【実施例】
【0128】
以下の実施例は、単に例証の目的のために提供され、限定的であることを意図されない。
【0129】
実施例1
PFC油(Sigma Fluorinert(登録商標)FC−70、製品番号F9880)で処理したシラン処理PDMSは、抗凝固剤を含まない血液の接着および凝固を防止することが見いだされた。
【0130】
ペルフルオロカーボンシラン(トリデカフルオロテトラハイドロオクチルトリクロロシラン、Sigma)を、PDMSシート(Sylgard184(登録商標)、Dow Corning)およびPDMS細管(長さ16、内径1.52mm、過酸化物硬化シリコーン、Cole Parmer)上に真空下で10時間超蒸着した。シラン処理および非シラン処理PDMSシートを、ピペットからのPFCの適用によってPFC油でコーティングした(ペルフルオロトリペンチルアミン、Sigma)(それぞれ
図5B(ii)および5A(ii)参照)。
【0131】
抗凝固剤を含まない75マイクロリットル体積のヒト血液を、PDMSシート上に分注し、シートを傾動させた。
図5に示される通り、血液は、非処理かつ非改質PDMS表面(
図5A(i))、ペルフルオロトリペンチルアミン(PFC油)を伴うPDMS(
図5A(ii))、およびシラン処理PDMS(
図5B(i))に接着した。しかしながら、血液は、ペルフルオロトリペンチルアミン(PFC油)を伴うシラン処理PDMS(
図5B(ii))には接着せず、反発されることに成功した。PFC油を伴うシラン処理PDMSは、PFC油を補填することなく、90分超の間血液を反発することに成功した。血液反発性はまた、ペルフルオロデカリンをPFC油としたシラン処理PDMSシートにも示された(図示無し)。
【0132】
実施例2
実施例1に説明される通りに処理したシラン処理PDMS細管は、細管を通じた血液の蠕動汲み上げの間、接着および凝固を防止することに成功したことが示された。
図4Aを参照すると、シラン処理410および非シラン処理420PDMS細管の双方の内側を、0.5mLのPFC油でコーティングした。血液を、細管を通じて約100マイクロリットル/分の速度で45分間汲み上げた。PFC油のプラグを、シラン処理細管を通じて汲み上げた。PFC油のプラグ内に血液は見られず、血液が細管の表面に未だ結合していないことを示した。次に、0.5mLのPFC油および0.5mLの脱イオン水を、双方の細管セットを通じて汲み上げた。
【0133】
図4Bを参照すると、可視のままであるPFC油の透明な液滴によって示されるように、3分後、血液は、それを通じて血液とPFC油のプラグとが汲み上げられたシラン処理細管410の内側をコーティングしなかった。比較的に、シラン処理410細管と比較して、著しくより多くの血液構成成分の結合が非シラン処理細管420内に観察された。
【0134】
45分の血液流の後、PFC油および次に水を細管の双方のセットを通じて汲み上げた。
図4Cによって示される通り、シラン処理PFC油コーティングPDMS細管410は、水および血液で水洗した後でさえも、非シラン処理PFC油コーティングPDMS細管420よりも著しく少ない血液の結合を示した。
【0135】
実施例3
PFC油で処理した官能化PDMSの液体を反発する能力を調査し、非処理かつ非改質PDMS、PFC油で処理したPDMS、およびシラン処理PDMSの液体反発性と比較した。4枚のPDMSシート(Dow Corning Sylgard(登録商標)184)を、鏡面研磨アルミニウム上で60℃で硬化させた。2枚のPDMSシートを、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル)シラン(Sigma、製品番号448931)を用いて、約12時間の真空蒸着によって一晩シラン処理した。シラン処理した後、250μLのPFC油を、2枚のシラン処理PDMSシートのうちの1枚と、1枚の非改質PDMSシートとに適用した。抗凝固剤を含まない75μLのヒト血液を、4つの表面全てに適用した(
図6A参照)。
【0136】
次に、表面を撮像した。撮像後、PDMSシートを手で傾動させ、
図6Bに示される通り直ちに再び撮像した。
図6は、血液が、非処理かつ未改質PDMS(
図6B(i))、PFC油を伴うPDMS(
図6B(ii))、およびシラン処理PDMS(
図6B(iii))には接着したが、PFC油を伴うシラン処理PDMS(
図6B(iv))によって完全に反発されたことを示す。
【0137】
実施例4
PFC油で処理した官能化アクリルの液体を反発する能力を調査し、この能力を、非処理かつ非改質アクリル、PFC油で処理したアクリル、およびシラン処理アクリルのものと比較した。4枚のクリアキャストアクリルシート、0.060インチの厚さ(McMaster Carr、製品番号8560K171)を、500mトールで40秒間、酸素プラズマ処理で更に改質した。2枚のアクリルシートを、真空下で約13時間、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル)シランで一晩シラン処理した。
【0138】
250μLのFC−70を、1枚のシラン処理アクリルシートと1枚の非シラン処理アクリルシートとに適用して、「PFC油」表面を生成した。抗凝固剤を含まない75μLのヒト血液を、4つの表面全てに適用した(
図7A参照)。
【0139】
表面を撮像し、次に手で傾動させ、
図7Bに示される通りに直ちに再び撮像した。
図7は、血液が、非処理かつ非改質アクリル(
図7B(i))、PFC油を伴うアクリル(
図7B(ii))、およびシラン処理アクリル(
図7B(iii))には接着したが、PFC油を伴うシラン処理アクリル(
図7B(iv))によって完全に反発されたことを示す。
【0140】
実施例5
PFC油で処理した官能化組織培養ポリスチレンの液体を反発する能力を調査し、この能力を、非処理かつ非改質組織培養ポリスチレン、PFC油で処理した組織培養ポリスチレン、およびシラン処理組織培養ポリスチレンのものと比較した。製造者(BD Biosciences、製品番号353025)によって事前にプラズマ処理された4枚の組織培養ポリスチレンシートを、本実験で用いた。4枚の組織培養ポリスチレンシートのうちの2枚を、真空下で約13時間、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル)シランで一晩シラン処理した。
【0141】
250μLのFC−70を、1枚のシラン処理組織培養ポリスチレンシートと1枚の非シラン処理組織培養ポリスチレンシートとに適用して、「PFC油」表面を生成した。抗凝固剤を含まない75μLのヒト血液を、4つの表面全てに適用した(
図8A参照)。
【0142】
表面を撮像し、次に手で傾動させ、
図8Bに示される通りに直ちに再び撮像した。
図8は、血液が、非処理かつ未改質組織培養ポリスチレン(
図8B(i))、PFC油を伴う組織培養ポリスチレン(
図8B(ii))、およびシラン処理組織培養ポリスチレン(
図8B(iii))には接着したが、PFC油を伴うシラン処理組織培養ポリスチレン(
図8B(iv))によって完全に反発されたことを示す。
【0143】
実施例6
官能化ポリスチレンの液体を反発する能力を調査し、この能力を、非処理かつ非改質ポリスチレン、PFC油で処理したポリスチレン、およびシラン処理ポリスチレンのものと比較した。1/32インチの厚さのポリスチレン(McMaster Carr、製品番号8734K29)の4枚のシートを、本実験で用いた。シートを、500mトールで40秒間、酸素プラズマ処理で更に改質した。4枚のポリスチレンシートのうちの2枚を、真空下で約13時間、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル)シランで一晩シラン処理した。
【0144】
250μLのFC−70を、1枚のシラン処理ポリスチレンシートと1枚の非シラン処理ポリスチレンシートとに適用して、「PFC油」表面を生成した。抗凝固剤を含まない75μLのヒト血液を、4つの表面全てに適用した(
図9A参照)。
【0145】
表面を撮像し、次に手で傾動させ、
図9Bに示される通りに直ちに再び撮像した。
図9は、血液が、非処理かつ未改質ポリスチレン(
図9B(i))、PFC油を伴うポリスチレン(
図9B(ii))、およびシラン処理ポリスチレン(
図9B(iii))には接着したが、PFC油を伴うシラン処理ポリスチレン(
図9B(iv))によって完全に反発されたことを示す。
【0146】
実施例7
PFC油で処理した官能化チタンの液体を反発する能力を調査し、非処理かつ非改質チタン、PFC油で処理したチタン、およびシラン処理チタンのものと比較した。4枚のチタンシートを、500mトールで40秒間、酸素プラズマ処理で更に改質した。2枚のチタンシートを、真空下で約13時間、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル)シランで一晩シラン処理した。
【0147】
250μLのFC−70を、1枚のシラン処理チタンシートと1枚の非シラン処理チタンシートとに適用して、「PFC油」表面を生成した。抗凝固剤を含まない75μLのヒト血液を、4つの表面全てに適用した(
図10A参照)。
【0148】
表面を撮像し、次に手で傾動させ、
図10Bに示される通りに直ちに再び撮像した。
図10は、血液が、非処理かつ非改質チタン(
図10B(i))、PFC油を伴うチタン(
図10B(ii))、およびシラン処理チタン(
図10B(iii))には接着したが、PFC油を伴うシラン処理チタン(
図10B(iv))によって完全に反発されたことを示す。
【0149】
実施例8
PFC油で処理したソーダ石灰ガラススライドの液体を反発する能力を調査し、この能力を、非処理かつ非改質ソーダ石灰ガラススライド、PFC油で処理しソーダ石灰ガラススライド、およびシラン処理ソーダ石灰ガラススライドのものと比較した。4枚のソーダ石灰ガラススライド(Corning、製品番号2947−75x50)を、500mトールで40秒間、酸素プラズマ処理で更に改質した。2枚のソーダ石灰ガラススライドを、真空下で約13時間、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル)シランで一晩シラン処理した。
【0150】
250μLのFC−70を、1枚のシラン処理ソーダ石灰ガラススライドと1枚の非シラン処理ソーダ石灰ガラススライドとに適用して、「PFC油」表面を生成した。抗凝固剤を含まない75μLのヒト血液を、4つの表面全てに適用した(
図11A参照)。
【0151】
表面を撮像し、次に手で傾動させ、
図11Bに示される通りに直ちに再び撮像した。
図11は、血液が、非処理かつ非改質ソーダ石灰ガラス(
図11B(i))、PFC油を伴うソーダ石灰ガラス(
図11B(ii))、およびシラン処理ソーダ石灰ガラス(
図11B(iii))には接着したが、PFC油を伴うシラン処理ソーダ石灰ガラス(
図11B(iv))によって完全に反発されたことを示す。
【0152】
実施例9
PFC油で処理した官能化ポリプロピレンの液体を反発する能力を調査し、非処理かつ非改質ポリプロピレン、PFC油で処理したポリプロピレン、およびシラン処理ポリプロピレンのものと比較した。4つの直方体の1/8インチの厚さのポリプロピレンバー(McMaster Carr、製品番号8782K31)を、500mトールで60秒間、酸素プラズマ処理で更に改質した。2つのポリプロピレンバーを、約13時間、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル)シランで一晩シラン処理した。
【0153】
250μLのFC−70を、1つのシラン処理ポリプロピレンバーと1つの非シラン処理ポリプロピレンバーとに適用して、「PFC油」表面を生成した。抗凝固剤を含まない75μLのヒト血液を、4つの表面全てに適用した(
図12A参照)。
【0154】
表面を撮像し、次に手で傾動させ、
図12Bに示される通りに直ちに再び撮像した。
図12は、血液が、非処理かつ非改質ポリプロピレン(
図12B(i))、PFC油を伴うポリプロピレン(
図12B(ii))、およびシラン処理ポリプロピレン(
図12B(iii))には接着したが、PFC油を伴うシラン処理ポリプロピレン(
図12B(iv))によって完全に反発されたことを示す。
【0155】
実施例10
PFC油で処理した官能化テープの液体を反発する能力を調査し、この能力を、非処理かつ非改質テープ、PFC油で処理したテープ、およびシラン処理テープのものと比較した。アクリル接着剤を有するポリプロピレンの4枚のシート(McMaster Carr、製品番号75495A36)を、接着剤側を上にして、真空下で約13時間トリクロロ(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル)シランで一晩シラン処理した。
【0156】
250μLのFC−70を、1枚のシラン処理シートテープの接着側と1枚の非シラン処理シートのテープの接着剤側とに適用して、「PFC油」表面を生成した。抗凝固剤を含まない75μLのヒト血液を、4つの表面全ての接着側に適用した(
図13A参照)。
【0157】
表面を撮像し、次に手で傾動させ、
図13Bに示される通りに直ちに再び撮像した。
図13は、血液が、非処理かつ非改質テープ(
図13B(i))、PFC油を伴うテープ(
図13B(ii))、およびシラン処理テープ(
図13B(iii))には接着したが、PFC油を伴うシラン処理テープ(
図13B(iv))によって完全に反発されたことを示す。
【0158】
実施例11
PFC油で処理した官能化シリコンウエハーの液体を反発する能力を調査し、非処理かつ非改質シリコンウエハー、PFC油で処理したシリコンウエハー、およびシラン処理シリコンウエハーのものと比較した。2つのシリコンプライムウエハー(University Wafer)の研磨側を、500mトールで40秒間、酸素プラズマ処理で更に改質した。1つのシリコンウエハーを、真空下で約13時間、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル)シランで一晩シラン処理した。
【0159】
250μLのFC−70を、シラン処理ウエハーの約半分と非シラン処理ウエハーの約半分とに適用して、「PFC油」表面を生成した。抗凝固剤を含まない75μLのヒト血液を、2つの表面の全体に適用した(
図14A参照)。
【0160】
表面を撮像し、次に手で傾動させ、
図14Bに示される通りに直ちに再び撮像した。
図14は、血液が、非処理かつ非改質シリコンウエハーの半分(
図14B(i))、PFC油で処理されたシリコンウエハーの半分(
図14B(ii))、およびシラン処理シリコンウエハーの半分(
図14B(iii))には接着したが、PFC油を伴うシラン処理シリコンウエハーの半分(
図14B(iv))によって完全に反発されたことを示す。
【0161】
実施例12
PFC油で処理した官能化ポリカーボネートの液体を反発する能力を調査し、この能力を、非処理かつ非改質ポリカーボネート、PFC油で処理したポリカーボネート、およびシラン処理ポリカーボネートのものと比較した。4枚の1/8インチの厚さの耐擦傷性クリアポリカーボネートシート(McMaster Carr、製品番号8707K111)を、500mトールで40秒間、酸素プラズマ処理で更に改質した。2枚のポリカーボネートシートを、真空下で約13時間、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル)シランで一晩シラン処理した。
【0162】
250μLのFC−70を、1枚のシラン処理ポリカーボネートシートと1枚の非シラン処理ポリカーボネートシートとに適用して、「PFC油」表面を生成した。抗凝固剤を含まない75μLのヒト血液を、4つの表面全てに適用した(
図15A参照)。
【0163】
表面を撮像し、次に手で傾動させ、
図15Bに示される通りに直ちに再び撮像した。
図15は、血液が、非処理かつ非改質ポリカーボネート(
図15B(i))、PFC油を伴うポリカーボネート(
図15B(ii))、およびシラン処理ポリカーボネート(
図15B(iii))には接着したが、PFC油を伴うシラン処理ポリカーボネート(
図15B(iv))によって完全に反発されたことを示す。
【0164】
実施例13
PFC油で処理した官能化ポリスルホンの液体を反発する能力を調査し、非処理かつ非改質ポリスルホン、PFC油で処理したポリスルホン、およびシラン処理ポリスルホンのものと比較した。4枚のポリスルホンシート(McMaster Carr)を、500mトールで40秒間、酸素プラズマ処理で更に改質した。2枚のポリスルホンを、真空下で約13時間、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル)シランで一晩シラン処理した。
【0165】
250μLのFC−70を、1枚のシラン処理ポリスルホンシートと1枚の非シラン処理ポリスルホンシートとに適用して、「PFC油」表面を生成した。抗凝固剤を含まない75μLのヒト血液を、4つの表面全てに適用した(
図16A参照)。
【0166】
表面を撮像し、次に手で傾動させ、
図16Bに示される通りに直ちに再び撮像した。
図16は、血液が、非処理かつ非改質ポリスルホン(
図16B(i))、PFC油を伴うポリスルホン(
図16B(ii))、およびシラン処理ポリスルホン(
図16B(iii))には接着したが、PFC油を伴うシラン処理ポリスルホン(
図16B(iv))によって完全に反発されたことを示す。
【0167】
実施例14
PDMS表面粗度が滑性表面の生成に及ぼす効果を調査した。4枚の平滑なPDMSシートを、0.1マイクロメートルの平均粗度のSuper Corrosion Resistant Stainless Steel(316型)、#8Mirror Finish(McMaster Carr、製品番号9759K11)上で60℃にて硬化させた。次に、2枚のPDMSシートを、(トリクロロ(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル)シラン(Sigma、製品番号448931))で約12時間、一晩シラン処理した。1枚の平滑なシラン処理PDMSシートと1枚の平滑な非シラン処理PDMSシートとを、250μLのPFC油(Sigma Fluorinert(登録商標)FC−70、製品番号F9880)でコーティングした(それぞれ
図17A(ii)および17A(iv)参照)。
【0168】
75マイクロリットル体積の凝固剤を含まないヒト血液を、4枚のPDMSシート全ての上に分注した。
図17に示される通り、表面を撮像し、次に手で傾動させて、
図17Bに示される通り直ちに再び撮像した。
図17は、血液が、非処理かつ非改質の平滑なPDMS(
図17B(i))、PFC油を伴う平滑なPDMS(
図17B(ii))、およびシラン処理の平滑なPDMS(
図17B(iii))には接着したが、PFC油を伴うシラン処理の平滑なPDMS(
図17B(iv))によって完全に反発されたことを示す。
【0169】
4枚の粗いPDMSシートを、
図18に示される通り同様に調製した。4枚の粗いPDMSを、1.0マイクロメートルの平均粗度のSuper Corrosion Resistant Stainless Steel(316型)、#4Stain Finish(McMaster Carr、製品番号9745K11)上で60℃にて硬化させた。2枚のPDMSシートを、(トリクロロ(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル)シラン(Sigma、製品番号448931))で約12時間、一晩シラン処理した。1枚の粗いシラン処理PDMSシートと1枚の粗い非シラン処理PDMSシートとを、250μLのPFC油(Sigma Fluorinert(登録商標)FC−70、製品番号F9880)でコーティングした(それぞれ
図18A(ii)および18A(iv)参照)。
【0170】
75マイクロリットル体積の凝固剤を含まないヒト血液を、4枚のPDMSシート全ての上に分注した。
図18に示される通り、表面を撮像し、次に手で傾動させて、
図18Bに示される通り直ちに再び撮像した。
図18は、血液が、非処理かつ非改質の粗いPDMS(
図18B(i))、PFC油を伴う粗いPDMS(
図18B(ii))、およびシラン処理の粗いPDMS(
図18B(iii))には接着したが、PFC油を伴うシラン処理の粗いPDMS(
図18B(iv))によって完全に反発されたことを示す。
【0171】
2.0マイクロメートルの平均粗度のSuper Corrosion Resistant Stainless Steel(316型)、#2B Mill Finish(McMaster Carr、製品番号88885K12)上で60℃にて硬化させたより粗いグレードのPDMSを、
図19に示される通り同様に試験した。シートをシラン処理し、75マイクロリットルの凝固剤を含まない血液をシート上に分注した。表面を撮像し、次に手で傾動させて、
図19Bに示される通り直ちに再び撮像した。
図19は、血液が、非処理かつ非改質のより粗いPDMS(
図19B(i))、PFC油を伴うより粗いPDMS(
図19B(ii))、およびシラン処理のより粗いPDMS(
図19B(iii))には接着したが、PFC油を伴うシラン処理のより粗いPDMS(
図19B(iv))によって完全に反発されたことを示す。
【0172】
図17B(iv)(平滑なPDMS)、18B(iv)(粗いPDMS)、および19B(iv)(より粗いPDMS)の比較は、凝固剤を含まないヒト血液は、使用されるPDMS物質の平滑さに関係なく、PFC油を伴うシラン処理PDMSによって完全に反発されることを示した。
【0173】
実施例15
異なるフッ化炭素鎖長のテイルを有するシランを使用して、フッ化炭素鎖長が、表面が液体および物質を反発する能力に影響するかを決定した。
図20を参照すると、2枚のソーダ石灰ガラススライドを、40秒間酸素プラズマ処理で改質した。1枚のガラススライドを、250μLのPFC油(Sigma Fluorinert(登録商標)FC−70、製品番号F9880)でコーティングし、75マイクロリットルの抗凝固剤を含まない血液を双方のスライドに分注した。表面を撮像し、次に手で傾動させ、
図20Bに示される通りに直ちに再び撮像した。血液は、PFC油を伴わないプラズマ処理したガラススライド(
図20B(i))とPFC油を伴うプラズマ処理したガラススライド(
図20B(ii))との双方に接着した。
【0174】
このプロセスを、プラズマ処理した1−PFC処理ソーダ石灰ガラススライドに繰り返した。
図21を参照すると、2枚のソーダ石灰ガラススライドを、40秒間酸素プラズマ処理で改質し、シラン処理(約2時間)(トリフルオロプロピルトリクロロシラン、Gelest、SIT8371.0)して、1−フッ素添加炭素処理ガラスを得た。1枚のガラススライドを、250μLのPFC油(Sigma Fluorinert(登録商標)FC−70、製品番号F9880)でコーティングし、75マイクロリットルの抗凝固剤を含まない血液を双方のスライドに分注した。表面を撮像し、次に手で傾動させ、
図21Bに示される通りに直ちに再び撮像した。血液は、PFC油を伴わないプラズマ処理した1−PFC処理ガラススライド(
図21B(i))に接着した。対照的に、血液の多くは、PFC油を伴うプラズマ処理した1−PFC処理ガラススライド上で反発された(
図21B(ii))。
【0175】
このプロセスを、プラズマ処理した4−PFC処理ソーダ石灰ガラススライドに繰り返した。
図22に示される通り、2枚のソーダ石灰ガラススライドを、40秒間酸素プラズマ処理で改質し、シラン処理(約2時間)(ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン、Gelest、SIN6597.6)して、4−フッ素添加炭素処理ガラスを得た。1枚のガラススライドを、250μLのPFC油(Sigma Fluorinert(登録商標)FC−70、製品番号F9880)でコーティングし、75マイクロリットルの抗凝固剤を含まない血液を双方のスライドに分注した。表面を撮像し、次に手で傾動させ、
図22Bに示される通りに直ちに再び撮像した。血液は、PFC油を伴わないプラズマ処理した4−PFC処理ガラススライド(
図22B(i))に接着した。対照的に、血液は、PFC油を伴うプラズマ処理した4−PFC処理ガラススライド上では全く接着しなかった(
図22B(ii))。
【0176】
同様に、PFC油を伴う6−PFC処理ガラススライドとPFC油を伴わない6−PFC処理ガラススライドとの血液を反発する能力を比較した。このプロセスを、プラズマ処理した4−PFC処理ソーダ石灰ガラススライドに繰り返した。
図23に示される通り、2枚のソーダ石灰ガラススライドを40秒間酸素プラズマ処理で改質し、またシラン処理(約2時間)(トリデカフルオロテトラハイドロオクチルトリクロロシラン、Gelest、SIT8174.0)して、6−フッ素添加炭素処理ガラスを達成した。1枚のガラススライドを、250μLのPFC油(Sigma Fluorinert(登録商標)FC−70、製品番号F9880)でコーティングし、75マイクロリットルの抗凝固剤を含まない血液を双方のスライドに分注した。表面を撮像し、次に手で傾動させ、
図23Bに示される通りに直ちに再び撮像した。血液は、PFC油を伴わないプラズマ処理した6−PFC処理ガラススライド(
図23B(i))に接着した。対照的に、血液は、PFC油を伴うプラズマ処理した6−PFC処理ガラススライド上では全く接着しなかった(
図23B(ii))。
【0177】
同様に、このプロセスを8−PFC処理ガラススライドに繰り返し、それらを2時間シラン処理(ヘプタデカフルオロテトラハイドロデシルトリクロロシラン、Gelest、SIH5841.0)したところ、血液は、PFC油を伴わないプラズマ処理した8−PFC処理ガラススライド(
図24B(i))に接着したが、PFC油を伴うプラズマ処理した8−PFC処理ガラススライド上では全く接着しなかった(
図24B(ii))。
【0178】
実施例16
親油性表面および炭化水素油を使用して血液を反発することが可能な滑性表面を生成することができるかを決定するために、実験を行った。対照として、2枚のソーダ石灰ガラススライドを、40秒間酸素プラズマ処理で改質した。1枚のガラススライドを、250μLの軽油(Sigma、M8410)でコーティングし、75μLの抗凝固剤を含まないヒト血液を双方のスライドに分注した。表面を撮像し、次に手で傾動させて、直ちに再び撮像した(
図25B)。血液は、表面沈着を伴わず双方のガラススライドに接着した(
図25B(i)および25B(ii)参照)。
【0179】
図26を参照すると、ソーダ石灰ガラススライドを、40秒間酸素プラズマ処理で改質し、次に2時間シラン処理した(トリクロロ(オクチル)シラン、Sigma、235725)(
図26C)。1枚のガラススライドを、250μLの軽油(Sigma、M8410)でコーティングし、75μLの抗凝固剤を含まないヒト血液を双方のスライドに分注した。面を撮像し、次に手で傾動させて、直ちに再び撮像した(
図26B)。血液は、8−HC処理ガラススライドに接着したが(
図26B(i))、鉱油で処理した8−HC処理ガラススライドには接着しなかった(
図26B(ii)参照)。
【0180】
図28は、プラズマ処理を伴わない非改質のソーダ石灰ガラススライドを示し、非処理ガラス、PFC油(Fluorinert FC−70(Sigma、F9880))を伴うガラス、および250μLの軽油(Sigma、M8410)を伴うガラスを比較する。どのスライドもシラン処理しなかった。75μLの抗凝固剤を含まないヒト血液を、各スライドに添加した。表面を撮像し、次に手で傾動させて、直ちに再び撮像した(
図28B)。血液は、非シラン処理ソーダ石灰ガラス(
図28B(i))、PFC油を伴う非シラン処理ガラス(
図28B(ii))、および軽油で処理した非シラン処理ガラス(
図28B(iii))に接着した。
【0181】
実施例17
開示される方法は、血液が凝固するまたはガラスビーズへ接着するのを防止するために使用することができる。
図29は、シラン処理された1mmガラスビーズの3枚の画像を示す。ビーズを、石鹸水中で1時間の音波処理に供し、1Mの水酸化ナトリウムを1時間添加する。ビーズを、エタノール中で5体積/体積%でシラン処理(ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン、Gelest、SIN6597.6)し、PFC油(Fluorinert FC−70)を添加して、ビーズ上に超滑性表面を生成した(i)。20mLの抗凝固剤を含まないヒト血液を、ビーズに添加した(ii)。PBS溶液で濯いだビーズは、血液物質の接着をほとんど示さなかった(iii)。
【0182】
同様に、
図30は、抗凝固剤を含まない血液に曝露され、ビーズの周りに固体の塊を形成した、洗浄した非改質ガラスビーズを示す(i)。その上に血液を分注し、PBSで洗浄したシラン処理PFC油コーティングビーズは、ビーズ上に血液物質の少量の接着を示した(ii)。抗凝固剤を含まない血液への曝露前にPFC油コーティングを伴うシラン処理ビーズは、ビーズ上に血液を全く示さなかった(iii)。
【0183】
実施例18
図32は、本明細書に説明される液体反発性表面の商業用途を示す。PETE製の2つの市販のケチャップ瓶を、ケチャップを空にし、脱イオン水およびエタノールで濯いだ後、60℃で18時間焼いた。ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン(Gelest、製品番号SIN6597.6)を、1つの瓶の内面上に5時間蒸着した。1つのシラン処理した瓶の内側を、PFC油(FC−70、Sigma)でコーティングし、余剰な油を出した。ケチャップを双方の瓶の中へ注ぎ戻した。処理瓶および非処理瓶の内容物を、エルレンマイヤーフラスコへ注ぎ出し(
図32A)、垂直にして休ませた(
図32B)。10分後、非処理の非改質瓶は、瓶の壁にケチャップの著しい接着を示した(
図32B(i))。しかしながら、ケチャップはPFC油で処理したシラン処理ケチャップ瓶にほとんど接着しなかった(
図32B(ii))。
【0184】
実施例19
以下の例示的な実験条件および手順は、幾つかの実施形態における表面処理の強固性および安定性を試験するために使用することができる。
1)1/4インチの医療グレードPVC管(Sorin Group #020463101)を、170mトール酸素下で100Wにて120秒間プラズマ処理し、エタノール中の5%トリデカフルオロ−1,1,2,2−ハイドロオクチルトリクロロシラン(Gilest #SIT8174.0)(体積/体積%)を用いて1時間液体シラン処理し、60℃にて一晩乾燥させた。
2)上述のPVC管の半分を、Self−Seal Sterilization Pouches(Cardinal Health #92713)内でパッケージし、エチレンオキシド(ethalene oxide)を用いて標準的な病院殺菌プロトコル下で殺菌した。上述のPVC管のもう半分は、殺菌せず、室温で覆いをかけて保管した。
3)7日後、殺菌した管と殺菌していない管とを、Fluorinert FC−70(3M)かまたはペルフルオロデカリン(perfluordecalin)(sigma)かのいずれかでコーティングし、簡単に水気を切った。
4)100ユニット/kgのヘパリンを伴うCPDバッグ内に収集したブタ血液を、40umの細胞ストレーナー(BD)を用いて濾過し、7.5mMの塩化カルシウム/塩化マグネシウム(100mMのCaCl2、75mMのMgCl2)で再石灰化し、3.5mg/mlの硫酸プロタミンでヘパリン除去化した。次に、30mLを、シリンジポンプで駆動して30ml/分で管を通じて流した。
5)次に、血液を細管から重力排水し、細管を撮像して、処理細管と非処理細管、および殺菌細管と非殺菌細管とを比較した。(非処理の対照管は、シラン処理、殺菌、またはペルフルオロカーボン油でコーティングしなかったが、それ以外は処理管と同様に取り扱った)。
【0185】
図33A〜Eは、非処理または処理医療グレードPVC管を用いた、(例えば、上述の手順および条件にて説明されるような)一連の血液残留実験の試験結果を示す。
図33Aは、著しい血液残留物が非処理管内に残ることを示す。
図33Bは、血液残留物は、FC−70処理(非殺菌)管内で著しく低減されることを示す。
図33Cは、反発性特徴は、殺菌によってほとんど影響されないことを示す。
図33Dは、血液残留物は、PFD処理(非殺菌)管内で著しく低減されることを示す。
図33Eは、反発性特徴は、殺菌によってほとんど影響されないことを示す。
【0186】
実施例20
University Wafer製のシリコンウエハー、McMaster Carr製のアクリル(PMMA)、およびMcMaster Carr製のポリスルホンを、酸素プラズマを用いて160mトールおよび100Wにて1分間、プラズマ処理した。次に、シラン処理を、純エタノール(無水)を伴う5%(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラハイドロオクチル(tetrhydroocyl))トリクロロシラン(体積/体積)で1時間行い、その後エタノール、脱イオン水、およびエタノールで濯ぎ、その後65℃で2時間焼いた。5μLの水をピペットで各標本の上に定置し、各標本について3枚の画像を用いて、平均および標準偏差を測定した。
図34に示される通り、接触角は、プラズマ処理後に減少するが、シラン処理後に増加する。
【0187】
実施例21
McMaster Carr製の厚さ1/4のアクリル(PMMA)を、160mトールおよび100Wにて酸素プラズマを用いて1分間、プラズマ処理した。次に、シラン処理を、純エタノール(無水)を伴う5%(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラハイドロオクチル(tetrhydroocyl))トリクロロシラン(体積/体積)で1時間行い、その後エタノール、脱イオン水、およびエタノールで濯ぎ、その後65℃で2時間焼いた。プラズマ処理およびシラン処理の前後にアクリル表面の原子間力顕微鏡法(AFM)表面測定をアクリル表面(Mcmaster Carr)で行い、自乗平均表面粗度の中央値および標準偏差を行った。アクリル表面を、150mトールの酸素ガス下で100Wにて60秒間プラズマ処理し、純エタノール(無水)中の5%(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラハイドロオクチル(tetrhydroocyl))トリクロロシラン(体積/体積)で1時間シラン処理し、その後エタノール、脱イオン水、およびエタノールで濯ぎ、その後65℃で2時間焼いた。表面粗度は、シラン処理後に3.4nm±1.1nm〜約2.0±0.2nm減少する。
【0188】
シラン処理アクリル標本を、ペルフルオロデカリン(FluoroMed)で浸漬コーティングし、水、ヘキサデカン、およびクエン酸塩を伴うヒト血液の傾斜角を、5μLの液体を調製した標本上にピペットで定置することによって測定した。次に、標本をゴニオメータ(Edmund Scientific)を用いて手動で傾動させた。傾斜角が10°に達した後に液体を移動させなかった標本は、それ以上傾動させず、10°の傾斜角で記録した。
【0189】
図35は、液体は、非処理標本上で10°傾斜角でさえも移動しなかったが、一方ペルフルオロデカリンで処理した表面は、2°を下回る傾斜角を示すことを示す。
【0190】
実施例22
潤滑液による処理の前後の生物学的特徴付けを、生体外研究を用いて行った。ポリスルホン表面を、150mトールの酸素ガス下で100Wにて60秒間プラズマ処理し、純エタノール(無水)中の5%(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラハイドロオクチル(tetrhydroocyl))トリクロロシラン(体積/体積)で1時間シラン処理し、その後エタノール、脱イオン水、およびエタノールで濯ぎ、その後65℃で2時間焼いた。「PFC油無し」標本を、プラズマ/シラン処理したが、その後いかなる添加される潤滑液も有さなかった。「ペルフルブロン」、「ペルフルオロデカリン」、および「Fluorinert FC−70」標本を、対応する潤滑剤で浸漬コーティングし、血液への曝露の前に余剰を重力によって直ちに除去した。標本を、生理食塩水で濯いだ後に撮影した。血液を、提供の2週間以内にアスピリンを摂取しておらず、また喫煙していない健康な男性ボランティアから告知に基づく同意を得て獲得した。血液を、Harvard Committee on Human Studies認可のthe Declaration of Helsinkiに従って採取した(Protocol Number M20403−101)。血液傾動実験を、90度の角度にて行った。
【0191】
滑性PMMAおよびポリスルホン上でのヒト全血からの血栓形成の速度を調査し、血液を蛍光線維素原で固定することによって接着を定量化した。調査した全ての滑性表面上で、非処理表面よりも低減された表面接着および線維素形成が観察された。血液接着実験のために、ポリスルホンまたはポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)片(11mmx8mm)を、15ug/mLの蛍光線維素原を含有するヘパリン化血液(0.25U/ml)と共にBSA(1%(重量/体積))で遮断されたウエル内で30、60、または90分間培養した。30分、60分、および90分の、ポリスルホンおよびPMMA上におけるBSA遮断ポリスチレンウエルプレート内での僅かにヘパリン化したヒト血液からの血栓蓄積の経時変化を、
図36に示す。示される通り、ペルフルオロデカリン(perfluordecalin)およびFC70で処理された標本は、血栓蓄積における最も有効な低減を示した。
【0192】
図37は、非処理ポリスルホンと、30分後にプラズマ処理、シラン処理、およびFC−70でコーティングしたものとの走査型電子顕微鏡画像を示す。
図36と同様に、FC−70で処理した標本は、血栓蓄積における著しい低減を示した。
【0193】
僅かにヘパリン化したヒト血液からの血栓蓄積の経時変化を、蛍光線維素原を用いてBSA遮断ポリスチレンウエルプレート内のアクリル上で90分更に観察した。標本を、生理食塩水で濯いだ後に蛍光顕微鏡法によって測定し、画像をImageJ softwaredを用いて分析した。
図38に示される通り、FC−70で処理した標本は、最小の線維素原コーティング面積を示した。化学的表面改質は、線維素接着を非処理PMMAから著しく減少させた(P<0.001)。線維素形成は、FC−70を伴う滑性PMMA上で90分後に97%低減され、統計的に有意であった(P<0.001)。
【0194】
実施例23
滑性表面改質および医療グレード完全フッ素化液体によるコーティングは、生体外研究において、非抗凝固処理血液と接触するときに表面の血栓形成を低減させた。
【0195】
PVC細管(Tygon 3603)を、170mトール酸素下で120秒間プラズマ処理し、1時間液体シラン処理(エタノール中の5%トリデカフルオロ−1,1,2,2−ハイドロオクチルトリクロロシラン)し、エタノール、脱イオン水、およびエタノール3Xで濯ぎ、60℃にて一晩乾燥させた。PVC管の半分をパッケージし、エチレンオキシド殺菌によって殺菌した。残りは室温で覆いをかけて保管した。
【0196】
7日後、殺菌した細管と殺菌していない細管とを、ペルフルオロデカリン(perfluordecalin)(FluoroMed)で潤滑化した。処理していないブタ血液を、46.9ul/mlの100mMのCaCl2/75mMのMgCl2(3/4)と3.5ugの硫酸プロタミン(1/2)とをブタ血液に添加する前に、細胞ストレーナーを通じて濾過した。
【0197】
30mlのブタ血液を、シリンジポンプを用いて30mL/分で細管を通じて流した。血液を100mMのCaCl2および75mMのMgCl2および硫酸プロタミン10ug/Uで再活性化した。動静脈シャントを、8Fカテーテル(Medtronic)を用いてヨークシャーブタの大腿動静脈および1/4インチの細管(Sorin Group)内に確立した。細管を、重力によって血液を空にし、直ちに水平に撮像した。
図38に示される通り、ペルフルオロデカリンを伴う殺菌および非殺菌細管は、血液を保持せず、一方非処理細管は保持した。したがって、殺菌はシラン処理に影響しないようであり、表面は滑性のままである。
【0198】
実施例24
滑性表面改質および医療グレード完全フッ素化液体によるコーティングは、生体内研究において、非抗凝固処理血液と接触するときに表面の血栓形成を低減させた。
【0199】
潤滑液による処理の前後の生物学的特徴付けを、生体内研究を用いて行った。滑性表面処理を伴う、および伴わない医療グレードプラスチックを、40kgのブタの大腿動静脈間に動静脈(AV)ブリッジを形成することによって、行った。8Frカニューレを、24x1/4インチPVC細管によって接合した。約1L/分(60L/時間)の血流速を、追加の抗凝固剤の使用を伴わずに8時間試験した。滑性シャントは、約1L/分の血流で8時間超、閉塞しないままであり(特許)、一方非処理シャントは、90分以内で完全に閉鎖した。
【0200】
医療グレードPVC細管(Sorin group)を、170mトール酸素下で180秒間プラズマ処理し、1時間液体シラン処理(エタノール中の5%トリデカフルオロ−1,1,2,2−ハイドロオクチルトリクロロシラン)し、エタノール、脱イオン水、およびエタノール3Xで濯ぎ、60℃にて一晩乾燥させた。
【0201】
同様に、医療グレードポリウレタンカテーテルを、170mトール酸素下で120秒間プラズマ処理し、1時間液体シラン処理(エタノール中の5%トリデカフルオロ−1,1,2,2−ハイドロオクチルトリクロロシラン)し、エタノール、脱イオン水、およびエタノール3Xで濯ぎ、60℃にて一晩乾燥させた。
【0202】
両標本を、ペルフルオロデカリンによる潤滑化の前にエチレンオキシドによって殺菌した。
【0203】
図39Aに示される通り、その上に適用される潤滑液を伴わない医療グレードカニューレおよびPVCブリッジは、著しい血餅形成/閉塞を、特にカニューレ:ブリッジコネクタ内に示す。閉鎖は、1〜1.5時間以内に発生した。対照的に、
図39Bに示される通り、医療グレードカニューレおよびPVCブリッジ上に滑性表面が形成されるとき、8時間後でさえも、最小限の血餅形成および最小限の血小板活性化が観察される。
【0204】
図40に示される通り、カテーテルおよび細管を切開し、撮像した。示される通り、滑性表面を伴う標本は、非処理対照サンプルと比較して低減された血餅形成を示した。
【0205】
更に、
図41に示される通り、標本を、生理食塩水で充填したときと生理食塩水を空にした後とで重量測定し、導管内の血栓の重量を決定した。対照サンプルよりも少ない血栓蓄積が、処理標本にて観察された。
【0206】
実施例25
カルボキシル末端ペルフルオロポリエーテルを固着層として用いた金属表面改質を実証する。Krytox157FSH(カルボキシル末端ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド)、MW7000−7500、Miller Stephenson)を、固着層として使用した。FC−70(Aldrich、lot#MKBF9431V)またはKrytox10xを、潤滑剤として使用した。アルミニウム合金6061−T6を、基材として使用した。30%過酸化水素(水溶液)、無水エタノール(Pharmco)、HFE−7100(メチルノナフルオロブチルエーテル30〜50%とメチルノナフルオロイソブチルエーテル70〜50%との混合物、Miller Stephenson)を、受容されるものとして使用した。洗浄に使用した水は、Milliporeグレードであった。
【0207】
平坦なAl標本の代表的な粗度および波形データを、表2に提供する。
【0208】
【表2】
【0209】
アルミニウムプレートを、30%H
2O
2、水、および無水エタノール中で連続して30分間音波処理し、次にオーブン内で空気中で100℃にて30分間乾燥させた。
【0210】
事前洗浄した標本を、Teflonホルダー内に垂直に置き、次に還流冷却器、熱電対、加熱マントル、および窒素雰囲気生成装置(泡立器)を備え付けた500mL三口フラスコ内へ定置した。フラスコに、Krytox−157FSHのHFE−7100中3mM溶液(370.5mL中8.46g)を充填する。溶液は、
図1bに示される通り、プレートを完全に覆った。混合物を、窒素下で60℃にて3時間還流させた後、混合物を室温まで冷却し、標本を取り除き、40mLのHFE−7100と40mLの無水エタノールとで連続して濯ぎ、80℃にて55分間空気中でオーブン中で乾燥させた。一度に2つの標本を処理し、溶液および濯ぎ液は次の標本セットの処理で再利用した。
【0211】
接触角測定を、CAM101(KSV Instruments LTD)計器およびMilliporeグレード水を用いて室温で行った。提供される値は、各場所に対して左、右、および平均角度である。各標本に対して1〜3箇所で試験した。標本は、測定中水平に保持された。代表的な接触角データを、表3に提供する。
【0212】
【表3】
【0213】
表面事前処理したアルミニウム片を、FC−70(Aldrich、lot#MKBF9431V)と共に、合計60μL(約130mg)のFC−70を標本の表面上に定置することによって注入した。FC−70は、数分間拡張された。標本を、潤滑剤で非常に素早く湿潤させ、平滑で光沢のある表面を得た。
【0214】
処理した標本の表面を液体反発性に関して試験するため、1滴の水(30μL、Millipore)をアルミニウム表面上に置き、表面を様々な方向に傾動させながら水滴の挙動を観察し、ビデオ録画した。水滴は、止まることなく低傾斜角にて極めて少ない抵抗で官能化および潤滑化表面を容易に摺動することがはっきりと分かった。
【0215】
官能化化学反応を、下に示す。官能化後、化学的に官能化された平坦な標本は、110〜120度の接触角を示し、約120度の平坦なPTFE表面上での報告されている最大の水接触角に近い。観察値は、官能化が発生したことを示唆している。
【化9】
【0216】
予想通り、フッ素化潤滑剤FC−70は、官能化した基材上に容易に拡張して、低傾斜角での表面上の液滴の抵抗や固定を伴わない自由ない動きからも明らかなように、流体反発挙動を示す平滑な滑性表面を生成した。
【0217】
実際例26
液体潤滑剤との親和性に合致し、滑性表面を形成するような、ホスホン酸リガンドによる固体基材の化学的官能化を実証する。
【0218】
全ての化学物質は、Sigma−Aldrichから購入し、別に定めのない限り更なる精製をせずに使用した。
【0219】
潤滑剤との基材の親和性に合致するための、完全フッ素化ホスホン酸リガンドを用いた金属酸化物基材の溶液相化学的官能化
【0220】
オキシ水酸化アルミニウム基材表面上にフルオロアルキル鎖の単層を生成するために、標本を、95:5エタノール:水中の1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチルホスホン酸(F13PA)またはFS100(フルオロ脂肪族リン酸エステルフッ素系界面活性剤、Mason Chemical Company)の1重量%溶液中に、70℃で1時間浸した。別の態様では、高温で損傷する可能性がある部分を有する基材を、同じ浴槽内でより低温でより長時間(例えば、40℃で3〜4時間または室温で一晩)フッ素化した。また別の態様では、アルコールによって損傷する可能性がある部分を有する基材(例えば、PMMA、医療グレードPVC)を、1重量%のPluronicF−68(EO
78PO
30EO
78、FW=8400、Affymetrix)の存在下でFS100を溶解するように調製したFS100の水溶液中でフッ素化して、次に他の基材と同じ手順に従った。
【0221】
溶液相化学的官能化方法に適合しない基材(例えば、PDMS、PHEMAヒドロゲル)を、C
4F
8プラズマを用いて、120sccmのC
4F
8流速(立方センチメートル毎分)を有する誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングシステム(STS MPX/LPX RIE)を用いて、1mトール圧力下および600W/0Wコイル/プラテン電力で8秒間フッ素化した。
【0222】
全てのフッ素化した表面を、ペルフルオロポリエーテル(PFPE)潤滑剤(DuPont Krytox GPL100、「K100」)の適用によって潤滑化した。潤滑剤を拡張させるため、基材を傾動するか、または回転コーティング器上で回転させた。余剰潤滑剤は、典型的には基材を高い回転速度(>3,000rpm、1分)で回転させることによって、または基材を高圧水流中で圧力洗浄することによって除去した。
【0223】
図42は、裸アルミニウム(Al)、オキシ水酸化アルミニウム(Al−B)、フルオロ官能化オキシ水酸化アルミニウム(Al−BF)、および純フルオロ脂肪族リン酸エステルフッ素系界面活性剤(FS100)からの4つの異なる官能化の段階を通じて上昇する特徴的なピークによって明らかであるように、FTIRスペクトルを通じて、滑性表面が成功的に形成されたことを示す。
【0224】
実施例27
ガラス底24ウエルプレート(Matek Corporation、P24G−0−13−F)を、PFD(添加し、次に分注する)と共に、または伴わずにプラズマおよびシラン処理した。次に、リン酸緩衝生理食塩水中の蛍光線維素原Alexa Fluor647(Invitrogen、F35200)の0.5ug/m溶液1mlを、各ウエルに添加した。画像を、Leica TIRF on DM16000B上で63x油対物レンズを用いて多点位置決めで撮影した。
【0225】
図43(スケールバー=20um)に示される通り、生理食塩水中の線維素原分子は滑性ガラスから反発される。蛍光線維素原粒子(矢印参照)は、ペルフルオロカーボンを伴わないガラスには張り付く(上)が、ペルフルオロカーボン物質で処理したガラスでは表面に張り付かず、その上を移動し続ける(下)。
【0226】
実施例28
ガラス底24ウエルプレート(Matek Corporation、P24G−0−13−F)を、Vitreon(添加し、次に分注する)と共に、または伴わずにプラズマおよびシラン処理した。次に、蛍光線維素原Alexa Fluor647(Invitrogen、F35200)の1.5ug/ml溶液をたらした1mlのヘパリン化ヒト全血を、各ウエルに添加した。画像を、Leica SP5 X MP Inverted Confocal Microscopeを用いて20X対物レンズで多点位置決めで撮影した。
【0227】
図44(スケールバー=100um)に示される通り、全ての血が滑性ガラスから反発された。蛍光血栓(矢印)は、ペルフルオロカーボンを伴わないガラスには張り付く(上)が、ペルフルオロカーボン物質で処理したガラスでは表面に張り付かず、その上を移動し続ける(下)。
【0228】
実施例29
PFC油で処理した官能化濾紙の液体を反発する能力を調査し、非処理かつ非改質濾紙、PFC油で処理した濾紙、およびシラン処理濾紙のものと比較した。2枚の濾紙(Whatman、#B−2,10347673)を、170mトールで60秒間200Wにて酸素プラズマ処理で更に改質した。これらの2枚のフィルタを、真空下で約13時間、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル)シランで一晩シラン処理した。
【0229】
75μLのペルフルオロデカリンを、1枚のシラン処理濾紙と1枚の非シラン処理濾紙とに適用して、「PFC油」表面を生成した。25μLのヒト血液を、4つの表面全てに適用した。
【0230】
表面を撮像し、次に手で傾動させて、直ちに再び撮像した。血液は、非処理かつ非改質濾紙、PFC油で処理した濾紙、およびシラン処理濾紙には接着したが、PFC油を伴うシラン処理濾紙によって完全に反発された。
【0231】
実施例30
PFC油で処理した官能化ガラス繊維フィルタの液体を反発する能力を調査し、非処理かつ非改質ガラス繊維フィルタ、PFC油で処理したガラス繊維フィルタ、およびシラン処理ガラス繊維フィルタのものと比較した。2枚のガラス繊維フィルタ(Millipore、AP2007500)を、170mトールで60秒間200Wにて酸素プラズマ処理で更に改質した。これらの2枚のフィルタを、真空下で約13時間、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル)シランで一晩シラン処理した。
【0232】
75μLのペルフルオロデカリンを、1枚のシラン処理ガラス繊維フィルタと1枚の非シラン処理ガラス繊維フィルタとに適用して、「PFC油」表面を生成した。25μLのヒト血液を、4つの表面全てに適用した。
【0233】
表面を撮像し、次に手で傾動させて、直ちに再び撮像した。血液は、非処理かつ非改質ガラス繊維フィルタ、PFC油で処理したガラス繊維フィルタ、およびシラン処理ガラス繊維フィルタには接着したが、PFC油を伴うシラン処理ガラス繊維フィルタによって完全に反発された。
【0234】
実施例31
シラン処理中のシラン上の脱離基の組成および溶媒の組成を調査した。ペルフルオロデカリンを、シランの沈着のための溶媒として使用した。トリエトキシシランかトリクロロシランかのいずれかで官能化し、更にPFC油で処理したアクリルの液体を反発する能力を調査し、非処理かつ非改質アクリル、PFC油で処理したアクリル、およびトリエトキシシランかまたはトリクロロシランかのいずれかで官能化したアクリルのものと比較した。6枚のクリアキャストアクリルシート、0.060インチの厚さ(McMaster Carr、製品番号8560K171)を得た。2枚のアクリル(acyrylic)シートを、ペルフルオロデカリン中で5体積パーセントのトリクロロ(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル)シラン(Gelest、SIT8174.0)で1時間、シラン処理した。2枚の別個のフィルタを、ペルフルオロデカリン(FluoroMed、AP140−HP)中で5体積パーセントのトリエトキシ(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル)シラン(Gelest、SIT8175.0)で1時間、シラン処理した。4枚のシラン処理シートを、1ミリリットルのペルフルオロデカリンで濯ぎ、圧縮空気で乾燥させ、摂氏60℃で2時間焼いた。
【0235】
75μLのペルフルオロデカリンを、1枚のトリクロロシランでシラン処理したアクリルシート、1枚のトリエトキシシランでシラン処理したアクリルシート、および1枚の非シラン処理アクリルシートに適用して、「PFC油」表面を生成した。25μLのヒト血液を、6つ全ての表面に適用した。
【0236】
表面を撮像し、次に手で傾動させて、直ちに再び撮像した。血液は、非処理かつ非改質アクリル、PFC油で処理したアクリル、およびトリエトキシシランかまたはトリクロロシランからのいずれかで官能化したアクリルには接着したが、トリエトキシシランかまたはトリクロロシランかのいずれかで官能化し、更にPFC油で処理したアクリルによって完全に反発された。
【0237】
本開示を読めば当業者に明らかであるように、本開示の態様は、上述に具体的に開示されるもの以外の形態で実施されることができる。例えば、特定の医学関連応答(抗血餅形成、血液または他の生体液反発、薬剤放出、感染抑制、組織成長促進等)を達成することを意図される所望の機能性が、固着および潤滑層の組成へと改変されることができる。上述の具体的な実施形態はしたがって、例証的であり、制限的ではないとみなされるべきである。当業者は、単に日常的な実験を用いることによって、本明細書に説明される特定の実施形態に対する多数の同等物を認識する、または確認することができるであろう。本発明の範囲は、前述の説明に含まれる実施例に限定されるよりむしろ、添付の特許請求の範囲およびその同等物に明記される通りである。