特許第6388523号(P6388523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特許6388523-掻込みリール 図000002
  • 特許6388523-掻込みリール 図000003
  • 特許6388523-掻込みリール 図000004
  • 特許6388523-掻込みリール 図000005
  • 特許6388523-掻込みリール 図000006
  • 特許6388523-掻込みリール 図000007
  • 特許6388523-掻込みリール 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388523
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】掻込みリール
(51)【国際特許分類】
   A01D 57/03 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
   A01D57/03
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-218532(P2014-218532)
(22)【出願日】2014年10月27日
(65)【公開番号】特開2016-82922(P2016-82922A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2016年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 定夫
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 卓二
(72)【発明者】
【氏名】樫田 謙一
(72)【発明者】
【氏名】岩本 瞬
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−131845(JP,U)
【文献】 実開昭61−131735(JP,U)
【文献】 実開昭56−081630(JP,U)
【文献】 特開2013−013348(JP,A)
【文献】 特開2005−211010(JP,A)
【文献】 実開昭62−162925(JP,U)
【文献】 米国特許第07650737(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 57/00−57/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバインに装備され、前記コンバインの前後方向で前側から後側に向けて作物を掻きこむ掻込みリールであって、
横向き軸心周りに回転駆動される左右のリールフレームと、
一端が前記左のリールフレームに連結されるとともに、他端が前記右のリールに連結されるように延びた支持バーと、
前記支持バーの延び方向で間隔をあけて前記支持バーに支持されているタインと、
前記支持バーに支持され、前記支持バーから前記タインの延び方向に延びる左右のアーム部材と、
前記左右のアーム部材に取り付けられ、前記タインの先端よりも前記支持バーに近い位置を前記支持バーの延び方向に沿って複数の前記タインにわたって延びるとともに、前記支持バーに支持されている掻込みバーと、を備え、
前記タインが弾性を有するように、かつ、前記アーム部材が剛性を有するように構成され、
前記掻込みバーは、前記前後方向で前記タインの後側に設けられ、
前記タインと前記掻込みバーとは、前記支持バーに支持されている箇所以外で連結されておらず、
記タインは、前記前後方向で前記掻込みバーに対して前側に曲がり可能である掻込みリール。
【請求項2】
記タイン及び前記アーム部材は湾曲しながら延びる湾曲体として形成されており、前記タイン及び前記アーム部材の湾曲線が類似している請求項1に記載の掻込みリール。
【請求項3】
前記掻込みバーは、前記アーム部材の先端領域に取り付けられている請求項1又は2に記載の掻込みリール。
【請求項4】
記タイン及び前記アーム部材は前記支持バーに固定された取付台を介して前記支持バーに取り付けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の掻込みリール。
【請求項5】
前記アーム部材は前記タインと共通のねじ締結具によって前記取付台に取り付けられている請求項4に記載の掻込みリール。
【請求項6】
記掻込みバーは、前記タインの先端からの距離を選択可能に前記アーム部材に取り付けられている請求項1から5のいずれか一項に記載の掻込みリール。
【請求項7】
前記タインは樹脂製である請求項1から6のいずれか一項に記載の掻込みリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全稈投入型コンバインに装備され、回転駆動されることで植立穀稈を掻き込む掻込みリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の全稈投入型コンバインに装備された掻込みリールの一例が例えば特許文献1に記載されている。特許文献1に示された全稈投入型コンバインには、掻込みリールに、左右のリールフレームと、左右のリールフレームに亘って設けられた支持バーと、支持バーに取り付けられたタインとが備えられている。刈取作業の際、掻込みリールを回転させると、支持バーに取り付けられたタインが、圃場に植えられた穀稈を引き起こして機体後方側へ掻き込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−172535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の掻込みリールでは、刈取対象となる植立穀稈の背がある程度高くないとタインに引っ掛からず、刈取対象が背の低いものである場合、タインの間に入り込んだ植立穀稈がタイン間からすり抜けてしっかりと掻き込めない可能性がある。
【0005】
このような実情に鑑み、背の低い植立穀稈であっても、確実に掻き込むことができる掻込みリールが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による、コンバインに装備され、前記コンバインの前後方向で前側から後側に向けて作物を掻きこむ掻込みリールは、
向き軸心周りに回転駆動される左右のリールフレームと、一端が前記左のリールフレームに連結されるとともに、他端が前記右のリールに連結されるように延びた支持バーと、前記支持バーの延び方向で間隔をあけて前記支持バーに支持されているタインと、前記支持バーに支持され、前記支持バーから前記タインの延び方向に延びる左右のアーム部材と、前記左右のアーム部材に取り付けられ、前記タインの先端よりも前記支持バーに近い位置を前記支持バーの延び方向に沿って複数の前記タインにわたって延びるとともに、前記支持バーに支持されている掻込みバーと、を備え、
前記タインが弾性を有するように、かつ、前記アーム部材が剛性を有するように構成され、
前記掻込みバーは、前記前後方向で前記タインの後側に設けられ、
前記タインと前記掻込みバーとは、前記支持バーに支持されている箇所以外で連結されておらず、
前記タインは、前記前後方向で前記掻込みバーに対して前側に曲がり可能である。
【0007】
この構成によれば、タイン列の間を遮断するように掻込みバーが横方向に延びているので、タイン列の間に入り込んできた背の低い植立穀稈は掻込みバーによって押さえ込まれる。これにより、刈取対象が背の低い植立穀稈であっても、しっかりと掻きこんでロスなく刈取ることができる。また、この構成では、左右のアーム部材はタインと同方向で、つまりタインと実質的には平行に延びて、掻込みバーを取り付けているので、支持バーから所定の間隔をあけて延びているタイン列に干渉しないで掻込みバーを支持することができる。
【0008】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記タイン及び前記アーム部材は湾曲しながら延びる湾曲体として形成されており、前記タイン及び前記アーム部材の湾曲線が類似している。この構成では、タインは、穀稈の引き起こし作用に適するように、湾曲形状を有する棒体であり、タインと同方向に延びているアーム部材がタインによる穀稈の引き起こし作用に悪い影響を与えないように、アーム部材もタインと類似する形状を備えている。
また、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記掻込みバーは、前記アーム部材の先端領域に取り付けられている。
【0009】
タイン及びアーム部材を支持バーに取り付ける際、タイン及びアーム部材を共通の部材を介して取り付けると取付構造が簡単となる。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記タイン及び前記アーム部材は前記支持バーに固定された取付台を介して前記支持バーに取り付けられている。この場合、取付台が、タイン及びアーム部材が共通の取付部材として機能する。その際、さらに、前記アーム部材を前記タインと共通のねじ締結具によって前記取付台に取り付けるように構成すれば、取付構造がさらに簡素化される。
【0010】
【0011】
植立穀稈の背の高さやしなり具合などは穀稈の種類や生育地域などによって異なるので、掻込みバーによる適正な掻込み作用を得るためには、掻込みバーのタイン先端から掻込みバーまでの距離は調整可能であることが好ましい。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記掻込みバーは、前記タインの先端からの距離を選択可能に前記アーム部材に取り付けられている。
【0012】
掻込みリールの回転時に生じるタインのしなりを掻込みバーが制限してしまうことを避けるためには、前記掻込みバーを前記タインの掻込みリール回転方向前側に近接するように配置するとよい。さらには、タインに十分なしなり、つまり弾性を与えるためには、タインを樹脂製とすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による掻込みリールを装備したコンバインの刈取部を示す側面図である。
図2】掻込みリールを示す平面図である
図3】掻込みリールに設けられたタインと掻込みバーとを示す部分正面図である。
図4】タイン及びアーム部材の支持バーへの取付構造を示す部分断面図である。
図5】掻込みリールの部分側面図である。
図6】アーム部材の支持バーへの取付構造を示す斜視図である。
図7】別実施形態における、タイン及びアーム部材の支持バーへの取付構造を示す部分断面図である
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には、全稈投入型コンバインの走行機体の前部に配置される刈取部1が示されている。刈取部1には、掻込みリール2と、左右一対の刈取フレーム10と、刈刃装置11と、オーガ12とが備えられている。
【0015】
刈刃装置11には、機体幅に略等しい刈幅を有するバリカン型の刈刃が備えられている。オーガ12は、刈刃装置11の後方に左右の刈取フレーム10に亘って配置され、刈刃装置11によって刈り取った刈取穀稈を刈幅の左右中央側に寄せて、ここでは図示されていないフィーダへ送り込む。オーガ12には、送り込み用の螺旋羽根と、螺旋羽根により横送りされた刈取穀稈をフィーダの始端に送り込むフィンガーとが備えられている。
【0016】
刈取部1の前部の上方には、圃場に植立した穀稈を後方に引き起こして掻き込む掻込みリール2が配置されている。全稈投入型コンバインは、この掻込みリール2によって圃場の植立穀稈を掻き込みながら刈取作業を行う。
【0017】
図1に示すように、刈取フレーム10に固定された横向きの揺動支点周りに上下揺動自在に左右一対のアーム14が刈取フレーム10に支持されている。掻込みリール2は、アーム14に支持されている。アーム14と刈取フレーム10との間には、油圧シリンダ15が取り付けられ、油圧シリンダ15の伸縮動によって、掻込みリール2は上下揺動する。
【0018】
図2に示すように、掻込みリール2は、側面視で略六角形状の外形を有する左右のリールフレーム20と、左右のリールフレーム20の中央部を連結する回転軸22とを備えている。回転軸22は、アーム14に回転可能に支持されている。回転軸22は、一方のリールフレーム20から外方に突き出しており、この突き出し部分で、この実施形態ではチェーン駆動機構として形成されている駆動機構16からの動力を受ける。これにより掻込みリール2が回転する。なお、掻込みリール2は、六角形状以外の形状、例えば、四角形状、五角形状、七角形状などであってもよいし、アシンメトリな形状であってもよい。
【0019】
図1図2とに示すように、掻込みリール2には、左右のリールフレーム20の頂点部分に亘って回転軸22と平行に支持バー21が設けられている。つまり、支持バー21は、リールフレーム20の外周領域で実質的に回転軸22から最も離れた位置に配置されている。各支持バー21はこの実施形態では丸パイプである。支持バー21には、図3図6に示すように、複数のタイン4が、ブラケット3を介して取り付けられている。その際、各タイン4は、支持バー21に沿って間隔をあけて支持バー21の延び方向(支持バー21の軸方向)に対する横断方向(支持バー21の径方向)に延びている。
【0020】
ブラケット3は、図3図4に示されているように、支持バー21軸方向に延びている、第ブラケット31と第2ブラケット32とを有する。第ブラケット31は、複数個所で折り曲げられた断面を有し、その基端側が支持バー21に固定され、その自由端側が折り畳まれて、弾性突起部311を形成している。第2ブラケット32は矩形溝断面を有するチャンネル部材であり、第ブラケット31に形成されている溝状部に配置されている。
【0021】
この実施形態では、タイン4は、樹脂材料で構成されており、図4に示すように、タイン4の断面は、ブラケット3に対する取付部となる基端部41からアーチ状に湾曲した棒体であり、基端部41の近くで厚肉形成されており、その厚肉形成部42にスリット43が設けられている。スリット43は支持バー21の方向に開口しており、第ブラケット31の自由端部である弾性突起部311がスリット43に係入され、第ブラケット31とタイン4との弾性変位可能な連結が作り出される。また、タイン4の基端部41は、第1ブラケット31の溝を形成している側壁に設けられた矩形の開口312を通り抜ける形状を有する。タイン4の基端部41は、開口312を通り抜けることで、第1ブラケット31と第2ブラケット32との間に形成される空間に係入される。第1ブラケット31と第2ブラケット32との底部には同軸心となる貫通孔313と貫通孔321とが設けられている。さらに、タイン4の基端部41にも貫通孔44が設けられており、第1ブラケット31と第2ブラケット32とタイン4とが共通の締結ボルト(ねじ締結具の一例)によってねじ締結される。
【0022】
図3図5図6とに示されているように、タイン4の先端より支持バー21に近い位置を支持バー21の延び方向に沿って(つまり回転軸22と平行に)複数のタイン4にわたって掻込みバー5が配置されている。掻込みバー5の両端は、支持バー21に連結されている左右一対のアーム部材6に連結されている。この実施形態では、掻込みバー5は、バー本体50とバー本体50をアーム部材6に接続するねじ連結具51とからなる。バー本体50は両端部にねじ孔が設けられた丸パイプである。ねじ連結具51はアーム部材6の先端部に設けられた連結孔60に挿通されるボルトである。このねじ連結具51がバー本体50のねじ孔に螺合するとともに、2つのナットによって、一方ではアーム部材6にねじ締結され、他方ではバー本体50にねじ締結される。
【0023】
タイン4は、全ての支持バー21(この実施形態では6本)に設けられているが、掻込みバー5は、全ての支持バー21ではなく、掻込みバー5が取り付けられない支持バー21があってもよい。例えば、1つおきの支持バー21に掻込みバー5を設けてもよい。さらに、掻込みバー5は、タイン列の全てにわたって延びるのではなく、タイン列の一部分にわたって延びるように構成してもよい。また、複数の短い掻込みバー5によって、タイン列をカバーするような構成を採用してもよい。
【0024】
アーム部材6は、図4図6とに示されているようほぼ円弧状に切断された板材からなり、一方の端部に連結孔60が設けられており、他方の端部に取付板61が固定されている。取付板61は、アーム部材6の固定箇所から左右方向に延びており、左端と右端の夫々にタイン4の配置ピッチと同じ間隔をあけて取付孔62が設けられている。アーム部材6をブラケット3に取り付ける際には、取付板61の取付孔62が貫通孔313と貫通孔321と貫通孔44とに同軸心となるように、取付板61を第1ブラケット31の溝底面に接当させ、締結ボルトで一体的に締結する。これにより、アーム部材6は支持バー21に連結されることになる。つまり、第1ブラケット31と第2ブラケット32とは、タイン4及びアーム部材6のための取付台として機能する。
【0025】
図4に示されているように、タイン4及びアーム部材6は、互いに類似する湾曲線に沿って湾曲しながら延びる湾曲体である。タイン4は樹脂製で弾性のある構造となっており、アーム部材6は金属製で剛性を有する構造となっている。掻込みバー5は掻込みリール2の回転方向でタイン4の前側に近接するように配置されているので、掻込みリール2の回転時の穀稈などとの接触によるタイン4の後方への曲がりは阻止されない。
【0026】
上述した実施形態では、掻込みバー5のアーム部材6への連結位置は一箇所だけであったが、二箇所以上用意し、選択可能にしてもよい。そのためには、例えば、図7に示すように、連結孔60を複数(図7では3つ)設けるとよい。掻込みバー5の連結に使用する連結孔60を選択することで、掻込みバー5とタイン4の先端との位置関係を刈取り作業に応じて適正なものに変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
植立穀稈などの農作物を掻き込む掻込みリールに利用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 :刈取部
10 :刈取フレーム
2 :掻込みリール
20 :リールフレーム
21 :支持バー
22 :回転軸
3 :ブラケット
31 :第1ブラケット
311 :弾性突起部
312 :開口
313 :貫通孔
32 :第2ブラケット
321 :貫通孔
4 :タイン
41 :基端部
42 :厚肉形成部
43 :スリット
44 :貫通孔
5 :掻込みバー
50 :バー本体
51 :ねじ連結具
6 :アーム部材
60 :連結孔
61 :取付板
62 :取付孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7