(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388536
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】超音波振動子アセンブリ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20180903BHJP
A61B 8/00 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
H04R17/00 330H
H04R17/00 330J
H04R17/00 332A
A61B8/00
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-518018(P2014-518018)
(86)(22)【出願日】2012年6月26日
(65)【公表番号】特表2014-523689(P2014-523689A)
(43)【公表日】2014年9月11日
(86)【国際出願番号】IB2012053216
(87)【国際公開番号】WO2013001448
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2015年6月24日
【審判番号】不服2017-2717(P2017-2717/J1)
【審判請求日】2017年2月24日
(31)【優先権主張番号】61/501,307
(32)【優先日】2011年6月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】スドル ヴォイテク
【合議体】
【審判長】
森川 幸俊
【審判官】
関谷 隆一
【審判官】
井上 信一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−158467(JP,A)
【文献】
特開2003−143696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の送信方向に超音波を送信するための超音波振動素子を有する超音波振動子アセンブリであって、前記超音波振動素子の少なくとも一つは、
前記一の送信方向に対して、上面、下面、及び側面を持つ圧電層と、
下部電極層と、
上部電極層と、
前記上部電極層に付与される少なくとも1つのマッチング層と、
前記上部電極層に電気的に接続する導電接続層と、
を有し、
導電層が、前記圧電層の少なくとも1つの特定の圧電層の前記上部電極層及び前記下部電極層に接続されるように、前記圧電層の前記少なくとも1つの特定の圧電層の前記側面に、少なくとも部分的に付与される超音波振動子アセンブリにおいて、
前記導電層が、前記少なくとも1つのマッチング層の側面に更に付与され、
前記導電層が、前記導電接続層を半導体チップに電気的に接続することを特徴とする、超音波振動子アセンブリ。
【請求項2】
前記特定の圧電層を有する前記超音波振動素子は、超音波を送信又は受信するように動作しないダミー素子である、請求項1に記載の超音波振動子アセンブリ。
【請求項3】
前記特定の圧電層を有する前記超音波振動素子は、前記超音波振動素子の行又はアレイの中で最も外側の超音波振動素子である、請求項1に記載の超音波振動子アセンブリ。
【請求項4】
前記導電層が付与される前記側面は、前記超音波振動素子の行又はアレイの中で外側に面している側面である、請求項3に記載の超音波振動子アセンブリ。
【請求項5】
前記下部電極層に付与される少なくとも1つのデマッチング層を更に有する、請求項1に記載の超音波振動子アセンブリ。
【請求項6】
前記導電層は、前記少なくとも1つのデマッチング層の側面に更に付与される、請求項5に記載の超音波振動子アセンブリ。
【請求項7】
一番上のマッチング層に付与される上部導電層及び/又は一番下のデマッチング層に付与される下部導電層を更に有する、請求項6に記載の超音波振動子アセンブリ。
【請求項8】
前記超音波振動素子の前記下部電極層のそれぞれ又は一部は、前記半導体チップに接続される、請求項1に記載の超音波振動子アセンブリ。
【請求項9】
前記特定の圧電層を有する前記超音波振動素子の前記下部電極層は、外部電気的接続のためにフレキシブル回路に接続される、請求項1に記載の超音波振動子アセンブリ。
【請求項10】
一の送信方向に超音波を送信するための超音波振動素子を有する超音波振動子アセンブリの製造方法であって、前記方法は、前記超音波振動素子の少なくとも一つに対して、
前記一の送信方向に対して、上面、下面、及び側面を持つ圧電層を提供するステップと、
下部電極層を付与するステップと、
上部電極層を付与するステップと、
前記上部電極層にマッチング層の少なくとも1つを付与し、前記下部電極層に少なくとも1つのデマッチング層を付与するステップと、
前記圧電層の少なくとも1つの特定の圧電層の前記上部電極層及び前記下部電極層に接続されるように、導電層を、前記圧電層の少なくとも1つの特定の圧電層の前記側面に、少なくとも部分的に付与するステップと、
前記上部電極層に電気的に接続する導電接続層を付与するステップと、
を有する方法において、
前記マッチング層及び前記デマッチング層の少なくとも1つの側面に前記導電層を付与するステップと、
前記導電層により、前記導電接続層を半導体チップに電気的に接続するステップと、を更に有することを特徴とする、超音波振動子アセンブリの製造方法。
【請求項11】
前記導電層が、メタライゼーションによって付与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記メタライゼーションが、スパッタリング又は導電性エポキシの付与によって行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
一の送信方向に超音波を送信するための超音波振動素子を有する超音波振動子アセンブリの製造方法であって、前記方法は、前記超音波振動素子の少なくとも一つに対して、
前記一の送信方向に対して、上面、下面、及び側面を持つ圧電層を提供するステップと、
前記圧電層にマッチング層の少なくとも1つを付与し、前記圧電層に少なくとも1つのデマッチング層を付与するステップと、
前記マッチング層に上部電極層を付与するステップと、
前記デマッチング層に下部電極層を付与するステップと、
前記圧電層の少なくとも1つの特定圧電層の前記上部電極層及び前記下部電極層に接続されるように、導電層を、前記圧電層の少なくとも1つの特定の圧電層の前記側面に、少なくとも部分的に付与するステップと、
前記上部電極層に電気的に接続する導電接続層を付与するステップと、
を有する方法において、
前記マッチング層及び前記デマッチング層の側面に前記導電層を付与するステップと、
前記導電層により、前記導電接続層を半導体チップに電気的に接続するステップと、を更に有し、
前記下部電極層、前記上部電極層、及び前記導電層は、圧電材料でできた共通層への1つの共通メタライゼーションステップで付与され、
前記導電層が付与される側面は、前記超音波振動素子の行又はアレイの中で外側に面している面である、超音波振動子アセンブリの製造方法。
【請求項14】
前記超音波振動素子は、前記共通メタライゼーションステップが行われた後に、圧電材料でできた前記共通層から切り出される又はダイシングされる、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を通常の送信方向に送信するための超音波振動素子を有する超音波振動子アセンブリに関する。本発明は、更に、このような超音波振動子アセンブリの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
US2008/0315331 A1は、cMUTアレイに形成されたビア及びASICを通ってアース接続された振動子アセンブリを開示する。振動子モジュールは、薄膜に渡って位置付けられた前面電極を有する半導体基板上に形成されたcMUT振動子サブアレイを有し、前記薄膜は、絶縁支持部に架け渡されている。個々のセルは、ASIC回路セルからの信号を受信するための底面電極を含む。導電ビアは、前面電極をcMUT基板上の接触部に接続させるために、隣接する振動子セル間の絶縁支持部の中に形成される。しかしながら、US2008/0315331 A1に開示される振動子アセンブリは、かなり複雑で、それゆえ製造が容易でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
超音波振動子アセンブリと、より簡易な製造で、よって、より安価な超音波振動子アセンブリを提供する対応する製造方法と、を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1態様では、通常の送信方向に超音波を送信するための超音波振動素子を有する超音波振動子アセンブリが示されている。超音波振動素子のそれぞれ又は一部のそれぞれは、下部電極層及び上部電極層だけでなく、通常の送信方向に対して、上面、下面、及び側面を持つ圧電層を有する。更に、導電層は、圧電層の少なくとも1つの特定の圧電層の上部電極層及び下部電極層に接続されるように、圧電層の少なくとも1つの特定の層の側面に少なくとも部分的に(直接)付与される。
【0005】
本発明の更なる態様では、超音波振動子アセンブリの製造方法が示されており、前記アセンブリは、通常の送信方向に超音波を送信するための超音波振動素子を有する。前記方法は、超音波振動素子のそれぞれ又は一部のそれぞれに、通常の送信方向に対して、上面、下面、及び側面を持つ圧電層を提供するステップを有する。前記方法は、更に、超音波振動素子のそれぞれ又は一部のそれぞれに、下部電極層を配置又は付与するステップと、上部電極層を配置又は付与するステップと、を有する。前記方法は、更に、導電層が圧電層の少なくとも1つの特定の圧電層の上部電極層及び下部電極層に接続されるように、圧電層の少なくとも1つの特定の層の側面に、少なくとも部分的に(直接)導電層を付与するステップを含む。
【0006】
別の態様では、超音波振動子アセンブリを製造する方法が示されており、前記アセンブリは、通常の送信方向に超音波を送信するための超音波振動素子を有する。前記方法は、上面、下面及び側面を持つ圧電材料でできた共通層を提供するステップを有する。前記方法は、導電層が共通上部電極層及び共通下部電極層に接続されるように、共通圧電層の下面に共通下部電極層を付与するステップと、共通圧電層の上面に共通上部電極層を付与するステップと、共通電圧層の各側面に導電層を付与するステップと、を更に有する。前記方法は、圧電材料でできた被覆された共通層から超音波振動素子を切り出す又はダイシングするステップを更に有する。
【0007】
通常の送信方向について、通常の方向とは、超音波振動素子から超音波が送信される方向を意味する。特に、上面又は上部電極層は、下面又は下部電極層よりも、通常の送信方向の中で前方に配置されている。通常の送信方向は、具体的には、超音波振動素子の上部によって形成された面に対して垂直となりうる。圧電層の下面及び上面は、それぞれ通常の送信方向に対して垂直に配置され、及び/又は、側面は、通常の送信方向に対して平行に配置されうる。上部電極層と下部電極層との間に電圧が印加された場合、超音波は、圧電層から通常の送信方向に送信される。下部電極層は、圧電層又は振動素子のための下部電極としての役割をする。上部電極層は、圧電層又は振動素子のための上部電極としての役割をする。
【0008】
好ましくは、下部電極層は圧電層の下面に付与され、上部電極層は圧電層の上面に付与される。代替的に、圧電層と電極との間には、中間層も存在しうる。
【0009】
本発明の基本的な発想は、上部電極と外部電気的接続、特に、グランドとの間に短絡電路を提供することである。導電層は、圧電層の少なくとも1つの特定の圧電層の上部電極層及び下部電極層に接続されるように、圧電層の少なくとも1つの特定の層の側面に、少なくとも部分的に、特に全側面に(直接)付与される。導電層を(直接)付与することは、圧電層と付与された導電層との間に中間層が無いことを意味する。導電層は、外部電気的接続、特にグランドへの外部電気的接続のために、前記特定の圧電層の上部電極層と下部電極層との間に電気的接続を提供する。代替的に、ある電位への外部電気的接続が提供されうる。特定の圧電層、すなわち対応する超音波振動素子の上部電極層から下部電極層への電路を提供することで、短絡電路、特にグランドリターン電流のための短絡電路が提供され、同時に製造工程が容易である。
【0010】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に規定されている。請求項に係る製造方法は、請求項に係る超音波振動子アセンブリ、及びその従属請求項に規定されているのと類似する及び/又は同一の好ましい実施形態を有すると理解されたい。同じように、請求項に係る超音波振動子アセンブリは、請求項に係る製造方法、及び従属請求項に規定されているのと類似する及び/又は同一の好ましい実施形態を有すると理解されたい。
【0011】
1つの実施形態では、特定の圧電層を有する超音波振動素子は、超音波を送信又は受信するように動作しないダミー素子である。特定の圧電層、すなわち対応する超音波振動素子の上部電極層と下部電極層との間に電路を提供することで、圧電層はもはや機能しない。それゆえ、特定の超音波振動素子は、超音波を送信又は受信するように動作しないダミー素子となる。従って、特定の振動素子は、もはや振動素子として機能しないため、犠牲になる。しかしながら、特定の超音波振動素子が犠牲になっても、超音波振動子アセンブリの製造方法は、大幅に簡素化され、従って、より安価な超音波振動子アセンブリが提供される。
【0012】
更なる実施形態では、特定の圧電層を有する超音波振動素子は、超音波振動素子の(1次元の)行又は(2次元の)アレイにおける、最も外側の超音波振動素子である。このように、導電層は、超音波振動子アセンブリの最も外側に付与され、それゆえ、導電層を付与する簡易な方法が提供される。この実施形態の変形では、導電層が付与される側面は、超音波振動素子の行又はアレイの中で外側に面している側面である。
【0013】
この実施形態の更なる変形では、特定の圧電層を有する超音波振動素子は、超音波振動素子の(1次元の)行又は(2次元の)アレイの端部にある、最も外側の超音波振動素子である。このように、超音波振動素子の(1次元の)行の2つの端部、又は(2次元の)アレイの縁部にある、超音波振動素子の一部又は全部は、超音波を送信又は受信するように動作しないダミー素子となりうる。1次元の行とは、1方向のみに振動素子を配置する(1行に隣接して配置する)ことを意味する。2次元のアレイとは、2方向に振動素子を配置する(行及び列に配置する)ことを意味する。
【0014】
更なる実施形態では、前記アセンブリは、更に、超音波振動素子の上部電極層に電気的に接続する導電接続層を有する。これは、外部電気的接続、特にグランドへの電気的接続のために共通上部電極を提供する簡易な方法である。1例では、導電接続層は、上部電極層に(直接)付与されうる、又は、上部電極層を形成しうる。別の例では、上部電極層と導電接続層との間に追加の導電層が存在しうる。
【0015】
更なる実施形態では、前記アセンブリは、上部電極層に付与された少なくとも1つのマッチング層、及び/又は、下部電極層に付与された少なくとも1つのデマッチング層を更に有する。このようにして、超音波振動子アセンブリの性能が改善されうる。少なくとも1つのマッチング層、特に複数のマッチング層を上部電極に提供することで、超音波振動子アセンブリが位置付けられるユーザー(患者)の身体との上部電極インピーダンス整合を取ることができる。少なくとも1つのデマッチング層、特に正に1つのデマッチング層を下部電極に提供することで、通常の送信方向の超音波の基本的に全ての送信エネルギーの反射を得ることができる。マッチング層及び/又はデマッチング層は、具体的には導電性材料で作られる。1例では、マッチング層はグラファイトから、及び/又は、デマッチング層はタングステン又は炭化タングステンから作ることができる。
【0016】
この実施形態の変形では、導電層が、少なくとも1つのマッチング層及び/又はデマッチング層の側面に更に付与される。特定の超音波振動素子(層のスタック)の一部のみの上に導電層を付与することは難しいため、マッチング層及び/又はデマッチング層の側面にも導電層を付与することは、より簡易な製造方法を提供する。層のスタックの全側面は、従って、1つの導電層で被覆されうる。
【0017】
この変形の変形では、上部導電層は一番上のマッチング層に付与され、下部導電層は一番下のデマッチング層に付与される。特定の超音波振動素子の側面のみに導電層を付与するのは難しいので、上部導電層及び/又は下部電極層も層のスタックに付与することは、より簡易な製造方法を提供する。
【0018】
更なる実施形態では、超音波振動素子の下部電極層のそれぞれ又は一部は、少なくとも1つの半導体チップに接続されている。半導体チップは、例えばASIC等でもよい。半導体チップは、例えば通常の送信方向に対して、ある角度に超音波を向けるためにビーム形成を用いて、超音波振動素子の送信及び/又は受信を制御するのに使用できる。特に、外部電気的接続、具体的にはグランドへの電気的接続が、半導体チップを通して提供されうる。
【0019】
更なる実施形態では、特定の圧電層を有する超音波振動素子の下部電極層は、外部電気的接続のためにフレキシブル回路に接続される。このように、外部電気的接続、特にグランドへの電気的接続が提供されうる。従って、グランドリターン電流のための電路が提供されうる。この実施形態の変形では、特定の超音波振動素子の下部電極層は、フレキシブル回路に接続される半導体チップに接続される。従って、グランドリターン電流のための電路が提供されうる。
【0020】
更なる実施形態では、導電層は、メタライゼーションによって付与される。このように、簡易な製造方法、特に導電層の被覆の簡易な製造方法が提供される。例では、導電層は、メタライゼーションによって付与されうる、金又は任意の他の適切な導電性材料で作られうる。
【0021】
この実施形態の変形では、メタライゼーションは、スパッタリング又は導電性エポキシの付与によって行われる。スパッタリング又は導電性エポキシの付与は、特に適切な製造方法である。
【0022】
他の実施形態では、下部電極層、上部電極層、及び導電層は、圧電層の共通層に1つの共通メタライゼーションステップで付与される。この実施形態の変形では、超音波振動素子は、共通メタライゼーションステップが行われた後に、圧電材料でできた共通層から切り出される又はダイシングされる。共通上部電極層と、共通下部電極層と、側面に導電層と、が上に付与された圧電材料でできた共通層を提供することで、製造方法は簡素化される。超音波振動素子は、その後、圧電材料でできた共通メタライズ層から切り出す又はダイシングするだけで良い。このように、共通上部電極層及び共通下部電極層があるので、電気的接続の変動をより少なくすることが可能になる。
【0023】
本発明のこれら又は他の態様は、以下説明される実施形態を参照して明確になり解明されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態による超音波振動子アセンブリの断面図を示す。
【
図2a】実施形態による製造方法の連続する製造ステップの一つを示す。
【
図2b】実施形態による製造方法の連続する製造ステップの一つを示す。
【
図2c】実施形態による製造方法の連続する製造ステップの一つを示す。
【
図2d】実施形態による製造方法の連続する製造ステップの一つを示す。
【
図2e】実施形態による製造方法の連続する製造ステップの一つを示す。
【
図3a】異なる実施形態の一つによる超音波振動子アセンブリの断面図を示す。
【
図3b】異なる実施形態の一つによる超音波振動子アセンブリの断面図を示す。
【
図3c】異なる実施形態の一つによる超音波振動子アセンブリの断面図を示す。
【
図3d】異なる実施形態の一つによる超音波振動子アセンブリの断面図を示す。
【
図3e】異なる実施形態の一つによる超音波振動子アセンブリの断面図を示す。
【
図3f】異なる実施形態の一つによる超音波振動子アセンブリの断面図を示す。
【
図3g】異なる実施形態による超音波振動子アセンブリの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、実施形態による超音波振動子アセンブリ100の断面図を示す。超音波振動子アセンブリ100は、超音波を通常の送信方向Aに送信するための超音波振動素子175、175aを有する。超音波振動素子175、175aは、(1次元の)行又は(2次元の)アレイに配置されうる。簡素化する目的で、
図1の断面図には、それら超音波振動素子のうち3個のみ描かれている。行又はアレイに配置された超音波振動素子を任意の数追加できることを理解されたい。
【0026】
図1の実施形態では、各超音波振動素子175、175aは、通常の送信方向Aに対して上面、下面及び側面を持つ圧電層110、110aを有する。圧電層110、110aの上面及び下面は、それぞれ通常の送信方向Aに垂直に配置されている。側面は、通常の送信方向Aに平行に配置されている。超音波振動素子175、175aのそれぞれは、圧電層110、110aの下面に配置された下部電極層111、111aと、圧電層110、110aの上面に配置された上部電極層112、112aと、を更に有する。通常の送信方向について、通常の方向とは、超音波が超音波振動素子175、175aから送信される方向を意味する。
図1に見られるように、圧電層110、110aの上面又は上部電極層112、112aは、対応する圧電層110の下面又は下部電極層111、111aよりも、通常の送信方向Aの中で前方に配置されている。通常の送信方向Aは、ここで、超音波振動素子175、175aの上部によって形成された面に垂直である。振動素子175の上部電極層112と下部電極層111との間に電圧が印加された場合、超音波は、通常の送信方向Aにあるその超音波振動素子175の圧電層110から送信される。
【0027】
導電層125は、圧電層の少なくとも1つの特定の圧電層110aの側面に、特に全側面に、少なくとも部分的に(直接)付与される。その特定の圧電層110aを有する超音波振動素子は、
図1の実施形態における振動素子175aである。
図1に見られるように、圧電層110aと付与された導電層125との間には中間層は存在しない、それゆえ、導電層125は(直接)付与される。導電層125は、導電層125が、特定の振動素子175aの前記特定の圧電層110aの上部電極層112aと、下部電極層111aと、に接続されるように、付与される。このように、上部電極112aと(下部電極111aを経由する)外部電気的接続部との間の短絡電路、特にグランドへの短絡電路が提供されうる。このような電路は、
図1で矢印によって概略的に表されている。特定の超音波振動素子175aのその特定の圧電層110aの上部電極層112aから下部電極層111aへの、この電路を提供することによって、短絡電路、特にグランドリターン電流が提供され、同時に製造工程が簡易である。
【0028】
このように、特定の圧電層110aを有する特定の超音波振動素子175aは、超音波を送信又は受信するように動作しないダミー素子として作られる。従って、特定の振動素子175aは、もはや超音波振動素子として機能しないため、犠牲となる。しかしながら、この特定の超音波振動素子175が犠牲になっても、後により詳細に説明されるように、超音波振動子アセンブリ100の製造は、明らかに簡素化される。
【0029】
図1の実施形態に見られるように、特定の圧電層110a(ダミー素子)を有する特定の超音波振動素子175aは、超音波振動素子の行又はアレイの中で、最も外側にある超音波振動素子175aである。特に、導電層125が付与される側面は、行又はアレイの中で外側に面している側面である。
【0030】
図1の実施形態では、超音波振動子アセンブリ100は、上部電極層112、112aに電気的に接続する導電接続層180を更に有する。この実施形態では、導電接続層180は、上部電極層112、112aに(直接)付与される。代替的に、上部電極層112、112aを形成することもできる。導電接続層180は、先に説明したように、
図1に矢印で表されるリターン電流路を提供するために、上部電極層112、112aに接続する。
【0031】
図1の実施形態に見られるように、超音波振動素子175、175aの下部電極層111、111aは、半導体チップ160に接続されている。この電気的接続は、導電性スタッドバンプ190を用いて提供される。しかしながら、前記電気的接続は、任意の他の適切な手段でも提供されうる。半導体チップ160は、例えばASIC等でもよい。半導体チップ160は、例えば、通常の送信方向Aに対して、ある角度に超音波を向けるためにビーム形成を用いて、超音波振動素子175、175aの送信及び/又は受信を制御するために使用される。半導体チップ160は、
図1の実施形態におけるバッキング165上に配置される。バッキング165は、振動子アセンブリに対する支持部を提供する。外部(グランドへの)電気的接続は、半導体チップ(例:ASIC)を通して提供される。
【0032】
半導体チップ160は、コネクタ200を用いてフレキシブル回路185に接続される。このように、特定の圧電層110aを有する特定の超音波振動素子175aの下部電極層111aも、外部電気的接続のためにフレキシブル回路185に接続される。従って、グランドリターン電流路が提供されうる。より具体的には、特定の超音波振動素子175aの下部電極層111aは、半導体チップ160に接続され、その結果フレキシブル回路185に接続されるので、グランドリターン電流路が提供される。
【0033】
フレキシブル回路185は、このような電気的接続のためのアース線を有しうる。フレキシブル回路185は、更に、システムチャンネルライン及び半導体チップ制御ライン(例:ASIC制御ライン)を有しうる。各システムチャンネルラインは、振動素子175のそれぞれの1つと(図示されていない)外部超音波計算システム(例:超音波画像システム)との間でデータ信号を送信する。各データ信号は、例えば各振動素子175の送信及び/又は受信を制御することができる。半導体チップ制御ライン(例:ASIC制御ライン)は、半導体チップ(例:ASIC)の機能性を制御する。(図示されていない)同軸ケーブルは、例えば外部電気的接続のためにフレキシブル回路185、特に超音波計算システムに接合されうる。アース接続又はある電位への接続のためのアース又は電圧源及び/若しくは電流源は、超音波計算システムの中に位置されうる。代替的に、アース又は電圧源及び/若しくは電流源は、任意の他の適切な位置に置くこともでき、例えば超音波振動子アセンブリに取り付ける、あるいは、その隣に配置することができる。
【0034】
図2aから
図2eは、実施形態による超音波振動子アセンブリの製造方法、特に
図1の実施形態の超音波振動子アセンブリ100を製造するための製造方法の連続する製造ステップを示す。
図2aに示される、第1ステップでは、前記方法は、上面、下面及び側面を持つ圧電材料でできた共通層110´を提供するステップを有する。この共通圧電層110´を、各超音波振動素子175、175aに対して使用することで、通常の送信方向Aに対して、上面、下面及び側面を持つ圧電層110、110aが提供されうる。
【0035】
続くステップでは、
図2bに示されるように、導電層125が共通上部電極層112´及び共通下部電極層111´に接続されるように、共通下部電極層111´が共通圧電層100´の下面に付与され、共通上部電極層112´が共通圧電層110´の上面に付与され、及び導電層125が共通圧電層100´の各側面に付与される。導電層125及び/又は電極層は、メタライゼーション、例えばスパッタリング又は導電性エポキシの付与によって付与されうる。
図2bに見られるように、下部電極層111、111a、上部電極層112、112a、及び導電層125は、1つの共通メタライゼーションステップで、圧電材料でできた共通層110´に付与される。
【0036】
続くステップでは、
図2cに示されるように、超音波振動素子175、175aは、(
図2bを参照して説明したように)共通メタライゼーションステップが行われた後に、被覆又はメタライズされた圧電材料でできた共通層110´から切り出される又はダイシングされる。
【0037】
このように、各超音波振動素子175、175aに対して、下部電極層111、111aは圧電層110、110aの下面に配置され、上部電極層112、112aは圧電層110、110aの上面に配置される。更に、導電層125は、導電層125が、その特定の圧電層110aの上部電極層112a及び下部電極層111aに接続されるように、特定の圧電層110aの側面に(直接)付与される。
【0038】
図2cでは、前記特定の圧電層110aを有する前記特定の超音波振動素子175aは、超音波振動素子の(1次元の)行の2つの端部にある2つの最も外側の超音波振動素子である。同様に、超音波振動素子が(2次元の)アレイに配置された場合、これらはアレイの縁部にある超音波振動素子である。
【0039】
更なるステップでは、
図2dを参照して、上部電極層112、112aに電気的に接続する導電接続層180が提供されうる。この例では、導電接続層180は、上部電極層112、112aの上に(直接)付与される。
【0040】
超音波振動子アセンブリ100を提供するための最終ステップは、
図2eに示される。接続された振動素子175、175aは、例えばバッキング165に配置された半導体チップ160の少なくとも1つに接続されうる。
図2eに見られるように、これは、例えば導電性スタッドバンプ190を用いることで行われうる。最後に、半導体チップ160は、その後、コネクタ200を用いてフレキシブル回路185に接続されうる。
図2eのステップは、
図2dのステップの前に行うこともできることを理解されたい。
【0041】
図3aから
図3gは、それぞれ異なる実施形態による超音波振動子アセンブリ100の断面図を示す。
図3aは、
図1又は
図2aから
図2eを参照して説明された基本的な実施形態を示す。
図3bは、各超音波振動素子175、175aの上部電極112、112aに付与された追加の第1マッチング層120がある点で、
図3aの基本的な実施形態とは異なる実施形態を示す。
図3cの実施形態は、各振動素子175、175aの上部電極112、112aに付与された第1マッチング層120がある点で、及び各振動素子175、175aの第1マッチング層120に付与された第2マッチング層130がある点で、
図3aの基本的な実施形態とは異なる。マッチング層120、130を提供することによって、超音波振動子アセンブリ100が位置付けられるユーザー(患者)の身体とのインピーダンス整合が取れる。マッチング層120、130は、具体的には導電性材料(例えば、グラファイト)で作られうる。このように、上部電極112から導電接続層180への電気的接続が、前述の通り、提供されうる。
【0042】
図3dの実施形態は、各振動素子175、175aの下部電極層111、111aに付与された追加のデマッチング層がある点で、
図3cの実施形態とは異なる。デマッチング層140を下部電極に提供することで、通常の送信方向Aの超音波の基本的に全ての送信エネルギーの反射を得ることができる。デマッチング層140は、具体的には導電性材料(例えば、タングステンのような金属、又は、炭化タングステンのような炭化物)で作られうる。
【0043】
図3eの実施形態は、導電層125が、更に,特定の振動素子175aの第1マッチング層120a、第2マッチング層130a、及びデマッチング層140aの側面に(直接)付与されていることが、
図3dの実施形態とは異なる。特定の超音波振動素子175a(層のスタック)の全側面に導電層125を付与することは、側面の一部にのみ付与するよりも容易である。従って、層のスタックの全側面は、
図3eの実施形態において、導電層125で被覆される。
【0044】
図3fの実施形態は、各振動素子に対して、一番上のマッチング層130、130aに付与された追加の上部導電層114、114aと、一番下のデマッチング層140、140aに付与された追加の下部導電層113、113aと、がある点で、
図3eの実施形態とは異なる。従って、上部導電層114、114a及び下部導電層113、113aは、層のスタックの上面及び下面に付与される。従って、層のスタックは全面が被覆され、より簡易な製造方法を提供する。
【0045】
図3gの実施形態では、上部電極は、圧電層の上面に(直接に)付与されないが、圧電層と上部電極層との間には中間層が存在する。各超音波振動素子175、175aは、上面、下面、及び側面を持つ圧電層110、110aを有する。各超音波振動素子175、175aは、圧電層110、110aの下面に配置された下部電極層111、111aを有する。第1マッチング層120、120aは、各振動素子175、175aの上面に付与され、第2マッチング層130は、第1マッチング層120の上に付与される。上部電極層112、112aは、その後、第2マッチング層130に付与される。従って、
図3gのこの実施形態では、前出の図の実施形態とは反対に、上部電極層112、112aは、圧電層110、110aの上面に(直接)付与されないが、それらの間には中間層が存在する。しかしながら、マッチング層120、130は導電性であるため、上部電極層112、112aは、圧電素子110、110aに対して、なお上部電極としての役割をすることができる。任意の数(例えば、1つ)の中間層(例えば、マッチング層)を間に配置することができると理解される。同様に(
図3gに示されていない)、下部電極層は、圧電層の下面に(直接)付与することができなかったが、
図3gに示されるように、圧電層の下面に付与されたデマッチング層140の下面に付与することができた。
【0046】
本発明は、図及び先の記載に詳細に描画及び説明されている一方、このような描画及び記載は、説明的又は例示的であっても限定的ではないと考えられる、つまり、本発明は、開示された実施形態に限定されない。図、記載、及び添付の請求項の解釈から、請求項に記載された発明を実施する際に、開示された実施形態に対する他のバリエーションは、当業者によって理解され、実効されうる。
【0047】
請求項において、単語「有する(comprise)」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を排除するものではない。単一の要素又は他のユニットは、請求項の中で述べられた複数項目の機能を満たすことができる。特定の手段が、相互に異なる従属請求項の中で述べられているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを効果的に使用することができないと説明しているわけではない。
【0048】
請求項の中の参照符号は、請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。