(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388639
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】NDGAポリマーおよびその金属錯体
(51)【国際特許分類】
C08L 71/00 20060101AFI20180903BHJP
C08G 65/34 20060101ALI20180903BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20180903BHJP
C08K 5/16 20060101ALI20180903BHJP
A61K 31/28 20060101ALI20180903BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20180903BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20180903BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20180903BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
C08L71/00 Y
C08G65/34
C08K3/00
C08K5/16
A61K31/28
A61K31/282
A61P31/04
A61P31/10
A61P35/00
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-507612(P2016-507612)
(86)(22)【出願日】2014年4月8日
(65)【公表番号】特表2016-519708(P2016-519708A)
(43)【公表日】2016年7月7日
(86)【国際出願番号】US2014033346
(87)【国際公開番号】WO2014168956
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2017年3月24日
(31)【優先権主張番号】13/860,473
(32)【優先日】2013年4月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514156585
【氏名又は名称】ミメディクス グループ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】コオブ,トーマス ジェイ.
【審査官】
岡山 太一郎
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/069558(WO,A1)
【文献】
特開2012−072119(JP,A)
【文献】
特表2003−530317(JP,A)
【文献】
国際公開第2001/049696(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0037940(US,A1)
【文献】
特表2009−540936(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0020012(US,A1)
【文献】
特表平01−501791(JP,A)
【文献】
国際公開第1988/003805(WO,A1)
【文献】
特表2007−532543(JP,A)
【文献】
特表2016−530217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 71/00−71/14
C08G 65/00−65/48
A61K 31/00−31/80
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性金属イオンとノルジヒドログアレチン酸(NDGA)ポリマーとの錯体。
【請求項2】
前記金属イオンが、イオン化銀、イオン化銅およびイオン化白金からなる群より選択される、請求項1に記載の錯体。
【請求項3】
前記金属イオンがイオン化銀である、請求項2に記載の錯体。
【請求項4】
請求項3に記載の錯体を含む、抗菌組成物。
【請求項5】
前記金属イオンがイオン化銅である、請求項2に記載の錯体。
【請求項6】
請求項5に記載の錯体を含む、抗真菌組成物。
【請求項7】
前記金属イオンがイオン化白金である、請求項2に記載の錯体。
【請求項8】
前記イオン化白金がPt2+である、請求項7に記載の錯体。
【請求項9】
前記イオン化白金がシスプラチンである、請求項7に記載の錯体。
【請求項10】
シスプラチンで治療可能な癌の治療において使用するための医薬組成物であって、請求項9に記載の錯体を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NDGAポリマーおよびこのようなポリマーの金属錯体、好ましくは水性溶媒に不溶性または実質的に不溶性の上記ポリマー金属錯体に関する。本発明はこのほか、このようなポリマーの調製方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(最新技術)
ノルジヒドログアレチン酸(NDGA)は式:
【化1】
によって表される化合物である。
【0003】
Koobらは、様々な生物医学的用途のためのコラーゲン線維と重合し架橋したノルジヒドログアイアレチン酸(NDGA)を作製する方法について記載されており、その一部のものは引張り強度が天然の腱とほぼ等しい(例えば、約91MPa)。例えば、KoobおよびHernandez,Material properties of polymerized NDGA−collagen composite fibers:development of biologically based tendon constructs,Biomaterials 2002 Jan;23(1):203−12;ならびに米国特許第6,565,960号(それぞれその全体が参照により組み込まれる)を参照されたい。
【発明の概要】
【0004】
本明細書には、NDGAポリマーおよびこのようなポリマーの金属錯体、好ましくは、生体適合性で水性溶媒に不溶性または実質的に不溶性の上記ポリマー金属錯体ならびにこれを作製する工程が提供される。本発明には生体適合性で様々な酸化状態の様々な金属が有用であり、このことは本開示を読めば当業者には明らかになるであろう。本明細書に記載されるNDGAポリマーは、NDGAのホモポリマーまたはNDGAと生体適合性モノマーもしくはこのようなモノマーの混合物とのコポリマーであるのが好ましい。
【0005】
一態様では、本発明は少なくとも一部がNDGAポリマーと錯体を形成した金属原子を含む金属−ノルジヒドログアレチン酸(NDGA)ポリマーを提供し、ここでは、NDGAポリマーの分子量が約14,000以上であり、金属NDGAポリマーが水性溶媒に不溶性または実質的に不溶性である。一実施形態では、ポリマーの分子量は約14,000〜約500,000、好ましくは約14,000〜約100,000の範囲内にある。ポリマーの分子量は、それが数平均に基づくものであるのか、重量平均に基づくものであるのかとは無関係であるが、数平均分子量が好ましい。
【0006】
別の態様では、NDGAの酸化および重合に適した条件下、好ましくは水性媒体中でNDGAモノマーを酸化することを含む方法によってNDGA−ポリマーを調製する。一実施形態では、この方法は、反応混合物の分子量が14,000未満の未反応のモノマーおよびオリゴマーを含めた低分子量の成分からNDGAポリマーを分離することをさらに含む。
【0007】
一実施形態では、生体適合性のポリマー金属錯体はイオン化銀を含む。別の実施形態では、イオン化銀は少なくとも一部がNDGAポリマーのベンゾキノンおよび/または1,2−ジヒドロキシフェニル部分にキレートされているが、イオン化銅およびイオン化白金などの他の適切な生体適合性イオンを使用することができる。
【0008】
一実施形態では、金属−NDGAポリマーは粉末形態、微粉形態または懸濁形態(水溶液中など)で提供される。
【0009】
別の態様では、本発明は金属−ノルジヒドログアレチン酸(NDGA)ポリマーを沈殿させる工程を提供し、この工程は、生体適合性金属イオンの少なくとも一部がNDGAポリマーにキレートされる条件下で、前記イオンとポリマーとを接触させることを含む。
【0010】
一実施形態では、接触を水性溶媒中で実施する。別の実施形態では、金属イオンはイオン化銀である。別の実施形態では、金属は、少なくとも一部がNDGAポリマーのベンゾキノンおよび/または1,2−ジヒドロキシフェニル部分にキレートしたイオン化銀である。別の実施形態では、接触をin vitroで実施する。
【0011】
上に述べた態様および実施形態の範囲内にある様々な実施形態では、好ましい生体適合性金属イオンは抗菌性、抗真菌性および/または抗癌性を有するものである。このような金属イオンは当業者に周知である。一実施形態では、抗菌性金属は銀、好ましくは銀(I)である。別の実施形態では、抗真菌性金属は銅、好ましくは銅(II)である。別の実施形態では、抗癌性金属は白金、好ましくは白金(II)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明は、部分的にはNDGAポリマーおよびその金属錯体に関する。本発明を詳細に説明する前に以下の用語を定義する。
【0013】
数値表示、例えばpH、温度、時間、濃度および重量はいずれも、それぞれの範囲を含む近似値であり、通常、必要に応じて0.1、1.0または10.0の(+)または(−)の増分で変化し得る。あらゆる数値表示には前に「約」という用語があるものと理解してよい。
【0014】
本明細書で使用される単数形「a」、「an」および「the」には、文脈からそうでないことが明らかでない限り複数形も包含されるものとする。
【0015】
「〜を含む」という用語は、列挙されるいずれの要素も必ず包含され、その他の要素は任意選択で包含され得ることを意味する。「〜から実質的になる」は、列挙されるいずれの要素も必ず包含され、列挙される要素の基礎となる新規な性質に物理的な影響を及ぼし得る要素は除外され、その他の要素は任意選択で包含され得ることを意味する。「〜からなる」は、列挙される要素以外の要素がすべて除外されることを意味する。上記の各用語によって明示される実施形態は、本発明の範囲内にある。
【0016】
「水性溶媒」という用語は、水が成分として、好ましくは唯一最も多い液体成分として、より好ましくは主要な液体成分として含まれ、溶媒の液体成分の50%超を占める液体または溶液を意味する。水性溶媒の非限定的な例にはリン酸緩衝生理食塩水またはPBSがある。血液は水性溶媒のまた別の非限定的な例である。
【0017】
「錯体を形成した」という用語は、NDGA部分またはその酸化もしくはポリマー化された形態と結合し錯体を形成した金属イオンを意味する。錯体形成には通常、イオン結合が含まれる。金属原子はほかにも、2つ以上の結合点を介して錯体を形成することが可能であり、したがって「キレートされ」得る。
【0018】
溶媒に「実質的に不溶性である」という用語は、金属−NDGAポリマーがその溶媒から沈殿することを意味する。
【0019】
NDGA重合および金属錯体形成
NDGA重合は通常、例えば空気、酸素、オゾンなどの酸化剤の存在下で進行する。1つの好ましい工程では、NDGAを溶液のpHが7.5超のNaOHまたはKOH溶液などのアルカリ水溶液に溶かし、任意選択でその溶液または混合物に酸化剤を加えるか、通過させる(吹き込む)。NDGAポリマーは暗赤色の混合物を形成する。透析によりNDGAポリマーから低分子量のオリゴマーおよび未反応のNDGAモノマーを分離して、NDGAポリマーから分子量が14,000以下のオリゴマーを除去する。
【0020】
理論に束縛されるものではないが、酸化の際に、以下の例示的で非限定的なラジカルが形成されることが考えられる:
【化2】
【0021】
酸素系または炭素系求核ラジカルがキノンのα、β不飽和求電子中心と反応してNDGAポリマーを形成し:
【化3】
次いで、上記のように分離する。
【0022】
上記のように形成されたNDGAポリマーの混合物または溶液を、金属−NDGAポリマーが形成されて溶液から沈殿する条件下で適切な生体適合性金属イオンと混合する。好ましい生体適合性金属イオンは抗菌性、抗真菌性および/または抗癌性を有するものである。このような金属イオンは当業者に周知である。一実施形態では、抗菌性金属は銀、好ましくは銀(I)である。別の実施形態では、抗真菌性金属は銅、好ましくは銅(II)である。別の実施形態では、抗癌性金属は白金、好ましくは白金(II)である。一実施形態では、イオン性白金はシスプラチンである。
【0023】
金属−NDGAポリマーは様々な用途に使用することが可能である。一実施形態では、本発明は、シスプラチンで治療可能な癌細胞を治療する方法を提供し、この方法は、前記癌細胞に十分な量のシスプラチンとNDGAポリマーとの錯体を接触させることを含む。別の実施形態では、抗菌法が提供され、この方法は、微生物に銀とNDGAポリマーとの錯体を接触させることを含む。さらに別の実施形態では、抗真菌法が提供され、この方法は、真菌に銅とNDGAポリマーとの錯体を接触させることを含む。
【実施例】
【0024】
本発明の銀−NDGA−ビスキノンポリマー錯体の調製
0.4M NaOH溶液にNDGAを溶かすことによって、単量体NDGA(30mg/mL)100mLを調製した。このNDGA溶液を直ちにpH7.0の0.1M NaH
2PO
4 900mLに加え、十分にかき混ぜた。次いで、得られた混合物のpHを約10.0〜11.0に調整した。NDGA、NaOHの濃度、NaOHのモル濃度ならびにNaH
2PO
4のモル濃度およびpHを変化させて、最終pHが約10.0〜約11.0の反応混合物を得ることができる。反応混合物を室温で24時間、連続してかき混ぜながらインキュベートした。次いで、得られた溶液をMWカットオフが12,000〜14,000の透析チューブで水に対して完全に透析した。NDGAはオルト−カテコールを2つ含む低分子量のジ−カテコールである。NDGAの2つのカテコールは、中性またはアルカリ性のpHで自己酸化を受けて反応性キノンを生成する。次いで、2つのキノンがアリールオキシフリーラジカル形成および酸化カップリングによってカップリングし、それぞれの末端にビスキノン架橋を形成する。NDGAは大きい架橋ビスキノンポリマー網目構造を形成し続ける。一実施形態では、このポリマー溶液を金属イオンに曝露する前に直接使用して組織を治療し得る。別の実施形態では、このポリマー溶液に適切な量の酢酸銀などの銀(I)塩を加えて銀−NDGAビスキノンポリマーを沈殿させる。この沈殿をろ過によって分離し、任意選択で真空乾燥させ、eビーム照射などのしかるべき条件下で滅菌する。
【0025】
本発明の銀−NDGA−ビスキノンポリマー錯体を有する組織/生体材料の調製
乾燥組織をはじめとする生体材料をNDGAビスキノンポリマーの溶液(水溶液など)中で水和させる。組織/生体材料を溶液から取り出し、余分な溶液を拭き取った後、所望の濃度の酢酸銀などの銀(I)塩の水溶液に入れる。組織/生体材料内に銀が拡散するにつれて、銀−NDGAポリマーが材料内で沈殿することにより銀の貯留物が形成される。次いで、この組織/生体材料を乾燥させ、包装する。
【0026】
別の実施形態では、乾燥組織をはじめとする生体材料をポリマーが組織内に拡散するのに十分な時間だけ銀−NDGAビスキノンポリマーの溶液に入れた後、乾燥させ、包装する。
【0027】
(有用性)
金属−NDGAポリマーおよびその粉末形態、微粉形態はじめとする形態は、抗菌性金属、抗真菌性金属、抗癌性金属をはじめとする治療に有用な金属を、微生物、真菌もしくは癌を含む所望の部位またはその金属を必要とする部位に送達するのに有用である。このような金属−NDGAポリマーは少なくとも実質的には体液に不溶性であるため、体液がこれを所望の部位から運び去ることはなく、したがって、所望の部位での治療効果が大きくなり、罹患していない正常組織における不必要な副作用が減少すると考えられる。