【文献】
上田渉,モリブデン酸化物の多様な構造を活用した酸化触媒の創成,表面科学,日本,日本表面科学会,2011年 2月22日,Vol.32,pp.64-69
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、後述の本発明の詳細な記述とそこに含まれる実施例を参照することで、より容易に理解できる。
【0010】
後に、本発明の化合物、組成物、物品、システム、装置、および/または方法を開示および記述するが、言うまでもなく、これらは、別途指定のない限り、特定の合成法に限定されることはなく、あるいは、別途指定のない限り、特定の試薬に限られることはないため、当然のことながら変えても良い。文中で用いられている用語も、詳細な態様を述べることを目的としているのであって、制限しようとするものではないことは当然である。本発明の実施または検討には、文中に述べられているものと類似または同等の方法および材料が使用できるが、ここでは、方法および材料の例について述べる。
【0011】
文中で言及している全ての出版物は、その出版物が引用されている方法および/または材料に関連して、方法および/または材料を開示および記述するために、本件に引用して援用する。文中で論じている出版物は、本願の出願日より前の、その開示の内容に関してのみ提示されている。先願発明の効力によって、本発明がこれらの出版物の日付を早める権利を持たないことを承認すると解釈すべきではない。更に、文中に示されている公開日が実際の公開日と異なることがあり、これは独立検証を求めることができる。
【0012】
文中で用いられているように、有機化合物などの化合物の命名は、一般名、IUPAC、IUBMB、またはCAS命名法を用いて行うことができる。
【0013】
明細書および添付の請求項で用いられているように、単数形“a”、“an”、および“the”には、文脈が明らかに別であることを指示していない限り、複数の対象物が含まれる。つまり、例えば、“(a)官能基”、“(an)アルキル”、または“(a)残基”への言及には、2つ以上のこれらの官能基、アルキル、または残基などの混合物が含まれる。
【0014】
範囲は、文中において、“約”ある特定の値から、および/または、“約”別の特定の値まで、として表すことができる。このように範囲を表す場合、別の態様には、ある特定の値から、および/または、別の特定の値まで、が含まれる。同様に、先行詞“約”を用いて値を近似値として表す場合、当然、特定の値は更に別の態様を形成すると考えられる。更に、当然のことながら、それぞれの範囲の終点は、他の終点に関連していても、他の終点とは独立していても、有意である。更に、当然のことながら、文中には多くの値が開示されており、それぞれの値は、その値自体に加えて、“約”その特定の値としても文中に開示されている。例えば、値“10”が示されているならば、“約10”も示されている。当然、2つの特定の構成単位に挟まれたそれぞれの単位も開示されている。例えば、10と15が示されているならば、11、12、13、および14も示されている。
【0015】
組成物中の特定の元素または成分の質量部に対する、本明細書および後の請求項の言及は、質量部で示した、組成物または物品中の、その元素または成分と他の元素または成分との質量関係を示している。つまり、2質量部の成分Xと5質量部の成分Yとを含む化合物において、XとYは2:5の質量比で存在し、その化合物中に他の成分が含まれているかどうかに関わらず、その比で存在している。
【0016】
それと異なることが明確に述べられていない限り、成分の質量パーセント(質量%)は、その成分が含まれている配合物または組成物の総質量に対するものである。
【0017】
文中で用いられている用語“任意の(optional)”または“必要に応じて(optionally)”は、その後に述べられている事象または状況が起きても起こらなくても良く、その記述に、前記事象または状況が起こる場合と、起こらない場合が含まれることを意味している。
【0018】
別のものであることが明確に定義されている場合を除き、化学元素を表す記号を使用する。例えば、Moはモリブデンを表し、Vはバナジウムを表し、Gaはガリウムを表す、などである。
【0019】
様々な用語の定義において、様々な特定の元素を表すための共通記号として、文中で“XおよびY”を用いる。1つの例でこれらをある特定の元素であると定義し、別の例ではこれらを何か別の元素であると定義することができる。
【0020】
文中で用いられている用語“オレフィン”とは、二重結合で結合した1対以上の炭素原子を含む不飽和炭化水素を指す。オレフィンの一例は、プロピレン、またはHC=CH−CH
3である。
【0021】
文中で用いられている用語“アクロレイン”は、構造式HC=C−C(O)Hで表される。本明細書中において、“C(O)”は、カルボニル基、即ち、C=Oの略記である。
【0022】
文中で用いられている用語“カルボン酸”は、構造式−C(O)OHで表される。
【0023】
文中で用いられている用語“ハロ”、“ハロゲン”、または“ハロゲン化物”は、いずれを使用しても良く、F、Cl、Br、またはIを指している。
【0024】
文中で用いられている用語“安定な”とは、ある化合物を製造、検出、また、ある態様では、回収、精製、および、文中に開示されている1つ以上の目的に使用するための状況に置いた場合に、この物質が実質的に変化しないことを指す。
【0025】
文中に開示されている材料、化合物、組成物、および成分の一部は、市販品として入手可能であり、あるいは、当業者に一般に知られる方法を用いて容易に合成できる。例えば、本発明の化合物および組成物の調製に使用する開始材料および試薬は、Aldrich Chemical Co.,(ウィスコンシン州ミルウォーキー)、Acros Organics(ニュージャージー州モリスプレーンズ)、Fisher Scientific(ペンシルベニア州ピッツバーグ)、もしくはSigma(ミズーリ州セントルイス)などの市販業者から入手可能であり、または、Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, Volumes 1-17 (John Wiley and Sons, 1991); Rodd's Chemistry of Carbon Compounds, Volumes 1-5 and Supplementals (Elsevier Science Publishers, 1989); Organic Reactions, Volumes 1-40 (John Wiley and Sons, 1991); March's Advanced Organic Chemistry, (John Wiley and Sons, 4th Edition);および、Larock's Comprehensive Organic Transformations (VCH Publishers Inc., 1989)などの参考文献に述べられている手順に従い、当業者に知られる方法で調製する。
【0026】
文中では、次の略語を用いる。
℃ セルシウス度
h 時間
h
−1 毎時
m メートル
mL ミリリットル
mm ミリメートル
psia ポンド/平方インチ
【0027】
別であることが明白に述べられていない限り、文中に述べられている方法は、その工程を特定の順序で行う必要があると解釈すべきではない。従って、ある方法の主張で、その工程を行う順序を実際に挙げていない場合、あるいは、工程を特定の順番に限ると、請求項または明細書に別途明確に述べられていない場合、いかなる観点からも、ある順番を示唆していると意図するものではない。これは、工程または操作の流れの配置に関する論理の問題、文法構成または句読法から生じる明白な意味、本明細書に記載されている態様の数または種類などを解釈するための、表明されていない全ての考え得る基本として適用する。
【0028】
本発明の組成物の調製に使用する成分と、文中に開示の方法で使用する組成物自体とを開示する。文中には、これらおよびその他の材料が開示されているが、当然、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが示されている場合、これらの化合物の様々な個別的および集合的な組み合わせおよび順列のそれぞれについて、具体的な言及を明確に示すことができなくても、それぞれは文中で明確に企図され、また記述されている。例えば、特定の化合物を示し、これについて論じ、またその化合物を含む多くの分子に対して行える多くの変形について論じられているならば、それと異なると明確に示されていない限り、その化合物および可能な変形のあらゆる組み合わせおよび順列が明確に企図されている。つまり、ある種類の分子A、B、およびCが示され、更に、ある種類の分子D、E、およびFと、組み合わせ分子の例A−Dが示されているならば、それぞれが個別に挙げられていなくても、組み合わせA−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−E、およびC−Fが、個別的および集合的にそれぞれ開示されているとする。同様に、これらの全てのサブセットまたは組み合わせも示されている。つまり、例えば、A−E、B−F、およびC−Eのサブグループも開示されているものと見なせよう。この概念は、本発明の組成物の製造および使用法の工程など(但し、これらに限定しない)、本願の全ての態様に適応される。つまり、実行可能な様々な追加の工程があるならば、これらの追加工程のそれぞれを、本発明の方法の全ての個別の態様または態様の組み合わせと共に行うことができる。
【0029】
言うまでもなく、本発明の組成物はある種の機能を持つ。ここでは、開示されている機能を果たすために必要な特定の構造を明らかにするが、当然、ここに示した構造に関わる機能と同じ機能を果たすことのできる様々な構造があり、これらの構造でも一般に同じ結果が得られると考える。
【0030】
A.触媒
本発明の1つの態様に従って、プロピレンを、カルボン酸基を含む生成物に転化する触媒を開示し、この触媒は、
MoVGaPdNbXY
を含み、
式中、
Xは、La、Te、Ge、Zn、In、またはWを含み、
Yは、AlまたはSiを含み、
Mo、V、Ga、Pd、Nb、La、Te、Ge、Zn、In、W、Al、および/またはSiの1つ以上は、必要に応じて酸素と結合して存在し、
この触媒は、プロピレンを生成物に転化する触媒として作用する、追加の元素を含まない。
【0031】
本発明の別の態様に従って、プロピレンを、カルボン酸基を含む生成物に転化する触媒を開示し、この触媒は、本質的に、
MoVGaPdNbXY
から成り、
式中、
Xは、La、Te、Ge、Zn、In、またはWを含み、
Yは、AlまたはSiを含み、
Mo、V、Ga、Pd、Nb、La、Te、Ge、Zn、In、W、Al、および/またはSiの1つ以上は、必要に応じて酸素と結合して存在する。
【0032】
本発明の更に別の態様に従って、プロピレンを、カルボン酸基を含む生成物に転化する触媒を開示し、この触媒は、
MoVGaPdNbXY
から成り、
式中、
Xは、La、Te、Ge、Zn、In、またはWを含み、
Yは、AlまたはSiを含み、
Mo、V、Ga、Pd、Nb、La、Te、Ge、Zn、In、W、Al、および/またはSiの1つ以上は、必要に応じて酸素と結合して存在する。
【0033】
本発明の別の態様に従って、触媒を開示し、この触媒は、
Mo
aV
bGa
cPd
dNb
eX
fY
g
を含み、
式中、
aは1であり、
bの存在量は0.01から0.9の範囲であり、
cの存在量は、0超から0.2の範囲であり、
dの存在量は、0.0000001から0.2の範囲であり、
eの存在量は、0超から0.2の範囲であり、
fの存在量は、0超から0.8の範囲であり、
gの存在量は、0.5超から0.9の範囲であって、
a、b、c、d、e、f、およびgの数値は、触媒中の元素の相対的グラム原子比(relative gram-atom ratio)を表す。
【0034】
ある態様では、モリブデンを、アンモニウム塩(パラモリブデン酸アンモニウムなど)、またはモリブデンの有機酸塩(酢酸塩、シュウ酸塩、マンデル酸塩、グリコール酸塩など)の形で、溶液中の触媒に導入する。別の態様では、酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデンの塩化物などの、部分的に水溶性のモリブデン化合物も使用できる。別の態様において、モリブデンは、元素状以外のどのような形状で加えても良い。
【0035】
ある態様において、モリブデンの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で1である。
【0036】
別の態様では、バナジウムを、アンモニウム塩(メタバナジン酸アンモニウム、デカバナジン酸アンモニウムなど)、またはバナジウムの有機酸塩(酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩など)の形で、溶液中の触媒に導入する。別の態様では、酸化バナジウム、バナジウムの硫酸塩などの、部分的に水溶性のバナジウム化合物も使用できる。完全に溶解させるため、ある量のシュウ酸または酒石酸を加えても良い。別の態様において、バナジウムは、元素状以外のどのような形状で加えても良い。
【0037】
ある態様において、バナジウムの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0.01から0.90の範囲、例えば、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、および0.80の値である。更に別の態様において、触媒中のバナジウムの相対的グラム原子比は、上に挙げた、触媒中のバナジウムの相対的グラム原子比のいずれか2つの例から誘導した範囲とすることができる。例えば、バナジウムの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0.03から0.90の範囲である。更に、例えば、バナジウムの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0.10から0.90の範囲である。
【0038】
別の態様では、ガリウムを、酸化物、塩化物、硝酸塩などのガリウムの塩の形で、溶液中の触媒に導入する。別の態様において、ガリウムは、元素状以外のどのような形状で加えても良い。
【0039】
ある態様において、ガリウムの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0超から0.2の範囲である。別の態様において、ガリウムの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0.01から0.20の範囲、例えば、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、および0.19の値である。更に別の態様において、触媒中のガリウムの相対的グラム原子比は、上に挙げた、触媒中のガリウムの相対的グラム原子比のいずれか2つの例から誘導した範囲とすることができる。例えば、ガリウムの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0.03から0.15の範囲である。更に、例えば、ガリウムの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0.10から0.19の範囲である。
【0040】
更に別の態様では、パラジウムを、活性炭、アルミナの上に載せたPdの形で、または、酢酸塩、塩化物、硝酸塩などの、パラジウムの塩の溶液として、溶液中の触媒に導入する。別の態様において、パラジウムは、元素状以外のどのような形状で加えても良い。
【0041】
ある態様において、パラジウムの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0.0000001から0.20の範囲、例えば、0.000001、0.00001、0.0001、0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、および0.19の値である。更に別の態様において、触媒中のパラジウムの相対的グラム原子比は、上に挙げた、触媒中のパラジウムの相対的グラム原子比のいずれか2つの例から誘導した範囲とすることができる。例えば、パラジウムの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0.00001から0.15の範囲である。更に、例えば、パラジウムの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0.10から0.19の範囲である。
【0042】
更に別の態様では、ニオブを、シュウ酸塩の形で、または酸化物の水和物の形で使用する。その他、この金属の可溶型の原料としては、この金属を、β−ジケトナート、カルボン酸、アミン、アルコール、またはアルカノールアミンと配位、結合、または錯化させた化合物が挙げられる。別の態様において、ニオブは、元素状以外のどのような形状で加えても良い。
【0043】
ある態様において、ニオブの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0超から0.20の範囲である。別の態様において、ニオブの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0.01から0.20の範囲、例えば、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、および0.19の値である。更に別の態様において、触媒中のニオブの相対的グラム原子比は、上に挙げた、触媒中のニオブの相対的グラム原子比のいずれか2つの例から誘導した範囲とすることができる。例えば、ニオブの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0.015から0.18の範囲である。更に、例えば、ニオブの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0.02から0.17の範囲である。
【0044】
ある態様において、触媒中のXには、ランタン、テルル、ゲルマニウム、亜鉛、インジウム、またはタングステンが含まれる。別の態様において、触媒は、Xで示される元素として挙げた元素のうちの1つだけを含む。別の態様において、触媒は、Xで示される元素の組み合わせを含む。更に別の態様において、ランタン、テルル、ゲルマニウム、亜鉛、インジウム、またはタングステンは、酸化物、酢酸塩、塩化物、硝酸塩などの塩の形で、溶液中の触媒に導入することができる。別の態様において、ランタン、テルル、ゲルマニウム、亜鉛、インジウム、またはタングステンは、元素状以外のどのような形状で加えても良い。
【0045】
ある態様において、Xの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0超から0.80の範囲である。別の態様において、Xの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0.01から0.80の範囲、例えば、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、および0.75の値である。更に別の態様において、触媒中のXの相対的グラム原子比は、上に挙げた、触媒中のXの相対的グラム原子比のいずれか2つの例から誘導した範囲とすることができる。例えば、Xの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0.10から0.75の範囲である。更に、例えば、Xの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0.20から0.70の範囲である。ある態様において、Xで示されるそれぞれの元素の存在量は、上記の範囲とすることができる。別の態様において、Xで示される元素の総存在量は、上記の範囲とすることができる。
【0046】
ある態様において、触媒中のYには、アルミニウムもしくはケイ素(silica)、またはこれらの組み合わせが含まれる。別の態様において、触媒は、Yで示される元素として挙げた元素のうちの1つだけを含む。更に別の態様において、触媒は、Yで示される元素の組み合わせを含む。別の態様において、アルミニウムまたはケイ素は、酸化物、酢酸塩、塩化物、または硝酸塩などの塩の形で、溶液に導入することができる。別の態様において、アルミニウムまたはケイ素は、元素状以外のどのような形状で加えても良い。
【0047】
ある態様において、Yの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0.50超から0.90の範囲である。別の態様において、Yの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0.51から0.90の範囲、例えば、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58、0.59、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、および0.85の値である。更に別の態様において、触媒中のYの相対的グラム原子比は、上に挙げた、触媒中のYの相対的グラム原子比のいずれか2つの例から誘導した範囲とすることができる。例えば、Yの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0.55から0.80の範囲である。更に、例えば、Yの存在量は、触媒中の元素の相対的グラム原子比で、0.60から0.75の範囲である。ある態様において、Yで示されるそれぞれの元素の存在量は、上記の範囲とすることができる。別の態様において、Yで示される元素の総存在量は、上記の範囲とすることができる。
【0048】
ある態様において、本触媒は、プロピレンを生成物に転化する触媒として作用する、追加の元素を含まない。つまり、他の元素が存在していても良いが、これらは感知できるほどの触媒活性を持たない。別の態様において、追加の元素は金属である。別の態様において、追加の元素は非金属である。更に別の態様において、追加の元素は、SbもしくはCS、またはこれらの組み合わせである。別の態様において、本触媒は、追加の金属を含まない。更に別の態様において、本触媒は、SbもしくはCS、またはこれらの組み合わせを含まない。
【0049】
本発明の触媒を使用する際には、担体を用いても用いなくても良い。ある態様において、本触媒は担体上にある。本触媒に適した担体としては、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、シリコンカーバイド、Moカーバイド、モレキュラシーブ、その他の微小/非多孔性材料、およびこれらの混合物(但し、これらに限定しない)が挙げられる。
【0050】
ある態様において、担体材料の存在量は、全触媒組成物の50質量%から90質量%の範囲、例えば、55質量%、60質量%、65質量%、70質量%、75質量%、80質量%、および85質量%の値である。更に別の態様において、この質量%は、上に挙げた質量%のいずれか2つの例から誘導した範囲とすることができる。例えば、担体材料の存在量は55質量%から85質量%の範囲である。更に、例えば、担体材料の存在量は60質量%から80質量%の範囲である。
【0051】
本発明の態様の1つは、この触媒の製造法に関する。使用する化合物の選択と、触媒の調製に用いる特定の手順が、触媒の性能に影響することがある。触媒組成物の元素は、酸素と結合して酸化物となっていても良い。
【0052】
ある態様では、触媒を、それぞれの金属の可溶性化合物(塩、錯体、その他の化合物)の溶液から調製する。ある態様において、この溶液は、約1から約10、例えば、2、3、4、5、6、7、8、および9の値のpHを持つ水系である。更に別の態様において、この溶液は、上に挙げた値のいずれか2つの例から誘導した範囲のpHを持つことができる。例えば、この溶液は、1から7の範囲のpHを持つことができる。ある態様において、pHは、約30℃から約100℃の温度で測定する。
【0053】
一般に、元素を含む化合物の混合物は、触媒組成物中の元素が所望のグラム原子比となるように、十分な量の可溶性化合物を溶解し、不溶性化合物を分散させて調製する。次に、溶液系中の化合物の混合物から水および/またはその他の溶媒を除いて、触媒組成物を調製する。乾燥させた触媒を、空気または酸素中、所望の時間、所望の温度まで加熱して焼成し、所望の触媒組成物を生成する。
【0054】
ある態様では、乾燥させた触媒を、空気または酸素中、約250℃から約450℃、例えば、275℃、300℃、325℃、350℃、375℃、400℃、および425℃の温度まで加熱して焼成する。更に別の態様において、温度は、上に挙げた温度のいずれか2つの例から誘導した範囲とすることができる。例えば、温度は、275℃から425℃、または300℃から400℃の範囲とすることができる。
【0055】
別の態様では、触媒を、約1時間から約16時間、例えば、1.5時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、および15時間乾燥させて、所望の触媒組成物を生成する。更に別の態様において、この時間は、上に挙げた時間のいずれか2つの例から誘導した範囲とすることができる。例えば、触媒を、1.5時間から15時間の時間範囲で乾燥することができる。更に、例えば、触媒を、2時間から13時間の時間範囲で乾燥することができる。
【0056】
ある態様において、本発明の触媒は、開示されている反応および方法に使用することができる。
【0057】
B.反応
本触媒は、プロピレンを生成物に転化する。ある態様では、原料中にその他のアルカンまたはアルケンが不純物として存在していても良い。生成物は、カルボン酸基を含んでいる。ある態様において、生成物は、酢酸、アクリル酸、もしくはプロパン酸、またはこれらの組み合わせを含む。別の態様において、生成物は、実質的にアクロレインを少しも含まない。更に別の態様において、生成物はアクロレインを含まない。
【0058】
別の態様において、本触媒は、プロピレンを、一段階で、カルボン酸基を含む生成物に転化する。
【0059】
ある態様において、本触媒は、高い転化率および選択率で、アクリル酸を生成する反応を行うことができる。別の態様において、本触媒は、生成物中にアクロレインを生じることなく、高い転化率および選択率でアクリル酸を生成する反応を行うことができる。別の態様において、本触媒は熱安定性が高い。
【0060】
ある態様において、本発明の反応は、開示されている触媒および開示されている方法を用いて行うことができる。
【0061】
C.方法
ある態様において、プロピレンを、カルボン酸基を含む生成物に転化する方法を開示し、この方法は、
プロピレンを触媒と接触させる工程を含み、
この触媒は、
MoVGaPdNbXY
を含み、
式中、
Xは、La、Te、Ge、Zn、In、またはWを含み、
Yは、AlまたはSiを含み、
Mo、V、Ga、Pd、Nb、La、Te、Ge、Zn、In、W、Al、および/またはSiの1つ以上は、必要に応じて酸素と結合して存在する。
【0062】
本発明の別の態様は、高い選択率でプロピレンを生成物に酸化させるための、本発明の触媒系の使用法に関する。文中で用いられているように、高い選択率での酸化とは、CO
2よりも、生成物を生じるような反応を意味する。ある態様において、高い選択率での酸化は、CO
2よりも、アクリル酸を生成する。
【0063】
ある態様において、本方法はガス流を含む。ガス流は、反応の進行を促す様々な成分を含んでいる。
【0064】
ある態様において、ガス流はプロピレンを含む。別の態様において、ガス流は、ガス流の全容積の少なくとも3容量パーセントのプロピレンを含む。更に別の態様において、ガス流のプロピレン含有量は、ガス流の全容積の3容量%から94.9容量%の範囲、例えば、4容量%、5容量%、6容量%、8容量%、10容量%、15容量%、20容量%、25容量%、30容量%、35容量%、40容量%、45容量%、50容量%、55容量%、60容量%、65容量%、70容量%、75容量%、80容量%、85容量%、90容量%、および94容量%のパーセント容量である。更に別の態様において、パーセント容量は、上に挙げたパーセント容量のいずれか2つの例から誘導した範囲とすることができる。例えば、ガス流のプロピレン含有量は、ガス流の全容積の5容量%から90容量%の範囲である。更に、例えば、ガス流のプロピレン含有量は、ガス流の全容積の10容量%から85容量%の範囲である。
【0065】
別の態様において、ガス流は、窒素、アルゴン、二酸化炭素もしくは水、またはこれらの組み合わせを更に含む。別の態様において、水は、蒸気の形をしていても良い。
【0066】
更に別の態様において、ガス流は、ガス流の全容積の5容量%を超える量の、窒素、アルゴン、二酸化炭素、もしくは水、またはこれらの組み合わせを含むことができる。更に別の態様において、ガス流は、ガス流の全容積の5容量%から96.9容量%の範囲、例えば、7容量%、10容量%、15容量%、20容量%、25容量%、30容量%、35容量%、40容量%、45容量%、50容量%、55容量%、60容量%、65容量%、70容量%、75容量%、80容量%、85容量%、90容量%、および95容量%の、窒素、アルゴン、二酸化炭素、もしくは水、またはこれらの組み合わせを含むことができる。更に別の態様において、パーセント容量は、上に挙げたパーセント容量のいずれか2つの例から誘導した範囲とすることができる。例えば、ガス流は、ガス流の全容積の15容量%から70容量%の範囲の量の、窒素、アルゴン、二酸化炭素、もしくは水、またはこれらの組み合わせを含む。更に、例えば、ガス流は、ガス流の全容積の10容量%から85容量%の範囲の量の、窒素、アルゴン、二酸化炭素、もしくは水、またはこれらの組み合わせを含む。
【0067】
ある態様では、ガス流が更に酸素を含んでいても良い。酸素源は、空気、純酸素、もしくは酸素を多く含む空気、またはこれらの組み合わせとすることができる。ある態様では、空気が原料中の酸素源である。別の態様において、酸素源は純酸素である。
【0068】
ガス流の酸素含有量は、ガス流の全容量の0.1容量%から50容量%の範囲、例えば、0.5容量%、1容量%、5容量%、10容量%、15容量%、20容量%、25容量%、30容量%、35容量%、40容量%、および45容量%とすることができる。更に別の態様において、パーセント容量は、上に挙げたパーセント容量のいずれか2つの例から誘導した範囲とすることができる。例えば、ガス流の酸素含有量は、ガス流の全容積の5容量%から45容量%の範囲である。更に、例えば、ガス流の酸素含有量は、ガス流の全容積の10容量%から40容量%の範囲である。
【0069】
ある態様において、反応混合物は、プロピレン1モル当たり約0.01モルから約2.0モル、例えば、0.02モル、0.03モル、0.04モル、0.05モル、0.06モル、0.07モル、0.08モル、0.09モル、0.1モル、0.2モル、0.3モル、0.4モル、0.5モル、0.6モル、0.7モル、0.8モル、0.9モル、1モル、1.1モル、1.2モル、1.3モル、1.4モル、1.5モル、1.6モル、1.7モル、1.8モル、および1.9モルの分子酸素を含む。更に別の態様において、分子酸素のモル数は、上に挙げた分子酸素のモル数のいずれか2つの例から誘導した範囲とすることができる。例えば、反応混合物は、プロピレン1モル当たり約0.1モルから1.9モルの分子酸素を含む。更に、例えば、反応混合物は、プロピレン1モル当たり約0.05モルから1.5モルの分子酸素を含む。
【0070】
別の態様において、反応混合物は、プロピレン1モル当たり0モルから4.0モル、例えば、0.1モル、0.2モル、0.3モル、0.4モル、0.5モル、0.6モル、0.7モル、0.8モル、0.9モル、1モル、1.2モル、1.4モル、1.6モル、1.8モル、2モル、2.2モル、2.4モル、2.6モル、2.8モル、3モル、3.2モル、3.4モル、3.6モル、および3.8モルの水を含む。更に別の態様において、水のモル数は、上に挙げた水のモル数のいずれか2つの例から誘導した範囲とすることができる。例えば、反応混合物は、プロピレン1モル当たり0.1モルから3.8モルの水を含む。更に、例えば、反応混合物は、プロピレン1モル当たり0.5モルから3.0モルの水を含む。
【0071】
プロピレンの酸素に対する比は、所望とする転化率と、触媒の選択率に応じて変えることができる。ある態様において、プロピレンの酸素に対する比は1:5から5:1の範囲、例えば、2:5、3:5、4:5、1:1、2:1、3:1、および4:1の比である。更に別の態様において、プロピレンの酸素に対する比は、上に挙げた比のいずれか2つの例から誘導した範囲とすることができる。例えば、プロピレンの酸素に対する比は2:5から4:1の範囲である。更に、例えば、プロピレンの酸素に対する比は3:5から3:1の範囲である。
【0072】
ある態様では、アルゴン、二酸化炭素、窒素、もしくは水、またはこれらの組み合わせが、反応希釈剤として働くことがある。プロピレンの、アルゴン、二酸化炭素、窒素、もしくは水、またはこれらの組み合わせの総量に対する比は、1:5から1:1の範囲、例えば、1:4、1:3、および1:2の値である。更に別の態様において、プロピレンの、アルゴン、二酸化炭素、窒素、もしくは水、またはこれらの組み合わせの総量に対する比は、上に挙げた比のいずれか2つの例から誘導した範囲とすることができる。例えば、プロピレンの、アルゴン、二酸化炭素、窒素、もしくは水、またはこれらの組み合わせの総量に対する比は、1:4から1:2の範囲である。更に、例えば、プロピレンの、アルゴン、二酸化炭素、窒素、もしくは水、またはこれらの組み合わせの総量に対する比は、1:3から1:1の範囲である。
【0073】
別の態様では、水蒸気が、反応希釈剤として、また、反応のための加熱調節剤として働くことがある。また水蒸気は、気相酸化反応における反応生成物の脱離促進剤として作用することもある。
【0074】
更に別の態様において、ガス流は、反応希釈剤および/または加熱調節剤として、ヘリウム、窒素、もしくは二酸化炭素、またはこれらの組み合わせを更に含んでいても良い。
【0075】
反応の液体生成物は、凝縮または洗浄により、未反応原料の炭化水素から分離することができる。ある態様において、洗浄は、水または希酸で行うことができる。
【0076】
ある態様において、ガス流は、様々な成分を含んでいる。別の態様において、ガス流成分は、反応帯に導入する前に均一に混合されている。別の態様において、ガス流成分は、反応帯に導入する前に均一に混合されていない。
【0077】
更に別の態様において、ガス流成分は、反応帯に導入する前に、個別に、または混合後に、予熱されている。
【0078】
反応圧力は、初期には、気体反応物と希釈剤を供給することで加えられ、反応開始後には、反応器の排出経路に設けられた適切な背圧調整器を用いて保つことができる。ある態様において、反応帯の圧力は、1barから50bar(0.1メガパスカル(MPa)から5MPaの範囲、例えば、2bar(0.2MPa)、4bar(0.4MPa)、6bar(0.6MPa)、8bar(0.8MPa)、10bar(1MPa)、15bar(1.5MPa)、20bar(2.0MPa)、25bar(2.5MPa)、30bar(3.0MPa)、35bar(3.5MPa)、40bar(4.0MPa)、および45bar(4.5MPa)の圧力である。更に別の態様において、圧力は、上に挙げた圧力のいずれか2つの例から誘導した範囲とすることができる。例えば、反応帯の圧力は、1barから45bar(0.1MPaから4.5MPa)の範囲である。更に、例えば、反応帯の圧力は、1barから30bar(0.1MPaから3.0MPa)の範囲である。
【0079】
反応温度は、所望の反応温度に加熱した炉内に置かれた、壁を備えた管状転換炉内に触媒床を置くことで保つことができる。ある態様において、反応帯の温度は、150℃から約450℃の範囲、例えば、175℃、200℃、225℃、250℃、275℃、300℃、325℃、350℃、375℃、400℃、および425℃の温度である。更に別の態様において、温度は、上に挙げた温度のいずれか2つの例から誘導した範囲とすることができる。例えば、反応帯の温度は175℃から425℃の範囲である。更に、例えば、反応帯の温度は200℃から300℃の範囲である。
【0080】
接触時間は、触媒床の見掛け体積と、単位時間当たり、所定の反応条件下でその触媒床に供給される気体反応混合物原料の体積との比と定義される。ある態様において、反応帯における反応混合物と触媒との接触時間は、0.01秒から100秒の範囲、例えば、0.05秒、0.08秒、0.1秒、0.4秒、0.6秒、0.8秒、1秒、5秒、10秒、15秒、20秒、25秒、30秒、35秒、40秒、45秒、50秒、55秒、60秒、65秒、70秒、75秒、80秒、85秒、90秒、および95秒である。更に別の態様において、接触時間は、接触時間のいずれか2つの例から誘導した範囲とすることができる。例えば、反応帯における反応混合物と触媒との接触時間は0.05秒から95秒の範囲である。更に、例えば、反応帯における反応混合物と触媒との接触時間は1秒から80秒の範囲である。更にまた、例えば、反応帯における反応混合物と触媒との接触時間は0.1秒から10秒の範囲である。
【0081】
空間速度は、1時間に排出される全流出物のリットル数に等しい総反応器排出ガスの量を求め、これを反応器中の触媒のリットル数で除して算出する。この室温体積を、0℃、1bar(0.1MPa)における体積に変換する。
【0082】
ある態様において、反応帯の毎時空間速度は、50h
−1から約50,000h
−1の範囲、例えば、100h
−1、150h
−1、200h
−1、250h
−1、300h
−1、400h
−1、500h
−1、1,000h
−1、2,000h
−1、3,000h
−1、3,500h
−1、4,000h
−1、4,500h
−1、5,000h
−1、6,000h
−1、7,000h
−1、8,000h
−1、9,000h
−1、10,000h
−1、11,000h
−1、12,000h
−1、13,000h
−1、14,000h
−1、15,000h
−1、16,000h
−1、17,000h
−1、18,000h
−1、19,000h
−1、20,000h
−1、21,000h
−1、22,000h
−1、23,000h
−1、25,000h
−1、27,000h
−1、30,000h
−1、33,000h
−1、35,000h
−1、37,000h
−1、40,000h
−1、43,000h
−1、および47,000h
−1の値である。更に別の態様において、毎時空間速度は、いずれか2つの例示した値より選ばれた範囲とすることができる。例えば、反応帯の毎時空間速度は100h
−1から10,000h
−1の範囲である。更に、例えば、反応帯の毎時空間速度は200h
−1から3,000h
−1の範囲である。
【0083】
本発明によって行われる酸化の、アクリル酸生成に対する選択率は、反応帯通過1回当たり、少なくとも約50%とすることができる。ある態様において、アクリル酸生成に対する酸化の選択率は、反応帯通過1回当たり、少なくとも約70%である。別の態様において、アクリル酸生成に対する酸化の選択率は、反応帯通過1回当たり、50%から99%の範囲、例えば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、および97%の値である。更に別の態様において、選択率は、いずれか2つの例示した値より選ばれた範囲とすることができる。例えば、アクリル酸生成に対する酸化の選択率は、反応帯通過1回当たり、70%から99%の範囲である。
【0084】
本発明のある態様において、この触媒系を用いて生成物中に生成されるアクロレインは1質量%未満である。別の態様において、この触媒系を用いて生成物中に生成されるアクロレインの量は、0質量%超から1質量%の範囲である。別の態様において、生成物は、実質的にアクロレインを少しも含まない。更に別の態様において、生成物は、アクロレインを少しも含まず、つまり、この触媒系を用いた生成物中には検出できるほどのアクロレインは生成されない。
【0085】
ある態様において、本方法は、単一の触媒を用いる一段階工程を含む。文中で用いられている一段階工程とは、酸素と反応物を単一の原料として供給する工程を指す。別の態様において、本方法は、追加の触媒を加える工程を含まない。更に別の態様において、本方法は、一段階工程に追加の触媒を加える工程を含まない。
【0086】
別の態様において、本方法は多段階工程である。多段階工程の間、反応物は様々な段階で加えることができる。更に、所望の生成物の全体的な生産性および/または収率を高めるために、酸素または炭化水素を反応器へ多段階で加えることができ、および/または、排出モードで未反応の気体をリサイクルすることができる。
【0087】
ある態様において、本発明の方法は、開示されている反応を行うため、開示されている触媒を用いて行うことができる。
【0088】
ある態様において、本方法は、従来の二段階工程、および/または、2つの触媒を使用することによる問題、例えば、第2段階の触媒の失活、部分的酸化物の存在、および/または、生成物混合物中のアクロレインなどの問題を回避する。別の態様において、本方法は一段階工程であるため、資本投資が少ない。
【0089】
D.態様
本発明の組成物および方法は、少なくとも次の態様を含む。
【0090】
態様1:プロピレンを、カルボン酸基を含む生成物に転化する触媒であって、この触媒は、
MoVGaPdNbXY
を含み、
式中、
Xは、La、Te、Ge、Zn、In、またはWを含み、
Yは、AlまたはSiを含み、
Mo、V、Ga、Pd、Nb、La、Te、Ge、Zn、In、W、Al、および/またはSiの1つ以上は、必要に応じて酸素と結合して存在し、
この触媒は、プロピレンを生成物に転化する触媒として作用する、追加の元素を含まない。
【0091】
態様2:態様1による触媒であって、生成物は、実質的にアクロレインを少しも含まない。
【0092】
態様3:態様1または2のいずれかによる触媒であって、生成物は、アクロレインを少しも含まない。
【0093】
態様4:態様1〜3のいずれかによる触媒であって、追加の元素は金属である。
【0094】
態様5:態様1〜4のいずれかによる触媒であって、追加の元素は、SbもしくはCs、またはこれらの組み合わせを含む。
【0095】
態様6:プロピレンを、カルボン酸基を含む生成物に転化する触媒であって、この触媒は、
MoVGaPdNbXY
から成り、
または、
本質的に、
MoVGaPdNbXY
から成り、
式中、
Xは、La、Te、Ge、Zn、In、またはWを含み、
Yは、AlまたはSiを含み、
Mo、V、Ga、Pd、Nb、La、Te、Ge、Zn、In、W、Al、および/またはSiの1つ以上は、必要に応じて酸素と結合して存在する。
【0096】
態様7:態様1〜6のいずれか1つによる触媒であって、この触媒は担体上にある。
【0097】
態様8:態様1〜7のいずれか1つによる触媒であって、この触媒は、
Mo
aV
bGa
cPd
dNb
eX
fY
g
を含み、
式中、aは1であり、bの存在量は、0.01から0.90の範囲であり、cの存在量は、0超から0.20の範囲であり、dの存在量は、0.0000001から0.20の範囲であり、eの存在量は、0超から0.20の範囲であり、fの存在量は、0超から0.80の範囲であり、gの存在量は、0.05超から0.90の範囲であって、
a、b、c、d、e、f、およびgの数値は、触媒中の元素の相対的なグラム原子比を表す。
【0098】
態様9:態様1〜8のいずれか1つによる触媒であって、生成物は、酢酸、アクリル酸、もしくはプロパン酸、またはこれらの組み合わせを含む。
【0099】
態様10:態様1〜9のいずれか1つによる触媒組成物であって、この触媒は、一段階で、プロピレンを、カルボン酸基を含む生成物に転化する。
【0100】
態様11:プロピレンを、カルボン酸基を含む生成物に転化する方法であって、
この方法は、
プロピレンを触媒と接触させる工程を含み、
この触媒は、
MoVGaPdNbXY
を含み、
式中、
Xは、La、Te、Ge、Zn、In、またはWを含み、
Yは、AlまたはSiを含み、
Mo、V、Ga、Pd、Nb、La、Te、Ge、Zn、In、W、Al、および/またはSiの1つ以上は、必要に応じて酸素と結合して存在する。
【0101】
態様12:態様11による方法であって、触媒は、プロピレンを生成物に転化する触媒として作用する、追加の元素を含まない。
【0102】
態様13:態様11〜12のいずれか1つによる方法であって、触媒は、
Mo
aV
bGa
cPd
dNb
eX
fY
g
を含み、
式中、aは1であり、bの存在量は、0.01から0.90の範囲であり、cの存在量は、0超から0.20の範囲であり、dの存在量は、0.0000001から0.20の範囲であり、eの存在量は、0超から0.20の範囲であり、fの存在量は、0超から0.80の範囲であり、gの存在量は、0超から0.90の範囲であって、
a、b、c、d、e、f、およびgの数値は、触媒中の元素の相対的グラム原子比を表す。
【0103】
態様14:態様11〜13のいずれかによる方法であって、生成物は、酢酸、アクリル酸、もしくはプロパン酸、またはこれらの組み合わせを含む。
【0104】
態様15:態様11〜14のいずれかによる方法であって、この方法は、追加の触媒を含まない。
【0105】
態様16:態様11〜15のいずれかによる方法であって、この方法は、単一の触媒を用いる一段階工程を含む。
【0106】
態様17:態様11〜16のいずれかによる方法であって、生成物は、実質的にアクロレインを少しも含まない。
【0107】
態様18:態様11〜17のいずれかによる方法であって、生成物は、アクロレインを少しも含まない。
【0108】
態様19:態様11〜18のいずれかによる方法であって、触媒は担体上にある。
【0109】
態様20:態様11〜19のいずれかによる方法であって、触媒は、本質的に、MoVGaPdNbXY から成る。
【0110】
E.実験
本発明の主張する化合物、組成物、物品、装置、および/または方法をどのように製造および評価するかを、当業者に対して完全に開示および記述するため、以下の実施例を示す。これらの例は、本発明を例示することのみを目的としており、発明者が自らの発明であると考える範囲を限定しようとするものではない。数値(例えば、量、温度など)については正確を期すよう努めたが、多少の誤差および偏差は当然含まれる。別途示されていない限り、部は質量部であり、温度は℃で示され、または周囲温度であり、圧力は、大気圧または大気圧付近である。
【0111】
本発明の触媒の製造法と、プロピレンの酸化におけるその使用法を、以下の実施例で説明する。一部の例では、開始材料および必要な中間体は市販されており、または、文献の手順に従って、もしくは文中に示すようにして調製可能である。
【実施例】
【0112】
本触媒を、以下の一般的な手順で調製した。
【0113】
バナジウムおよびモリブデンの水溶液を個別に調製した。指定の温度とpHで、バナジウム溶液をモリブデン溶液と混合した。混ぜ合わせたゲル溶液に、残りの必要な成分をゆっくりと加えた。混合後、撹拌しながら、生成したゲルを初期の湿り度まで乾燥した。
【0114】
生成したゲル混合物を約120℃で約16時間乾燥させた後、得られた触媒を、約2℃/分の割合で約350℃まで加熱し、空気中、この温度で4時間焼成して、所望の酸化物組成物を生成した。
【0115】
実施例は、本発明を説明するために示すのであって、決して本発明を限定すると解釈すべきではない。
【0116】
<実施例1>
([Mo
1V
0.398Ga
1.0E−05Pd
1.90E−04Nb
0.125Te
0.23Al
0.23]の調製)
7.6gのメタバナジン酸アンモニウム(Aldrich Chemicals、分析結果 99.0%)を、80mLの蒸留水に加え、撹拌しながら90℃まで加熱した。pH5〜6の黄色溶液が得られた(溶液A)。酸化ニオブ水和物(3.4g、80% Nb
2O
5、米国、Niobium Products Company)と、20gのシュウ酸を80mLの水に加え、撹拌しながら95℃まで加熱したところ、pH0.57の透明溶液となった(溶液B)。撹拌しながら90℃で、溶液Aと溶液Bとを混ぜ合わせた。添加の間、色は淡黄色から茶色、緑色、暗緑色と変化した。溶液のpHは85℃で1.20であった。90℃でpH1の暗青緑色の溶液が得られた(溶液C)。28.8gのパラモリブデン酸アンモニウム四水和物(Aldrich Chemicals、A.C.S 12054−85−2)を30mLの水に加えて60℃まで加熱すると、pH5.0〜6.0の無色の溶液となった(溶液D)。溶液Dをゆっくりと溶液Cに加えると暗青色から暗灰色の沈殿が生じた(混合物E)。ゲル混合物に必要量のパラジウム、次に、テルル酸と酸化ガリウム、およびアルミナをゆっくりと加えた。この暗色の混合物を激しくかき混ぜて均一なゲル混合物とし、次に、撹拌しながら、これをゆっくりと初期の乾燥度まで乾燥させた。
【0117】
生成した固体を磁器製皿に入れ、オーブン中、120℃で更に16時間乾燥させた。乾燥した材料を室温まで冷やし、加熱炉に入れた。触媒を300〜600℃で4〜8時間焼成した。
【0118】
焼成した触媒を40〜60メッシュの大きさの均一な粒子とし、プロピレン酸化反応について評価した。
【0119】
<実施例2>
(触媒試験:プロピレンの酸化)
実施例1で調製した触媒を、プロピレン:酸素:窒素(3:6:91)を含む原料混合物を用い、300℃の温度で評価した。触媒の評価は、標準的な処理条件下、ステンレススチール製固定床管状反応器内で行った。この触媒の評価に用いた気体原料組成物は、プロピレン、酸素、および窒素(水)を含むものであった。反応は、40〜60メッシュの焼成触媒を用い、300℃から330℃の温度、15psiaの圧力、約1,090h
−1の空間速度で行った。
【0120】
反応生成物を、ガスクロマトグラフィにより、オンラインで分析した。酸素、アルゴン、一酸化炭素は、13Xモレキュラシーブの、2.5m×3mmのカラムを用いて分析した。二酸化炭素およびプロピレンは、HayeSep Q(登録商標)(Hayes Separation Inc.)の商品名で市販の材料を充填した2m×3mmのカラムを用いて分析した。液体生成物(アクリル酸、アクロレイン、酢酸、水)は、PORAPAK QS(商標)(Waters Corporation)の商標で市販の材料を充填した2m×3mmのカラムを用いて分析した。全ての場合において、転化率および選択率は、反応化学量論に基づいて計算した。
【0121】
反応生成物の分析結果は、以下のとおりであった。
【0122】
【表1】
【0123】
全体として、アクリル酸と酢酸の回収収率は72%で、83%がアクリル酸であり、生成物中にアクロレインは見られなかった。
【0124】
当業者ならば、本発明の範囲または精神から外れることなく、本発明の中で様々な変形および変更を行えることは明らかであろう。文中に開示されている本発明の明細および実施例を検討することで、当業者には、本発明の他の態様も明らかとなろう。この明細および実施例は例示としてのみ考えるものであり、本発明の真の範囲および精神は以下の請求項に示されているものとする。