特許第6388540号(P6388540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6388540改良したDNAポリメラーゼ活性アッセイおよび生菌の検出を可能にする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388540
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】改良したDNAポリメラーゼ活性アッセイおよび生菌の検出を可能にする方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/04 20060101AFI20180903BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20180903BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20180903BHJP
   C12Q 1/689 20180101ALI20180903BHJP
   C12Q 1/34 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   C12Q1/04
   C12Q1/06
   C12Q1/686 Z
   C12Q1/689 Z
   C12Q1/34
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-551321(P2014-551321)
(86)(22)【出願日】2013年1月3日
(65)【公表番号】特表2015-503925(P2015-503925A)
(43)【公表日】2015年2月5日
(86)【国際出願番号】US2013020180
(87)【国際公開番号】WO2013103744
(87)【国際公開日】20130711
【審査請求日】2016年1月4日
(31)【優先権主張番号】61/583,568
(32)【優先日】2012年1月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517006599
【氏名又は名称】モメンタム・バイオサイエンス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentum Bioscience Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 友和
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・マーク・オハラ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ズウェイツィグ
【審査官】 平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/130584(WO,A1)
【文献】 特表2013−537399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00− 1/70
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNAポリメラーゼ伸長活性の測定により活性DNAポリメラーゼを含有する試料マトリクス内部の微生物の存在または量の検出のための診断アッセイを行う方法であって、前記アッセイは、
前記試料マトリクス中のDNAポリメラーゼを、予めアニールした2つの一本鎖オリゴヌクレオチドを含み、該2つの一本鎖オリゴヌクレオチドのうちの1つがデオキシウリジンヌクレオシドを含む基質とともにインキュベートするステップと、
PCRサイクリングを行うステップと、
選択された適切な核酸プローブの使用による検出を行い、これにより前記微生物の存在または量の表示として前記試料マトリクス中の内在性DNAポリメラーゼ伸長活性を検出するステップと、を備え
前記PCRサイクリングの前に、前記DNAポリメラーゼは、デオキシウリジンヌクレオシドを含まない前記一本鎖オリゴヌクレオチドの3'末端のみを伸長させ、続いて、ウラシルDNAグリコシラーゼを添加して、デオキシウリジンヌクレオシドを含む前記一本鎖オリゴヌクレオチドを分解し、ポリメラーゼ仲介伸長に由来する一本鎖産物のみが前記PCRサイクリングに進むようにする、方法。
【請求項2】
DNAポリメラーゼ伸長活性の測定が、前記試料マトリクス中の細菌生存率の指標である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料マトリクスが血清である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試料マトリクスが血漿である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試料マトリクスが、精製酵素、微生物溶解物および粗微生物溶解物からなるグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アッセイが、微生物DNAポリメラーゼ伸長活性を特異的に検出し、シグナルがDNAポリメラーゼ以外の酵素活性による前記基質の修飾に由来しない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アッセイを行う前に、前記方法が、微生物を含有するか微生物を含有すると思われる微生物溶解物または粗微生物溶解物をビーズミル溶菌チューブに加え、前記微生物細胞を破壊し、この破壊された細胞を前記アッセイの前記インキュベーションステップに移す追加のステップを備える、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
遮断薬を前記試料混合物に加えるステップを更に備える、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記試料マトリクスが生体試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記試料マトリクスが環境試料である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は2012年1月5日に出願した米国仮特許出願番号第61/583,568号の優先権を主張するものであり、参照により組み込むものである。
【0002】
(背景技術)
本項目および本願を通して使用される文献番号は「文献」の項目に挙げる文献を参照するものである。
【0003】
DNAポリメラーゼ活性は、あらゆる生物学的な領域に亘りゲノム複製および生物の繁殖のために不可欠なものである(1〜3)。その初期の特性評価(4)以来、DNAポリメラーゼ活性をインビトロで利用する能力は分子生物学研究の分野において基本的なツールとなっている(5)。研究において確立されたその重要性に加え、DNAポリメラーゼ活性のインビトロでの測定は医薬および臨床の場において数多くの有益な用途を提供し得る。例えば、細菌DNAポリメラーゼは新規な抗菌薬の開発のために積極的に標的とされているため(6,7)、DNAポリメラーゼ活性を測定できる迅速かつ高感度のアッセイが望まれている。更に、DNAポリメラーゼ活性の消失または獲得はヒトの疾患に密接に関与する。例えば、DNAポリメラーゼ活性と遺伝子異常の関連性が明らかになりつつあり、その酵素は抗癌療法の標的と呼ばれる(8,9)。DNAポリメラーゼ活性の不足は、ミトコンドリア異常(10)にも関係している。更に、DNAポリメラーゼ活性の測定は、無菌状態が期待される所定の環境マトリクスまたは生体マトリクス内部において、活性DNAポリメラーゼを有する事実上いかなる生物も検出することができるものとして、迅速かつ高感度な診断ツールとして使用される可能性を有するものである。
【0004】
DNAポリメラーゼ活性をインビトロで測定するために使用される最も一般的な方法は放射性標識ヌクレオチドの取り込みに依存するものである(11)。しかしながら、係るDNAポリメラーゼアッセイの日常的な使用は放射性同位体に関連する固有のリスクおよび制約により望ましくない。結果として、過去数十年に亘って、数多くの非放射性インビトロポリメラーゼアッセイが開発されてきている。あるものは、一本鎖DNA結合タンパク質のDNAポリメラーゼ仲介放出により(12)、あるいは二本鎖DNAへのPicoGreen(登録商標)の結合により(13,14)生成される蛍光の測定に依存する。他の方法は、蛍光標識ヌクレオチドのマイクロプレートカップリングおよび検出に依存する(15)。最近、分子ビーコンに基づき(16)かつ電気化学に基づく(17)DNAポリメラーゼアッセイが開発されてきている。上記のアッセイは、放射能の使用をうまく避けることができるが、感度の低さや、測定の線形ダイナミックレンジの狭さや、精製ポリメラーゼの使用といった要因によって制約される。
【0005】
当業者に自明なように、本願に記載の本発明によるDNAポリメラーゼ伸長活性の測定は、候補ポリメラーゼ阻害剤をインビトロでスクリーニングする用途や、様々なタイプの試料内部の任意の微生物(活性DNAポリメラーゼを有する)の存在を検出する用途といった広範囲に及ぶ用途に有益なツールである(但しこれらに限定されない)。このことは最先端の技術に対する実質的な改善であって、なぜなら、これらの目的を意図するのであれば、放射性標識ヌクレオチドを取り込む従来のポリメラーゼアッセイの日常的な使用は魅力的ではないからである。結果として、最近数十年に亘って数多くの非放射性DNAポリメラーゼ伸長アッセイが開発されてきている。現在の蛍光ベースのDNAポリメラーゼアッセイは、放射能の使用をうまく避けることができるが、様々な欠陥も抱えている。例えば、いくつかの既存の非放射性アッセイによるDNAポリメラーゼ活性の検出は、新しく生成された二本鎖DNAにPicoGreen(登録商標)を結合させことに依存する(13,14)。新たに溶解した生物からDNAポリメラーゼ活性を分析することを意図するのであれば、PicoGreen(登録商標)ベースのアッセイはゲノムDNAとPicoGreen(登録商標)の結合によるバックグラウンド蛍光によっておそらく阻害されるだろう。マイクロプレートベースのDNAポリメラーゼアッセイも開発されてきている(15)。数多くの理由によってマイクロプレートベースのアッセイの感度の低下が予想され、その理由には、産物または基質とマイクロプレートの中間結合への依存、および/またはDNAポリメラーゼによる修飾dNTPの非効率的な取り込みが含まれる。最近、分子ビーコンによるリアルタイムのDNAポリメラーゼ活性の測定が報告されている(16)。感度の向上にもかかわらず、分子ビーコン蛍光の直接測定もまた、粗細胞溶解物(ライセート)への曝露により阻害され得る。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、上記の技術を改良するものであり、精製酵素から、または粗微生物溶解物を含む微生物溶解物から直接に、DNAポリメラーゼ伸長活性を測定することができる迅速で高感度な定量的アッセイを提供するものである。本願に記載の本発明は、所定の試料マトリクス内に活性DNAポリメラーゼを含有する潜在的に任意の微生物を高感度に検出するために著しくかつ予想外の進歩を提供する。本発明は、酵素テンプレートの生成および増幅(ETGA(Enzymatic Template Generation And Amplification))のための方法が含まれる。従って、定量PCRの読み出しと組み合わせたDNAポリメラーゼ伸長活性の測定に基づく新規なETGA法の最初の特性評価を本明細書に記載する。本明細書において、本発明によって提供されるこのタイプの診断アッセイはDPE−PCRと呼ばれる。本発明のDPE−PCRアッセイは低レベルの精製酵素を測定するのに使用することができ、微生物細胞溶解物から直接に内在性DNAポリメラーゼ伸長活性を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明による好適なDPE−PCR診断アッセイの概略図であり、ここで、(ステップA)DNAポリメラーゼ(Polymerase)はあらかじめアニールしたオリゴ(Oligo)−1およびオリゴ(Oligo)−2からなる基質とともにインキュベートされる。(ステップB)37℃で20分間のインキュベート中に、DNAポリメラーゼはオリゴ−1の3’末端のみを伸長させる。(ステップC)その後、3μLの反応混合物は、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)を含有するホットスタート定量PCR(qPCR)反応にかけられる。Taqが活性化する前に、UDGはオリゴ−2内部のデオキシウリジンを分解し、オリゴ−1のポリメラーゼ仲介伸長に由来する一本鎖産物のみを残す。(ステップD)Taqが活性化した後、オリゴ−1伸長産へのプライマー結合により増幅が開始される。(ステップE)TaqmanプローブによるPCRサイクリングおよび検出。
【0008】
図2図2は、本発明の好適な実施形態によるDPE−PCRを用いた精製DNAポリメラーゼの高感度な検出の概略図であり、ここで、: (A) DNAポリメラーゼIの商業的供給源を、一反応毎に2×10−5単位(U)から始めて2×10−11Uに至るまで10倍の増分で二重にアッセイした。各ポリメラーゼの投入レベルおよび無投入コントロール(No Input Control (NIC))の代表的なDPE−PCR曲線を示す。 (B) 2つの独立した実験から得たポリメラーゼ投入レベル毎のn=4のデータ点でプロットを構成し、線形回帰分析を行った。 (C) 2×10−7UのDNAポリメラーゼI,クレノウ(Klenow),クレノウ(exo−)および大腸菌(E. coli)DNAリガーゼを含有する三重の反応をNICと比較してアッセイした。アッセイした酵素およびNICのそれぞれの代表的なDPE−PCR曲線を示す。 (D) dCTP(デオキシシチジン三リン酸)またはddCTPが入ったdNTP混合物を含有する反応のDPE−PCRシグナルを比較し、DNA基質内部のdCTPまたはddCTP取り込み可能部位を表す略図をDPE−PCR曲線に隣接して示す。
【0009】
図3図3は、本発明の好適な実施形態による、ビーズ溶菌(リーシス)をDPE−PCRと組み合わせた概略図である。
【0010】
図4図4は、本発明によるDPE−PCRの性能が、粗溶解物におけるDNAポリメラーゼ伸長活性の測定によりグラム陰性菌およびグラム陽性菌の高感度かつ定量的検出をどのように可能にするかのグラフ表示であり、ここにおいて、: (A) ビーズ溶菌を組み合わせたDPE−PCRにcfu量を減少させた大腸菌を加えた。無投入コントロール(NIC)も含めて試薬バックグラウンドレベルをモニターした。全てのcfu添加および無投入コントロールを三重に行った。各レベルの細菌投入の代表的なDPE−PCR曲線を以下に示す。各反応にかけた実際のcfuのより良い推定値を得る目的でコロニー計数プレーティングおよびgsPCRを行い、かつ補足的図3に示す。(B)大腸菌DNAポリメラーゼ活性および線形回帰分析のプロットを示す。1×10〜1×10投入cfuの細菌添加の三重の反応から得られた平均Ct値を用いてグラフが生成された。 (CおよびD) 上記の大腸菌に対して行ったように黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対してcfu滴定実験を行った。各反応にかけた実際のcfuのより良い推定値を得る目的でコロニー計数プレーティングおよびgsPCRを行った。
【0011】
図5図5は、本発明の別の好適な実施形態によるDPE−PCRによる細菌の検出のグラフ表示を示し、ここにおいて、: (A) 5μLの大腸菌懸濁液を、50μΜのdCTPまたは50μΜのddCTPを含有するdNTP混合物からなる、ビーズ溶菌を組み合わせたDNAポリメラーゼアッセイに加えた。大腸菌由来のDNAポリメラーゼ活性を表すDPE−PCR曲線を示す。プレーティングによって測定した近似cfu投入量を定量PCRグラフの左上領域に示す。(B) 5μLの大腸菌懸濁液を、50μΜ dCTPまたは50μΜ ddCTPが入ったdNTP混合物からなる50μL反応緩衝液を含有するビーズ溶菌チューブに加えた。溶菌の前に、1μLのdCTP[2.5mM、0.25mM、0.025mM、0.0025mM]を、選択されたddCTPを含有する反応に加えた。dCTPのみまたはddCTPのみを含有する反応を「非停止」および「停止」コンパレータとして並行して実行した。結果として得られた大腸菌由来のDNAポリメラーゼ活性を表すDPE−PCR曲線を示す。プレーティングによって測定した近似cfu投入量を定量PCRグラフの左下領域に示す。 (C) 更に、図2Bに示すDNAポリメラーゼ検出に用いたのと同一の溶解物に対して大腸菌遺伝子特異的なPCRを行った。細菌DNAポリメラーゼ検出のdCTP依存レスキューの線形プロットを、ゲノムDNAのgsPCRと対比して示す。プロットは、指示された条件での三重の反応からの定量PCRの平均Ct値を用いて生成した。 (D−F) 上記の大腸菌に対して行ったように黄色ブドウ球菌に対してddCTP停止およびdCTPレスキュー実験を行った。
【0012】
図6図6は、本発明の別の実施形態をグラフで示したものであり、ここで、DPE−PCRは熱処理に反応した大腸菌生存率の指標であり、ここで、: (A) 大腸菌懸濁液(〜2000cfu/μL)の200μLアリコートを25°C,45°C,65°C,85°Cおよび105°Cで20分間インキュベートした。加熱後、各細菌ストックを室温まで冷却し、5μLをビーズ溶菌を組み合わせたDPE−PCRアッセイに移した。指示された温度処理のそれぞれの後の大腸菌由来のDNAポリメラーゼ活性を表すDPE−PCR曲線を示す。 (B) プロットは、大腸菌懸濁液の指示された温度処理の後の三重のDPE−PCR反応およびゲノムDNAのgsPCR(同一の溶解物から)から生成した。処理された各大腸菌懸濁液の並行プレーティングも三重に行った。代表的なcfuモニタリングプレートをグラフの下に示し、各温度で処理した後の細菌生存状態を明らかにしている。 (C) DPE−PCRを、様々な温度処理に反応したゲノムDNAのgsPCRと比較している。指示された式を用いて「定量PCRシグナルの減少(Fold Reduction)」を算出し、得られた値を比較棒グラフの生成に使用した。
【0013】
図7図7は、本発明の別の実施形態をグラフで示したものであり、ここで、DPE−PCRは熱処理に反応した黄色ブドウ球菌生存率の指標である。ここで、 (A) 黄色ブドウ球菌懸濁液(〜2000cfu/μL)の200μLアリコートを25°C,45°C,65°C,85°Cおよび105°Cで20分間インキュベートした。加熱後、各細菌ストックを室温まで冷却し、5μLをビーズ溶菌を組み合わせたDPE−PCRアッセイに移した。指示された温度処理のそれぞれの後の黄色ブドウ球菌由来のDNAポリメラーゼ活性を表すDPE−PCR曲線を示す。 (B) プロットは、黄色ブドウ球菌懸濁液の指示された温度処理の後の三重のDPE−PCR反応およびゲノムDNAのgsPCR(同一の溶解物から)から生成した。処理された各黄色ブドウ球菌懸濁液の並行プレーティングも三重に行った。代表的なcfuモニタリングプレートをグラフの下に示し、各温度で処理した後の細菌生存状態を明らかにしている。 (C) DPE−PCRを、様々な温度処理に反応したゲノムDNAのgsPCRと比較している。「定量PCRシグナルの減少(Fold Reduction)」を算出し、得られた値を比較棒グラフの生成に使用した。
【0014】
図8図8は表1を記載しており、そこでは結果が記載され、本発明の開示により追加の臨床的に意義のある微生物種17種の高感度かつ線形の検出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
過去50年間、DNAポリメラーゼ活性のインビトロでの測定は不可欠な分子生物学ツールとなっている。DNAポリメラーゼ活性をインビトロで測定するのに使用される従来の方法は、放射性ヌクレオチドを使用するため望ましくない。蛍光ベースのDNAポリメラーゼアッセイが開発されているが、これも様々な制約を抱える。精製酵素からまたは微生物溶解物から直接に、DNAポリメラーゼ伸長活性を測定することができる、迅速で高感度の定量的アッセイが本明細書に開示される。このアッセイは、精製DNAポリメラーゼを用いて検査すると、優れた線形性(R=0.992)を示しながら、わずか2×10−11Uの酵素(≒50分子)を検出することが分かった。この検査はまた、ビーズミル溶菌と組み合わせると、R=0.999を維持しながら、少なくとも10コロニー形成単位までの投入量のグラム陽性菌またはグラム陰性菌の内在性DNAポリメラーゼ伸長活性を検出することもできた。更に、本明細書に記載された実験のエビデンスは、アッセイシグナルと細菌コロニー形成の再現可能な強い一致により示されるように、DNAポリメラーゼ伸長活性が細菌生存率の指標であることを示唆する。合わせて、本明細書において記載された本発明の新規な方法は、所定の試料マトリクス内に活性DNAポリメラーゼを含有する潜在的に任意の微生物を高感度に検出するための著しい進歩を呈する。
【0016】
本発明の上記のコンセプトおよび利点を更に説明するために、以下の実施例を本発明の説明として記載するが、これらは限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0017】
実施例
材料および方法:
DNA基質の調製
DNA基質(および以下に示される定量PCRプライマー)の配列は、T4DNAリガーゼによりバクテリア由来のATPを測定するために先に使用したDNAオリゴから作り変えた(18)。手短に言うと、オリゴ1およびオリゴ2(図1を参照)をあらかじめアニールし、0.01μΜの作用濃度に希釈した。
【0018】
市販のポリメラーゼを用いたDNAポリメラーゼ活性反応
DNAポリメラーゼI (NEB cat#M0209L),クレノウ(Klenow)(NEB cat#M0210S)およびクレノウexo(−) (NEB cat#M0212S)を、トリス(Tris)EDTA (T.E.)pH8.0中で指示されたU/μLのストックにまで希釈した。初めに、各濃度のDNAポリメラーゼストック2μLを、次の成分を包含する50μLのポリメラーゼアッセイ混合物中に入れた: 50μΜのdNTP,20mMのトリス(Tris)pH8.0, 10mMの硫酸アンモニウム,10mMの塩化カリウム,2mMの硫酸マグネシウム,1%BSA,0.1%トリトン,0.1%ツイーン(Tween),および0.001μΜのあらかじめアニールしたDNA基質。反応溶液を短時間ボルテックスし、37°Cに20分間置いた。20分後、各反応溶液の3μLを直ちに定量PCR(qPCR)反応にかけた。
【0019】
定量PCRによる検出
定量PCR反応のマスターミックスは次の成分を使用して調製した:
ライトサイクラー(LightCycler)480マスターミックス(Roche cat#04707494001), 333nMの各プライマー,166nMの標的プローブ(FAM),166nMのインターナルコントロールプローブ(TxRed),および1.2UのUDG(Bioline cat#BIO−20744)。PCRの阻害を監視するツールとして、各定量PCR反応には競合するインターナルコントロールDNAも40コピー含めた。各定量PCR反応のために、3μLのDNAポリメラーゼ反応溶液を27μLのマスターミックスに加え、次のように2ステップの定量PCRをスマートサイクラー(SmartCycler)(Cepheid, Sunnyvale CA)で実行した。最初のインキュベーションは40°Cで10分間、50°Cで10分間および95°Cで5分間(Taqを活性化するため)、そして次に,95°Cで5秒の変性および65°Cで20秒のアニーリング/伸長を45サイクル。サイクル閾値(Ct)は出現した定量PCR曲線の第2のセカンドデリバティブ分析を用いたスマートサイクラーのソフトウェアによって自動的に生成された。
【0020】
細菌の菌株および培地
黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)および大腸菌(ATCC 25922)をこの研究に使用した。培養菌はブレインハートインフュージョン液体培地/寒天培地(Teknova.)で培養した。検査した追加の微生物17種のATCC参照番号および生育培地を図5に挙げる。
【0021】
ビーズミル溶菌後の細菌DNAポリメラーゼ活性の検出
黄色ブドウ球菌および大腸菌の培養物をOD600が1.0±0.2(約1×10cfu/mL)になるまで培養した。各微生物について、1mLの培養物をペレット状にし、T.E.中で3回洗浄した。細菌懸濁液をT.E.で連続希釈し、5μLの各ストックを、50μLの溶菌−反応緩衝液を含有するビーズ溶菌−反応に加えた。1×10〜1×10cfu/反応の滴定曲線を、各微生物について三重に行い、これには細菌懸濁液を含有しない三重の反応(無投入コントロール)を含めた。5μLの細菌ストック(または無投入コントロール)を追加した後、溶菌/反応チューブを2800rpmで6分間ビーズミル粉砕した。次に、37°Cで20分間インキュベートした。20分間インキュベートした後、試料を5分間で95°Cまで加熱してから、取り出して室温まで冷却した。その後、試料を12k×gで30秒間回転させ、3μLの各反応溶液を定量PCRにかけた。5マイクロリットルの各細菌ストックを平板培養し、より正確なcfu投入レベルを得た。更に、DNAポリメラーゼ検出に用いた同一の溶解物に対して微生物特異的なPCRも行った。黄色ブドウ球菌および大腸菌遺伝子特異的なPCRのプライマーおよびプローブ配列を図2に示す。
【0022】
ジデオキシ停止実験
ddCTPによる精製DNAポリメラーゼ伸長活性の停止:
DNAポリメラーゼアッセイ反応溶液を50μΜのdCTPまたは50μΜのddCTP(Affymetrix #77332.)を含有するdNTP混合物を用いて上記の通り調製した。いずれかのdNTP混合物を含有する反応溶液に、2×10−9UのDNAポリメラーゼI(New England Biolabs #M0209)を加えた。反応溶液を37°Cで20分間インキュベートし、続いて3μLの各反応溶液を定量PCRにかけた。
【0023】
ddCTPによる微生物検出の消去:
黄色ブドウ球菌および大腸菌の培養物を、上記の通り培養し、洗浄し、希釈した。微生物DNAポリメラーゼのddCTP依存性停止を実証するために、5μLの細菌ストックを、50μΜのdCTPまたは50μΜのddCTPが入った50μLの反応緩衝液を含有するビーズ溶菌チューブに加えた。溶菌、インキュベーションおよび定量PCRを上記の通り行った。5マイクロリットルの各細菌ストックを平板培養し、より正確なcfu投入レベルを測定した。更に、DNAポリメラーゼ検出に用いた同一の溶解物に対してゲノムDNAの遺伝子特異的PCRも行った。
【0024】
微生物検出のdCTPレスキュー:
黄色ブドウ球菌および大腸菌の培養物を、上記の通り培養し、洗浄し、希釈した。5マイクロリットルの細菌ストックを、50μΜのddCTPが入った50μLの反応緩衝液を含有するビーズ溶菌チューブに加えた。溶菌の前に、2.5mM、0.25mM、0.025mM、0.0025mMのdCTPを1μL、ddCTP含有反応溶液に加えた。50μΜのdCTPのみおよびddCTPのみを含有する反応を「非停止(non−terminated)」および「停止(terminated)」コンパレータとして並行して実行した。溶菌、インキュベーションおよび定量PCRを上記の通り行った。5マイクロリットルの各細菌ストックを平板培養し、より正確なcfu投入レベルを測定した。更に、DNAポリメラーゼ検出に用いた同一の溶解物に対して遺伝子特異的PCRも行った。
【0025】
生存率評価実験
黄色ブドウ球菌および大腸菌の培養物を、上記の通り培養し、洗浄し、希釈した。約2000cfu/μL(T.E.中で)の細菌ストック200マイクロリットルを、25°C,45°C,65°C,85°Cおよび105°Cで20分間インキュベートした。加熱後、試料を室温まで冷却し、5μLの各細菌ストックを50μLの反応緩衝液を含有するビーズ溶菌チューブに加えた。溶菌、インキュベーションおよび定量PCRを上記の通り行った。更に5マイクロリットルの各細菌ストック(様々な温度で処理されたもの)を1mlのT.Eに加え、50μLを平板培養してコロニー数を測定した。更に、DNAポリメラーゼ検出に用いた同一の溶解物に対して遺伝子特異的なPCRも行った。
【0026】
結果および考察
本発明の開発において、精製された商業的供給源または新鮮な溶解細胞に由来するDNAポリメラーゼ伸長活性を測定できる迅速でシンプルかつ高感度な定量的アッセイの開発を目指すものであり、これは上記の従来技術の方法の欠点を改善し、かつ克服するものである。図1は、DNAポリメラーゼ伸長活性と定量PCRの組み合わせに関与する機構の概略図を示す。注目すべきは、Taqが活性化する前にウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)によってオリゴ2(図1、ステップCを参照)が除去され、よってPCRサイクリングの直前に基質の非特異的伸張を妨げていることである。T4DNAリガーゼ活性をPCR増幅に結び付ける微生物検出法が以前に報告されており(18)、これは、我々のDPE−PCRアッセイに類似するものを含んでおり、ETGA法の別の実施例である。しかしながら、本発明の開発中に、この方法の改変バージョンは、NAD依存性DNAリガーゼ活性の検出を目指し、様々な制約を抱え(未発表データ)、本明細書に記載の発明の新規なDNAポリメラーゼに基づくアプローチの開発に至った。
【0027】
精製DNAポリメラーゼ伸長活性の高感度かつ線形の検出
市販のDNAポリメラーゼIを用いてDPE−PCRアッセイの近似分析感度を測定するために実験を行った。図2Aに示すように、DNAポリメラーゼIの検出は広範囲にわたる投入量の酵素で達成された。実際には、DNAポリメラーゼI伸長活性の測定は、わずか2×10−11単位(U)の酵素(約50分子のポリメラーゼに相当する)まで達成される。我々の知る限り、このレベルでのDNAポリメラーゼ伸長活性の検出は既存のDNAポリメラーゼアッセイにおいて他を凌駕する。大腸菌は1細胞あたり約400個のDNAポリメラーゼI分子を含有すると報告されているため、理論上、このレベルの感度は単一の微生物検出を可能にし得る(11)。検出実験の2つの独立した限界のデータをグラフ化した後に、回帰分析は更に、DPE−PCRサイクル閾値(Ct)と投入した市販DNAポリメラーゼIの単位との間に強い正の線形相関(R=0.992)を示した(図2B)。感度および線形性の実験を行った後に、DPE−PCRアッセイシグナルが内因性エキソヌクレアーゼ活性と無関係であるか否かを判定することが重要であった。そのため、我々はその後、2×10−7UのDNAポリメラーゼIによって生成されたシグナルを、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠くDNAポリメラーゼI(クレノウ)および全てのエキソヌクレアーゼ活性を欠く別バージョンの酵素(クレノウexo−)から生成されたシグナルと比較した。更なる特異性およびバックグラウンドシグナルを測定するために、2×10−7Uの大腸菌DNAリガーゼと無投入コントロール(NIC)を並行して検査した。図2Cに示すように、野生型DNAポリメラーゼIと比較したところ、クレノウとクレノウexo−の両方が同等のレベルで検出され、DPE−PCRアッセイシグナルがDNAポリメラーゼ依存性伸長に由来し、内因性エキソヌクレアーゼ活性に由来しないというエビデンスを提供した。エキソヌクレアーゼフリーのポリメラーゼの使用に加えて、DPE−PCRアッセイシグナルが定量PCRの前のDNA基質のDNAポリメラーゼ依存性伸長に由来すことを更に実証しようと試みた。ジデオキシヌクレオチドの取り込みは、DNAポリメラーゼの鎖伸長活性の停止に使用される十分に確立された方法であるため(19、20)、我々は反応混合物の中でdCTPをジデオキシCTP(ddCTP)と置き換えることを選択した。図2Dに示す概略図は、ddCTPがDNAポリメラーゼによって取り込まれ得る基質内部の第1の可能な位置を明らかにする。ddCTPがこの位置に取り込まれた場合、オリゴ1の伸長生成物は、定量PCRプライマー1によるその後の検出のための長さが不十分となるだろう(図1)。図2Dに示すように、dCTPをddCTPと置き換えることで、DNAポリメラーゼIによって生成されるシグナルを消去し、よってDPE−PCRアッセイシグナルが定量PCRの前の基質のDNAポリメラーゼ伸長に依存することを実証する。低コピーのインターナル増幅コントロールの存在は、定量PCRが、DNAポリメラーゼアッセイ試薬から持ち込まれた少量のddCTPの存在によって阻害されなかったことを裏付ける(補足的図1C)。加えて、我々は、投入DNAポリメラーゼ非存在下(無投入コントロール)で、弱いが検出可能なシグナルを散発的に観察してきたことに留意することが重要であると考える。DPE−PCRアッセイの絶妙な感度のお陰で、我々は、弱いバックグラウンドノイズのシグナルがいくつかの潜在的な発生源に由来し得ることを実証した。例えば、反応組み立て前に試薬中に存在するDNAポリメラーゼのコンタミネーション、実験セットアップ中に作業者によって持ち込まれたDNAポリメラーゼ、および/またはTaqが活性化する前のオリゴ2(図1)の不完全分解(未発表データ)などであるが、但しこれらに限定されない。注目すべきは、これらのバックグラウンドノイズの変則的な発生源は、より厳重な試薬調製手順および有効な無菌操作を導入することによって制御可能であるということである。
【0028】
細胞溶解物から直接に内在性DNAポリメラーゼ伸長活性を測定することによる微生物の高感度な汎用検出
精製ポリメラーゼ活性を検出することに加え、微生物由来のDNAポリメラーゼ活性を測定するシンプルで汎用性のある方法が極めて望ましい。その場合、係る方法は、活発に増殖している培養物中の候補抗菌薬のスクリーニングを可能にし、よってDNAポリメラーゼ伸長活性を微生物増殖と比較することを可能にする。加えて、DNAポリメラーゼ伸長活性の測定は活性DNAポリメラーゼを有するあらゆる微生物の存在に関して環境試料または生体試料をスクリーニングするために使用され得る。このために、本発明によって提供されるDPE−PCRアッセイに微生物溶解を組み合わせたシンプルな方法を我々は開発した。図3に示すように、微生物を含有すると分かっているか、もしくは微生物を含有すると思われる液体試料をビーズミル溶菌チューブに加え、破壊し、そして直ちにDPE−PCRアッセイに移行する。我々は、グラム陰性菌1種(大腸菌)およびグラム陽性菌1種(黄色ブドウ球菌)を選択し、我々のアッセイが粗細胞溶解物中で微生物由来DNAポリメラーゼの伸長活性を測定する能力を実証した。図4Aに示すように、ビーズミル溶菌と結び付けると、DPE−PCRアッセイは1溶菌チューブあたり10コロニー形成単位(cfu)以下の広いダイナミックレンジの投入大腸菌を検出することができる。更に、大腸菌検出の線形回帰分析を10cfuの投入細菌まで行い、投入cfuとDNAポリメラーゼ伸長活性シグナルとの間に0.999のR値で示される強い正の線形相関を示した(図4B)。コロニー計数プレーティングおよび大腸菌遺伝子特異的定量PCR(gsPCR)を並行して実行し、1反応あたりのcfu投入レベルと、全く同一の溶解物の無傷のゲノムDNAをモニターする能力の両方を確認した。黄色ブドウ球菌溶解物のDNAポリメラーゼ伸長活性を同様の投入レベルで検出した(図4C)。黄色ブドウ球菌の検出を10cfuの投入細菌までプロットし、更に、投入cfuとDNAポリメラーゼ伸長活性シグナルとの間の強い線形相関を示した(R=0.999,図4D)。コロニー計数プレーティングおよびgsPCRを並行して行い、各ビーズ溶菌チューブ中に存在する黄色ブドウ球菌の量と、直接に解析可能なゲノムDNAの存在とを確認した。大腸菌および黄色ブドウ球菌のプレーティング、gsPCR、DNAポリメラーゼ活性の結果の全部の表を図3および4に見ることができる。我々はその後、DPE−PCRアッセイが追加の臨床的に意義のある微生物17種のDNAポリメラーゼ活性を測定する能力を検査した。表1に示すように、我々はグラム陰性菌6種、グラム陽性菌6種およびカンジダ種5種を含む17種の追加の微生物全てのDNAポリメラーゼ活性を検出することができた。17種の追加の微生物の検出は投入cfuに対する強い正の線形相関を示し、低い検出下限が印象的であった。今日まで失敗することなく、合計31種の異なる微生物種を同様に検査し検出している(データ非掲載)。上方線形ダイナミックレンジはまだ十分に特性評価されていない。17種の追加の微生物のそれぞれの並行プレーティングデータおよびDPE−PCR結果を含む更なる結果を図8に示す。合わせて、これらのデータは、本発明の教示によるDPE−PCRの性能が通常の無菌環境におけるあらゆる微生物の高感度な検出のために万能な「汎(pan)」試験として有用である可能性を有するという見解を支持する。
【0029】
図2Dに示すように、反応混合物中のdCTPをddCTPと置き換えることは、我々のアッセイ内部でDNAポリメラーゼ依存性伸長活性の検出を遮断するための強力なツールとなる。細菌添加に由来するシグナルがそれらのDNAポリメラーゼ伸長活性に依存し、溶解物中に存在する他の内在性細菌酵素活性に依存するものではなかったことを実証するために、我々は、(dATP,dTTP,dGTP,dCTP)を含有する標準的なDNAポリメラーゼ反応混合物を(dATP,dTTP,dGTP,ddCTP)を含有する反応混合物と対比して用いて、大腸菌および黄色ブドウ球菌から得られたDPE−PCRシグナルを比較する実験を試みた。図5Aに示すように、標準的な反応混合物と比較すると、ddCTPの置き換えは大腸菌cfu添加由来のシグナルの生成を遮断した(図5A)。その後、100%ddCTP(50μΜ)を含有する反応混合物中で溶解された細菌のDNAポリメラーゼ伸長活性を、dCTP量を増加させながら添加した50μΜ ddCTPを含有する反応混合物と比較することにより、dCTPレスキュー実験を行った(レスキュー実験の詳細な説明のための材料および方法を参照)。図5Bは、dCTP量の増加が大腸菌溶解物由来の定量化可能なDNAポリメラーゼ伸長活性に対するレスキュー効果を有することを実証する。微生物DNAポリメラーゼ伸長活性の測定に加えて、gsPCRを並行して実行し、等量の大腸菌が、アッセイされた溶解物のそれぞれに存在することを検証した。DNAポリメラーゼ活性とゲノムDNAの存在のグラフによる比較を図5Cに示す。その後、黄色ブドウ球菌を用いてシグナル停止(ddCTPによる)およびdCTPレスキュー実験を繰り返し、同様の結果を得た(図5D〜F)。大腸菌および黄色ブドウ球菌の両方に関するDPE−PCRおよびgsPCRのデータを含む表を図6および7に示す。定量PCRのインターナルコントロールの値を提供し、定量PCRに持ち込まれた低レベルのddCTPは阻害性ではなく、よってDNAポリメラーゼ活性シグナルの消失の原因ではないことを実証する(図6Aおよび7A)。合わせて、図5に示すデータは、DPE−PCRアッセイが微生物DNAポリメラーゼ伸長活性を特異的に検出し、シグナルがDNAポリメラーゼ以外の酵素活性による基質修飾に由来しないという主張を強く支持するものである。
【0030】
細菌生存率の指標としてのDNAポリメラーゼ伸長活性の測定
細菌生存率を測定する従来の方法は、固体培地上の特定微生物の増殖および可視化に依存するものである(21)。細菌の増殖および可視化は現在の業界のゴールドスタンダードであるが、従来のcfu生存率測定法は、cfu形成に要する時間のせいで望ましいものではない。更に、固体培地上または液体培養物中で増殖する能力は微生物によって劇的に異なり得、よって特定の選好性生物の検出を制限し得る(22)。従来の方法の上記制限・制約によって、幅広い医薬分野(23)、環境分野、食品加工分野および臨床検査分野において微生物生存率の迅速な評価に対する必要性が高まっている。結果として、所定のマトリクス内の微生物生存状態を迅速に評価するために数多くの分子的手法が開発されている(24)。迅速かつ高感度であるにも関わらず、核酸の存在を検出する分子的手法は細胞生存率の正確な測定を示すには不十分なことが多い。例えば、内在性DNAまたはRNAの増幅は細菌生存率の指標としては劣っており、これは細胞が死んだ後の核酸の残存によるものである(25,26)。我々は、細菌生存率の指標としてDNAポリメラーゼ伸長活性を用いることの実行可能性を判定しようと試みた。このため、様々な量の熱処理後の細菌生存率の指標として、DNAポリメラーゼ伸長活性の検出と、ゲノムDNAのPCR仲介検出とを比較するように実験をデザインした。まず、温度を上昇させて大腸菌懸濁液を一定時間処理した。熱処理の後、次に細菌をDNAポリメラーゼ伸長活性およびゲノムDNAの両方の存在に関してアッセイした。更に、熱処理した細菌ストックおよび熱処理しなかった細菌ストックを並行して平板培養し、目に見えるcfuの存在により細菌生存率をモニターした。図6Aは、指示された量の熱処理の後に測定した大腸菌DNAポリメラーゼ伸長活性のレベルを示す。注目すべきは、45°C〜65°Cで細菌懸濁液をインキュベートした後に大腸菌DNAポリメラーゼ伸長活性の著しい低下が観察されたことである(図6A)。対照的に、同一の溶解物から得られたgsPCRシグナルは、全ての温度で比較的一定を維持しており、図6BでグラフによりDNAポリメラーゼ活性と比較している。グラフの下に示したプレーティングの結果は、熱処理レベルの上昇がcfu形成を妨げるのに十分であり、DNAポリメラーゼ活性の劇的な消失に近似することを更に実証する;しかしながら、死細胞がなお最初の投入レベルに非常に近いゲノムDNAレベルをもたらし、gsPCRが生存細胞の存在の指標として劣っていることを裏付けている(図6B)。図6Cにおいて、棒グラフは、致死量の熱処理に反応したcfuの消失をモニターするDPE−PCRおよびgsPCRの相対的能力を更に強調するものである。その後、我々はDNAポリメラーゼ伸長活性の測定がグラム陽性菌の生存状態を同様に示すのに使用できるか否かを検査したいと考えた。同一条件下で黄色ブドウ球菌を用いて以前の大腸菌実験を繰り返した。
【0031】
図7A〜Cは、黄色ブドウ球菌を用いて繰り返した熱処理実験から得られた同様の結果を示す。包括して、図4、6、7、および図8の表1に示すcfuの存在とDNAポリメラーゼ伸長活性の強い一致は、本発明により行ったDPE−PCRが細胞生存率の一般的指標として使用される可能性があることを実証し、細胞の増殖または生存率の減少を目的とする他の臨床的または薬学的に意義のある薬剤(静菌性および殺菌性)に曝露された微生物のDNAポリメラーゼ伸長活性を測定する可能性を更に示し得る。
【0032】
要約すると、本発明によると、新規な高感度の定量的および迅速なDPE−PCRアッセイが開発された。極めて低いレベルの精製酵素の定量的検出に加えて、ビーズ溶菌との組み合わせにより10cfu未満の細菌のDNAポリメラーゼ伸長活性を再現可能な方法で測定するDPE−PCRの能力を我々は実証した。我々は更に、グラム陰性菌7種、グラム陽性菌7種およびカンジダ種5種からなる微生物パネルを検査することによって、DPE−PCRが微生物を汎用的に検出する可能性を実証した。更に、DNAポリメラーゼ伸長活性とcfuの存在により示される増殖の再現可能な強い相関により、DPE−PCRアッセイを用いて細菌生存率を評価できるという予備的エビデンスを提供した。本明細書に記載したデータを検討するに、本明細書に記載した好適なDPE−PCRアッセイといった本発明の新規な方法および技術は幅広い医薬分野、環境分野、食品分野および臨床分野において幅広い検査用途の有用なツールになる可能性を有すると現在考えられる。
【0033】
本願において引用した全ての文献、特許および特許出願の内容は、それぞれ本願に援用する。
【0034】
上述の詳細な説明は理解を明確にするために与えられたものであり、その改変は当業者にとって自明であるため不必要な限定を意図するものではない。本明細書において記載された情報はいずれも先行技術であると認めているわけではなく、また請求項記載の発明に関連すると認めているわけではなく、具体的もしくは暗示的に引用したすべての文献が先行技術であると認めているわけではない。
【0035】
他に別段の定めのない限り、本願において使用される全ての技術用語および科学用語は当業者が通常理解するのと同一の意味を有する。
【0036】
本発明は特定の実施形態に関連付けられて説明してきたが、更なる改変が可能であり、本発明の原理に概して従う本発明の様々なバリエーション、使用、または改造もカバーし、かつ、本発明の技術分野における慣行または既知の技術に該当する本願開示内容から逸脱するもの、ならびに上記に記載の不可欠な特徴に適用され得る本願開示内容から逸脱するものも含む。
【0037】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8