特許第6388526号(P6388526)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388526
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】光散乱装置及びそれを備えた水中集魚灯
(51)【国際特許分類】
   A01K 79/00 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
   A01K79/00 H
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-227737(P2014-227737)
(22)【出願日】2014年11月10日
(65)【公開番号】特開2016-86778(P2016-86778A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】501448406
【氏名又は名称】川島 章男
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】川島 章男
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−014273(JP,A)
【文献】 実開平03−077305(JP,U)
【文献】 特開2009−152115(JP,A)
【文献】 特開平05−074206(JP,A)
【文献】 特開2014−045691(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第2013−0008335(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第2010−0129800(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 79/00
F21V 23/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中集魚灯における光源装置の光照射方向に取り付けられる光散乱装置であって、
上端及び下端に水流を導入又は導出するための開口部が形成された筒型又は箱型の透明容器と、
前記開口部よりも大きいサイズに形成されると共に前記透明容器の内部に収容される反射部材と、
を備え、
前記反射部材は、前記開口部から前記透明容器の内部に流入する水流によって前記透明容器内で位置又は姿勢を変化させることにより、前記光源装置から照射される光を周囲へ散乱させることを特徴とする光散乱装置。
【請求項2】
前記開口部は網目によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の光散乱装置。
【請求項3】
前記反射部材はプレート状に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の光散乱装置。
【請求項4】
水中に投入して使用される水中集魚灯であって、
複数の光源装置と、
前記複数の光源装置を周方向に配置して保持する光源保持部材と、
前記光源保持部材によって保持される前記複数の光源のそれぞれの外側の位置に取り付けられ、前記光源装置から照射される光を周囲へ散乱させる光散乱装置と、
を有し、
前記光散乱装置は、
上端及び下端に水流を導入又は導出するための開口部が形成された筒型又は箱型の透明容器と、
前記開口部よりも大きいサイズに形成されると共に前記透明容器の内部に収容される反射部材と、
を備え、
前記反射部材は、前記開口部から前記透明容器の内部に流入する水流によって前記透明容器内で位置又は姿勢を変化させることにより、前記光源装置から照射される光を周囲へ散乱させることを特徴とする水中集魚灯。
【請求項5】
前記光散乱装置は、前記光源保持部材に対して着脱自在であることを特徴とする請求項4に記載の水中集魚灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に投入して使用する光散乱装置及びそれを備えた水中集魚灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚を集めるために水中に投入して使用する水中集魚灯において、照明光源にLED(Light Emitting Diode)を利用したものが知られている(例えば特許文献1)。LEDは低消費電力であるため、これを照明光源に採用すれば、長時間に亘って低コストで水中集魚灯を使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−18157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の水中集魚灯は、照明光源から単に光を周囲に照射するだけであるため、一定の集魚効果は期待できるものの、小魚などを狙う比較的大きな魚や烏賊などを効果的に集めることは困難であった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、水中集魚灯の集魚効果を従来よりも飛躍的に改善させる光散乱装置及びそれを備えた水中集魚灯を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、上記目的を達成するため、本発明は、第1に、水中集魚灯における光源装置の光照射方向に取り付けられる光散乱装置をその対象としている。この第1の発明が解決手段として採用したところは、水中集魚灯における光源装置の光照射方向に取り付けられる光散乱装置であって、上端及び下端に水流を導入又は導出するための開口部が形成された筒型又は箱型の透明容器と、開口部よりも大きいサイズに形成されると共に透明容器の内部に収容される反射部材と、を備え、反射部材が、開口部から透明容器の内部に流入する水流によって透明容器内で位置又は姿勢を変化させることにより、光源装置から照射される光を周囲へ散乱させる構成にある。
【0007】
かかる構成によれば、光源装置の周囲に小魚が集まっているかのような態様で光を周囲に散乱させることができる。小魚などを狙う比較的大きな魚や烏賊などを従来よりも効果的に集めることができるようになる。
【0008】
また上記構成を有する光散乱装置において、開口部は網目によって形成されることが好ましい。開口部を網目で形成すれば、透明容器の周囲にある水流をそのまま自然な水流として透明容器の内部に取り入れることができるため、反射部材の位置又は姿勢を自然な態様で変化させることができる。
【0009】
また上記構成を有する光散乱装置において、反射部材はプレート状に形成されることが好ましい。
【0010】
また本発明は、第2に、水中に投入して使用される水中集魚灯をその対象としている。この水中集魚灯は、上記構成を有する光散乱装置を備えるものである。すなわち、この第2の発明が解決手段として採用したところは、水中に投入して使用される水中集魚灯であって、複数の光源装置と、複数の光源装置を周方向に配置して保持する光源保持部材と、光源保持部材によって保持される複数の光源のそれぞれの外側の位置に取り付けられ、光源装置から照射される光を周囲へ散乱させる光散乱装置と、を有し、光散乱装置は、上端及び下端に水流を導入又は導出するための開口部が形成された筒型又は箱型の透明容器と、開口部よりも大きいサイズに形成されると共に透明容器の内部に収容される反射部材と、を備え、反射部材が、開口部から透明容器の内部に流入する水流によって透明容器内で位置又は姿勢を変化させることにより、光源装置から照射される光を周囲へ散乱させる構成である。
【0011】
また上記構成を有する水中集魚灯において、光散乱装置は、光源保持部材に対して着脱自在であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透明容器の内部に収容された反射部材が開口部から流入する水流によって位置又は姿勢を変化させることにより、光源装置から照射される光を周囲へ散乱させるため、小魚などを狙う比較的大きな魚や烏賊などを効果的に集めることが可能であり、従来よりも集魚効果が飛躍的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】水中集魚灯の外観構成を示す斜視図である。
図2】水中集魚灯の使用状態の一例を示す図である。
図3】水中集魚灯を上から見た平面図である。
図4】水中集魚灯の側面図である。
図5図4とは異なる形状の垂直ラダーを備えた水中集魚灯の側面図である。
図6】垂直ラダーによる水中集魚灯の姿勢安定作用を示す図である。
図7】側面ラダーを取り付け可能な水中集魚灯の一例を示す図である。
図8】側面ラダーの作用効果を説明する図である。
図9】光源装置の一構成例を示す図である。
図10】光源装置の断面構造を示す図である。
図11】基板収容器の内部における電源ケーブルの配線パターン例を示す図である。
図12】光散乱装置を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する部材には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態である水中集魚灯1を示す斜視図である。また図2は、水中集魚灯1の使用状態の一例を示す図であり、図3は、水中集魚灯1を上から見た平面図である。水中集魚灯1は、図2に示すように例えば船100の上から水中に投入されて使用される集魚灯であり、水中において周囲に光を照射して魚を集める装置である。この水中集魚灯1は、船100に設けられる水上電源110と電源ケーブル4を介して接続され、船上からの電力供給によって発光する。また水中集魚灯1は、船100から延びるチェーン120によって所定の水深で保持される。ただし、水中集魚灯1は、チェーン120に限らず、ワイヤーやロープによって水中に吊り下げられた状態に保持されるものであっても構わない。
【0016】
この水中集魚灯1は、図1に示すように複数の光源装置2を周方向に配置して保持する光源保持部材3を備えている。光源保持部材3は、例えば金属製のプレートやL型アングルなどを概略筒状の立体形状に組み付けたフレーム構造を有し、その側面の複数箇所に光源装置2を取り付けたものである。本実施形態では、例えば図3に示すように光源保持部材3が平面視で概略四角形となるように形成され、4つの側面のそれぞれに光源装置2が取り付けられる。光源保持部材3は、その上端部にフック状の係合部11を備えている。水中集魚灯1は、その係合部11にチェーンやワイヤー、ロープなどを係合させることにより水中に吊り下げた状態で支持される。
【0017】
光源装置2は、例えばLED(Light Emitting Diode)などの発光素子30を光源として用いている。LEDを光源として用いることにより、消費電力を抑えることができる。光源装置2には、複数の発光素子30が設けられる。具体的に説明すると、光源装置2は、複数の発光素子30を基板上の2次元配列した薄板状の発光プレートとして構成される。光源保持部材3に取り付けられる複数の光源装置2のそれぞれは、水上電源110に繋がる電源ケーブル4が接続され、水上からの電力供給によって発光し、発光プレートの表面から光を照射する。ここで各光源装置2は複数の発光素子30が実装されている表面側を外側に向けた状態で光源保持部材3の各側面に取り付けられるため、水中集魚灯1は、光源保持部材3の4つの側面のそれぞれから外側に向けて光を照射する。
【0018】
また各光源装置2は、光源保持部材3に対して着脱可能に取り付けられる。例えば図示を省略するビスを用いて光源装置2を光源保持部材3に取り付けることにより、そのビスを外せば、光源装置2を光源保持部材3から簡単に取り外すことができる。このように光源装置2は、光源保持部材3に対して着脱可能に取り付けられることにより、光源装置2を光源保持部材3から取り外してメンテナンス作業を行ったり、交換したりすることができるようになる。尚、光源装置2の詳細については、後述する。
【0019】
また水中集魚灯1は、光源保持部材3の下端部から下方に突出する垂直ラダー5を備えている。図4は、水中集魚灯1の側面図である。光源保持部材3の下端部には下面の対角線に沿ってフランジ部7が設けられている。垂直ラダー5は、そのフランジ部7にビス8で固定され、光源保持部材3の下面から垂直に突出した状態に取り付けられる。垂直ラダー5は、アルミやステンレスなどによって構成される金属製プレートであり、例えば図4に示すように矩形状のプレートとして構成される。この垂直ラダー5は、その一端が光源保持部材3の略中央位置に設けられ、他端が光源保持部材3の外側の所定位置まで延設された状態となっている。そして水中集魚灯1は、図3に示すように平面視において垂直ラダー5が突出している部分が後方側となり、その反対側の部分が前方側となる。
【0020】
ここで垂直ラダー5は必ずしも矩形であるものに限られない。図5は、図4とは異なる形状の垂直ラダー5の一例を示す図である。図5に示す垂直ラダー5は、前方側(図5に示すB側)が三角形状に形成され、後方側(図5に示すA側)が矩形状に形成された形態を有しており、前方側の端部が光源保持部材3の中央位置よりも前方側に固定され、後方側の端部が図4と同様に光源保持部材3の外側の所定位置まで延設された状態となっている。すなわち、光源保持部材3に取り付けられる垂直ラダー5は、光源保持部材3の重心位置(中心位置)を基準にして後方側の面積を前方側の面積よりも大きくすることができるものであれば、どのような形状であっても構わない。
【0021】
このような垂直ラダー5は、いわゆる風見鶏と同様の作用を示す。すなわち、図6に示すように水中集魚灯1に対して一定方向の潮流F1が作用すると、垂直ラダー5には、水中集魚灯1を回転させようとするモーメントが働く。そして垂直ラダー5は、光源保持部材3の外側に突出させた後方側を潮流F1の後方側に向けた姿勢となって安定する。すなわち、垂直ラダー5は、水中集魚灯1の前方側を潮流F1の上流側に向けると共に、後方側を潮流F1の下流側に向けた状態で水中集魚灯1の姿勢を安定させる機能を有し、水中集魚灯1が水中で回転してしまうことを防止するのである。これにより、水中集魚灯1は、光源保持部材3の上端部を通って水上電源110に接続される電源ケーブル4を過度に捻れされてしまうことがなく、捻れによる電源ケーブル4の破損を防止することができる。また垂直ラダー5によって水中集魚灯1の回転を低減することができるため、水中集魚灯1の周囲に集まった魚を逃がしてしまうことがない。そのため、水中集魚灯1は、高い集魚効果を維持することができる。
【0022】
また水中集魚灯1は、光源保持部材3の側面に側面ラダー9を設けても良い。図7は、側面ラダー9を取り付け可能な水中集魚灯1を示す図である。水中集魚灯1は、その左右両側面に側面ラダー9を取り付け可能なプレート状の支持部材40を備えている。この支持部材40は、例えば溶接などによって光源保持部材3の左右両側面に固定される。支持部材40は、ビス48を装着して固定するための固定孔41と、その固定孔41を中心とする所定半径の円弧状に開放された長孔42とを有する。一方、支持部材40に取り付けられる側面ラダー9は、平板状のラダー本体の端部が略直角に折り曲げられて構成される装着プレート45を有する。その装着プレート45には、固定孔41と長孔42の半径に等しい間隔を隔てて開放された一対の孔46,47が形成される。そして孔47と固定孔41に対してビス48を挿入してビス48を固定することにより側面ラダー9を光源保持部材3の側面に固定することができると共に、孔46と長孔42に対してビス48を挿入してビス48を固定することにより側面ラダー9を所定の角度に調整することができる。
【0023】
図8は、側面ラダー9の作用効果を説明する図である。図8(a)に示すように、側面ラダー9は、固定孔41を回転中心にして円弧状の長孔42が形成された範囲内で取り付け角度θを調整可能であり、水中集魚灯1の前方側に向かって側面ラダー9を下降傾斜させた状態に配置したり、上昇傾斜させた状態に配置したりすることができる。また側面ラダー9を光源保持部材3の側面に対してほぼ水平な状態に配置することも可能である。
【0024】
図8(a)では、側面ラダー9を水中集魚灯1の前方側に向かって下降傾斜させた状態の角度調整例を示している。このように側面ラダー9を水中集魚灯1の前方側に向かって下降傾斜させた場合、図8(b)に示すように水中集魚灯1の前方側から潮流F1が作用すると、側面ラダー9は、その潮流F1によって矢印F2で示すように水中集魚灯1を下方へ沈める方向の力を生じさせ、水中集魚灯1を所定水深へと沈めることができるようになる。これに対し、側面ラダー9を水中集魚灯1の前方側に向かって上昇傾斜させた場合には潮流F1を受けると、水中集魚灯1を上方へ浮上させる力を生じさせる。このように水中集魚灯1は、取り付け角度θを調整可能な側面ラダー9を備えることにより、その取り付け角度θに応じて水中集魚灯1の水中における上下方向の位置を安定させることができるようになる。
【0025】
このように水中集魚灯1は、垂直ラダー5を備えることによって水中における回転方向の姿勢を安定化できると共に、左右側面に対して横方向に突出した一対の側面ラダー9を備えることにより水中における上下方向の位置を安定化できる構成となっている。
【0026】
次に光源装置2の詳細について説明する。図9は、光源装置2の一構成例を示す図である。光源装置2は、複数の発光素子30が実装される基板31と、基板31に接続される電源ケーブル4と、基板収容器50と、充填材55と、プレート部材54とを備えて構成される。基板収容器50は、中央に基板31を収容する凹部51を有し、その凹部51の周囲にある周壁部52の一部に、塩化ビニールなどで被覆された電源ケーブル4を通す溝53を形成した構成である。ここで凹部51の深さは、発光素子30を実装した基板31の厚みよりも若干大きくなるように形成される。プレート部材54は、例えば発光素子30からの光を透過させる透明体として構成され、基板収容器50とほぼ同サイズの外形を有し、その縁部が基板収容器50の周壁部52と接合することにより、凹部51を密閉するものである。尚、プレート部材54は、半透明体であっても良いが、発光素子30から照射される光の利用効率を向上させる観点からすれば、透明体として構成されることが好ましい。また、プレート部材54は、樹脂製のものであっても良いが、水中に対して繰り返し投入されるハードユースを考慮すると、ガラス製のものであることが好ましく、より好ましくは通常のガラスよりも強度の高い強化ガラスを採用することである。
【0027】
複数の発光素子30は、基板31の表面に対して2次元配列された状態に実装される。また電源ケーブル4は、基板31の表面側に設けられた導電体から成る接続部32に対して電気的に接続される。そして発光素子30が実装された基板31は、図9(a)に示すように基板収容器50の凹部51に対して配置される。このとき、電源ケーブル4は、凹部51の内側から溝53に対して最短距離で配線されるのではなく、例えば凹部51の内側の空間において基板31の周囲を少なくとも1回巻き回した状態に配線され、溝53を通って基板収容器50の外側へと配線される。
【0028】
そして基板31と電源ケーブル4とが凹部51の内側に収容された状態で凹部51の内側及び溝53の内側に充填材55が充填される。充填材55は、例えば樹脂やシリコンなどによって構成され、充填時には一定の粘性と流動性とを有し、凹部51の内側において基板31の周囲の隙間や電源ケーブル4の周囲の隙間などに進入して凹部51の内側空間を埋め尽くすように隙間無く充填される。尚、充填材55は、充填後に流動性を失って固化するものであっても良いし、粘性と流動性を失わないものであっても良い。このような充填材55は、基板31の表面に充填される充填材と、基板31の周囲に充填される充填材とが異なるものであっても良い。ただし、少なくとも基板31の表面に充填される充填材は、充填後において光を透過させる透明性を有するものであることが好ましい。
【0029】
そして充填材55が凹部51の内側空間に充填された後、プレート部材54が基板収容器50の周壁部52に対して接着される。このとき、プレート部材54によって密閉される凹部51の内側空間に気泡が生じないようにしてプレート部材54と基板収容器50とが接着される。このようにして光源装置2は、図9(b)に示すようにプレート部材54が設けられた一面から光を外部に向けて照射する発光プレートとして構成される。
【0030】
図10は、光源装置2の断面構造を示す図である。図10に示すように光源装置2は、基板31が収容された凹部51の内側空間がプレート部材54によって密閉された状態において、基板31、発光素子30及び電源ケーブル4の周囲に対して充填材55が充填されており、密閉空間内に気泡や空気層が存在しないように構成される。そのため、水中集魚灯1が水中に投入されても、光源装置2は水圧の影響を受けない。すなわち、光源装置2に作用する水圧は、水面で1気圧、水深10mで2気圧、水深20mで3気圧、水深30mで4気圧、というように水深10mごとに1気圧ずつ増加する。例えば水深30mで光源装置2に4気圧が作用する場合、光源装置2の内部に気泡や空気層が存在すると、その気泡や空気層の体積は水圧によって1/4に圧縮される。そのため、光源装置2の内部に気泡や空気層が存在すると、水中集魚灯1の水深が深くなるに連れて光源装置2の外壁部に大きな凹みが生じ、その凹みが発光素子30や基板31を圧迫して破損させる要因となる。これに対し、図10に示したように光源装置2の内側空間に気泡や空気層が存在しない場合には、光源装置2に対して水圧が作用しても光源装置2の外壁部に凹みは生じない。それ故、水中集魚灯1が水中深くに投入される場合であっても、光源装置2を破損させることなく正常に使用し続けることができる。
【0031】
上記のような光源装置2は、例えば電源ケーブル4が挿通される溝53を上に向けた状態で光源保持部材3の側面に取り付けられる。ここで、基板収容器50の溝53が形成された部分にも、電源ケーブル4の周囲の隙間に充填材55が充填される。しかしながら、充填材55は、電源ケーブル4の外周面に対して必ずしも密着状態となるものではなく、電源ケーブル4との間に微細な隙間を生じることもある。そのような場合、水中集魚灯1を水中に投入すると、電源ケーブル4と充填材55との間の僅かな隙間に対して毛細管現象が生じ、電源ケーブル4に沿って水分が光源装置2の内側に浸入する。毛細管現象によって浸入する水分が基板31の表面に設けられた導電体から成る接続部32に到達すると、水分による腐食がはじまり、光源装置2を破損する。特に、水中集魚灯1が海中に投入される場合には、海水に含まれる塩分によって導電体が著しく腐食し、光源装置2が早期に使用できなくなるという問題がある。
【0032】
一方、電源ケーブル4と充填材55との僅かな隙間に毛細管現象で浸入していく水分は、重力に従って下方に向かって進行していく性質を有している。そして本実施形態では、上述したように電源ケーブル4は、基板収容器50の内側において基板31の周囲を少なくとも1回巻き回すように配線されており、基板収容器50の溝53から基板31の接続部32へと向かう配線パターンとして基板収容器50とプレート部材54とで形成される密閉空間内で少なくとも下から上に向かう配線部分を有している。この下から上に向かう配線部分は、毛細管現象で浸入した水分が進行する際の抵抗となるため、基板31の表面に設けられた接続部32にまで水分が到達してしまうことを防止する。
【0033】
ここで、光源装置2における電源ケーブル4の配線パターンは、必ずしも基板31の周囲を巻き回すパターンには限られない。すなわち、毛細管現象による浸水を防止するためには、基板収容器50の溝53から基板31の接続部32へと向かう配線パターンに、少なくとも下から上に向かう配線部分を有していれば良い。図11は、基板収容器50の内部における電源ケーブル4の配線パターン例を示す図である。
【0034】
図11(a)は、上述したように基板31の周囲を1回巻き回した状態の配線パターンを示している。この光源装置2は、基板収容器50の溝53を上に向けて配置すると、基板31の右側に下から上に向かう配線部分59が形成される。そのため、この配線部分59が水分の上昇を妨げる抵抗となるので、基板31などの腐食を防止することができる。
【0035】
図11(b)は、基板収容器50の溝53を下に向けて配置する場合の電源ケーブル4の配線パターンの例である。図11(b)に示す配線パターンでは、光源装置2の下部から光源装置2の内部に導かれた電源ケーブル4が上向きに配線され、基板31の上部にある接続部32へと繋がっており、溝53から接続部32に対して下から上に向かう配線部分59が構成されている。そのため、この配線部分59が水分の上昇を妨げる抵抗となるので、基板31などの腐食を防止することができる。
【0036】
図11(c)は、基板収容器50の内部で電源ケーブル4を複数回折り返した配線パターンの例を示している。図11(c)に示す配線パターンでは、基板収容器50の内部で電源ケーブル4が複数回折り返され、下から上に向かう配線部分59が複数箇所に形成される。そのため、この配線パターンでは、下から上に向かう配線部分59の長さを、図11(a)及び図11(b)に示した配線パターンよりも長くすることができ、毛細管現象によって浸入する水分が接続部32まで到達してしまう可能性をより一層低減することができる。それ故、図11(c)に示すように電源ケーブル4を基板収容器50の内部で複数回折り返す配線パターンが最も好ましいパターンである。
【0037】
上記のような光源装置2は、水圧の影響を受けることがなく、また腐食の可能性も低いことから長期間に亘って良好に使用し得る光源が実現される。そのため、このような光源装置2を搭載した水中集魚灯1は、メンテナンス周期が長く、ランニングコストを低廉に抑えることができるという点で優れている。
【0038】
また図1に示すように、本実施形態の水中集魚灯1は、各光源装置2の正面側に光散乱装置6を取り付け可能である。この光散乱装置6は、例えば箱型の透明容器20として構成され、光源装置2の左右両側に設けられたL型アングルで構成されるガイド部10に対し、上方からスライド挿入することによって光源装置2の正面位置に取り付けられる。この場合、光散乱装置6は、図3において破線で示すように、光源保持部材3のL型アングルによって透明容器20の左右両側縁部が縦方向に保持される。尚、光散乱装置6は、光源保持部材3によって透明容器20の底部が保持されると共に、スライド挿入後にガイド部10の上端部が閉鎖されることにより、水中において光源保持部材3から落下することがないように構成される。
【0039】
この光散乱装置6は、透明容器20の上端及び下端に水流を導入又は導出するために網目状に形成された複数の開口部21、22を備えている。更に光散乱装置6は、透明容器20の内部に開口部21、22よりも大きいサイズに形成された反射部材23を備えている。反射部材23は、薄肉且つ軽量のプレート状に形成され、表面が光を反射する光沢のある部材によって構成される。このような反射部材23は、光沢のある金属製プレートによって構成されても良いし、或いは、樹脂プレートの表面に光沢のある金属をメッキしたものであっても良い。また反射部材23の形状は、丸形や角形などどのような形状であっても構わない。例えば反射部材23の形状を細長の木の葉型に形成すれば、小魚を模した光の反射を実現することができる。
【0040】
図12は、光散乱装置6を拡大して示す図である。光散乱装置6は、各光源装置2の正面側に取り付けられた状態で水中に投入されると、透明容器20の上端部及び下端部に設けられた開口部21、22から矢印F3、F4に示すように水流を流入させる。この水流は水中集魚灯1の周囲にある潮流などによって変化するため、光散乱装置6の内部には周囲の潮流などに応じた水流が発生することになる。そして光散乱装置6の内部に生じる水流は、透明容器20の内側に収容されている反射部材23を流動させる。すなわち、反射部材23は、光散乱装置6の上端部及び下端部から流入する水流によって透明容器20内でその位置又は姿勢を変化させ、その位置又は姿勢に応じて光源装置2から照射される光を周囲へ散乱させる。したがって、反射部材23によって周囲に反射される光は水中集魚灯1の周囲に小魚が集まっているかのような態様で周囲に散乱されるため、比較的大きな魚や烏賊などを収集する集魚効果をより一層高めることができるようになる。
【0041】
このような光散乱装置6は、光源保持部材3に対して着脱自在である。そのため、集魚効果を狙う魚の種類などに応じてそれぞれ異なるサイズ又は形状の反射部材23が収容された光散乱装置6を光源保持部材3に装着することができる。また光散乱装置6が不要なときには、光散乱装置6を光源保持部材3から取り外した状態で水中集魚灯1を使用することも可能である。尚、光散乱装置6を構成する透明容器20は、必ずしも箱型には限られず、筒型であっても構わない。
【0042】
以上、本発明に関する一実施形態について説明したが、本発明は上述した内容のものに限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
【0043】
例えば、上記実施形態では、電源ケーブル4が水上電源110から光源装置2に対して直接接続される場合を例示したが、これに限られるものではない。すなわち、光源装置2を交換することを考慮した場合には、水上電源110に繋がる電源ケーブル4と、光源装置2に繋がる電源ケーブル4とを別のケーブルとして構成し、それら2つの電源ケーブル4を防水コネクタで互いに接続する構成とすることがより好ましい。この場合、光源装置2を交換するときには、防水コネクタを外すことで複数の光源装置2のうちの1つだけを交換することが可能となるため、優れた利便性を発揮する。
【0044】
また例えば光源保持部材3の側面に取り付ける複数の光源装置2は、それぞれを異なる波長(色)の光を照射するように構成しても良い。例えば白色を照射する光源装置2と青色を照射する光源装置2とを2枚ずつ組み合わせて使用することにより、集魚効果をより一層高めることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 水中集魚灯
2 光源装置
3 光源保持部材
4 電源ケーブル
5 垂直ラダー
6 光散乱装置
9 側面ラダー
30 発光素子
55 充填材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12