュ、24,25 リブ、26 ブッシュ本体、27 ウェイト、28 ボール、29 マグネット、30 直動軸受、31 外筒、32 リテーナ、33 止め輪。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8